(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
配電系統には、配電線の各部の電圧を調整するために、特許文献1や2に示されているように、無停電で調整変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換装置(LTC)が設置されている。負荷時タップ切換装置としては、種々の構成を有するものが用いられているが、本明細書では、特許文献1に示されたものを例にとって説明する。特許文献1に示された負荷時タップ切換装置LTCは、
図14(A)に示されているように、調整変圧器に設けられたタップ巻線Wtの奇数タップt1,t3,…及び偶数タップt2,t4,…を交互に選択するタップ選択装置TSと、タップ選択装置TSが、選択するタップを切り換える過程で負荷電流を流すタップを、切り換え前のタップから切り換え後のタップに切り換える切換開閉器CSと、タップ切り換え時に流れるタップ間短絡電流を制限する限流抵抗器Rとを備えている。
【0003】
タップ選択装置TSは、奇数タップt1,t3,…を順次選択する奇数タップ選択器TSoと、偶数タップt2,t4,…を順次選択する偶数タップ選択器TSeと、電動操作器により駆動される中心軸の回転に伴って奇数タップ選択器TSo及び偶数タップ選択器TSeを操作する操作機構とを備えていて、中心軸が一方向に回転駆動された際に奇数タップを選択する動作と偶数タップを選択する動作とを交互に行ってタップを昇圧側に切換えていくタップ選択動作を行い、中心軸が他方向に回転駆動された際に奇数タップを選択する動作と偶数タップを選択する動作とを交互に行ってタップを降圧側に切換えていくタップ選択動作を行うように構成されている。
【0004】
図示の切換開閉器CSは、タップ選択器TSo及びTSeを通して流れる負荷電流を開閉する第1のスイッチS1と、限流抵抗器Rの投入及び切り離しを行なう第2のスイッチS2と、負荷電流を奇数タップ選択器Toと偶数タップ選択器Teとに切り換える切換スイッチSWとからなっていて、回転駆動軸の回転に伴って、第1及び第2のスイッチS1及びS2と切換スイッチSWとが所定のシーケンスで動作するように構成されている。
【0005】
図示の切換スイッチSWは、奇数タップ選択器TSo及び偶数タップ選択器TSeにそれぞれ接続された固定接点a及びbと、固定接点a及びbに選択的に接触する可動接点cとを有していて、可動接点cが第1のスイッチS1を通して調整変圧器の中性点Nに接続されている。なお切換スイッチSWは複数の真空バルブにより構成される場合もある。
【0006】
図示の例では、第1及び第2のスイッチS1及びS2が真空バルブからなっていて、第1のスイッチS1の一端は調整変圧器の中性点Nに接続され、他端は切換スイッチSWを通して奇数タップ選択器To又は偶数タップ選択器Teのいずれかに接続される。また第2のスイッチS2の一端は中性点Nに接続され、他端は限流抵抗器Rを通して奇数タップ選択器TSoに接続されている。
図14において、太線は、限流抵抗器Rにより制限されていない負荷電流が流れる部分を示している。
【0007】
図14に示された負荷時タップ切換装置は、次のように動作する。ここでは、一例として、
図14(A)に示すように偶数タップt2を選択している状態から、昇圧側の奇数タップt3を選択する状態(同
図Gに示す状態)に切り換える際の動作を説明する。偶数タップt2から奇数タップt3にタップを切り換える際には、先ず切換スイッチSWを偶数タップ選択器TSe側に切換えたままの状態(可動接点cを固定接点bに接触させた状態)で、
図14(B)に示すように、奇数タップ選択器TSoを奇数タップt1につながる固定接点から昇圧側の奇数タップt3につながる固定接点に移動させ、次いで同図(C)に示すように、第2のスイッチS2をオン状態にする。このとき限流抵抗器Rを通して、制限されたタップ間短絡電流Isが流れる。次いで
図14(D)に示すように、第1のスイッチS1をオフ状態にして負荷電流が限流抵抗器Rを通して流れる状態にした後、同図(E)に示すように、切換スイッチSWの可動接点cを、固定接a及びbのいずれにも接触しないオフ位置を経て、同図(F)に示すように固定接点aに接触させた後、第1のスイッチS1をオン状態にする。次いで同図(G)に示すように第2のスイッチS2をオフ状態にしてタップ切換動作を完了させる。
【0008】
負荷時タップ切換装置においては、切換開閉器CSの切換え動作を素早く行なわせる必要があるため、中心軸の回転に伴ってバネを蓄勢する蓄勢機構と、中心軸が設定角度回転するまでの間バネを蓄勢された状態に保持し、中心軸が設定角度回転したときにバネのラッチを解除するラッチ機構と、ラッチ機構によるバネのラッチが解除されたときに生じるバネの変位を回転変位に変換して回転駆動軸に伝達する変位伝達機構とを備えた蓄勢駆動機構を設けて、回転駆動軸がバネの付勢力により駆動されて回転する際に切換開閉器の切換動作を一気に行なわせる(速動させる)ようにしている。
【0009】
この種の蓄勢駆動機構としては、例えば特許文献3に示されたものが知られている。
図16ないし
図18は、特許文献3に示された蓄勢駆動機構1の一連の動作過程における各部の状態を示している。図示の蓄勢駆動機構1は、フレーム2と、対向配置されてフレーム2にスライド自在に支持された箱形の第1のスライダ4及び第2のスライダ5と、第1及び第2のスライダのスライド方向に対して直角な方向に並べて配置されて、第1のスライダ4の変位に伴って蓄勢されて第2のスライダ5を付勢する一対のバネ6,6(
図16ないし
図18においては、一方のバネ6のみが示されている。)と、フレーム2を間にして第2のスライダ5と反対側に配置された中空の回転駆動軸7と、第1のスライダ4に設けられた長孔と第2のスライダ5に設けられた長孔とフレーム2に設けられた窓部と回転駆動軸7の中空部とを貫通した状態で設けられた中心軸8と、中心軸8の回転を往復直線変位に変換して第1のスライダ4に伝達するカム機構10と、バネ6の付勢力により変位させられようとする第2のスライダ5をラッチするラッチ機構11と、第2のスライダ5のスライド変位を回転変位に変換して回転駆動軸7に伝達する変位伝達機構12とを備えている。中心軸8は、図示しない電動操作器により、絶縁駆動軸9(
