(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ディスクは、短冊状のリンク部材を一体的に組み合わせて直線状の複数の辺部材にて一体に形成された環状の多角形体とされることを特徴とする請求項1に記載のディスクユニット。
前記固定板は、前記コーナー部の出隅部及び入り隅部であって、前記固定板が接触する平面における出隅部及び入り隅部が露出することがないように形成された円形状又は多角形状とされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のディスクユニット。
駆動軸に取付けられる第1ハブと、被駆動軸に取付けられる第2ハブとの間に配置され、前記駆動軸と前記被駆動軸との間の回転トルク伝達を行うディスクユニットを備えたディスクタイプの軸継手において、
前記ディスクユニットは、請求項1〜5のいずれかの項に記載のディスクユニットであることを特徴とするディスクタイプ軸継手。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、一般回転機械、風力発電などにおいては、回転軸を連結し、軸同士のミスアライメントを吸収しながらトルクの伝達を行う軸継手(カップリング)としては、主にメンテナンスフリーや剛性の点から板ばね、即ち、撓み板(ディスク)を用いたディスクタイプの軸継手が広く使用されている。
【0003】
このディスクタイプ軸継手のディスクの材質としては、ステンレススチールが一般に使用されており、許容できるミスアライメント量は、偏角で1°程度である。しかし、芯出し作業が困難な場所や振動の激しい場所で使用するためには更に大きな、例えば偏角3°程度のミスアライメントを許容し得ることが要求されることがある。
【0004】
ディスクに対して強度を確保しつつ許容ミスアライメントを増大させるためには、使用材料に強度が高く、曲げ剛性が低いといった物性が要求されるが、この特性を満足する材料として、繊維強化プラスチック(FRP)が挙げられる。
【0005】
そこでディスクの材質を、ステンレススチールに比べて柔らかく且つ高強度の繊維強化プラスチックにした軸継手が考案されており、大別すると、ディスクとしては、
(1)本願添付の
図11(a)に記載するような外形10outが多角形とされ、その内部に多角形、円形等の穴10inをあけた構造(特許文献1参照)、
(2)本願添付の
図12に記載するような短冊状のリンク部材10a〜10dを組み合わせた構造(特許文献2参照)、
とされる2通りのタイプのディスク10がある。なお、本願添付の
図11(b)に記載するように、特許文献1には、短冊状のリンク部材10a〜10hを互いに結合して一体的に組み合わせた構造も記載している。
【0006】
また、ディスクは、特許文献1、2に記載されるように、ディスクを曲げ易くするなどの目的で、ディスク自体に中心部に穴があいた形状とされたり、或いは、組立後に中央部に穴が形成される構造となっている。また、各辺を連結する隅部(コーナー部)での応力集中を緩和するために各辺に穏やかな湾曲が設けられていることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような構成の従来のディスクは、どのような形態であってもディスクの板厚や強化繊維の方向は、軸のミスアライメントによるディスクの撓み量と、回転トルクによってディスクにかかる応力に対し適切な設計を行うことで決定され、このディスクを1枚或いは複数枚重ねて使用されている。
【0009】
一方、ディスクを作製する繊維強化プラスチックは、連続した直線状の強化繊維を一方向或いは複数の方向に並べ、これらを適当な角度に配向させて積層することで作製されている。
【0010】
本発明者らは、コーナー部の出隅や入り隅などでの応力集中を緩和するために各辺に穏やかな湾曲を設けたディスクを作製し、このディスクを軸継手に組み込み実験を行ったところ、この湾曲部分に強化繊維に沿ったクラックや剥離が発生することが多く、これが疲労強度の低下原因となっていることが分かった。その理由を更に究明するべく実験研究を行った結果、次のことが分かった。
【0011】
つまり、例えば
図11(a)に示すように、特に、湾曲部分10inには、強化繊維fの切断端部が露出しており、この湾曲部分10inにミスアライメントによる繰り返し曲げ変形に起因した曲げ応力が作用した場合に、この湾曲部分の強化繊維fに沿って応力集中が起こり、クラックや層間剥離が発生することが分かった。
