(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出力回転軸を支点として回動可能であり、複数の一方向回転機構をそれぞれ介して前記出力回転軸に連結された複数のアームと、前記複数のアームを前記一方向回転機構の動力伝達方向となる回転許可方向にそれぞれ付勢する複数の弾性体と、前記出力回転軸と平行であり、駆動源によって回転する駆動回転軸と、前記駆動回転軸と共に回転するように該駆動回転軸に平行に連結され、前記複数のアームの先端部にそれぞれ当接可能な複数のピンとを備えており、前記複数のアームの各々は、前記複数のピンの各々が当接した際は該ピンの押圧によって前記複数の弾性体の各々の付勢力に対抗する方向に押し戻されて前記弾性体に弾性エネルギを蓄積し、前記複数のピンの各々が当接から外れた際は前記複数の弾性体の各々の前記蓄積された弾性エネルギによる付勢力によって前記一方向回転機構の前記回転許可方向に回動駆動されるように構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献1及び2に記載された動力伝達装置によると、駆動源と出力回転軸とが、連結扞、板歯車及び歯車によって機械的に遊び無く連結されているため、出力回転軸に印加される負荷のトルク変動が駆動源に直接的に逆伝達され、駆動源は負荷変動の影響を大きく受けてしまう。このため、駆動源として、出力側のこのような負荷変動を吸収できるだけの充分に大きな出力トルク特性を有するものを使用するか、又は途中に設けられた変速機構を操作することによって出力回転軸に伝達されるトルクを負荷変動に応じて変化させる必要がある。
【0006】
本発明は従来技術の上述したような不都合を解消するものであり、その目的は、負荷変動が駆動源に直接的に伝達されることのない動力伝達装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、手動で操作することなく自動的に無段変速機能を得ることのできる動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、出力回転軸を支点として回動可能であり、複数の一方向回転機構をそれぞれ介して出力回転軸に連結された複数のアームと、複数のアームを一方向回転機構の回転許可方向(動力伝達方向)にそれぞれ付勢する複数の弾性体と、出力回転軸と平行であり、駆動源によって回転する駆動回転軸と、駆動回転軸と共に回転するように駆動回転軸に平行に連結され、複数のアームの先端部にそれぞれ当接可能な複数のピンとを備えており、複数のアームの各々は、複数のピンの各々が当接した際はピンの押圧によって複数の弾性体の各々の付勢力に対抗する方向に押し戻されて弾性体に弾性エネルギを蓄積し、複数のピンの各々が当接から外れた際は複数の弾性体の各々の蓄積された弾性エネルギによる付勢力によって一方向回転機構の回転許可方向に回動駆動されるように構成されている動力伝達装置が提供される。
【0009】
これにより、駆動源と弾性体とのハイブリッド効果で、駆動源のトルクではなく、弾性体に蓄積されたエネルギが放出されて出力トルクが発生するため、負荷変動が駆動源に直接的に伝達されることのない動力伝達装置を実現することができる。また、出力回転軸にかかる負荷が大きくなって弾性体によるアームの回転が遅くなるとそのアームが戻る前に次のピンがアームに当接し、トルクが自動的に大きくなるため、手動で操作することなく自動的に無段変速機能を得ることができる。さらに、出力回転軸にかかる負荷が大きくなって弾性体によるアームの回転が遅くなるとそのアームが戻る前に他のピンが他のアームに当接し、複数の弾性体にエネルギが蓄積されてこれが一時に放出されるため、弾性体の数が多いほど蓄積されたエネルギが大きくなり、瞬時に出力されるトルクが大きくなる。さらにまた、弾性体へのエネルギ蓄積及び放出の繰り返しであるため、ゼンマイバネやフライホイールを使用することなく回転駆動できるので、安全性が優れている。
【0010】
複数のアームの各々に対して単一のピンが設けられていることが好ましい。これにより、簡単な構成で動力伝達装置を実現することができる。
【0011】
複数のアームの各々に対して複数のピンが設けられていることが好ましい。これにより、アームの数が少なく、コンパクトな構成を得ることができる。
【0012】
駆動回転軸に対する複数のピンの取り付け角度間隔は、360/N度(ただし、Nはピンの数)であることが好ましい。これにより、複数のピンが均等の時間間隔で複数のアームの先端部にそれぞれ当接することができ、安定した回転出力を得ることができる。
【0013】
