(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹凸形成部は、前記射出成形品が所定の部位に装着された際に視認可能であり、かつ前記射出成形品の表面に形成された意匠面の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形品。
前記凹凸形成部は、第1の凹凸部と、該第1の凹凸部と比較して前記凹凸の程度が小さい第2の凹凸部と、を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形品。
前記本体部に含まれる前記熱膨張性カプセルの平均粒径は、50μm未満であり、前記高膨張部に含まれる前記熱膨張性カプセルの平均粒径は、50μm以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形品。
前記高膨張部の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線の最大断面高さRtは、30μm以上200μm未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の射出成形品。
前記射出成形品は、車両の内部の所定の部位に取り付け可能であり、前記所定の部位に装着された際に、車内に露出する意匠面を少なくとも一つ備えており、前記意匠面の少なくとも一部に前記凹凸形成部が形成されている車両用内装品であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の射出成形品。
前記加熱工程において、前記遮熱材を取り外した後に、前記射出成形体の表面をさらに加熱することによって、前記遮熱材で予め覆っていた部分に形成された前記凹凸形成部と前記遮熱材で覆っていなかった部分に形成された前記凹凸形成部との前記凹凸の程度を異ならせることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
前記加熱工程において、前記射出成形体の表面を加熱した後、該射出成形体の表面を遮熱材で部分的に覆い、前記遮熱材で覆われずに露出している部分をさらに加熱することによって、前記遮熱材で覆った部分に形成された前記凹凸形成部と前記遮熱材で覆っていない部分に形成された前記凹凸形成部との前記凹凸の程度を異ならせることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている技術では、金型後退工程において組成物の中に混合されている全てのマイクロバルーン膨張剤を熱膨張させている。このため、成形品全体の密度が低下して剛性が低下してしまう。また、金型内に充填された組成物の表面が固化する前に金型を開いたり、組成物の表面に凹凸が発生した後に金型を閉じたりする。このため、成形品の形状は、金型を開閉しやすい形状にする必要がある。これにより、成形品の形状が限定されてしまう。
また、特許文献2に記載されている技術では、硬質層の上に表面層が一体化される。このため、硬質層の成形時に発生する熱や圧力によって表面層が変形したり、硬質層から表面層が剥離したりして成形品の外観不良が発生する虞がある。また、表面層を形成するために未発泡ビーズを分散させた塗料を事前に準備する必要があり、成形品の製造工程が複雑化してしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するべく創出されたものであり、その目的は、成形品の剛性の低下が抑制されると共に、成形品の表面に形成された凹凸によって外観品質に優れる射出成形品とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく創出された本発明の射出成形品は、ポリマー材料と複数の熱膨張性カプセルとが混合された成形材料から射出成形された射出成形品である。
詳しくは、上記射出成形品の表面の少なくとも一部には、
熱膨張後の上記熱膨張性カプセルによって形成された凹凸を有する凹凸形成部が形成されている。上記射出成形品は、上記凹凸形成部の射出成形品の厚さ方向における表面側に形成され上記熱膨張性カプセルが熱膨張している高膨張部と、上記厚さ方向において上記高膨張部に隣接する部分であって上記熱膨張性カプセルが実質的に熱膨張していない本体部と、を有している。上記高膨張部の厚さは、上記凹凸形成部における上記射出成形品の厚さの2分の1以下であり、上記高膨張部のポリマー材料と上記本体部のポリマー材料とは、同じポリマー材料であり、ここで、上記凹凸形成部は、上記射出成形品の表面に部分的に形成されていることを特徴とする。
なお、本明細書において「熱膨張性カプセルが実質的に熱膨張していない」とは、熱膨張性カプセルが熱膨張していない場合と、熱膨張性カプセルがわずかに熱膨張している場合(即ち本体部に含まれる過半数の熱膨張性カプセルの熱膨張前後の粒径増加率が20%以下の場合)と、を含む用語である。
【0007】
かかる構成の本発明の射出成形品では、熱膨張性カプセルが熱膨張している高膨張部と、熱膨張性カプセルが実質的に熱膨張していない本体部とを有しており、射出成形品の表面(高膨張部の表面)には凹凸形成部が
部分的に形成されている
。このため、良好な外観品質を得ることができる
と共に、凹凸形成部を利用して射出成形品の表面に所望の文字や図形等を形成することができるので意匠性に優れる射出成形品を提供することができる。
さらに、高膨張部と本体部とは同一のポリマー材料(典型的には熱可塑性樹脂)で成形されており、本体部とは別体の表面層を形成することなく、本体部と一体となって成形されている高膨張部の表面に凹凸が形成されている。このため、本体部と高膨張部とが剥離することはなく、射出成形品の外観不良が発生するのを防止することができる。