【0012】
このような現象は、各辺を連結する出隅や入り隅などの湾曲形状とされたコーナー部においても同様に発生した。
【0013】
本発明の目的は、上述のような課題を解決し、ミスアライメントによる繰り返し曲げ変形を受けてもクラック、剥離の発生を抑制し、強度低下を起こすことがなく、ミスアライメントの許容値が大きく、耐久性に優れたディスクタイプ軸継手及び斯かる軸継手に使用するディスクユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係るディスクタイプ軸継手及びディスクユニットにて達成される。要約すれば、本発明の第一の態様によれば、ディスクタイプの軸継手において駆動軸と被駆動軸との間の回転トルク伝達を行うディスクユニットであって、
直線状の複数の辺部材を互いにその両端部で接続して環状の多角形体とされ、一枚とされるか、又は、複数枚を重ね合わせた積層体とされる、少なくとも前記直線状とされる各辺部材の内側縁部及び外側縁部に沿って平行に配向されて位置する連続した強化繊維を含む繊維強化プラスチック板で作製したディスクと、
前記各辺部材の接続部である前記ディスクのコーナー部を
両側から挟持して配置された固定板と、
を備え、
前記固定板は、前記コーナー部に形成された出隅部及び入り隅部
であって、前記固定板が接触する平面における出隅部及び入り隅部を全て覆って接触する大きさとされ、前記ディスクとの接触面の境界部は湾曲形状とされることを特徴とするディスクユニットが提供される。
【0015】
本発明の一実施態様によれば、前記ディスクは、直線状の複数の辺部材にて一体に形成された環状の多角形体とされるか、又は、短冊状のリンク部材を一体的に組み合わせて直線状の複数の辺部材にて一体に形成された環状の多角形体とされる。
【0016】
本発明の他の実施態様によれば、前記固定板は、前記コーナー部の出隅部及び入り隅部
であって、前記固定板が接触する平面における出隅部及び入り隅部が露出することがないように形成された円形状又は多角形状とされる。
【0017】
本発明の他の実施態様によれば、前記固定板は、鋼材、アルミ材などの金属材、樹脂板、繊維強化プラスチック材、又は、セラミックス材とされる。
【0018】
本発明の他の実施態様によれば、
前記ディスクの前記繊維強化プラスチック
板は、前記強化繊維に樹脂を含浸し、前記樹脂を硬化して作製され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用され、
前記樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、若しくは、フェノール樹脂、又は、ナイロン若しくはビニロンが使用が使用される。
【0019】
本発明の第二の態様によれば、駆動軸に取付けられる第1ハブと、被駆動軸に取付けられる第2ハブとの間に配置され、前記駆動軸と前記被駆動軸との間の回転トルク伝達を行うディスクユニットを備えたディスクタイプの軸継手において、
前記ディスクユニットは、上記いずれかの構成とされるディスクユニットであることを特徴とするディスクタイプ軸継手が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ミスアライメントによる繰り返し曲げ変形を受けてもクラック、剥離の発生を抑制し、強度低下を起こすことがない。従って、ミスアライメントの許容値が大きく、耐久性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るディスクタイプの軸継手及びディスクユニットを図面に則して更に詳しく説明する。
【0023】
実施例1
図1(a)、(b)に、本発明に係るディスクタイプ軸継手100の一実施例を示す。
図1(a)、(b)を参照すると、本実施例にて軸継手100は、入力軸(駆動軸)201が取付けられる第1ハブ101と、出力軸(被駆動軸)202が取り付けられる第2ハブ102とが対向配置されている。第1ハブ101と第2ハブ102との間には、回転トルク伝達部材として撓み板、即ち、ディスク10と、ディスク10をハブ101、102にボルトナットにて固定する際にディスク10を挟持して使用される固定板12とにて構成されるディスクユニット20が配置される。本実施例では、軸継手100は、ディスクユニット20を1組備えたシングルタイプの軸継手とされるが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、
