【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係るエンジンシステムは、
混合気を燃焼室で圧縮して燃焼させ軸動力を出力するエンジンと、
エンジン負荷
に対応する目標回転数に応じて前記エンジンの出力を制御する出力制御を実行する制御手段とが備えられ、
前記制御手段は、前記エンジン負荷
に対応する目標回転数に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空燃比をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと前記燃焼室で燃焼する混合気の空燃比を前記ストイキ範囲よりも燃料が希薄なリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとに前記エンジンの燃焼モードを切替自在に構成されているエンジンシステムであって、
その第1特徴構成は、
前記制御手段は、
総積算運転量に対する前記ストイキ燃焼モードでの積算運転量に関するストイキ燃焼モード積算運転量の割合であるストイキ燃焼モード運転割合を認識可能な運転状態を監視すると共に、
前記ストイキ燃焼モードと前記リーン燃焼モードとの間で燃焼モードを切り替えるときの前記エンジン負荷
に対応する目標回転数の閾値である燃焼モード切替値を前記ストイキ燃焼モード運転割合に応じて補正する切替値補正処理を実行し、
前記切替値補正処理として、前記ストイキ燃焼モード運転割合が所定の設定割合よりも高い場合に前記燃焼モード切替値を上昇させる切替値上昇処理を実行し、前記ストイキ燃焼モード運転割合が所定の設定割合よりも低い場合に前記燃焼モード切替値を低下させる切替値低下処理を実行する点にある。
尚、本願において積算運転量とは、夫々の燃焼モードにおいて蓄積されるエンジンへ負担に関連する量を示し、例えば積算運転時間や、そのエンジン負荷の運転時間での積分値(即ち仕事量)等を、積算運転量とすることができる。
【0010】
本特徴構成によれば、制御手段が上記燃焼モード切替値を、総積算運転量に対するストイキ燃焼モード積算運転量の割合であるストイキ燃焼モード運転割合に応じて補正することで、ストイキ燃焼モード積算運転量とリーン燃焼モード積算運転量とのバランスを設計時での想定どおりの適切なものに近づけることができるので、効率やエミッションなどの性能面や寿命面において想定どおりの仕様を実現するべく適切な状態で燃焼モードの切り替えを行うことができる。
即ち、上記ストイキ燃焼モード運転割合が、設計時の適正値を過度に上回る場合には、上記燃焼モード切替値を高めに調整することで、エンジン負荷
に対応する目標回転数が低下しているときにはストイキ燃焼モードからできるだけ早いタイミングでリーン燃焼モードに切り替わり、逆に、エンジン負荷
に対応する目標回転数が上昇しているときにはリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへできるだけ遅いタイミングで切り替わる状態となって、リーン燃焼モードでの運転が積極的に行われることになる。よって、ストイキ燃焼モード運転割合が低下して適正な割合に近づき、寿命や効率の向上を図ることができる適正な状態に遷移することになる。
一方、上記ストイキ燃焼モード運転割合が、設計時の適正値を過度に下回る場合には、上記燃焼モード切替値を低めに調整することで、エンジン負荷
に対応する目標回転数が低下しているときにはストイキ燃焼モードからできるだけ遅いタイミングでリーン燃焼モードに切り替わり、逆に、エンジン負荷
に対応する目標回転数が上昇しているときにはリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへできるだけ早いタイミングで切り替わる状態となって、ストイキ燃焼モードでの運転が積極的に行われることになる。よって、ストイキ燃焼モード運転割合が上昇して適正な割合に近づき、三元触媒等によるエミッションの改善を図ることができる適正な状態に遷移させることができる。
さらに、切替値補正処理において上記切替値上昇処理を実行すれば、ストイキ燃焼モード運転割合が設定割合よりも高い場合には燃焼モード切替値が上昇して、リーン燃焼モードでの運転が積極的に行われることになるので、結果、ストイキ燃焼モード運転割合の設定割合超における更なる上昇が抑制され、寿命や効率の向上を重視した状態に維持することができる。
一方、切替値補正処理において上記切替値低下処理を実行すれば、ストイキ燃焼モード運転割合が設定割合よりも低い場合には燃焼モード切替値が低下して、ストイキ燃焼モードでの運転が積極的に行われることになるので、結果、ストイキ燃焼モード運転割合の設定割合未満における更なる低下が抑制され、三元触媒等によるエミッションの改善を重視した状態に維持することができる。
【0013】
本発明に係るエンジンシステムの第
2特徴構成は、上記第
1特徴構成に加え、
前記制御手段が、前記切替値補正処理において前記切替値低下処理を実行する場合に、当該切替値低下処理において前記燃焼モード切替値の設定範囲を所定の下限値以上に制限する点にある。
