特許第5945473号(P5945473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945473
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】シート成形容器とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/26 20060101AFI20160621BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B65D1/26
   B65D21/02 410
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-164847(P2012-164847)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-24562(P2014-24562A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158943
【氏名又は名称】株式会社積水技研
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】西岡 卓
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−213358(JP,A)
【文献】 特開2008−239162(JP,A)
【文献】 米国特許第05695798(US,A)
【文献】 米国特許第03884383(US,A)
【文献】 米国特許第02814427(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00− 1/48
B65D21/00−21/08
B65D23/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シート製の熱成形品たるシート成形容器であって
平面視矩形の底部と、該底部の外周縁から上方に起立した周側壁と、該周側壁の上端縁から外向きに延出する鍔部とを有し、前記底部と前記周側壁とによって上部に矩形開口を有する収容凹部が形成されており、
前記周側壁の上端部には外側に膨出するスタック部が形成され、複数の前記スタック部が前記周側壁の周方向に互いに距離を隔てて配されているとともに該スタック部がその下端部における膨出長さが上端部における膨出長さよりも長いアンダーカット形状を有しており、
前記熱可塑性樹脂シートがポリプロピレン系樹脂シート、前記スタック部が前記矩形開口の4つの角部に配され、且つ、対角に位置するスタック部の前記下端部どうしを結ぶ距離をA(cm)とし、前記上端部どうしを結ぶ距離をB(cm)とした際に、 (A×0.99)≦B<A の関係を満たすように前記スタック部が形成されていることを特徴とするシート成形容器。
【請求項2】
熱可塑性樹脂シートを熱成形してシート成形容器を作製するシート成形容器の製造方法であって、
前記シート成形容器は、平面視矩形の底部と、該底部の外周縁から上方に起立した周側壁と、該周側壁の上端縁から外向きに延出する鍔部とを有し、前記底部と前記周側壁とによって上部に矩形開口を有する収容凹部が形成されており、前記周側壁の上端部には外側に膨出するスタック部が形成され、複数の前記スタック部が前記周側壁の周方向に互いに距離を隔てて配されているとともに該スタック部がその下端部における膨出長さが上端部における膨出長さよりも長いアンダーカット形状を有しており、
前記熱可塑性樹脂シートがポリプロピレン系樹脂シートで、前記スタック部が前記矩形開口の4つの角部に配され、且つ、対角に位置するスタック部の前記下端部どうしを結ぶ距離をA(cm)とし、前記上端部どうしを結ぶ距離をB(cm)とした際に、 (A×0.99)≦B<A の関係を満たすように前記スタック部が形成されていることを特徴とするシート成形容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂シートが熱成形されてなるシート成形容器とその製造方法に関し、より詳しくは、平面視矩形の底部と、該底部の外周縁から上方に起立した周側壁と、該周側壁の上端縁から外向きに延出する鍔部とを有し、前記底部と前記周側壁とによって上部に矩形開口を有する収容凹部が形成されており、前記周側壁の上端部には外向きに膨出するスタック部が形成されているシート成形容器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート樹脂などからなる長尺帯状の熱可塑性樹脂シートをロール状に巻き取った原反ロールを用い、底部と、該底部の外周縁から上方に起立した周側壁とによって収容物を収容するための収容凹部が形成された食品用容器などを連続的に製造する容器製造方法が広く行われている。