図16C参照)を介して回転駆動される。
【0010】
第1のスライダ4は、互いに平行に配置されて、第1のスライダの一端側の側壁部及び他端側の側壁部をスライド自在に貫通した一対のガイド棒14a,14bを介してフレーム2に支持されている。また第2のスライダ5は、ガイド棒14a,14bの内側に互いに平行に配置されて、第2のスライダ5の一端側の側壁部及び他端側の側壁部をスライド自在に貫通した1対のガイド棒15a,15bを介してフレーム2に支持されている。
【0011】
一対のバネ6,6は、それぞれ第1のスライダ4をガイドする一対のガイド棒14a,14bの周囲を両ガイド棒の軸線方向に沿ってらせん状に伸びるように設けられていて、それぞれのバネの一端及び他端は、ガイド棒14a,14bにスライド自在に嵌合された一対のバネ受け部材の一方及び他方を介して第2のスライダ5の一端側の側壁部の内面及び他端側の側壁部の内面に当接されている。また第1のスライダ4の一端側の側壁部及び他端側の側壁部のガイド棒14a,14bが貫通した部分にそれぞれ一対のバネ受け部材の一方及び他方をそれぞれ押圧する一対のバネ駆動部が形成されていて、これらのバネ駆動部と、上記バネ受け部材とにより、第1のスライダがスライド変位する過程でバネ6,6を圧縮して蓄勢する蓄勢機構が構成されている。なお
図16ないし
図18においては、バネ受け部材や、バネ駆動部が図示されていないが、これらについては、後記する発明の実施形態の項で説明する。
【0012】
カム機構10は、ガイド棒14a,14b,15a,15bの長手方向に対して直角な方向に長手方向を向けた状態で平行に配置されて第1のスライダ4の天井板に固定された一対の四角柱状のカム従動子16,16と、中心に対して偏心した位置に回動中心を位置させた状態で中心軸8に固定された円板状のカム板17とからなっている。カム板17は、カム従動子16,16の間に、その外周面をカム従動子16,16の対向面に接触させた状態で配置されている。このカム機構10は、カム板17が一方向に180度回転する間に第1のスライダ4をガイド棒14,14の長手方向に沿って一方向に一定距離だけ変位させ、カム板17が一方向に更に180度回転する間に、第1のスライダ4をガイド棒14,14の長手方向に沿って他方向に一定距離だけ直線変位させるように構成されている。
【0013】
変位伝達機構12は、回転駆動軸7に固定されたクランク板20と、第2のスライダ5の底面に固定された駆動板21と、中心軸8に対して偏心した位置で一端及び他端がそれぞれ駆動板21及びクランク板20に結合されて、駆動板21とクランク板20との間を連結するピン22とからなっている。ピン22は、駆動板21及びクランク板20に対して回転自在に設けられていて、駆動板21が第2のスライダ5とともにガイド棒15,15の長手方向に沿って一方の側にスライド変位したとき及び他方の側にスライド変位したときに、クランク板20が回転駆動軸7とともに一方向及び他方向に一定角度だけ回転させられるようになっている。
【0014】
ラッチ機構11は、第1及び第2のスライダ4及び5のスライド方向に間隔をあけて配置されて、フレーム2に対して固定された支持板32に角部がピン23,24を介して回動自在に支持された一対のL型のラッチレバー25,26と、ラッチレバー25,26の先端を係合させるためにクランク板20の外周に形成された凹部20a,20bと、ラッチレバー25,26の後端部を互いに引き寄せる方向に付勢する復帰バネ29と、第1のスライダ4に一体に設けられたラッチ解除部材30とからなっている。ラッチ解除部材30は、第1のスライダ4が一方向及び他方向にそれぞれ変位する過程で設定位置(バネの蓄勢が完了する位置)まで変位したとき(中心軸が設定角度回転したとき)に、ラッチレバー25,26にそれぞれ設けられた解除部材係合部25a及び26aに係合して、ラッチレバー25及び26をバネ29の付勢力に抗して回動させることにより、ラッチレバー25及び26の先端を凹部20a,20bから外して第2のスライダ5のラッチを解除するように設けられている。
【0015】
回転駆動軸7を貫通した中心軸8は、前述のタップ選択装置の操作軸に歯車機構などを介して結合されていて、その回転に伴って、奇数タップ選択器によるタップ選択動作と、偶数タップ選択器によるタップ選択動作とを交互に行なわせる。また回転駆動軸7は、切換開閉器の操作部に操作力を与えて該切換開閉器の切換動作を所定のシーケンスで行なわせる。
【0016】
図16ないし
図18に示した蓄勢駆動機構1は次のように動作する。中心軸8が
図16ないし
図18の(A)において反時計方向に回転させられるものとすると、中心軸8の回転に伴ってカム板17が反時計方向に回転し、第1のスライダ4が図面上右方向にスライド変位する。この第1のスライダ4のスライド変位に伴ってバネ6が圧縮される。このときバネ6により第2のスライダ5が付勢されて図面上右方向に変位しようとするが、
図16(B)に示すようにラッチレバー25とクランク板20の凹部20aとの係合により、クランク板20の反時計方向への回転が阻止されているため、クランク板28に駆動板21及びピン22を介して連結されている第2のスライダ5の変位も阻止されて(第2のスライダがラッチされて)おり、第2のスライダ5は停止した状態を保持している。そのため、第1のスライダ4の変位に伴ってバネ6が蓄勢されていく。
図17はバネ6が蓄勢される途中の状態(カム板17が
図16の状態から約90度回転した状態)を示している。
【0017】