図10に示すように、ディスクユニット20を2組(20A、20B)備え、各ディスクユニット20A、20Bを、第1ハブ101、102及びスペーサ(中間体)200に固定するようにした構造のスペーサタイプの軸継手など、当業者には周知の種々の軸継手に具現化し得る。
【0024】
本発明にて、ディスク10は、三角形以上の多角形体とされるが、本実施例では、環状の四角体とされる。本願明細書、特許請求の範囲では、外形状が矩形状とされ、内部にも同様に矩形状の穴が形成された多角形状体を「環状の多角体」という。つまり、本実施例では、
図2をも参照すると理解されるように、ディスク10は、外形状が矩形状(四角形)とされ、内部にも同様に矩形状(四角形)の穴が形成された構成とされる。即ち、ディスク10は、幅W、長さLとされる略長方形状の薄板状の四辺の辺部材10a、10b、10c、10dを互いに90°をなして接続した環状の四角体とされる。
【0025】
ディスク10は、環状四角体に成形加工された繊維強化プラスチック製の厚さ(T0)の薄板(即ち、撓み板)1枚で構成することもできるが、通常、
図1に示すように、複数枚の撓み板、例えば、4枚の撓み板(ディスク)10A、10B、10C、10Dの積層体(厚さT)にて構成される。このとき、各撓み板(ディスク)10A、10B、10C、10Dは、接着されることはなく、単に重ね合わせて積層するだけである。
図2(a)に示すように、環状四角体をなすディスク10の四隅(コーナー部)10s、10t、10u、10vには、対角線上に対をなして第1ハブ101への取付け穴13と、第2ハブ102への取付け穴14とが形成されている。
【0026】
第1ハブ101及び第2ハブ102は、限定されるものではないが、本実施例では、同じ形状とされ、円盤状のフランジ部101a、102aと、該フランジ部101a、102aと同中心にて一体に形成された円筒状ボス部101b、102bとを有している。フランジ部101a、102aとボス部101b、102bには、中心を貫通して回転軸(入力軸201、出力軸202)を取付けるための中心穴111、112が形成されている。
【0027】
また、第1ハブ101のフランジ部101aには、直径方向に対称配置にて連結ボルト挿通穴101cが形成されており、第2ハブ102aには、第1ハブフランジ部101aの前記連結ボルト挿通穴101cに対応した位置に連結ボルト121に螺合するナット131及び固定板12などの逃げ穴102dが形成されている。一方、第2ハブ102のフランジ部102aには、第1ハブフランジ部101aの対をなす連結ボルト挿通穴101cに対して90°離間した配置にて直径方向に対称配置にて連結ボルト挿通穴102cが形成されている。第1ハブ101には、第2ハブフランジ部102aの前記連結ボルト挿通穴102cに対応した位置に連結ボルト121に螺合するナット131及び固定板12などの逃げ穴101dが形成されている。
【0028】
従って、第1ハブフランジ部101aと第2ハブフランジ部102aとの間に配置された環状四角体をなすディスク10は、第1ハブの連結ボルト挿通穴101c及び第1ハブ取付け穴13を挿通した連結ボルト121にナット131が螺合されることにより、第1ハブ101に固定される。また、ディスク10は、第2ハブの連結ボルト挿通穴102c及び第2ハブ取付け穴14を挿通した連結ボルト121にナット131が螺合されることにより、第2ハブ102に固定される。各ナット131は、対向配置されたフランジ部の逃げ穴101d、102d内に位置することとなる。
【0029】
尚、本発明によれば、ディスク10は、
図1〜
図3に示すように、ディスク10(10A〜10D)のコーナー部10s〜10vの両側面が固定板12で挟持された状態でボルト121、ナット131によりハブ101、102に固定される。また、この固定板12は、
図2(a)、(b)に示すように、ディスク10のコーナー部10s〜10vに形成された出隅部(凸部)R1、入り隅部(凹部)R2
