(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の油圧プレスを含む従来の油圧プレスは、金型の開閉が遅いので、生産性が悪いという欠点がある。なお、仮に、従来の油圧プレスにおいて、金型の開閉を高速で行う場合、大量の油(作動油)を短時間でシリンダ内に流入、流出させる必要があるので、大掛かりな油圧機構と蓄圧装置が必要となる。
また、いわゆる強化用繊維に樹脂を付与して強度を向上させた複合材料(以下「FRPシート」という。)を成形する場合、加圧されるまでの間に時間を要するので、加熱された樹脂が放熱してしまい、良好な成形条件が維持できなくなる。
さらに、油圧プレスにおいては、作動油が粘性流体であるため、気温や運転温度によって粘度が著しく変化しやすい。このため、大量の作動油を用いる油圧プレスの動作速度を安定化させることが困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトで、FRPシートの安定した成形が可能であり、且つ成形品の生産性が優れるFRP用成形機及びそれを用いたFRPシートの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、互いに昇降移動する下方付勢手段及び上方付勢手段からなる狭圧機構のうち、下方付勢手段をクランク機構により昇降移動するようにし、上方付勢手段を油圧ポンプにより昇降移動するようにすることで、意外にも、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、(1)互いに昇降移動する下方付勢手段及び上方付勢手段からなる狭圧機構を備え、
加熱されたFRPシートを、下方付勢手段と上方付勢手段との間
に挟み込んで
、連続して成形
加工する
ためのFRP用成形機であって、下方付勢手段がクランク機構により昇降移動されるものであり、
クランク機構がサーボモータにより駆動され、上方付勢手段が油圧ポンプにより昇降移動されるものであ
り、油圧ポンプがサーボモータにより駆動されるFRP用成形機に存する。
【0009】
本発明は、(2)狭圧機構を複数備える上記(1)記載のFRP用成形機に存する。
【0010】
本発明は、(3)上流側の狭圧機構の下方付勢手段の下端及び上方付勢手段の上端には、第1温度調整板が取り付けられ、下流側の狭圧機構の下方付勢手段の下端及び上方付勢手段の上端には、第2温度調整板が取り付けられている上記(2)記載のFRP用成形機に存する。
【0011】
本発明は、(4)第1温度調整板が加熱板であり、
FRPシートが、第1温度調整板に加熱された金型を介して、下方付勢手段と上方付勢手段との間に挟み込まれる上記(3)記載のFRP用成形機に存する。
本発明は、(5)第2温度調整板が冷却板であり、FRPシートが、第2温度調整板に冷却された金型を介して、下方付勢手段と上方付勢手段との間に挟み込まれ、第2温度調整板の温度が、第1温度調整板の温度以下となっている上記(3)又は(4)に記載のFRP用成形機に存する。
【0012】
本発明は、(
6)FRPシートを搬送する搬送装置を更に備える上記(1)〜(
5)のいずれか1つに記載のFRP用成形機に存する。
【0013】
本発明は、(
7)FRPシートを予め加熱する予備加熱装置を更に備える上記(1)〜(
6)のいずれか1つに記載のFRP用成形機に存する。
【0015】
本発明は、(8)
クランク機構及び油圧ポンプが、狭圧機構よりも下方に配置されている上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のFRP用成形機に存する。
【0016】
本発明は、(9)強化用繊維が、炭素繊維であり、樹脂が熱可塑性樹脂である上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のFRP用成形機に存する。
【0017】
本発明は、(10)上記(
5)記載のFRP用成形機を用いたFRPシートの成形方法であって、FRPシートを、上流側の狭圧機構で加熱しながら成形する加熱成形ステップと、加熱しながら成形されたFRPシートを、下流側の狭圧機構で冷却しながら成形する冷却成形ステップと、を備え、加熱成形ステップにおいて、上流側の狭圧機構の下方付勢手段を下降させた後、上方付勢手段を上昇させることにより、FRPシートを成形し、冷却成形ステップにおいて、下流側の狭圧機構の下方付勢手段を下降させた後、上方付勢手段を上昇させることにより、FRPシートを成形するFRPシートの成形方法に存する。
【0018】
