(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[005] しかしながら上記それぞれの例において、さらに一般的に言えば従来技術において、このような方策は主として、ポリマーベースの送達系を特定の生理活性因子の必要条件に合わせるために操作することに焦点が当てられており、生理活性因子それ自身を操作したりまたは適応させたりすることとは対照的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[006] ポリマーベースの送達系を操作してカプセル化された薬剤に適合させる従来の製剤化手順に反して、本発明は、カプセル化された生理活性因子の放出および/または薬剤充填の特徴を、生理活性因子それ自身の直接的な改変によって調節する方法および組成物を提供する。本明細書において実証されるように、ペプチド分子のような生理活性因子の等電点の改変、例えばペプチド全体の電荷の変更によって、例えば初期のポリマーベースの送達系からのペプチドの拡散放出を減少または強化すること、生分解性の系からの浸食による放出速度を調節すること、および/または、このようなペプチドのカプセル化効率を高めることなどの臨床的に有意義な方法でポリマーベースの送達系の放出および/または充填の特徴を予想通りに改変することができる。
【0009】
[007] 一形態において、ポリマーベースの送達系中への生理活性因子の充填効率を高める方法が提供され、本方法は、生理活性因子の等電点を、ポリマーベースの送達系中にカプセル化する前に改変することを含む。一実施態様において、生理活性因子の等電点は、生理活性因子が、望ましいポリマーベースの送達系の環境において親分子と比べてより多くの正電荷を帯びるように改変される。
【0010】
[008] 一実施態様において、ポリマーベースの送達系中への生理活性因子の充填効率を高める方法が提供され、本方法は、親追加の正電荷が分子に加えられることを含む。
[009] 一形態において、生分解性ポリマーベースの送達系からの、浸食による生理活性因子の放出速度を調節する方法が提供され、本方法は、生理活性因子の等電点を、ポリマ
ーベースの送達系中にカプセル化する前に変化させることを含む。一実施態様において、生理活性因子の等電点を定量的に増加または減少させることにより、生理活性因子が、望ましいポリマーベースの送達系の環境において親分子と比べてより多くの正味の正電荷または負電荷それぞれを帯びるようにする。
【0011】
[0010] 一実施態様において、生分解性ポリマーベースの送達系からの浸食による生理
活性因子の放出速度を高める方法が提供され、本方法は、正味の電荷が親分子と比べて化学量論的に増加または減少するように、親分子に追加の正電荷または負電荷を加えることを含む。一実施態様において、浸食による放出速度を高めるために、追加の正電荷が中性またはカチオン性の親分子に追加される。その他の実施態様において、浸食による放出速度を高めるために、追加の負電荷が中性またはアニオン性の親分子に加えられる。その他の好ましい実施態様において、作用を強化するために、酸を末端に有するポリマーベースの送達系が用いられる。
【0012】
[0011] 驚くべきことに、本発明者等は、カチオン性の親分子に比べて、生理活性因子
の正味の正電荷を増加させると、正味の電荷を減少または中和させた場合と同様に、さらに場合によってはそれよりも優れて作用して、このような生理活性因子の生分解性ポリマーベースの送達系からの浸食による放出速度を高めることができることを確認した。重要なこととして、本明細書において初めて実証されたように、電荷を有する生理活性因子において、親分子に比べてより大きい電荷密度を形成することによって、より大きい作用が提供される。
【0013】
[0012] 一形態において、ポリマーベースの送達系からの初期の生理活性因子の拡散放
出を調節する方法も提供され、本方法は、生理活性因子の等電点を、ポリマーベースの送達系中にカプセル化する前に変化させることを含む。一実施態様において、生理活性因子の等電点を増加または減少させることによって、生理活性因子が、望ましいポリマーベースの送達系の環境において親分子と比べてより多くの正味の正電荷または負電荷それぞれを帯びるようにする。
【0014】
[0013] 一実施態様において、ポリマーベースの送達系からの初期の生理活性因子の拡
散放出を高める方法が提供され、本方法は、正味の電荷が親分子と比べて化学量論的に増加するように、追加の正電荷が分子に加えられることを含む。その他の好ましい実施態様において、作用を強化するために、エステルを末端に有するポリマーベースの送達系が用いられる。
【0015】
[0014] 一実施態様において、ポリマーベースの送達系からの初期の生理活性因子の拡
散放出を減少させる方法が提供され、本方法は、正味の電荷が親分子と比べて化学量論的に減少するように、追加の負電荷が親分子に加えられることを含む。その他の好ましい実施態様において、作用の強化のために、エステルを末端に有するポリマーベースの送達系が用いられる。
【0016】
[0015] 生理活性因子の等電点を改変するためのあらゆる適切な手段が本発明の方法と
共に使用することができ、このような手段としては、例えば、正または負に荷電したアクセサリー分子、より好ましくは切断可能なアクセサリー分子などの化学修飾、アミノ酸置換、複合体化(コンジュゲート)が挙げられる。追加の正電荷または負電荷は、生理活性因子全体に均一に分布していてもよいし、または、不均一に分布していてもよく、さらにこれらは、好ましくは、例えば結合部位などの親分子の作用がわかっている部位から遠い位置で実施される。一実施態様において、追加の電荷の分布は、アミノまたはカルボキシ末端に集中している。その他の実施態様において、追加の電荷は、アミノ酸側鎖とコンジュゲートしている。
【0017】
[0016] 本明細書において開示されたような等電点の改変はまた、さらに放出動態およ
び/または充填効率を調節するために、例えば水不溶性の付加塩への変換(例えば、米国特許第5,776,886号)、ペグ化(米国特許第6,706,283号)などのより一般的な技術と共に使用してもよい。さらなる形態において、上記の方法に従って改変され、ポリマーベースの送達系中にカプセル化された生理活性因子を含む、改善された制御放出医薬組成物が提供される。
