特許第5945482号(P5945482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945482
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】発泡樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/02 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   A01K63/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-204790(P2012-204790)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-57543(P2014-57543A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】506069505
【氏名又は名称】株式会社積水化成品四国
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 雅信
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−189925(JP,A)
【文献】 特開2004−113140(JP,A)
【文献】 特開2007−97505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/02
A01K 97/20
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有する容器本体と、該容器本体の上部開口を閉塞させるための蓋体とが備えられ、該蓋体、及び、前記容器本体が発泡性樹脂ビーズどうしを熱融着させて形成されており、前記容器本体に水とともに魚介類を収容し、エアポンプを備えた散気装置によって前記水の中で散気を実施して前記魚介類を生かしたまま搬送すべく用いられ、
前記容器本体には、前記魚介類及び前記水を収容するための魚介類収容室と、前記エアポンプを収容するためのポンプ室とが形成されており、
前記蓋体が、上面側に溝を有し、該溝が前記魚介類収容室を閉塞させるための領域に一端側を位置させ、他端側を前記蓋体の側縁にまで到達させており、前記蓋体には、該溝の前記一端側において当該該蓋体を上下に貫通する貫通孔がさらに形成されている発泡樹脂製容器であって、
前記蓋体は、前記上面側に前記溝を包囲する第一の領域と該第一の領域を包囲する第二の領域とを有し、前記第一の領域が前記第二の領域よりも一段高くなるように形成されていることを特徴とする発泡樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類を生かしたまま搬送すべく散気装置とともに用いられる容器に関し、より詳しくは、水とともに魚介類を収容する容器本体と該容器本体の開口を閉塞する蓋体とを有し、該蓋体及び前記容器本体が発泡性樹脂ビーズどうしを熱融着させて形成されている発泡樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアポンプと該エアポンプから排出される空気を搬送するためのエアチューブとを有し、セラミックス多孔質体などからなる散気体が前記エアチューブの先端に装着された散気装置が生簀や観賞用水槽における魚類への酸素供給に用いられている。
また、このような散気装置としては、乾電池等で駆動可能とされた携帯型のものが知られており、該携帯型散気装置が食用魚介類や観賞用魚介類の搬送に際して広く用いられている。
このような散気装置とともに魚介類を搬送するための容器としては、軽量性、及び、断熱性に優れながらも強度と緩衝性とに優れることから、従来、発泡スチロールなどの発泡性樹脂ビーズどうしを熱融着させて形成された発泡樹脂製容器が広く用いられている(下記特許文献1参照)。
【0003】
従来のこの種の発泡樹脂製容器は、通常、上部開口を有する容器本体と、該容器本体の開口を閉塞すべく容器本体に着脱自在に取り付けられる蓋体とを有し、水とともに魚介類を前記容器本体に収容して、前記のような散気装置によって水の中で散気を実施することによって前記魚介類を生かしたまま搬送し得るように形成されており、前記容器本体には、前記魚介類及び前記水を収容するための魚介類収容室と、前記エアポンプを収容するためのポンプ室とが形成されている。