本発明は、(11)上記(
7)記載のFRP用成形機を用いたFRPシートの成形方法であって、FRPシートを、予備加熱装置で加熱する加熱ステップと、加熱されたFRPシートを、下流側の狭圧機構で冷却しながら成形する冷却成形ステップと、を備え、冷却成形ステップにおいて、下流側の狭圧機構の下方付勢手段を下降させた後、上方付勢手段を上昇させることにより、FRPシートを成形するFRPシートの成形方法に存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のFRP用成形機においては、互いに昇降移動する下方付勢手段及び上方付勢手段からなる狭圧機構のうち、一方側である下方付勢手段をクランク機構により昇降移動させることにより、当該下方付勢手段の高速移動が可能となる。
したがって、下方付勢手段の高速移動距離を比較的大きく設定することにより、FRPシートの加工時間が短縮されるので、それに伴ってFRPシートを連続搬送する速度を従来よりも高速で設定することができる。その結果、生産性が向上する。このとき、クランク機構がサーボモータにより駆動されるものであると、少ない動力、高精度な制御の下、金型の高速開閉を実現することができる。
【0020】
また、FRPシートを成形する場合、クランク機構により下方付勢手段を素早く昇降移動させることで、加圧されるまでの時間を短縮することができるので、加熱された樹脂の放熱を防止することができる。その結果、FRPシートを確実に成形することが可能となる。
さらに、下方付勢手段に油圧ポンプを用いないので、大掛かりな油圧機構や蓄圧装置が不要であり、装置をコンパクトにすることができる。
さらにまた、作動油の量を極端に少なくすることができるので、気温や運転温度に基づく作動油の粘度変化による影響を小さくすることができ、油漏れや油の交換等の保全管理も容易となる。
【0021】
本発明のFRP用成形機においては、他方側である上方付勢手段を油圧ポンプにより昇降移動させることにより、加圧力を制御することが容易となる。
このとき、上方付勢手段の移動距離を比較的小さく設定することにより、FRPシートの加工時間が短縮されるので、生産性が向上する。
また、油圧ポンプをサーボモータで駆動することにより、上方付勢手段の動作速度及び圧力を任意の値に容易に制御することができ、安定した成形が可能となる。
【0022】
これらのことから、本発明のFRP用成形機によれば、コンパクトでありながら、FRPシートの安定した成形が可能であり、且つ成形品の生産性が優れるものとなる。
【0023】
本発明のFRP用成形機においては、狭圧機構を複数備えるので、上流側の狭圧機構で成形したFRPシートを、下流側の狭圧機構で再度成形することができる。
このとき、上流側の狭圧機構の下方付勢手段の下端及び上方付勢手段の上端には、第1温度調整板が取り付けられ、下流側の狭圧機構の下方付勢手段の下端及び上方付勢手段の上端には、第2温度調整板が取り付けられているので、FRPシートの温度を調整しながら成形することができる。
例えば、第1温度調整板が加熱板である場合、第1温度調整板によって金型を加熱することができる。これにより、十分に加熱された金型でFRPシートを成形することができるので、FRPシートの形状を大きく変形させることができる。
また、第2温度調整板が冷却板である場合、第2温度調整板によって金型を冷却することができる。これにより、加熱成形されたFRPシートを十分に冷却された金型で再成形することができるので、FRPシートの形状が微調整され、同時に、その形状で硬化された成形品を得ることができる。
したがって、FRPシートの成形を高精度で行うことが可能となる。
【0024】
本発明のFRP用成形機においては、FRPシートを搬送する搬送装置を更に備えるので、連続したFRPシートの加工が可能となる。
【0025】
本発明のFRP用成形機においては、FRPシートを加熱する予備加熱装置を更に備える場合、予め軟化させた状態のFRPシートを、狭圧機構で成形することも可能である。
また、狭圧機構には、冷却板からなる第2温度調整板が取り付けられているので、該第2温度調整板によって金型を冷却することができる。これにより、加熱されたFRPシートを十分に冷却された金型で冷却しながら成形することができるので、FRPシートが成形されると共に、所望の形状で硬化させることができる。
【0026】
本発明のFRP用成形機においては、FRPシートが、炭素繊維と、該炭素繊維に付与された熱可塑性樹脂とからなる場合、多工程成形を行うことができ、生産性にも優れる。このため、安価で複雑の形状の自動車車体部材に用いることができる。その結果、自動車の安全性向上や燃費改善につながる。また、再加工をすることも可能となる。