であって、固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2を完全に覆って密着した形状、寸法のものとされる。固定板12の構成及び作用については、後で詳しく説明する。
【0030】
次に、本発明に係るディスクユニット20を構成するディスク10及び固定板12について説明する。
【0031】
(ディスク)
ディスク10は、上述したように、環状四角体に成形加工された繊維強化プラスチック製の薄板(撓み板)を一枚だけ使用した構造とするか、或いは、複数枚接着することなく単に重ね合わせた積層体10A〜10Dの構造(
図1(a))とされる。なお、環状四角体をなすディスク10の四隅、即ち、互いに直交配置された直線状の四辺(辺部材)10a、10b、10c、10dの接続部をなすコーナー部10s〜10vは、
図2(a)、(b)に示す本実施例では、出隅部R1及び入り隅部R2を有し、該出隅部R1、入り隅部R2は湾曲形状とされる。
【0032】
本発明に係るディスク10は、後述するように、一枚の繊維強化プラスチック製の薄板(繊維強化プラスチック板)を、或いは、複数枚の繊維強化プラスチック板を互いに接着した繊維強化プラスチック板積層体を環状四角体に機械加工にて成形することにより作製される。別法としては、樹脂未含浸の繊維シートを環状の四角体形状に作製し、その後樹脂含浸し、次いで樹脂硬化するか、又は、プリプレグの繊維シートを環状の四角体形状に成形加工し、その後樹脂硬化させることによっても成形することができる。
【0033】
そこで、先ず、本発明のディスク10を作製するのに使用し得る薄板状の繊維強化プラスチック、即ち、ディスク形状への成形加工前の撓み板部材11(
図5参照)について説明する。
【0034】
撓み板部材11は、種々の形態の繊維シートに樹脂を含浸させ、硬化させることによって、或いは、樹脂含浸された半硬化状態の、所謂、プリプレグの繊維シートを硬化させることによって得られた繊維強化プラスチック板とされる。
【0035】
繊維シートの実施例を具体的に具体例1、2として説明するが、本発明で使用する繊維シートの形態は、これら具体例に示すものに限定されるものではない。
【0036】
具体例1
図4(a)、(b)に、本発明にて使用することのできる繊維シートの一実施例を示す。
図4(a)に示すように、繊維シートは、連続した強化繊維fを一方向に引き揃えてシート状に構成される樹脂未含浸の繊維シート1Aとされる。
【0037】
即ち、繊維シート1Aは、一方向に引き揃えた連続した強化繊維fから成る強化繊維シートをメッシュ状の支持体シートなどとされる線材固定材3にて保持した構成とすることができる。例えば、強化繊維fとして炭素繊維を使用した場合には、例えば平均径7μmの単繊維(炭素繊維モノフィラメント)fを6000〜24000本収束した樹脂未含浸の単繊維束を複数本、一方向に平行に引き揃えて使用される。炭素繊維シート1Aの繊維目付は、通常、30〜1000g/m
2とされる。
【0038】
線材固定材3としてのメッシュ状の支持体シートを構成するガラス繊維等の糸条からなる縦糸4及び横糸5の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3をシート状に配列した炭素繊維の片面或いは両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3の縦糸4及び横糸5の部分を炭素繊維シートに溶着する。
【0039】
メッシュ状支持体シート3は、2軸構成のほかに、3軸に配向して形成したり、或いは、ガラス繊維を一方向に配列された炭素繊維に対して直交する横糸5のみを配置した、所謂、1軸に配向して形成して前記シート状に引き揃えた炭素繊維に接着することもできる。
【0040】
又、上記線材固定材3の糸条としては、例えばガラス繊維を芯部に有し、低融点の熱融着性ポリエステルをその周囲に配したような二重構造の複合繊維も又好ましく用いられる。
【0041】
図4(b)に示すように、上述のようにして作製された繊維シート1Aに樹脂Reを含浸し、前記樹脂を硬化して繊維強化プラスチック板(FRP板)1Bとされる。このFRP板1Bは板厚(t)が例えば0.05〜0.5mm程度とされる。このFRP板1Bは、繊維方向が複数方向に、例えば0°、90°の二方向、0°、±60°の三方向など所定方向に配向するようにして、複数枚を接着剤にて接合して所定の板厚の撓み板部材11が作製される。