【0018】
[0017] 一実施態様において、本制御放出医薬組成物は、ポリマーによってカプセル化
された改変型生理活性因子を含み、ここで、薬剤充填効率を高めるために、および/または、好ましくは酸を末端に有するポリマー系からの浸食による改変型生理活性因子の放出速度を高めるために、および/または、好ましくはエステルを末端に有するポリマー系からの改変型生理活性因子の拡散放出を高めるために、改変型生理活性因子の等電点を親分子と比べて増加させる。このような実施態様の一つにおいて、親分子は、中性またはカチオン性である。
【0019】
[0018] その他の実施態様において、本制御放出医薬組成物は、生分解性ポリマーによ
ってカプセル化された改変型生理活性因子を含み、ここで、好ましくは酸を末端に有するポリマー系からの浸食による改変型生理活性因子の放出速度を高めるために、および/または、好ましくはエステルを末端に有するポリマー系からの改変型生理活性因子の拡散放出速度を親分子と比べて減少させるために、改変型生理活性因子の等電点を親分子と比べて減少させる。このような実施態様の一つにおいて、親分子は、中性またはアニオン性である。
【0020】
[0019] 特に他の規定がない限り、本明細書において説明される組成物は、非生分解性
ポリマーベースの送達系、例えば非生分解性ポリマーを含むポリマー系を含んでもよい。一形態において、非生分解性ポリマーは、ポリアクリレート、エチレンと酢酸ビニルおよびその他のアシル置換された酢酸セルロースとのポリマー、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ブレンド、および、それらのコポリマーからなる群より選択される。
【0021】
[0020] その他の形態において、本明細書において説明される組成物は、生分解性ポリ
マーベースの送達系、例えば、生分解性ポリマーを含むポリマー系を含んでもよい。その他の形態において、生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリラクチド(PL)またはポリ(グリコール酸)(PGA)のホモポリマー、ポリグリコリド(PG)、ポリ(乳酸)−コ−(グリコール酸)(PLGA)、ポリラクチド−コ−グリコリド(PLG)、ポリ(オルトエステル)、および、ポリ無水物からなる群より選択される。PLGAおよびPLAが、生体適合性とそれらが臨床的に利用されてきた長い歴史のために最も一般的に用いられている。用いることができるその他の生分解性ポリマーとしては、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、それらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0022】
[0021] 本発明の組成物および方法は、治療用タンパク質、核酸、ペプチド、ポリペプ
チド、オリゴヌクレオチドなどの様々な生理活性因子との有利な用途が見出されている。
[0022] その他の形態において、本発明は、治療が必要な患者の治療方法を提供し、本
方法は、患者に治療上有効な量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0033] 生理活性因子を直接改変することによってポリマーベースの送達系からの生理
活性因子の制御放出のための方法および製剤が提供される。本明細書において説明されているように、改変型生理活性因子の等電点は、親分子と比べて変化させてもよいし、および/または、改変型生理活性因子の正味の電荷は、親分子などと比べて変化させてもよい。このような改変型生理活性因子を含むカプセル化製剤は制御放出特性が強化されており、例えば、同様に親分子をカプセル化した製剤を含む製剤と比較して、より少ない初期の拡散またはバースト放出、高い浸食による放出速度、高いカプセル化効率などが強化されている。
【0025】
[0034]
図1で例示されるように、例えば生分解性ポリマー(例えばPLG微粒子)の
ようなポリマーから生理活性因子が放出されたら、その後、一般的には三相性の放出プロファイルに従う。段階1は、一般的には拡散放出または「バースト」作用を特徴とすると言え、この期間中、改変ペプチド分子の初期の放出速度は迅速な可能性があり、さらにポリマーの水和(数分以内に発生)、マトリックスの膨潤(数時間以内に発生)、改変ペプチド分子の溶解(数分以内に発生)、および、マトリックスからの拡散(数時間以内に発生)に依存する可能性がある。
【0026】
[0035] 第二の放出段階(段階2,
図1)は誘導期またはラグフェーズと称することも
でき、放出期間が比較的遅いこと、または、放出がないことを特徴とすると言える。段階2は、高分子マトリックス中に孔またはチャンネルが形成されるのに必要な時間、または、水がこのような孔またはチャンネルを満たして、高分子マトリックス内に捕獲されている改変ペプチド分子に接近するようになる時間に関連する可能性がある。
【0027】
[0036] 生分解性ポリマーベースの送達系が用いられる場合、生分解性ポリマーの分解
が続くにつれて、浸食が進むマトリックス中に拡散経路が形成される可能性があり、この経路によって、改変ペプチド分子が自然に濃度勾配のなかを下方に移動して、マトリックスをすり抜けることが可能になる。この浸食による放出は、
図1で示したように第三の放出段階に相当する。
【0028】
[0037] 非生分解性ポリマーから生理活性因子が放出された後、一般的には二相性の放
出プロファイルが続き、ここで、段階1が生物活性ペプチドの拡散放出に相当し、段階2がラグフェーズに対応する。従って、当業者であれば、一般的に、このようなポリマーベースの送達系からの生理活性因子の典型的な放出速度に関して熟知している。
【0029】
[0038] 一実施態様において、改善された制御放出性組成物および方法が提供され、こ
