【文献】
YUBE KUNIO,CONTROL OF SELECTIVITY IN PHENOL HYDROXYLATION USING MICROSTRUCTURED CATALYTIC WALL REACTORS,APPLIED CATALYSIS A: GENERAL,NL,ELSEVIER SCIENCE,2007年 7月26日,V327 N2,P278-286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フェノールまたはフェノールエーテルを、酸触媒の存在下で、過酸化水素と反応させることによる、前記フェノールまたはフェノールエーテルのヒドロキシル化方法であって、連続的に行われる次の工程:
− 温度が、出発フェノールまたはフェノールエーテルが液体のままであるのに、かつ、前記過酸化水素の転化度が25モル%未満であるのに十分であるような条件下にフェノールまたはフェノールエーテルを過酸化水素溶液と混合する第1工程と、
− 前記フェノールまたはフェノールエーテルの前記ヒドロキシル化反応を断熱条件下に行うことを含む第2工程であって;前記酸触媒が前記混合工程へおよび/または前記ヒドロキシル化反応の開始時に導入される工程と、
− 必要に応じて、ヒドロキシル化生成物の回収の第3工程と
を含むことを特徴とする方法。
前記混合工程が、錯化剤を任意選択的に加えられた前記フェノール化合物;任意選択的に前記酸触媒のすべてかまたは一部;過酸化水素溶液;および任意選択的に共触媒を別々に導入することによって行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記ヒドロキシル化反応が、外部から断熱されているという特徴を有し、かつ、断熱材でできたおよび/または断熱材で包まれた反応器である反応器中で行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記フェノール又はフェノールエーテル及び過酸化水素溶液が、攪拌機および加熱手段を備えた混合デバイスで混ぜ合わせられ、かつ前記ヒドロキシル化がピストンフロー反応器で断熱条件下に行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記フェノール又はフェノールエーテル及び過酸化水素溶液が、攪拌機および加熱手段を備えた混合デバイスで混ぜ合わせられ、かつ前記ヒドロキシル化第2工程が、断熱条件下に維持され、熱交換器によって分離された一連の少なくとも2つのピストンフロー反応器で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記フェノール又はフェノールエーテル及び過酸化水素溶液が、攪拌機および加熱手段を備えた混合デバイスで混ぜ合わせられ、かつ前記ヒドロキシル化第2工程が、平行に取り付けられた一系列のピストンフロー反応器で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記混合デバイスが、機械攪拌される反応器;機械攪拌されるもしくはされない、外部ループ上のポンプを用いての、前記反応器の内容物のフラクションもしくはすべての循環のためのループ付きの、反応器;動的ミキサー;静的ミキサーであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
伝熱のための交換面が、前記反応器の内側に存在するコイルもしくはプレートを用いてまたは外套中を循環する熱交換流体によって増加させられてもよいことを特徴とする請求項11に記載の方法。
前記反応器が、前記反応器中のフローが5000未満のレイノルズ数を有するときにバッフルを含むことを特徴とする請求項8〜10、13および14のいずれか一項に記載の方法。
前記反応器が、前記反応器中のフローが5000以上のレイノルズ数を有するときにバッフルを含まないことを特徴とする請求項8〜10、13および14のいずれか一項に記載の方法。
前記反応器が、小さい物体からなる、バルクバッフルであってもよい、バッフルで全体的にもしくは部分的に充填されているか、または前記反応器が、構造化バッフルを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
前記フェノール性基質が、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、アニソール、フェネトール、2−メトキシフェノール(グアイアコール)または2−エトキシフェノール(グエトール)であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
前記酸触媒が、硫酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ビス−トリフルオロメタンスルホンイミドまたは過塩素酸および硫酸の混合物;過塩素酸および4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸の混合物;トリフルオロメタンスルホン酸および4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸の混合物;ビス−トリフルオロメタンスルホンイミドおよび4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸の混合物であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書では、用語「断熱条件」は、反応が断熱チャンバーで、すなわち、反応がエネルギーのいかなる外部供給もなしに行われるように外部媒体から絶縁されたチャンバーで行われることを意味する。言い換えれば、ヒドロキシル化反応は、反応温度が外部熱交換によって調整されることなく行われる。
【0026】
今まで、ヒドロキシル化反応が断熱条件下に行われ得ることは、これまで一度も記載されていない。特に、単一液相を含む媒体中でのヒドロキシル化反応は、先行技術においてこれまで一度も開示されていない。
【0027】
本発明の方法に従って、ヒドロキシル化反応を断熱条件下に行うと、所与の転化率および所与の選択率について、反応時間を削減することを可能にすることが見いだされた。これはそれ故、たとえば、連続モードで、反応媒体の通過時間の削減または装置の容積の減少をもって装置の生産効率の顕著な増加をもたらす。
【0028】
本明細書で以下の本文に記載される実施形態は、得られる利点を立証する。
【0029】
本発明の方法に従って、フェノール化合物は、触媒のおよび任意選択的に共触媒の存在下で過酸化水素と反応させられる。
【0030】
本発明の方法は、フェノールのまたはフェノールエーテルのヒドロキシル化に好適であり、また置換フェノールまたはフェノールエーテルにも好適である。
【0031】
本明細書では、用語「フェノール性基質」または「フェノール化合物」はフェノール、フェノール類およびフェノールエーテル類を示すために用いられる。
【0032】
用語「置換フェノールまたはフェノールエーテル」は、芳香環の水素原子の1つが1つ以上の置換基で置き換えられているフェノールまたはフェノールエーテルを意味する。
【0033】
一般に、用語「幾つかの置換基」は、芳香核当たり3つ以下の置換基を定義する。
【0034】
任意の置換基が、それが本発明の反応を妨げないという条件で、存在してもよい。
【0035】
したがって、本発明の方法は、一般式(I):
【化1】
(式中:
− Aは、ベンゼンまたはナフタレン環を表し、
− R
1は、水素原子またはアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキル基を表し、
− R
2は、水素原子または1つ以上の同一のもしくは異なる置換基を表し、
− n、芳香環当たりの置換基の数は、4以下の数である)
のフェノール性基質に適用されるのに好適である。
【0036】
式(I)において基OR
1は、R
1が水素原子以外であるときにはエーテル基である。
【0037】
芳香環当たりの置換基の数は、可変であり、一般に4以下であり、好ましくは0、1、2または3に等しい。
【0038】
置換基の好ましい例は、式(Ia)について与えられる。
【0039】
このように、本発明の方法は、Aがベンゼン環を表し、そして一般式(Ia):
【化2】
(前記式中:
− nは、0〜4、好ましくは0、1、または2に等しい数であり、
− R
1は、水素原子またはアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキル基を表し、
− 同一であっても異なってもよい、R
2は、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはハロアルキルもしくはパーハロアルキル基を表す)
によってより具体的に表される式(I)に相当するフェノール性基質に好適である。
【0040】
本発明の方法は優先的には、式(Ia)(式中、nは、0または1に等しく;R
