特許第5945497号(P5945497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特許5945497密閉式混合機、混練方法およびゴム組成物
<>
  • 特許5945497-密閉式混合機、混練方法およびゴム組成物 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945497
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】密閉式混合機、混練方法およびゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/10 20060101AFI20160621BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20160621BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20160621BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160621BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20160621BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
   B29B7/10
   C08J3/20 BCEQ
   C08L21/00
   C08K3/36
   C08K5/548
   B29K21:00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-250401(P2012-250401)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-97607(P2014-97607A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 拓美
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010951(JP,A)
【文献】 特開2005−231057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B7/00−7/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも原料ゴム、シリカおよびシランカップリング剤を含有するゴム組成物を混練する密閉式混合機であって、
ケーシングおよびローターを有し、前記ゴム組成物を混練する混練部と、前記混練部の上方に位置し、内部に筒状の空間を有するネック部と、前記ネック部の側面側上部に設けられた投入口と、前記ネック部の筒状の空間内を上下に移動可能であり、前記ゴム組成物の混練時に、前記混練部内の前記ゴム組成物を上方から押付可能なラムと、前記混練部の下面に位置し、混練後の前記ゴム組成物を下方に排出するドロップドアと、を備え、
前記ラムが、50〜120℃に温調可能なラムであることを特徴とする密閉式混合機。
【請求項2】
前記ネック部が、50〜120℃に温調可能なネック部である請求項1に記載の密閉式混合機。
【請求項3】
前記ケーシングの側面に穿設された吸気口から、外部空気を流入可能なエアブローを有する請求項1または2に記載の密閉式混合機。
【請求項4】
少なくとも原料ゴム、シリカおよびシランカップリング剤を含有するゴム組成物の混練方法であって、
ケーシングおよびローターを有し、前記ゴム組成物を混練する混練部と、前記混練部の上方に位置し、内部に筒状の空間を有するネック部と、前記ネック部の側面側上部に設けられた投入口と、前記ネック部の筒状の空間内を上下に移動可能であり、前記ゴム組成物の混練時に、前記混練部内の前記ゴム組成物を上方から押付可能なラムと、前記混練部の下面に位置し、混練後の前記ゴム組成物を下方に排出するドロップドアと、を備えた密閉式混合機を使用し、
前記ラムを50〜120℃に温調した状態で前記ゴム組成物を混練することを特徴とするゴム組成物の混練方法。
【請求項5】
前記ネック部を50〜120℃に温調した状態で前記ゴム組成物を混練する請求項4に記載のゴム組成物の混練方法。
【請求項6】
前記密閉式混合機が、前記ケーシングの側面に穿設された吸気口から、外部空気を流入可能なエアブローを有するものであり、前記エアブローから外部空気を前記ケーシング内に流入させつつ前記ゴム組成物を混練する請求項4または5に記載のゴム組成物の混練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも原料ゴムおよびシリカを含有するゴム組成物を混練する密閉式混合機、混練方法およびゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムの補強用充填剤としてシリカが使用されるようになっている。シリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向がある。そこで、シリカをゴム組成物に配合する場合、シリカの分散を良くするためにシランカップリング剤を添加することが好ましい。これにより、シリカとカップリング剤をカップリング反応させ、分散性を改善し再凝集を抑え、タイヤの低燃費性・ウェット性を向上させている。
