(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記形成工程では、前記養生シートの前記シート面の四隅も含むように前記連続する凹部を形成することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
前記形成工程では、前記連続する凹部の列が前記養生シートの一縁辺に対して複数となるように前記連続する凹部を形成することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
前記形成工程では、前記連続する凹部の列方向と交差する方向において複数の列に形成された前記凹部間の離間距離が前記凹部の横幅の半分以下となるように、前記連続する凹部を形成することを特徴とする、請求項6に記載のコンクリート構造物の製造方法。
前記形成工程では、前記連続する凹部の列方向において前記凹部の縦幅が前記凹部間に形成される凸部の幅と略同一となるように、前記連続する凹部を形成することを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に記載の養生シートでは、1)プラスチックシートの片面に接着剤を付着させ、2)そのプラスチックシート上に珪砂を散布し、3)プラスチックシート上の接着剤を硬化し、4)接着剤で固定されていない余分な珪砂を除去し、これらの工程により、シート上に突起状部材を形成している。また特許文献2に記載の養生シートでは、真空成形によりシート上に突起状部材を形成している。このように、従来の養生シートでは、シート上に突起状部材を設けるために複雑で手間のかかる作業が必要となっていた。しかも、従来の養生シートでは、施工現場で突起状部材を形成することが困難であり、その意味でも作業性が悪かった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、コンクリート表面残置用の仮留め部を手間をそれほどかけることなく養生シート上に形成すると共に、かかる養生シートを用いてコンクリートの養生を確実に行うことができる、コンクリート構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法は、養生シートのシート面にコンクリート表面残置用の仮留め部を形成する形成工程と、仮留め部が打設側を向くように養生シートをコンクリート打設用型枠の内面に設置する設置工程と、設置された型枠内にコンクリートを打設する打設工程と、コンクリートの打設後に型枠を脱型する脱型工程と、脱型工程の後に、養生シートをコンクリート表面に残置させてコンクリートを所定期間養生する養生工程とを備え、形成工程では、仮留め部として、養生シートの一部に熱溶融処理を施すことにより、線状に連続する凹部を形成することを特徴としている。
【0007】
このコンクリート構造物の製造方法では、コンクリート表面残置用の仮留め部として、養生シートの一部に熱溶融処理を施すことにより、線状に連続する凹部を形成している。この場合、養生シートの一部を熱で溶融するといった簡易な処理で凹部からなる仮留め部を形成するため、それほど手間をかけることなく養生シート上にコンクリート表面残置用の仮留め部を設けることができる。しかも、連続する多数の凹部が線状になるように形成された仮留め部であるため、型枠脱型後であっても当該養生シートがコンクリート表面に確実に残置されることになり、コンクリートの養生を確実に行うことができる。また、養生シート上に設けられる凹部を仮留め部として用いるため、養生シートをコンクリート表面から取り外した際にコンクリート構造物内に仮留め部が残置されるようなこともない。
【0008】
上記のコンクリート構造物の製造方法において、形成工程では、連続する凹部に対応する複数の突起が周面に形成されたローラーを加熱状態で養生シートに押し付けて回転させることにより、連続する凹部を形成することが好ましい。この場合、加熱ローラーを養生シートに押し付けて回転させるといった簡易な手法により、養生シート上に凹部からなる仮留め部を形成することができる。このため、例えばコンクリートの施工現場などでも、かかる仮留め部を容易に形成することが可能となる。しかも、施工現場で加工することができるので、養生したいコンクリート表面が様々な形状であっても、仮留め部付きの養生シートをそれら形状に容易に対応させることができる。
【0009】
上記のコンクリート構造物の製造方法において、形成工程では、連続する凹部を養生シートのシート面の縁辺に沿って線状に形成することが好ましい。この場合、仮留め部を形成する形成領域が縁辺に沿った狭い領域に限定されるにもかかわらず、養生シートが特に捲れ易い端部領域に仮留め部を設けることになるため、コンクリートから養生シートが捲れてしまうといったことを抑制でき、コンクリートの養生をより確実に行うことが可能となる。なお、連続する凹部を養生シートのシート面の全縁辺(例えば4辺)それぞれに沿って線状に形成することがより好ましく、養生シートのシート面の四隅も含むように連続する凹部を形成することがより一層好ましい。このように仮留め部を形成することにより、養生シートの捲れ等をより一層確実に抑制することができる。