1は、水素原子または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基を表し;R
2は、水素原子または1〜4個の炭素原子を含有するアルキルもしくはアルコキシ基を表す)に相当する基質に適用される。
【0041】
式(I)および(Ia)において、用語「アルキル」は、線状もしくは分岐のC
1〜C
15、好ましくはC
1〜C
10、さらにより優先的にはC
1〜C
4炭化水素ベースの鎖を意味する。好ましいアルキル基の例は、とりわけメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよび第三ブチルである。
【0042】
用語「アルコキシ」は、基アルキル−O−を意味し、ここで、用語「アルキル」は、上に与えられた意味を有する。アルコキシ基の好ましい例は、メトキシまたはエトキシ基である。
【0043】
用語「シクロアルキル」は、C
3〜C
8単環式環状炭化水素ベースの基、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシル基を意味する。
【0044】
用語「アリール」は、単環式もしくは多環式芳香族、好ましくはC
6〜C
20単環式もしくは二環式基、好ましくはフェニルまたはナフチルを意味する。この基が多環式であるとき、すなわち、それが2つ以上の環式核を含むとき、その環式核は、σ結合によってペアで縮合していてもペアで結合していてもよい。(C
6〜C
18)アリール基の例は、とりわけフェニルおよびナフチルである。
【0045】
用語「アラルキル」は、C
7〜C
12単環式芳香環を有する、線状もしくは分岐の炭化水素ベースの基、好ましくはベンジルを意味する:脂肪族鎖は1または2個の炭素原子を含む。
【0046】
用語「ハロアルキル基」は、1個以上の水素原子がハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置き換えられている、先に定義されたようなアルキル基を意味する。
【0047】
用語「パーハロアルキル基」は、1〜10個の炭素原子と3〜21個のハロゲン原子、好ましくはフッ素とを含むアルキル基、より具体的にはトリフルオロメチル基を意味する。
【0048】
用語「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素および臭素を定義する。
【0049】
本発明の方法に使用されてもよい式(I)のフェノール性基質の例示として、より具体的には、
− フェノールまたはアニソールなどの、nが0に等しい式(I)に相当するもの、
− o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、2−第二ブチルフェノール、2−第三ブチルフェノール、3−第三ブチルフェノール、4−第三ブチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、サリチル酸メチル、2−クロロフェノール、3−クロロフェノールまたは4−クロロフェノールなどの、nが1に等しい式(I)に相当するもの、
− 2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、2,6−ジ−第三ブチルフェノールまたは3,5−ジ−第三ブチルフェノールなどの、nが2に等しい式(I)に相当するもの、
− 2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリクロロフェノールまたは2,3,6−トリクロロフェノールなどの、nが3に等しい式(I)に相当するもの、
− 1−ヒドロキシナフタレンなどの、Aがナフタレン環を表す式(I)に相当するもの
が挙げられてもよい。
【0050】
上述のフェノール性基質の中で、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、アニソール、フェネトール、2−メトキシフェノール(グアイアコール)または2−エトキシフェノール(グエトール)が優先的に使用される。
【0051】
本方法は、ヒドロキノンおよびピロカテコールをフェノールから製造するために最も特に好適である。
【0052】
強酸である均一触媒が本発明の方法に使用される。本発明では、用語「強酸」は、−0.1未満、好ましくは−1.0未満の水中のpKaの酸を示す。
【0053】
pKaは、水が溶媒として使用されるとき、酸/塩基ペアのイオン解離定数であると定義される。
【0054】
この定義に相当する酸の中で、過酸化水素での酸化に関して安定であるものを使用することが好ましい。
【0055】
硫酸、リン酸、ピロ硫酸、過塩素酸などのハロゲン化または非ハロゲン化オキシ酸;脂肪族または芳香族スルホン酸、たとえば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ビス−トリフルオロメタンスルホンイミド、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸;フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸などのハロスルホン酸がより具体的には挙げられてもよい。
【0056】
上述の酸の中で、硫酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸およびビス−トリフルオロメタンスルホンイミドが好ましくは使用される。
【0057】
本発明の方法の一変形形態によれば、国際公開第2009/150 125号パンフレットに記載されているようなヒドロキシ芳香族スルホン酸を強いプロトン酸として使用することが可能である。
【0058】
本発明の方法に優先的に使用されるヒドロキシ芳香族スルホン酸の好ましい例としては、次式:
【化3】
(前記式中:
− xは、1、2または3、好ましくは1または2に等しく、
− yは、1または2に等しく、
− zは、0〜4、好ましくは0、1または2に等しい数であり、
− Mは、水素、ナトリウムまたはカリウム原子を表し、
− Rは、1〜4個の炭素原子を含有するアルキルもしくはアルコキシ基またはカルボン酸基を表す)
に相当する酸が挙げられてもよい。
【0059】
本発明の方法での使用に好適である酸の中で、より具体的には、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、スルホン化ヒドロキシ安息香酸;ヒドロキシベンゼンジスルホン酸、ジヒドロキシベンゼンジスルホン酸、ヒドロキシトルエンスルホン酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸およびヒドロキシナフタレンジスルホン酸、ならびにそれらの混合物が挙げられてもよい。
【0060】
ヒドロキシベンゼンスルホン酸の中で、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸もしくは5−スルホサリチル酸、またはそれらの混合物が好ましくは使用されるであろう。
【0061】
使用されるジヒドロキシベンゼンスルホン酸の好ましい例として、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)の、ピロカテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)のおよびレゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)のスルホン化によって生じるスルホン酸が挙げられてもよい。
【0062】
好ましいジヒドロキシベンゼンジスルホン酸は、5,6−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、4,6−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸および2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸である。
【0063】
ヒドロキシ芳香族スルホン酸は、固体もしくは液体形態でまたはその濃度が5重量%〜95重量%、好ましくは50重量%〜70重量%の範囲であってもよい水溶液として入手可能である。
【0064】
本発明の方法の別の変形形態によれば、国際公開第2010/115 784号パンフレットに記載されているような、少なくとも2つの強いプロトン酸の混合物を使用することが可能である。
【0065】
この混合物は、特有のそれぞれのpKa値を有する2つの酸(A)および(B)を含む:酸(B)は酸(A)よりもはるかに強い。
【0066】
前記混合物は、
− 硫酸のpK
a(S)以上のpK
a(S)および4以下のかつ0以上の硫酸に対するΔpK
a(S)の強酸(A)と、
− 超酸から選ばれる別の酸(B)と
を含む。
【0067】
酸(A)は、硫酸のそれ以上のpK
a(S)を有する:(S)は、ニトロベンゼンである、有機溶媒を表す。
【0068】
酸(B)は、硫酸のpKa(S)を下回るpKa(S)を有すると定義される、超酸である。
【0069】