こで、より多くの正味の正電荷および/または電荷密度を有する改変型生理活性因子が生じるように、親分子の等電点が増加しており、それにより、本明細書において実証したように、親分子と比べて薬剤充填効率を高めることができ、特に酸を末端に有するポリマーベースの系からの浸食による改変型生理活性因子の放出速度を増加させることができ、および/または、特にエステルを末端に有するポリマーベースの系からの改変型生理活性因子の拡散放出を増加させることができる。このような実施態様の一つにおいて、親分子は、中性またはカチオン性である。
【0030】
[0039] その他の実施態様において、改善された制御放出性組成物および方法が提供さ
れ、ここで、より多くの正味の負電荷および/または電荷密度を有する改変型生理活性因子が生じるように、親分子の等電点が減少しており、それにより、本明細書において実証したように、親分子と比べて、特に酸を末端に有するポリマーベースの系からの浸食による改変型生理活性因子の放出速度を増加させることができ、および/または、特にエステルを末端に有するポリマーベースの系からの改変型生理活性因子の拡散放出速度を減少させることができる。このような実施態様の一つにおいて、親分子は、中性またはアニオン性である。
【0031】
[0040] 本明細書で用いられる「生理活性因子」は、被検者に投与するための、あらゆ
る治療用タンパク質、治療抗体、核酸、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたはその他の生物学的に活性な化合物を意味する。
【0032】
[0041] 本明細書で用いられる「ペプチド分子」は、ペプチド結合によって共有結合で
連結された少なくとも2つの個のアミノ酸を含む高分子を意味しており、このようなペプチド分子としては、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、および、ペプチドが挙げられる。ペプチド分子は、天然に存在するアミノ酸とペプチド結合とで構成されていてもよいし、または、合成ペプチドミメティクス構造、すなわち「類似体」、例えばペプトイドで構成されていてもよい(Simon et al.,1992,Proc Natl Acad Sci USA 89(20):9367を参照、これは参照により本明細書に包含させる)。
【0033】
[0042] 本明細書で用いられる「アミノ酸」および「アミノ酸同一性」は、特異的な規
定された位置に存在する可能性がある20種の天然に存在するアミノ酸またはあらゆる非天然の類似体の一つを意味する。従って、本明細書で用いられる「アミノ酸」または「ペプチド残基」は、天然に存在するアミノ酸と合成アミノ酸との両方(天然に存在するアミノ酸の類似体を含む)を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン、2−アミノ−3−グアニジノプロピオン酸、2−アミノ−3−ウレイドプロピオン酸、Lys(Me)、Lys(Me)
2、Lys(Me)
3、オルニチン、オメガ−ニトロ−アルギニン、Arg(Me)
2、α−メチルArg、α−メチルLys、βホモリシン、βホモアルギニン、ノルロイシンなどは、本発明の目的においてアミノ酸とみなされる。また「アミノ酸」は、イミノ酸残基も含み、例えばプロリン、および、ヒドロキシプロリンが挙げられる。側鎖は、(R)または(S)配置のいずれの状態でもよく、D型またはL型異性体のいずれであってもよい。好ましい実施態様において、このようなアミノ酸は、(S)またはL型配置であるが、血清中での安定性を改善するためにD型異性体を用いてもよい。天然に存在しない側鎖が用いられる場合、例えばインビボでの分解を予防または妨害するために非アミノ酸置換基を用いてもよい。
【0034】
[0043] 本明細書で用いられる「親分子」は、その後本発明の教示に従って改変されて
「改変型生理活性因子」を生成する生理活性因子を意味する。いくつかの実施態様において、親分子は、治療用途のために制御放出性のポリマーベースの製剤を必要とするあらゆる生理活性因子分子であり得る。本明細書において説明されているように、カプセル化およびポリマーからの放出は、親分子の改変、例えば、親分子の等電点、正味の電荷、溶解性などの改変によって操作することができる。
【0035】
[0044] 同様に、本明細書で用いられる「親ペプチド分子」、「親ポリペプチド」、「
親タンパク質」などは、その後改変されて「改変ペプチド分子」を生成するポリペプチド、タンパク質などを意味する。例えば、親ペプチド分子、親ポリペプチド、親タンパク質または同種のものは、例えば等電点の改変、正味の電荷の改変、溶解性の改変などの本明
細書において説明される少なくとも1種の改変のテンプレートおよび/または基準として役立つ可能性がある。このような親ペプチド分子は、天然に存在するポリペプチドであってもよいし、または、変異体であってもよいし、または、天然に存在するポリペプチドを加工した変種であってもよい。親ポリペプチドは、ポリペプチドそれ自身を意味する場合もあるし、親ポリペプチド、または、それをコードするアミノ酸配列を含む組成物を意味する場合もある。
【0036】
[0045] 本明細書で用いられる「等電点」、「pI」または同種のものは、ペプチド分
子が正味の電荷を有さない場合のpHを意味する。等電点はよく知られている方法を用いて決定することができ、例えば等電点分画法によって決定することができる。比較的小さいペプチド分子の場合、およそのpIは計算してもよい。一般的に、ペプチド分子のpIは、その塩基性および酸性基のpKa値に依存し、例えば、コードされたアミノ酸だけで形成されたペプチドの場合、N末端またはリシン側鎖の第一アミン、アルギニン側鎖のグアニジン基、ヒスチジンのイミダゾール環系、ならびに、ペプチドC末端、アスパラギン酸側鎖およびグルタミン酸側鎖のカルボン酸基のpKa値に依存する。
【0037】
[0046] 親ペプチド分子のpIの改変は、例えば化学修飾によって引き起こされる可能
性がある。このような改変の例としては、これらに限定されないが、N末端アミン基のアシル化、アルキル化またはその他の化学修飾;C末端カルボン酸基のアミド化、エステル化またはその他の化学修飾;リシン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸に関する非イオン性のアミノ酸残基またはその他の非コード化アミノ酸の、酸性もしくは塩基性鎖の基での置換;リシン、ヒスチジン、アルギニンの側鎖基、または、その他の非コード化アミノ酸の塩基性の官能基のアシル化、アルキル化またはその他の化学修飾;側鎖カルボン酸基のアミド化、エステル化またはその他の化学修飾、pIをシフトさせるアクセサリー分子等とのコンジュゲートが挙げられる。イオン化されたペプチドの場合、塩の形態のpIはまた、対イオンのpKaにも依存する。