【0003】
シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応について、以下に説明する。かかるカップリング反応では、シリカとシランカップリング剤とが脱水反応を経て結合した後、隣接し合うカップリング剤同士が水を取り込んで加水分解することにより、互いにシロキサン結合してシリカ表面にある親水基を覆う。その際、反応副生物としてアルコールを発生する。このように、シリカ表面の親水基をシランカップリング剤で覆うことにより、シリカとゴムとの親和性を高め、自己凝集を防ぐことで、ゴム中でのシリカの分散性を改善できる。ただし、カップリング反応中に副生する水およびアルコールを効率良く排除しないと、カップリング反応が十分に進行せず、最終的な加硫ゴムの動的粘弾特性が低下する、あるいはシリカの分散性向上効果が低下する場合がある。
【0004】
上記問題を解決すべく、下記特許文献1では、密閉式混合機の混練部から排出されたゴム材料を受容するホッパに排気ダクトを接続することで、ゴム材料の混練時に放出される水およびアルコールを効果的に排気する技術が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、密閉式混合機の混練部を温調し、ゴム材料の混練温度を130〜170℃に設定することで、ゴム材料の混練時に放出される水およびアルコールを効果的に排気する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−231057号公報
【特許文献2】特開2006−123272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記各先行技術には、次のような問題点がある。すなわち、特許文献1に記載の技術では、ゴム材料の混練初期に排気処理を行うと、ダクト配管にシリカを含む充填剤などの固形分が詰まる場合があり、ゴム材料の混練後期に排気処理を行っても、水およびアルコールはゴム中に既に取り込まれているため、これらの除去効率は著しく低下する。
【0008】
また、下記特許文献2に記載の技術では、単にゴム材料の混練温度を工夫するに過ぎず、水およびアルコールの除去効率の点で改善の余地がある。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応時に副生する水およびアルコールを効率良く排除することで、シリカの分散性が向上し、かつシリカの反応性を高めることで、加硫ゴムの動的粘弾特性が向上したゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゴム組成物の混練時に副生する水およびアルコールが混練部のケーシング内に留まらず、ラム下面で結露し、これが再度ケーシング内に混入することで、ゴム組成物から水およびアルコールを効率良く排除できないことが判明した。かかる問題を解決すべく、密閉式混合機のラムを温調可能に設計変更したところ、ラムの温度を適温に設定することで、ラム下面での水およびアルコールの結露を防ぐとともに、シリカの分散性をも向上できる点を見出した。本発明は、かかる発見に基づきなされたもので、下記の構成を有する。
【0011】
すなわち、本発明に係る密閉式混合機は、少なくとも原料ゴム、シリカおよびシランカップリング剤を含有するゴム組成物を混練する密閉式混合機であって、ケーシングおよびローターを有し、前記ゴム組成物を混練する混練部と、前記混練部の上方に位置し、内部に筒状の空間を有するネック部と、前記ネック部の側面側上部に設けられた投入口と、前記ネック部の筒状の空間内を上下に移動可能であり、前記ゴム組成物の混練時に、前記混練部内の前記ゴム組成物を上方から押付可能なラムと、前記混練部の下面に位置し、混練後の前記ゴム組成物を下方に排出するドロップドアと、を備え、前記ラムが、50〜120℃に温調可能なラムであることを特徴とする。
【0012】
本発明者が知り得る限りでは現在まで、密閉式混合機としてラムに温調機能を有しないもの、あるいはラムのみを独立で温調できるのではなく、ローターまたはケーシングと同一系統で温調可能としたものしか存在しないのが実情である。本発明に係る密閉式混合機では、ローターおよび/またはケーシングとは無関係に、ラム単独で独立して温度設定可能、具体的には50〜120℃に設定可能であるため、かかる密閉式混合機を使用してゴム組成物を混練した場合、ラム下面で水およびアルコールが結露することを防止し、これらが再度ケーシング内に混入することを防止することができる。その結果、混練後のゴム組成物の水分率を低減することができる。さらに、ラムが50〜120℃に設定されると、ゴム混練時のシリカの分散性が高まる。一方、ラムの温度を50℃未満とすると、ラム下面で水およびアルコールが結露することを防止できず、これらが再度ケーシング内に混入してしまい、ラムの温度が120℃を超えると、シリカの分散性が却って悪化する。