【0010】
上記のコンクリート構造物の製造方法において、形成工程では、連続する凹部の列が養生シートの一縁辺に対して複数となるように連続する凹部を形成してもよい。この場合、養生シートのコンクリートへの付着強度を高めることができる。また連続する凹部の列を増減することにより、養生シートのコンクリートへの付着強度、つまり希望する養生期間に見合ったコンクリートへの付着強度に容易に調整することができる。
【0011】
上記のコンクリート構造物の製造方法において、形成工程では、連続する凹部の列方向と交差する方向において複数の列に形成された凹部間の離間距離が凹部の横幅の半分以下となるように、連続する凹部を形成してもよい。この場合、連続する凹部の列間を詰めることになり、養生シートのコンクリートへの付着強度を高めつつ、仮留め部が転写されるコンクリート表面の領域を減らして目立たないようにすることができるので、コンクリートの外観を綺麗にすることができる。
【0012】
上記のコンクリート構造物の製造方法において、形成工程では、連続する凹部の列方向において凹部の縦幅が凹部間に形成される凸部の幅と略同一となるように、連続する凹部を形成してもよい。この場合、隣接して形成される凹部と凸部の幅のバランスがよくなるため、養生シートのコンクリートへの付着強度を安定化させることができる。なお、凹部と凸部の幅が略同一とは、例えば完全同一の場合だけでなく、両者の幅のずれ量が凹部の縦幅の10%未満の範囲内になる場合も含む趣旨である。
【0013】
上記のコンクリート構造物の製造方法において、養生シートは、熱可塑性樹脂シートであることが好ましい。この場合、熱溶融処理により、連続する凹部からなる仮留め部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンクリート表面残置用の仮留め部を、手間をそれほどかけることなく養生シート上に形成すると共に、かかる養生シートを用いてコンクリートの養生を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法を示す断面図である。
【
図3】ローラー型熱溶融機の一例を示す図であり、(a)はその側面図であり、(b)は先端を拡大した部分拡大斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法に用いる養生シートを示す平面図であり、(a)は仮留め部を形成した面を示し、(b)はその裏面を示す。
【
図5】養生シート上に形成される仮留め部を拡大して示し、(a)は、
図4(a)の領域Sで示す部分の拡大平面図であり、(b)は、
図5(a)におけるB−B線に沿った断面図であり、(c)は、
図5(a)におけるC−C線に沿った断面図であり、(d)は、
図5(a)におけるD−D線に沿った断面図である。
【
図6】養生シート上に設けられる仮留め部の変形例を示す平面図である。
【
図7】養生シート上に設けられる仮留め部の変形例を示す平面図である。
【
図8】(a)は、仮留め部を形成した養生シートを示す写真であり、(b)は、(a)で示した養生シートを用いて製造したコンクリート構造物の一部を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法について説明する。
【0017】
本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法は、
図1に示すように、養生シートのシート面にコンクリート表面残置用の仮留め部(凹部)を形成する形成工程(ステップS1)、養生シート及び型枠を設置する設置工程(ステップS2)、コンクリートを打設する打設工程(ステップS3)、打設コンクリートの硬化後に養生シートを残置したまま型枠を脱型する脱型工程(ステップS4)、及び、残置された養生シートでコンクリート構造物を養生する養生工程(ステップS5)を含んでいる。
【0018】
ステップS1の形成工程では、まず、
図2の(a)に示されるように、コンクリート構造物7aを養生する際に用いる養生シート10を準備する。養生シート10は、例えば矩形形状のシートであり、0.02mm〜2.0mm程度の厚みを有する。養生シート10としては、熱可塑性樹脂シートを用いることが好ましく、ここで用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0019】
また、形成工程では、
図3に示されるようなローラー型熱溶融機16(ホットライン)を準備する。ローラー型熱溶融機16は、その先端に、周面に凹凸部(突起)が形成された回転可能な円板部18を有しており、この円板部18を加熱状態(例えば250℃程度)にすることができる加熱機構(不図示)を備えている。このようなローラー型熱溶融機としては、例えば白光株式会社の「ビニレイド こて先ローラー型」などを用いることができる。
【0020】