【0004】
また、この種の発泡樹脂製容器は、搬送中の振動によって前記魚介類収容室から水が溢れたり、魚介類を衰弱させる原因となる異物等が魚介類収容室に混入したりすることを防止すべく、前記蓋体によって、少なくとも前記魚介類収容室の上部開口が閉塞されるように形成されている。
【0005】
なお、このような発泡樹脂製容器においては、被水した時に水がポンプ室に入り込むとエアポンプを故障させる原因となることから、前記ポンプ室への水の浸入を抑制させる工夫が施されているとともに、仮に水が浸入した場合でも速やかに当該ポンプ室から水か排出されるように工夫が施されている。
例えば、下記特許文献1においては、ポンプ室と魚介類収容室との間に直接的にエアチューブを配設するのではなく、ポンプ室から一旦容器外へと迂回させた後に魚介類収容室に至るような形でエアチューブの配設経路が設けられて魚介類収容室からポンプ室への水の浸入を防止することが記載されている(段落0004等参照)。
また、下記特許文献1においては、ポンプ室に排水孔を設けて水の蓄積を防止することなどが記載されている(段落0023等参照)。
【0006】
ところで、このような発泡樹脂製容器においては、水の漏洩を防止すべく魚介類収容室の密閉性を高めると当該魚介類収容室から空気も逃げ難くなるために、散気時に内圧が上昇して良好な散気が行われなくなるおそれを有する。
そのため従来の発泡樹脂製容器には、魚介類収容室を閉塞させている部分に空気抜き用の貫通孔を設けた蓋体が広く採用されている。
【0007】
なお、単に蓋体に貫通孔を設けただけでは、発泡樹脂製容器どうしを積み重ねた際などにおいて、貫通孔が塞がれた状態になってその機能を発揮させることができなくなるおそれを有する。
そのために、一端側を魚介類収容室に対応する箇所に位置させ、且つ、他端側を蓋体の側縁部にまで到達する溝を蓋体の上面側に形成させて該溝の前記一端側に貫通孔を形成させることにより、上面側が塞がれた状態になった場合でも前記溝を通じて空気を側面側から逃がすことができるように工夫された発泡樹脂製容器が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−195537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような発泡樹脂製容器は、例えば、ホテルや飲食店の厨房に魚市場などから活魚を搬送するような目的に用いられる。
そして、本発明者がその使用方法について調査、研究を行ったところ魚市場や厨房などにおいては、調理台を洗浄する際に、この調理台のそばに置かれた発泡樹脂製容器が被水される場合があり、そのような場合には、蓋体の上面を流れる水が空気を逃がすための溝を通じて貫通孔に流入され易いことを見出した。
【0010】
ここで、貫通孔を通じて流入される水が、魚介類収容室に収容されているものと同質のものであれば問題を生じさせずに済む可能性があるものの、この水が異質のものである場合には、魚介類に悪影響を与えるおそれを有する。
例えば、洗剤が含まれた水を流入させたり、海水魚を収容している発泡樹脂製容器内に淡水を流入させたりした場合には魚を衰弱させる等の問題を生じさせるおそれを有する。
なお、このような問題は、魚類のみならず貝類、甲殻類、頭足類、及び、棘皮動物などといった魚類以外の魚介類でも同じであり、魚市場や厨房以外の場所で用いられる場合においても同様に発生し得る問題である。
【0011】
しかし、従来、このような問題点に着目がなされていないために前記貫通孔を通じて外部から魚介類収容室に水が流入することを抑制させ得る発泡樹脂製容器が提供されてはいない。
従って、本発明は、上記のような問題を解決することを目的としており、蓋体に設けられた貫通孔を通じて外部から魚介類収容室に水が流入することを抑制させ得る発泡樹脂製容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、上部開口を有する容器本体と、該容器本体の上部開口を閉塞させるための蓋体とが備えられ、該蓋体、及び、前記容器本体が発泡性樹脂ビーズどうしを熱融着させて形成されており、前記容器本体に水とともに魚介類を収容し、エアポンプを備えた散気装置によって前記水の中で散気を実施して前記魚介類を生かしたまま搬送すべく用いられ、前記容器本体には、前記魚介類及び前記水を