第1のスライダ4が右方向に変位していく過程で、その変位量が最大値に達する直前の位置に設定された設定位置に達すると、第1のスライダ4に設けられたラッチ解除部材30がラッチレバー25の解除部材係合部25aを押してラッチレバー25の先端を凹部20aから外す。これにより、第2のスライダ4のラッチが解除されるため、バネ6の付勢力により、第2のスライダ4が右方向に素早くスライド変位させられる。この第2のスライダ4のスライド変位は変位伝達機構12により回転変位に変換されて回転駆動軸7に固定されたクランク板20に伝達されるため、クランク板20が回転駆動軸7とともに
図17(B)において反時計方向に回転させられる。この回転駆動軸7の回転により、例えばタップを奇数側のタップから偶数側のタップに切り換える際の切換開閉器の一連の切換動作が行なわれる。クランク板20が
図18に示した限界位置まで回動したときにラッチレバー26の先端がクランプ板20に設けられた凹部20bに係合して、クランプ板20の図面上時計方向への回転を阻止し、第2のスライダ5の図面上左方向への変位を阻止した状態になる。
【0018】
中心軸8を更に180度回転させると、第1のスライダ4が図面上左方向にスライド変位させられる。この第1のスライダ4のスライド変位の過程で、バネ6が再び蓄勢される。第1のスライダ4が左方向にスライド変位する過程で設定位置に達したときにラッチ解除部材30がラッチレバー26の解除部材係合部26aに係合してラッチレバー26の先端をクランク板20の凹部28から外すため、バネ6の付勢力により第2のスライダ5が図面上左方向に素早くスライドさせられる。この第2のスライダ5のスライド変位によりクランク板20が回転駆動軸7とともに時計方向に回転させられる。この回転駆動軸7の回転により、タップを偶数タップから奇数タップに切り換える際の切換開閉器の一連の切換動作が行なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のように、負荷時タップ切換装置においては、偶数タップから奇数タップに切り換えるタップ切換指令または奇数タップから偶数タップに切り換えるタップ切換指令が与えられた時に、先ずタップ選択装置がタップ選択動作を行ない、次いで蓄勢駆動機構により与えられる駆動力により切換開閉器CSの第1及び第2のスイッチS1及びS2の開閉動作と、切換スイッチSWの切換動作とを所定のシーケンスで行なわせる。切換開閉器が正常に動作する場合には、従来技術によっても何ら問題がないが、万一何らかの原因により切換開閉器CSの機構部に異常が生じて切換開閉器に操作力を与える回転駆動軸が回転することができなくなったり、蓄勢駆動機構のラッチを外すことができなくなったりする機械的な障害が発生した場合に、変圧器を損傷させる事故が生じるおそれがあった。
【0021】
例えば、
図14(A)ないし(G)を用いて説明した偶数タップt2から奇数タップt3へのタップ切換過程において、何らかの原因で(例えばラッチ解除部材30の折損により)切換開閉器CSが切換動作を行なうことができなかった場合には、
図15(A)及び(B)に示すように、タップ選択器によるタップ選択動作は行なわれるが、
図15(C)及び(D)に示すように、負荷電流をタップt3に切り換える切換開閉器CSの切換動作は行われないため、タップがt2からt3に切り換えられた状態で切換スイッチSWが偶数タップ選択器TSe側に切換えられたままの状態にされる。この状態では、タップt3が選択されているにもかかわらず、負荷電流はタップt2を通して流れている。この状態で、タップを奇数タップt3から偶数タップt4に切り換える次のタップ切換指令が与えられると、
図15(E)に示すように偶数タップ選択器TSeがタップt2につながる固定接点から離れた瞬間にタップ選択器TSeとタップt2につながる固定接点との間にアークAが発生し、変圧器が損傷する事故が発生する。
【0022】
本発明の目的は、タップ切換時に万一切換開閉器が動作することができない不具合が生じたときに、事故が発生するのを防ぐことができる負荷時タップ切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、操作器の出力軸に絶縁駆動軸を介して連結されて操作器により回転駆動される中心軸と、中心軸により駆動されて変圧器のタップ巻線のタップを選択する動作を行うタップ選択装置と、タップ選択装置が選択するタップを切り換える過程で負荷電流を流すタップを、切り換え前のタップから切り換え後のタップに切り換える切換開閉器と、中心軸の回転に伴ってバネを蓄勢する蓄勢機構と中心軸が設定角度回転するまでの間バネを蓄勢された状態にラッチし、中心軸が設定角度回転したときにバネのラッチを解除するラッチ機構とラッチ機構によるバネのラッチが解除されたときに生じるバネの変位を回転変位に変換して回転駆動軸に伝達する変位伝達機構とを有する蓄勢駆動機構とを備えて、回転駆動軸がバネの付勢力により駆動されて回転する間に切換開閉器の切換動作が行われるように構成された負荷時タップ切換装置を対象とする。
【0024】
本発明においては、ラッチ機構によるバネのラッチを解除しても回転駆動軸が回転することができない機械的な障害が発生しているときに、中心軸の回転を阻止するストッパ機構が設けられ、ストッパ機構により中心軸の回転が阻止された状態で操作器から駆動力が与えられたときに破損するように強度が設定された機械的弱点部が、操作器から蓄勢機構に動力を伝達する動力伝達経路に設けられている。
【0025】
上記のように構成すると、ラッチ機構によるバネのラッチを解除しても回転駆動軸が回転することができない機械的な障害が発生したときに、操作器から蓄勢機構に動力を伝達する動力伝達経路に設けられた機械的弱点部を破損させて、タップ選択装置に駆動力が与えられるのを阻止することができるため、切換開閉器が動作することができない状態でタップ選択装置がタップ選択動作を行なうのを防いで、事故が発生するのを防ぐことができる。
【0026】