さらにまた、熱膨張性カプセルが熱膨張している高膨張部の厚さは、凹凸形成部における射出成形品の厚さの2分の1以下であり、その他の部分の本体部では熱膨張性カプセルが実質的に熱膨張していない。このため、本体部の熱膨張性カプセルが熱膨張しているときと比べて射出成形品の密度の低下を小さくすることができ、射出成形品の剛性が低下することを抑制することができる。
【0009】
ここで開示される射出成形品の好ましい一態様では、前記凹凸形成部は、前記射出成形品が所定の部位に装着された際に視認可能であり、かつ前記射出成形品の表面に形成された意匠面の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする。
かかる構成によると、視認可能な射出成形品の意匠面において、凹凸形成部を利用して所望の文字や図形等を形成することができるので意匠性に優れる射出成形品を提供することができる。
【0010】
ここで開示される射出成形品の好ましい他の一態様では、上記凹凸形成部は、第1の凹凸部と、該第1の凹凸部と比較して上記凹凸の程度が小さい第2の凹凸部と、を有していることを特徴とする。
かかる構成によると、凹凸の程度の差から生じる色の濃淡(或いは明暗の程度)を利用して射出成形品の表面に所望の文字や図形等を形成することができるので意匠性に優れる射出成形品を提供することができる。
【0011】
ここで開示される射出成形品の好ましい他の一態様では、上記本体部に含まれる上記熱膨張性カプセルの平均粒径は、50μm未満であり、上記高膨張部に含まれる上記熱膨張性カプセルの平均粒径は、50μm以上であることを特徴とする。
かかる構成によると、本体部では熱膨張カプセルが実質的に熱膨張していないため密度の低下は小さい。一方、高膨張部では、熱膨張カプセルが熱膨張しているため高膨張部の表面には凹凸が形成されており、外観品質に優れている。
【0012】
ここで開示される射出成形品の好ましい他の一態様では、上記高膨張部の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線(輪郭曲線)の最大断面高さRtは、30μm以上200μm未満であることを特徴とする。
かかる構成によると、射出成形品の表面に好ましい態様の凹凸が形成されているので、外観品質に優れている。
【0013】
ここで開示される射出成形品の好ましい他の一態様では、上記射出成形品は、車両の内部の所定の部位に取り付け可能であり、上記所定の部位に装着された際に、車内に露出する意匠面を少なくとも一つ備えており、上記意匠面の少なくとも一部に上記凹凸形成部が形成されている車両用内装品であることを特徴とする。
かかる構成によると、意匠面に布目調の外観が付与されて、外観品質に優れる射出成形品を車両用内装品として用いることができる。
【0014】
さらに、上記目的を実現するべく本発明によって、ポリマー材料と複数の熱膨張性カプセルとを含み、上記熱膨張性カプセルの熱膨張によって形成された凹凸を表面に有する射出成形品を製造する方法が提供される。即ち、本発明の射出成形品の製造方法は、上記ポリマー材料と上記熱膨張性カプセルとが混合された成形材料を、所定形状の成形キャビティが形成された射出成形型内に射出して充填する充填工程と、上記充填した成形材料を冷却して固化し、射出成形体を成形する成形工程と、上記冷却固化した射出成形体を上記射出成形型から取り出す取出工程と、上記取り出した射出成形体の表面
を遮熱材で部分的に覆い、上記遮熱材で覆われずに露出している部分を加熱することによって、上記射出成形体の表面から該射出成形体の厚さの2分の1以下の厚さまでの所定の部分に含まれている上記熱膨張性カプセルを熱膨張させる加熱工程と、を含んでいることを特徴とする上記熱膨張性カプセルの熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部が表面の少なくとも一部に形成された射出成形品の製造方法である。
【0015】
かかる構成の本発明の射出成形品の製造方法では、加熱工程において射出成形体の表面
を遮熱材で部分的に覆い、遮熱材で覆われずに露出している部分を加熱することによって、射出成形体の表面側に存在する熱膨張性カプセルを熱膨張させることで、射出成形体の表
面に凹凸形成部を
部分的に形成する。このため、別途表面層を形成するための塗料や材料等を準備する必要がなく、凹凸を表面に有する射出成形品を製造することができる。そして、熱膨張性カプセルが熱膨張していない部分(本体部)では、密度の低下が小さいため、射出成形品の剛性の低下を抑制することができる。
さらに、凹凸形成部が部分的に形成されるため、射出成形体の表面に所望の文字や図形等を形成することができるので意匠性に優れる射出成形品を製造することができる。
また、射出成形体を冷却固化して射出成形型から取り出した後に、該射出成形体の表面に凹凸形成部を直接形成するため、別途表面層を形成した場合に発生し得る不具合、例えば、射出成形時の熱や圧力による表面層の変形及び本体部からの表面層の剥離が発生しない。
さらに、射出成形型内では熱膨張性カプセルを熱膨張させないので、射出成形体を成形する際に熱膨張性カプセルを熱膨張させるための特別な射出成型を用いる必要がなく、汎用の射出成形型を用いることができる。
【0017】
好ましくは、上記加熱工程において、上記遮熱材を取り外した後に、上記射出成形体の表面をさらに加熱することによって、上記遮熱材で予め覆っていた部分に形成された前記凹凸形成部と上記遮熱材で覆っていなかった部分に形成された前記凹凸形成部との前記凹凸の程度を異ならせることを特徴とする。
