特許第5945485号(P5945485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945485
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】回転電機用ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20160621BHJP
   H02K 1/30 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H02K1/28 Z
   H02K1/30 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-208598(P2012-208598)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-64409(P2014-64409A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 康行
(72)【発明者】
【氏名】荒川 亜富
(72)【発明者】
【氏名】山岸 義忠
(72)【発明者】
【氏名】南 彰一
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−142711(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0153783(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/075364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を中心に回転するロータシャフトと、該ロータシャフトの外周に直接嵌合固定された環状の磁性部材とを有する回転電機用ロータであって、
上記磁性部材は複数の電磁鋼板を上記軸方向に積層してなり、
上記ロータシャフトにおける上記磁性部材を嵌合させる取付部は、上記軸方向に直交する断面の外周輪郭が略多角形であり、
上記磁性部材は、上記ロータシャフトを挿嵌する挿嵌孔の内周輪郭が上記ロータシャフトにおける上記取付部の上記外周輪郭に外接すると共に、上記挿嵌孔の内周面が上記ロータシャフトの上記取付部における上記略多角形の各辺を構成する面に面接触した面接触部を形成した状態で、上記ロータシャフトの上記取付部に嵌合固定されており、
上記挿嵌孔の上記内周輪郭と上記取付部の上記外周輪郭との間には、部分的にクリアランス部が形成されており、
該クリアランス部は、上記ロータシャフトの上記取付部の上記外周輪郭における略多角形の頂部の外側と、上記外周輪郭における略多角形の辺部の中央部の外側とに形成され、
上記ロータシャフトの上記取付部の上記外周輪郭における略多角形の上記辺部における上記中央部の両脇に上記面接触部が形成されていることを特徴とする回転電機用ロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機用ロータにおいて、上記面接触部は、上記ロータシャフトの回転軸を中心とする回転対称となる複数箇所に形成してなることを特徴とする回転電機用ロータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機用ロータにおいて、上記挿嵌孔は、上記外周輪郭におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、上記面接触部を形成してなることを特徴とする回転電機用ロータ。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機用ロータにおいて、上記外周輪郭及び上記内周輪郭は、上記ロータシャフトの回転軸を中心とする回転対称の形状を有することを特徴とする回転電機用ロータ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機用ロータにおいて、上記取付部と上記挿嵌孔とは、上記面接触部において、径方向の締め代を設定した状態で嵌合していることを特徴とする回転電機用ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向を中心に回転するロータシャフトと、該ロータシャフトの外周に嵌合固定された環状の磁性部材とを有する回転電機用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド車、電気自動車等に用いるモータ、ジェネレータ、モータジェネレータ等の回転電機等においては、界磁巻線を設けたステータの内周側に、図14に示すような、磁性回路を形成するための磁性部材92を設けた回転電機用ロータ9を回転可能に配置している。
上記回転電機用ロータ9は、軸方向を中心に回転するロータシャフト91と、該ロータシャフト91の外周に嵌合固定された環状の磁性部材92と、該磁性部材92の軸方向両側に配された一端側エンドプレート93及び他端側エンドプレート94と、上記一端側エンドプレート93を他端側に押圧しつつ、ロータシャフト91にかしめ固定されたかしめ部材95とを有する(特許文献1)。
【0003】
上記ロータシャフト91は、一端側エンドプレート93と磁性部材92と他端側エンドプレート94とに挿嵌されている。
そして、他端側エンドプレート94はロータシャフト91における係止部96に支承され、一端側エンドプレート93は上記かしめ部材95に押圧されている。
