(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1支持軸に接続されて一体に回動可能なリンク部材と、このリンク部材に係合して略鉛直に延びるロッドとをさらに備え、前記ロッドの上下動に伴って前記リンク部材が所定範囲で往復回動されることにより、前記第1支持軸と一体に前記回転ステーが所定範囲で往復回動されることを特徴とする請求項1に記載の保育器。
【背景技術】
【0002】
未熟児等に対して適切な生理的環境を提供するための保育器には、児を横たわらせる児用マットレスと、児用マットレスの上面に熱線を放射する加熱器とが備えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、児用マットレスの上方からずれた位置に配置されていても、児用マットレスの上面全体を略一様に加温可能な加熱器を備える保育器が開示されている。この保育器は、加熱器がマットレス直上に配置されていないため、X線撮影や処置を行う場合にも加熱器が妨げとならず、児をマットレス上面のいずれの箇所に横たわらせても確実に加温しながら治療や処置を施すことを可能としている。
【0004】
また、特許文献2には、閉鎖型と開放型との兼用が可能な保育器において、天面フードの昇降を妨げないように収容可能な加熱器が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の保育器に備えられた加熱器によれば、X線撮影や処置を妨げずに、児用マットレス上の広い範囲を略一様に加温することができる。しかしながら、加熱器がマットレスの直上に配置されていないため、加熱器から離れるほど、マットレス上面に対する加熱器からの熱線の照射角度が鋭角となり、熱線の照射範囲が上下方向に小さくなる。このため、児の頭部が加熱器側に位置していない場合にはマットレス上面から高さのある頭部が熱線照射範囲から外れ、加温されにくくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、児に対する処置や検査の邪魔とならず、マットレス上の任意の位置に収容された児に対して最適な温度環境を提供でき、処置者に対する熱の影響の小さい加熱器を備える保育器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保育器は、児が横たえられる臥床台と、
前記臥床台の側方に垂直に設けられたガイド柱と、前記臥床台の斜め上方
で前記ガイド柱の上端部に配置され、略水平方向に延び、軸線中心に所定範囲で往復回転可能に設けられた第1支持軸と、前記第1支持軸に固定され、この第1支持軸と一体に回動する回転ステーと、この回転ステーに設けられ、前記第1支持軸と略平行な第2支持軸と、前記臥床台の斜め上方に配置され、前記第2支持軸を中心として前記回転ステーに対して所定範囲で往復回動可能に支持され、前記臥床台の上面に向けて斜めに熱線を照射可能な加熱器と備え、前記回転ステーが前記第1支持軸を中心として所定範囲で往復回動されることにより、前記加熱器が前記回転ステーと一体に回動し、前記加熱器の姿勢が熱線を照射する加熱姿勢と前記臥床台の上方から退避する収納姿勢とに変更可能であるとともに、前記加熱姿勢において、前記加熱器が前記第2支持軸を中心として前記回転ステーに対して所定範囲で往復回動されることにより、前記加熱器の熱線照射角度がさらに変更可能である。
【0009】
加熱器が臥床台の斜め上方に配置されていると、臥床台に対して熱線が斜めに照射されるので、加熱器から離れるほど熱線の照射範囲が上下方向に小さくなる。これに対して、この保育器によれば加熱姿勢の加熱器をさらに回動させることにより熱線の照射角度を調整できるので、熱線の照射範囲から児の体の一部が外れた場合であっても、児の体全体が熱線の照射範囲内となるように加熱器の角度を調整することができる。
【0010】
この保育器において、前記第1支持軸に接続されて一体に回動可能なリンク部材と、このリンク部材に係合して略鉛直に延びるロッドとをさらに備え、前記ロッドの上下動に伴って前記リンク部材が所定範囲で往復回動されることにより、前記第1支持軸と一体に前記回転ステーが所定範囲で往復回動されることが好ましい。
【0011】