また、成形後であっても、成形品を加熱することにより再加工が可能であり、容易にリサイクルすることができるという利点がある。
【0027】
本発明のFRPシートの成形方法においては、上述したFRP用成形機を用い、加熱成形ステップ及び冷却成形ステップにおいて、上流側の狭圧機構の下方付勢手段をクランク機構で高速で下降させた後、上方付勢手段を油圧ポンプで上昇させて、FRPシートを成形することにより、成形されたFRPシートの生産性が向上し、且つFRPシートの安定した成形が可能となる。
【0028】
本発明のFRPシートの成形方法においては、FRPシートを、予備加熱装置で加熱した後、冷却成形ステップにおいて、上流側の狭圧機構の下方付勢手段をクランク機構で高速で下降させた後、上方付勢手段を油圧ポンプで上昇させて、FRPシートを成形することにより、成形されたFRPシートの生産性が向上し、且つFRPシートの安定した成形が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
本発明に係るFRP用成形機は、強化用繊維が付与された樹脂からなるFRPシートを、後述する下方付勢手段と上方付勢手段との間に挟み込んで成形する装置である。
上記FRPシートとしては、例えば、ガラス繊維強化プラスチック、ガラス長繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、ボロン繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチック、ポリエチレン繊維強化プラスチック、ザイロン強化プラスチック、液晶ポリマー等の公知のものが適宜用いられる。
これらの中でも、汎用性及び強度の観点から、FRPシートが、強化用繊維として炭素繊維を用い、樹脂としてメチルメタアクリレート等の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。この場合、成形後であっても、加熱することにより再加工が可能であり、容易にリサイクルすることができる。
【0032】
図1は、本実施形態に係るFRP用成形機を模式的に示す正面図である。
図1に示すように、FRP用成形機100は、昇降移動する下方付勢手段10A及び上方付勢手段10Bからなる上流側の狭圧機構10と、昇降移動する下方付勢手段20A及び上方付勢手段20Bからなる下流側の狭圧機構20と、強化用繊維が付与された樹脂からなるFRPシート1を搬送する搬送装置(図示しない)と、FRPシートを予め加熱する予備加熱装置4と、を備える。
FRP用成形機100においては、複数の狭圧機構10,20を備えているので、上流側の狭圧機構10で成形したFRPシート1を、下流側の狭圧機構20で再度成形することができる。
【0033】
FRP用成形機100において、上流側の狭圧機構10の下方付勢手段10Aの下端及び上方付勢手段10Bの上端には、加熱板からなる第1温度調整板Xが取り付けられている。このため、上流側の狭圧機構10に搬送されたFRPシート1は、第1温度調整板Xに加熱された金型K1を介して、下方付勢手段10Aと上方付勢手段10Bとの間に挟み込まれて成形されることになる。
このとき、上流側の狭圧機構10においては、FRPシート1が、十分に加熱軟化されるので、形状を大きく変化させることができる。
【0034】
ここで、第1温度調整板Xの温度は、樹脂の軟化点付近であることが好ましく、例えば、50〜500℃とすることが好ましい。
【0035】
一方、下流側の狭圧機構20の下方付勢手段20Aの下端及び上方付勢手段20Bの上端には、冷却板からなる第2温度調整板Yが取り付けられている。このため、下流側の狭圧機構20に搬送されたFRPシート1は、第2温度調整板Yに冷却された金型K2を介して、下方付勢手段20Aと上方付勢手段20Bとの間に挟み込まれて成形されることになる。
このとき、下流側の狭圧機構20においては、加熱成形されたFRPシート1が、第2温度調整板Yによって冷却された金型K2を介して再成形されるので、形状を微調整できると同時に、その形状で硬化させることができる。
【0036】
ここで、第2温度調整板Yの温度は、上述した第1温度調整板Xの温度以下であればよい。
【0037】
FRP用成形機100において、上流側の狭圧機構10の下方付勢手段10Aには、クランク機構11が連結されており、当該クランク機構11の回動に基づいて、上流側の狭圧機構10の下方付勢手段10Aが昇降移動するようになっている。