本発明の好ましい態様では、上記蓄勢駆動機構が、対向配置されて一方向及び他方向にスライド変位し得るように支持された第1及び第2のスライダと、中心軸の回転に伴って第1のスライダを往復変位させるべく中心軸の回転を第1のスライダに伝達するカム機構と、第1のスライダと第2のスライダとの間に設けられて第1のスライダが一方向及び他方向にそれぞれ変位する過程で蓄勢されて第2のスライダを一方向及び他方向に付勢するバネと、第1のスライダが一方向及び他方向にそれぞれ変位する過程で第1のスライダが設定位置に達するまでの間バネを蓄勢するために第2のスライダをラッチし、第1のスライダが設定位置に達したときに第2のスライダのラッチを解除するラッチ機構と、第2のスライダのラッチを解除した際にバネの付勢力により生じる第2のスライダの変位を回転変位に変換して切換開閉器に操作力を与える回転駆動軸に伝達する変位伝達機構とを備えて、第2のスライダが変位を完了する間に切換開閉器の切換動作が行われるように構成される。
【0027】
この場合、ストッパ機構は、中心軸に機械的に結合されて中心軸と共に回転する第1のストッパと、第2のスライダの変位方向に間隔を開け、かつ第2のスライダに機械的に結合されて第2のスライダと共に変位する一対の第2のストッパとを備えて、第1のストッパが一対の第2のストッパの何れかに接することにより中心軸の回転を阻止するように構成される。
【0028】
上記のようにストッパ機構を構成する場合、第1のスライダが一方向及び他方向にそれぞれ変位する過程でラッチが解除された第2のスライダが、切換開閉器に1回の切換動作を行わせるために必要な規定の変位を完了したときには第1のストッパと第2のストッパとが接することがないが、ラッチが解除された第2のスライダが規定の変位を完了することができなかったときには第1のスライダの変位が完了するまでの間に第1のストッパが一対の第2のストッパの何れかに接して中心軸の回転を阻止した状態になるように第1のストッパと一対の第2のストッパとの位置関係が設定され、ストッパ機構により中心軸の回転が阻止された状態で操作器から駆動力が与えられたときに破損するように強度が設定された機械的弱点部が、操作器から蓄勢機構に動力を伝達する動力伝達経路に設けられる。
【0029】
本発明の好ましい態様では、上記カム機構が、中心軸に取り付けられて中心軸とともに回転するカム板と、第1のスライダに固定されてカム板に接触させられたカム従動子とを備えて、カム板の回転に伴って第1のスライダを往復変位させるように構成される。また第1のストッパはカム板に固定され、第2のストッパは第2のスライダに固定される。
【0030】
本発明の好ましい態様では、上記機械的弱点部が、絶縁駆動軸又は中心軸に設けられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明においては、ラッチ機構によるバネのラッチを解除しても切換開閉器を動作させることができない機械的な障害が発生したときに中心軸の回転を阻止するストッパ機構を設けるとともに、ストッパ機構により中心軸の回転が阻止された状態で操作器から駆動力が与えられたときに破損するように強度が設定された機械的弱点部を操作器から蓄勢機構に動力を伝達する動力伝達経路に設けたので、切換開閉器を動作させることができない機械的な障害が発生したときに、機械的弱点部を破損させて、タップ選択装置に駆動力が与えられるのを阻止することができる。従って、本発明によれば、バネのラッチを解除しても切換開閉器を動作させることができない機械的な障害が発生したときに、タップ選択装置がタップ選択動作を行なうのを防いで、事故が発生するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1ないし
図8は、本発明の実施形態で用いる蓄勢駆動機構1の構成を示したものである。これらの図において、
図16ないし
図18に示された従来の蓄勢駆動機構の各部と同等の部分には、
図16ないし
図18に示された符号と同一の符号を付してある。
【0034】
図1ないし
図8において、2はフレーム、4及び5はそれぞれ対向配置されてフレーム2にスライド自在に支持された第1のスライダ及び第2のスライダ、6は第1のスライダ4の変位に伴って蓄勢されて第2のスライダ5を付勢するバネである。本実施形態では、一対のバネ6,6が設けられて、これらのバネが、第1及び第2のスライダ4及び5のスライド方向に対して直角な方向に並べて配置されている。
【0035】
また
図2及び
図6に示された7は、フレーム2を間にして第2のスライダ5と反対側に配置された中空の回転駆動駆動軸、8は第1のスライダ4に設けられた長孔4aと第2のスライダ5に設けられた長孔5aとフレーム2に設けられた窓部2aと回転駆動軸7の中空部とを貫通した状態で設けられた中心軸である。また
図2及び
図4に示された10は、中心軸8の回転を往復直線変位に変換して第1のスライダ4に伝達するカム機構、
図5及び
図6に示された11はラッチ機構、12は第2のスライダ5のスライド変位を回転変位に変換して回転駆動軸7に伝達する変位伝達機構である。
【0036】
図示のフレーム2は、矩形板状の底板部201と、底板部201の両端から起立した、相対する一対の起立壁部202,203とを備えていて、中心軸8と回転駆動軸7とを貫通させるための窓部2aが底板部201に形成されている。
【0037】
第1のスライダ4は、ほぼ正方形の天井部401と該天井部401の四辺に沿って形成された側壁部402とを一体に有する箱形のケースの形状に形成され、第2のスライダ5は、長方形状の底壁部501と該底壁部501の四辺に沿って形成された側壁部502とを一体に有する箱形のケースの形状に形成されている。第1のスライダ4及び第2のスライダ5は、それぞれの天井部401及び底壁部501を互いに反対側に向けた状態で(それぞれの開口部を相手側に向けた状態で)対向配置されている。
【0038】