複数の弾性体の弾性力を可変調整可能な弾性力調整機構をさらに備えていることが好ましい。これにより、弾性体の弾性力を調整することで、回転出力の回転速度を可変にすることができる。
【0014】
複数の弾性体の各々が少なくとも1つの引張りコイルバネを備えていることが好ましい。これにより、容易に装着することができ、アームに対して一定の弾性力で付勢することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のアームの各々は、複数のピンの各々が当接した際はピンの押圧によって複数の弾性体の各々の付勢力に対抗する方向に押し戻されて弾性体に弾性エネルギを蓄積し、複数のピンの各々が当接から外れた際は複数の弾性体の各々の蓄積された弾性エネルギによる付勢力によって一方向回転機構の回転許可方向に回動駆動されるように構成されていることで、負荷変動が駆動源に直接的に伝達されることのない動力伝達装置を実現することができる。また、手動で操作することなく自動的に無段変速機能を得ることができる。さらに、出力回転軸にかかる負荷が大きくなって弾性体によるアームの回転が遅くなるとそのアームが戻る前に他のピンが他のアームに当接し、複数の弾性体にエネルギが蓄積されてこれが一時に放出されるため、弾性体の数が多いほど蓄積されたエネルギが大きくなり、瞬時に出力されるトルクが大きくなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る無段変速装置の実施形態について説明する。
図1は本発明に係る動力伝達装置の第1の実施形態の構成を概略的に示している。
図2は動力伝達装置の動作状態を示す側面図であり、同図(a)は手前側のアーム30a及び30bと、ピン60a及び60bとの相対位置関係を示しており、(b)は奥側のアーム30c及び30dと、ピン60c及び60dとの相対位置関係を示している。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の動力伝達装置100は、出力回転軸10を支点として回動可能であり、一方向回転機構としてのワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dをそれぞれ介して出力回転軸10に連結された4つのアーム30a、30b、30c及び30dと、4つのアーム30a、30b、30c及び30dをワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dの回転許可方向(動力伝達方向)にそれぞれ付勢する弾性体としての4つの引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dと、出力回転軸10と平行であり、駆動源としてのモータMによって回転する駆動回転軸50と、駆動回転軸50と共に回転するように駆動回転軸50に平行に連結され、4つのアーム30a、30b、30c及び30dの先端部にそれぞれ当接可能な4つのピン60a、60b、60c及び60dと、引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dの弾性力を調整する弾性力調整機構70と、4つのアーム30a、30b、30c及び30dの回転を所定範囲に制限するストッパ80とを備えている。
【0019】
出力回転軸10は、駆動負荷(例えば、車輪等)に連結されており、図示しない支持体によって回転自在に支持されている。この出力回転軸10には、軸方向に所定の間隔をあけてワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dが同軸に装着されており、これらワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dによって伝達される回動運動によって出力回転軸10は回転する。
【0020】
ワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dは、アーム30a、30b、30c及び30dの揺動を一方向回転運動に変換するものであり、外周がアーム30a、30b、30c及び30dの一端部に連結され、中心に出力回転軸10が装着されている。
【0021】
アーム30a、30b、30c及び30dは、例えば、丸棒又は角棒状材料から形成され、下端はそれぞれワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dに固定され、上端は自由端とされている。アーム30a、30b、30c及び30dには、弾性体40の一端が連結されている。アーム30a、30b、30c及び30dの時計回り方向の回転はストッパ80により所定範囲に制限されている。
