【実施例】
【0022】
次に、本実施形態の効果を確認するための実施例について説明する。
異形鉄筋1の雄ねじ部11にカプラー2の一端側を螺合し、このカプラー2の他端側をカプラー2の内径と同じ寸法の外径を有するPC用鋼棒を螺合した試験体を異形鉄筋、カプラー、PC鋼棒のサイズの異なる3種類を用意し、3種類の試験体について、それぞれ2個ずつ、合計6個の実施例を用意した。これらの6個の実施例1〜6について、一方向の引っ張り試験(試験体を0から規格降伏点になるまで引っ張り、破断させる)を実施した。さらに、前述の3種類の試験体の実施例7〜9に対して一方向の繰り返し試験(規格降伏点の0.02倍から0.95倍までの荷重を30回繰り返して破断させる)を実施した。異形鉄筋1は、その母材がSD390(規格降伏点が390N/mm
2)のものを用いる。なお、異形鉄筋1の焼入れ硬さHRCは34〜36である。
【0023】
引張試験は、「2007年版建築物の構造関係技術基準解説書(7)鉄筋継手性能判定基準1 の1 機械式 継手及び圧着継手性能判定基準」を参考に行った。
この試験で用いられる引張試験機は、上下のヘッドと、これらのヘッドの間に設けられる変位計とを備え、上ヘッドにPC鋼棒を固定し、下ヘッドに異形鉄筋を固定し、カプラー2の表裏面にそれぞれ歪みゲージを設け、この状態で、上下のヘッドを離隔した際に試験体が破断した際の引張強度、引張強さを求めた。
これに対して、比較例として、異形鉄筋の母材を実施例のサイズに合わせてそれぞれ2個ずつ、合計9個用意し、これらの比較例1〜9について、一方向引っ張り試験を実施した。この試験は前述の試験機を用いるもので、上下のヘッドに異形鉄筋部材の両端部を固定し、実施例1〜6と同様の試験を行った。
【0024】
[実施例1]
異形鉄筋1の鉄筋本体10の呼び名がD25、公称断面積が506.7mm
2、雄ねじ部11の呼び名がM22(P2.0)、有効断面積が311.65mm
2、平行部断面積が330.06mm
2である。異形鉄筋1の雄ねじ部11の長さは
47mmであり、このうち、ねじ部本体111の長さは38mmである。雄ねじ部11がカプラー2に螺合される長さは35mmであり、PC用鋼棒のねじ部がカプラー2に螺合される長さは35mmである。カプラー2は、その外径寸法が31.5mmであり、その軸方向長さが70mmである。
一方向引っ張り試験を実施し、その試験結果は、雄ねじ部11が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが375kNであり、引張強さjσbが1203.3N/mm
2であった。なお、jσb=jPb/(雄ねじ部の有効断面積)である。
[実施例2]
実施例1と同じ試験体であり、試験結果は、雄ねじ部11が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが381kNであり、引張強さjσbが1222.5N/mm
2であった。なお、jσb=jPb/(雄ねじ部の有効断面積)である。
【0025】
[実施例3]
異形鉄筋1の鉄筋本体10の呼び名がD32、公称断面積が794.2mm
2、雄ねじ部11の呼び名がM27(P2.0)、有効断面積が487.3mm
2、平行部断面積が510.70mm
2である。異形鉄筋1の雄ねじ部11の長さは52mmであり、このうち、ねじ部本体111の長さは43mmである。雄ねじ部11がカプラー2に螺合される長さは40mmであり、PC用鋼棒のねじ部がカプラー2に螺合される長さは40mmである。カプラー2は、その外径寸法が39.5mmであり、その軸方向長さが80mmである。
一方向の引っ張り試験を実施し、その試験結果は、雄ねじ部11の首下部が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが568kNであり、引張強さjσbが1112.2N/mm
2であった。jσb=jPb/(雄ねじ部の平行部断面積)である。
[実施例4]
実施例3と同じ試験体であり、試験結果は、雄ねじ部11の首下部が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが573kNであり、引張強さjσbが1122.0N/mm
2であった。jσb=jPb/(雄ねじ部の平行部断面積)である。
【0026】
[実施例5]
異形鉄筋1の鉄筋本体10の呼び名がD38、公称断面積が1140mm
2、雄ねじ部11の呼び名がM33(P2.0)、有効断面積が750.35mm
2、平行部断面積が779.31mm
2である。異形鉄筋1の雄ねじ部11の長さは63mmであり、このうち、ねじ部本体111の長さは54mmである。雄ねじ部11がカプラー2に螺合される長さは51mmであり、PC用鋼棒のねじ部がカプラー2に螺合される長さは51mmである。カプラー2は、その外径寸法が48mmであり、その軸方向長さが102mmである。
一方向の引っ張り試験を実施し、その試験結果は、雄ねじ部11の首下部が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが863kNであり、引張強さjσbが1107.4N/mm
2であった。jσb=jPb/(雄ねじ部の平行部断面積)である。
[実施例6]
実施例5と同じ試験体であり、試験結果は、雄ねじ部11の首下部が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが863kNであり、引張強さjσbが1107.4N/mm
2であった。jσb=jPb/(雄ねじ部の平行部断面積)である。
【0027】
[実施例7]
実施例1と同じ試験体であり、一方向繰り返し試験を実施した。その試験結果は、雄ねじ部11が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが370kNであり、引張強さjσbが1187.2N/mm
2であった。jσb=jPb/(雄ねじ部の有効断面積)である。
[実施例8]
実施例2と同じ試験体であり、試験結果は、雄ねじ部11の首下部が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが571kNであり、引張強さjσbが1118.1N/mm
2であった。jσb=jPb/(雄ねじ部の平行部断面積)である。
[実施例9]
実施例3と同じ試験体であり、試験結果は、雄ねじ部11の首下部が破断し、この破断時の試験体の引張強度jPbが859kNであり、引張強さjσbが1102.3N/mm
2であった。jσb=jPb/(雄ねじ部の平行部断面積)である。
【0028】
[比較例1]