pK
a(S)は、溶媒(S)中の酸/塩基ペアのイオン解離定数であると定義される。
【0070】
酸のpK
aは、ニトロベンゼン(S)である溶媒中で行われる、そしてその測定手順が国際公開第2010/115 784号パンフレットの実施例に以前に記載されている電位差測定法測定結果を参照することにより定義される。
【0071】
前記混合物に使用される酸は、同じ溶媒について、選ばれる酸のpK
aと硫酸のpK
aとの間の差に相当する、pK
a差、ΔpK
aによって規定される。
【0072】
使用される酸(A)は、4以下かつ0以上の硫酸に対するΔpK
a(S)を有する。
【0073】
さらにより優先的には、酸(A)は、3以下かつ0以上の硫酸に対するΔpK
a(S)を有する。
【0074】
とりわけ言及されてもよい酸(A)の例としては、硫酸、脂肪族または芳香族スルホン酸、たとえば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸が挙げられる。
【0075】
酸(A)の別のクラスは、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、スルホン化ヒドロキシ安息香酸;ヒドロキシベンゼンジスルホン酸、ジヒドロキシベンゼンジスルホン酸、ヒドロキシトルエンスルホン酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸およびヒドロキシナフタレンジスルホン酸、ならびにそれらの混合物のものである。
【0076】
上述の酸の中で、好ましい酸は、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)の、ピロカテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)のおよびレゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)のスルホン化によって生じるスルホン酸;5,6−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、4,6−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸および2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸である。
【0077】
とりわけ言及されてもよい酸の他の例としては、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などのパーハロ酢酸が挙げられる。
【0078】
酸の混合物の第2成分(B)に関しては、それは超酸、すなわち、硫酸のそれよりも低いpK
a(S)の、したがって負のΔpK
aを有する酸である。
【0079】
下限は決定的に重要であるわけではないが、一般に、ニトロベンセンにおけるΔpK
aは−12以上である。
【0080】
優先的に選ばれる超酸は、−0.1以下、好ましくは−8以上のΔpK
aを有する。
【0081】
言及されてもよい超酸(B)の例としては、過塩素酸、フルオロスルホン酸またはクロロスルホン酸などのハロスルホン酸;パーハロアルカンスルホン酸、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。
【0082】
また言及されてもよい超酸(B)としては、とりわけ、トリフルオロメタンスルフィン酸;ビス−トリフルオロメタンスルホンイミドが挙げられる。
【0083】
酸(A)および(B)の優先的に選ばれるペアとして、過塩素酸および硫酸;過塩素酸および4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸;トリフルオロメタンスルホン酸および4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸;ビス−トリフルオロメタンスルホンイミドおよび4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸が挙げられてもよい。
【0084】
様々な酸の混合物中の割合は幅広く変わってもよい。
【0085】
したがって、
− 60モル%〜95モル%、好ましくは80モル%〜95モル%の酸(A)、
− 5モル%〜40モル%、好ましくは5モル%〜20モル%の酸(B)
を含む混合物が使用されてもよい。
【0086】
酸の各百分率は、考慮中の酸のモル数と2つの酸(A)および(B)の合計のモル数との間の比(百分率として表される)を表す。
【0087】
混合物に使用される酸は、固体もしくは液体形態でまたはその濃度が5重量%〜95重量%、好ましくは50重量%〜70重量%の範囲であってもよい水溶液として商業的に入手可能である。
【0088】
強いプロトン酸または酸の混合物は、プロトンの当量数対フェノール性基質のモル数の比で表される、有利には0.002%〜0.15%の範囲である量で本発明の方法に使用される。したがって、前記モル比は優先的には0.01%〜0.07%で選ばれる。
【0089】
本発明の方法の別の変形形態によれば、フェノール性基質のヒドロキシル化は、ケトン化合物、より具体的には式(II):
R
a−CO−X−R
b (II)
[前記式(II)中:
− 同一であっても異なってもよい、R
aおよびR
bは、反応条件下に安定である1つ以上のハロゲン原子もしくは官能基で任意選択的に置換された、1〜30個の炭素原子を含有する炭化水素ベースの基を表すかまたは二価基を一緒に形成し、
− Xは、原子価結合、−CO−基、−CHOH基または基−(R)
n−(Rは、1〜4個の炭素原子を好ましくは含有するアルキレン基を表し、nは1〜16から選ばれる整数である)を表す]
に相当するものである、共触媒の存在下で行われる。
【0090】
式(II)において、R
aおよびR
bはより具体的には、
− 線状もしくは分岐のアルキル基、
− 線状もしくは分岐のアルケニル基、
− 4〜6個の炭素原子を含むシクロアルキルもしくはシクロアルケニル基、
− 単環式もしくは多環式アリール基;後者の場合には、環は一緒に、オルト−もしくはオルト−およびペリ−縮合システムを形成しているかまたは原子価結合によって一緒に連結されており、
− アリールアルキルもしくはアリールアルケニル基、
− R
aおよびR
bは一緒に、低炭素縮合のアルキル基でまたは4〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル基で任意選択的に置換された、3〜5個の炭素原子を含むアルキレンもしくはアルケニレン基を形成してもよく;アルキレンもしくはアルケニレン基の炭素原子の2〜4個は、1〜4つのヒドロキシルおよび/または低炭素縮合のアルキルおよび/またはアルコキシ基で任意選択的に置換された1つもしくは2つのベンゼン環の部分を場合により形成する
を表す。
【0091】
本発明の以下に続く説明において、用語「低炭素縮合のアルキル基」は、1〜4個の炭素原子を一般に含有する線状もしくは分岐のアルキル基を意味する。
【0092】
上述の炭化水素ベースの基は、1つ以上、好ましくは1〜4つの低炭素縮合のアルキル基またはヒドロキシル基、低炭素縮合のアルコキシ基、アルキル基中に1〜4個の炭素原子を含むヒドロキシカルボニルもしくはアルコキシカルボニル基、ニトリル、スルホン酸もしくはニトロ基などの官能基で、または1つ以上のハロゲン原子、とりわけ塩素および臭素で置換されていてもよい。
【0093】
好ましくは、R
aおよびR
bはより具体的には、
− 1〜10個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐のアルキル基、
− 2〜10個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐のアルケニル基、
− 4〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル基もしくはシクロアルケニル基、
− 1〜4つのアルキルおよび/またはヒドロキシルおよび/またはアルコキシ基で任意選択的に置換されたフェニル基、
− 1(または2)〜10個の炭素原子を脂肪族部分に含む、およびさらにより具体的には1(または2)〜5個の炭素原子を脂肪族部分に含むフェニルアルキルもしくはフェニルアルケニル基、
− R
aおよびR
bは一緒に、1〜4つの低炭素縮合のアルキル基で任意選択的に置換された、3〜5個の炭素原子を含むアルキレンもしくはアルケニレン基を形成してもよい
を表す。
【0094】
このように、式中R
aおよびR
bが1〜8個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐のアルキル基を表す式(II)に相当するジアルキルケトン型のケトン化合物が最も特に使用される。
【0095】
式(II)に相当するケトン化合物すべての中で、優先的に選ばれるものは、式中R
aおよびR
bが任意選択的に置換されたフェニル基を表す式(II)に相当するものである。