図8に示されているように、第1のスライダ4の長手方向の一端側及び他端側には、該スライダの側壁部402の開口端から第2のスライダ5側に突出した第1のバネ駆動部402aと第2のバネ駆動部402bとが、第1のスライダ4の幅方向に間隔をあけて形成されている。第1のスライダ4の長手方向の一端側及び他端側にそれぞれ形成された第1のバネ駆動部402a,402aは、第1のスライダ402の長手方向に相対するように設けられていて、これら第1のバネ駆動部402a,402aを貫通させた状態でスラスト軸受け42,42が取り付けられ、これらの軸受けをスライド自在に貫通させてガイド棒14aが設けられている。
【0039】
第1のスライダ4の長手方向の一端側及び他端側にそれぞれ形成された第2のバネ駆動部402b,402bも第1のスライダ402の長手方向に相対するように設けられていて、これら第2のバネ駆動部402b,402bに取り付けられた軸受け42をスライド自在に貫通させて、ガイド棒14aと平行に伸びるガイド棒14bが設けられている。
【0040】
第1のスライダ4は、フレーム2の起立壁部202と203との間に配置され、ガイド棒14a及び14bのそれぞれの一端がフレーム2の一方の起立壁部202に固定されるとともに、ガイド棒14a及び14bのそれぞれの他端が、フレーム2の他方の起立壁部203に固定されている。第1のスライダ4は、ガイド棒14a及び14bを介してフレーム2の起立壁部202,203にスライド自在に支持されている。
【0041】
またガイド棒14a,14bの内側をこれらのガイド棒と平行に伸びるガイド棒15a,15bが、第2のスライダ5の側壁部502をスライド自在に貫通した状態で設けられ、これらのガイド棒15a,15bの一端及び他端がフレーム2の起立壁部202及び203に固定されることにより、第2のスライダ5がフレーム2にスライド自在に支持されている。
【0042】
第1のスライダ4及び第2のスライダ5のスライド変位を妨げないようにするため、第2のスライダ5の側壁部502には、第1のスライダ4に設けられた第1のバネ駆動部402a,402aをそれぞれ容易に通過させ得る大きさを有する切り欠き部502a,502aと、第2のバネ駆動部402b,402bを容易に通過させ得る大きさを有する切り欠き部502b,502bとが形成されている。
【0043】
第2のスライダ5の内側には、第1のスライダ4をガイドするガイド棒14a,14bの周囲を両ガイド棒の軸線方向に沿ってらせん状に伸びる一対のバネ6,6が設けられている。ガイド棒14aに沿って設けられたバネ6の一端は、ガイド棒14aにスライド自在に嵌合されたスリーブ状のバネ受け部材41を介して、第2のスライダ5の一端側に設けられた切り欠き部502aの周縁部の内側に当接され、ガイド棒14aに沿って設けられたバネ6の他端は、ガイド棒14aにスライド自在に嵌合された他のバネ受け部材41を介して、第2のスライダ5の他端側に設けられた切り欠き部502aの周縁部の内側に当接されている。
【0044】
またガイド棒14bに沿って設けられたバネ6の一端は、ガイド棒14bにスライド自在に嵌合されたバネ受け部材41を介して、第2のスライダ5の一端側に設けられた切り欠き部502bの周縁部の内側に当接され、ガイド棒14bに沿って設けられたバネ6の他端は、ガイド棒14bにスライド自在に嵌合された他のバネ受け部材41を介して、第2のスライダ5の他端側に設けられた切り欠き部502bの周縁部の内側に当接されている。
【0045】
中心軸8は、タップ切換指令が与えられたときに、図示しない電動操作器により絶縁駆動軸9を介して駆動されて、一方向及び他方向に180度ずつ間欠的に回転駆動される。電動操作器は、タップを昇圧側に切り換える際に中心軸8を一方向に回転させ、タップを降圧側に切り換える際に中心軸8を他方向に回転させる。
【0046】
中心軸8の回転に伴って第1のスライダ4を往復変位させるため、中心軸8の回転を往復直線変位に変換して第1のスライダ4に伝達するカム機構10(
図2、
図4参照)が設けられている。
【0047】
カム機構10は、ガイド棒14a,14a,15a,15bの長手方向に対して直角な方向に長手方向を向けた状態で平行に配置されて第1のスライダ4の天井板401の内側に固定された一対の四角柱状のカム従動子16,16と、中心に対して偏心した位置に回動中心を位置させた状態で中心軸8に結合された円板状のカム板17とからなっている。カム板17は、その外周面をカム従動子16,16の相対する側面に接触させた状態でカム従動子16,16の間に配置されている。図示の例ではカム板17にボス部材18が取り付けられて、ボス部材18に中心軸8(
図2参照)の一端が結合されている。また図示しない電動操作器により駆動される絶縁操作軸9(
図2参照)の先端がボス部材18にピン50を介して結合されている。カム機構10は、カム板17が一方向に180度回転する間に第1のスライダ4をガイド棒14a,14bの長手方向に沿って一方向に一定距離だけ変位させ、カム板17が一方向に更に180度回転する間に、第1のスライダ4をガイド棒14a,14bの長手方向に沿って他方向に一定距離だけ直線変位させるように構成されている。
【0048】
カム機構10が
図1ないし
図4に示された状態にあるときに、中心軸8を一方向に回転させると、第1のスライダ4が
図1及び
図3において右方向にスライドする。このスライド変位の過程で、第1のスライダ4の一端側のバネ駆動部402a及び402bが一方のバネ受け部材41,41を押して右方向に変位させるため、バネ6,6が圧縮される。中心軸8の回転角度が180度に達すると、第1のスライダ4の右方向への変位が終了する。中心軸8を更に回転させると、第1のスライダ4が今度は図面上左方向にスライドし、第1のスライダ4の他端側のバネ駆動部402a及び402bが他方のバネ受け部材41,41を押して左方向に変位させることにより、バネ6,6を圧縮する。第1のスライダ4の右方向へのスライド量及び左方向へのスライド量は、カム機構10の構成により決まる。
【0049】