【0042】
例えば、
図5(a)に示す本実施例では、4枚のFRP板1Bを、0°、90°、90°、0°方向に配向するようにして互いに接着剤にて接合して硬化し、板厚(T0)0.1〜5mm程度の一体とされるFRP製撓み板部材11を作製する。
【0043】
次いで、上記撓み板部材11を、
図2に示すように、各辺部材10a〜10dの長さ及び幅が所定の長さ(L)及び幅(W)となるように、即ち、本実施例では、環状の四角体となるように機械加工する。
【0044】
また、本実施例では、コーナー部10s〜10vの角部は、出隅R1及び入り隅R2の湾曲形状となるように加工する。また、コーナー部10s〜10vには、連結ボルト121の挿通穴13、14が加工される。
【0045】
このようにして、ディスク10を構成する成形加工されたFRP製の撓み板が作製される。
【0046】
具体例2
具体例1では、繊維シート1は、
図4(a)に示すように、連続した強化繊維fを一方向に引き揃えてシート状に構成される樹脂未含浸の繊維シート1Aとされたが、強化繊維fの方向を一方向、二方向、三方向などに配列するか、又は、織成或いは編成したものとすることができる。このような繊維シートに樹脂Reを含浸し、前記樹脂が硬化され、繊維強化プラスチック板(FRP板)1C(
図5(b)参照)とされる。このFRP板1Cは、板厚(t)が例えば0.1〜1.0mm程度とされる。
【0047】
従って、このようにして作製されたFRP板1Cは強化繊維fの方向をディスク10の撓み方向に合わせて適宜重ねて積層する。例えば、
図5(b)に示すように、本具体例の2軸配向のFRP板1Cの場合には、4枚のFRP板1Cを繊維方向が同じとなるように配向して、互いに接着剤にて接合して硬化し、板厚(T0)0.1〜5mm程度の一体とされるFRP製撓み板部材11を作製する。
【0048】
次いで、上記FRP製撓み板部材11を、
図2に示すように、各辺部材10a〜10dの長さ及び幅が所定の長さ(L)及び幅(W)となるように、即ち、環状の四角体となるように機械加工する。また、コーナー部10s〜10vの角部は、出隅R1及び入り隅R2の湾曲形状となるように加工することができる。更に、コーナー部10s〜10vには、連結ボルト121の挿通穴13、14が加工される。
【0049】
このようにして、ディスク10を構成する成形加工されたFRP製の撓み板が作製される。
【0050】
上記具体例1、2で説明した繊維シート1A(FRP板1B、1C)において、強化繊維fとしては、炭素繊維に限定されるものではなく、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
【0051】
また、FRP板1B、1Cの場合の樹脂Reとしては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、繊維体積含有率(Vf)は、40〜75%、好ましくは、50〜60%とされる。
【0052】
上記具体例における説明では、樹脂未含浸の繊維シート1Aなどを使用して、繊維強化プラスチック1B、1Cを作製するものとしたが、一方向、二方向或いは三方向に配列した、又は、2軸、3軸の織物或いは編物などとされる強化繊維に熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂が含浸された強化繊維プリプレグを使用して作製することもできる。繊維体積含有率(Vf)は、40〜75%、好ましくは、50〜60%とされる。
【0053】
(固定板)
上述したように、ディスク10は、本実施例では環状四角体に成形加工された繊維強化プラスチック製の薄板である撓み板を一枚だけ使用して構成されるか、或いは、複数枚(10A〜10D)を接着することなく単に重ね合わせた積層体にて構成される。
【0054】
図1に示すように、環状四角体をなす複数枚の撓み板、即ち、例えば撓み板積層体10A〜10Dから成るディスク10は、第1ハブ101の連結ボルト挿通穴101c、及び、ディスク10の第1ハブ取付け穴13を挿通した連結ボルト121にナット131が螺合されることにより、第1ハブ101に固定される。また、ディスク10は、第2ハブ102の連結ボルト挿通穴102c、及び、ディスク10の第2ハブ取付け穴14を挿通した連結ボルト121にナット131が螺合されることにより、第2ハブ102に固定される。
