(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
児を収容するための児収容室内へ供給される供給空気の通路内に該供給空気を循環させるための送風機構を備える保育器であって、前記送風機構は、前記通路に配置された送風ファンと、前記通路の底面に埋め込まれたモータとを備え、該モータは、ロータ軸が通路の底面から突出して設けられており、前記送風ファンには、前記通路内に突出するロータ軸に着脱可能に嵌合する筒状部が設けられており、
前記筒状部の先端部には、その筒状部を複数の円弧形状部に分割する分割溝が長さ方向に沿って形成され、これら円弧形状部を外方から内方に向けて付勢する弾性変形可能な締付リング部材が設けられていることを特徴とする保育器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、保育器においては、児収容室内を衛生的に保つために、児収容室内だけでなく、空調機構も含めて衛生に保たなくてはならない。そのため、児収容室内に清拭及び消毒を行うとともに、空調機構を構成する送風機構等も清拭及び消毒を行う必要がある。しかし、送風機構(送風ファン)は保育器に取り付けられているため、保育器内の構造が複雑になり清拭及び消毒が行い難く、清拭及び消毒にかかるオペレータの負担が大きい。
そこで、オペレータの負担軽減のために、作業性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、児収容室内の衛生を維持するための清拭及び消毒が容易に行え、作業性を向上させることができる保育器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、児を収容するための児収容室内へ供給される供給空気の通路内に該供給空気を循環させるための送風機構を備える保育器であって、前記送風機構は、前記通路に配置された送風ファンと、前記通路の底面に埋め込まれたモータとを備え、該モータは、ロータ軸が通路の底面から突出して設けられており、前記送風ファンには、前記通路内に突出するロータ軸に着脱可能に嵌合する筒状部が設けられて
おり、前記筒状部の先端部には、その筒状部を複数の円弧形状部に分割する分割溝が長さ方向に沿って形成され、これら円弧形状部を外方から内方に向けて付勢する弾性変形可能な締付リング部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
送風ファンを、モータのロータ軸に着脱可能に取り付けているので、清拭及び消毒を行う際には、送風ファンを通路内から取り外すことができる。したがって、送風ファンの清拭及び消毒を容易に行うことができる。また、送風ファンを取り外した後の通路には、ロータ軸のみが突出して設けられているだけであり、ロータ軸及び通路内の清拭及び消毒も容易である。また、清拭及び消毒の際に、モータ自体を取り外す必要がないため、作業性を向上させることができる。
【0009】
送風ファンとロータ軸とは、筒状部の先端部のみで締付リング部材により付勢された状態であるので、送風ファンの着脱を容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の保育器によれば、送風ファンを容易に着脱することができ、児収容室内の衛生を維持するための清拭及び消毒が容易に行えるので、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の保育器における送風機構を説明する斜視図であり、(a)が通路を露出させた状態であり、(b)が中床を被せた状態である。
【
図4】送風ファンを保育器から取り外した状態を説明する斜視図である。
【
図6】
図5に示す送風ファンの(a)が上面図、(b)が(a)のB‐B線に沿う断面図である。
【
図8】保育器の左側処置扉を正面視した正面図である。
【
図10】
図8に示す状態から左側処置扉を開けた状態を示す正面図である。
【
図11】
図7に示す状態からキャノピー及び加熱器を上昇させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の保育器の一実施形態について説明する。
[保育器の全体構成]
保育器1は、
図7〜