【0038】
[0047] 本明細書で用いられる親ペプチド分子の「正味の電荷」は、そのpIおよびペ
プチド溶液のpHに依存する。親ペプチド分子の正味の電荷は、以下の非限定的な例のいずれかによって改変してもよい:N末端アミン基のアシル化、アルキル化またはその他の化学修飾;C末端カルボン酸基のアミド化、エステル化またはその他の化学修飾;リシン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸に関する非イオン性のアミノ酸残基またはその他の非コード化アミノ酸の、酸性もしくは塩基性鎖基での置換;親ペプチドの等電点の改変;正または負電荷を有するアクセサリー分子とのコンジュゲートなど。
【0039】
[0048] 本明細書において開示されたように、電荷の分布および/または密度の改変は
、ポリマーのカプセル化、および、親ペプチドの放出特性の調節であるともみなすことができる。追加された電荷密度は、改変ペプチド分子全体に均一に分布していてもよいし、または、不均一に分布していてもよい。一実施態様において、追加の負または正電荷の不均一な分布は、追加の負または正電荷それぞれがペプチド鎖内の1またはそれ以上の位置に集中することを含む。追加の負または正電荷の集中は、ペプチドに沿ってどこにでも起こる可能性があり、例えばペプチドの末端またはその近傍、ペプチドの中心またはその近傍などで起こる可能性があるが、好ましくは、ペプチドの活性部位から遠位に存在することであり、これは、親分子の既知の特徴を参照することによって容易に決定することができる。あるいは、追加の負または正電荷は、ポリマーに沿って均等に分布していてもよい。
【0040】
[0049] 一実施態様において、改変ペプチド分子は、例えば適切なアミノ酸を置換する
ことによって、その親ペプチド分子に比べて追加の負または正電荷を含んでもよい。一実
施態様において、正電荷の追加は、親ペプチド分子中の負および/または非イオン性のアミノ酸を、リシン、アルギニン、ヒスチジンまたはそれらの類似体で置換することによって達成される。その他の実施態様において、負電荷の追加は、親ペプチド分子中の正および/または非イオン性のアミノ酸を、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸またはそれらの類似体(例えば、あらゆるアルファまたはベータアミノアルカン二酸(例えば、アミノスベリン酸)で置換することによって達成される。
【0041】
[0050] 一実施態様において、改変ペプチド分子は、例えば1種またはそれ以上の負に
荷電したアクセサリー分子、または、正電荷を有するアクセサリー分子それぞれとコンジュゲートさせることによって、その親ペプチド分子に比べて追加の負または正電荷を含んでもよい。本明細書で用いられる「複合体化(コンジュゲート)」は、2つの分子が共有結合により連結することを意味しており、単なる錯化またはその他の近接した物理的な結合とは異なっている。典型的な負に荷電したアクセサリー分子は、ペプチドの一般的なあらゆる化学的な官能基、例えばチロシン、スレオニンおよびセリン側鎖のヒドロキシル基、システイン側鎖のチオール基、または、N末端のアミノ基、または、アルギニンおよびリシン側鎖のアミノ基と、リン脂質(ホスホアミドで結合した)、一、二および/または三リン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸および二酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸など)とのコンジュゲートを含む。また典型的な負に荷電した構造としては、これらに限定されないが、ポリ(グルタミン酸)、アニオン性脂質、ポリ(アスパラギン酸)、および、アルギン酸塩も挙げられる。場合によっては、コンジュゲート(例えば、反応性チオエステル、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、臭化アルキル、マレイミドなどの形成)を容易にするために、ペプチドの化学的な官能基を誘導するか、または、導入しなくてはならない場合がある。典型的な正電荷を有するアクセサリー分子は、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリ(アリルアミン)、ポリ(エチルイミン)、キトサン、または、正電荷を有する脂質構造を含む。
【0042】
[0051] またアクセサリー分子は、正または負電荷アミノ酸の「尾部」を含んでいても
よいし、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリ−CH
2−などのより中性のリンカー部分によって生理活性因子とコンジュゲートしていてもよい。
【0043】
[0052] 改変ペプチド分子はさらに医薬的に許容される対イオンを含んでいてもよく、
その代表例を以下の表1に示す。
【0045】
[0053] ポリマーベースの送達系へのペプチドのカプセル化および放出特徴をさらに調
節するために、水および/または有機溶媒への溶解性の改変、加えて親ペプチド分子の親水性の変更も本発明の方法と共に用いられる可能性がある。ペプチド治療剤の溶解性および/または親水性は、その塩の形態を変化させることによって改変してもよいし、または、例えば米国特許第5,776,885号および第6,706,289号で説明されているようなペグ化によって改変してもよい(これらの開示は、いずれも明確に参照により本
明細書に包含させる)。
【0046】
[0054] 本明細書で用いられる「親ペプチド分子に比べて」は、改変ペプチド分子と親
ペプチド分子との量が同じ分析で実質的に同じ場合、親ペプチド分子(例えばその後改変されて改変ペプチド分子を生成するペプチド分子)と比較した場合の、改変されたペプチドにおける、例えば等電点、正味の電荷などの定量可能な特徴における変化(例えば、増加または減少)を意味する。