【0022】
引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dは、アーム30a、30b、30c及び30dをワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dの回転許可方向に付勢する弾性体として、一端がそれぞれアーム30a、30b、30c及び30dに連結され、他端が弾性力調整機構70に連結されている。
【0023】
駆動回転軸50は、駆動源としてのモータMにギアGを介して連結されており、出力回転軸10と平行に配置されている。この駆動回転軸50は、定速回転するモータMによって駆動され所定の回転速度で回転する。即ち、モータMの回転がギアGに伝達され、必要に応じて変速されると共にその回転軸方向が90度変換されて駆動回転軸50が回転駆動される。
【0024】
ピン60a、60b、60c及び60dは、駆動回転軸50と共に回転するように駆動回転軸50に平行に連結され、かつ回転する際にアーム30a、30b、30c及び30dの先端部にそれぞれ当接可能に構成されている。ピン60a、60b、60c及び60dの、回転軸に関する取り付け角度間隔は、360/N度(ただし、Nはピンの数)であることが好ましい。本実施形態において、ピン60a、60b、60c及び60dは、駆動回転軸50に上述した角度間隔で固着された回転アーム61a、61b、61c及び61dの端部にそれぞれ固着されている。また、回転アーム61a及び61bは、駆動回転軸50に関して互いに180度ずれた位置に配置されており、回転アーム61c及び61dは、駆動回転軸50に関して180度ずれた位置に配置されている。しかも、回転アーム61a及び61bと回転アーム61c及び61dとは互いに90度の位相差を有する位置に配置されている。従って、駆動回転軸50に関する4つのピン60a、60b、60c及び60dの取り付け角度間隔は、360/4=90度である。即ち、駆動回転軸50が90度を回転するごとにピン60a、60b、60c及び60dがアーム30a、30b、30c及び30dにそれぞれ当接するように構成されている。
【0025】
弾性力調整機構70は、回動軸71と、回動アーム72a及び72bと、バネ連結部73a及び73bと、駆動部74とを備えている。回動軸71は出力回転軸10と平行に配置されている。回動アーム72aの一端は回動軸71の一方の軸方向端部に固着されている。バネ連結部73aは回動アーム72aの他端に装着されている。同様に、回動アーム72bの一端は回動軸71の他方の軸方向端部に固着されている。バネ連結部73bは回動アーム72bの他端に装着されている。また、駆動部74は必要に応じて回動軸71を所定回転角度範囲内で回動するように駆動する機構である。
【0026】
ストッパ80は、出力回転軸10と平行に配置された棒状部材であり、アーム30a、30b、30c及び30dの時計回り方向の回転を所定範囲に制限するように構成されている。
【0027】
次に、本実施形態における動力伝達装置100の動作を説明する。
図2(a)に示すように、駆動回転軸50が回転してピン60aがアーム30aに当接しこれを押圧することにより、アーム30aは反時計回りに回動する。この回動によっては、ワンウェイクラッチ20aが空転状態となるため、動力伝達が行われず、引張りコイルバネ40aが引っ張られるのみとなる。駆動回転軸50がさらに回転してピン60aがアーム30aから離れると、アーム30aは、引張りコイルバネ40aの付勢力により付勢されて時計回りに回動し、ストッパ80に当接する位置で回動を停止する。この回動はワンウェイクラッチ20aを実回転させ動力伝達が行われて出力回転軸10が回転し動力を出力する。ピン60aがアーム30aに当接している
図2(a)の状態では、アーム30bは、ストッパ80に当接した位置にある。従って、ピン60bはアーム30bに当接したおらずこれを押圧していない。駆動回転軸50がさらに回転し、ピン60bがアーム30bに当接しこれを押圧すると、アーム30bが上述したアーム30aと同様な動作を行う。一方、
図2(b)に示すように、ピン60aがアーム30aに当接した状態では、アーム30c及び30dは、ストッパ80に当接した位置にある。従って、ピン60c及び60dはアーム30c及び30dに当接しておらずこれらを押圧していない。駆動回転軸50がさらに回転し、ピン60aがアーム30aから離れると、ピン60dがアーム30dに当接しこれを押圧するようになり、次に、ピン60bがアーム30bに当接しこれを押圧するようになる。次いで、ピン60cがアーム30cに当接しこれを押圧するようになる。このように、駆動回転軸50が回転運動することにより、アーム30a、30b、30c及び30dが交互に回動せしめられる。