【0096】
前記ケトン化合物は、下式(IIa):
【化4】
(前記式(IIa)中:
− 同一であっても異なってもよい、R
cおよびR
dは、水素原子または置換基、好ましくは電子供与性基を表し、
− 同一であっても異なってもよい、n
1およびn
2は、0、1、2または3に等しい数を表し、
− 任意選択的に、−CO基を有する2つの炭素原子のαに位置する2つの炭素原子は原子価結合によってまたは−CH
2−基によって一緒に連結されることによってケトン環を形成してもよく、それは飽和であってもよいが、不飽和であってもよい)
で表されてもよい。
【0097】
置換基は、それが本発明の酸性条件下に反応しないように選ばれる。それは、優先的には電子供与性基である。
【0098】
用語「電子供与性基」は、Jerry March−Advanced Organic Chemistry,第9章,243および244頁(1985年)による本においてH.C.Brownによって定義されているような基を意味する。
【0099】
本発明での使用に好適である置換基の例は、次の通りである:
− 1〜4個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐のアルキル基、
− フェニル基
− 1〜4個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐のアルキル鎖を含むアルコキシ基またはフェノキシ基、
− ヒドロキシル基、
− フッ素原子。
【0100】
本発明での使用に特に好適であるケトン化合物の例としては、式中、同一であっても異なってもよい、R
cおよびR
dが、好ましくは4,4’位での、水素原子または先に述べられたような置換基を表し、同一であっても異なってもよい、n
1およびn
2が0または1に等しい一般式(IIa)に相当するケトン化合物が最も特に挙げられてもよい。
【0101】
式中、同一であっても異なってもよい、R
cおよびR
dが、好ましくは3,3’または4,4’位での、水素原子;メチル、エチル、第三ブチルまたはフェニル基;メトキシまたはエトキシ基;ヒドロキシル基を表す式(IIa)に相当するケトン化合物が優先的に使用される。
【0102】
本発明の方法に使用されてもよいケトンの具体的な例として、
− ベンゾフェノン
− 2−メチルベンゾフェノン
− 2,4−ジメチルベンゾフェノン
− 4,4’−ジメチルベンゾフェノン
− 2,2’−ジメチルベンゾフェノン
− 4,4’−ジメトキシベンゾフェノン
− 4−ヒドロキシベンゾフェノン
− 4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン
− 4−ベンゾイルビフェニル
がより特に挙げられてもよい。
【0103】
ケトン化合物のモル数とフェノール化合物のモル数との間の比で表される、使用されるケトン化合物の量は、0.01%〜20%、好ましくは0.1%〜2%の範囲であってもよい。
【0104】
本発明の方法に従って、フェノールまたはフェノールエーテルは、強いプロトン酸のおよび任意選択的にケトンの存在下で、過酸化水素と反応させられる。
【0105】
本発明に従って使用される過酸化水素は、水溶液または有機溶液の形態にあってもよい。
【0106】
水溶液がより容易に商業的に入手可能であるので、それらが好ましくは使用される。
【0107】
水性過酸化水素溶液の濃度は、それ自体決定的に重要であるわけではないが、できるだけ少ない水を反応媒体へ導入するように選ばれる。少なくとも20重量%、好ましくは20重量%〜90重量%のH
2O
2濃度の水性過酸化水素溶液が一般に使用される。
【0108】
30%〜90%、好ましくは30%〜70%、より好ましくは40%〜70%、さらにより好ましくは45%〜70%の範囲のH
2O
2の重量濃度の水性過酸化水素溶液が有利には選ばれる。
【0109】
過酸化水素の量は、式(I)の基質の1モル当たり0.5モル以下のH
2O
2の範囲であってもよい。
【0110】
しかし、工業的に許容される収率を得るために、0.01〜0.3、好ましくは0.03〜0.10の過酸化水素/フェノール性基質モル比を使用することが好ましい。フェノール性基質はまた、他の溶剤、たとえば水の使用を回避するために溶媒として有利には働く。
【0111】
水の量は反応速度に影響を及ぼすので、その存在を最小限にすることが好ましい:水は、とりわけ使用される試薬によって反応媒体へ導入され得る。
【0112】
20重量%未満、好ましくは10重量%未満の媒体の初期含水率が優先的に選ばれるべきである。
【0113】
示された重量含水率は、式(I)の基質/過酸化水素/水の混合物に対して表される。
【0114】
この初期水は、試薬とともに、とりわけ過酸化水素とともに導入される水に相当する。
【0115】
本発明の方法の一変形形態は、媒体中に存在する金属イオンを、それらが、ヒドロキシル化生成物の収率が低いフェノールの場合にとりわけ、本発明の方法の的確な手順に有害であるので、錯化するための試剤を加えることを含む。その結果として、金属イオンの作用を抑制することが好ましい。
【0116】
ヒドロキシル化の手順に有害である金属イオンは、遷移金属イオン、より具体的には鉄、ニッケル、銅、クロム、コバルト、マンガンおよびバナジウムイオンである。
【0117】
金属イオンは、試薬、とりわけ出発基質および使用される装置によって導入される。これらの金属イオンの作用を抑制するためには、過酸化水素に関して安定であり、かつ、存在する強酸で分解することができない、そしてそれにおいて金属がもはやいかなる化学的活性も発揮することができない錯体を与える1つ以上の錯化剤の存在下で反応を行えば十分である。
【0118】
錯化剤の非限定的な例として、様々なリン酸、たとえばオルトリン酸、メタ−リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸;(1−ヒドロキシエチリデン)ジホスホン酸、ホスホン酸、エチルホスホン酸またはフェニルホスホン酸などのホスホン酸がとりわけ使用されてもよい。
【0119】
上述の酸のエステルもまた使用されてもよく、より具体的にはモノアルキルもしくはジアルキル、モノシクロアルキルもしくはジシクロアルキル、またはモノアルキルアリールもしくはジアルキルアリールオルトホスフェート、たとえば、エチルもしくはジエチルホスフェート、ヘキシルホスフェート、シクロヘキシルホスフェートまたはベンジルホスフェートが挙げられてもよい。
【0120】
錯化剤の量は、反応媒体の金属イオン含有率に依存する。
【0121】
明らかに上限はなく、存在する錯化剤の量は、金属イオンと錯体を形成するのに必要なものと比べて大過剰であってもよい。一般に、反応媒体の0.01重量%〜2重量%、好ましくは0.01重量%〜0.3重量%を表す量が使用に好適である。
【0122】
本発明の方法に従って、試薬の混合およびヒドロキシル化反応は、連続的に行われる。
【0123】
本発明の方法の第1工程によれば、フェノール性基質および過酸化水素溶液は接触させられる:酸触媒が混合工程へおよび/またはヒドロキシル化反応の開始時に導入される。
【0124】
本発明の方法の第1変形形態によれば、錯化剤が過酸化水素を安定化させるために加えられる。
【0125】
本発明の方法の別の変形形態によれば、共触媒も使用される。
【0126】
実用上の観点から、試薬を組み入れるための好ましい方法は、任意選択的に錯化剤を補完されたフェノール化合物、任意選択的に酸触媒のすべてまたは一部および過酸化水素溶液を別々に導入することを含む。共触媒もまた別々に導入される。
【0127】
混合操作は、出発フェノールまたはフェノールエーテルが液体のままであるのに十分である温度で行われる。前記温度は、フェノール性基質の融点の関数として選ばれる。たとえば、フェノールに関しては、混合操作は、一般に41℃またはさらには42℃よりも高い温度で行われる。
【0128】
混合操作は、この工程中に反応が開始しないかまたは非常に少しだけ開始するように行われる。
【0129】
したがって、過酸化水素の転化度は25モル%未満、好ましくは0.5モル%〜25モル%、さらにより優先的には0.5モル%〜15モル%であることが望ましい。
【0130】
これを行うために、この混合操作の温度は有利には85℃以下、好ましくは45℃〜60℃であるように選ばれる。
【0131】
混合操作中の温度は、触媒がこの混合工程中に導入されるかヒドロキシル化の開始時に導入されるかに依存して異なって選ばれる。
【0132】
具体的には、触媒が混合中に、全体的にかまたは部分的に、導入されるときには、過酸化水素の転化度を最小限にするために、優先的には45℃〜60℃の規定された範囲にあるより低い温度を選ぶことが望ましい。
【0133】
触媒がヒドロキシル化反応の開始時に全体的に導入される場合には、混合操作は、85℃以下であってもよい、より高い温度で行われてもよい。
【0134】
混合は大気圧で行われてもよいが、より高い圧力もまた想定されてもよい。たとえば、1〜200バール(絶対圧)の圧力が使用に好適であり得る。