かかる構成によると、凹凸の程度の差から生じる色の濃淡を利用して射出成形体の表面に所望の文字等を形成することができる。このため、意匠性に優れる射出成形品を製造することができる。
【0018】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記加熱工程において、上記射出成形体の表面を加熱した後、該射出成形体の表面を遮熱材で部分的に覆い、上記遮熱材で覆われずに露出している部分をさらに加熱することによって、上記遮熱材で覆った部分に形成された上記凹凸形成部と上記遮熱材で覆っていない部分に形成された上記凹凸形成部との上記凹凸の程度を異ならせることを特徴とする。
かかる構成によると、凹凸の程度の差から生じる色の濃淡を利用して射出成形体の表面に所望の文字等を形成することができる。このため、意匠性に優れる射出成形品を製造することができる。
【0019】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記加熱工程において、上記射出成形体の加熱は放射熱を用いて行うことを特徴とする。
かかる構成によると、射出成形体の表面を部分的に加熱して熱膨張性カプセルを熱膨張させることができる。このため、射出成形体の全体を加熱する場合と比べて該射出成形体の変形を小さくすることができる。また、加熱する領域を任意に選択できるため部分的に凹凸を形成することができる。
【0020】
好ましくは、上記放射熱は、近赤外線照射装置を用いて発生させることを特徴とする。
かかる構成によると、簡単な設備を用いることで射出成形体の表面の少なくとも一領域を加熱し、熱膨張性カプセルを熱膨張させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0023】
ここで開示される射出成形品は、典型的には、ポリマー材料と熱膨張性カプセル(即ち加熱により膨張する性質を備えたカプセル)とが混合された成形材料から射出成形されたものである。射出成形品には、該射出成形品の表面の少なくとも一部において、熱膨張性カプセルの熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部が形成されている。
【0024】
まず、本発明の一実施形態に係る射出成形品に用いられる材料を説明する。
<1.ポリマー材料>
ここで開示される射出成形品に用いられるポリマー材料は、上記熱膨張性カプセルを分散させるマトリックス(母材となる主要な材料)となるものである。ポリマー材料としては、従来から射出成形品に用いられる材料を特に限定なく使用することができる。例えば、各種の熱可塑性樹脂及びゴムを使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(ABS)等のスチレン系樹脂;塩化ビニル樹脂;等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーを使用することもできる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系、オレフィン系、エステル系、ポリアミド系、塩化ビニル系、ウレタン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。ここで開示される射出成形品では、例えば、ポリマー材料として熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。
【0025】
<2.熱膨張性カプセル>
ここで開示される射出成形品に用いられる熱膨張性カプセルは、典型的には、加熱によって占有体積を増す内包物質(通常は、気体、固体、又は液体であって加熱によって気化(ガス化)するもの)を熱可塑性樹脂製の外殻内に封じ込めた粒子として構成されている。かかる熱膨張性カプセルの外殻を構成する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル系共重合体、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系(共)重合体、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、熱膨張性カプセルに内包される物質(膨張剤)としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタン等の低沸点炭化水素が挙げられる。内包物質は低沸点炭化水素に限定されず、例えば、空気、二酸化炭素の他、窒素、及びアルゴン等の不活性ガス(一部又は全部が液化した状態であり得る。)を内包物質とすることもできる。このような熱膨張性カプセルが加熱されると、該熱膨張性カプセルの外殻を構成する熱可塑性樹脂が軟化し、且つ該外殻の内部に収容された上記内包物質が体積膨張する(即ち、上記内包物質が膨張剤として機能する)ことによって、該熱膨張性カプセルが熱膨張する。更に、外殻の一部又は全体が膨張の限度を超えて引き伸ばされることにより熱膨張性カプセルが破裂することもある。このようなカプセルの膨張や膨張後のカプセルの破裂によって装飾部の表面に微細な凹凸が形成される。
【0026】
ここで開示される熱膨張性カプセルの熱膨張前の形状は特に限定されない。例えば、略球形状、紡錘形状、不定形状、円筒状等の各種形態を取り得る。熱膨張性カプセルの分散性及び熱膨張後の装飾的効果の点から、熱膨張性カプセルは略球形状であることが好ましい。熱膨張前の熱膨張性カプセルの平均粒径は、凡そ15μm以上40μm以下である。また、熱膨張後の熱膨張性カプセルの平均粒径は、凡そ50μm以上である。