【0013】
上記密閉式混合機において、前記ネック部が、50〜120℃に温調可能なネック部であることが好ましい。ゴムの混練時に副生する水およびアルコールは、ラム下面のみならず、ネック部内壁面にも結露する場合がある。したがって、ネック部が50〜120℃に設定可能な密閉式混合機を使用した場合、ゴムの混練時にネック部内壁面での水およびアルコールの結露を防止することができ、これらが再度ケーシング内に混入することを防止することができる。その結果、混練後のゴム組成物の水分率をさらに低減することができる。
【0014】
上記密閉式混合機において、前記ケーシングの側面に穿設された吸気口から、外部空気を流入可能なエアブローを有することが好ましい。かかる構成によれば、ラム下面および/またはネック部内壁面に結露した水およびアルコールのケーシング内への混入を、さらに効率良く防止することができる。
【0015】
また、本発明に係るゴム組成物の混練方法は、少なくとも原料ゴム、シリカおよびシランカップリング剤を含有するゴム組成物の混練方法であって、ケーシングおよびローターを有し、前記ゴム組成物を混練する混練部と、前記混練部の上方に位置し、内部に筒状の空間を有するネック部と、前記ネック部の側面側上部に設けられた投入口と、前記ネック部の筒状の空間内を上下に移動可能であり、前記ゴム組成物の混練時に、前記混練部内の前記ゴム組成物を上方から押付可能なラムと、前記混練部の下面に位置し、混練後の前記ゴム組成物を下方に排出するドロップドアと、を備えた密閉式混合機を使用し、前記ラムを50〜120℃に温調した状態で前記ゴム組成物を混練することを特徴とする。かかる製造方法によれば、水分率が低く、かつシリカの分散性に優れたゴム組成物を製造することができる。ゴム組成物の水分率をさらに低下するためには、前記ネック部を50〜120℃に温調した状態で前記ゴム組成物を混練することが好ましく、前記密閉式混合機が、前記ケーシングの側面に穿設された吸気口から、外部空気を流入可能なエアブローを有し、前記エアブローから外部空気を前記ケーシング内に流入させつつ前記ゴム組成物を混練することが好ましい。
【0016】
前記いずれかのゴム組成物の製造方法により製造されたゴム組成物は、水分率が低く、かつシリカの分散性に優れる。前記ゴム組成物が、アミンおよびアルコキシシランで変性されたスチレンブタジエンゴム、シリカ、ならびにSi75および保護化メルカプトシランの少なくとも1種からなるシランカップリング剤を含有する場合、低水分率およびシリカの高分散性に加えて、様々なゴム物性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る密閉式混合機の構成を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、ゴム組成物の混練のために密閉式混合機を使用する。かかる密閉式混合機としては、噛合式インターミックスタイプミキサー、接線式バンバリータイプミキサー、加圧式ニーダーなどが使用可能であるが、特に噛合式インターミックスタイプミキサーが好適に使用可能である。
【0019】
本発明に係る密閉式混合機の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る密閉式混合機の構成を示す概念図である。
【0020】
密閉式混合機1は、ケーシング2およびローター3を有する混練部4と、混練部4の上方に位置し、内部に筒状の空間を有するネック部5と、ネック部の側面側上部に設けられた投入口6と、ネック部5の筒状の空間内を上下に移動可能であるラム7と、混練部4の下面に位置するドロップドア9と、を備える。
【0021】
本実施形態では、混練部4のケーシング2内には、一対のローター3が混練部4の幅方向に配置され、モーターを動力源としてそれぞれ所定方向に回転する。その際、ローター3とケーシング2およびラム7との間の隙間でゴム組成物がせん断力を受けることにより、ゴム組成物が混練されつつ、シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応が進行する。混練時のゴム組成物の温度は、例えば130〜180℃に設定され、混練時間は例えば1〜15分が例示される。
【0022】
混練部4のケーシング3の上面中央部には、開口部2aが設けられ、開口部2aの上方には、内部に筒状の空間を有するネック部5が設けられている。ネック部5の側面側上部には、原料ゴムや、シリカおよびシランカップリング剤などの配合剤を投入可能な投入口6が設けられている。原料ゴムと配合剤とを別々の投入口から投入するために、投入口6を2つ以上設けても良い。投入口6から投入された原料ゴムおよび配合剤は、ネック部5の筒状の空間内を通って、ケーシング2の開口部2aからケーシング2内に投入される。
【0023】
ラム7は、ケーシング2の開口部2aを閉塞可能な形状に形成され、その上端に連結されたシャフト8により、ネック部5の筒状の空間を上下方向に移動可能に設けられている。ラム7は、その自重またはシャフトからの押圧力により、混練部4のケーシング2内に存在するゴム組成物を押付・加圧することができる。