図10に全体を示したように、キャスター2により移動自在な架台3と、この架台3の上に垂直に立設された支柱4と、この支柱4の上端に設けられたフレーム5と、このフレーム5の上に設置された基台6と、この基台6の上に設けられ児収容室7を囲むフード8と、フレーム5の一端部でフード8の側方位置に垂直に設けられた2本のガイド柱9,10と、これらガイド柱の一方(ガイド柱10)の上端に設けられた加熱器11とを備えており、ガイド柱の他方(ガイド柱9)の上端には、フード8の天井を構成するキャノピー(天蓋)12が取り付けられている。
支柱4は内部にフレーム5を上下移動する昇降機構を内蔵しており、架台3の側部に、昇降機構を操作するためのペダル13が設けられている。
【0013】
フード8は、児を寝かせる臥床台15が設置される床板16と、児の左右側に配置される左側処置扉17及び右側処置扉18と、児の足側に配置される足側処置扉19と、児の頭側に配置される頭側処置扉20と、これら左右側処置扉17,18、足側処置扉19及び頭側処置扉20により囲まれた児収容室7の上方を閉塞するキャノピー12とにより、ほぼ直方体状に構成される。左側処置扉17、右側処置扉18、足側処置扉19、頭側処置扉20及びキャノピー12は、ほぼ全体が透明樹脂によって構成されており、外部から児収容室7内の児を目視確認できる。
また、
図7〜
図10ではキャノピー12を下降させてフード8を閉じた状態、
図11はキャノピー12を上昇させて児収容室7の上方を開放した状態を示している。また、この
図11においては、加熱器11も上昇させ、児収容室7を加熱した状態を示している。
このように、この保育器1は、
図7〜
図10に示す閉鎖型保育器、及び
図11に示す開放型保育器の両方の形態の機能を有している。
【0014】
各処置扉17〜20のうち、頭側処置扉20は、児収容室7の頭側に立設した垂直姿勢に維持される。これに対して、左右側処置扉17,18及び足側処置扉19は、その下端部が基台6に対して水平な軸(図示略)を中心に揺動自在に取り付けられている。閉鎖型保育器として使用する場合は、各処置扉17〜19とも閉鎖した状態とされ、児のケアのために左右側処置扉17,18を開閉する。
図9は閉鎖時に左側処置扉17を回動させて、児収容室7の一側方を開放状態としている。開放型保育器として使用する場合は、左側処置扉17、右側処置扉18及び足側処置扉19の三方を開閉することができる。
【0015】
さらに、左側処置扉17、右側処置扉18及び足側処置扉19には手入れ窓ユニット25,26が設けられ、閉鎖型保育器として使用する際に、処置扉17〜19を起立させた状態のまま手入れ窓27を手入れ扉28,29により開閉することができるようになっている。頭側処置扉20には、ケーブルやチューブ等を挿通させるためのスリットを有するグロメット部材30が取り付けられている。
また、児収容室7内の床板16の上には、児を載せる臥床台15が設けられている。この臥床台15は、長さ方向の中央部が水平な軸(図示略)により揺動自在に支持されるとともに、頭側の一端部が昇降機構31に支持され、この一端部を持ち上げることにより、水平方向に対して傾斜した姿勢に保持できるようになっている。その昇降機構31は、フード8の外側に設けられる。
【0016】
ガイド柱9,10は、同軸上にロッド32が収容され、このロッド32を上下移動させる昇降機構が内蔵されている。キャノピー12は、ガイド柱9のロッド32の上端に取り付けられており、その下降位置で各処置扉17〜20の上端に当接して児収容室7を閉鎖し、上昇位置では、
図11に示すように、処置扉17〜20から児の処置のための十分な間隔を明けて退避できるようになっている。加熱器11は、他方のガイド柱10のロッド(図には見えないが、
図11のガイド柱9と同様に設けられる)の上端に水平な軸33を中心に回動可能に取り付けられており、その下降位置では、
図7等に示すように、ガイド柱10とほぼ平行な垂直方向に折り畳まれた収納姿勢とされ、上昇位置では、垂直方向に対して所定の角度に起こされて児収容室7に上方から熱線を供給する加熱姿勢とされる。
【0017】
[送風機構の構成]
図1及び
図2は、基台6に取り付けられた送風機構71及びヒータ機構41を示している。送風機構71は、児収容室7内への供給空気の流れを発生させるものであり、ヒータ機構41により児収容室7内への供給空気を温めて供給することで、児収容室7内の温度環境を制御することができる。なお、