【0014】
エンジン負荷
に対応する目標回転数が比較的低い場合に燃焼モードをストイキ燃焼モードに設定すると、スロットルバルブの開度が極めて小さくなって燃焼室における燃焼温度が低くなるので、排ガス温度も低くなり、結果、三元触媒の排ガス処理能力が低下する場合がある。
そこで、本特徴構成によれば、切替値低下処理における燃焼モード切替値の下限値が設定されているので、エンジン負荷
に対応する目標回転数が燃焼モード切替値の下限値未満である場合には、燃焼モードがストイキ燃焼モードに切り替わることがなくなる。よって、ストイキ燃焼モードでの運転時においては、排ガス温度を常に三元触媒での必要温度以上に保つことができ、また、エンジン負荷
に対応する目標回転数がストイキ燃焼モードでは排ガス温度が同必要温度以下になる恐れがある下限値未満になる場合には、リーン燃焼モードに切り替えるなどして、他の手段によるエミッション改善を図ることができる。
【0015】
本発明に係るエンジンシステムの第
3特徴構成は、上記第
2特徴構成に加え、
前記エンジンからの排ガスが通流する排気路に排ガスが通過自在に設けられた三元触媒と、当該三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段とを備え、
前記制御手段が、前記ストイキ燃焼モードにおいて、前記触媒温度検出手段の検出結果に基づき点火時期を制御して前記触媒温度検出手段で検出される前記三元触媒の温度を所定温度以上に維持する点火時期昇温制御を実行する点にある。
【0016】
ストイキ燃焼モードにおいて点火時期を遅角化すると、効率低下に伴ってスロットルバルブの開度が増加するので、燃焼室の燃焼温度が高くなって、排ガス温度が高くなる。
そこで、本特徴構成によれば、ストイキ燃焼モードにおいて、点火時期昇温制御が実行されるため、エンジン負荷
に対応する目標回転数の低下に伴い三元触媒の温度が排ガスの処理能力を保つために必要な温度よりも低くなる恐れがある場合には、点火時期が遅角化されることで排ガス温度の低下が抑制されるので、三元触媒の排ガス処理能力の低下が解消され、エミッション改善が図られることになる。
よって、燃焼モード切替値の下限値をできるだけ低い値に設定して、例えば三元触媒等によるエミッションの改善を重視し、ストイキ燃焼モードでの運転を積極的に行うような状態で、燃焼モードの切替を行うことができる。
【0017】
本発明に係るエンジンシステムの第
4特徴構成は、上記第
1乃至上記第
3特徴構成に加え、
前記制御手段が、前記切替値補正処理において前記切替値上昇処理を実行する場合に、当該切替値上昇処理において前記燃焼モード切替値の設定範囲を所定の上限値以下に制限する点にある。
【0018】
エンジン負荷
に対応する目標回転数が比較的高い場合に燃焼モードをリーン燃焼モードに設定すると、スロットルバルブの開度に限界があるため、必要な出力を得ることができない場合がある。
そこで、本特徴構成によれば、切替値上昇処理における燃焼モード切替値の上限値が設定されているので、エンジン負荷
に対応する目標回転数が燃焼モード切替値の上限値以上である場合には、燃焼モードがリーン燃焼モードに切り替わることがなくなる。よって、リーン燃焼モードでの運転時においては、スロットルバルブの開度調整範囲内において適切な出力調整を行うことができ、また、エンジン負荷
に対応する目標回転数がリーン燃焼モードでは必要な出力を得ることができない恐れがある上限値以上になる場合には、ストイキ燃焼モードに切り替えるなどして、他の手段による出力上昇を図ることができる。
【0019】
本発明に係るエンジンシステムの第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加え、
前記制御手段が、前記リーン燃焼モードにおける前記出力制御として、前記エンジン負荷
に対応する目標回転数が所定値よりも低い場合にはスロットルバルブの開度調整により前記エンジンの出力を制御するスロットルバルブ出力制御を行い、前記エンジン負荷
に対応する目標回転数が所定値以上の場合には前記混合気の空燃比調整により前記エンジンの出力を制御する空燃比出力制御を行う点にある。
【0020】
リーン燃焼モードにおいて混合気の空燃比を効率面やエミッション面で可能な範囲内で低下させると、燃焼室への投入熱量が増加するので、出力が上昇する。
そこで、本特徴構成によれば、リーン燃焼モードにおいてエンジン負荷
に対応する目標回転数が所定値以上と高い場合には、上記スロットルバルブ出力制御に代えて上記空燃比出力制御が実行されるため、スロットルバルブ出力制御ではエンジン負荷
に対応する目標回転数の上昇に伴いスロットル開度が全開になってそれ以上の開度増加ができない場合でも、混合気の空燃比が低下されて出力上昇が行われるので、スロットルバルブの開度限界による出力不足が解消され、必要な出力を得ることができる。
よって、燃焼モード切替値の上限値をできるだけ高い値に設定して、例えば寿命や効率の向上を重視し、リーン燃焼モードでの運転を積極的に行うような状態で、燃焼モードの切替を行うことができる。