これにより、一端側エンドプレート93と他端側エンドプレート94とによって磁性部材92は軸方向に狭持された状態でロータシャフト91に固定されている。
【0004】
また、上記ロータシャフト91には、磁性部材92をロータシャフト91に対する回転方向の角度位置を所定の角度位置に位置決めするためのキー溝97が形成され、磁性部材92の一部をキー溝97に係合させることで、ロータシャフト91に対する磁性部材92の位置合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−72044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転電機用ロータ9の回転トルクが大きくなると、上記磁性部材92が上記ロータシャフト91から回転方向にずれてしまうおそれがある。
すなわち、上記ロータシャフト91の外周面は軸方向に直交する断面形状が円形であるため、一端側エンドプレート93と磁性部材92と他端側エンドプレート94による上記磁性部材92のロータシャフト91への固定は摩擦力によるものであって、大きな回転トルクに対する固定力には限界がある。
ここで、上記キー溝97は基本的に位置合わせの機能を有するのみであり、大きな回転トルクに対する上記磁性部材92の回り止めを期待できない。
【0007】
また、一端側エンドプレート93、他端側エンドプレート94及びかしめ部材95とロータシャフト91との間に締め代を設定しても、大きな締結力を得にくい。
また、上記一端側エンドプレート93又は上記他端側エンドプレート94と上記磁性部材92との間におけるすべりが生じるおそれもある。
【0008】
さらに、上記一端側エンドプレート93と他端側エンドプレート94とかしめ部材95とによって、上記磁性部材92をロータシャフト91に固定しているため、部品点数が多くなってしまうという問題が生じる。
【0009】
また、上記ロータシャフト91と磁性部材92との間に締め代を設定して、磁性部材92を直接ロータシャフト91にかしめ固定することも考えられるが、上記磁性部材92は厚みが0.3mm程度の電磁鋼板の積層体であるため、大きなかしめ力を得にくい。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、回転トルクに対するロータシャフトと磁性部材との間の固定力に優れると共に、部品点数を少なくすることができる回転電機用ロータ提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、軸方向を中心に回転するロータシャフトと、該ロータシャフトの外周に直接嵌合固定された環状の磁性部材とを有する回転電機用ロータであって、
上記磁性部材は複数の電磁鋼板を上記軸方向に積層してなり、
上記ロータシャフトにおける上記磁性部材を嵌合させる取付部は、上記軸方向に直交する断面の外周輪郭が略多角形であり、
上記磁性部材は、上記ロータシャフトを挿嵌する挿嵌孔の内周輪郭が上記ロータシャフトにおける上記取付部の上記外周輪郭に外接すると共に、上記挿嵌孔の内周面が上記ロータシャフトの上記取付部における上記略多角形の各辺を構成する面に面接触した面接触部を形成した状態で、上記ロータシャフトの上記取付部に嵌合固定されており、
上記挿嵌孔の上記内周輪郭と上記取付部の上記外周輪郭との間には、部分的にクリアランス部が形成されており、
該クリアランス部は、上記ロータシャフトの上記取付部の上記外周輪郭における略多角形の頂部の外側と、上記外周輪郭における略多角形の辺部の中央部の外側とに形成され、
上記ロータシャフトの上記取付部の上記外周輪郭における略多角形の上記辺部における上記中央部の両脇に上記面接触部が形成されていることを特徴とする回転電機用ロータにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転電機用ロータにおいて、上記ロータシャフトにおける上記取付部は、上記軸方向に直交する断面の外周輪郭が略多角形である。
そして、上記磁性部材における上記挿嵌孔は、その内周輪郭が上記取付部の上記外周輪郭に外接すると共に、上記面接触部を形成した状態で、上記取付部に嵌合固定される。
【0013】
これにより、上記ロータシャフトと磁性部材とは回転方向と交差する上記面接触部において、互いに係合することとなる。それゆえ、上記ロータシャフトと上記磁性部材との間の回転方向の固定機構を構造的な締結機構とすることができる。
その結果、大きな回転トルクに対しても、上記ロータシャフトと磁性部材との間にすべりを生じることなく両者を固定することができる。
また、従来の上記一端側エンドプレート、上記他端側エンドプレート及び上記かしめ部材が不要となるため、部品点数を少なくすることができる。
【0014】
また、上記ロータシャフトにおける上記取付部の外周輪郭の形状の多角形化により、上記磁性部材の挿嵌孔への嵌入時の位置決めが可能となるため、キー溝の加工が不要となり、回転電機用ロータの生産性を向上することができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、回転トルクに対するロータシャフトと磁性部材との間の固定力に優れると共に、部品点数を少なくすることができる回転電機用ロータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1における、回転中心軸を含む平面による回転電機用ロータの断面図。