【0028】
このように、駆動回転軸50が回転運動することにより、ピン60a、60b、60c及び60dが、順次、アーム30a、30b、30c及び30dの先端部にそれぞれ当接し、これらアーム30a、30b、30c及び30dを反時計回り方向へ押圧して順次回動させる。この反時計回りの回動によっては、ワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dが空転するので動力伝達が行われない。しかしながら、この回動により引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dがそれぞれ引っ張られるので、アーム30a、30b、30c及び30dを時計回り方向に付勢する弾性エネルギが蓄積される。ピン60a、60b、60c又は60dの各々がアーム30a、30b、30c及び30dの各々との当接から外れた際は、引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dの各々の蓄積された弾性エネルギによる付勢力によってアーム30a、30b、30c及び30dが時計回り方向に回転せしめられ、ワンウェイクラッチ30が時計回り方向(回転許可方向)に回動駆動されるので動力伝達が行われ、回転運動は出力回転軸10を介して出力される。この場合、ピン60a、60b、60c及び60dがアーム30a、30b、30c及び30dの先端部にそれぞれ当接し始めた際の引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dの各々の張力は小さいが、その後の張力は徐々に大きくなり、これにより、駆動源に対して瞬間的に大きい負荷をかけることなく、安定した駆動ができる。一方、ピン60a、60b、60c又は60dがアーム30a、30b、30c及び30dとの当接から外れた際は、アーム30a、30b、30c及び30dによってピン60a、60b、60c又は60dが弾かれるため、より大きな出力トルクを得ることができる。
【0029】
また、弾性力調整機構70により、引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dの張力(弾性力、付勢力)を調整することが可能である。回動アーム72a及び72bが反時計回り方向に回動する場合、引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dの張力(弾性力)が増加する。一方、回動アーム72a及び72bが時計回り方向に回動する場合、引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dの張力(弾性力)が減少する。これにより、出力回転軸10の回転速度を無段階に変速させることができる。
【0030】
以上説明したように、第1の実施形態の動力伝達装置100は、出力回転軸10と、ワンウェイクラッチ20a、20b、20c及び20dと、アーム30a、30b、30c及び30dと、コイルバネ40a、40b、40c及び40dと、駆動回転軸50と、ピン60a、60b、60c及び60dと、弾性力調整機構70と、ストッパ80とを備えている。駆動回転軸50の回転運動を出力回転軸10の一方向の回転運動に変換されることで、負荷変動が駆動源に直接的に伝達されることのない動力伝達装置100を実現することができる。また、弾性力調整機構70により、引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dの張力(弾性力)を調整することで、出力回転軸10の回転速度を無段階に変速させることができる。また、出力回転軸10にかかる負荷が大きくなって引張りコイルバネ40a、40b、40c又は40dによるアーム30a、30b、30c又は30dの回転が遅くなるとそのアーム30a、30b、30c又は30dが戻る前に他のピン60a、60b、60c又は60dが他のアーム30a、30b、30c又は30dに当接し、複数のコイルバネにエネルギが蓄積されてこれが一時に放出されるため、引張りコイルバネの数が多いほど蓄積されたエネルギが大きくなり、瞬時に出力されるトルクが大きくなる。さらに、引張りコイルバネ40a、40b、40c及び40dへのエネルギ蓄積及び放出の繰り返しであるため、ゼンマイバネやフライホイールを使用することなく回転駆動できるので、安全性が優れている。
【0031】