【0027】
なお、上記平均粒径とは、熱膨張性カプセルの粒径の平均値である。かかる平均粒径は、光学顕微鏡や電子顕微鏡(例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡)を用いた観察によって容易に測定することができる。例えば、後述する射出成形品の高膨張部の断面と本体部の断面とから予め定められた数(例えば40個程度)の熱膨張性カプセルを無作為にそれぞれ抽出し、上記光学顕微鏡等を用いた観察によって該抽出した各熱膨張性カプセルの最長の直径を粒径として測定する。そして、高膨張部から測定された各熱膨張性カプセルの粒径の平均値を高膨張部に含まれる熱膨張性カプセルの平均粒径(熱膨張後の平均粒径)とする。また、本体部から測定された熱膨張性カプセルの粒径の平均値を本体部に含まれる熱膨張性カプセルの平均粒径とする。
【0028】
好ましく用いられる熱膨張性カプセルの市販品(マスターバッチ化された状態で市販されているものを含む。)としては、積水化学工業株式会社製の商品名「アドバンセル(ADVANCELL)(登録商標)」、Akzo Nobel社製の商品名「エクスパンセル(EXPANCEL)マイクロスフィア(商標)」、松本油脂製薬株式会社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー(登録商標)」、及び大日精化工業株式会社製の商品名「ダイフォーム(登録商標)」等が挙げられる。
【0029】
成形材料には、上記ポリマー材料及び熱膨張性カプセルの他に必要に応じて種々の副成分を含有させることができる。そのような副成分の一例として、粉状及び/又は繊維状の固形充填材が挙げられる。かかる固形充填材の例としては、セラミック粉(タルク等の種々の無機化合物粉を包含する。以下同じ。)、カーボン粉(例えばカーボンブラック)、木粉、セラミックファイバー、カーボンファイバー等が挙げられる。充填材を使用する場合における使用量(含有量)は、用いる充填材の種類及び射出成形品の用途に応じて異なり得る。典型的には、成形材料全体の概ね1質量%〜60質量%となる割合で充填材を混練することが好ましい。或いは、充填材を実質的に含有しない組成の成形材料であってもよい。該成形材料には、任意成分としての上記固形充填材の他に、必要に応じて種々の補助成分(添加剤)を含有させることができる。かかる補助成分としては、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料)、難燃剤、分散剤、抗菌剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0030】
以下、図面を参照しつつ本発明の射出成形品の好適な実施形態(第1実施形態)を詳細に説明する。
図1は、自動車(車両)の内部の所定の部位に取り付け可能な車両用内装品である射出成形品10の外形を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中のII‐II線に沿う断面図であって、射出成形品10の断面図である。
図3は、
図2中のIII‐III線に沿う断面図であって、凹凸形成部20における射出成形品10の厚さ方向に形成された高膨張部30と本体部40とを示す断面図である。
【0031】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る射出成形品10は、一つの底面が開口した箱型状に成形されている。射出成形品10の表面の少なくとも一部において、熱膨張性カプセル50(
図3参照)の熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部20が形成されている。射出成形品10は、射出成形品10の開口部18を塞ぐようにして自動車の内部の所定の部位に装着される(以下、自動車に装着されるとする)。射出成形品10は、自動車に装着された際に、車内に露出する意匠面15を少なくとも一つ備えている。本実施形態に係る射出成形品10は意匠面15を一つ備えている。凹凸形成部20は、意匠面15の全体に亘って形成されている。
【0032】
図3に示すように、射出成形品10は、凹凸形成部20における射出成形品10の厚さ方向の表面側
に熱膨張性カプセル50が熱膨張している高膨張部30と、該厚さ方向において高膨張部30に隣接する部分であって熱膨張性カプセル50が実質的に熱膨張していない本体部40とを有している。本体部40に含まれている熱膨張性カプセル50では、内包物質54は実質的に体積膨張しておらず外殻52は実質的に引き延ばされていないので熱膨張性カプセル50の粒径は比較的小さい。本体部40に含まれる熱膨張性カプセル50の平均粒径は、50μm未満(例えば凡そ15μm以上50μm未満)である。一方、高膨張部30に含まれている熱膨張性カプセル50では、内包物質54が体積膨張し外殻52が引き延ばされている。このため熱膨張性カプセル50の粒径は、本体部40に含まれている熱膨張性カプセル50の粒径よりも大きい。高膨張部30に含まれる熱膨張性カプセルの平均粒径は50μm以上(例えば凡そ50μm以上150μm以下)である。50μmよりも小さすぎる場合、高膨張部30の表面の凹凸が小さく外観が布目調に見え難くなってしまう虞がある。かかる構成によると、高膨張部30の表面では良好な凹凸が形成されると共に、本体部40では密度の低下が抑制され射出成形品10の剛性を確保することができる。なお、高膨張部30には、熱膨張性カプセル50が破裂したものが存在していてもよい。
【0033】
