特許第5945439号(P5945439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945439
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】ダイシングシート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20160621BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160621BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20160621BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20160621BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/02 Z
   C09J133/08
   C09J133/10
   C09J4/02
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-69640(P2012-69640)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-201350(P2013-201350A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村山 健一
(72)【発明者】
【氏名】金井 道生
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−181899(JP,A)
【文献】 特開2005−281420(JP,A)
【文献】 特開2007−220863(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 4/02
C09J 7/02
C09J 133/08
C09J 133/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その上に形成された粘着剤層とからなるダイシングシートであって、
前記粘着剤層が、芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(A)と、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するシアヌレート系化合物、及び、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物から選択される少なくとも一種のエネルギー線重合性化合物(B)とを含有する粘着剤組成物からなり、
前記粘着剤層の厚みが、8〜20μmであり、
前記芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位の含有量が、前記共重合体(A)100質量部に対して20〜80質量部であるダイシングシート。
【請求項2】
前記芳香族(メタ)アクリレートが、側鎖にフェニル基またはフェニレン基を含有する請求項1に記載のダイシングシート。
【請求項3】
前記共重合体(A)のガラス転移温度が、−35〜10℃である請求項1または2に記載のダイシングシート。
【請求項4】
前記芳香族(メタ)アクリレートが、ベンジル(メタ)アクリレートである請求項1〜3のいずれかに記載のダイシングシート。
【請求項5】
前記エネルギー線重合性化合物(B)が、下記一般式(I)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のダイシングシート。
【化1】
(ただし、Rは、下記一般式(II)で表され、Rは炭素数が1〜3のアルキレン基を表す。
【化2】
【請求項6】
半導体チップを樹脂封止した半導体パッケージの樹脂封止面に、前記粘着剤層を貼付する請求項1〜5のいずれかに記載のダイシングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが樹脂封止された半導体パッケージをダイシングする際に用いられるダイシングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが樹脂封止された半導体部品は、半導体チップをTABテープのような複数の基台が連接してなる集合体の各基台上に搭載し、一括して樹脂封止して電子部品集合体(半導体パッケージ)を得て、次いで、半導体パッケージの一方の面に粘着シートを貼付し、半導体パッケージを固定し、各部品毎に切断分離(ダイシング)して作製される。半導体パッケージから各部品毎に切断分離(ダイシング)された半導体部品は、ピックアップされ、次の工程に移送される。
【0003】
半導体パッケージのダイシング工程からピックアップ工程に至る工程で用いられる粘着シートとしては、半導体部品の飛散を防止するため、ダイシング工程では半導体パッケージに対して充分な粘着力を有しており、また半導体部品上の糊残りを防止するため、ピックアップ時には各半導体部品に粘着剤が付着しない程度の粘着力を有するものが望まれている。また、ダイシング工程において用いられる粘着シートとしては、ダイシング屑がほとんど発生しないものが望まれている。半導体パッケージのダイシング時には、パッケージを構成する樹脂の他に、粘着シートの粘着剤層、基材の一部が切断される。このため、ダイシング屑には粘着性を有する微粉や糸状の屑が含まれる。粘着性を有するダイシング屑は、各半導体部品の側面に付着し、半導体部品の信頼性を低下させるとともに、各工程において装置を汚染するおそれがある。
【0004】
