【実施例】
【0026】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる回転電機用ロータにつき
図1〜
図5を用いて説明する。
本例の回転電機用ロータ1は、
図1、
図2に示すごとく、軸方向を中心に回転するロータシャフト2と、該ロータシャフト2の外周に嵌合固定された環状の磁性部材3とを有する。
【0027】
ロータシャフト2における磁性部材3を嵌合させる取付部20は、軸方向に直交する断面の外周輪郭201が正六角形である。
磁性部材3は、ロータシャフト2を挿嵌する挿嵌孔30の内周輪郭301が取付部20の外周輪郭201に外接すると共に、挿嵌孔30の内周面302が取付部20における正六角形の各辺を構成する面に面接触した面接触部11を形成した状態で、取付部20に嵌合固定されている。
【0028】
図2及び
図3に示すごとく、挿嵌孔30の内周輪郭301と取付部20の外周輪郭201との間には、部分的にクリアランス部12が形成されている。クリアランス部12は、取付部20の外周輪郭201における正六角形の頂部202の外側と、取付部20の外周輪郭201における略多角形の辺部211の中央部212の外側とに形成されている。
以下において、頂部202の外側のクリアランス部12を頂部クリアランス部121、辺部211の中央部212の外側のクリアランス部12を辺部クリアランス部122という。
また、辺部211における中央部212の両脇に面接触部11が形成されている。面接触部11は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称となる複数箇所(12箇所)に形成してなる。
【0029】
挿嵌孔30は、外周輪郭201におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、面接触部11を形成してなる。
外周輪郭201及び内周輪郭301は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称の形状を有する。
【0030】
取付部20と挿嵌孔30とは、面接触部11において、径方向の締め代を設定した状態で嵌合している。
磁性部材3は複数の電磁鋼板31を軸方向に積層してなる。
取付部20と挿嵌孔30とは、面接触部11を構成する部分に、必要に応じて表面加工が施され、その寸法精度が高められている。
【0031】
図4に示すごとく、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201は上述のごとく、正六角形状に形成されている。
また、
図5に示すごとく、磁性部材3における挿嵌孔30の内周輪郭301は外周輪郭201の外接円よりも半径の小さい円の一部である複数の円弧部303と、外周輪郭201に外接する直線状の複数の外接部307と、外周輪郭部201の頂部202に対向配置される略円状の複数の逃がし部305とからなる。
なお、逃がし部305と外接部307、円弧部303と外接部307は互いに曲線状につながっており、例えば、その曲線部分は、本例では曲率半径が1mm以上で設定される。
【0032】
そして、磁性部材3の挿嵌孔30に対し、ロータシャフト2の取付部20を挿嵌することにより、回転電機用ロータシャフト1が得られる。
その際に、
図3に示すごとく、挿嵌孔30の内周輪郭301の各外接部307と、取付部20の外周輪郭201の各辺部211とが面接触して、12箇所の面接触部11を形成することにより、ロータシャフト2と磁性部材3とが嵌合固定される。
ここで、同図に示すごとく、内周輪郭301には略円状の逃がし部305が形成されるため、磁性部材3の内周面302に取付部20の頂部202が接触せず、ロータシャフト2と磁性部材3との挿嵌後にその空間が頂部クリアランス部121として形成される。
【0033】
また、挿嵌孔30の環状の内周輪郭301と、取付部20の外周輪郭201の辺部211の中央部212とは面接触せず、ロータシャフト2と磁性部材3との挿嵌後にその空間が辺部クリアランス部122として形成される。
なお、上述のごとく、取付部20と挿嵌部30とは面接触部11において、径方向の締め代が設定された状態で締結される。
【0034】
次に、本例の作用効果につき説明する。
本発明の回転電機用ロータ1において、ロータシャフト2における取付部20は、軸方向に直交する断面の外周輪郭201が正六角形である。
そして、磁性部材3における挿嵌孔30は、その内周輪郭301が取付部20の外周輪郭201に外接すると共に、面接触部11を形成した状態で、取付部20に嵌合固定される。
【0035】
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3とは回転方向と交差する面接触部11において、互いに係合することとなる。それゆえ、ロータシャフト2と磁性部材3との間の回転方向の固定機構を構造的な締結機構とすることができる。
その結果、大きな回転トルクに対しても、ロータシャフト2と磁性部材3との間にすべりを生じることなく両者を固定することができる。
また、従来の一端側エンドプレート、他端側エンドプレート及びかしめ部材が不要となるため、部品点数を少なくすることができる。
【0036】
また、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201の形状の多角形化により、磁性部材3の挿嵌孔30への嵌入時の位置決めが可能となるため、キー溝の加工が不要となり、回転電機用ロータ1の生産性を向上することができる。
【0037】
挿嵌孔30の内周輪郭301と取付部20の外周輪郭201との間には、部分的にクリアランス部12が形成されている。
これにより、磁性部材3とロータシャフト2との嵌合を容易にできる。