同様に、下流側の狭圧機構20の下方付勢手段20Aには、クランク機構21が連結されており、当該クランク機構21の回動に基づいて、下流側の狭圧機構20の下方付勢手段20Aが昇降移動するようになっている。
両クランク機構11,21は、同期して駆動するようになっている。
【0038】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、狭圧機構10,20の下方付勢手段10A,20Aが、クランク機構11,21により昇降移動されるので、下方付勢手段10A,20Aを高速で昇降移動させることが可能となる。
したがって、FRP用成形機100においては、下方付勢手段が高速移動するので、FRPシートの加工時間が短縮される。その結果、加工前のFRPシートの搬入及び加工後のFRPシートの搬出を繰り返すタイミングを従来よりも極めて速く設定することができるので、生産性が向上する。
【0039】
図2は、本実施形態に係るFRP用成形機のクランク機構の駆動を説明するための模式図である。
図2に示すように、クランク機構11,21は、円を描くように駆動する。
クランク機構11,21は、狭圧の際、下死点付近に位置するように制御することが好ましい。この場合、クランク機構11,21は、上方付勢手段による上方付勢力に対する十分な保持力を発揮することができる。
ここで、下死点付近とは、下死点に位置する場合のクランク角度を0度とした場合、クランク角度θが0〜±30度となる範囲のことを意味する。
【0040】
図1に戻り、クランク機構11には、サーボモータ12が取り付けられており、クランク機構11は、当該サーボモータ12により駆動される。
同様に、クランク機構21には、サーボモータ22が取り付けられており、クランク機構21は、当該サーボモータ22により駆動される。
したがって、FRP用成形機100においては、少ない動力、高精度な制御の下、金型の高速開閉を実現することができる。なお、これらのサーボモータ12,22には、それぞれ対応する減速器12a,22aが取り付けられている。
【0041】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、クランク機構11,21を用いるので、下方付勢手段10A,20Aを素早く高速で移動させることができる。なお、油圧ポンプ13,23を用いて、上方付勢手段10B,20Bを高速で移動させることは困難である。ちなみに、油圧ポンプ13,23を用いて、下方付勢手段10A,20Aを高速で移動させるためには、油圧ポンプを極めて大型にする必要がある。
【0042】
FRP用成形機100において、上流側の狭圧機構10の上方付勢手段10Bには、油圧ポンプ13が取り付けられており、当該油圧ポンプ13により、上流側の狭圧機構10の上方付勢手段10Bが昇降移動するようになっている。
同様に、下流側の狭圧機構20の上方付勢手段20Bには、油圧ポンプ23が取り付けられており、当該油圧ポンプ23により、下流側の狭圧機構20の上方付勢手段20Bが昇降移動するようになっている。
なお、上方付勢手段10B,20Bの移動は、ストロークセンサーSTにより制御される。
【0043】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、上方付勢手段10B,20Bを油圧ポンプ13,23により昇降移動させることにより、加圧力を制御することが容易となる。なお、クランク機構11,21を用いて、下方付勢手段10A,20Aの加圧力を制御することは困難である。
【0044】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、FRPシートを成形する際に、高速クランク機構11,21による下方付勢手段10A,20Aの昇降距離を大きくし、高速移動が困難な油圧ポンプ13,23による上方付勢手段10B,20Bの昇降距離を小さくすることで、FRPシートが下方付勢手段10A,20Aと上方付勢手段10B,20Bとによって加圧されるまでの時間を短縮することができる。これにより、加熱されたFRPシート1の樹脂の放熱を防止することができ、FRPシート1を十分に成形することが可能となる。
【0045】
これに加え、油圧ポンプ13,23を用いて上方付勢手段10B,20Bを、加圧力を制御しながら昇降移動させることにより、高精度で、FRPシートの安定した成形が可能となる。
また、油圧機構による高速運転が不要であるので、油圧ポンプ13,23を小型にすることができるので、装置をコンパクトにすることができ、用いる作動油も少なくなる。