特許文献1には、モノマー成分の少なくとも1種が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるとともに該アルキル基がイソボルニル基を含む脂環式炭化水素基である共重合体を含む粘着剤組成物を粘着剤層に用いたダイシングシートが提案されている。また、特許文献2には、脂肪族アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体と、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するシアヌレート系化合物またはイソシアヌレート系化合物とを含有する粘着剤組成物を粘着剤層に用いたダイシングシートが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1,2のダイシングシートでは、半導体パッケージのダイシングに使用した場合、半導体部品の側面にダイシング屑が付着することを充分に防止することができず、各工程において装置を汚染するおそれがある。
【0006】
また、特許文献3には、アクリル系ポリマーと、炭素−炭素二重結合を含有する基を有しているシアヌレート系化合物、および炭素−炭素二重結合を含有する基を有しているイソシアヌレート系化合物から選択された少なくとも一種の放射線重合性化合物とを含有する粘着剤層組成物を粘着剤層に用いたダイシングシートが提案されている。特許文献3には、このダイシングシートの粘着剤層の厚さは1〜50μmであると記載されているが、実施例において粘着剤層の厚さが5μmのダイシングシートしか開示していない。特許文献3のダイシングシートは、半導体ウエハのような平滑性の高い被着体のダイシングに用いられると、粘着剤層の厚さが5μm程度に薄くても充分な粘着力を示すが、平滑性が比較的低い半導体パッケージのダイシングに用いられると、充分な粘着力が得られず、半導体部品が飛散するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−100064号公報
【特許文献2】特開平07−029860号公報
【特許文献3】特開2007−220863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、エネルギー線照射前の粘着剤層の粘着力を高め、半導体部品の飛散を防止すると共に、ダイシング屑の発生を抑制し、半導体部品の側面へのダイシング屑の付着、及びダイシング屑による装置の汚染を防止することができるダイシングシートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕基材と、その上に形成された粘着剤層とからなるダイシングシートであって、
前記粘着剤層が、芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(A)と、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するシアヌレート系化合物、及び、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物から選択される少なくとも一種のエネルギー線重合性化合物(B)とを含有する粘着剤組成物からなり、
前記粘着剤層の厚みが、8〜20μmであり、
前記芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位の含有量が、前記共重合体(A)100質量部に対して20〜80質量部であるダイシングシート。
【0010】
〔2〕前記芳香族(メタ)アクリレートが、側鎖にフェニル基またはフェニレン基を含有する〔1〕に記載のダイシングシート。
【0011】
〔3〕前記共重合体(A)のガラス転移温度が、−35〜10℃である〔1〕または〔2〕に記載のダイシングシート。
【0012】
〔4〕前記芳香族(メタ)アクリレートが、ベンジル(メタ)アクリレートである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のダイシングシート。
【0013】
〔5〕前記エネルギー線重合性化合物(B)が、下記一般式(I)で表される化合物である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のダイシングシート。
【化1】
(ただし、Rは、下記一般式(II)で表され、Rは炭素数が1〜3のアルキレン基を表す。
【化2】
【0014】
〔6〕半導体チップを樹脂封止した半導体パッケージの樹脂封止面に、前記粘着剤層を貼付する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のダイシングシート。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るダイシングシートは、半導体パッケージをダイシングするために好適に用いることができ、エネルギー線照射前の粘着剤層の粘着力を高め、半導体部品の飛散を防止すると共に、ダイシング屑の発生を抑制し、半導体部品の側面へのダイシング屑の付着、及びダイシング屑による装置の汚染を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るダイシングシートについて、具体的に説明する。本発明に係るダイシングシートは、基材と、その上に形成された粘着剤層とからなる。
【0017】
本発明に係るダイシングシートの粘着剤層を構成する粘着剤としては、芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(A)と、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するシアヌレート系化合物、及び、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物から選択される少なくとも一種のエネルギー線重合性化合物(B)とを含有する粘着剤組成物が用いられる。以下、共重合体(A)とエネルギー線重合性化合物(B)とについて説明する。
【0018】
共重合体(A)