図2図1のA−A断面説明図。
図3図2のC範囲の拡大図。
図4】実施例1における、ロータシャフトの取付部の断面説明図。
図5】実施例1における、磁性部材の断面説明図。
図6】実施例2における、回転電機用ロータの断面説明図。
図7図6のD範囲の拡大図。
図8】実施例2における、ロータシャフトの取付部の断面説明図。
図9】実施例2における、磁性部材の断面説明図。
図10】実施例3における、回転電機用ロータの断面説明図。
図11図10のE範囲の拡大図。
図12】実施例3における、ロータシャフトの取付部の断面説明図。
図13】実施例3における、磁性部材の断面説明図。
図14】従来における、回転電機用ロータの断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、上記挿嵌孔の上記内周輪郭と上記取付部の上記外周輪郭との間には、部分的にクリアランス部が形成されている。
これにより、上記磁性部材と上記ロータシャフトとの嵌合を容易にできる。
また、上記ロータシャフト及び上記磁性部材における上記クリアランス部に面する部分については精度を上げる必要が特になく、表面加工を施す必要が特にない。そのため生産性の向上も図ることができる。
【0018】
また、上記クリアランス部は、上記取付部の上記外周輪郭における略多角形の頂部の外側に形成されている。
これにより、上記磁性部材に上記ロータシャフトを嵌合する際に、上記頂部が、上記磁性部材に干渉することを防ぎ、嵌合を容易にできる。
【0019】
また、上記クリアランス部は、上記取付部の上記外周輪郭における略多角形の辺部の中央部の外側に形成され、上記辺部における上記中央部の両脇に上記面接触部が形成されている。
これにより、上記ロータシャフトと上記磁性部材との嵌合を容易にすることとともに生産性を向上させつつ、耐回転トルク性を向上することができる。
すなわち、上記略多角形の各辺部において、中央部よりもその両脇の方が回転中心からの距離が長いため、中央部よりも両脇に面接触部を形成した方が耐回転トルク性を向上しやすい。
その一方、辺部の中央部にクリアランス部を設けて、上記ロータシャフトと上記磁性部材との嵌合を容易にすることができ、生産性の向上も図ることができる。
【0020】
また、上記面接触部は、ロータシャフトの回転軸を中心とする回転対称となる複数箇所に形成してなる(請求項)。
この場合には、回転電機用ロータの回転方向の全周にわたって均等に面接触部が形成されるため、回転トルクに対する上記磁性部材と上記ロータシャフトとの締結力を向上することができる。
【0021】
また、上記挿嵌孔は、上記外周輪郭におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、上記面接触部を形成してなることが好ましい(請求項)。
この場合には、上記ロータシャフトと上記磁性部材との間において、上記面接触部を多数の箇所に形成しやすく、締結力の向上をはかることができる。
【0022】
また、上記外周輪郭及び上記内周輪郭は、上記ロータシャフトの回転軸を中心とする回転対称の形状を有することが好ましい(請求項)。
この場合には、上記ロータシャフトと上記磁性部材との間に、回転方向に均等に回転トルクが作用し、回転トルクに対する締結力を向上させることができる。
【0023】
すなわち、環状の上記磁性部材の上記挿嵌孔と、該挿嵌孔に嵌入する上記ロータシャフトの上記取付部の外周輪郭とを回転軸を中心とする回転対称の形状をなす略多角形状とすることで、上記面接触部に対して均等にトルク保持をさせることができ、耐回転トルク性を高めることができる。
【0024】
また、上記取付部と上記挿嵌孔とは、上記面接触部において、径方向の締め代を設定した状態で嵌合していることが好ましい(請求項)。
この場合には、上記ロータシャフトと上記磁性部材とをより強固に固定することができ、回転トルクに対する両者の締結力をより高めることができる。
さらに、上記面接触部に径方向の締め代を設定することで、上記磁性部材が上記ロータシャフトに対して軸方向へずれることを、効果的に防ぐことできる。
【0025】
また、上記磁性部材は複数の電磁鋼板を上記軸方向に積層してなる。
これにより、上記磁性部材を容易かつ低コストにて形成できる。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる回転電機用ロータにつき図1図5を用いて説明する。
本例の回転電機用ロータ1は、図1図2に示すごとく、軸方向を中心に回転するロータシャフト2と、該ロータシャフト2の外周に嵌合固定された環状の磁性部材3とを有する。
【0027】
ロータシャフト2における磁性部材3を嵌合させる取付部20は、軸方向に直交する断面の外周輪郭201が正六角形である。
磁性部材3は、ロータシャフト2を挿嵌する挿嵌孔30の内周輪郭301が取付部20の外周輪郭201に外接すると共に、挿嵌孔30の内周面302が取付部20における正六角形の各辺を構成する面に面接触した面接触部11を形成した状態で、取付部20に嵌合固定されている。
【0028】
図2及び図3に示すごとく、挿嵌孔30の内周輪郭301と取付部20の外周輪郭201との間には、部分的にクリアランス部12が形成されている。クリアランス部12は、取付部20の外周輪郭201における正六角形の頂部202の外側と、取付部20の外周輪郭201における略多角形の辺部211の中央部212の外側とに形成されている。