例えば、熱可塑性樹脂シートを変形可能な軟化状態となるように加熱する加熱ゾーンと、該加熱ゾーンで軟化された熱可塑性樹脂シートを熱成形するための成形型を備えた成形ゾーンと、前記熱可塑性樹脂シートに成形型で製品形状を形成させて得られた半製品シートを打ち抜いて製品と製品外の部分とを切り分けるトリミングゾーンとを有する製造設備に前記原反ロールから繰り出した帯状の熱可塑性樹脂シートを供給して食品用の容器などを連続的に大量生産することが従来広く行われている。
【0003】
なお、このような容器の製造に用いられる熱成形用の成形型としては、通常、容器の収容凹部に対応した形状の成形用凹部を有するものが用いられており、前記熱成形に際しては軟化した熱可塑性樹脂シートと成形型とを対面させて接触させ、前記成形用凹部内を真空引き(真空成形)するか、成形用凹部とは逆側から熱可塑性樹脂シートを加圧(圧空成形)するか、あるいは、該加圧を伴う前記真空成形(所謂「真空・圧空成形」)を実施するかして前記成形用凹部における型形状に沿わせて熱可塑性樹脂シートを変形させるとともにこの成形用凹部の内面に熱可塑性樹脂シートを当接させて成形型から脱離させても十分に形状保持可能なレベルにまで熱可塑性樹脂シートを冷却させることが行われている。
このときに用いられる前記成形型には、通常、成形後の半製品シートを容易に脱離させ得るように抜き勾配が設けられている。
従って、このような成形型を用いて形成されるシート成形容器は、通常、周側壁が下端側から上端側に向けて外広がりになるように形成されている。
【0004】
また、前記トリミングゾーンにおいては、板刃を製品の輪郭形状に折り曲げ加工したものを木製刃台などに取り付けたトムソン刃型や、製品の輪郭形状に相当する抜孔を有するダイスと前記抜孔に挿抜可能なポンチとが組み合わされたパンチャーなどと呼ばれる打抜型を用いて前記成形用凹部によって賦形された部分の外側において半製品シートを切断することが行われている。
このようなことから、通常、この種の容器には、前記成形用凹部によって形成された収容凹部の周囲に容器外方に向けて延出する鍔部が備えられている。
【0005】
ところで、この種の容器は、複数の容器を単に集合させただけでは非常に嵩高くなってしまうことから製造後には“容器スタック”などと呼ばれる積層構造を形成させ、容積を減少させて需要者に供給されている。
このとき容器どうしを緊密な状態で積層させるほど容積を減少させることができるものの過度に緊密に積層させると容器スタックから個々の容器を単離することが難しくなるために、容器どうしに一定の間隔が保たれるように容器外方に向けて膨出させたスタック部を周側壁の上端部に形成させることが行われている(下記特許文献1参照)。
【0006】
なお、このスタック部は、容器外側において膨出形状を形成している一方で、容器内側から見ると外側に向けて窪んだ形状を形成させているために、単に外向きに膨出する形状を形成させただけでは求める機能を発揮させることは難しい。
即ち、そのまま容器どうしを重ね合わせると上位の容器の外側の膨らみ部分が下位の容器の窪みに入り込んでしまう結果スタック部を設けない場合と何等変わらない状況になってしまうおそれを有する。
【0007】
このことから、従来、開口縁の周方向におけるスタック部の形成位置を異ならせた数種類の容器を作製し、スタック部の形成位置が同じ容器どうしが直接重なりあわないようにさせたり、下記特許文献1に示すように周側壁の上端縁における膨出長さが下端部における膨出長さよりも短いアンダーカット形状を有するスタック部を形成させてスタック部の形成位置を共通させながらも容器どうしを一定の間隔で積層可能な状態にさせたりして容器スタックを形成させることが行われている。
【0008】
このアンダーカット形状を有するスタック部を形成させた容器は、スタック部の形成位置を異ならせる容器と違って積層順序等に注意を払うことなく容器スタックを形成させることができる点において取り扱いが容易であるといえる。
一方で、アンダーカット形状を有するスタック部は、成形型に抜き勾配とは逆勾配となる形状を設けて形成させることになるために、脱型性を考えるとその下端部を上端部よりも大きく外側に膨出させることが難しく、容器スタックにおいて積層方向に隣接する上位側の容器と下位側の容器とのスタック部どうしの係合を浅くさせてしまいやすいという問題を有している。
【0009】