共重合体(A)は、芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む。芳香族(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルキシエチル−フタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAEO付加物(メタ)アクリレート、ビスフェノールAPO付加物(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、側鎖にフェニル基またはフェニレン基を含有する芳香族(メタ)アクリレートが好ましく、側鎖にフェニル基を含有する芳香族(メタ)アクリレートがさらに好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。芳香族(メタ)アクリレートは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
共重合体(A)は、芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルあるいはその誘導体から導かれるモノマー単位とからなることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。これらの中でも、特に好ましくは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等である。
【0020】
共重合体(A)100質量部に対して、芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位の含有量は、20〜80質量部であり、好ましくは40〜80質量部である。
【0021】
共重合体(A)は、上記のような芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルあるいはその誘導体から導かれるモノマーとを常法にて共重合することにより得られるが、これらのモノマーの他にも蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されていてもよい。
【0022】
共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−35〜10℃、より好ましくは−20〜10℃である。共重合体(A)のガラス転移温度は、上述したモノマーを組み合わせることによって調製することができる。以下の表1に、共重合体(A)を構成する代表的な芳香族(メタ)アクリレートとその単独重合体のガラス転移温度(Tg)を示す。芳香族(メタ)アクリレートの単独重合体のガラス転移温度は、−30〜80℃であることが好ましい。共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、FOXの式により求めた値である。
【0023】
【表1】
【0024】
共重合体(A)の重量平均分子量は、好ましくは1万〜200万、より好ましくは10万〜150万である。
【0025】
エネルギー線重合性化合物(B)
エネルギー線重合性化合物(B)は、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するシアヌレート系化合物、及び、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物から選択される少なくとも一種の化合物であり、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する化合物である。
【0026】
炭素−炭素二重結合を含有する基を有するシアヌレート系化合物および炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物としては、具体的には、2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロキシエチル)2−(5−アクリロキシ)ヘキシロキシエチルイソシアヌレート、トリス(1−アクリロキシエチル−3−メタクリロキシ−2−プロピル−オキシジカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(4−アクリロキシ−n−ブチル)イソシアヌレート、及び下記一般式(I)で表される化合物などが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【化3】
(ただし、Rは、下記一般式(II)で表され、Rは炭素数が1〜3のアルキレン基を表す。
【化4】
【0027】
共重合体(A)100質量部に対して、エネルギー線重合性化合物(B)は、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは70〜150質量部、特に好ましくは100〜140質量部の割合で用いられる。エネルギー線重合性化合物(B)が150質量部を超えると十分な凝集力を得られない場合があり、50質量部未満では半導体部品の飛散が発生するおそれがある。
【0028】
上記共重合体(A)に上記エネルギー線重合性化合物(B)と必要に応じ光重合開始剤とを配合した粘着剤組成物を用いて、粘着剤層を形成することができる。さらに、粘着剤組成物には、各種物性を改良するため、必要に応じ他の成分(例えば架橋剤)が含まれていてもよい。
【0029】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示できる。エネルギー線として紫外線を用いる場合に、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
【0030】
架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物等のポリイミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられるが、中でもエポキシ系化合物が好ましい。