【0047】
[0055] 本明細書において、カプセル化されたペプチド分子のポリマーベースの送達系
中への放出および/または薬剤充填の特徴を、ペプチド分子それ自身を直接改変することによって調節するための方法および組成物が説明される。本明細書において説明されるポリマーベースの送達系は、一般的に、生体適合性ポリマーベースの送達系である。本明細書において説明されるポリマーベースの送達系は、生分解性または非生分解性ポリマー、それらのブレンドまたはコポリマーを含んでもよい。ポリマーおよびポリマーのあらゆる分解産物生成物が受容者にとって非毒性であるだけでなく、受容者の体に有意な有害作用または不都合な作用を与えないのであれば、そのポリマーベースの送達系またはポリマーは、生体適合性である。
【0048】
[0056] 生理活性因子(例えばペプチド分子)をカプセル化するのに適した生体適合性
の非生分解性ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリアクリレート、エチレンと酢酸ビニルおよびその他のアシル置換された酢酸セルロースとのポリマー、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、それらのブレンドおよびコポリマーからなる群より選択される非生分解性ポリマーが挙げられる。
【0049】
[0057] また、例えば放出制御製剤のために生理活性因子(例えばペプチド分子)をカ
プセル化するために生分解性ポリマーを用いてもよい。一実施態様において、分解産物生成物が無害であるか、または、生体適合性であることがわかっている生分解性ポリマーが用いられる。従ってこのような生分解性ポリマーは、治療の最後に外科的に取り除かなくてもよい。ペプチド分子の制御放出に関して調査されている一般的に使用される生分解性ポリマーとしては、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリラクチド(PL)、または、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(乳酸)−コ−(グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLG)、ポリ(オルトエステル)、および、ポリ無水物のホモポリマーが挙げられる。PLGおよびPLが、生体適合性とそれらが臨床的に利用されてきた長い歴史のために最も一般的に用いられている。使用可能なその他の生分解性ポリマーとしては、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、それらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0050】
[0058] 一形態において、高分子送達系は微粒子であってもよく、このようなものとし
ては、これらに限定されないが、生分解性の高分子賦形剤、非生分解性の高分子賦形剤、または、それらの高分子賦形剤の混合物を含むマイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノスフェアおよびナノ粒子が挙げられ、または、高分子送達系としては、これらに限定されないが、生分解性の高分子賦形剤、非生分解性の高分子賦形剤またはそれらの混合物を含む、ロッドまたはその他の様々な形状のインプラント、ウェーハ、ファイバー、フィルム、その場で形成される(in situ forming)ボーラスなどであってもよい。これらの系は、一種の高分子賦形剤から製造してもよいし、または、2種またはそれ以上の高分子賦形剤の混合物もしくはブレンドから製造してもよい。
【0051】
[0059] 本明細書において、用語「微粒子」は、一般的に、ナノ粒子、マイクロスフェ
ア、ナノスフェア、マイクロカプセル、ナノカプセルおよび粒子を含むものとして用いられる。そのようなものとして、用語「微粒子」は、なかでも、例えばマイクロスフェア(およびナノスフェア)のような均一なマトリックス、または、例えばマイクロカプセル(およびナノカプセル)、多孔質粒子、多層粒子のような不均一なコア−シェルマトリックスを含む様々な内部構造および組織を有する粒子を意味する。微粒子は、約10ナノメートル〜約1000マイクロメートル(ミクロン)の範囲のサイズを有する粒子である。
【0052】
[0060] 微粒子を形成するために当業界でよく知られている様々な技術を用いることが
でき、例えば1回または2回の乳化工程、それに続く溶媒の除去を含む技術がある。溶媒の除去は、様々な方法のなかでも、抽出、蒸発または噴霧乾燥によって達成してもよい。
【0053】
[0061] 溶媒の抽出方法において、ポリマーは、抽出溶媒(例えば水)に少なくとも部
分的に溶解することができる有機溶媒中に溶解している。改変型生理活性因子は続いて、溶解した形態か、または、微細な粒子として分散しているかのいずれかの状態でポリマー溶液に添加され、この混合物は表面活性剤(例えばポリ(ビニルアルコール))を含む水相に分散される。得られたエマルジョンはより大量の水に添加され、ここで有機溶媒はポリマー/生理活性因子から除去されて、硬化された微粒子が形成される。
【0054】
[0062] 溶媒を蒸発させる方法において、ポリマーは、揮発性の有機溶媒に溶解してい
る。生理活性因子は続いて、溶解した形態か、または、微細な粒子として分散しているかのいずれかの状態で、ポリマー溶液に添加され、この混合物は、表面活性剤(例えばポリ(ビニルアルコール))を含む水相に懸濁される。得られたエマルジョンは、有機溶媒の多くが蒸発して内部に固体の微粒子が残留するまで撹拌される。
【0055】
[0063] 噴霧乾燥方法において、ポリマーを、例えば塩化メチレン(例えば0.04g
/mL)のような適切な溶媒に溶解させる。続いて既知の量の改変型生理活性因子を、ポリマー溶液に(不溶性の場合)懸濁するか、または、ポリマー溶液に(可溶性の場合)共に溶解させる。続いてこの溶液または分散液を噴霧乾燥させる。直径が1〜10ミクロンの範囲の微粒子は、ポリマーの選択に応じた形態で得ることができる。
【0056】
[0064] 相分離およびコアセルベーションのようなその他の既知の方法、および、上記