図1(a)は、
図1(b)に示す中床65及びファンカバー67を取り外して通路61の上方を開放し、送風機構71及びヒータ機構41を露出させた状態を示している。
【0018】
供給空気の通路61は、
図1(a)に示すように、基台6の中央付近に、その基台6の上面62よりも深く形成されている。そして、送風機構71及びヒータ機構41は、供給空気の通路61内に配置され、実線矢印で示すように、送風機構71によって通路61内に供給空気を流しながら、ヒータ機構41により供給空気を温めて、児収容室7内へ供給する構成とされている。また、供給空気は、外気取入口(図示略)から流入口66を経由して保育器1の内部に取り込まれた外気(図に示す破線矢印)、及び児収容室7内からの循環空気(図に示す実線矢印)が混合されて児収容室7内に供給されるようになっている。
【0019】
なお、基台6の上面62が中床65で覆われた状態では、この上面62と中床との間には隙間が設けられ、通路61内を通過した供給空気は、
図1(a)に示す実線矢印のように児収容室7の左右側に送風される。そして、児収容室7の左側処置扉17及び右側処置扉18は、二重壁構造の内壁と外壁とを備える構成とされており、これら内壁と外壁との間に、通路61内から送風される供給空気を下方から上方に向けて流して児収容室7内に供給するようになっている。
【0020】
送風機構71は、
図2から
図4に示すように、通路61に配置されたシロッコファン81(本発明でいう、送風ファン)と、通路61の底面に埋め込まれた状態で取り付けられるモータ91とから構成される。
モータ91は、
図3に示すように、ベース板93の下面にステータ、ロータ等を有するモータユニットが固定され、ベース板93を貫通してロータ軸92がベース板93の上方に突出して設けられている。そして、モータ91は、ベース板93によって通路61の底面に固定され、ロータ軸92は、通路61の底面から通路61内に突出して設けられている。
【0021】
シロッコファン81は、
図5及び
図6に示すように、円盤状のベース部86の外周部分に、複数の送風羽根が立設された筒状羽根部87が形成されたものであり、ベース部86の中央部には、通路61内に突出するロータ軸92に、着脱可能に嵌合する筒状部82が設けられている。
また、筒状部82の先端部には、その筒状部82を複数の円弧形状部84に分割する分割溝83が長さ方向に沿って形成されており、これら円弧形状部84を外方から内方に向けて付勢する弾性変形可能な締付リング部材85が設けられている。締付リング部材85は、帯状の金属片を丸めて両端部を突き合わせてなるものであり、円弧形状部84により構成される筒状部分の外径より小さい内径に形成され、筒状部82の先端に取り付けられた状態では、円弧形状部84を半径方向内方に向けて付勢する。したがって、ロータ軸92に筒状部82を嵌合させた状態では、円弧形状部84がロータ軸92の先端部を圧迫するように付勢されるようになっている。また、締付リング部材85は、シロッコファン81に取り付けた状態のまま、シロッコファン81とロータ軸92との着脱を行えるようになっており、締付リング部材85の筒状部82への装着後は、シロッコファン81と締付リング部材85とを一体として用いることができるようになっている。
【0022】
このように、シロッコファン81を、モータ91のロータ軸92に着脱可能に取り付けているので、清拭及び消毒を行う際には、シロッコファン81を通路61内から取り外すことができ、シロッコファン81の清拭及び消毒を容易に行うことができる。また、シロッコファン81を取り外した後の通路61には、ロータ軸92のみが突出して設けられているだけであり、ロータ軸92及び通路61内の清拭及び消毒も容易に行うことができる。さらに、清拭及び消毒の際に、モータ91自体を取り外す必要がないため、作業性を向上させることができる。
また、シロッコファン81とロータ軸92とは、筒状部82の先端部に取り付けた締付リング部材85により付勢する構成としたので、簡単な構成でシロッコファン81の着脱を容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。