【0135】
この工程は、不活性雰囲気下で、たとえば窒素下またはアルゴン下で行われてもよく、窒素が、そのコストの削減のためにとりわけ好ましい。
【0136】
混合デバイスでの反応媒体の滞留時間および温度は、前記デバイスでの過酸化水素の選ばれた転化度にとって適切でなければならない。
【0137】
試薬のこの混合後に、ヒドロキシル化反応が行われる。
【0138】
この反応中に、反応媒体は優先的には、液相を含む一相システムであるが、本発明は気−液二相システムを排除しないことが指摘されるべきである。
【0139】
本発明の方法の一特性によれば、ヒドロキシル化反応は、断熱条件下に行われる。
【0140】
反応によって放出される熱は、いかなる外部温度調整も行うことが必要ではなく、反応を進行させるのにそれだけで十分である。
【0141】
このように、反応は、それが断熱条件下に行われるように、外部から断熱されているという特徴を有する反応器で行われる。反応の発熱性を考えると、温度は、反応器中で必然的に上昇する。
【0142】
それは、たとえば、炭素繊維またはガラス繊維で任意選択的に充填されている、様々なPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ポリマーなどの断熱材でできた反応器であってもよい。ビトリファイドスチールまたはガラス反応器もまた使用に好適であり得る。
【0143】
反応器を絶縁するための別の手段は、とりわけ金属骨組の反応器の場合には、外部とのいかなる熱交換も回避するように、それを断熱材で包むことである。
【0144】
断熱材包みは、ガラスウール、ロックウールもしくは絶縁性合成フォーム、とりわけポリウレタンフォームなどの断熱材に反応器を包むことによって行われてもよく、この断熱材は、たとえば普通鋼またはステンレススチールでできた、金属コーティングで任意選択的にカバーされる。
【0145】
反応は大気圧で行われてもよいが、より高い圧力も先に述べられたように想定されてもよい。
【0146】
この工程を不活性雰囲気下で、好ましくは窒素雰囲気下で行うこともまた可能である。
【0147】
反応の終わりに、ヒドロキシル化生成物は、通常の方法によって、とりわけ蒸留および/または液/液抽出によって未転化基質および、適切な場合には、触媒および共触媒から分離され、反応域に搬送されてもよいか、それを出発基質として使用する工程に直接関与させられてもよいかのどちらかである。
【0148】
本発明の実施形態の変形形態に従って、試薬の混合およびヒドロキシル化反応は同時に行われる。
【0149】
これを行うために、少なくともフェノール化合物は、反応を断熱条件下に行う前に、70℃よりも上、好ましくは70℃〜85℃の温度に予熱される。
【0150】
フェノール化合物および過酸化水素溶液は、別々に使用されてもよい。
【0151】
酸触媒は、反応の開始時に、全体でかまたは部分的に、別々に導入されてもよい。
【0152】
試薬、フェノール性基質および過酸化水素溶液のプレミックスを調製することもまた可能である:触媒は次に別々に導入される。
【0153】
錯化剤が存在する場合には、この試剤は、たとえば、フェノール性基質へ導入されてもよい。
【0154】
この変形形態では、少なくともフェノール化合物は予熱されるが、過酸化水素溶液および酸触媒などの他の試薬を予熱することもまた任意選択的に可能である。
【0155】
反応は、断熱条件下に上記の通り行われる。
【0156】
本発明の好ましい実施形態によれば、試薬は、攪拌機および加熱手段を備えた混合デバイスで混ぜ合わせられ、ヒドロキシル化が次に、ピストンフロー反応器で断熱条件下に行われる。
【0157】
本発明の別の実施形態によれば、試薬の混合の工程およびヒドロキシル化工程は、ピストンフロー反応器で断熱条件下に行われる。この場合には、流体(少なくともフェノール性基質)は、反応を開始するために予熱されなければならない。
【0158】
本発明の別の実施形態によれば、本方法の第2工程、すなわち、ヒドロキシル化は、断熱条件下に維持された、そして熱交換器によって分離された一連の少なくとも2つのピストンフロー反応器で行われる。
【0159】
具体的には、重質生成物の形成をもたらすいかなる過剰酸化を制限するために、ヒドロキシル化を幾つかの段階で行うことが有用であり得、したがって幾つかのステップが想定されてもよい。
【0160】
このように、ヒドロキシル化反応は、断熱モードで開始され、得られた反応混合物は、その温度を5℃〜90℃だけ、好ましくは10℃〜40℃だけ低くするために熱交換器を通過させることによる冷却にかけられる。
【0161】
ヒドロキシル化は、前記混合物を第2断熱反応器に搬送することによって第2セクションで続行される、などである。
【0162】
最後に、本発明の別の実施形態によれば、試薬は、攪拌機および加熱手段を備えた混合デバイスで混ぜ合わせられ、ヒドロキシル化第2工程が、平行に取り付けられた一系列のピストンフロー反応器で行われる。
【0163】
有利には、少なくとも1つのピストンフロー反応器が本発明の方法を実施するために用いられる。
【0164】
用語「ピストンフロー」は、フローに垂直の平面で、流体流れがすべて一様な速度で進む一方向フローを定義する。そのようなフローでは、半径方向混合は完璧であるが、軸方向混合はまったくない。実際には、これらの状態は、フローが乱流であるときに満たされていると考えられる。
【0165】
レイノルズ(Reynolds)数が5000以上であるときに、優先的にはそれが10 000よりも大きいときにフローは乱流であると推定される。フローが乱流ではないとき、半径方向混合は完璧ではなく、軸方向逆混合があり得る。この場合には、約5000未満の、より具体的には2000未満のレイノルズ数については、管型反応器またはカラム反応器は、バッフルを詰め込まれるおよび/または構造化される。
【0166】
レイノルズ数の定義は、
【数1】
(式中:
− ρは、kg/m
3単位での流体の単位容積当たりの質量であり;
− vは、m/秒単位での流量であり;
− dは、m単位での反応器の直径であり;
− μは、Pa.s単位での動的粘度である)
であることが思い出される。
【0167】
一般に、Reは1〜1 000 000である。
【0168】
好ましい実施形態によれば、その中でヒドロキシル化反応が行われるピストンフロー反応器は、管型反応器またはカラム反応器である。
【0169】
本発明の以下に続く説明において、用語「管型反応器」は、管の形態の反応器を意味し、用語「カラム反応器」は、円形断面の垂直反応器を意味する。
【0170】
本発明は、純粋に例として示され、そして添付図面1〜7に関して行われる、以下に続く説明を読むとより明らかに理解されるであろう。
【0171】
本発明の第1の実際の実施形態は、
図1の形で添付図面によって例示される。
【0172】
図1は、本発明を実施するために好適かつ2つのアセンブリを含む装置の概略図である。
【0173】
第1アセンブリは、試薬を導入するための手段を備えた外套付き攪拌反応器(1)を含む。
【0174】
第2アセンブリは、ピストンフロー反応器(2)を含む。
【0175】
攪拌反応器(1)の出口で、反応混合物が得られ、それはピストンフロー反応器(2)へ導入される。
【0176】
図2は、
図1におけるように、2つのアセンブリを含むが、外套付き攪拌反応器が、(30)で入りそして(31)で出る、外套中を循環する熱交換流体によって加熱される外套付き静的ミキサー(13)で置き換えられているという点においてのみ異なる装置の概略図である。
【0177】
本発明の別の実施形態は、
図3の形で添付図面によって示される。
【0178】
この設備は、試薬を導入するための手段を備えたピストンフロー反応器(2)を含む。
【0179】
熱交換器の通過によって任意選択的に予熱される、試薬がピストンフロー反応器(2)へ導入される。
【0180】
図4は、反応温度が段階的であるように機械設備が配置構成されている、本発明の方法の変形を行うために好適な装置の概略図である。
【0181】
用いられる装置は、幾つかのアセンブリからなる。
【0182】
第1アセンブリは、試薬を導入するためのおよび混合するための手段を備えた反応器(1)を含む。
【0183】
第2アセンブリは、熱交換器によって分離された少なくとも2つのピストンフロー反応器(2)および(14)を含む。
【0184】
攪拌反応器(1)を出ると反応混合物が得られ、それはピストンフロー断熱反応器(2)へ導入され、次に、その中でそれが熱交換流体(15)によって冷却される、熱交換器を通過し、その後ピストンフロー反応器(14)へ導入される。
【0185】
反応器を出ると(19)、ヒドロキシル化生成物が得られる。
【0186】
好ましい実施形態によれば、ヒドロキシル化反応が行われる反応器は、管型反応器またはカラム反応器である。
【0187】
図5は、
図1におけるように、2つのアセンブリを含むが、ピストンフロー反応器が平行に取り付けられた一系列のピストンフロー反応器で置き換えられているという点においてのみ異なる装置の概略図である。
【0188】