加熱器の回動にリンク機構を用いることにより、駆動部を加熱器周辺ではなく例えば臥床台よりも下方に配置するなど加熱器周辺の構造を簡素にすることができるが、リンク機構では加熱器の回動範囲が限定されるため、加熱姿勢での熱線照射角度の調整は難しい。これに対し、本発明の保育器によれば、回転ステーを回動させるリンク機構とは別に回転ステーに対して加熱器を所定範囲で往復回動させる構造を備えているので、容易に熱線照射角度を変更することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保育器によれば、児に対する処置や検査の邪魔とならず、マットレス上の任意の位置に収容された児に対して最適な温度環境を提供でき、処置者に対する熱の影響の小さい加熱器を備える保育器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の保育器の一実施形態について説明する。本発明の保育器1は、児が横たえられる臥床台14と、臥床台14の斜め上方に配置され、略水平方向に延び、軸線中心に所定範囲で往復回転可能に設けられた第1支持軸25と、第1支持軸25に固定され、第1支持軸25と一体に回動する回転ステー29と、回転ステー29に設けられ、第1支持軸25と略平行な第2支持軸33と、臥床台14の斜め上方に配置され、第2支持軸33を中心として回転ステー29に対して所定範囲で往復回動可能に支持され、臥床台14の上面に向けて斜めに熱線を照射可能な加熱器11とを備える。
【0015】
保育器1は、
図1〜
図6に全体を示したように、キャスター2により移動自在な架台3と、この架台3の上に垂直に立設された支柱4と、この支柱4の上端に設けられたフレーム5と、このフレーム5の上に設置された基台6と、この基台6の上に設けられ児収容室7を囲むフード8と、フレーム5の一端部でフード8の側方位置に垂直に設けられた第1ガイド柱9および第2ガイド柱10と、第2ガイド柱10の上端に設けられた加熱器11と、第1ガイド柱9の上端に取り付けられフード8の天井を構成するキャノピー(天蓋)12とを備えている。支柱4は内部にフレーム5を上下移動する昇降機構を内蔵しており、架台3の側部に、昇降機構を操作するためのペダル13が設けられている。
【0016】
フード8は、児を寝かせる臥床台14が設置される床板15と、児の左右に配置される側部処置扉16,17と、児の足側に配置される足側処置扉18と、児の頭側に配置される頭側処置扉19と、これら側部処置扉16,17、足側処置扉18および頭側処置扉19により囲まれた児収容室7の上方を閉塞するキャノピー12とにより、略直方体状に構成される。側部処置扉16,17、足側処置扉18、頭側処置扉19およびキャノピー12は、略全体が透明樹脂によって構成されており、外部から児収容室7内の児を目視確認できる。
【0017】
図1〜
図3ではキャノピー12を下降させてフード8を閉じた状態、
図4〜
図6はキャノピー12を上昇させて児収容室7の上方を開放した状態を示している。また、この
図4〜
図6においては、加熱器11も上昇させて加熱姿勢とし、児収容室7を加熱している。このように、この保育器1は、
図1〜
図3に示す閉鎖型保育器、および
図4〜
図6に示す開放型保育器の両方の形態の機能を有している。
【0018】
各処置扉16〜19のうち、頭側処置扉19は、児収容室7の頭側に立設した垂直姿勢に維持される。これに対して、側部処置扉16,17および足側処置扉18は、その下端部が基台6に対して水平な軸(図示略)を中心に揺動自在に取り付けられている。児に対する診察、処置などを任意の方向から行うために、これら処置扉16〜18の一つあるいは複数を下方に倒すことにより、児収容室7の側方の一部又は三方を開放状態とすることができる。
図3は側部処置扉16を回動させて、児収容室7の一側方を開放状態としている。
【0019】
閉鎖型保育器として使用する場合は、キャノピー12を下降させるとともに、各処置扉16〜18とも閉鎖した状態とされ、児のケアのために側部処置扉16,17を開閉する。開放型保育器として使用する場合は、キャノピー12を上昇させるとともに、児のケアのために側部処置扉16,17および足側処置扉18の三方を開閉することができる。
【0020】
側部処置扉16,17および足側処置扉18には手入れ窓20が設けられ、閉鎖型保育器として使用する際に、処置扉16〜18を起立させた状態のまま開閉することができるようになっている。頭側処置扉19には、
図4に示すように、ケーブルやチューブ等を挿通させるためのスリットを有するグロメット部材21が取り付けられている。
【0021】
児収容室7内の床板15の上には、児を載せる臥床台14が設けられている。この臥床台14は、長さ方向の中央部が水平な軸(図示略)により揺動自在に支持されるとともに、頭側の一端部が昇降機構22に支持され、この一端部を持ち上げることにより、水平方向に対して傾斜した姿勢に保持できるようになっている。その昇降機構22は、フード8の外側に設けられる。