収容するための魚介類収容室と、前記エアポンプを収容するためのポンプ室とが形成されており、前記蓋体が、上面側に溝を有し、該溝が前記魚介類収容室を閉塞させるための領域に一端側を位置させ、他端側を前記蓋体の側縁にまで到達させており、前記蓋体には、該溝の前記一端側において当該該蓋体を上下に貫通する貫通孔がさらに形成されている発泡樹脂製容器であって、前記蓋体は、前記上面側に前記溝を包囲する第一の領域と該第一の領域を包囲する第二の領域とを有し、前記第一の領域が前記第二の領域よりも一段高くなるように形成されていることを特徴とする発泡樹脂製容器を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発泡樹脂製容器には、蓋体を上下に貫通する貫通孔が備えられていることから、魚介類収容室内において散気を行った場合に該貫通孔を魚介類収容室からの空気の排出口として利用させうる。
しかも、該貫通孔は、蓋体の側縁部まで到達する溝の一端側に形成されていることから、発泡樹脂製容器どうしを積み重ねるなどして上側が閉塞される状態になった場合でも、この溝を通じて側方から空気を排出させ得る。
さらに、本発明の発泡樹脂製容器においては、蓋体の上面側に溝を包囲する第一の領域と該第一の領域を包囲する第二の領域とを有し、前記第一の領域が前記第二の領域よりも一段高くなるように形成されていることから、この第一の領域を蓋体の上面を流れる水の堰き止めに活用することができる。
即ち、該第一の領域によって貫通孔を通じて外部から魚介類収容室に水が流入することを抑制させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る閉蓋状態の発泡樹脂製容器を示した概略斜視図。
図2】発泡樹脂製容器を構成する容器本体を示した概略斜視図。
図3】発泡樹脂製容器を構成する蓋体を示した概略斜視図。
図4】蓋体の裏面側(下面側)の様子を示した概略斜視図。
図5】他実施形態に係る発泡樹脂製容器の蓋体の様子を示した概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図を参照しつつ説明する。
本実施形態の発泡樹脂製容器1は、上部開口を有する容器本体10と、該容器本体の前記上部開口を閉塞すべく前記容器本体に着脱自在に取り付けられる蓋体20とを備え、該蓋体20及び前記容器本体10が発泡性樹脂ビーズどうしを熱融着させた発泡体によって形成されている。
本実施形態の発泡樹脂製容器1は、具体的には、図1にも示されているように前記蓋体20で前記容器本体10に蓋をした場合に、その全体形状が略直方体となるように形成されている。
【0016】
また、前記容器本体10と前記蓋体20とは、平面視における形状が180度回転対称性(1/2回転対称性)を有しており、本実施形態の発泡樹脂製容器1は、容器本体10から蓋体20を取り外した後、該蓋体20を180度回転させて容器本体10に再び取り付け可能となっており、容器本体10との相対関係を気にすることなく蓋体20を容器本体10に取り付け可能となっている。
【0017】
なお、本実施形態の発泡樹脂製容器1は、水とともに魚介類を収容すべく用いられ、且つ、該魚介類を生かしたまま搬送すべく、エアポンプと該エアポンプから排出される空気を搬送するためのエアチューブとを備えた散気装置とともに用いられるものであり、前記容器本体10には、前記魚介類及び前記水を収容するための魚介類収容室110と、前記エアポンプを収容するためのポンプ室120とが形成されている。
より具体的には、本実施形態の発泡樹脂製容器1には、平面視における輪郭形状が長方形となる矩形板状の底壁11と該底壁11の上面周縁部に沿って立設された矩形枠(角筒)状の本体側壁12とを有し上部に長方形の開口を有する容器本体10が備えられている。
なお、以下においては、本体側壁12の内、容器本体の長方形の開口の短辺側を構成している部分を「本体側壁短辺部12a」と称し、長辺側となる部分を「本体側壁長辺部12b」と称して本体側壁を部分ごとに呼び分けることがある。
【0018】
前記容器本体10には、前記本体側壁12によって包囲される空間内に前記ポンプ室120が形成されており、より具体的には、本体側壁の4つの角部12cの内、対角となる2つの角部に前記ポンプ室120が形成されている。