【0031】
上記共重合体(A)およびエネルギー線重合性化合物(B)を含有する粘着剤組成物に代えて、該粘着剤組成物と同様の性質を兼ね備えるエネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)を含有する粘着剤組成物を使用することもできる。
【0032】
粘着剤層の厚みは、特に限定はされないが、8〜20μmであり、好ましくは10〜15μmである。本発明のダイシングシートを半導体パッケージに適用する場合には、本発明のダイシングシートの粘着剤層は半導体パッケージの樹脂封止面に貼付される。封止樹脂の表面は一般に平滑であるが、封止法によっては表面に凹凸が形成される場合がある。封止樹脂表面に凹凸が形成された場合、粘着剤層の厚みが薄すぎると充分な粘着力が得られないおそれがあるが、粘着剤層の厚みを上記範囲とすることで、本発明のダイシングシートは、封止樹脂表面に凹凸が形成された半導体パッケージのダイシングに好適に用いられる。
【0033】
上記のような共重合体(A)およびエネルギー線重合性化合物(B)を含有する粘着剤組成物を用いて、基材上に粘着剤層が形成される。
【0034】
本発明に係るダイシングシートの基材としては、特に限定はされないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミドフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム、およびその水添加物または変性物等からなるフィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルム、共重合体フィルムも用いられる。上記の基材は1種単独でもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた複合フィルムであってもよい。
【0035】
また、粘着剤を硬化するために照射するエネルギー線として紫外線を用いる場合には、紫外線に対して透明である基材が好ましい。なお、エネルギー線として電子線を用いる場合には透明である必要はない。上記のフィルムの他、これらを着色した透明フィルム、不透明フィルム等を用いることができる。
【0036】
また、基材の上面、すなわち粘着剤層が設けられる側の基材表面には粘着剤との密着性を向上するために、コロナ処理を施したり、プライマー層を設けてもよい。また、粘着剤層とは反対面に各種の塗膜を塗工してもよい。本発明に係るダイシングシートは、上記のような基材上に粘着剤層を設けることで製造される。基材の厚みは、好ましくは20〜450μm、より好ましくは25〜200μm、特に好ましくは50〜150μmの範囲にある。
【0037】
上記基材の表面に粘着剤層を設ける方法は、上記粘着剤組成物を剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布して粘着剤層を形成し、上記基材の表面に転写しても構わないし、上記基材の表面に上記粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。このようにして本発明に係るダイシングシートが得られる。
【0038】
このように形成された粘着剤層のエネルギー線照射前における粘着力は、好ましくは1700〜3300mN/25mmであり、より好ましくは2000〜3000mN/25mmである。また、エネルギー線照射後における粘着力は、好ましくは100〜800mN/25mmであり、より好ましくは200〜500mN/25mmである。エネルギー線としては、具体的には、紫外線、電子線等が用いられる。
【0039】
また、粘着剤層のヘイズ値は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%、特に好ましくは0〜1%である。ヘイズ値が上記範囲外であると、共重合体(A)とエネルギー線重合性化合物(B)との相溶性が低下し、被着体に対する粘着力が不安定になる場合がある。
【0040】
また、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0041】
このような本発明に係るダイシングシートは、半導体パッケージの樹脂封止面に貼付され、エネルギー線照射前にも充分な粘着力を有しているので、ダイシング時に半導体部品の飛散を好適に防止することができる。また、ダイシング後の半導体部品の側面へのダイシング屑の付着およびダイシング屑による装置の汚染を防止することができる。
【0042】
ダイシング後、必要に応じて本発明に係るダイシングシートをエキスパンドして各半導体部品の間隔を離間させた後、吸引コレット等の汎用手段により各半導体部品のピックアップを行う。また、粘着剤層にエネルギー線を照射し、粘着力を低下させた後、エキスパンド、ピックアップを行うことが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
以下の実施例および比較例における「粘着力測定」、「ヘイズ値測定」、「半導体部品飛散評価」および「ダイシング屑残り評価」を以下に示す。なお、各評価において紫外線照射が必要となる場合は、紫外線照射装置(リンテック社製、RAD−2000m/12)を用い、窒素雰囲気下にて紫外線照射(照度120mW/cm、光量80mJ/cm)した。
【0045】
(粘着力測定)
実施例および比較例において、得られたダイシングシートの粘着力を以下のように測定した。
半導体パッケージ(京セラケミカル製KE−G1250、サイズ:150mm×50mm、厚み:600μm、ダイシングシート貼付面の算術平均粗さRa:2μm)の樹脂封止面に、幅25mm×長さ200mmのダイシングシートを貼付し30分経過後、JIS Z0237;2000に準じて、万能型引張試験機(株式会社オリエンテック製、TENSILON/UTM−4−100)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°にてダイシングシートの粘着力を測定し、紫外線照射前の粘着力(mN/25mm)とした。