従って、例えば、下記特許文献1の図1には矩形開口の各辺に2箇所ずつスタック部を設ける態様が示されているが、このような容器で形成させた容器スタックに圧縮方向の力が作用した場合には周側壁が外側に撓んで開口を広げる形に変形し、積層方向上位側の容器のスタック部が下位側の容器のスタック部に内側から嵌まり込んでしまい、かえって容器の単離を困難にさせるおそれを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−213358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、アンダーカット形状を有するスタック部を有しながらもスタック部どうしが嵌まり込んでしまうおそれの低いシート成形容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討を行ったところ、熱可塑性樹脂シートとしてポリプロピレン系樹脂シートを熱成形してシート成形容器を形成させる場合には、成形時の収縮が大きいためにアンダーカット形状を形成させるための逆勾配を比較的深い角度で形成させても脱型が容易になること、及び、容器スタックに圧縮力が作用しても矩形開口の角部においては外広がりとなる変形がシート成形容器に生じ難く、この部分にスタック部を設けることがスタック部どうしの嵌まり込みを抑制させるのに有効であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、シート成形容器に係る本発明は、熱可塑性樹脂シートが熱成形されてなり、平面視矩形の底部と、該底部の外周縁から上方に起立した周側壁と、該周側壁の上端縁から外向きに延出する鍔部とを有し、前記底部と前記周側壁とによって上部に矩形開口を有する収容凹部が形成されており、前記周側壁の上端部には外側に膨出するスタック部が形成され、複数の前記スタック部が前記周側壁の周方向に互いに距離を隔てて配されているとともに該スタック部が、その下端部における膨出長さよりも上端部における膨出長さが短いアンダーカット形状を有しているシート成形容器であって、ポリプロピレン系樹脂シート製であり、且つ、前記スタック部が前記矩形開口の4つの角部に配されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンダーカット形状を有するスタック部を有しながらもスタック部どうしが嵌まり込んでしまうおそれを抑制させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本発明の一実施形態に係るシート成形容器である充填豆腐用容器を表す概略斜視図、(b)同充填豆腐用容器の概略上面図、及び、(c)同充填豆腐用容器の概略正面図。
図2】(a)図1におけるX−X’線矢視における概略断面図、及び、図2(a)において破線丸囲いZで示した部分を拡大した概略拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について、シート成形容器として充填豆腐用容器を例にして図面を参照しつつ説明する。
【0017】
なお、図1(a)は、本実施形態のシート成形容器である充填豆腐用容器の概略斜視図で、(b)は概略上面図であり、(c)は概略正面図である。
また、図2(a)は、図1におけるX−X’線矢視における概略断面図であり(b)は図2(a)において破線丸囲いZで示した部分を拡大した概略拡大図である。
これらの図にも示されているように、本実施形態における充填豆腐用容器100は、平面視略正方形の底部111と、該底部111の外周縁から上方に起立した角筒状の周側壁112と、該周側壁112の上端部から外向きに延出する平板状の鍔部113とを有している。
【0018】
本実施形態の充填豆腐用容器は、被収容物たる充填豆腐を収容するための収容凹部110が前記底部111と周側壁112とによって略直方体状の収容スペースを有するように形成されており、該収容凹部110の上部開口を包囲するように前記鍔部113が形成されている。
なお、厳密には、前記底部111は、平面視における形状が角部に丸みを持たせた正方形となっており、前記周側壁112も角部に丸みを持たせた角筒状となっている。
また、前記周側壁112の上縁内側における容器開口はその開口縁110e(以下「容器開口縁110e」ともいう)の形状も前記底部111などと同じように角部に丸みを持たせた正方形となっている。
さらに、本実施形態の充填豆腐用容器は、成形型から脱型性を考慮して、充填豆腐用容器100に抜き勾配を形成させるべく前記周側壁112が底部側から上端側に向けて僅かに拡径する角筒状に形成されており、前記収容凹部110がその内側に逆四角錘台形状の収容スペースを形成させている。
【0019】
なお、本実施形態における充填豆腐用容器100の前記鍔部113は、容器開口縁110eからの延出長さを該開口縁周りにおいて略一定させている。