【0055】
このとき、本発明によれば、ディスク10は、
図1(a)、
図3に示すように、そのコーナー部10s〜10vの両面が固定板12、12に挟持されており、該固定板12、12を介してボルト121、ナット131によりハブ101、102に固定される。
【0056】
次に、固定板12の構成及び作用について更に説明する。
【0057】
固定板12は、その形状は、任意の形状とされるが、
上述した如く、図2(a)、(b)に示すように、ディスク10のコーナー部10s〜10vに形成された
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2を完全に覆った形状、寸法のものとされる。つまり、固定板12は、ディスク10のコーナー部10s〜10vに形成された
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2に完全に接触する形状寸法とされる。固定板の形状、寸法は、ディスク10のコーナー部10s〜10vの
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2が露出することがないように覆うことができれば、任意の形状とすることができ、円形、四角形、六角形など、ディスクの形状に応じて適宜決めることができる。
【0058】
本実施例では、固定板12の形状は、円形状とされており、ディスク10に当接する側の面の直径D1は、コーナー部10s〜10vに形成された
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2を含む領域と完全に接触する大きさとされる。また、固定板12のディスク10との接触面の境界部R12は
図3(a)、(b)に示すように、湾曲形状とするのが好ましい。この湾曲形状(R12)を設ける構成により、ディスク10に対する固定板12の締め付け力による応力集中を緩和することが可能である。
【0059】
なお、上記説明では、コーナー部10s〜10vの出隅部R1、入り隅部R2は、適当な湾曲形状であるとして説明したが、上述のように、本発明によれば、ディスク10のコーナー部10s〜10vの
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2は、固定板12の中に納まる形状で、且つ、固定板12の締め付け力に対して十分な耐力があれば、特に出隅部R1、入り隅部R2を湾曲形状とすることは必ずしも必要ではない。
【0060】
固定板12の材質は、十分な曲げ剛性が得られるものであれば特に限定されるものではないが、ステンレススチール等の鋼材、アルミ材などの金属材、樹脂板、繊維強化プラスチック材、セラミックス材などを使用し得る。
【0061】
次に、
図7を参照して、固定板12の作用について説明する。
【0062】
上述したように、本発明者らは、コーナー部10s〜10vの出隅部R1や入り隅部R2などでの応力集中を緩和するために各辺部材10a〜10dに穏やかな湾曲を設けたディスクを作製し、このディスクを軸継手に組み込み実験を行ったところ、この湾曲部分に強化繊維に沿ったクラックや剥離が発生することが多く、これが疲労強度の低下原因となっていることが分かった。
【0063】
つまり、
図7に示すように、各辺部材10a〜10dの湾曲部分にミスアライメントによる繰り返し曲げ変形に起因した曲げ応力が作用した場合に、この湾曲部分の切断端部が露出した強化繊維fに沿ってクラックや剥離が発生することが分かった。
【0064】
つまり、例えば、
図7に示すディスク10の構成では、各辺部材10a〜10dの湾曲部分にミスアライメントによる繰り返し曲げ変形に起因した曲げ応力が作用した場合に、この湾曲部分の切断端部が露出した強化繊維fに沿ってクラックや剥離が発生する。
【0065】
従って、本発明では、
図2に示すように、各辺部材10a〜10dの形状を直線状としている。更に、コーナー部10s〜10vは、上述のように、固定板12にて挟持し、
固定板12が接触する平面における出隅部R1及び入り隅部R2が露出しないようにして第1ハブ101及び第2ハブ101に取付ける。
【0066】
次に、本発明の効果を立証するために本発明者らが行った実験及びその結果について以下に説明する。
【0067】
実験例1
本実験では、