以下において、頂部202の外側のクリアランス部12を頂部クリアランス部121、辺部211の中央部212の外側のクリアランス部12を辺部クリアランス部122という。
また、辺部211における中央部212の両脇に面接触部11が形成されている。面接触部11は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称となる複数箇所(12箇所)に形成してなる。
【0029】
挿嵌孔30は、外周輪郭201におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、面接触部11を形成してなる。
外周輪郭201及び内周輪郭301は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称の形状を有する。
【0030】
取付部20と挿嵌孔30とは、面接触部11において、径方向の締め代を設定した状態で嵌合している。
磁性部材3は複数の電磁鋼板31を軸方向に積層してなる。
取付部20と挿嵌孔30とは、面接触部11を構成する部分に、必要に応じて表面加工が施され、その寸法精度が高められている。
【0031】
図4に示すごとく、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201は上述のごとく、正六角形状に形成されている。
また、図5に示すごとく、磁性部材3における挿嵌孔30の内周輪郭301は外周輪郭201の外接円よりも半径の小さい円の一部である複数の円弧部303と、外周輪郭201に外接する直線状の複数の外接部307と、外周輪郭部201の頂部202に対向配置される略円状の複数の逃がし部305とからなる。
なお、逃がし部305と外接部307、円弧部303と外接部307は互いに曲線状につながっており、例えば、その曲線部分は、本例では曲率半径が1mm以上で設定される。
【0032】
そして、磁性部材3の挿嵌孔30に対し、ロータシャフト2の取付部20を挿嵌することにより、回転電機用ロータシャフト1が得られる。
その際に、図3に示すごとく、挿嵌孔30の内周輪郭301の各外接部307と、取付部20の外周輪郭201の各辺部211とが面接触して、12箇所の面接触部11を形成することにより、ロータシャフト2と磁性部材3とが嵌合固定される。
ここで、同図に示すごとく、内周輪郭301には略円状の逃がし部305が形成されるため、磁性部材3の内周面302に取付部20の頂部202が接触せず、ロータシャフト2と磁性部材3との挿嵌後にその空間が頂部クリアランス部121として形成される。
【0033】
また、挿嵌孔30の環状の内周輪郭301と、取付部20の外周輪郭201の辺部211の中央部212とは面接触せず、ロータシャフト2と磁性部材3との挿嵌後にその空間が辺部クリアランス部122として形成される。
なお、上述のごとく、取付部20と挿嵌部30とは面接触部11において、径方向の締め代が設定された状態で締結される。
【0034】
次に、本例の作用効果につき説明する。
本発明の回転電機用ロータ1において、ロータシャフト2における取付部20は、軸方向に直交する断面の外周輪郭201が正六角形である。
そして、磁性部材3における挿嵌孔30は、その内周輪郭301が取付部20の外周輪郭201に外接すると共に、面接触部11を形成した状態で、取付部20に嵌合固定される。
【0035】
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3とは回転方向と交差する面接触部11において、互いに係合することとなる。それゆえ、ロータシャフト2と磁性部材3との間の回転方向の固定機構を構造的な締結機構とすることができる。
その結果、大きな回転トルクに対しても、ロータシャフト2と磁性部材3との間にすべりを生じることなく両者を固定することができる。
また、従来の一端側エンドプレート、他端側エンドプレート及びかしめ部材が不要となるため、部品点数を少なくすることができる。
【0036】
また、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201の形状の多角形化により、磁性部材3の挿嵌孔30への嵌入時の位置決めが可能となるため、キー溝の加工が不要となり、回転電機用ロータ1の生産性を向上することができる。
【0037】
挿嵌孔30の内周輪郭301と取付部20の外周輪郭201との間には、部分的にクリアランス部12が形成されている。
これにより、磁性部材3とロータシャフト2との嵌合を容易にできる。
また、ロータシャフト2及び磁性部材3におけるクリアランス部12に面する部分については精度を上げる必要が特になく、表面加工を施す必要が特にない。そのため生産性の向上も図ることができる。
【0038】
また、クリアランス部12には、上記頂部クリアランス部121がある。
これにより、磁性部材3にロータシャフト2を嵌合する際に、頂部202が磁性部材3に干渉することを防ぎ、嵌合を容易にできる。
【0039】
また、クリアランス部12には、上記辺部クリアランス部122もある。そして、辺部211における中央部212の両脇に面接触部11が形成されている。
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3との嵌合を容易にすることとともに生産性を向上させつつ、耐回転トルク性を向上することができる。
すなわち、略多角形の各辺部211において、中央部212よりもその両脇の方が回転中心からの距離が長い。それゆえ、中央部212よりも両脇に面接触部11を形成した方が耐回転トルク性を向上しやすい。
