特許第5945603号(P5945603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945603五員環状アニオン塩を調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945603
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】五員環状アニオン塩を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/90 20060101AFI20160621BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   C07D233/90 B
   H01B13/00 Z
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-540535(P2014-540535)
(86)(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公表番号】特表2014-533255(P2014-533255A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】FR2012052489
(87)【国際公開番号】WO2013072591
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2014年7月16日
(31)【優先権主張番号】1160301
(32)【優先日】2011年11月14日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フラスク, ミゲル
【審査官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−500833(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/023413(WO,A1)
【文献】 Polish Journal of Chemistry,2004年,78(3),p.417-422
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/90
H01B 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
のイミダゾール化合物[式中、Rfは、1から5個の炭素原子を含むフルオロアルキルまたはアルコキシ基である]
を調製するための方法であって、
(a)式:
のジアミノマレオニトリルの、式:
の化合物[式中、Yは、塩素原子または基OCORfを表す]との、溶媒の存在下、式(IVa)の塩化アミド化合物および/または式(IVb)の対応するアミン:
(IVa) (IVb)
を形成するための、温度Tでの反応と、
(b)式(IVa)の塩化アミド化合物および/または対応するアミン(IVb)の、式(III)のイミダゾール化合物を形成するための、Tを上回る温度Tでの脱水と
を含み、
第二のステップは、第一のステップの後に、中間体精製なしに実施され、ステップ(a)および(b)が同じ溶媒中で実施され、ジアミノマレオニトリルおよび式(II)の化合物がステップ(a)の前に溶媒に溶解され、溶媒はジオキサンである、方法。
【請求項2】
Rfが、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rfが、CF、C、COCF、COCFまたはCFOCFを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が、0から80℃である、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
が、10から50℃である、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項6】
が、20から30℃である、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項7】
が、30から180℃である、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
が、60から150℃である、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項9】
が、75から140℃である、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)が、1から12時間続き、かつ/またはステップ(b)が、1から12時間続く、請求項1から9の一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)が、1から3時間続き、かつ/またはステップ(b)が、1から3時間続く、請求項1から9の一項に記載の方法。
【請求項12】