図1に示すディスクタイプ軸継手に、本発明に従った構成のディスクユニット、及び、従来使用されている構成のディスクを使用したディスクユニットを装着して、両者の耐久試験を行った。
【0068】
(ディスク)
試験体である本実施例及び比較例のディスクは、下記の要領にて作製した。
【0069】
本実験例にて使用する試験体を作製するための繊維シートは、
図4(a)に示すように強化繊維を一方向に配列し、マトリックス樹脂が含浸されたプリプレグ(UDプリプレグ)を使用した。
【0070】
本実験ではUDプリプレグとして、PAN系高強度タイプ炭素繊維UDプリプレグを使用した。マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂であり、繊維体積含有率(Vf)は、57%であった。
【0071】
上記炭素繊維UDプリプレグを、0°/90°/90°/0°/90°/90°/0°の配向角度で積層して接着し、オートクレーブを用いて130℃、2時間で硬化させ、繊維強化プラスチック製撓み板部材11を得た。
【0072】
上記繊維強化プラスチック製撓み板部材11の諸物性は、次の通りである。
弾性係数:0°方向曲げ弾性係数88GPa、90°方向曲げ弾性係数59GPa
曲げ強度:0°方向曲げ強度1.9GPa、90°方向曲げ強度1.7GPa
厚さ(T0):0.7mm
【0073】
本実験例では、上記繊維強化プラスチック製撓み板部材11を機械加工して本実施例と比較例の環状四角体の撓み板、即ち、ディスク10を作製した。
【0074】
本実施例の撓み板部材11は、
図2(及び
図6)に示すように、直線状とされる各辺部材10a〜10dの内側縁部10in及び外側縁部10outに沿って強化繊維fが平行に配向されて位置するように加工した。また、コーナー部10s〜10vの角部は、出隅部R1及び入り隅部R2が湾曲形状となるように加工した。コーナー部10s〜10vには、連結ボルト121の挿通穴13、14を加工した。
【0075】
ここで、直線状の各辺部材10a〜10dは、長さ(L)が77mm、幅(W)は15mmとした。取付け穴13、14間の距離(L0)は、58mmとした。また、コーナー部10s〜10vにおける出隅部R1及び入り隅部R2は、それぞれ、半径9.5mm、1.6mmの湾曲形状とした。
【0076】
比較例の撓み板部材11も又、上記実施例と同様にして作製したが、ただ、比較例の撓み板部材11は、
図7に示す形状寸法に機械加工した。即ち、各辺部材10a〜10dは、その外側縁部10out及び内側縁部10inは湾曲形状とされ、それぞれ、半径117mm、22mmとし、対向する辺部材の外周縁部10out間の長さ(L)は86mm、内周縁部10in間の幅(Wo)は55mmとした。取付け穴13、14間の距離(Lo)は、58mmとした。また、コーナー部10s〜10vは、外側及び内側とも出隅(凸状)R1、R2とされ、それぞれ、半径10mm、15mmの湾曲形状とした。
【0077】
このようにして環状四角体に成形された撓み板10A〜10Dを4枚積層して厚さ(T)が2.8mmとされる本実施例及び比較例のディスク10(
図2)、10P(
図7(a))を作製した。
【0078】
(固定板)
固定板12は、
図3(b)に示すように、ステンレススチールにて作製した円板形状のものとした。厚さT12が2.5mmであり、外径D2が20mm、ディスク10との当接面の外径D1は、18mmとした。また、直径D1の面から直径D1の外周面への境界領域R12は、半径が1mmの面取りを行った。中心に直径10mmのボルト貫通穴12aを穿設した。
【0079】
(試験方法)
試験体である上記ディスク10、10Pを、固定板12を使用して
図1に示すシングルタイプの軸継手に装着した。本実施例の構成においては、固定板12は、ディスク10のコーナー部の
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2を全て覆って取付けることができ、ディスクのコーナー部の
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2が固定板12から露出することはなかった。これに対して、比較例のディスク10Pは、
図7(b)に示すように、ディスク10Pのコーナー部10s〜10vの内側出隅部R2が固定板12より露出していた。
【0080】
耐久試験条件は、次の通りであった。