【0046】
また、ダイシングシートを半導体パッケージの樹脂封止面に貼付してから、23℃、50%RHの雰囲気下に20分間放置した後、ダイシングシートの基材側より、紫外線照射を行った。紫外線照射後のダイシングシートにつき、上記と同様にして粘着力を測定し、紫外線照射後の粘着力(mN/25mm)とした。
【0047】
(ヘイズ値測定)
実施例および比較例において得られた粘着剤組成物を、剥離フィルム(リンテック社製 PET381031)に塗布した後に、乾燥(オーブンにて100℃、1分間)させ、厚み15μmの粘着剤層を作製した。次いで、粘着剤層にフィルム(東洋紡製PET50 A−4100)を貼り合わせ、剥離フィルムを剥離し、評価用サンプルとした。ヘイズメーター(日本電色工業社製 NDH−5000)を用いて、評価用サンプルにおける粘着剤層のヘイズ値(%)を測定した。ヘイズ値が0%以上5.0%未満を「A」、5.0%以上10.0%未満を「B」、10.0%以上または目視により評価用サンプルの粘着剤層にぎらつきがある場合を「C」と評価した。
【0048】
(半導体部品飛散評価)
半導体パッケージ(京セラケミカル製KE−G1250、サイズ:50mm×50mm、厚み:600μm、ダイシングシート貼付面の算術平均粗さRa:2μm)の樹脂封止面に、実施例および比較例のダイシングシートをテープマウンター(リンテック社製:Adwill RAD2500)を用いて貼付し、ダイシング用リングフレーム(ディスコ社製:2−6−1)に固定した。次いで、半導体パッケージを、以下のダイシング条件で1mm角の半導体部品にダイシングした。ダイシング後、ダイシングシートから飛散した半導体部品の個数を目視にて数えた。ダイシングされた半導体部品の個数に対する飛散した半導体部品の個数の割合(%)を算出し、0%以上10%未満を「A」、10%以上20%未満を「B」、20%以上を「C」と評価した。
<ダイシング条件>
・ダイシング装置 :DISCO社製 DFD−651
・ブレード :DISCO社製 ZBT−5074(Z111OLS3)
・刃の厚み :0.17mm
・刃先出し量 :3.3mm
・ブレード回転数 :30000rpm
・切削速度 :100mm/分
・基材切り込み深さ:50μm
・切削水量 :1.0L/分
・切削水温度 :20℃
【0049】
(ダイシング屑残り評価)
半導体パッケージ(京セラケミカル製KE−G1250、サイズ:50mm×50mm、厚み:600μm、ダイシングシート貼付面の算術平均粗さRa:2μm)の樹脂封止面に、実施例および比較例のダイシングシートをテープマウンター(リンテック社製:Adwill RAD2500)を用いて貼付し、ダイシング用リングフレーム(ディスコ社製:2−6−1)に固定した。次いで、半導体パッケージを、以下のダイシング条件で5mm角の半導体部品にダイシングした。その後、紫外線照射を行い、5mm角に個片化された半導体部品のうち、半導体パッケージの四隅の位置と中央の位置にある半導体部品(計5個)をピックアップし、評価用サンプルとした。評価用サンプルの側面に付着した粘着剤層および/または基材の一部(ダイシング屑)を光学顕微鏡により目視にて確認した。20μm以上の大きさのダイシング屑の個数を数え、20個以下を「A」、21個〜30個を「B」、31個以上を「C」と評価した。
<ダイシング条件>
・ダイシング装置 :DISCO社製 DFD−651
・ブレード :DISCO社製 ZBT−5074(Z111OLS3)
・刃の厚み :0.17mm
・刃先出し量 :3.3mm
・ブレード回転数 :30000rpm
・切削速度 :50mm/分
・基材切り込み深さ:50μm
・切削水量 :1.0L/分
・切削水温度 :20℃
【0050】
(実施例1)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(ブチルアクリレート/ベンジルアクリレート/アクリル酸=67/23/10(質量比)、重量平均分子量=72万、Tg=−32℃)100質量部に対し、炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物として、下記一般式(I)の化合物(重量平均分子量=861)125質量部、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製、TETRAD−C)0.15質量部、および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)3.75質量部を配合(全て固形分換算による配合比)し、粘着剤組成物とした。
【化5】
(ただし、Rは、下記一般式(II)で表され、Rは炭素数が2のアルキレン基を表す。
【化6】
【0051】
剥離フィルムに、上記粘着剤組成物を塗布した後に、乾燥(オーブンにて100℃、1分間)させ、厚み15μmの粘着剤層を作製した。次いで、基材として、厚さ140μmのエチレン・メタクリル酸共重合体フィルムを用い、粘着剤層を転写し、ダイシングシートを得た。「粘着力測定」、「ヘイズ値測定」、「半導体部品飛散評価」および「ダイシング屑残り評価」の評価結果を表2に示す。
【0052】
(実施例2)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(ブチルアクリレート/ベンジルアクリレート/アクリル酸=43/47/10(質量比)、重量平均分子量=79万、Tg=−18℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0053】
(実施例3)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(ブチルアクリレート/ベンジルアクリレート/アクリル酸=30/60/10(質量比)、重量平均分子量=79万、Tg=−9℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】