第1のスライダ4のスライド変位に伴ってバネ6,6が圧縮されると、これらのバネ6,6の付勢力により、第2のケース5が、第1のスライダ4の移動方向と同方向に付勢される。本実施形態では、第1のスライダ4に設けられたバネ駆動部402a,402bと、バネ6,6の両端を受け止めるバネ受け部材41a,41bとにより、第1のスライダ4が一方向及び他方向にスライド変位する過程でバネ6,6を蓄勢する蓄勢機構が構成されている。
【0050】
変位伝達機構12は、
図6に示されているように回転駆動軸7に固定されたクランク板20と、第2のスライダ5の底面に固定された駆動板21と、中心軸8に対して偏心した位置で一端及び他端がそれぞれ駆動板21及びクランク板20に結合されて、駆動板21とクランク板20との間を連結するピン22とからなっている。ピン22は、駆動板21及びクランク板20の少なくとも一方に対して回転自在に設けられていて、駆動板21が第2のスライダ5とともにガイド棒15a,15bの長手方向に沿って一方の側にスライド変位したとき及び他方の側にスライド変位したときにそれぞれ、クランク板20が回転駆動軸7とともに一方向及び他方向に一定角度回転させられるようになっている。クランク板20の回動範囲及び第2のスライダ5のスライド範囲を規制するため、ストッパ31がフレーム2に対して固定され、クランク板20の一端20a及び他端20bがストッパ31に当接してその変位が妨げられることにより、クランク板20の回動範囲及び第2のスライダ5のスライド範囲が一定の範囲に規制されるようになっている。ストッパ31には、クランク板20が当接した際に生じる衝撃を緩和する緩衝手段が設けられている。
【0051】
ラッチ機構11は、第1及び第2のスライダ4及び5のスライド方向に間隔をあけて配置されて、フレーム2に対して回動自在に支持された一対のラッチレバー25,26と、これらのレバーに回動自在に支持されたアーム27,28と、アーム27,28の先端に取り付けられたラッチローラ27a,28aと、ラッチローラ27a,28aをそれぞれ係合させるためにクランク板20の外周に形成された凹部20a,20bと、ラッチレバー25,26を互いに引き寄せる方向に付勢する復帰バネ(図示せず。)と、アーム27,28をクランク板20側に付勢するバネ(図示せず。)と、第1のスライダ4に一体に設けられたラッチ解除部材30とからなっている。
【0052】
ラッチ解除部材30は、第1のスライダ4が一方向及び他方向にそれぞれ変位する過程で設定位置(バネ6,6の蓄勢が完了する位置)まで変位したとき(中心軸8が設定角度回転したとき)に、一対のラッチレバー25,26にそれぞれ設けられた解除部材係合部25a,26a(
図5参照)に接するように設けられている。ラッチ解除部材30は、解除部材係合部25a,25bに接した後、第1のスライダ4とともに変位してラッチレバー25,26の解除部材係合部25a,26aを押すため、ラッチレバー25,26が復帰バネの付勢力に抗して回動する。これにより、ラッチローラ27a,28aがクランク板20の外周の凹部20a,20bから外れて、第2のスライダ5のラッチが解除される。第1のスライダ4の設定位置(バネ6,6の蓄勢を完了し、第2のスライダ5のラッチを外す位置)は、第1のスライダ4の変位量が、カム機構10の構成により決まる最大変位量に達する位置の直前の位置に設定される。
【0053】
中心軸8は、図示しない軸受けにより負荷時タップ切換装置のフレーム(図示せず。)に対して回転自在に支持されている。中心軸8は、ボス部18に結合された絶縁操作軸9(
図2参照)を介して図示しない電動操作器に連結されて、タップ切換指令が与えられる毎に、電動操作器により駆動されて、一方向又は他方向に、1回当たり180度ずつ回転駆動される。中心軸8は、タップを昇圧側に切り換える際に一方向(例えば反時計方向)に回転駆動され、タップを降圧側に切り換える際に他方向(例えば時計方向)に回転駆動される。
【0054】
中心軸8が一方向又は他方向に180度回転する過程で、カム機構10の働きにより第1のスライダ4が一方向又は他方向にスライドし、この第1のスライダのスライド変位によりバネ6,6が蓄勢される。バネ6,6の蓄勢が完了する位置(第1のスライダ4の変位量が最大になる位置の直前の位置)に設定された設定位置まで第1のスライダ4がスライドすると、ラッチ機構11が第2のスライダ5のラッチを外すため、バネ6,6の付勢力により、第2のスライダ5が第1のスライダ4のスライド方向と同じ方向に素早くスライド変位する。この第2のスライダ5のスライド変位により、クランク板20が一方向又は他方向に回動させられる。
【0055】
回転駆動軸7を貫通した中心軸8は、図示しないタップ選択装置の操作軸に歯車機構などを介して結合されている。タップ選択装置は、中心軸8が一方向に回転する過程で、奇数タップ選択器によるタップ選択動作と、偶数タップ選択器によるタップ選択動作とを交互に行なって、タップを昇圧側に切り換え、中心軸8が他方向に回転する過程で、奇数タップ選択器によるタップ選択動作と、偶数タップ選択器によるタップ選択動作とを交互に行なって、タップを降圧側に切り換えるように構成されている。
【0056】
回転駆動軸7は、切換開閉器の操作部に歯車機構などを介して結合されていて、第2のスライダ5により駆動されて回動させられる際に、切換開閉器の切換動作を所定のシーケンスで行なわせる。
【0057】
以上の蓄勢駆動機構の構成は、従来のこの種の負荷時タップ切換装置に設けられていた蓄勢駆動機構の構成と同様であるが、本発明では、切換開閉器がロック状態になる等の機械的な障害が発生したり、ラッチ機構11が破損して第2のスライダ5のラッチ(バネ6のラッチ)を外すことができなくなったりして、第2のスライダ5がバネの付勢力により変位することができなくなったときに、次のタップ切換が行なわれて、タップ選択器とタップにつながる固定接点との間にアークが発生する事故を防止するために、操作器から蓄勢機構に動力を伝達する動力伝達経路の一部を破損させるための手段を設けて、切換開閉器が正常に動作しない状態が生じたときに、タップ選択装置のタップ選択動作が行なわれることがないようにする。