・ミスアライメント:偏角3°付与
・軸方向強制変位:0.7mm
・試験回転数:1800rpm
・試験回数:1×10
7
【0081】
(試験結果)
耐久試験後の試験体に造影剤を端部から染み込ませ、X線による損傷観察を行った。
【0082】
比較例のディスク10Pには、
図7(b)に示すように、湾曲形状とされる内周縁部10in及び外周縁湾曲部10outにも、クラック(層間剥離)が発生した。一方、本実施例のディスク10には何らクラック(層間剥離)は発生せず、異常はなかった。
【0083】
更に、耐久試験後の残存強度確認を行った。つまり、耐久試験後のディスクを軸継手のハブ101、102に取付け、軸方向引張荷重を負荷して曲げ破壊させ、残存強度の確認を実施した。試験結果を表1に示す。
【0085】
本発明の構成によれば、上記実験結果から理解されるように、ミスアライメントによる繰り返し曲げ変形を受けてもクラック、剥離の発生を抑制し、強度低下を起こすことがない。従って、ミスアライメントの許容値が大きく、耐久性に優れている。
【0086】
実施例2
上記実施例1では、ディスク10は、外形状が矩形状(四角形)とされ、内部にも同様に矩形状(四角形)の穴が形成された環状の四角体であるとして説明した。しかし、本発明のディスク10は、ディスク10を形成する各辺部材の形状が直線状とされることが重要であり、ディスク10の形状、寸法は、三角形以上の多角形であれば良く、強化繊維の配向方向は、必要な曲げ剛性と強度に応じて決めることができる。
【0087】
変更実施例1
図8(a)には、6辺の辺部材10a〜10fから成る環状の六角体のディスク10を示す。この変更実施例においても各辺部材10a〜10fは直線状とされる。この場合には、繊維強化プラスチックの強化繊維の配向を、例えば、0°、±60°の三方向に配向した構成とするのが良い。
【0088】
なお、
図8(a)に示す本変更実施例1によれば、ディスク10のコーナー部10s〜10xの
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2は、固定板12の中に納まる形状で、且つ、固定板12の締め付け力に対して十分な耐力を持たせることにより、出隅部R1、入り隅部R2は角形状とされている。
【0089】
変更実施例2
図8(b)には、実施例1と同様の4辺の辺部材10a〜10dから成る環状の四角体のディスク10を示す。ただ、本変更実施例2では、コーナー部10s〜10vは、外側縁部10out及び内側縁部10inとも出隅(凸)形状とされている。斯かるコーナー形状であっても、図示するように、ディスク10のコーナー部10s〜10vの
固定板12が接触する平面における出隅部R1、R2が固定板12の中に納まる形状であれば実施例1と同様の作用効果を達成し得る。
【0090】
変更実施例3
図9(a)には、実施例1と同様の4辺の辺部材10a〜10dから成る環状の四角体のディスク10を示す。ただ、本変更実施例3では、コーナー部10s〜10vの外側縁部10outを形成する出隅部R1の形状が、各辺部材10a〜10dの外側縁部10outより更に外方へと突出した形状とされている。斯かるコーナー形状であっても、図示するように、ディスク10のコーナー部10s〜10vの
固定板12が接触する平面における出隅部R1、入り隅部R2が固定板12の中に納まる形状であれば実施例1と同様の作用効果を達成し得る。
【0091】
変更実施例4
上記各実施例、変更実施例では、ディスク10は、直線状の複数の辺部材10a〜10fにて一体に形成された環状の多角形体であるとして説明した。しかし、本発明のディスク10の形態は、これに限定されるものではなく、直線状に成形された短冊状のリンク部材を一体的に組み合わせて環状の多角形体とすることもできる。
【0092】
図9(b)、(c)には、4つの短冊状のリンク部材とされる直線状に成形された辺部材10a〜10dを、実施例1と同様の4辺から成る四角体のディスク形状に組み合わせた構成を示す。各短冊状の辺部材10a〜10dは、各辺部材10a〜10dの両端部を互いに接着剤にて接着して一体とすることもできるが、固定板12により固定することにより、実質的に実施例1の環状四角体と同じ構造とされ、実施例1と同様の作用効果を達成し得る。本変更実施例4では、固定板12は四角形とされている。勿論、他の実施例と同様に円形状であっても良い。