これら2つのポンプ室120は、その形状を共通させており、本実施形態においては、縦長で横幅に比べて厚みの薄い直方体形状のエアポンプ(図示せず)を収容させ得るように該ポンプ室120が前記本体側壁12の角部12cを構成している本体側壁短辺部12aの一部及び本体側壁長辺部12bの一部と、該本体側壁12の一部と同じ高さを有する仕切壁13とによって上部に開口した角筒状に形成され、且つ、水平方向における断面形状が収容させるエアポンプよりも一回り大きな長方形となる角筒状に形成されている。
【0019】
即ち、本実施形態においては、本体側壁12の内側において本体側壁長辺部12bに接続され且つ該本体側壁長辺部12bとの接続地点12bxから本体側壁短辺部12aと略平行するように延びる第一壁部13aと、本体側壁短辺部12aに接続され且つ該本体側壁短辺部12aとの接続地点12axから本体側壁長辺部12bに略平行するように延びる第二壁部13bとを有し、これら第一壁部13aと第二壁部13bとが略直角に接続された状態となって平面視L字状の形状を有している仕切壁13と本体側壁の一部とによって前記ポンプ室120が形成されている。
ここで、本実施形態においては、平面視における前記第二壁部13bの形成長さが、前記第一壁部13aよりも長くなるように前記ポンプ室120が形成されており、当該ポンプ室120の上部開口は、本体側壁長辺部12b沿う方向が長辺となる長方形となっている。
【0020】
なお、本実施形態における容器本体10は、2箇所に設けられたポンプ室以外の本体側壁内側部分が魚介類収容室110となっている。
即ち、本実施形態においては、ポンプ室120を形成している一部分を除いた残りの本体側壁12と前記仕切壁13とに囲まれた空間が魚介類収容室110となるように容器本体10が形成されている。
この魚介類収容室110を形成している部分において、前記本体側壁12は、容器内側部分が容器外側部分よりも一段高くなるように形成されており、その頂部において高段部12xと低段部12yとが形成されている。
なお、前記ポンプ室120を形成している部分においては、前記本体側壁12に段差が設けられておらず、前記高段部12xと同じ高さとなっている。
また、前記仕切壁13についても、前記高段部12xと同じ高さに形成されている。
【0021】
本実施形態における前記容器本体10は、該ポンプ室120を形成している本体側壁短辺部12aの下端部に当該本体側壁短辺部12aを貫通する排水孔121が形成されており、前記ポンプ室120に水が流入した際に該水を前記排水孔121を通じて排出させることにより、前記ポンプ室内に水を蓄積させないように形成されている。
また、本実施形態における前記容器本体10は、ポンプ室120を形成している本体側壁12と仕切壁13とに上下方向に延在し、断面形状が三角形となるリブ122が複数条形成されており、前記エアポンプをポンプ室120に収容させた際に、前記リブ122の突出方向先端部をエアポンプに当接させてエアポンプと仕切壁13や本体側壁12との間に適度な隙間を形成させ得るように形成されている。
即ち、本実施形態における前記容器本体10は、ポンプ室120に水が流入した際に、水がこの隙間を通って速やかに前記排水孔121から排出されるように形成されている。
【0022】
前記排水孔121は、底壁11を貫通するように形成させることが排水効率や製造の容易さといった観点から有利となる場合があるが、本実施形態においては、後述するように蓋体20が被水した場合にこの水を蓋体20に設けられた貫通孔を通じて魚介類収容室110に極力浸入させないようにすることが好ましい。
そのために、当然のことながら被水する機会も、低減される方が好ましい。
即ち、排水孔を底壁11を貫通するように形成させると、魚介類を収容させた本実施形態の発泡樹脂製容器1どうしを積み重ねた際に、上位の発泡樹脂製容器においてポンプ室に侵入した水を下位の発泡樹脂製容器の蓋体上面に向かって排出させることになるために前記排水孔121としては本体側壁12を貫通するように形成させることが好ましいといえる。
【0023】
本実施形態の容器本体10は、本体側壁短辺部12aと前記仕切壁13(第二壁部13b)との接続地点12axを介して前記ポンプ室120を形成している側とその反対側で魚介類収容室110を形成している側との2箇所において本体側壁短辺部12aの頂部にエアチューブを挿通可能な切欠部123,124が設けられており、前記ポンプ室120に収容させたエアポンプに一端部を接続させたエアチューブの他端側を前記ポンプ室側の切欠部123を通じて容器外に取り出した後に魚介類収容室側の切欠部124を通じて魚介類収容室110に収容させて該魚介類収容室内で散気をさせ得るように構成されている。