【0058】
そのため、本実施形態では、ラッチ機構によるバネ6,6のラッチを解除しても回転駆動軸が回転することができない機械的な障害が発生しているときに中心軸の回転を阻止するストッパ機構50を設けるとともに、このストッパ機構により中心軸8の回転が阻止された状態で操作器から駆動力が与えられたときに破損して動力の伝達を断つように強度が設定された機械的弱点部9a(
図2参照)を絶縁駆動軸9に設けている。図示の例では、絶縁駆動軸9の一部に径が縮小された部分を設けて、この径が縮小された部分を機械的な弱点部9aとしている。
【0059】
更に詳細に説明すると、ストッパ機構50は、中心軸8に機械的に結合されて中心軸8と共に回転する第1のストッパ51と、第2のスライダ5の変位方向に間隔を開け、かつ第2のスライダ5に機械的に結合されて第2のスライダ5と共に変位する一対の第2のストッパ52,52とを備えていて、第1のスライダ4がスライド変位する過程でラッチを外しても第2のスライダ5が変位しないときに、第1のストッパ51が一対の第2のストッパ52,52の何れかに接することにより中心軸8の回転を阻止するように構成されている。
【0060】
図示の例では、カム板17の第2のスライダ5側の面に第1のストッパ51が取り付けられている。図示の第1のストッパ51は、軸線を中心軸8の軸線と平行させ、かつ第2のスライダ5側に突出させた状態で、カム板17の回動中心から離れた位置に固定されたピンからなっている。
【0061】
また第2のスライダ5の長手方向(ガイド棒の軸線に沿う方向)の一端及び他端に一対の第2のストッパ52,52が固定されている。そして、第1のスライダ4が一方向及び他方向にそれぞれ変位する過程でラッチが解除された第2のスライダ5が切換開閉器に1回の切換動作を行わせるために必要な規定の変位を完了したときには第1のストッパ51と第2のストッパ52とが接することがないが、ラッチが解除された第2のスライダ5が動くことができなかったとき又は規定の変位を完了することができなかったときには、第1のスライダ4を変位させている中心軸8の回転が終了するまでの間に第1のストッパ51が一対の第2のストッパ52,52の何れかに接して中心軸8の回転を阻止した状態になるように、第1のストッパ51と一対の第2のストッパ52,52との位置関係が設定されている。
【0062】
以下
図9ないし
図12に示した動作説明図を参照して、本実施形態で用いる蓄勢駆動機構1の動作を説明する。
図9(A)ないし(D)は、奇数タップまたは偶数タップが選択されて変圧器が運転されている状態で、タップ切換指令が与えられる前の蓄勢駆動機構1の各部の状態をまとめて示している。
図9(A)ないし(D)に示された状態は、
図1ないし
図8に示された状態と同じである。
【0063】
この状態でタップ切換指令が与えられると、中心軸8が
図1及び
図3において例えば反時計方向に回転させられる。このとき、中心軸8の回転に伴ってカム板17が反時計方向に回転し、
図10に示されているように、第1のスライダ4が図面上右方向にスライド変位する。この第1のスライダ4のスライド変位に伴ってバネ6,6が圧縮される。このときバネ6,6により第2のスライダ5が付勢されて図面上右方向に変位しようとするが、ラッチ機構によりクランク板20の回転が阻止されていて、クランク板28にピン22を介して連結されている第2のスライダ5の変位も阻止されて(第2のスライダ5がラッチされて)いるため、第2のスライダ5は停止した状態を保持している。そのため、第1のスライダ4の変位に伴ってバネ6が蓄勢されていく。
【0064】
第1のスライダ4が右方向に変位していく過程で、その変位量が最大値に達する位置(中心軸8が180度回転したときの位置)の直前の位置に設定された設定位置に達すると、第1のスライダ4に設けられたラッチ解除部材30がラッチ機構11のラッチレバー25の解除部材係合部25aを押して、該一方のラッチレバー25の先端をクランク板の外周に設けられた凹部20aから外す。これにより、第2のスライダ4のラッチが解除されるため、
図11に示すように、バネ6の付勢力により、第2のスライダ4が図面上右方向に素早くスライド変位させられる。
【0065】
第2のスライダ4のスライド変位は、変位伝達機構12により回転変位に変換されて回転駆動軸7に固定されたクランク板20に伝達されるため、クランク板20が回転駆動軸7とともに図面上反時計方向に回転させられる。この回転駆動軸7の回転により、例えばタップを奇数側のタップから偶数側のタップに切り換える際の切換開閉器の一連の切換動作が行なわれる。
【0066】
図12は、第1のスライダ4が図面上右方向に変位する過程で、第1のスライダ4が設定位置(バネ6の蓄勢が完了する位置)に達して、第2のスライダ5のラッチが解除されたが、切換開閉器側に生じている機械的な障害により、回転駆動軸7が回転することができないために、第2のスライダ5が右方向に動くことができなかった状態を示している。この状態では、第2のスライダ5が変位することができず、第1のストッパ51と一方の第2のストッパ52との間の距離が短くなっているため、中心軸8が180度の回転を終了するまでの間に、第1のストッパ51が一方の第2のストッパ52(
図12に示した例では右側に設けられた第2のストッパ52)に当接して中心軸8の回転を阻止した状態になる。
【0067】
図13(A)ないし(C)は、ストッパ機構50の第1及び第2のストッパ51及び52と第2のスライダ5との位置関係を示している。この例では、第2のスライダ5が、バネの付勢力により図面上左方向に変位させられるものとしている。
図13(A)は、第2のスライダ5が第1のスライダ4とともに
図1に示された初期位置にある状態を示している。また
図13(B)は、切換開閉器が正常に動作して第2のスライダ5がそのストロークの最終位置まで変位した状態を示し、