図6および7は、本発明の方法に用いられてもよいピストンフロー反応器のタイプを例示する。
【0189】
図6は、同心管から形成された管型反応器の略図である。
【0190】
図7は、カラム形態の反応器の略図である。
【0191】
本発明の方法の工程を概略的に示すが、本発明の範囲をそれに限定しない、本発明の方法のより詳細な説明は、
図1〜7に関して示される。
【0192】
本発明の様々な実施形態によれば、混合およびヒドロキシル化工程は、次の通り行われてもよい:
− 連続的に、すなわち、加熱手段を備えた第1容器で調製された反応混合物が、次にピストンフロー反応器へ通るか、または
− 同時に、すなわち、試薬が混ぜ合わせられ、そして直ちに、ピストンフロー反応器への導入によってヒドロキシル化工程にかけられる:試薬の1つ以上が、前記反応器へ導入される前に熱交換器を通過することによって予熱される。
【0193】
図1および2は、試薬の混合物が、ピストンフロー反応器へ導入される前に混合デバイスで調製される本発明の方法を例示する。
【0194】
試薬の混合物は、この混合デバイスで攪拌され、そして加熱されてもよい。
【0195】
図に示される外套付き攪拌反応器(1)および外套付き静的ミキサー(13)が混合デバイスの例であるが、以下に述べられるような、他のタイプが用いられてもよい。
【0196】
第1クラスの混合デバイスは機械攪拌反応器に関係する。この反応器は一般に、平坦なまたは楕円形の基部を持った垂直円筒形態のものである。
【0197】
この反応器は、試薬を導入するための手段、加熱手段、攪拌システム、および、ボトムまたはトップに、反応混合物を抜き出すためのシステムを備えている。反応器はまた、温度および圧力を測定するためのデバイスを備えている。
【0198】
混合は、物質移動および伝熱の観点から良好な性能品質を有する反応器で行われる。
【0199】
図1に示されていない、攪拌システムは、回転攪拌機であってもよい。
【0200】
言及されてもよい攪拌機の例としては、とりわけ、真っ直ぐのもしくは傾斜した櫂または海洋羽根車もしくは任意の可動性「水中翼」付きのタービンが挙げられる。
【0201】
第2クラスの混合デバイスは外部ループに関係する。反応媒体の混合はそのとき、外部ループ上のポンプを用いて、機械攪拌されるかもしくはされない、反応器の内容物のフラクションもしくはすべてのループでの循環によって行われる。
【0202】
図2で例示される第3クラスの混合デバイスは、一方で、動的ミキサーとして知られる、回転部品なしのミキサーと、他方で、静的ミキサーとを組み合わせるものである。
【0203】
動的ミキサーの系統では、接線ジェットミキサー、衝撃ジェットミキサー、またはエジェクターが挙げられてもよい。
【0204】
「静的」ミキサーについては、静的ミキサー(Sulzer SMX、Kenicsなど)、ビーズもしくは粒子、金属フォームもしくはセラミックフォームのバルク・ベッドなどの、様々なインテリアがリストアップされてもよい。
【0205】
すべてのこれらのミキサーは、サブ流れへ分割することによってかまたは小規模構造を生み出すことによって、供給される流体の流れに互いに物質を交換するように強いる。これらの構造は、試薬のフロー間の接触面を増加させる。
【0206】
伝熱のための交換面は、反応器内部に存在するコイルもしくはプレートを用いてかまたは外套中を循環する熱交換流体によって増加させ得る。
【0207】
言及されてもよい熱交換流体としては、とりわけ、水、水蒸気または好適な有機溶媒、たとえば、ジフェニルエーテルおよび/またはベンジルエーテルなどの芳香族エーテル、シリコーンオイル、パラフィンおよび/またはナフテン系オイル、石油蒸留残留物などが挙げられる。
【0208】
実用上の観点から、フェノール性基質(3)および過酸化水素溶液(4)は、
図1による外套付き攪拌反応器(1)へまたは
図2による静的キサー(13)へ導入される。
【0209】
錯化剤が存在する場合には、この試剤は、たとえば、フェノール性基質へ導入されてもよい。
【0210】
共触媒供給デバイスも想定されてもよい。
【0211】
触媒は、(5)でまたは任意選択的にピストンフロー反応器のトップ(6)で導入される。
【0212】
触媒はまた、(5)および(6)で導入されてもよい。
【0213】
様々な試薬は徐々に、好ましくは連続的に導入され、それらの導入の速度は、ポンプを用いて調整される。
【0214】
試薬の混合物が先に述べられたように得られ、
図1は、
図1に例示されるような再循環ループを確立することによる混合物の生成を例示する。
【0215】
反応混合物の一部は(7)で反応器のボトムで抜き出され、次に(8)で反応器へ導入される:混合物の強制循環は、図面に示されていない、ポンプによって確実にされる。
【0216】
図2によれば、試薬は、最適な構造の静的ミキサーを用いて混ぜ合わせられる。
【0217】
加熱は、熱交換流体を外套中に循環させることによって確実に行われる。
【0218】
先に述べられたように、混合は、反応が最小限にされるような条件下に行われる。
【0219】
したがって、この混合操作の温度は有利には85℃以下、好ましくは45℃〜60℃であるように選ばれる。
【0220】
反応は有利には大気圧で行われるが、より高い圧力も想定されてもよい。たとえば、1〜200バール(絶対圧)の圧力が使用に好適であり得る。
【0221】
この工程は有利には不活性雰囲気下で、たとえば、窒素下もしくはアルゴン下で行われてもよいが、窒素が、そのコストの削減のためにとりわけ好ましい。
【0222】
混合デバイスでの反応媒体の滞留時間および温度は、前記デバイスでの過酸化水素の選ばれた転化度にとって適切でなければならない。
【0223】
反応混合物は次に、重力流によってかまたは、たとえば、ポンプ、通常遠心ポンプを用いる、強制循環によって、
図1による反応器(1)から反応器(2)へまたは
図2によるミキサー(13)から反応器(2)へ通る。
【0224】
本発明の方法に従って、ヒドロキシル化反応に関連した第2工程は、ピストンフロー反応器(2)で行われる。
【0225】
この反応器は、(10)で入る反応混合物がそれを通って循環する管(9)と(11)で出る反応生成物とからなる。
【0226】
反応器は断熱材で包まれているという特徴を有する。それは断熱材コート(12)で取り囲まれている。
【0227】
通常、反応器は、3よりも大きい長さ/直径比を有するであろう。それはとりわけ、4〜30、特に5〜10の長さ/直径比の管型反応器であってもよい。
【0228】
有利には、管型反応器は、低バルクを有するように形成され、たとえばそれが押し返されるときに、ピストン性を増加させることが可能となる。
【0229】
反応器の材料は特に制限されない。それは、腐食を回避するという利点および反応媒体に反応熱を保存するという利点を両方とも有する、断熱材料で包まれてかまたはポリマーでできて、反応条件下に不活性であるように選ばれるであろう。
【0230】
管型反応器は一般に水平に配置される。
【0231】
しかし、スペースの制約に適応するために、垂直にまたは傾斜して配置された反応器を提供することもまた想定されてもよい。
【0232】
有利には、1つ以上の孔あきプレートが、反応器のこのセクションで流体の良好な均一性を確実にするために試薬入口の近くに配置される。
【0233】
有利には、管型反応器はカラム形態にある。それは、試薬入口および反応混合物出口パイプを備えている。
【0234】
試薬は、標準手段、たとえばポンプ、より具体的には遠心ポンプまたは容積ポンプによって反応器(1)へ供給される。
【0235】
原則として、液相のみで作業することが好ましい。
【0236】
管型反応器はバッフルを備えていてもよい。
【0237】
反応器中のバッフルの存在は、反応器の全体セクションのあらゆる場所で反応混合物の均一性を確実にする乱流を生み出す。バッフルはこうして、5000未満のレイノルズ数の場合を含めて、ピストンフロー性を維持することを可能にする。
【0238】
バッフルの材料は、それが反応条件下に反応混合物に対して化学的に不活性であるという条件で、重要ではない。一般に、それらは、ガラス、金属、とりわけステンレススチール、カーボン、ポリマーまたはセラミックなどの材料でできている。
【0239】
様々なタイプのバッフルが想定されてもよい。それらはとりわけ、
− 反応器のすべてまたは一部を充填する、中空であるたとえばリング、スツール、ボールもしくはシリンダーの形態の、小さい物体からなる、バルクバッフル
− 構造化バッフル:ピン、静的ミキサー、シケイン
であってもよい。
【0240】
好ましくは、バッフルは、試薬入口の近くで反応に配置される。
【0241】
垂直に配置された反応器の場合には、バッフルは好ましくは、反応器の全体トップに沿って配置される。バッフルを適所に保持するために、たとえば横桁の形態での、好適な支持体を提供することがしたがって必要である。
【0242】
正確な角度で配列され、そして複雑なやり方で配置された案内羽根を含む混合要素からなる、静的ミキサー型のパッキングが特に好ましい。この種のパッキングは、たとえば、名称SMVおよびSMXで会社Sulzerによって販売されている。
