【実施例】
【0009】
<1>全体の構成。
本発明の壁面パネル2の取り付け構造は、建築物の壁面に支持材1を取り付け、その支持材1にパネル2を「ケンドン式」に落とし込む方法で取り付けるものである。
【0010】
<2>支持材1。
支持材1は鉛直の固定板11から水平方向に水平支持板12を突設してある。
この水平支持板12の先端には、水平支持板12と直交する方向に、鉛直係止板13が取り付けてある。
この水平支持板12と、鉛直係止板13とによって、水平支持板12の上側には敷居溝14を形成することができる。
またこの水平支持板12と鉛直係止板13とによって、水平支持板12の下側には鴨居溝15を形成することができる。
この鴨居溝15には、パネル2の上縁を斜めに差し込んで、水平支持板12よりも下側から、パネル2を取り付けるものである。
一方、敷居溝14は、鴨居溝15に余裕をもって差し込んだパネル2を落とし込んで嵌合するための溝である。
【0011】
<3>パネル。
パネル2は、基本的には長方形の板体であり、例えばガラス繊維で補強したモルタル板で構成する。
その他、多数の種類のパネル2が製造、販売されているので、いずれのパネル2でも本発明の構成を採用することができる。
【0012】
<4>係合溝。
パネル2の上縁には、長手方向に平行に係合溝21を刻設する。
係合溝21の深さは、鴨居溝15の鉛直係止板13の高さよりも深く形成する。
そして係合溝21の両側には平行に係合縁22と保護縁23を形成する。
すなわち、パネル2の上縁に溝を刻して係合溝21を形成した結果、その一側には係合縁22が突設した状態で残り、係合溝21の他側には、保護縁23が突設した状態で残ることになる。
パネル2の上縁に溝を刻設したものであるから、係合溝21の溝底から係合縁22と保護縁23頂部までの高さがほぼ同一となる。
【0013】
<5>係合縁。
この係合縁22は、前記した従来例の差込縁bと同様の機能を果たすものである。
すなわちパネル2を設置する場合に、パネル2の上縁が下辺よりも鴨居溝15に近づくように斜めに位置させて、係合縁22を、支持材1の鴨居溝15に斜め下から差し込み、その後にパネル2を敷居溝14内に静かに落とし込んで取り付けるものである。
パネル2の上縁の係合縁22が余裕を持って鴨居溝15の内部に挿入できるように、鴨居溝15の溝幅は、係合縁22の厚さよりも十分に広く設定しておく。
【0014】
<6>保護縁。
上記のように、パネル2の設置のためには、パネル2の厚さに比較して十分に薄い係合縁22だけがあればその機能を果たすことができ、従来のパネル2はそのような構成であった。
しかし本願発明のパネル2では、係合溝21を挟んで、薄い係合縁22と平行に、別に保護縁23を備えている。
そのために、パネル2の運搬、あるいは足場上での取り付け作業中で、パネル2が障害物に衝突した場合に、この保護縁23が衝突することによって、パネル2の取り付け機能からはきわめて重要な部材である係合縁22の破損を阻止することができる。
【0015】
<7>係合溝の排水。
上下のパネル2間には目地が発生するが、この目地を目地材で埋める場合もあり、埋めない場合もある。
目地を埋めない場合には上のパネル2と下のパネル2との間から係合溝21の溝内に雨水が浸入する。
この雨水はパネル2の側面から垂れ流せば問題がない。
この場合に係合溝21からの排水を迅速に促進することもできる。
そのために例えば1枚のパネル2において、係合溝21の中心部では溝を浅く、周辺では溝を深く形成する。
すると係合溝21の底面は、パネル2の中心部からパネル2の両側面に向けてなだらかに下り坂状の斜面を形成することになるので、係合溝21に集まった雨水を迅速に排水することができる。
あるいはパネル2の製造時にその内部に鉛直方向に縦パイプを埋設しておき、その縦パイプの上端を係合溝21の底で開放し、縦パイプの下端をパネル2の底部で開放しておく構成を採用することもできる。
【0016】
<8>パネルの下縁。
パネル2の下縁にも、長手方向に平行に上向きに係合溝24を形成してある。