温度Tが、前記溶媒の沸点に対応する、請求項1から11の一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第二のステップが、前記第一のステップの直後に実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a)において形成される生成物が、式(IVa)の化合物であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(a)において形成される生成物が、式(IVb)の化合物であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式:
のリチウムイミダゾレート化合物[式中、Rfは、1から5個の炭素原子を含むフルオロアルキル基である]を調製するための方法であって、
(a)請求項1から15の一項に記載の方法に従う式:
のイミダゾール化合物の調製と、
(b)式(III)のイミダゾール化合物とリチウム塩基との反応と
を含む方法。
【請求項17】
前記リチウム塩基が、水素化リチウム、炭酸リチウムおよび水酸化リチウム、ならびにそれらの組合せから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
電解質組成物を製造するための方法であって、請求項16または17に記載の方法に従う式(V)のリチウムイミダゾレートの調製と、この化合物の溶媒への溶解とを含む方法。
【請求項19】
電池または電池セルを製造するための方法であって、請求項18に記載の方法に従う電解質組成物の製造と、この電解質組成物のアノードとカソードとの間への挿入とを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、五員環状アニオン塩、とりわけリチウム1−トリフルオロメチル−4,5−ジカルボニトリル−イミダゾレートを調製するための方法、およびそのような塩を含有する電解質組成物を調製するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、少なくとも1つの負極、正極、セパレータおよび電解質を備える。電解質は、粘度と絶縁定数との間に良好な妥協を有するように、概して有機カーボネートの混合物である溶媒に溶解されたリチウム塩からなる。
【0003】
塩の中でも最も一般に使用されるのは、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)であり、これは必要とされる多数の性質の多くを有するが、フッ化水素ガスの形態で分解するという欠点を有する。これは、とりわけ自家用車へのリチウムイオン電池の今後の使用という文脈において、安全性の問題をもたらす。
【0004】
故に、国際公開第WO2010/023413号パンフレットにおいて教示されている通り、Liイオン電池電解質、とりわけLiTDI(リチウム1−トリフルオロメチル−4,5−ジカルボニトリル−イミダゾレート)およびLiPDI(リチウム1−ペンタフルオロエチル−4,5−ジカルボニトリル−イミダゾレート)を提供するために他の塩が開発されてきた。これらの塩は、より少ないフッ素原子を含有し、LiPF6のより弱いリン−フッ素結合の代わりに強い炭素−フッ素結合を備えるという利点を有する。加えて、これらの塩は、およそ6mS/cmの非常に良好な伝導性、およびイミダゾレートアニオンとリチウムカチオンとの間の非常に良好な電離を有する。
【0005】
国際公開第WO2010/023413号パンフレットは、これらの五員環状アニオンを製造するための数種の合成経路を提案しており、そのうちの1つは、ジアミノマレオニトリル(DAMN)をフッ素化酸無水物等の酸誘導体と縮合すること、続いてプロトン/リチウム交換にある。縮合は単一ステップで実施する。
【0006】
公知の合成経路で取得されるリチウム塩の最大収率は、約70%である。存在する不純物は激しい下流精製ステップを必要とし、このことは、Liイオン電池用の電解質塩として使用するためのこの種のリチウム塩の可能な産業化に対する抑制を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2010/023413号パンフレット
【発明の概要】
【0008】
結果として、LiTDIまたはLiPDI等のリチウム塩をより良好な収率で取得するための方法を開発することが真に必要である。
【0009】
本発明は、第一に、式:
のイミダゾール化合物[式中、Rfは、1から5個の炭素原子を含むフルオロアルキルまたはアルコキシ基である]を調製するための方法であって、
(a)式:
のジアミノマレオニトリルの、式:
の化合物[式中、Yは、塩素原子または基OCORfを表す]との、式(IVa)の塩化アミド化合物および/または対応するアミン(IVb)
を形成するための、温度Tでの反応。
(b)式(IVa)の塩化アミド化合物および/または式(IVb)の対応するアミンの、式(III)のイミダゾール化合物を形成するための、Tを上回る温度Tでの脱水
を含む方法に関する。
【0010】
一実施形態によれば、Rfは、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCF、好ましくはCF、C、COCF、COCFまたはCFOCFを表す。
【0011】
一実施形態によれば、Tは、0から80℃、好ましくは10から50℃、より優先的には20から30℃である。
【0012】
一実施形態によれば、Tは、30から180℃、好ましくは60 a 150℃、より優先的には75から140℃である。
【0013】