(実施例4)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(ブチルアクリレート/ベンジルアクリレート/アクリル酸=20/70/10(質量比)、重量平均分子量=78万、Tg=−2℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
(実施例5)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(ブチルアクリレート/ベンジルアクリレート/アクリル酸=10/80/10(質量比)、重量平均分子量=79万、Tg=6℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】
(実施例6)
炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物として、一般式(I)の化合物(重量平均分子量=861)を100質量部とした以外は、実施例2と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
(実施例7)
炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物として、一般式(I)の化合物(重量平均分子量=861)を150質量部とした以外は、実施例2と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
(実施例8)
炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物として、一般式(I)の化合物(重量平均分子量=861)を50質量部とした以外は、実施例2と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0059】
(実施例9)
粘着剤層の厚みを10μmとした以外は、実施例2と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表2に示す。
【0060】
(比較例1)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体の代わりに、アクリル系共重合体(ブチルアクリレート/アクリル酸=90/10(質量比)、重量平均分子量=60万、Tg=−44℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0061】
(比較例2)
炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物の代わりに、脂肪族系ウレタンアクリレート(大日精化工業製、セイカビーム EXL−810TL、重量平均分子量=3500)を用いて粘着剤組成物を得た以外は、実施例2と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0062】
(比較例3)
炭素−炭素二重結合を含有する基を有するイソシアヌレート系化合物の代わりに、脂肪族系ウレタンアクリレート(大日精化工業製、セイカビーム EXL−810TL、重量平均分子量=3500)を用いて粘着剤組成物を得、粘着剤層の厚みを30μmとした以外は、比較例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0063】
(比較例4)
粘着剤層の厚みを15μmとした以外は、比較例3と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0064】
(比較例5)
粘着剤層の厚みを10μmとした以外は、比較例3と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0065】
(比較例6)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(ブチルアクリレート/ベンジルアクリレート/アクリル酸=85/5/10(質量比)、重量平均分子量=78万、Tg=−42℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0066】
(比較例7)
芳香族(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含む共重合体(ベンジルアクリレート/アクリル酸=90/10(質量比)、重量平均分子量=78万、Tg=13℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0067】
(比較例8)
粘着剤層の厚みを5μmとした以外は、実施例2と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0068】
(比較例9)
粘着剤層の厚みを25μmとした以外は、実施例2と同様にしてダイシングシートを得、評価を行った。結果を表3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
実施例1〜9のダイシングシートは、エネルギー線照射前の粘着剤層の粘着力が高く、ヘイズ値評価、半導体部品飛散評価およびダイシング屑残り評価のバランスに優れる。
特に実施例2〜7,9のダイシングシートは、半導体部品の飛散を防止すると共に、半導体部品の側面へのダイシング屑の付着を抑制できた。また、ヘイズ値評価が良好であることから、共重合体(A)とエネルギー線重合性化合物(B)との相溶性が高い。そのため、被着体に対する粘着力が安定し、ダイシングシートの信頼性が高い。
一方、比較例1〜9のダイシングシートは、実施例1〜9のダイシングシートと比較して、エネルギー線照射前の粘着剤層の粘着力、ヘイズ値評価、半導体部品飛散評価およびダイシング屑残り評価のバランスに劣る。