本実施形態に係る射出成形品10では、高膨張部30を構成するポリマー材料45と本体部40を構成するポリマー材料45とは同じポリマー材料である。高膨張部30と本体部40とは一体的に成形されている。
図3に示すように、高膨張部30の厚さT1は、凹凸形成部20における射出成形品10の厚さT2の2分の1以下(例えば、3分の1以下)である。凹凸形成部20における高膨張部30の割合を小さくし、且つ本体部40の割合を大きくすることによって、所望する意匠面を実現すると共に、凹凸形成部20における射出成形品10の密度の低下を抑制することができる。これにより、射出成形品10の剛性を高く保つことができる。ここで、高膨張部30の厚さT1は100μm以上(例えば100μm〜600μm)であることが好ましい。高膨張部30の厚さT1が100μmよりも小さい場合には、高膨張部30に含まれる熱膨張した熱膨張性カプセル50の数が少なすぎるため、高膨張部30の表面の凹凸が小さくなってしまい、外観が布目調に見え難くなってしまう虞がある。
【0034】
高膨張部30の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線の最大断面高さRtは、30μm以上200μm未満であることが好ましい。Rtが30μmよりも小さい場合には、高膨張部30の表面(即ち射出成形品10の表面)に凹凸がほとんど形成されておらずほぼ平滑となってしまう虞がある。一方、Rtが200μmよりも大きい場合には、高膨張部30の表面(即ち射出成形品10の表面)に形成された凹凸が大きくなりすぎて外観品質が損なわれる虞がある。また、高膨張部30の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線の算術平均粗さRaは、7μm以上25μm以下(例えば8μm以上22μm以下)であることが好ましい。また、高膨張部30の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線の最大高さ粗さRzは、40μm以上140μm以下(例えば43μm以上132μm以下)であることが好ましい。また、高膨張部30の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線の最大山高さRpは、25μm以上65μm以下(例えば27μm以上63μm以下)であることが好ましい。また、高膨張部30の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線の十点平均粗さRzjisは、30μm以上95μm以下(例えば32μm以上93μ以下)であることが好ましい。また、高膨張部30の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線要素の平均長さRSmは、1050μm以上1500μm以下(例えば1082μm以上1482μm以下)であることが好ましい。なお、高膨張部30の表面における上記各パラメータは、例えば、東京精密株式会社製の商品名「SURFCOM 1400D(登録商標)」を用いて測定することができる。また、射出成形体60の本体部40に対して後述するような加熱工程を実行することによって、上述したRt等の値が実現される。
【0035】
次に、
図4から
図6を参照しつつ本発明の射出成形品の製造方法の好適な一実施形態を詳細に説明する。
図4は、第1実施形態に係る射出成形体60を成形するのに用いられる射出成形型80を示す断面図である。
図5は、
図4中のV‐V線に沿う断面図であって、射出成形体60の断面図である。
図6は、第1実施形態に係る射出成形品10の製造方法の加熱工程を示す斜視図である。
【0036】
図4に示すように、本実施形態に係る射出成形型80は、開閉可能な一対の型82,84を備えている。一対の型82,84は、固定式の固定型82と、可動式の可動型84とから構成され、型閉じによって内部に所定の成形キャビティが形成される。そして、該射出成形型80の固定型82は、射出成形装置のインジェクションノズル(図示せず)を挿入するためのロケートリング86と、内部にスプルー88が形成されたスプルーブッシュ90とを有している。射出成形型80の固定型82と可動型84の内面(分割面)には、型を閉じたとき、大まかに、スプルー92、射出ゲート94、及び成形キャビティ96がそれぞれ形成される。
【0037】
本実施形態に係る射出成形品10を製造するには、まず、上記ポリマー材料45と上記熱膨張性カプセル50とが混合された成形材料55を準備する。準備した成形材料55を所定形状の成形キャビティ96が形成された射出成形型80内に射出して充填する充填工程を実行する。即ち、スプルー88,92を介して射出ゲート94から加熱して溶融された液状の成形材料55を成形キャビティ96内に射出して、成形キャビティ96内を成形材料55で充填する。特に限定するものではないが、成形材料55の全量を100質量%としたときに、該成形材料55に含まれる熱膨張性カプセル50の質量割合は、例えば、凡そ0.1質量%から10質量%とすることができる。
【0038】
ここで、成形材料55に含まれている熱膨張性カプセル50は、成形材料55の射出成形温度(一般的には150℃〜250℃)よりも軟化温度(膨張開始温度:一般的には160℃〜180℃)が低い。
【0039】