養生シート10とローラー型熱溶融機16の準備が完了すると、ローラー型熱溶融機16の円板部18を所定の温度(例えば250℃程度)に昇温する。そして、矩形形状の養生シート10の下端から上端に向かって養生シート10の縁辺10a(
図4(a)参照)に沿って、ローラー型熱溶融機16の円板部18の周面を養生シート10に押し付けて回転移動させる。この押し付けの際、養生シート10の施工箇所(熱溶融箇所)の上に例えばセロハンなどの付着防止素材を介在させ、養生シート10の熱溶解後の熱溶融機16(円板部18)への付着を防止する。また、ローラー型熱溶融機16を回転移動させる際は、例えばステンレス等の定規を利用して、直線状に延びるように連続した凹部22(
図5(b)参照)からなる仮留め部20を形成する。このような熱溶融処理を施すことにより、養生シート10の縁辺10aに沿って線状に延びる連続した凹部22からなる仮留め部20が形成される。なお、
図4(a)に示す例では、このように直線状に延びる連続した凹部22からなる仮留め部20を左右の縁辺10a,10bそれぞれに沿って3列形成する。
【0021】
また、上述した仮留め部20の形成処理と同様に、矩形形状の養生シート10の左端から右端に向かって養生シート10の縁辺10cに沿って、加熱されたローラー型熱溶融機16の円板部18の周面を養生シート10に押し付けて回転移動させる。このような熱溶融処理を施すことにより、養生シート10の縁辺10cに沿って線状に延びる連続した凹部22からなる仮留め部30が形成される。
図4(a)に示す例では、このように線状に延びる連続した凹部22からなる仮留め部30を上下の縁辺10c,10dそれぞれに沿って3列形成する。仮留め部30は、仮留め部20に比べて凹部22の形成方向が異なるのみであり、他の構成(例えば断面形状など)は仮留め部20と同様である。養生シート10の裏面14には、熱溶融処理による凹部を形成する必要はないが、シート面12側への熱溶融処理によりシートに反りが発生するような場合には、反りを解消するために裏面14側に所定の熱処理を施してもよい。
【0022】
このような凹部22が連続する仮留め部20,30の列が養生シート10の端部に形成されると、ステップS2の設置工程に進む。型枠設置工程では、
図2(b)に示すように、養生シート10を型枠5の内面(コンクリート打ち込み側の面)に貼り付ける。この貼り付けの際、養生シート10のシート面12に形成されている連続した凹部22からなる仮留め部20,30が内面側となるように配置する。言い換えると、養生シート10の裏面14を型枠5側に配置する。
【0023】
続いて、ステップS3の打設工程に進み、
図2(c)に示すように、型枠5の内面に養生シート10が貼り付けられた状態でコンクリート7の打設を行う。この打設の際、養生シート10の仮留め部20,30がコンクリート7側に配置されているため、仮留め部20,30の凹部22内にコンクリート7の一部が流れ込む。そして、コンクリート7の打設が終了したら、バイブレータ等を用いて締固めを行う。これにより、型枠5内の隅々まで十分にコンクリート7が流れこむようになる。
【0024】
その後、コンクリートの締固めが終了すると、型枠5をはめたまま、コンクリート7の湿潤養生を例えば7日〜28日程度行い、コンクリートを硬化させる。コンクリート7が硬化するまでそのままの状態を維持する。
【0025】
続いて、打設工程でのコンクリートの打設及びその硬化が完了したら、ステップS4の型枠を脱型する脱型工程に進み、
図2(d)に示すように、硬化したコンクリート7の表面を養生シート10が覆うように残置したまま型枠5を脱型し、コンクリート7から引き離す。この際、養生シート10は、仮留め部20,30の凹部22内にコンクリートが入り込んでいるため、硬化したコンクリート7の貼付面に残置される。
【0026】
続いて、型枠5を脱型した後、ステップS5の養生工程に進み、コンクリート7の貼付面に残置された養生シート10を用いて、コンクリート7を所定期間養生する。この養生では、既に型枠5が取り除かれているが、シート状の養生シート10の仮留め部20,30の凹部22にコンクリート7が引っかかっているため養生シートが残置され、特別な設備を用いることなくそのまま長期に養生を続けることができる。
【0027】
このような簡易な取付け構造により、例えば養生シート10を用いて、型枠5の脱型後30日以上養生を続けてもよいし、型枠の脱型後90日以上養生を続けてもよい。更に、コンクリート構造物の引き渡しに至るまで(例えば脱型後1年以上)養生を続けてももちろんよい。このような長期の養生を続けられることにより、コンクリート7の強度を飛躍的に高めて、その品質を向上することができる。なお、本実施形態で用いる養生シート10は、
図4(a)に示すように、シートの4つの縁辺10a〜10d及び四隅にかかるように連続する凹部22を形成しているため、養生シート10がコンクリート7の貼付面から剥がれにくくなっており、長期の養生が可能となっている。
【0028】
続いて、養生シート10を用いて所定期間の養生が終了すると、