異形鉄筋母材の呼び名がD25、公称断面積が506.7mm
2である。
一方向引っ張り試験を実施し、その試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが303kNであり、引張強さσbが598.0N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
[比較例2]
比較例1と同じ試験体であり、試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが302kNであり、引張強さσbが596.0N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
[比較例3]
比較例1と同じ試験体であり、試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが303kNであり、引張強さσbが598.0N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
【0029】
[比較例4]
異形鉄筋母材の呼び名がD32、公称断面積が794.2mm
2である。
一方向引っ張り試験を実施し、その試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが497kNであり、引張強さσbが625.8N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
[比較例5]
比較例4と同じ試験体であり、試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが498kNであり、引張強さσbが627.0N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
[比較例6]
比較例4と同じ試験体であり、試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが496kNであり、引張強さσbが624.5N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
【0030】
[比較例7]
異形鉄筋母材の呼び名がD38、公称断面積が1140mm
2である。
一方向引っ張り試験を実施し、その試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが734kNであり、引張強さσbが643.9N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
[比較例8]
比較例7と同じ試験体であり、試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが734kNであり、引張強さσbが643.9N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
[比較例9]
比較例7と同じ試験体であり、試験結果は、母材の途中位置が破断し、この破断時の引張強度Pbが733kNであり、引張強さσbが643.0N/mm
2であった。なお、σb=Pb/(異形鉄筋母材の公称断面積)である。
【0031】
実施例1〜9の試験結果を検討すると、いずれの実施例1〜9においても、破断がカプラー2ではなく異形鉄筋である。さらに、カプラー2の外径寸法の異形鉄筋1の母材の呼び径に対する比は1.3倍以内である。なお、実施例において、雄ねじ部11と鉄筋本体10とにR加工(湾曲加工)を施していない。そのため、異形鉄筋1の雄ねじ部11の根本(首下部)で破断したものと推測できるので、R加工を施していれば、強度が大きくなると推測できる。
実施例1〜6と比較例1〜9とを対比すると、破断時の引張強度が実施例1〜6が比較例1〜9に比べて大きいことがわかる(実施例1〜9では、雄ねじ部11で破断しても、その引張強度が比較例の異形鉄筋の母材に比べて高い)。
【0032】
異形鉄筋の母材として、呼び名がD25である実施例1,2と比較例1〜3とを比較すると、実施例1の引張強度jPbが375kN、実施例2の引張強度jPbが381kNであるのに対して、比較例1,3の引張強度Pbが303kN、比較例2の引張強度Pbが302kNと低いため、実施例1,2が比較例1〜3に対して機械的強度が大きい。例えば、実施例1の引張強度iPbの比較例1〜3の引張強度Pbに対する比率(iPb/Pb)は1.24であり、実施例2の引張強度iPbの比較例1〜3の引張強度Pbに対する比率(iPb/Pb)は1.26である。
同様に、呼び名がD32である実施例3,4と比較例4〜6とを比較すると、実施例1の引張強度jPbが568kN、実施例4の引張強度jPbが573kNであるのに対して、比較例4の引張強度Pbが497kN、比較例5の引張強度Pbが498kN、比較例6の引張強度Pbが496kNと低いため、実施例3,4が比較例4〜6に対して機械的強度が大きい。実施例3の引張強度iPbの比較例4〜6の引張強度Pbに対する比率(iPb/Pb)は1.14であり、実施例4の引張強度iPbの比較例4〜6の引張強度Pbに対する比率(iPb/Pb)は1.15である。呼び名がD38である実施例5,6と比較例7〜9とを比較すると、実施例5,6の引張強度jPbが863kNであるのに対して、比較例7,8の引張強度Pbが643.9kN、比較例9の引張強度Pbが643.0kNと低いため、実施例5,6が比較例7〜9に対して機械的強度が大きい。実施例5,6の引張強度iPbの比較例7〜9の引張強度Pbに対する比率(iPb/Pb)は1.18である。
【0033】
なお、本発明は、前述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記実施形態では、鉄筋を異形鉄筋1としたが、本発明では、丸鋼棒の鉄筋でもよい。また、本発明では、ナット部材3を省略してもよい。さらに、異形鉄筋1は直線状のものを例示したが、複数の主筋の周りに設けられるフープ筋として使用するために、平面矩形状や平面円形とした形状であってもよい。
【0034】
さらに、鉄筋1を製造するために、鉄筋用棒状体1Aの端部側を熱処理し、この熱処理された鉄筋用棒状体1Aの端部の径を他の部分の径より小さくし、この小さくした鉄筋用棒状体1Aの端部に雄ねじ部11を形成して異形鉄筋1を製造したが、本発明では、鉄筋用棒状体1Aの端部側に雄ねじ部11を形成し、その後、この雄ねじ部11を含む鉄筋用棒状体1Aの端部に熱処理をしてもよい。そして、熱処理も高周波加熱によるものに限定されるものではない。