【0243】
これらのバッフルの説明については、Chemical Engineering,2003年5月に発表された論文Don’t Be Baffled By Static Mixersに言及してもよい。
【0244】
実用上の観点から、レイノルズ数が2000よりも大きいときに、優先的にはそれが5000よりも大きいときに、それ自体上に折り返された、そして水平にもしくは垂直に配置された、バッフルなしの線状管が選ばれる。
【0245】
レイノルズ数が5000未満であるときには、バッフルなしの反応器は、それを構造化することによって、用いられてもよい。たとえば、管型反応器を螺旋または一連の曲がり/直線の形態でそれ自体上に折り返すことが可能であり;この構造は任意選択的に、バッフルを部分的に備えていてもよい。管の各曲がりの後に、2つの引き続く曲がりの間に置かれた管の直線長さのすべてまたは一部にわたって、同等の長さ、たとえば、管の直径の3〜6倍の長さのバッフルのセクションが挿入される。
【0246】
本方法のこの工程においては、温度は、条件が断熱的であるので制御されない。
【0247】
反応の発熱性を考えると、ピストンフロー反応器の入口での反応温度は、70℃よりも上、好ましくは70℃〜85℃であることが参考のために指摘される。
【0248】
反応は有利には大気圧で行われるが、より高い圧力が先の通り想定されてもよい。
【0249】
特に、高温では、そしてこうして反応器出口に向かって、フェノール性基質が部分的に気化することが起こり得る:それは転化されるためにあまり利用できない。圧力下で運転するべく、反応器は、圧力を所望の値に調節するために、実験室規模もしくはパイロット規模の圧力放出弁を備えているか反応器の下流に調整弁を備えているかのどちらかである。
【0250】
この工程は有利には不活性雰囲気下で、好ましくは窒素雰囲気下で行われてもよい。
【0251】
反応の終わりに、反応混合物中に存在するヒドロキシル化生成物は、(11)で回収される。
【0252】
図3は、本発明の方法を実施するための方法を例示し、それによれば様々な試薬の混合はピストンフロー反応器の入口で行われる。
【0253】
フェノール性基質(3)および過酸化水素溶液(4)は、反応器へ別々に導入されてもよい。
【0254】
酸触媒は、反応器の入口(5)でおよび/または、
図3に示されるように反応器の出発点(6)で、さらに内側に別々に導入されてもよい。
【0255】
試薬、フェノール性基質および過酸化水素溶液のプレミックスを調製することもまた可能である:触媒は次に、反応器の入口(5)でおよび/または反応器の出発点(6)でさらに内側に別々に導入されてもよい。
【0256】
錯化剤が存在する場合には、この試剤は、たとえば、フェノール性基質へ導入されてもよい。
【0258】
この実施形態によれば、少なくともフェノール性基質は、反応器(2)へ導入される前に予熱される必要がある。
【0259】
過酸化水素溶液および酸触媒などの他の試薬を予熱することもまた任意選択的に可能である。
【0260】
予熱温度は有利には70℃よりも上、好ましくは70℃〜85℃にあるように選ばれる。
【0261】
試薬の予熱は、熱交換器に通すことによって行われる。
【0262】
試薬であって、そのうち少なくともフェノール性基質が予熱されている試薬は、
図1について説明されたような特徴を有するピストンフロー反応器へ導入される。
【0263】
ヒドロキシル化生成物を含む反応混合物(11)は、反応器(2)の出口で回収される。
【0264】
図4は、本発明の方法を実施するための方法を例示し、それによれば試薬の混合の第1工程は混合デバイス(1)で行われ、ヒドロキシル化工程は次に、反応温度が、断熱条件下に動作する少なくとも2つのピストンフロー反応器で段階的であるように行われる。
【0265】
第1工程については、図(1)によって例示されたものと同一の方法で、フェノール性基質(3)および過酸化水素溶液(4)が混合デバイス(1)へ導入される。
【0266】
錯化剤が存在する場合には、この試剤は、たとえば、フェノール性基質へ導入されてもよい。
【0267】
共触媒供給デバイスも想定されてもよい。
【0268】
触媒は、(5)でまたは任意選択的にピストンフロー反応器のトップ(6)で導入される。
【0269】
混合デバイスの出口での、試薬の混合物(10)は、熱交換器によって分離された、一連の少なくとも2つのピストンフロー反応器へ導入される。
【0270】
この実施形態においては、反応器は常に、断熱的に、しかし異なるサーマルゾーンで機能する。
【0271】
各段階は、ピストンフロー反応器および熱交換器を含む:機械設備はピストンフロー反応器で終了する。
【0272】
段階の数は、たとえば、2〜100、好ましくは2〜10の範囲であってもよい。
【0273】
各段階の温度は、過酸化水素の所望の程度の転化率に応じて決定される。
【0274】
図4は、例示として、熱交換器(15)によって分離された少なくとも2つのピストンフロー反応器(2)および(14)を含むアセンブリを表す。各段階における異なる温度は、その機能が、重質生成物へのその過剰酸化を同時に最小限にしながらフェノール性基質の転化率を最大限にするために、第1反応器の出口での反応混合物を、それが次の反応器に入る前に冷却することである熱交換器の存在によって提供される。
【0275】
各域の温度ステージングおよび滞留時間は、反応性能品質(転化度および収率)にとって適切であるように設定される。
【0276】
この決定は、J.Villermaux(Genie de la reaction chimique;conception et fonctionnement des reacteurs[Chemical reaction engineering:design and functioning of reactors];J.Villermaux;Tec & Doc Lavoisier;1993年)による刊行物かまたはO.Levenspiel(Chemical Reaction Engineering;第2版;Wiley Int;1972年)によるものに従って行われてもよい。
【0277】
本発明による方法での温度のステージングはこうして、反応器間の熱交換器の存在によって行われる。
【0278】
一実施形態を例示する、
図4に関して、反応混合物(10)は、ピストンフロー反応器(2)を通過し、その出口(11)で熱交換器(15)へ(16)において導入される。
【0279】
熱交換器(17)を出る、冷却されたまたは凝縮した反応混合物(17)は、(18)において次のピストンフロー反応器(14)へ導入される。
【0280】
出口での混合物(19)は、ヒドロキシル化生成物を含む。
【0281】
それ故、一連のピストンフロー反応器および熱交換器の追加を想定することが可能である。
【0282】
反応は有利には大気圧で行われるが、1〜200バール(絶対圧)のより高い圧力も先のように想定されてもよい。
【0283】
この工程は有利には不活性雰囲気下で行われてもよい。
【0284】
図5は、本発明の方法を実施するための方法を例示し、それによれば試薬の混合の第1工程は混合デバイス(1)で行われ、ヒドロキシル化工程は次に、平行に取り付けられた、そして断熱条件下で動作する一系列のピストンフロー反応器で行われる。
【0285】
第1工程については、図(1)によって例示されたものと同一の方法で、フェノール性基質(3)および過酸化水素溶液(4)が混合デバイス(1)へ導入される。
【0286】
錯化剤が存在する場合には、この試剤は、たとえば、フェノール性基質へ導入されてもよい。
【0287】
共触媒供給デバイスも想定されてもよい。
【0288】
触媒は、(5)でまたは任意選択的に各ピストンフロー反応器のトップ(6)で導入される。
【0289】
混合デバイスの出口での、試薬の混合物(10)は、
図5に従って3つのフラクションへ分割される:各フラクションは、断熱的に機能するピストンフロー反応器(32)、(33)および(34)へ導入される。
【0290】
この実施形態においては、ピストンフロー反応器の数は、
図5では3つであるが、たとえば、2〜100個の範囲にあってもよい。
【0291】
各反応器の出口で、ヒドロキシル化生成物を含む反応混合物が回収される:反応器を出た3つのフローは、(11)で組み合わせられる。
【0292】
添付の
図6および7は、ピストンフロー反応器として用いられてもよい装置のタイプを例示する。
【0293】
図6は、同心管から形成された管型反応器を示す。
【0294】
このように、反応器は(21)で入る反応混合物がそれを通って循環する管(20)と(22)で出る反応生成物とからなる。
【0295】
管は、断熱材で包まれている(23)。
【0296】
管は、各曲がり(24)の後にパッキングセクションを含有してもよい。
【0297】
図7は、断熱材で包まれている(26)カラム形態の反応器(25)を示す。
【0298】
カラムは、バッフル(27)を備えている。
【0299】