【0022】
第1ガイド柱9には、同軸上に昇降柱23が収容され、この昇降柱23を上下移動させる昇降機構が内蔵されている。同様に、第2ガイド柱10には、同軸上に昇降柱24が収容され、この昇降柱24を上下移動させる昇降機構が内蔵されている。キャノピー12は、第1ガイド柱9の昇降柱23の上端に取り付けられており、その下降位置で各処置扉16〜19の上端に当接して児収容室7を閉鎖し(
図1〜
図3)、上昇位置では、処置扉16〜19から児の処置のための十分な間隔をあけて退避できる(
図4〜
図6)。
【0023】
加熱器11は、
図6および
図7に示すように、第2ガイド柱10の昇降柱24の上端に、略水平な第1支持軸25を中心に所定範囲で往復回動可能に取り付けられており、昇降柱24が下降された位置では、
図1〜
図3に示すように、第2ガイド柱10と略平行な垂直方向に折り畳まれた収納姿勢とされ、昇降柱24が上昇された位置では、
図4〜
図7に示すように、垂直方向に対して所定の角度に起こされて児収容室7に上方から熱線を供給する加熱姿勢とされる。加熱器11を収納姿勢とした状態では、この加熱器11によって妨げられることなくキャノピー12を昇降させることができる。
【0024】
加熱器11は、
図7〜
図9に示すように、略ロッド状の発熱体26、発熱体26の後方を覆うように支持してその熱線を所定方向に向けて反射させる反射器27,および反射器27の後方および側方を覆う反射器カバー28を備え、回転ステー29を介して第1支持軸25に片持ち支持されている。発熱体26には、セラミックスヒータ、石英ヒータ、ステンレスヒータ等を用いることができる。反射器カバー28は、耐熱性合成樹脂等によって形成される。反射器27と反射器カバー28とは互いに固定されており、これらの間に配置され第1支持軸25と一体に設けられた回転ステー29に対して、所定の範囲で往復回動可能となっている(
図9)。
【0025】
反射器27は、
図8および
図9に示すように、金属板の折り曲げ加工により下方に向けて開放する略箱状に形成され、反射器カバー28の内部に収容された状態で固定されている。発熱体26は、反射器27の側方反射板27aに設けられた貫通穴27bを貫通して配置され、その両端部が各側方反射板27aの外面に設けられたソケット30に取り付けられることにより、このソケット30を通じて給電可能な状態で固定される。反射器27を形成する金属板は、例えば、純度99%以上のアルミニウム製であり、反射面の熱線反射率は例えば95%以上とする。
【0026】
この保育器1では、
図10に示すように、加熱器11の回動駆動機構として、第1支持軸25に接続されて一体に回動可能なリンク部材31と、リンク部材31に係合して略鉛直に延びるロッド32とを備えるリンク機構が採用されている。この回動駆動機構においては、ロッド32の上下動に伴ってリンク部材31が所定範囲で往復回動されることにより、第1支持軸25と一体に回転ステー29が所定範囲で往復回動され、これにより回転ステー29に取り付けられた加熱器11が回動される。このリンク機構を用いて所定の角度範囲で第1支持軸25を回動させることにより、加熱器11の姿勢を収納状態と加熱状態とに変更することができる。
【0027】
第1支持軸25を回転させるリンク機構について、より具体的に説明する。第1支持軸25と一体に形成されたリンク部材31には、
図10に示すように、長穴31aが形成されている。この長穴31aには、ロッド32の上端部に設けられた係合ピン32aが係合している。ロッド32は、略鉛直方向に往復動可能なように、図示しないバネによって往復動方向に付勢された状態で第2ガイド柱10に支持されている。また、第2ガイド柱10の上端部内部には、リンク部材31の回動幅を制限する加熱時ストッパー10a,収納時ストッパー10bが取り付けられている。
【0028】
このリンク機構において、
図10に示すように、ロッド32が下降した状態では、リンク部材31が長穴31aに係合したロッド32の係合ピン32aによって第1支持軸25を中心として回動されて加熱時ストッパー10aに当接した状態で保持されることにより、加熱器11の姿勢が加熱状態に設定される。一方、ロッド32が上昇した状態では、係合ピン32aが上昇することにより、リンク部材31が時計回りに回動されて収納時ストッパー10bに当接した状態で保持され、加熱器11の姿勢が収納状態に設定される。したがって、このリンク機構によって回動される回転ステー29の角度は、加熱状態と収納状態との間に制限される。
【0029】
このリンク機構によって回転される第1支持軸25に固定された回転ステー29は、