図3は本発明の第2の実施形態として動力伝達装置200を示している。同図は動力伝達装置200の側面図であり、(a)は手前側のアーム30a、30b及び30cと、ピン60a、60b及び60cとの相対位置関係を示しており、(b)は奥側アーム30d、30e及び30fと、ピン60d、60e及び60fとの相対位置関係を示している。
【0032】
図3に示すように、本実施形態の動力伝達装置200は、出力回転軸10を支点として回動可能であり、一方向回転機構としてのワンウェイクラッチ20a、20b、20c、20d、20e及び20fをそれぞれ介して出力回転軸10に連結された6つのアーム30a、30b、30c、30d、30e及び30fと、6つのアーム30a、30b、30c、30d、30e及び30fをワンウェイクラッチ20a、20b、20c、20d、20e及び20fの回転許可方向(動力伝達方向)にそれぞれ付勢する弾性体としての6つの引張りコイルバネ40a、40b、40c、40d、40e及び40fと、出力回転軸10と平行であり、駆動源としてのモータMによって回転する駆動回転軸50と、駆動回転軸50と共に回転するように駆動回転軸50に平行に連結され、6つのアーム30a、30b、30c、30d、30e及び30fの先端部にそれぞれ当接可能な6つのピン60a、60b、60c、60d、60e及び60fと、引張りコイルバネ40a、40b、40c、40d、40e及び40fの弾性力を調整する弾性力調整機構70と、6つのアーム30a、30b、30c、30d、30e及び30fの回転を所定範囲に制限するストッパ80とを備えている。
【0033】
本実施形態の動力伝達装置200においては、6つのワンウェイクラッチ、6つのアーム、6つのコイルバネ、及び6つのピンが設けられている。特に、本実施形態においては、6つのピン60a、60b、60c、60d、60e及び60fの、回転軸に関する取り付け角度間隔は、360/6=60度である。即ち、駆動回転軸50が60度を回転するごとにピン60a、60b、60c、60d、60e及び60fがアーム30a、30b、30c、30d、30e及び30fにそれぞれ当接するように構成されている。
【0034】
本実施形態の動力伝達装置200のその他の構成は、基本的に第1の実施形態の動力伝達装置100と同様な構成を有するため、詳細な説明を省略する。
【0035】
この第2の実施形態の動力伝達装置200は、ワンウェイクラッチ、アーム、コイルバネ、及びピンをそれぞれ6つ有することで、より安定した動力伝達ができる。また、出力回転軸10にかかる負荷が大きくなって引張りコイルバネ40a、40b、40c、40d、40e又は40fによるアーム30a、30b、30c、30d、30e又は30fの回転が遅くなるとそのアーム30a、30b、30c、30d、30e又は30fが戻る前に他のピン60a、60b、60c、60d、60e又は60fが他のアーム30a、30b、30c、30d、30e又は30fに当接し、複数のコイルバネにエネルギが蓄積されてこれが一時に放出されるため、引張りコイルバネの数が多いほど、瞬時に出力されるトルクが大きくなる。即ち、動力伝達装置200は、動力伝達装置100より大きい瞬時の出力トルクを得ることができる。他に、動力伝達装置100と同様な効果を有する。
【0036】
図4は本発明の第3の実施形態として動力伝達装置300を示している。
図5は動力伝達装置の動作状態を示す側面図であり、同図(a)は手前側のアーム30Aと、ピン60a及び60bとの相対位置を示しており、(b)は奥側のアーム30Bと、ピン60c及び60dとの相対位置を示している。
【0037】
図4及び
図5に示すように、本実施形態の動力伝達装置300は、出力回転軸10を支点として回動可能であり、一方向回転機構としてのワンウェイクラッチ20A及び20Bをそれぞれ介して出力回転軸10に連結された2つのアーム30A及び30Bと、アーム30A及び30Bをワンウェイクラッチ20A及び20Bの回転許可方向(動力伝達方向)にそれぞれ付勢する弾性体としての2つの引張りコイルバネ40A及び40Bと、出力回転軸10と平行であり、駆動源としてのモータMによって回転する駆動回転軸50と、駆動回転軸50と共に回転するように駆動回転軸50に平行に連結され、アーム30A及び30Bの先端部にそれぞれ当接可能な4つのピン60a及び60b、60c及び60dと、引張りコイルバネ40A及び40Bの弾性力を調整する弾性力調整機構70と、2つのアーム30A及び30Bの回転を所定範囲に制限するストッパ80とを備えている。
【0038】