反応混合物は(27)において導入され、生成物は(28)において出る。
【0300】
先に述べられたように、本発明の方法は、装置の生産効率の大幅な増加を得ることを可能にする。
【0301】
本発明の方法は、ピストンフロー反応器でかまたは、試薬の混合が行われる混合デバイスとヒドロキシル化反応が行われるピストンフロー反応器とを順に組み合わせている装置で行われてもよい。
【0302】
フェノール性基質のヒドロキシル化反応をピストンフロー反応器で行う、本発明の方法の利点は、ヒドロキシル化反応がカスケード式攪拌反応器で行われる方法と比較されるときに選択性の増加を提供する。特に、良好な選択性は、後続反応の制限のおかげで得られた。
【0303】
本発明の方法の別の利点は、リサイクルされることになる残存フェノール性基質の量が減少し、こうしてエネルギー消費を下げることを可能にするように、フェノール性基質の転化度が増加し、たとえば5%〜15%、優先的には5%〜10%の範囲にあることである。
【0304】
本発明の実施形態によれば、ピストンフロー反応器に連結された混合デバイスを含む装置において、前記ピストンフロー反応器から分離したデバイスにおけるピストンフロー反応器の上流での試薬の混合は、この方法の安全性を増加させることを可能にし、そしてそのときその濃度が30重量%〜90重量%、好ましくは30%〜70%であってもよいより高濃度の水性過酸化水素溶液を使用することが可能である。
【0305】
さらに、ピストンフロー反応器に連結されたたった1つの混合デバイスしかないという事実は、試薬を導入するための、生成物を取り去るための手段、およびまた試薬を混合するためのおよびプロセスパラメータを制御するためのデバイスをそれぞれ備えた、カスケード式完全攪拌反応器と比較されるときに、低バルクならびにまた運転、エネルギーおよび投資コストの削減という利点を示す。
【0306】
本発明の別の利点は、それが良好な反応収率をもたらすことである。
【実施例】
【0307】
本発明は、本発明を例示するが、それを限定しない例を用いてより詳細に説明される。
【0308】
例において、次の省略形は、次の通りの意味を有する:
過酸化水素の転化度(DC
H2O2)は、転化した過酸化水素のモル数と導入された過酸化水素のモル数との間の比に相当する。
【0309】
フェノールの転化度(DC
フェノール)は、転化したフェノールのモル数と導入されたフェノールのモル数との間の比に相当する。
【0310】
ジフェノール反応収率(RY
ジフェノール)は、形成されたジフェノール(ピロカテコール+ヒドロキノン)のモル数と導入された過酸化水素のモル数との間の比に相当する。
【0311】
ピロカテコール反応収率(RY
ピロカテコール)は、形成されたピロカテコールのモル数と導入された過酸化水素のモル数との間の比に相当する。
【0312】
ヒドロキノン反応収率(RY
ヒドロキノン)は、形成されたヒドロキノンのモル数と導入された過酸化水素のモル数との間の比に相当する。
【0313】
ジフェノール選択率(TY
ジフェノール)は、形成されたジフェノール(ピロカテコール+ヒドロキノン)のモル数と変換された過酸化水素のモル数との間の比に相当する。
【0314】
比PC/HQは、ピロカテコールのモル数とヒドロキノンのモル数との間の比で定義される。
【0315】
例1
本例は、
図1に例示されるようなタイプの装置で行われる。
【0316】
下記を、4傾斜櫂付き型の攪拌システム、上昇冷却器、窒素入口および温度調整システムを備えた、150mLの作業容積の外套付き反応器へ、ポンプを用いて、連続的に50℃で導入する:
− 883g/時(9.38モル/時)の、フェノールに対して400質量ppmの割合でピロリン酸を含有するフェノール、
− フェノールに対して400モルppmの割合で過塩素酸、
− 26.0g/時の70重量%での過酸化水素(すなわち、0.53モル/時の過酸化水素)。
【0317】
この反応器を通る通過時間は10分であり;媒体は50℃に維持される。
【0318】
この反応器の反応媒体は、それが80℃に加熱される交換器へ、そして次に57mL(長さ=200mm;直径=19mm)の全体容積のSulzer SMXミキサーを詰め込んだ管型反応器へポンプを用いて連続的に導入され;この反応器は断熱材で包まれており、10バールの出口圧力で較正されたフラップ弁による圧力下に維持される。交換器での通過時間は約20秒である。
【0319】
安定化時間(約30分)後に、形成されたジフェノールを高速液体クロマトグラフィーによって分析し、過酸化水素を電位差測定法によって分析する。
【0320】
管型反応器の出口で得られた結果を表(I)に示す。
【0321】
例2
下記を、4傾斜櫂付き型の攪拌システム、上昇冷却器、窒素入口および温度調整システムを備えた、150mLの作業容積の外套付き反応器へ、ポンプを用いて、連続的に50℃で導入する:
− 831g/時(8.83モル/時)の、フェノールに対して400質量ppmの割合でピロリン酸を含有するフェノール、
− フェノールに対して400モルppmの割合で過塩素酸、
− 34.3g/時の70重量%での過酸化水素(すなわち、0.706モル/時の過酸化水素)。
【0322】
この反応器を通る通過時間は11分であり;媒体は50℃に維持される。
【0323】
この反応器の反応媒体は、それが80℃に加熱される交換器へ、そして次に57mL(長さ=200mm;直径=19mm)の全体容積のSulzer SMXミキサーを詰め込んだ管型反応器へポンプを用いて連続的に導入され;この反応器は断熱材で包まれており、10バールの出口圧力で較正されたフラップ弁による圧力下に維持される。交換器での通過時間は約20秒である。
【0324】
安定化時間(約30分)後に、形成されたジフェノールを高速液体クロマトグラフィーによって分析し、過酸化水素を電位差測定法によって分析する。
【0325】
管型反応器の出口で得られた結果を表(I)に示す。
【0326】
例3(比較)
下記を、4傾斜櫂付き型の攪拌システム、上昇冷却器、窒素入口および加熱デバイスを備えた、30mLの作業容積の外套付き反応器へ、ポンプを用いて、連続的に50℃で導入する:
− 130g/時の、フェノールに対して400質量ppmの割合でピロリン酸を含有するフェノール、
− フェノールに対して400モルppmの割合で過塩素酸、
− 5.4g/時の70重量%での過酸化水素(すなわち、0.110モル/時の過酸化水素)。
【0327】
この反応器での通過時間は約14分である。
【0328】
この反応器の反応媒体は、57mL(長さ=200mm;直径=19mm)の全体容積のSulzer SMXミキサーを詰め込んだ管型反応器へ、ポンプを用いて、連続的に導入され;その温度は110℃に設定される。この温度は、例2の断熱反応器の温度の平均に相当する。
【0329】
安定化時間(約1.5時間)後に、形成されたジフェノールを高速液体クロマトグラフィーによって分析し、過酸化水素を電位差測定法によって分析する。
【0330】
管型反応器の出口で得られた結果を表(I)に示す。
【0331】
【表1】
【0332】
この表は、等温条件よりもむしろ断熱条件下での作業が反応器での通過時間を大幅に削減することを可能にすることを示す。
【0333】
生産効率はその結果として、選択率のわずかな降下が観察されるが、大きく改善される:同じ反応器について、断熱反応は、ジフェノールの生産を、等温条件下での同じ試験と比べて6倍にすることを可能にする。
【0334】
最後に、断熱反応は、等温反応器と対照的に、いかなる冷却も必要としないという利点を有する。
【0335】
例4
下記を、4傾斜櫂付き型の攪拌システム、上昇冷却器、窒素入口および温度調整システムを備えた、50mLの作業容積の外套付き反応器へ、ポンプを用いて、連続的に50℃で導入する:
− 182g/時(1.94モル/時)の、フェノールに対して400質量ppmの割合でピロリン酸を含有するフェノール、
− フェノールに対して400モルppmの割合で過塩素酸、
− 17.6g/時の30重量%での過酸化水素(すなわち、0.15モル/時の過酸化水素)。
【0336】
この反応器を通る通過時間は15分であり、媒体は50℃に維持される。
【0337】
この反応器の反応媒体は、それが80℃に加熱される交換器へ、そして次に284mL(長さ=1000mm;直径=19mm)の全体容積のSulzer SMXミキサーを詰め込んだ管型反応器へポンプを用いて連続的に導入され;この反応器は断熱材で包まれており、10バールの出口圧力で較正されたフラップ弁による圧力下に維持される。交換器での通過時間は約1分30秒である。
【0338】
安定化時間(約3時間)後に、形成されたジフェノールを高速液体クロマトグラフィーによって分析し、過酸化水素を電位差測定法によって分析する。
【0339】
管型反応器の出口で得られた結果を表(II)に示す。
【0340】
【表2】
【0341】
この表は、30重量%水性過酸化水素溶液の使用が、70重量%水性過酸化水素溶液の使用と比較されるときに、選択率のいかなる有意の変化もなしに反応時間を大きく増加させることを示す。