の方法の改変法が当業界でよく知られており、それらを本発明において使用してもよい。
[0065] 適切な高分子賦形剤としては、これらに限定されないが、ポリ(ジエン)、例
えばポリ(ブタジエン)など;ポリ(アルケン)、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど;ポリ(アクリル酸の)、例えばポリ(アクリル酸)など;ポリ(メタクリル酸の)、例えばポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)など;ポリ(ビニルエーテル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルケトン);ポリ(ビニルハロゲン化物)、例えばポリ(塩化ビニル)など;ポリ(ビニルニトリル)、ポリ(ビニルエステル)、例えばポリ(酢酸ビニル)など;ポリ(ビニルピリジン)、例えばポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(5−メチル−2−ビニルピリジン)など;ポリ(スチレン);ポリ(炭酸塩);ポリ(エステル);ポリ(オルトエステル)(コポリマーを含む);ポリ(エステルアミド);ポリ(無水物);ポリ(ウレタン);ポリ(アミド);セルロースエーテル、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど;セルロースエステル、例えば酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなど;ポリ(糖類)、タンパク質、ゼラチン、スターチ、ゴム、樹脂などが挙げられる。これらの材料は、単独で用いてもよいし、物理的な混合物(ブレンド)として用いてもよいし、または、コポリマーとして用いてもよい。また上記で列挙したポリマーのいずれかの誘導体も考慮される。
【0057】
[0066] 一形態において、送達系の高分子賦形剤としては、生体適合性の非生分解性ポ
リマーが挙げられ、例えばシリコーン、ポリアクリレート;エチレン−酢酸ビニルポリマー;アシル置換酢酸セルロース;非分解性ポリウレタン;ポリスチレン;塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;ポリ(ビニルイミダゾール);クロロスルホン化ポリオレフィン;ポリエチレンオキシド;または、それらのブレンドもしくはコポリマーが挙げられる。
【0058】
[0067]その他の形態において、高分子賦形剤としては、生体適合性の生分解性ポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(ラクチド);ポリ(グリコリド);ポリ(ラクチド−コ−グリコリド);ポリ(乳酸);ポリ(グリコール酸);ポリ(乳酸−コ−グリコール酸);ポリ(カプロラクトン);ポリ(オルトエステル);ポリ(ホスファゼン);ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、または、ポリ(ヒドロキシブタン酸塩)を含むコポリマー;ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン);ポリカーボネート;ポリエステルアミド;ポリ無水物;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート);ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー;生分解性ポリウレタン;ポリ(アミノ酸);ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、または、それらのブレンドもしくはコポリマーが挙げられる。
【0059】
[0068] 一形態において、ポリマーベースの送達系は、非生分解性ポリマーを含む。そ
の他の形態において、ポリマーベースの送達系は、生分解性ポリマーを含み、ここで上記ペプチドは、送達系のポリマー内に埋め込まれる。一形態において、上記ペプチドは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、または、それらの混合物で構成される送達系中にカプセル化される。薬剤送達製剤のためのラクチド/グリコリドポリマーは、典型的には、ラクチドおよびグリコリド単量体の開環による溶融重合によって製造される。いくつかのポリマーが、カルボン酸の末端基の有無にかかわらず利用可能である。いくつかのポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)のブロックと共に利用可能である。ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ラクチド)、または、ポリ(グリコリド)の末端基がカルボン酸ではなく、例えばエステルである場合、得られたポリマーは、本明細書ではブロックした、または、キャップされたと述べられる。逆に言えばブロックされていないポリマーは、末端にカルボン酸基を有する。
【0060】
[0069] 一形態において、直鎖状のラクチド/グリコリドポリマーが用いられる;しか
しながら分岐状ポリマーも同様に用いることができる。所定の形態において、強度の要件を満たすために、高分子量ポリマー(例えば、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホルム中で測定した場合、固有粘度が1dL/gより大きい)が、例えば医療用デバイスに用いることができる。その他の形態において、材料強度ではなく再吸収時間がより重要な場合、低分子量ポリマー(例えば、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホルム中で測定した場合、固有粘度が1dL/gより小さい)が、薬剤送達およびワクチン送達製品に用いることができる。ポリマーのラクチド部分は、不斉炭素を有する。ラセミ体のDL−、L−およびD−ポリマーが、商業的に入手可能である。L−ポリマーは、より高度な結晶構造を有し、DL−ポリマーよりもゆっくり再吸収される。グリコリドとDL−ラクチドまたはL−ラクチドとを含むコポリマーに加えて、L−ラクチドとDL−ラクチドとのコポリマーが利用できる。加えて、ラクチドまたはグリコリドのホモポリマーも利用できる。またラクチド単量体は、アルキル基を含んでいてもよい。
