【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
(試験例1)
カチオン化セルロースとしてポリクオタニウム−10(商品名:カチナールLC−100、東邦化学工業社製)を用い、表1に示す処方にて、実施例1〜2、比較例1の検体を調製した。40℃のお湯200Lに対して、それぞれの検体を80gの割合となるように添加した。各お湯中のポリクオタニウム−10の濃度を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
検体(実施例1、2および比較例1)を含む3種類のお湯に、被験者の足を片足ずつ5分間浸け、VAS(Visual Analogue Scale)法でかゆみの度合いを10段階のスコア(かゆみスコア)で評価した。
被験者は、かゆみの自覚症状があり、日頃の入浴に際してかゆみを感じることを条件とし、5名の被験者を用いて試験を実施した。
【0031】
お湯に足をつける前のかゆみの度合い(初期状態のかゆみスコア)を100%とし、つけた直後及び30分後のかゆみの度合い(経時的なかゆみスコア)を各被験者ごとに相対値として百分率で算出し、相加平均した。平均したかゆみの度合い(各被験者の評価値(かゆみスコア)の平均値)の初期状態及び経時変化を表2及び
図1に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2及び
図1より、比較例1では室温から40℃のお湯に足をつけることによる温度変化によって、直後のかゆみの度合いが増加したのに対し、ポリクオタニウム−10を含む実施例1および実施例2ではかゆみそのものが発生せず、かゆみの度合いは足をつける前よりも低い結果となった。
以上より、ポリクオタニウム−10をお湯中で使用することにより、温度変化により生じるかゆみを軽減することができる。
【0034】
(試験例2)
ポリクオタニウム−10(商品名:カチナールLC−100、東邦化学工業社製)を含む、表3に示す処方にて実施例3の検体を調製した。これを40℃のお湯200Lに対して、80gの割合となるように添加した。
【0035】
【表3】
【0036】
実施例3を添加したお湯に全身を10分間ひたした。これを1サイクルとして毎日1回、2週間連続(計14回)行い、VAS(Visual Analogue Scale)法でかゆみの度合いを10段階のスコア(かゆみスコア)で評価した。
被験者は、かゆみの自覚症状があり、日頃の入浴に際してかゆみを感じることを条件とし、6名の被験者を用いて試験を実施した。
【0037】
実施例3の検体を連用する前のかゆみの状態(初期状態のかゆみスコア)を100%とし、連用開始3日後、連用開始7日後、連用開始14日後のかゆみの度合い(経時的なかゆみスコア)を各被験者ごとに相対値として百分率で算出し、相加平均した。平均したかゆみの度合い(各被験者の評価値(かゆみスコア)の平均値)の初期状態及び経時変化を表4及び
図2に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表4及び
図2より、ポリクオタニウム−10を添加したお湯に連日浸かることにより、すなわち、連続的に皮膚をポリクオタニウム−10に適用することにより、温度変化により生じるかゆみを軽減することが分かった。
【0040】
(参考例1)
試験例2において実施例3の成分中、温度変化により生じるかゆみを軽減する成分がポリクオタニウム−10であることを確認すべく、以下の試験を行った。ポリクオタニウム−10を含まないことを除いては、実施例3と同じ処方にて、参考例1の検体を調製した(表5)。
【0041】
【表5】
【0042】
試験例1と同様に、参考例1の検体を含むお湯に、被験者の足を片足ずつ5分間浸け、VAS(Visual Analogue Scale)法でかゆみの度合いを10段階のスコア(かゆみスコア)で評価した。被験者は、かゆみの自覚症状があり、日頃の入浴に際してかゆみを感じることを条件とし、8名の被験者を用いて試験を実施した。
【0043】
お湯に足をつける前のかゆみの度合い(初期状態のかゆみスコア)を100%とし、つけた直後及び30分後のかゆみの度合い(経時的なかゆみスコア)を各被験者ごとに相対値として百分率で算出し、相加平均した。その結果、平均したかゆみの度合い(各被験者の評価値(かゆみスコア)の平均値)は、直後では103%、30分後では81%であり、かゆみが軽減する効果は見られなかった。すなわち、試験例2において実施例3の成分中、温度変化により生じるかゆみを軽減する成分はポリクオタニウム−10であることが確認できた。なお、かゆみの度合いは、各被験者の評価値(かゆみスコア)の平均値とした。
【0044】
(試験例3)
本試験は、動物におけるかゆみの評価方法として公表されている試験系(Miyamoto T. et. al., Jpn.J.Phamacol. 88, 2002)を参考に実施した。
5週齢ICR系マウス(18匹)を個体別にケージに入れ、1週間馴化し、試験開始3日前に吻側背部を剃毛した(処理方法A)。剃毛した18匹のマウスを6匹ずつ検体処理群、比較群、対照群の3群に分けた。
<検体処理群>
検体処理群では、剃毛処理(処理方法A)したマウスをエーテル麻酔し、吻側背部にアセトン(A):ジエチルエーテル(E)(1:1)混合液を浸した2×2cmのコットンを15秒間適用し、その後、イオン交換水(W)を浸したコットンを30秒間適用した[以下、一連の処理をAEW処理(処理方法B)と略記する]。AEW処理は、1日2回7時間間隔で5日間実施し、計10回行った。AEW処理後に毎回実施例3の検体を100μL塗布した(処理方法C)。
<比較群>
比較群では、剃毛処理(処理方法A)したマウスに対し上記AEW処理(処理方法B)を実施した。
<対照群>
対照群では、剃毛処理(処理方法A)のみを実施した。
検体処理群、比較群、対照群について実施した処理をまとめたものを表6に示す。表6中、Aは剃毛処理(処理方法A)、BはAEW処理(処理方法B)、CはAEW処理+検体処理(処理方法C)を示す。
【0045】
<掻破行動の評価>
検体処理群及び比較群について10回目のAEW処理を行った翌日に、検体処理群、比較群、対照群の3群すべてについて、ビデオカメラで無人環境下にて1.5時間、マウスの行動を動画撮影し、掻破行動を観察、記録した。掻破行動とは、マウスが自身の吻側背部を後足で掻く行動を示す。なお、掻破行動の評価として、マウスが後足を床面から離し、吻側背部に接触後、再び床面に後足を接触させるまでの行動を掻破数1として単位時間あたりの掻破回数をカウントする方法を用いた。
本試験では、撮影した動画1.5時間のうち、はじめの30分間は馴化時間として、動画撮影開始30分後以降の1時間を掻破回数のカウント時間とし、1時間中の掻破回数をカウントした。その結果を、表7及び
図3に示す。なお、掻破回数は、各群におけるマウスの掻破回数/時間の平均値とした。
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
表7及び
図3より、AEW処理を行った比較群と比較して、AEW処理後に実施例3の検体を塗布した検体処理群の掻破回数は少なく、剃毛処理のみ行った対照群マウスと同程度であった。以上の結果から、薬剤による外部刺激(AEW処理)後に、ポリクオタニウム−10を有する製剤を塗布することにより、薬剤刺激により生じるかゆみを軽減することが分かった。