即ち、本実施形態の容器本体10は、仕切壁13を迂回する形でポンプ室120から魚介類収容室110までの間にエアチューブを配設することができるように構成されている。
【0024】
このような容器本体10に着脱自在に取り付けられる前記蓋体20は、少なくとも前記魚介類収容室110の上部開口を閉塞しうるように形成されており、具体的には、本実施形態の前記蓋体20は、その輪郭形状が容器本体10の平面視における輪郭形状に対応する長方形となるように形成されている。
即ち、本実施形態の前記蓋体20は、容器本体10を上方から全面的に覆うように形成されており、略矩形板状に形成された天壁21と、該天壁21の下面側周縁部に沿って設けられた蓋体側壁22とを備えている。
なお、以下においては、この長方形の長辺側の寸法を蓋体20の“長さ”と称し、短辺側の寸法を蓋体20の“幅”と称することがある。
【0025】
前記蓋体側壁22は、蓋体20を容器本体10に取り付けたときに、前記本体側壁12の高段部12xに外嵌される部分であり、前記天壁21の下面21bから下方に向けた突出高さが本体側壁12の高段部12xと低段部12yとの段差に相当する高さとなって蓋体20に備えられている。
また、本実施形態の蓋体20の下面側には前記ポンプ室120の開口縁に相当する外縁形状を有する一部切欠を備えた環状突起23が2箇所に形成されているとともに前記魚介類収容室110の開口縁に相当する外縁形状を有する環状突起24が形成されており、これらの環状突起23,24は、蓋体20を容器本体10に取り付けたときにそれぞれ容器本体10の2箇所のポンプ室120、及び、魚介類収容室110に嵌入されるように配置されている。
【0026】
一方で蓋体20の上面20aには、溝25(条溝25)が形成されており、該条溝25が、一端25aを前記魚介類収容室110を閉塞させるための領域に位置させ、他端25bを該蓋体20の側縁部にまで到達させている。
そして、該条溝25の前記一端側には該蓋体20を上下に貫通する貫通孔26が形成されている。
より具体的には、本実施形態における平面視長方形の前記蓋体20には、その四周縁の内の短辺側の側縁部からそれぞれ延びる2本の条溝25が形成されており、この2本の条溝は、1本の長さが蓋体20の長さの1/8程度となって、それぞれ蓋体20の角部20cと角部20cとの中間位置から蓋体20の中心に向かって直線的に延在されている。
【0027】
この2本の条溝25は、その前記一端側(蓋体中心側)に、その他の部分と同じ深さで凹入する円形凹部25cを有し、該円形凹部25cの中心部に天壁21を上下に貫通する前記貫通孔26が形成されており、この貫通孔26の形成されている一端側とは逆の他端側を天壁21の側面において開口させている。
即ち、本実施形態の発泡樹脂製容器1は、前記容器本体10に前記蓋体20を取り付けて前記散気装置によって魚介類収容室内において散気を行った場合に、該貫通孔26を空気の排出口として機能させ得るように形成されており、前記のような条溝25の一端側に貫通孔26を形成させることで該条溝25が上方から覆われるようなことがあった場合でも、条溝25を通じて天壁側面の開口から空気を排出し得るように形成されている。
【0028】
また、本実施形態の蓋体20は、上面側に前記条溝25を包囲する第一の領域20xと該第一の領域20xを包囲する第二の領域20yとを有し、前記第一の領域20xが前記第二の領域20yよりも一段高くなるように形成されている。
具体的には、前記条溝25を包囲するU字状の領域(第一の領域20x)が、蓋体上面側の4つの角部からそれぞれ長さ方向及び幅方向へと延びる平面視L字状の天壁リブ27と同様に、それ以外の領域(第二の領域20y)よりも2mm〜5mm高くなるように形成されている。
従って、本実施形態の発泡樹脂製容器1は、魚介類の搬送途中において前記魚介類収容室110に収容した水とは異質な、魚介類に悪影響を及ぼすおそれのある水によって被水した場合でも、前記水が、前記蓋体20の上面側から前記第二の領域20yを伝って周縁部から流れ落ちることになり、前記第一の領域20xを乗り越えて条溝25に水が浸入することがなく、あるいは、浸入したとしても従来に比べて僅かな量とすることができるために貫通孔26を通じて魚介類収容室110へと水が浸入することを従来に比べて十分抑制させることができる。