【0061】
[0070] 生分解性ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ラクチド)、
または、ポリ(グリコリド)である場合、ポリマー中のラクチドおよびグリコリドの量は様々であってよい。一形態において、生分解性ポリマーは、0〜100モル%、40〜1
00モル%、50〜100モル%、60〜100モル%、70〜100モル%、または、80〜100モル%のラクチド、および、0〜100モル%、0〜60モル%、10〜40モル%、20〜40モル%、または、30〜40モル%のグリコリドを含み、ここでラクチドとグリコリドとの量は、100モル%である。一形態において、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、85:15のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、75:25のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、または、65:35のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)であってもよく、ここでこれらの比率はモル比である。
【0062】
[0071] 一形態において、生分解性ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポ
リ(ラクチド)、または、ポリ(グリコリド)であるの場合、これらポリマーは、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホルム中で測定した場合、0.15〜1.5dL/g、0.25〜1.5dL/g、0.25〜1.0dL/g、0.25〜0.8dL/g、0.25〜0.6dL/g、または、0.25〜0.4dL/gの固有粘度を有する。
【0063】
[0072]
医薬組成物
[0073] 本発明のさらなる実施態様において、本発明に係る改変されたペプチドおよび
ポリマーベースの送達系は、医薬組成物を提供するために、霊長類(特にヒト)での投与に適した適切な製剤用キャリアーと混合される。
【0064】
[0074] 本発明の医薬組成物で用いることができる医薬的に許容されるキャリアーとし
ては、様々な溶媒、分散媒、等張剤などが可能である。受容者に有害であるか、または、ポリマーベースの送達系もしくはそこにカプセル化された治療用ペプチドまたはその他の生理活性因子の治療有効性に有害である場合を除いては、あらゆる従来の媒体、物質、希釈剤またはキャリアーが本発明の医薬組成物で適切に使用することができる。
【0065】
[0075] このようなキャリアーは、液体、半固体、例えばペースト、または、固形キャ
リアーであり得る。キャリアーの例としては、油、水、食塩水、アルコール、糖、ゲル、脂質、リポソーム、樹脂、多孔質マトリックス、結合剤、充填剤、コーティング、保存剤等またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
[0076] 本発明のさらなる実施態様において、本発明に係る改変されたペプチドおよび
ポリマーベースの送達系は、キャリアーを含まない粉末として投与することができる。
[0077]
治療方法
[0078] 本発明のさらなる形態において、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、好ましくは
霊長類(特に好ましい実施態様はヒト被検者である)における病気を、このような病気を治療するのに望ましい本発明のペプチド製剤を投与することによって治療する方法が提供される。
【実施例】
【0067】
[0080]
実施例1:モデルペプチドの製剤
[0081]
製造工程:
[0082] 標準的な溶媒抽出方法を用いてペプチドが充填した微粒子を製造した。およそ
200mgのペプチドを、2グラムのDMSOに溶解させた。それとは別に、2gのポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLG)を10gのジクロロメタンに溶解させた。続いてペプチド溶液をポリマー溶液に添加し、それと同時にIKAホモジナイザーを用いて高い毎分回転数(rpm)で均質化した。続いてペプチド/ポリマー相を、シルバーソン(Silverson)L4RT混合装置を用いて700rpmで均質化することによって蒸留水150mL中の3gのポリ(ビニルアルコール)(PVA)および2.7gのジクロロメタンからなる連続的な相に分散した。液滴が十分に形成されたら(3分間)、このエマルジョンを1Lの蒸留水で希釈し、撹拌プレート上で1時間撹拌し、ジクロロメタンを
抽出させ、PLG微粒子を凝固させた。その後、懸濁液を125ミクロンの篩にかけ、20ミクロンの篩上で微粒子を回収することによって微粒子を単離した。続いて回収された微粒子を凍結乾燥して、残留した水を除去した。完成した生成物は白色からオフホワイト色の自由流動性粉末であり、これをその後、−20℃で保存した。
【0068】
[0083]
薬剤の含量:
[0084] 薬剤の含量を、PLG微粒子製剤からペプチドを慎重に抽出することによって
決定した。典型的には、PLG製剤を適切な有機溶媒に溶解させ(またはポリマーを加水分解した)、薬剤を適切な水性緩衝液に抽出した。続いてこの抽出物中の薬剤をHPLCで定量した。濃度の値を用いて、微粒子中に含まれる薬剤の量を決定した(質量パーセント(wt%)で報告)。
【0069】
[0085]
インビトロでの放出:
[0086] インビトロでの放出の解析は、穏やかに撹拌しながら37℃に維持された適切
な受け入れ用流体(PBS,pH7.4)に微粒子製剤サンプルを置くことで構成される。受け入れ用流体のpHを慣例的手順でチェックして、確実にPBSのpHを7.4に維持した。様々なタイムポイントで受け入れ用流体を交換し、受け入れ用流体に放出されたペプチドの量をHPLCで定量した。制御の調査を行い、放出された後の受け入れ用流体中でのペプチドの安定性を確認した。