さらに、気温や運転温度に基づく作動油の粘度変化による影響を小さくすることができる。
【0046】
油圧ポンプ13には、サーボモータ14が取り付けられており、油圧ポンプ13は、当該サーボモータ14により駆動される。
同様に、油圧ポンプ23には、サーボモータ24が取り付けられており、油圧ポンプ23は、当該サーボモータ24により駆動される。
したがって、FRP用成形機100においては、油圧ポンプ13による上方付勢手段の動作速度及び圧力を任意の値に直接フィードバック制御できるので、安定した成形が可能となる。
【0047】
図3は、本実施形態に係るFRP用成形機の搬送装置を模式的に示す上面図である。
図3に示すように、FRP用成形機100において、搬送装置3は、FRP用成形機100の両側(FRPシートの進行方向に対して左右)に設けられる。これにより、FRPシートを両側から把持できるので、確実に搬送することができる。
かかる搬送装置3としては、特に限定されず、例えば、公知のロボット等が用いられる。
【0048】
図1に戻り、FRP用成形機100においては、FRPシートを予め加熱する予備加熱装置4が設けられている。これにより、FRPシートを予備加熱装置4で予め加熱して、樹脂が軟化した状態のFRPシート1を狭圧機構で成形することも可能である。
【0049】
ここで、予備加熱装置4の温度は、樹脂の軟化点付近であることが好ましく、例えば、50〜500℃とすることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係るFRP用成形機100において、FRPシート1を成形して得られる成形品は、特に、自動車、航空機等の輸送機の軽量高強度が求められる構造部材等の用途に好適に用いられる。
【0051】
次に、上述したFRP用成形機100を用いたFRPシートの成形方法の第1実施形態について説明する。
図4は、第1実施形態に係るFRPシートの成形方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、第1実施形態に係るFRPシートの成形方法においては、FRPシート1を、上流側の狭圧機構10で加熱しながら成形する加熱成形ステップS1と、加熱しながら成形されたFRPシート1を、下流側の狭圧機構20で冷却しながら成形する冷却成形ステップS2と、を備える。
【0052】
第1実施形態に係るFRPシートの成形方法においては、まず、加熱されたFRPシート1を、搬送装置が上流側の狭圧機構10の位置まで搬送し、上方付勢手段10B上の金型K1上に載置する。なお、FRPシート1が加熱されていない場合、第1温度調整板Xにより加熱された金型K1でFRPシート1を加熱することも可能である。
【0053】
加熱成形ステップS1においては、加熱されたFRPシートが上流側の下方付勢手段10Aと、上方付勢手段10Bとにより、FRPシート1が狭圧され成形される。
図5(a)〜
図5(c)は、第1実施形態に係るFRPシートの成形方法において、上方付勢手段及び下方付勢手段によるFRPシートの加工方法を説明するための説明図である。なお、FRPシートの記載は省略する。
図5(a)に示すように、加熱成形ステップS1においては、最初に、上流側の狭圧機構10の下方付勢手段10Aを高速で下降させる。このとき、下方付勢手段10Aに第1温度調整板Xを介して取り付けられた金型K1を、加熱されたFRPシート1に接触しないように、可及的に近付ける。
次に、下方付勢手段10Aを停止させ、
図5(b)に示すように、上方付勢手段10Bを上昇させる。
そして、
図5(c)に示すように、下方付勢手段10Aと上方付勢手段10Bとの間でFRPシート1を挟圧することにより、FRPシート1が成形される。
このとき、下方付勢手段10A及び上方付勢手段10Bの端部には、第1温度調整板Xが取り付けられているので、FRPシートは、第1温度調整板Xに加熱された金型K1により加熱されながら成形される。
【0054】
加熱成形ステップS1で成形されたFRPシート1は、上方付勢手段10Bが下降し、下方付勢手段10Aが上昇した後、搬送装置が下流側の狭圧機構20の位置まで搬送し、上方付勢手段20B上の金型K2の上に載置する。
【0055】
冷却成形ステップS2においては、成形されたFRPシートが下流側の下方付勢手段20Aと、上方付勢手段20Bとにより、狭圧され、FRPシート1が成形される。なお、狭圧成形の方法は、上述した加熱成形ステップS1と同様であるので、説明を省略する(
図5(a)〜
図5(c)参照)。