【0024】
混練部4のケーシング2の下面に位置するドロップドア9は、混練部4内でゴム組成物が混練される際には閉鎖され、混練終了後には開放されてゴム組成物を下方に排出することができる。
【0025】
本発明に係る密閉式混合機おいては、ラム7が、50〜120℃に温調可能なラムである点が特徴である。かかる温度範囲にラム7を温調することにより、揮発した水およびアルコールがラム7の下面に結露することを防止することができる。ラム7下面での水およびアルコールの結露を防止し、シリカの分散性を効率的に高めるためには、ラム7の温調可能範囲が60〜100℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明に係る密閉式混合機おいては、ネック部5が、50〜120℃に温調可能なネック部5であることが好ましい。かかる温度範囲にネック部5を温調することにより、揮発した水およびアルコールがネック部5の内壁面に結露することを防止することができる。ネック部5の内壁面での水およびアルコールの結露の防止、およびシリカの分散性の向上効果をより効果的に両立するためには、ネック部5の温調可能範囲が60〜100℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。
【0027】
ただし、ケーシング2およびローター3をラム7と同様に高温化すると、混練部4内でゴム組成物を混練する際、ゴムが異常に発熱し、混練性を著しく悪化させる。したがって、シリカの反応促進および分散性向上のためには、ケーシング2およびローター3の温調範囲をラム7の温調範囲より低くすることが好ましく、さらにはケーシング2およびローター3が30〜60℃に温調可能であることがより好ましい。
【0028】
本発明に係る密閉式混合機おいては、ケーシング2の側面に穿設された吸気口から、外部空気を流入可能なエアブロー(図1には不図示)を有しても良い。ケーシング2内に外部空気を流入させることにより、水およびアルコールをケーシング2内から強制排出することができ、混練後のゴム組成物の水分率を低減することができる。一方、ケーシング2の側面に排気口を穿設し、ケーシング2内の水およびアルコールを吸引排出する場合、ダクト配管にシリカなどの充填剤や、水およびアルコールなどが詰まる場合があり好ましくない。
【0029】
本発明に係るゴム組成物の製造方法では、前記密閉式混合機を使用し、ラム7を50〜120℃に温調した状態でゴム組成物を混練する点が特徴である。かかる製造方法によれば、水分率が低く、かつシリカの分散性に優れたゴム組成物を製造することができる。ゴム組成物の水分率をさらに低下するためには、ネック部5を50〜120℃に温調した状態でゴム組成物を混練することが好ましく、ケーシング2の側面に穿設された吸気口から、外部空気を流入可能なエアブローを有し、エアブローから外部空気をケーシング内に流入させつつゴム組成物を混練することが好ましい。
【0030】
上記製造方法により製造されたゴム組成物は、水分率が低く、かつシリカの分散性に優れる。以下に、本発明で使用可能なゴム組成物の原料について説明する。
【0031】
投入される原料ゴムとしては、ジエン系ゴムを好適に使用可能である。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを含有するブタジエンゴム(SPB)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上のブレンドとして用いることができる。これら例示したジエン系ゴムとしては、必要に応じて、末端を変性したもの(例えば、末端変性BRや、末端変性SBRなど)、あるいは所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も使用可能である。この末端変性ジエン系ゴムとしては、各種変性剤でポリマー末端が変性されたジエン系ゴムを用いることができ、変性方法も公知の種々の方法を用いることができる。具体的に、変性剤としては、スズ化合物、アミノベンゾフェノン化合物、イソシアネート化合物、ジグリシジルアミン化合物、環状イミン化合物、ハロゲン化アルコキシシラン化合物、グリシドキシプロピルメトキシシラン化合物、ネオジウム化合物、アルコキシシラン化合物、アミン化合物とアルコキシシラン化合物の併用などが挙げられる。合成ゴムの場合、その重合法や分子量などは特に制限されることはなく、ゴム組成物が使用される部位や用途により、ゴム種類とブレンド比率の組合せを適宜選択することができる。なお、ポリブタジエンゴム(BR)については、コバルト(Co)触媒、ネオジム(Nd)触媒、ニッケル(Ni)触媒、チタン(Ti)触媒、リチウム(Li)触媒を用いて合成したものに加えて、WO2007−129670に記載のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物を用いて合成したものも使用可能である。これらのジエン系ゴムの中でも、BRおよび/またはSBRの使用が好ましく、SBRの使用がより好ましく、アミンおよびアルコキシシランで変性された変性SBRの使用が特に好ましい。