図8および
図9に示すように、加熱器11の内側の反射器27と反射器カバー28との間に設けられている。反射器27および反射器カバー28は、回転ステー29に設けられた第2支持軸33によって連結され、回転ステー29に対して一体にこの第2支持軸33を中心として回転可能かつ所定角度位置で固定可能に取り付けられている。
図11に示すように、第2支持軸33は第1支持軸25とは異なる位置に設けられている。この第2支持軸33を中心とする反射器27および反射器カバー28と回転ステー29との相対回転角度は、反射器27の側方反射板27aに固定された係合ピン34と回転ステー29に形成された長穴35との係合によって、所定範囲に規制されている。
【0030】
回転ステー29には、
図11に示すように、反射器27の側方反射板27aに向けて突出するボールプランジャ36が設けられている。これに対して、反射器27の側方反射板27aには、
図9に示すように、このボールプランジャ36の先端が係合する第1係合穴37aおよび第2係合穴37bが設けられている。加熱器11が通常の加熱姿勢にある状態において、反射器27に設けられたボールプランジャ36が回転ステー29の第1係合穴37aに係合している場合、反射器カバー28の下面は水平方向に対して24度傾斜した状態に維持される。この加熱姿勢において、反射器27を回転ステー29に対して第2支持軸33を中心として回転させ、ボールプランジャ36を第2係合穴37bに係合させると、反射器カバー28の下面は水平方向に対して28度傾斜した状態に維持される。
【0031】
つまり、加熱器11は、ロッド32の昇降を利用するリンク機構により、回転ステー29の回転に伴って第1支持軸25を中心として回動して加熱姿勢に設定されるとともに、さらに回転ステー29に対して回動させることにより、加熱姿勢からわずかに(本実施形態では4度)回転して、熱線の照射方向を変更させることができる。この回転ステー29に対する加熱器11の回転は、手動により行うことができる。
【0032】
以上のように構成された保育器1において、
図5に示すようにキャノピー12を上昇させた状態で、加熱姿勢の加熱器11から児収容室7に上方から熱線を供給することができる。キャノピー12を下降させてフード8を閉じた状態とキャノピー12を上昇させて児収容室7の上方を開放した状態との間でキャノピー12を昇降させる際に加熱器11が妨げとならないように、加熱器11は児収容室7(臥床台14)の直上ではなく、頭側処置扉19の外側に配置され、キャノピー12の移動動線から退避して収納可能となっている。このため、
図12に示すように、加熱器11からの熱線は児収容室7の臥床台14に対して斜めから投射される。また、この保育器1では、加熱器11を児収容室7の直上から退避させることにより、児に対する処置やX線検査などを加熱器11に邪魔されずに行うことが可能となっている。
【0033】
加熱器11の熱線照射範囲は、臥床台14の上面をすべて均一な温度環境にするように、また処置者を加熱しないように、
図12に実線で示すように、臥床台14の上面から大きくはみ出さないように設定されている。通常は、
図12に実線で示すように、児の頭が頭側処置扉19側に位置するように臥床台14の略中央に児が収容されるので、児は加熱器11からの熱線の照射範囲内に収まり、適切な温度状態に保たれる。しかしながら、
図12に2点鎖線で示すように、児の頭が足側処置扉18側に位置するように、かつ足側処置扉18側に近い位置に児が収容された場合、児の体の一部が熱線照射範囲から外れてしまう。
【0034】
この保育器1において、臥床台14の隅に収容された児を加熱するには、加熱器11の角度を変更して熱線照射範囲を変更することが考えられる。しかしながら、加熱器11の角度はロッド32の昇降によるリンク機構によって変更されるため、このリンク機構を用いた場合には、加熱器11の角度は加熱姿勢と収納姿勢との間に限定され、通常の加熱姿勢よりも足側処置扉18側に熱線照射範囲をずらすことが難しい。これに対して、本発明の保育器1によれば、加熱器11を加熱姿勢と収納姿勢とに変更するためのリンク機構とは別の回動構造を備えているので、この回動構造を用いて加熱器11をさらに回動させることにより、
図12に2点鎖線で示すように熱線照射範囲を足側処置扉18側にずらすように変更できる。したがって、この保育器1によれば、臥床台14上のどこに収容されていても児の体全体が含まれるように、熱線照射範囲を調節できる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。