このようにパネル2の下縁に上向きに溝を刻して係合溝24を形成した結果、その一側には係合縁25が突設した状態で残り、係合溝24の他側には、保護縁26が突設した状態で残ることになる。
その際に保護縁26は、係合縁25よりも下方に突出した状態で構成する。
すると、係合溝24を支持材1の鉛直係止板13に挿入することによって、パネル2下縁の係合縁25を、支持材1の敷居溝14の中に収納することができる。
そのためには、持ち上げた状態のパネル2を鉛直に静かに落とせばよい。
【0017】
<9>パネルの揺れ止め。
上記したようにケンドン式の取り付け方法は、パネル2を斜め下方から、上段の鴨居溝15に差し込み、その後にパネル2を鉛直にして下縁を下段の敷居溝14に差し込む構造であるから、パネル2の上縁の係合縁22、係合溝21と、鴨居溝15との寸法には多少の余裕が必要である。
そのために取り付けが簡単である一方、パネル2の上縁ではガタつきが発生しやすい。
そのために支持材1の鴨居溝15の建築物側と、パネル2上縁の係合縁22の建築物側との間に、
図3に示すように揺れ止め材3として例えば防振ゴムを介在させる。
この揺れ止め材3としての防振ゴムは、長尺の棒状体であり、支持材1に鴨居溝15と平行に取り付ける。
そのために支持材1の鴨居溝15の建築物側の壁面には、例えば断面がC字状の取付溝16を凹設し、揺れ止め材3としての防振ゴムの背面にはこの取付溝に嵌合する嵌合縁31を突設する。
こうして鴨居溝15の建築物側の壁面から、揺れ止め材3をパネル2側に突出させることで、パネル2と鴨居溝15の壁の間を充填してパネル2を常に支持材1の鉛直係止板13に圧着させることができ、パネル2のガタつきを阻止できる。
【0018】
<10>係合溝内の小段。
係合溝21はパネル2の上縁に切り込んだ溝であり、溝の両側は斜面になっているが、その建築物側の斜面には、溝底に
図3に示すように、平行に棚状の小段21aを設ける。
この小段21aの上面は、パネル2を支持材1に取り付けた場合に水平な面となり、支持材1の鉛直係止板13のほぼ真下に位置する。
そのために、風圧などでパネル2が持ち上げられた場合に、小段21aの上面が鉛直係止板13の下端に衝突してパネル2のそれ以上の上昇が阻止され、パネル2の外れや転落を防止することができる。
【0019】
<11>パネルのスライドの阻止。
パネル2は前記したように、鴨居溝15と敷居溝14の間にケンドン式に差し込んで設置したものであるから、外力によって鴨居溝15と平行に移動する可能性がある。
そこでパネル2とパネル2の間にはストッパ4を介在させる。(
図5)
このストッパ4は、パネル2間に設置する、弾性材からなる挟持体41と、この挟持体41と直交する位置にあって、支持材1に取り付けるための嵌合縁42によって構成する。
そのために支持材1の敷居溝14の建築物側の壁面には、例えば断面がC字状のストッパ取付溝17を形成し、ストッパの背面の嵌合縁42との嵌合が可能であるように形成する。
このストッパ4を使用し、敷居溝14の建築物側の壁面からストッパ4の挟持体41をパネル2間に突出させる。
その結果、ひとつのパネル2と隣接するパネル2との間に目地空間を形成した状態で、パネル2の水平移動を阻止することができる。
【0020】
<11>パネルの取扱い。
本発明のパネル2の取り付けに際しては、パネル2の下地水平に設置した上側の支持材1の鴨居溝15と、それと平行に水平に設置した下側の支持材1の敷居溝14の間にはめ込んで行う。
この作業は前記したようにケンドン式に、斜めにしたパネル2の上縁を鴨居溝15に嵌合し、その後、パネル2を鉛直にして下に落とし込むことでパネル2の下縁を敷居溝14の内部に設置することができる。
そのような作業は、通常は建築物の外面に沿って組み立てた足場の上で行うので効率のよくない作業となり、かつ狭い場所での作業となるためパネル2の運搬、取扱い中で、パネル2の端面を障害物にぶつける可能性が高い。
その場合に本発明のパネル2は、上縁に長手方向に刻設した係合溝21の外側に、係合縁22とは別に保護縁23を形成してある。
そのために、保護縁23の存在によって係合縁22が衝突で欠ける可能性を大幅に低下させることができ、信頼性の高い、運搬、設置が可能となった。