一実施形態によれば、ステップ(a)は、1から12時間、好ましくは1から3時間続き、かつ/またはステップ(b)は、1から12時間、好ましくは1から3時間続く。
【0014】
一実施形態によれば、ジアミノマレオニトリルおよび式(II)の化合物はステップ(a)の前に溶媒に溶解され、前記溶媒は、好ましくは1,4−ジオキサンである。
【0015】
一実施形態によれば、温度Tは、溶媒の沸点に対応する。
【0016】
本発明は、式:
のリチウムイミダゾレート化合物[式中、Rfは、1から5個の炭素原子を含むフルオロアルキルまたはアルコキシ基である]を調製するための方法であって、
(a)上述した方法に従う式:
のイミダゾール化合物の調製と、
(b)式(III)のイミダゾール化合物とリチウム塩基との反応と
を含む方法にも関する。
【0017】
一実施形態によれば、リチウム塩基は、水素化リチウム、炭酸リチウムおよび水酸化リチウム、ならびにそれらの組合せから選択される。
【0018】
本発明は、電解質組成物を製造するための方法であって、上述した方法に従う式(V)のリチウムイミダゾレートの調製と、この化合物の溶媒への溶解とを含む方法にも関する。
【0019】
本発明は、電池または電池セルを製造するための方法であって、上述した方法に従う電解質組成物の製造と、この電解質組成物のアノードとカソードとの間への挿入とを含む方法にも関する。
【0020】
本発明は、先行技術の欠点を克服することを可能にする。より詳細には、本発明は、LiTDIまたはLiPDI等のリチウム塩をより良好な収率で取得するための方法を提供する。
【0021】
これは、DAMNとフッ素化酸誘導体との、異なる温度で実施される2つのステップにおける反応により、フッ素化4,5−ジカルボニトリル−イミダゾールを調製するための方法の開発を利用して遂行され、第二のステップの温度は第一のステップの温度より高い。
【0022】
故に、反応中間体である塩化アミド化合物および/または対応するアミン(式(IVa)および(IVb)の化合物)を、第一のステップにおいて安定に生成し、次いで、この塩化アミド化合物および/または対応するアミンを、第二のステップ中に脱水して、イミダゾールを形成する。
【0023】
理論に縛られることを望むものではないが、先行技術において観察される低いイミダゾール生成収率は、特に酸性媒質中で加熱することによるDAMNの重合に起因すると推定されている。
【0024】
現在、熱分析により、塩化アミド化合物および/または対応するアミン中間体はDAMNよりも熱的に安定であることを実証することが可能になっている。DAMNは188℃以上で実質的な分解を経るのに対し、中間体塩化アミドおよび/または対応するアミンは、210℃以上で最初に脱水を、次いで分解を経る。
【0025】
第一に、中間体塩化アミド化合物および/または対応するアミンの、DAMNと比べて大きい熱安定性、第二に、アミド化合物のC=O官能基がC=C二重結合を不活性化する傾向を有するという事実、および塩化アミドの場合、該塩化アミンがより劣った求核試薬であるという事実を前提とすると、これによって重合を避けることが可能になる。本発明に従う方法は、第一段階において、DAMNの重合が本質的に回避される比較的低い温度で、中間体塩化アミド化合物および/または対応するアミンを安定に形成すること、第二段階において、より高い温度で塩化アミド化合物および/または対応するアミンを脱水し、DAMNの重合(この試薬は既に消費されている)および同様にアミド化合物の重合を(上記で提示した理由により)同じく回避することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、次の記述において、本発明をさらに詳細に、非限定的な様式で記述する。
【0027】
イミダゾール化合物の調製
本発明は、式(I)のDAMNからおよび式(II)のフッ素化酸誘導体からの、下記の一般的スキームに従う式(III)のイミダゾール化合物の調製を提供する:
【0028】
このスキームにおいて、Rfは、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFまたはCFOCF、好ましくはCF、C、COCF、COCFまたはCFOCF等の1から5個の炭素原子を含む、フルオロアルキルまたはアルコキシ基(すなわち、1個または複数のフッ素置換基を含むアルキルまたはアルコキシ基)である。
【0029】
その上、Yは、塩素原子(この場合、式(II)の化合物は塩化アシルである)または基OCORf(この場合、式(II)の化合物は無水物である)を表す。
【0030】
この反応は、2ステップで実施する。
【0031】
第一のステップは、0から80℃、好ましくは10から50℃、より優先的には20〜30℃、例えば約25℃である温度Tで実施する。この第一のステップは、式(IVa)の塩化アミド化合物および/または式(IVb)の対応するアミンを生成することを可能にする:
【0032】
この第一のステップの持続時間は、好ましくは1から12時間、より詳細には1から3時間、例えば約2時間である。
【0033】
反応は、好ましくは、試薬を、溶媒、例えばジオキサン、トルエンまたはジメチルホルムアミド、とりわけ1,4−ジオキサンに溶解することによって実施される。有利にも、2ステップは、同じ溶媒中で実施される。
【0034】