従って、前記鍔部113の外縁113eによって画定される充填豆腐用容器100の上面視における輪郭形状は、容器開口縁110eが描く正方形に比べて鍔部の延出長さ分だけ大きな正方形となっている。
なお、本実施形態における充填豆腐用容器100は、前記周側壁112の上端部において外側に膨出するスタック部114が前記周側壁112の周方向に互いに距離を隔てて4箇所に形成されており、それぞれ前記容器開口縁110eの角部に位置するように配されている。
【0020】
なお、本実施形態における前記スタック部114は、4つとも形状を共通させており、その下端部における膨出長さよりも上端部における膨出長さが短いアンダーカット形状を有している。
該スタック部114は、周側壁112の上端縁から数mm下方にかけて形成されており、その下端には水平方向外側に張り出したスタック水平部114aを有し、さらに、前記容器開口縁110eから前記スタック水平部114aの外縁にかけて垂下するスタック下降部114bとを有している。
前記スタック下降部114bは、容器開口縁110eの角部に設けた丸みを有したままの状態で前記スタック水平部114aの外縁にかけて垂下しており、且つ、前記抜き勾配とは逆勾配となって垂下している。
即ち、前記スタック下降部114bは、水平方向における断面形状が円弧状で、前記スタック水平部114aに向けて外広がりとなるように垂下し、その下端において前記スタック水平部114aの外縁を前記容器開口縁110eよりも一回り大きな円弧状に形成させている。
従って、本実施形態における前記スタック水平部114aは、外縁がスタック下降部114bの下端によって円弧状に形成されているとともに内縁が周側壁112の角部と同じく円弧状に形成されており、平面視三日月形状となっている。
【0021】
なお、このような充填豆腐用容器100は、一般的なシート成形容器の製造方法と同様の方法を採用して得ることができる。
例えば、前記収容凹部110の形状に相当する内面形状を有する成形用凹部が鍔部113の延出長さの2倍を超える間隔を保って縦横に複数ずつ配列された多面取り成形型を用意し、この成形型よりも大面積のポリプロピレン系樹脂シートを成形可能な軟化状態となるように加熱して前記成形型に重ね、この状態で成形型側から真空引きするか、成形型とは逆側から圧空をかけて成形型の型面形状に沿うようにポリプロピレン系樹脂シートを変形させ、この状態でポリプロピレン系樹脂シートを成形型で冷却して製品形状が縦横に複数配列された半製品シートを作製し、該半製品シートを成形型から脱離させた後にトムソン刃型やパンチャーなどによって個々の製品を切り出すトリミングを実施して充填豆腐用容器を得ることができる。
【0022】
ここで本実施形態の充填豆腐用容器は、前記のようなアンダーカット形状を有するスタック部を備えているために成形型のスタック部形成箇所に抜き勾配とは逆の勾配を形成させることになる。
即ち、成形型の成形用凹部の側面にスタック部の膨出形状に相当する凹入部を形成させなければならず、且つ、成形用凹部の底部に向かうに従って側方に向けて深く凹入するように凹入部を形成させることになる。
このために、本実施形態における充填豆腐用容器100の形成には、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体などのプロピレン系樹脂を主成分としたポリプロピレン系樹脂シートを用いることが重要である。
【0023】
即ち、本実施形態における充填豆腐用容器100の成形には、容器開口縁110eの形状に相当する矩形開口を有する成形用凹部を備えた成形型を用いて真空成形や圧空成形を実施させることになるが、該成形型は、成形用凹部の矩形開口の4つの角部において、開口縁から前記スタック下降部114bの高さ分だけ底部側に向かう間は外広がりとなっているためにポリエチレンテレフタレート樹脂シートなどを用いたのではスタック部が成形型に引っ掛かって半製品を脱型する作業を困難にさせるおそれを有する。
【0024】
一方でポリプロピレン系樹脂シートは、熱成形における収縮がポリエチレンテレフタレート樹脂シートに比べて大きく、長さにおいて1%程度の収縮を示すことからスタック部の成形型への引っ掛かりを浅く、或いは、全く引っ掛からない状態にすることができ、製品形状の複数形成された半製品を容易に成形型から脱離させることができる。
なお、このような収縮に際しては、通常、全体が略均等に収縮することからスタック部114のアンダーカット形状もそのまま保持され、スタック部114の機能が損なわれるおそれは低い。