図13(C)は、切換開閉器に機械的障害が発生していて第2スライダ5がラッチを外されても変位することができないために、ラッチされているときの位置にとどまっている状態を示している。
【0068】
切換開閉器の動作が正常に行なわれたときには、第2のスライダ5がそのストロークの最終位置まで変位するため、
図13(B)に示すように、第2のスライダ5に固定された第2のストッパ52は、中心軸8とともに回動してくる第1のストッパ51に当接しない位置まで変位させられる。従って、切換開閉器が正常に動作するときには、ストッパ機構50が働くことはなく、切換開閉器の切換動作及びタップ選択装置のタップ選択動作が支障なく行なわれる。
【0069】
これに対し、切換開閉器が動作できない状態にあって、第2のスライダ5のラッチを外しても第2のスライダ5がスライドすることができないときには、
図13(C)に示すように、第2のスライダ5が変位できない状態にあるため、第1のスライダ4を駆動している中心軸8の回転に伴って回動してくる第1のストッパ51が第2のストッパ52に当接し、中心軸8の回転を妨げる。このとき絶縁駆動軸9にかかる負荷が増大して、その機械的弱点部9aに大きな力が加わるため、機械的弱点部9aが破損する。
【0070】
第2のスライダ5が
図1及び
図2において、右寄りの最終位置まで変位した状態で、次のタップ切換を行なう際には、カム機構10により、第1のスライダ4が図面上左側に変位させられるが、第1のスライダ4が図面上左側に変位する過程で、切換開閉器が動作できなくなって第2のスライダ5がラッチを外されても図面上左方向に変位することができなくなったときには、第1のストッパ51が
図1において、左側に配置されている第2のストッパ52に接して中心軸8の回転を妨げることにより、機械的弱点部を破損させる。
【0071】
このように、本実施形態においては、切換開閉器が動作できない状態になったときに、ストッパ機構50を動作させることにより絶縁駆動軸9にかかる負荷を増大させて絶縁駆動軸9の機械的弱点部9aを破損させるようにしたので、次のタップ切換指令が与えられても中心軸8は回転せず、タップ選択装置はタップ選択動作を行なうことができないため、切換開閉器が切換動作を行なわない状態で次のタップ切換が行なわれてタップ選択器とタップ巻線のタップにつながる固定接点との間にアークが発生するのを防止することができる。
【0072】
上記の実施形態では、絶縁駆動軸の一部の断面積を小さくすることにより機械的弱点部9aを構成したが、絶縁駆動軸9または中心軸8の一部の材質を異ならせたり、断面形状を異ならせたりする(例えば応力の集中が生じ易い形状とする)ことにより、機械的弱点部を構成するようにしてもよい。
【0073】
上記の実施形態では、ストッパ機構により中心軸8の回転が阻止された状態で該中心軸に駆動力が与えられたときに破損するように機械的強度が設定された機械的弱点部を、絶縁駆動軸9に設けたが、機械的弱点部は、操作器から蓄勢機構に動力を伝達する動力伝達経路に設けられていればよく、他の部分、例えば中心軸8に機械的弱点部を設けてもよい。また絶縁駆動軸9と中心軸8との連結部(ボス部材18)を、大きな負荷がかかったときに破損して動力の伝達を断つように構成して、絶縁駆動軸9と中心軸8との連結部を機械的弱点部とするようにしてもよい。また、大きな負荷がかかったときに破損するような機械的強度を有する部材をボス部材18と絶縁駆動軸9との間に介在させることにより機械的弱点部を構成してもよい。例えば、絶縁駆動軸9とボス部材18とを連結するピン50を機械的弱点部としてもよい。
【0074】
本発明を適用する負荷時タップ切換装置の構成は、上記の実施形態で示したものに限定されるものではない。例えば、切換スイッチSWを複数の真空バルブを用いて構成する場合にも本発明を適用することができる。本発明は、操作器により駆動される中心軸の回転によりタップ選択装置を動作させるとともに、当該中心軸の回転によりバネが蓄勢される蓄勢駆動機構を用いて切換開閉器を速動させるように構成される負荷時タップ切換装置に広く適用することができる。
【0075】
上記の実施形態では、第1のスライダ4をガイドするガイド棒14a,14bの内側に第2のスライダ5をガイドするガイド棒15a,15bを並べて配置したが、第1のスライダ4をガイドするガイド棒14a,14bを並べて配置し、第1のスライダ4をガイドするガイド棒14a,14bの外側に第2のスライダ5をガイドするガイド棒15a,15bを配置するようにしてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、バネ6,6を蓄勢する第1のスライダ4をガイドするガイド棒14a,14bにバネ6,6を装着したが、第2のスライダ5をガイドするガイド棒15a,15bにバネ6を装着するようにしてもよい。この場合には、バネ6,6の両端を当接させたバネ受け部材41、41をガイド棒15a,15bにスライド自在に嵌合させておき、第1のケース4に設けたバネ駆動部を、第2のケースに設けた切り欠き部を通して、第1のケース4のスライド方向の後方側に配置されたバネ受け部材に当接させることにより、バネを蓄勢するようにすればよい。また第1のスライダ及び第2のスライダをそれぞれガイドするガイド手段(上記の例ではガイド棒14a,14b,15a,15b)とは別個に設けたガイド棒に沿ってバネ6を設けるようにしてもよい。
【0077】
上記の実施形態では、第1のスライダ及び第2のスライダが直線変位を行なうように蓄勢駆動機構が構成されているが、回転変位するように支持された第1のスライダ及び第2のスライダの間に第2のスライダを付勢するバネを設けて、第2のスライダをラッチした状態で第1のスライダを一定角度回転させる過程でバネを蓄勢し、バネの蓄勢が完了したときに第2のスライダのラッチを外して第2のスライダをバネの付勢力により回転させるようにした蓄勢駆動機構を用いる場合にも本発明を適用することができる。