【0070】
[0087]
微粒子の粒度
[0088] ベックマン・コールター(Beckman Coulter)LS13 32
0レーザー回折式粒度測定装置を用いて、微粒子製剤の平均サイズおよび粒度分布を決定した。
【0071】
[0089]
図2および3は、薬剤充填および充填効率に対する電荷の作用を示す。データ
の変動の範囲内で、薬剤充填および充填効率は矛盾がなく、中性および正電荷を有するペプチドを通じて類似していた。負電荷を有するペプチド(DP5)の包含(充填)効率は、調査されたその他のペプチドと比較して低かった。
【0072】
[0090]
図4によれば、DP2を除いて、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホル
ム中で測定した場合、およそ0.2dL/gの固有粘度を有する、エステルを末端に有する50:50のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む微粒子製剤において、粒度は包含されたペプチドの影響を受けなかったことが示される。
【0073】
[0091]
図5および6は、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホルム中で測定した
場合、およそ0.2dL/gの固有粘度を有する、酸を末端に有する50:50のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む微粒子製剤からの放出に対するペプチドの電荷の作用を示す。電荷を有するペプチドは、中性ペプチドと比較して一定してより速い速度で放出される。さらに注目すべきことに、より高い電荷密度を有するペプチド(DP2に対して、DP3、DP4、DP5)は、より迅速に放出された。さらにここで留意すべきことに、このポリマーベースの送達系からの「バースト」は観察されなかった。
【0074】
[0092]
図7は、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホルム中で測定した場合、お
よそ0.2dL/gの固有粘度を有する、エステルを末端に有する50:50のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む、類似の微粒子状のポリマーベースの製剤からの放出プロファイルを示す。中性および負電荷を有するペプチドは、調査した期間中に極めてわずかな放出しか示さなかったが、正電荷を有するペプチドは、製剤からの有意なバーストを示した。さらに、正電荷(電荷密度)が大きければ大きい程、放出速度に対してより有意な作用が得られた。
【0075】
[0093]
図8は、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホルム中で測定した場合、お
よそ0.25dL/gの固有粘度を有する、酸を末端に有する85:15のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む微粒子製剤からのペプチドの放出を示す。調査された期間にわたり、いずれの微粒子製剤からもペプチドの放出は観察されなかった。
【0076】
[0094]
図9は、30℃で0.5g/dLの濃度でクロロホルム中で測定した場合、お
よそ0.25dL/gの固有粘度を有する、エステルを末端に有する85:15のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む微粒子製剤からのペプチドの放出を示す。中性および負電荷を有するペプチドは、調査された期間中に極めてわずかな放出しか示さなかったが、正電荷を有するペプチドは、微粒子製剤からのより有意な放出を示した。正電荷(電荷密度)が大きければ大きい程、放出速度に対してより有意な作用が得られた。
【0077】
[0095]
実施例2:親ペプチドの典型的な改変
[0096]
カルシトニン
[0097] カルシトニンは、骨粗しょう症の治療で用いられるホルモンである。ヒトカル
シトニンのアミノ酸配列は、以下の通りである:
【0078】
【化1】
【0079】
[0098] 放出制御製剤中のカルシトニンがよりよく利用されるように、カルシトニンの
pIをN末端にトリ−リシン部分を付加することによって改変して(配列番号2と称される)、カルシトニンのカプセル化の有効性を高めた。あるいは、エステルを末端に有するポリエステルからのその初期のバーストを高めるために、グリシン残基をリシンで置換した(配列番号3と称される)。酸を末端に有するポリエステルからの浸食による放出を高めるために、グリシン残基をアスパラギン酸で置換した(配列番号4と称される)。
【0080】
[0099]
ロイプロリド
[00100] ロイプロリドは、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストであり、前立腺癌または子宮内膜症の治療で用いることができる。ロイプロリドのアミノ酸配列は、以下の通りである:
【0081】
【化2】
【0082】
[00101] 放出制御製剤中のロイプロリドがよりよく利用されるように、エステルを末端に有するポリエステルからのその拡散放出を高めるために、ロイプロリドのpIをグルタミン酸をグルタミンで置換することによって改変し(配列番号6と称される)、および/または、エステルを末端に有するポリエステルからの拡散放出を減少させるために、アルギニンをアスパラギン酸で置換するすることによって改変した(配列番号7と称される)。
【0083】
[0100]
オクトレオチド
[0101] オクトレオチドは、オクタペプチドであり、これは、成長ホルモンの阻害剤お
よび/または先端巨大症の治療剤として用いることができる。オクトレオチドのアミノ酸配列は、以下の通りである:
【0084】
【化3】
【0085】
[0102] オクトレオチドのpIを改変するために、および、放出制御製剤中のオクトレ
オチドがよりよく利用されるように、例えばスレオニンをリシンで置換して(配列番号9と称される)、オクトレオチドのカプセル化効率および薬剤充填を高めた。
【0086】
[0103] 全ての引用文献は、参照することによりそれらの全体が本発明に包含される。