本実施形態の動力伝達装置300においては、2つのアーム30A及び30Bに対して、4つのピン60a、60b、60c及び60dを有する構成となっている。即ち、1つのアームが2つのピンと順次に当接し回動するように構成されている。この場合、ピン60aと60bとは同一回転平面に、互いに180度ずれた位置に配置されており、また、ピン60cと60dとは同一回転平面に、互いに180度ずれた位置に配置されている。この例において、ピン60a及び60bは、円板62Aに設けられ、ピン60c及び60dは、円板62Bに設けられている。また、ピン60a及び60bと、ピン60c及び60dとは90度の位相差を有する位置に配置されている。
【0039】
本実施形態の動力伝達装置300のその他の構成は、基本的に第1の実施形態の動力伝達装置100と同様な構成を有するため、詳細な説明を省略する。
【0040】
次に、本実施形態における動力伝達装置300の動作を説明する。
図5(a)に示すように、駆動回転軸50が回転してピン60aがアーム30Aに当接しこれを押圧することにより、アーム30Aは反時計回りに回動する。この回動によっては、ワンウェイクラッチ20Aが空転状態となるため、動力伝達が行われず、引張りコイルバネ40Aが引っ張られるのみとなる。駆動回転軸50がさらに回転してピン60aがアーム30Aから離れると、アーム30Aは、引張りコイルバネ40Aの付勢力により付勢されて時計回りに回動し、ストッパ80に当接する位置で回動を停止する。この回動はワンウェイクラッチ20Aを実回転させ動力伝達が行われて出力回転軸10が回転し動力を出力する。駆動回転軸50がさらに回転し、ピン60bがアーム30Aに当接しこれを押圧すると、アーム30Aが上述したような動作を繰り返す。一方、
図5(b)に示すように、ピン60aがアーム30Aに当接した状態では、アーム30Bは、ストッパ80に当接した位置にある。従って、ピン60c及び60dはアーム30Bに当接しておらずこれらを押圧していない。駆動回転軸50がさらに回転し、ピン60aがアーム30Aから離れると、ピン60dがアーム30Bに当接しこれを押圧するようになり、次に、ピン60bがアーム30Aに当接しこれを押圧するようになる。次いで、ピン60cがアーム30Bに当接しこれを押圧するようになる。このように、駆動回転軸50が回転運動することにより、アーム30A及び30Bが交互に回動せしめられる。
【0041】
第3の実施形態の動力伝達装置300は、2つのアーム30A及び30Bに対して、4つのピン60a、60b、60c及び60dを有し、かつ、ピン60a及び60bは、ピン60c及び60dと90度の位相差を有する位置に配置されていることで、より安定した動力伝達ができる。他に、動力伝達装置100と同様な効果を有する。
【0042】
なお、上述した動力伝達装置100、200及び300において、弾性体として引張りコイルバネ40a、40b、40c、40d、40e、40f、40A及び40Bを用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ゴム等の材料から構成するようにしても良い。
【0043】
また、アームとピンの数は、上述した動力伝達装置100、200及び300に限定されるものではない。
【0044】
また、上述した動力伝達装置100、200及び300において、駆動回転軸50の駆動源としてのモータMを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スターリングエンジン等を駆動源として用いても良い。
【0045】
さらに、上述した動力伝達装置100、200及び300において、一方向だけに駆動するワンウェイクラッチ20a、20b、20c、20d、20e、20f、20A及び20Bを用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、駆動方向を切り替えることができるワンウェイクラッチを用いても良い。このような駆動方向の切り替えができるワンウェイクラッチを用いる場合、車両等の前進と後進がクラッチを切り替えることで実現できる。ただし、後進時はバネの力ではなく、アームが押されたとき直接駆動することになる。
【0046】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0048】
10 出力回転軸
20a、20b、20c、20d、20e、20f ワンウェイクラッチ
30a、30b、30c、30d、30e、30f アーム
40a、40b、40c、40d、40e、40f 引張りコイルバネ
50 駆動回転軸
60a、60b、60c、60d、60e、60f ピン
61a、61b、61c、61d、61e、61f 回転アーム
70 弾性力調整機構
71 回動軸
72a、72b 回動アーム
73a、73b バネ連結部
74 駆動部
80 ストッパ
100、200、300 動力伝達装置
G ギア
M モータ