次に、充填した成形材料55を冷却して固化し、射出成形体60を成形する工程を実行する。即ち、成形キャビティ96内に充填された成形材料55を冷却固化(典型的にはポリマー材料45を冷却固化)させることによって、成形キャビティ96内に射出成形体60が成形される。なお、成形キャビティ96内に充填されている成形材料55には内部圧力が加わっている。このため、冷却固化する前に可動型84を開くと成形材料55に加わっていた圧力が解放されるため、成形材料55中の熱膨張性カプセル50が熱膨張してしまうが、本実施形態では、成形材料55に内部圧力が加わった状態で該成形材料55を冷却固化しているため、熱膨張性カプセル50の熱膨張は実質的に防止される。
【0040】
次に、冷却固化した射出成形体60を射出成形型80から取り出す取出工程を実行する。即ち、可動型84を開いて成形キャビティ96内に形成された射出成形体60を取り出す。取り出された射出成形体60は、
図5に示すように、熱膨張性カプセル50が実質的に熱膨張していない本体部40のみから構成されている。
【0041】
次に、取り出した射出成形体60の表面の少なくとも一部を加熱し、射出成形体60の表面から該射出成形体60の厚さの2分の1以下までの所定の部分に含まれている熱膨張性カプセル50を熱膨張させる加熱工程を実行する。即ち、
図6に示すように、加熱装置70を備えたベルトコンベア72のベルト74上に射出成形体60を載せて、該射出成形体60の表面を加熱する。射出成形体60の表面の加熱は放射熱を用いて行うことが好ましい。加熱装置70の好ましい一例として、射出成形体60の表面に近赤外線76による放射熱を放射することができる近赤外線照射装置70が挙げられる。ベルトコンベア72によって射出成形体60を
図6の矢印X1の方向へ移動させて、射出成形体60の表面に近赤外線照射装置70から近赤外線76を照射して加熱する。このとき、本体部40内に含まれている熱膨張性カプセル50が熱膨張する温度以上に射出成形体60の表面を加熱し、射出成形体60の表面温度を高くする。これにより、熱膨張性カプセル50が熱膨張すると共に、ポリマー材料45は熱変形をし、射出成形体60の表面の少なくとも一部において、熱膨張性カプセル50の熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部20を形成することができる。以上のようにして、熱膨張性カプセル50の熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部20が射出成形品10の表面の少なくとも一部に形成された射出成形品10を製造することができる。
【0042】
射出成形体60の表面加熱時の射出成形体60の表面温度は、熱膨張性カプセル50が熱膨張する程度の温度とすることが好ましい。例えば、射出成形体60の表面温度は、凡そ80℃〜230℃程度とすることができる。射出成形体60の表面温度が高くなると、熱膨張性カプセル50の熱膨張が大きくなる。この結果、高膨張部30の表面における上記Rt等のパラメータは大きくなる。なお、表面温度が230℃よりも高すぎる場合には、ポリマー材料45の熱分解が発生して上記Rt等のパラメータは小さくなり、外観が布目調に見え難くなってしまう虞がある。
【0043】
射出成形体60の表面温度や加熱時間を適宜調整することによって、射出成形体60の表面からどの程度の厚さ(深さ)までに含まれている熱膨張性カプセル50を熱膨張させるかを決定することができる。熱膨張性カプセル50が熱膨張している高膨張部30では、外殻52で囲まれた空間の占める体積が大きくなるため、密度が大きく低下してしまう。従って、射出成形品10の剛性の確保を考慮すると、射出成形体60の加熱は、射出成形体60の表面から該射出成形体60の厚さの2分の1以下の厚さ、即ち、射出成形体60のうち射出成形体60の厚さ方向における中心よりも表面側の部分に含まれる熱膨張性カプセル50が熱膨張する程度の温度や時間とすることが好ましい。
なお、射出成形体60の表面を加熱する加熱装置70は、近赤外線照射装置に限定されない。例えば、射出成形体60の表面に火炎を吹き付けるバーナ、熱風を吹き付ける熱風加熱機、高周波を利用する高周波加熱機、レーザー照射装置及び中赤外線照射装置等が挙げられる。また、本実施形態では、近赤外線照射装置70を固定して射出成形体60を移動させて射出成形体60の表面に近赤外線76を照射しているが、射出成形体60を固定して近赤外線照射装置70を移動させたり、射出成形体60と近赤外線照射装置70とを互いに移動させたりしてもよい。
【0044】
また、
図6に示すように、本実施形態に係る加熱装置70は、射出成形体60の幅と同程度の幅で近赤外線76を直線状に照射しているが、射出成形体60の幅よりも広い幅又は狭い幅で近赤外線76を照射してもよいし、近赤外線76を点状に照射してもよい。照射範囲が射出成形体60の幅よりも狭い場合には、加熱装置70及び射出成形体60の少なくともいずれかを2以上の方向に移動させながら射出成形体60の表面を加熱することによって、射出成形体60の表面に所定の模様を描画することができる。例えば、近赤外線76を点状に照射する場合には、シボ模様を模した意匠を射出成形体60の表面に現すことができる。
【0045】
本実施形態に係る射出成形品10では、高膨張部30に含まれている熱膨張性カプセル50は熱膨張しているため、射出成形品10の表面(高膨張部30の表面)には該熱膨張性カプセル50に基づく凹凸形成部20が形成されている。これにより射出成形品10の表面には微細な凹凸からなる布目調の外観が形成されている。さらに、高膨張部30と本体部40とは同一のポリマー材料45で成形されており、高膨張部30と本体部40とは一体となって成形されている。このため、本体部40と高膨張部30とが剥離することはなく、射出成形品10の外観不良が発生するのを防止することができる。さらにまた、熱膨張性カプセル50が熱膨張している高膨張部30の厚さは、凹凸形成部20における射出成形品10の厚さの2分の1以下であり、その他の部分の本体部40では熱膨張性カプセル50が実質的に熱膨張していない。このため、射出成形品10の外観品質の確保と射出成形品10の剛性の確保を実現することができる。