その一方、辺部211の中央部212に辺部クリアランス部122を設けて、ロータシャフト1と磁性部材3との嵌合を容易にすることができ、生産性の向上も図ることができる。
【0040】
また、面接触部11は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称となる複数箇所に形成してなる。
これにより、回転電機用ロータ1の回転方向の全周にわたって均等に面接触部11が形成されるため、回転トルクに対する磁性部材3とロータシャフト2との締結力を向上させることができる。
【0041】
また、挿嵌孔30は、外周輪郭201におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、面接触部11を形成してなる。
これにより、挿嵌孔30が、外周輪郭201におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、面接触部11が形成されるため、これにより、回転トルクに対し、磁性部材3がロータシャフト2からずれて、回転してしまうことがより確実に防止できる。
すなわち、ロータシャフト2と磁性部材3においては面接触部11を多数の箇所に形成しやすく、締結力の向上をはかることができる。
【0042】
また、外周輪郭201及び内周輪郭301は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称の形状を有する。
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3との間に、回転方向に均等に回転トルクが作用し、回転トルクに対する締結力が向上する。
【0043】
すなわち、環状の磁性部材3の挿嵌孔30と、該挿嵌孔30に嵌入するロータシャフト2の取付部20の外周輪郭201とを回転軸を中心とする回転対称の形状をなす略多角形状とすることで、面接触部11に対して均等にトルク保持をさせることができ、耐回転トルク性を高めることができる。
【0044】
取付部20と挿嵌孔30とは、面接触部11において、径方向の締め代を設定した状態で嵌合している。
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3とをより強固に固定することができ、回転トルクに対する両者の締結力をより高めることができる。
さらに、面接触部11に径方向の締め代を設定することで、磁性部材3がロータシャフト2に対して軸方向へずれることを、効果的に防ぐことができる。
【0045】
また、磁性部材3は複数の電磁鋼板31を軸方向に積層してなるため、磁性部材3を容易かつ低コストにて形成できる。
【0046】
以上のごとく、本例によれば、回転トルクに対するロータシャフトと磁性部材との間の固定力に優れると共に、部品点数を少なくすることができる回転電機用ロータを提供できる。
【0047】
(実施例2)
本例は、図6図9に示すごとく、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201に、辺部211の中央部212を内側へ後退させた凹状部213を形成することにより、辺部211の外側の辺部クリアランス部122を形成した例である。
すなわち、内周輪郭301には、実施例1において示した円弧状部303(図5参照)を形成していない。
なお、本例では、逃がし部305と内周輪郭301とが、曲率半径が1mm以上の曲線によってつながっている。
【0048】
図6に示すごとく、磁性部材3の挿嵌孔30に対しロータシャフト2の取付部20を挿嵌させた状態において、挿嵌孔30の内周輪郭301に、取付部20の外周輪郭201の各辺部211が中央部212以外において面接触する。
また、挿嵌孔30の環状の内周輪郭301と、取付部20の外周輪郭201の凹状部213は面接触せず、挿嵌後にその空間が辺部クリアランス部122として形成される。
その他は、実施例1と同様である。
【0049】
本例の場合には、挿嵌孔30の形状を簡素化することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0050】
(実施例3)
本例は、図10図13に示すごとく、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201における頂部202に、面取部203を形成することにより、面取部203と内周輪郭301における外接部307との間に頂部クリアランス部121を形成した例である。
また、図13に示すごとく、磁性部材3における挿嵌孔30の内周輪郭301には、実施例1において示した逃し部305(図5参照)が形成されていない。
なお、本例では、外接部307と円弧部303とが、曲率半径が1mm以上の曲線によってつながっている。
【0051】
ここで、外周輪郭201は略正六角形であるが、直線状の面取部203を設けたことにより正確には十二角形となる。
また、面取部203は直線状に限らず、例えば曲線状とすることもできる。
その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0052】
1 回転電機用ロータ
11 面接触部
2 ロータシャフト
20 取付部
201 外周輪郭
3 磁性部材
30 挿嵌孔
301 内周輪郭
302 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14