図2(e)に示すように、養生シート10をコンクリート7から取り外し、これにより、コンクリート構造物7aが完成する。養生シート10は、仮留め部20,30によってコンクリート7に簡易的に取り付けられていたため、養生シート10の取り外しを容易に行うことができる。また、養生シート10の仮留め部20,30は、微小な凹部22から構成されているため、コンクリート7から養生シート10を取り外した際、コンクリート7内に残留するのではなく、養生シート10の一部としてほぼそのまま取り外される。このため、コンクリート構造物7aの内部に養生シート10の一部が残留してしまうこともほとんどない。
【0029】
ここで、
図4及び
図5を用いて、本実施形態で局所的に熱溶融処理された養生シート10の仮留め部20,30の形状について詳細に説明する。なお、仮留め部30の形状は仮留め部20の形状と同様であるため重複する説明は省略する。
【0030】
図4は、養生シート10を示す平面図であり、(a)は仮留め部20,30を形成したシート面12を示し、(b)はその裏面14を示す。
図5は、養生シート10上に形成される仮留め部20を拡大して示し、(a)は、
図4(a)の領域Sで示す部分の拡大平面図であり、(b)は、
図5(a)におけるB−B線に沿った断面図であり、(c)は、
図5(a)におけるC−C線に沿った断面図であり、(d)は、
図5(a)におけるD−D線に沿った断面図である。
【0031】
図4及び
図5に示すように、仮留め部20は、連続する凹部22と、各凹部22間に形成される凸部24とを含んで構成される。凹部22は、
図5(b)に示されるように、例えば凹部22を連続形成する列方向(図示上下方向)において、等ピッチ(例えば中心ピッチ間隔1〜5mm程度)となるように形成されており、凹部22の縦幅dが2.0mm以下となることが好ましい。また凹部22は、凹部22間に形成される凸部24の幅fと略同一の幅であることがより好ましく、凸部24の幅fは2.0mm以下であることが好ましい。なお、凹部22と凸部24の幅が略同一とは、例えば完全同一の場合だけでなく、両者の幅のずれ量が凹部22の縦幅dの10%未満の範囲内になる場合も含む趣旨である。また、凹部22は、その深さeが0.5mm以上2.0mm以下となることが好ましく、熱溶融処理後の養生シート10の溶融部分の厚みgの半分以上であって厚みg未満となるように、シート厚に対しある程度の深さを持って形成されることが好ましい。
【0032】
また、
図5(a),(c)及び(d)に示すように、仮留め部20は、凹部22を連続形成する列方向と直交(交差)する方向(図示左右方向)において、その横幅aが2mm以上であって5mm以下となるように形成されることが好ましい。また、
図4及び
図5に示す例では、仮留め部20が1つの縁辺10a,10bに沿って3列形成されているが、各仮留め部20間の離間距離bは1mm以上であって且つ上記仮留め部20の横幅aの半分以下となるように形成されることが好ましい。なお、図では、説明を容易にするため、寸法等は必ずしも正確ではない。
【0033】
また、仮留め部20は、
図5(c)及び(d)に示すように、熱溶融処理により凹部22及び凸部24等を形成しているため、その両脇に熱溶融処理によりシート表面から盛り上がった盛上がり部26が形成される。この盛上がり部26のシート表面からの高さhは、例えば、盛上がり部26を除く養生シート10の厚みg1の半分以下となるように形成することが好ましい。なお、仮留め部20をプレス等によって形成する場合、盛上がり部26が形成されないため、養生シート10の厚みg及びg1は同じになる。
【0034】
以上、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、コンクリート表面残置用の仮留め部20,30として、養生シート10の一部に熱溶融処理を施すことにより、線状に連続する凹部22を形成している。このように、養生シート10の一部を熱で溶融するといった簡易な処理で凹部22からなる仮留め部20,30を形成しているため、それほど手間をかけることなく養生シート10上にコンクリート表面残置用の仮留め部20,30を設けることができる。しかも、連続する多数の凹部22が線状になるように形成された仮留め部20,30であるため、型枠脱型後であっても当該養生シート10がコンクリート表面に確実に残置されることになり、コンクリート7の養生を確実に行うことができる。なお、
図8(a)及び(b)に示すように、ポリプロピレン製の養生シート10に仮留め部20,30を設けて打設したコンクリート表面への残置試験を行ったが、かかる仮留め部20,30により、半年以上、養生シート10が確実にコンクリート表面に残置された。なお、強風等によるシート端部の剥がれが起きない場合には、かかる養生シート10を半永久的にコンクリート表面に残置させることが可能である。
【0035】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、養生シート10上に設けられる凹部22を仮留め部20,30として用いるため、養生シート10をコンクリート表面から取り外した際にコンクリート構造物7a内に仮留め部20,30の一部が残置されるようなこともない。