【0046】
上述した第1実施形態では、射出成形品10の意匠面15の全体に亘って凹凸形成部20が形成されていたが、本発明はかかる形態に限定されない。以下、第2実施形態として凹凸形成部が射出成形品の意匠面に部分的に形成されている場合を説明する。
図7は、自動車(車両)の内部の所定の部位に取り付け可能な車両用内装品である射出成形品110の外形を模式的に示す斜視図である。
図8は、
図7中のVIII‐VIII線に沿う断面図である。
【0047】
図7に示すように、本実施形態に係る射出成形品110は意匠面115を備えている。凹凸形成部120は、射出成形品110の表面、即ち意匠面115に部分的に形成されている。
図8に示すように、射出成形品110は、凹凸形成部120における射出成形品110の厚さ方向の表面側に、熱膨張性カプセル150が熱膨張している高膨張部130と、該厚さ方向において高膨張部130に隣接する部分であって熱膨張性カプセル150が実質的に熱膨張していない本体部140とを有している。さらに、射出成形品110は、意匠面115であって凹凸形成部120が形成されていない部分である平滑部125では、射出成形品110の厚さ方向の全体に亘り本体部140を有している。本実施形態に係る射出成形品110は、凹凸形成部120の外観品質に優れると共に、射出成形品110の表面(意匠面115)に凹凸形成部120を利用して所望の文字が形成されているため意匠性に優れる射出成形品110となる。
【0048】
次に、
図9を参照しつつ第2実施形態に係る射出成形品110の製造方法の好適な例を説明する。
図9は、第2実施形態に係る射出成形品110の製造方法の加熱工程を示す斜視図である。なお、冷却固化した射出成形体60を射出成形型80から取り出す取出工程までは第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る製造方法の加熱工程では、
図9に示すように、加熱装置70を備えたベルトコンベア72のベルト74上に射出成形体60を載せて、該射出成形体60の表面を加熱する。射出成形体60の表面を加熱する前に、射出成形体60の表面を遮熱材160で部分的に覆う。遮熱材160は、該遮熱材160を部分的に切り抜くことによって所望の文字や図形等が形成された遮熱材160とすることができる。遮熱材160としては、熱を遮断して遮熱材160を介して射出成形体60に熱が伝わらないものであれば特に限定されない。例えば、融点が250℃以上の材料から成形されたものが好ましい。加熱装置として近赤外線照射装置70を用いる場合には、例えば、近赤外線76を透過させず融点が250℃以上のものとしてステンレスが挙げられる。なお、使用する遮熱材160の材質は加熱方法に対応して適宜選択することができる。例えば、近赤外線を用いる場合には近赤外線を反射するものが好ましく、火炎を用いる場合には不燃性の高いものが好ましい。
【0050】
そして、ベルトコンベア72によって遮熱材160で部分的に覆われた射出成形体60を
図9の矢印X2の方向へ移動させて、遮熱材160で覆われずに露出している射出成形体60の露出部165に近赤外線照射装置70から近赤外線76を照射して加熱する。これにより、射出成形体60の露出部165において、熱膨張性カプセル150(
図8参照)の熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部120を形成することができる。以上のようにして、熱膨張性カプセル150の熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部120が部分的に形成された射出成形品110を製造することができる。なお、射出成形品110の表面のうち遮熱材160で覆われていた部分は、加熱工程において加熱されていないため凹凸は実質的に形成されておらずほぼ平滑な状態である。
【0051】
次に、第3実施形態として、場所によって凹凸の程度が異なる凹凸を有する凹凸形成部が射出成形品の意匠面に形成されている場合を説明する。
図10は、自動車(車両)の内部の所定の部位に取り付け可能な車両用内装品である射出成形品210の外形を模式的に示す斜視図である。
図11は、
図10中のXI‐XI線に沿う断面図である。
【0052】
図10に示すように、本実施形態に係る射出成形品210は意匠面215を一つ備えている。凹凸形成部220は、射出成形品210の表面、即ち意匠面215の全体に亘って形成されている。凹凸形成部220は、凹凸の程度が大きい第1の凹凸部222と、該第1の凹凸部222と比較して凹凸の程度が小さい第2の凹凸部224とを有している。
図11に示すように、射出成形品210は、凹凸形成部220の第1の凹凸部222における射出成形品210の厚さ方向の表面側に、熱膨張性カプセル250が熱膨張している高膨張部230と、該厚さ方向において高膨張部230に隣接する部分であって熱膨張性カプセル250が実質的に熱膨張していない本体部240とを有している。さらに、射出成形品210は、凹凸形成部220の第2の凹凸部224における射出成形品210の厚さ方向の表面側に、熱膨張性カプセル250が熱膨張している膨張部235と、該厚さ方向において膨張部235に隣接する部分であって熱膨張性カプセル250が実質的に熱膨張していない本体部240とを有している。高膨張部230では、膨張部235に比べて熱膨張性カプセル250の熱膨張が大きいため、高膨張部230の表面に形成された凹凸は膨張部235の表面に形成された凹凸と比べて大きくなっている。本実施形態に係る射出成形品210は、凹凸形成部220の外観品質に優れると共に、射出成形品210の表面(意匠面215)に第1の凹凸部222と第2の凹凸部224との凹凸の程度の差から生じる色の濃淡(或いは明暗の程度)を利用して所望の文字が形成されているため意匠性に優れる射出成形品210となる。