このとき、下方付勢手段20A及び上方付勢手段20Bの端部には、第2温度調整板Yが取り付けられているので、FRPシートは、第2温度調整板Yに冷却された金型K2により冷却されながら成形される。
【0056】
そして、上方付勢手段20Bが下降し、下方付勢手段20Aが上昇した後、冷却成形ステップS2において成形された成形品を、搬送装置が搬送することによって取り出される。
第1実施形態に係るFRPシートの成形方法によれば、成形されたFRPシート1である成形品の生産性が向上し、且つFRPシートの安定した成形が可能となる。
【0057】
次に、上述したFRP用成形機100を用いたFRPシートの成形方法の第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係るFRPシートの成形方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、第2実施形態に係るFRPシートの成形方法においては、FRPシート1を、予備加熱装置4で加熱する加熱ステップS3と、加熱されたFRPシート1を、下流側の狭圧機構20で冷却しながら成形する冷却成形ステップS2と、を備える。
【0058】
加熱ステップS3においては、まず、FRPシート1が、予備加熱装置4に投入され、十分に加熱される。
そして、加熱されたFRPシート1は、搬送装置が下流側の狭圧機構20の位置まで搬送し、上方付勢手段20B上の金型K2上に載置する。
【0059】
冷却成形ステップS2においては、FRPシートが下流側の下方付勢手段20Aと、上方付勢手段20Bとにより、狭圧され、FRPシート1が成形される。なお、狭圧成形の方法は、上述した加熱成形ステップS1と同様であるので、説明を省略する(
図5(a)〜
図5(c)参照)。
このとき、下方付勢手段20A及び上方付勢手段20Bの端部には、第2温度調整板Yが取り付けられているので、FRPシートは、第2温度調整板Yに冷却された金型K2により冷却されながら成形される。
【0060】
そして、上方付勢手段20Bが下降し、下方付勢手段20Aが上昇した後、冷却成形ステップS2において成形された成形品を、搬送装置が搬送することによって取り出される。
第2実施形態に係るFRPシートの成形方法によれば、成形されたFRPシート1である成形品の生産性が向上し、且つFRPシートの安定した成形が可能となる。
【0061】
このように、FRPシートの成形方法においては、本実施形態に係るFRP用成形機100を用いることにより、例えば、第1実施形態及び第2実施形態で述べたように、複数通りの方法でFRPシートを成形することができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、本実施形態に係るFRP用成形機100においては、狭圧機構10,20を2機備えているが、1機であってもよく、3機以上備えていてもよい。
【0064】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、上流側の狭圧機構10の下方付勢手段10Aの下端及び上方付勢手段10Bの上端に第1温度調整板Xが取り付けられ、下流側の狭圧機構20の下方付勢手段20Aの下端及び上方付勢手段20Bの上端に第2温度調整板Yが取り付けられているが、必ずしも必須ではない。
例えば、第1温度調整板X及び第2温度調整板Yの代わりに、ヒーターが取り付けられていてもよい。
また、第1温度調整板X及び第2温度調整板Yの代わりに、加熱又は冷却機能を有する金型(温調機能付き金型)を用いてもよい。
【0065】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、第1温度調整板Xとして加熱板を用い、第2温度調整板Yとして冷却板を用いているが、第1温度調整板Xが冷却板であり、第2温度調整板Yが加熱板であってもよい。
また、第1温度調整板X及び第2温度調整板Yが共に加熱板であってもよく、冷却板であってもよい。
【0066】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、クランク機構11,21は、同期して駆動するようになっているが、それぞれ独立していてもよい。
【0067】
本実施形態に係るFRP用成形機100においては、搬送装置3が、FRP用成形機100の両側に設けられているが、設ける位置は特に限定されない。
また、搬送装置3は、FRP用成形機100とは別に、独立して設けられていてもよくい、一体となって設けられていてもよい。
さらに、搬送装置3は、ロボットに限定されず、コンベア、シリンダ機構等であってもよい。