また、ロータシャフト2及び磁性部材3におけるクリアランス部12に面する部分については精度を上げる必要が特になく、表面加工を施す必要が特にない。そのため生産性の向上も図ることができる。
【0038】
また、クリアランス部12には、上記頂部クリアランス部121がある。
これにより、磁性部材3にロータシャフト2を嵌合する際に、頂部202が磁性部材3に干渉することを防ぎ、嵌合を容易にできる。
【0039】
また、クリアランス部12には、上記辺部クリアランス部122もある。そして、辺部211における中央部212の両脇に面接触部11が形成されている。
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3との嵌合を容易にすることとともに生産性を向上させつつ、耐回転トルク性を向上することができる。
すなわち、略多角形の各辺部211において、中央部212よりもその両脇の方が回転中心からの距離が長い。それゆえ、中央部212よりも両脇に面接触部11を形成した方が耐回転トルク性を向上しやすい。
その一方、辺部211の中央部212に辺部クリアランス部122を設けて、ロータシャフト1と磁性部材3との嵌合を容易にすることができ、生産性の向上も図ることができる。
【0040】
また、面接触部11は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称となる複数箇所に形成してなる。
これにより、回転電機用ロータ1の回転方向の全周にわたって均等に面接触部11が形成されるため、回転トルクに対する磁性部材3とロータシャフト2との締結力を向上させることができる。
【0041】
また、挿嵌孔30は、外周輪郭201におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、面接触部11を形成してなる。
これにより、挿嵌孔30が、外周輪郭201におけるすべての辺をそれぞれ構成する面との間に、面接触部11が形成されるため、これにより、回転トルクに対し、磁性部材3がロータシャフト2からずれて、回転してしまうことがより確実に防止できる。
すなわち、ロータシャフト2と磁性部材3においては面接触部11を多数の箇所に形成しやすく、締結力の向上をはかることができる。
【0042】
また、外周輪郭201及び内周輪郭301は、ロータシャフト2の回転軸を中心とする回転対称の形状を有する。
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3との間に、回転方向に均等に回転トルクが作用し、回転トルクに対する締結力が向上する。
【0043】
すなわち、環状の磁性部材3の挿嵌孔30と、該挿嵌孔30に嵌入するロータシャフト2の取付部20の外周輪郭201とを回転軸を中心とする回転対称の形状をなす略多角形状とすることで、面接触部11に対して均等にトルク保持をさせることができ、耐回転トルク性を高めることができる。
【0044】
取付部20と挿嵌孔30とは、面接触部11において、径方向の締め代を設定した状態で嵌合している。
これにより、ロータシャフト2と磁性部材3とをより強固に固定することができ、回転トルクに対する両者の締結力をより高めることができる。
さらに、面接触部11に径方向の締め代を設定することで、磁性部材3がロータシャフト2に対して軸方向へずれることを、効果的に防ぐことができる。
【0045】
また、磁性部材3は複数の電磁鋼板31を軸方向に積層してなるため、磁性部材3を容易かつ低コストにて形成できる。
【0046】
以上のごとく、本例によれば、回転トルクに対するロータシャフトと磁性部材との間の固定力に優れると共に、部品点数を少なくすることができる回転電機用ロータを提供できる。
【0047】
(実施例2)
本例は、
図6〜
図9に示すごとく、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201に、辺部211の中央部212を内側へ後退させた凹状部213を形成することにより、辺部211の外側の辺部クリアランス部122を形成した例である。
すなわち、内周輪郭301には、実施例1において示した円弧状部303(
図5参照)を形成していない。
なお、本例では、逃がし部305と内周輪郭301とが、曲率半径が1mm以上の曲線によってつながっている。
【0048】
図6に示すごとく、磁性部材3の挿嵌孔30に対しロータシャフト2の取付部20を挿嵌させた状態において、挿嵌孔30の内周輪郭301に、取付部20の外周輪郭201の各辺部211が中央部212以外において面接触する。
また、挿嵌孔30の環状の内周輪郭301と、取付部20の外周輪郭201の凹状部213は面接触せず、挿嵌後にその空間が辺部クリアランス部122として形成される。
その他は、実施例1と同様である。
【0049】
本例の場合には、挿嵌孔30の形状を簡素化することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0050】
(実施例3)
本例は、
図10〜
図13に示すごとく、ロータシャフト2における取付部20の外周輪郭201における頂部202に、面取部203を形成することにより、面取部203と内周輪郭301における外接部307との間に頂部クリアランス部121を形成した例である。
また、
図13に示すごとく、磁性部材3における挿嵌孔30の内周輪郭301には、実施例1において示した逃し部305(
図5参照)が形成されていない。
なお、本例では、外接部307と円弧部303とが、曲率半径が1mm以上の曲線によってつながっている。
【0051】
ここで、外周輪郭201は略正六角形であるが、直線状の面取部203を設けたことにより正確には十二角形となる。
また、面取部203は直線状に限らず、例えば曲線状とすることもできる。
その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。