【0029】
なお、第一の領域20xと第二の領域20yとの段差が大きいほど異質な水を魚介類収容室110に浸入させるおそれを抑制させ得る。
しかし、本実施形態において第一の領域20xを第二の領域20yに比べて高さを高くさせようとすると、蓋体20のトータル厚み(蓋体側壁22の下端から第一の領域20xの上端までの厚み)を厚くさせるか、第二の領域20yにおける蓋体厚みを薄くさせるかしなければならなくなる。
即ち、本実施形態において第一の領域20xと第二の領域20yとの間に大きな段差を確保しようとすると発泡樹脂製容器を必要以上に嵩高いものにさせたり、蓋体の強度不足を招いたりするおそれを有する。
【0030】
このようなことから、第一の領域20xと第二の領域20yとの段差(図3の「H」)は、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0031】
また、第一の領域20xの形成幅(図3の「W1」、「W2」)は、広い方が第二の領域からの水の流入を防ぐ効果が高くなることから、最も狭いところでも2mm以上確保することが好ましく、5mm以上確保することがより好ましい。
一方で、第一の領域20xの形成幅を過度に広くすると第一の領域自体が被水する確率が高くなってしまい、結果として溝に水を流入させやすくなるおそれを有する。
従って、第一の領域20xの形成幅は、最も広いところでも15mm以下とすることが好ましく、10mm以下とすることがより好ましい。
【0032】
なお、前記溝25や前記貫通孔26は、特にその形状が限定されるものではなく、例えば、前記溝であれば0.5cm2〜1cm2の大きさの矩形断面形状を有するようなものを採用することができ、前記貫通孔としては、直径1mm〜10mmの円形のものなどを採用することができる。
【0033】
なお、要すれば、図5に示す蓋体20’のように、第二の領域20y’を第一の領域20x’を包囲するU字状の領域とし、該第二の領域20y’を包囲するその他の領域20z’(第三の領域20z’)よりも一段低く形成させてもよい。
この場合、第二の領域20y’については厚みが薄くはなってしまうもののその他の領域20z’については所定の厚みを確保することができるため、蓋体20’が強度不足に陥るおそれを抑制しつつ第一の領域20x’と第二の領域20y’との段差を大きく確保して溝25’及び該溝25’の一端25a’側に形成された貫通孔26’を通じて水が浸入することを防止することができる。
さらに、この第二の領域を蓋体の外周縁に向けて先下がり傾斜となるように形成させることで排水性を高めるようにしてもよい。
また、溝25’についても同様に外周縁に向けての先下がり傾斜を設けて前記貫通孔26’への水の進入を抑制させても良い。
【0034】
このような変更事例以外にも、本実施形態の発泡樹脂製容器には、従来公知の技術事項に基づいて、各種の変更を加えることが可能である。
【0035】
なお、本実施形態の発泡樹脂製容器1を形成させるための発泡性樹脂ビーズとしては、一般的にこの種の容器の形成に利用されているものを採用することができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸)、ポリカーボネート系樹脂などからなる実質的に非発泡な樹脂ビーズで内部に炭化水素などの発泡剤を含有させた樹脂ビーズを予備発泡させたものを採用し得る。
【0036】
また、本実施形態の発泡樹脂製容器1を用いて生かしたまま搬送する魚介類としては淡水魚や海水魚といった魚類、海老や蟹などの甲殻類、サザエや鮑などの貝類、烏賊や蛸といった頭足類、海栗や海鼠といった棘皮動物が挙げられ、これらの魚介類とともに収容する水は、淡水や海水など魚介類に適した水であれば特にその種類が問われるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 発泡樹脂製容器
10 容器本体
11 底壁
12 本体側壁
13 仕切壁
20 蓋体
20x 第一の領域
20y 第二の領域
20z 第三の領域
21 天壁
22 蓋体側壁
23 環状突起
24 環状突起
25 溝
25a 一端
25b 他端
26 貫通孔
27 天壁リブ
110 魚介類収容室
120 ポンプ室
121 排水孔
122 リブ
123 切欠部
124 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5