【0032】
シリカとしては、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル−ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。シリカの配合量は、原料ゴム100質量部に対して、20〜120質量部であることが好ましく、40〜100質量部であることがより好ましい。
【0033】
シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して2〜25質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0034】
加硫剤としては、代表的なものとして硫黄が挙げられる。硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0035】
本発明においては、ゴム組成物中に少なくとも原料ゴム、シリカ、シランカップリング剤および加硫剤以外の配合剤、例えば充填材、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、加硫戻り抑制剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0036】
充填剤としては、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、ゴム工業において通常使用される無機充填材を意味する。上記無機充填材の中でも、カーボンブラックを特に好適に使用することができる。
【0037】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。
【0038】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0039】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤以外にゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などを必要に応じて使用しても良い。
【実施例】
【0040】
(使用原料)
a)ゴム成分(全量を100質量部とする)
変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)100質量部:JSR(株)製のHPR340(変性S−SBR、結合スチレン量:10質量%、アミンおよびアルコキシルシランで変性)
b)カーボンブラック(HAF‐HS(N339))20質量部:東海カーボン(株)製のシーストKH
c)シリカ70質量部:東ソーシリカ工業(株)「ニプシールAQ」
d)シランカップリング剤7質量部:保護化メルカプトシラン:(C2n+1O)Si−C2m−S−CO−C2k+1で表されるカップリング剤(n=2、m=3、k=7)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製の「NXT」
e)オイル40質量部:ジャパンエナジー(株)「プロセスX−140」
f)ステアリン酸2質量部:日本油脂(株)製の「ステアリン酸」
g)亜鉛華3質量部:三井金属鉱業(株)製の「酸化亜鉛2種」
h)老化防止剤2質量部:住友化学工業(株)製の「アンチゲン6C」
i)ワックス2質量部:日本精蝋(株)製の「パラフィンワックス135」
j)硫黄2.1質量部:鶴見化学工業(株)製の「油処理150メッシュ粉末硫黄」
k)加硫促進剤1.5質量部:大内新興化学工業(株)製の「ノクセラーCZ−G」
【0041】
実施例1〜2、比較例1〜4
図1に記載の密閉式混合機を使用し、ラム7、ネック部5、ケーシング2、ローター3およびドロップドア9の温度を表1に記載の温度に設定し、混練部4内でゴム組成物を混練した。なお、実施例1、比較例2〜4では、ケーシング2の側面に穿設された吸気口から、外部空気を流入可能なエアブローを有する密閉式混合機を使用した。混練後のゴム組成物を、下記の加硫条件で加硫し各評価を行った。
【0042】
[動的粘弾性]
160℃×30分で加硫し、JIS K6394に準じ東洋精機製の東洋精機製粘弾性試験機にて、温度70℃/周波数10Hz、初期歪10%、動歪2%の条件にてtanδを測定し、比較例1の測定結果を100とする指数評価を行った。数値が小さいほど動的粘弾性に優れることを意味する。結果を表1に示す。
【0043】
[ペイン効果]
アルファテクノロジーズ製RPA2000を使用し、160℃×30分加硫の加硫ゴムを温度60℃、周波数1.667Hzの条件で、歪を0.5〜45%まで変化させた時の最大せん断力から最小せん断力を引いた値を測定し、比較例1の測定結果を100とする指数評価を行った。数値が小さいほどフィラーの分散性が良好であることを意味する。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【符号の説明】
【0045】
1 密閉式混合機
2 ケーシング
3 ローター
4 混練部
5 シート状ゴム成形装置
6 ネック部
7 ラム
8 シャフト
9 ドロップドア
図1