【0053】
第3実施形態に係る射出成形品210は以下のようにして製造することができる。例えば、射出成形体60の表面に近赤外線照射装置70(
図6参照)から近赤外線76を照射して加熱する。このとき、近赤外線76による加熱時間や表面温度等を調整することで、熱膨張性カプセル250の熱膨張の程度を調整する。これにより射出成形体60の表面に第2の凹凸部224を形成する。次いで、加熱後の射出成形体60の表面(即ち第2の凹凸部224が形成された部分)を遮熱材160(
図9参照)で部分的に覆い、遮熱材160で覆われずに露出している部分(即ち第1の凹凸部222)をさらに加熱する。これにより、遮熱材160で覆われずに露出している部分に含まれている熱膨張性カプセル250はさらに熱膨張し、第2の凹凸部224よりも凹凸の大きい第1の凹凸部222を形成する。以上のようにして、凹凸の程度が相互に異なる第1の凹凸部222と第2の凹凸部224とを有する凹凸形成部220が形成された射出成形品210を製造することができる。
【0054】
或いは他の方法として、まず、射出成形体60の表面を遮熱材160(
図9参照)で部分的に覆う。遮熱材160で覆われずに露出している射出成形体60の露出部165(
図9参照)に近赤外線照射装置70から近赤外線76を照射して加熱する。これにより、射出成形体60の露出部165において、熱膨張性カプセル250の熱膨張によって形成された凹凸を有する凹凸形成部220を形成することができる。次に、遮熱材160を取り外した後、凹凸形成部220が形成された射出成形体60の表面をさらに加熱する。これにより、凹凸形成部220に含まれている熱膨張性カプセル250はさらに熱膨張し、第1の凹凸部222が形成される。一方、初めの加熱において遮熱材160で予め覆われた部分に含まれている熱膨張性カプセル250も熱膨張し、第2の凹凸部224が形成される。これにより、遮熱材160で予め覆っていた部分に形成された第2の凹凸部224(凹凸形成部220)と初めの加熱において遮熱材160で覆っていなかった部分に形成された第1の凹凸部222(凹凸形成部220)との凹凸の程度は異なる。以上のようにして、凹凸の程度が相互に異なる第1の凹凸部222と第2の凹凸部224とを有する凹凸形成部220が形成された射出成形品210を製造することができる。
【0055】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる具体的実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0056】
ポリマー材料としてスチレン系熱可塑性エラストマーであるリケンテクノス株式会社製の商品名「アクティマー(登録商標)」を95質量%と、熱膨張性カプセルとして積水化学工業株式会社製の商品名「ADVANCELL(登録商標)」を5質量%とが混合された成形材料を用意した。上記用意した成形材料を射出成形型に充填して冷却固化することによって射出成形体を成形した。成形された射出成形体の表面において、JIS B 0601:2001に規定された粗さ曲線の最大断面高さRtは、4.5μmであった。
【0057】
次に、近赤外線装置として株式会社ハイベック製の商品名「HYL25−14」を用い、上記成形された射出成形体をベルトコンベアに載せて該射出成形体の表面を加熱した。近赤外線装置の焦点距離(
図6の符号h参照)は25mmであった。ベルトコンベアの速度36cm/min、射出成形体の表面温度143℃の条件下、射出成形体を加熱することによって熱膨張性カプセルを熱膨張させて、表面に凹凸を有する凹凸形成部を有する例1に係る射出成形品を作製した。このときの例1に係る射出成形品の上記最大断面高さRtは93.3μmであった。また、高膨張部の厚さT1は500μmであり、凹凸形成部における射出成形品の厚さT2の凡そ4分の1であった。
【0058】
また、例2に係る射出成形品を作製した。ベルトコンベアの速度を72cm/minとした他は例1と同様にして、例2に係る射出成形品を作製した。このときの例2に係る射出成形品の上記最大断面高さRtは69.9μmであった。また、高膨張部の厚さT1は300μmであり、凹凸形成部における射出成形品の厚さT2の凡そ7分の1であった。
【0059】
以上、本発明の具体例を図面を参照しつつ詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記第3実施形態では凹凸の程度が相互に異なる第1の凹凸部と第2の凹凸部とを有する凹凸形成部が形成されていたが、凹凸の程度が相互に異なる凹凸部を3以上有するような凹凸形成部が形成されていてもよい。
【0060】
また、上記第1実施形態ないし第3実施形態においては、車両の内部の所定の部位に取り付け可能な車両用内装品である射出成形品を説明したが、本発明に係る射出成形品の用途はこれに限定されない。本発明に係る射出成形品は、好ましくは、その表面に布目調やつや消しの外観を要する物品等として使用することができ、例えば、自動二輪車等の装飾部品、住宅やビルディング等の建築物の内装品や家具に使用することができる。また、家電製品の装飾、文房具や玩具等の日用品、車いす等の介護用品としても使用することができる。