この脱型作業の作業性の観点からは、図2に示すように、対角に位置するスタック部114の前記下端部どうしを結ぶ距離をA(cm)とし、前記上端部どうしを結ぶ距離をB(cm)とした際に、[ (A×0.99)≦B<A ]の関係を満たすように前記スタック部114が形成されていることが好ましい。
【0025】
即ち、アンダーカット形状を形成させるためには「B<A」となることが必須条件となるが、容器スタックにおいて上下に隣接している容器のスタック部どうしが嵌まり込んでしまうことを抑制させることを考えると、対角に位置するスタック部114の下端部どうしを結ぶ距離(スタック水平部114aの外縁間の距離)である「A(cm)」が上端部どうしを結ぶ距離(容器開口縁における対角の距離)である「B(cm)」に比べてできるだけ大きな値を取ることが有利となる。
その一方でスタック部114の下端部の張り出しを過度に大きくすると脱型において不利となってしまうおそれを有する。
そのようなことから「B」の値は「A×0.99」以上であることが好ましい。
なお、この「A」、「B」の値は、例えば、充填豆腐用容器の内法を投影機で寸法測定するなどして求めることができる。
【0026】
本実施形態の充填豆腐用容器の形成に用いられているポリプロピレン系樹脂シートは、通常、ポリエチレンテレフタレート樹脂シートなどに比べて軟質であるために脱型において有利であるといえる。
即ち、本実施形態においては、成形型の成形用凹部内に嵌まり込んでいるポリプロピレン系樹脂シートをある程度変形させることが容易であるために、前記半製品シートを成形型から脱離させようとした際にスタック部が成形型に引っ掛かってしまうような場合でも該半製品シートに弾性変形を生じさせて成形型から容易に脱離させることができる。
【0027】
その一方で、本実施形態においてはスタック部が角部に形成されているためにトリミング後の製品を積層して容器スタックを形成させる際にポリプロピレン系樹脂シートの柔らかさが悪影響してしまうことを抑制させ得る。
即ち、本実施形態の充填豆腐用容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂製のものなどに比べて軟質なものとなり易いために、例えば、矩形開口の辺中央部にスタック部を形成させたりすると、容器スタックの積層方向に圧縮力が作用した際に容器開口が拡大するように変形を生じて上下に隣接するシート成形容器間でスタック部が嵌まり合ってしまうおそれを有する。
一方で角部においては、容器スタックに前記圧縮力が作用したとしても変形を生じ難く、充填豆腐用容器のスタック部どうしが嵌まり込んでしまうおそれを抑制させることができる。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る充填豆腐用容器は、アンダーカット形状を有するスタック部を有しながらもスタック部どうしが嵌まり込んでしまうおそれを抑制させ得る。
従って、積層して容器スタックを形成させる際や、容器スタックから個々の充填豆腐用容器を単離させて利用するような場合の作業性を良好なものとさせることができる。
【0029】
なお、本実施形態においては、ポリプロピレン系樹脂シートによって形成させるシート成形容器として充填豆腐用容器を例示しているが本発明においては、シート成形容器を充填豆腐用容器に限定するものではない。
【0030】
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂シートとは、ポリプロピレン系樹脂単独で形成されているシートのみを意図するものではなく、ポリエチレン樹脂やシクロオレフィンポリマーなどのポリプロピレン系樹脂以外の樹脂が少量含有されているようなものをも意図している。
【0031】
さらに、本発明のシート成形容器の形成に用いるポリプロピレン系樹脂シートとしては、ポリプロピレン系樹脂単独で形成されているシートやその他の樹脂を少量含有するシートに表面印刷が施されたものであっても良く、ポリプロピレン系樹脂単独で形成されているシートやその他の樹脂を少量含有するシートに意匠性を備えた樹脂フィルムが積層されたものであっても良い。
【0032】
なお、通常、ポリプロピレン系樹脂シートは、厚みが0.2mm〜1.3mmのものを採用することができるが、当然ながらこの範囲外の厚みを有するポリプロピレン系樹脂シートも本発明のシート成形容器の形成に用いることが可能なものである。
なお、ここではこれ以上の詳述を行わないが、熱成形用成形型や、熱成形による容器製造方法などに関して従来公知の技術事項を、本発明に適宜採用しうることは説明するまでもなく当然の事柄である。
【符号の説明】
【0033】
100:充填豆腐用容器(シート成形容器)、110:収容凹部、111:底部、112:周側壁、113:鍔部、114:スタック部
図1
図2