【0036】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、連続する凹部22に対応する複数の凹凸が周面に形成されたローラー型熱溶融機16を加熱状態で養生シート10の端部に押し付けて回転させることにより、連続する凹部22を形成している。加熱ローラーを養生シート10に押し付けて回転させるといった簡易な手法であるため、養生シート10上に凹部22からなる仮留め部20,30を容易に形成することができる。このため、例えばコンクリートの施工現場などでも、作業者により、かかる仮留め部20,30を容易に形成することが可能となる。しかも、施工現場で加工することができるので、養生したいコンクリート表面が様々な形状であっても、仮留め部20,30付きの養生シート10をそれら形状に容易に対応させることができる。
【0037】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、連続する凹部22を養生シート10のシート面12の縁辺10a〜10dに沿って線状に形成している。しかも、シート面12の4隅も含むように、凹部22を形成している。一方、シート面12の中心部には凹部22等を形成していない。このように、本実施形態に係る製造方法では、仮留め部20,30を形成する形成領域が縁辺10a〜10d等に沿った狭い領域に限定されるにもかかわらず、養生シート10が特に捲れ易い端部や隅部領域に仮留め部20,30を集中して設けているため、コンクリート7から養生シート10が捲れてしまうといったことを効率的に抑制でき、コンクリート7の養生をより確実に行うことが可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、連続する凹部22の列が養生シート10の縁辺10a〜10dそれぞれに対して複数(それぞれ3列)となるように連続する凹部22を形成している。このため、養生シート10のコンクリート7への付着強度を容易に高めることができる。なお、本実施形態によれば、連続する凹部22の列を増減することにより、養生シート10のコンクリート7への付着強度、つまり希望する養生期間に見合ったコンクリート7への付着強度に容易に調整することができる。
【0039】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、連続する凹部22の列方向と直交する方向において複数の列に形成された凹部22間の離間距離bが凹部22の横幅aの半分以下となるように、連続する凹部22を形成することもできる。このように形成した場合、連続する凹部22の列間を詰めることになり、養生シート10のコンクリート7への付着強度を高めつつ、仮留め部20,30が転写されるコンクリート表面の領域を減らして目立たないようにすることができるので、コンクリート7の外観を綺麗にすることができる(
図8(b)参照)。
【0040】
なお、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、養生シート10として、熱可塑性シートを用いている。このため、熱溶融処理により、連続する凹部22からなる仮留め部20,30を容易に形成することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用できる。例えば、上記実施形態では、熱溶融処理として、ローラー型熱溶融機16により養生シート10の端部を熱溶融して仮留め部20,30を形成していたが、これに代えて、超音波溶着技術を用いて仮留め部20,30を形成してもよい。特に工場等で多数の養生シート10に仮留め部20,30を事前に形成する場合、超音波溶着技術等を用いることで、生産性を高めることができる。また、上記実施形態では、仮留め部20,30は、直線状に連続して形成された凹部22により構成されていたが、シートの残置機能を奏する限り直線状に限られる必要はなく、例えば波形の線状に連続して形成された凹部から仮留め部20,30が形成されていてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、養生シート10の各縁辺10a〜10dそれぞれに沿って3列の仮留め部20,30を設ける例を示したが、仮留め部20,30の列や配置はこれに限定される訳ではなく、様々な形態を採用することができる。例えば、
図6(a)に示すように、養生シート40の縁辺40a,40bに沿ってそれぞれ3列の仮留め部20を設け、一方、上下の縁辺40c,40dに沿った仮留め部を設けないようにしてもよいし、逆に、
図6(b)に示すように、養生シート42の縁辺42c,42dに沿ってそれぞれ3列の仮留め部30を設け、一方、左右の縁辺42a,42bに沿った仮留め部を設けないようにしてもよい。また、
図7(a)に示すように、養生シート44の縁辺44a,44bに沿ってそれぞれ2列の仮留め部20を設ける一方、上下の縁辺44c,44dに沿った仮留め部を設けないようにしてもよいし、
図7(b)に示すように、養生シート46の縁辺46a〜46dに沿ってそれぞれ1列の仮留め部20,30を設けるようにしてもよい。