反応媒質中におけるDAMN濃度は、好ましくは0.001から2mol/L、より優先的には0.1mol/Lから1mol/Lである。化合物(I)対化合物(II)のモル比は、好ましくは0.25対1.5、より優先的には0.5対1.25である。
【0035】
第二のステップは、Tより高い温度Tで実施する。好ましくは、Tは、Tより、少なくとも10℃、または少なくとも20℃、または少なくとも30℃、または少なくとも40℃、または少なくとも50℃、または少なくとも60℃、または少なくとも70℃だけ高い。
【0036】
特定の実施形態によれば、温度Tは、使用される溶媒の沸点に対応する。
【0037】
好ましくは、Tは、30から180℃、より詳細には60から150℃、より優先的には75から140℃、例えば約100または101℃(これは、1,4−ジオキサンの沸点に対応する)である。
【0038】
第二のステップ中の、反応媒質中における化合物(IVa)および/または(IVb)の濃度は、好ましくは0.001から2mol/L、より優先的には0.05mol/Lから0.75mol/Lである。
【0039】
好ましくは、第二のステップは、第一のステップの直後に、中間体精製なしに、かつ有利にも、いかなる分離ステップもなしに、加熱することにより反応混合物の温度を単に修正することによって実施される。
【0040】
Y=Clである場合、アミドはカルボン酸を添加することによって塩化され、これにより、酸性触媒作用により第二のステップの収率を改善することも可能になる。使用される酸は、例えば、トリフルオロ酢酸、酢酸または安息香酸、好ましくはトリフルオロ酢酸である。
【0041】
化合物(IVa)および/または(IVb)対触媒のモル比は、好ましくは0.5対20、より優先的には1対10である。
【0042】
反応温度Tは第一のステップ全体にわたって一定であってよく、反応温度Tは第二のステップ全体にわたって一定であってよいが、必ずしもこうであるとは限らない。例えば、反応全体にわたって、または第一のステップのみの全体にわたって温度の上昇を想定することが可能である。そのような場合、TがTより高い状態は、第二のステップ全体にわたる温度が第一のステップ全体にわたる温度よりも高いこと、すなわち、ここでも、第二のステップ中に到達する最低温度が、第一のステップ中に到達する最高温度よりも高いことを意味する。
【0043】
第一のステップから第二のステップに移行し、必要な温度変化を実施するために、遷移期間が必要である。この遷移期間は、好ましくは、1時間未満、例えば30分未満、例えば20分未満、例えば10分未満、例えば5分未満の持続時間を有する。
【0044】
この反応の後、例えば、溶媒を蒸発除去し、水を添加し、取得された水相を(例えば酢酸エチルで)抽出し、有機相を回収することによって、式(III)のイミダゾール化合物を好ましくは単離および精製する。
【0045】
リチウムイミダゾレートの調製
式:
のリチウムイミダゾレートは、式(III)のイミダゾール化合物から、それを、好ましくは水素化リチウム、炭酸リチウムおよび水酸化リチウム、ならびにそれらの組合せから選択されるリチウム塩基と反応させることによって調製される。
【0046】
例えば、イミダゾール化合物が、反応後に上述した通りに単離および精製された場合、取得された有機相をリチウム塩基の水溶液で抽出することが可能である。次いで、水相を(活性炭による任意選択の処理の後に)蒸発させてよい。
【0047】
故に、有機相は、化合物(III)、ならびに反応溶媒に溶解した残基YHおよび酸性触媒も含有する。このとき、化合物(III)は、好ましくは0.01から5mol/L、優先的には0.1から3mol/Lの濃度である。水相中におけるリチウム塩基の濃度は、好ましくは0.01から10mol/L、より優先的には0.1から5mol/Lである。
【0048】
取得されるリチウム塩は、例えば、Rfがトリフルオロメチル基を表す場合にはLiTDIであり、Rfがペンタフルオロエチル基を表す場合にはLiPDIである。
【0049】
電解質の調製
上述した通りに調製された式(V)の化合物、とりわけLiTDIおよびLiPDIは、それらを好適な溶媒に溶解することにより、電解質の調製に使用することができる。
【0050】
式(V)の化合物は、例えば、下記のカーボネート:エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートから;ならびに下記のグリム:エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールtert−ブチルメチルエーテルから選択される1から5つの成分で構成される混合物に溶解される。成分のそれぞれの質量割合は、最小量で存在する成分に対して好ましくは1から10の間、より優先的には1から8の間である。
【0051】
電解質中における式(V)の化合物の濃度は、好ましくは0.1mol/Lから5mol/L、より優先的には0.2mol/Lから2.5mol/Lである。
【0052】
次いで、この電解質は、それをカソードとアノードとの間に、それ自体が公知である様式で置くことにより、電池または電池セルの製造に使用することができる。
【実施例】
【0053】
次の実施例は、本発明を限定することなく例証するものである。
【0054】
LiTDIの合成
1.25gのジアミノマレオニトリルを、200mLの丸底フラスコ中、45mLの1,4−ジオキサンに溶解する。次いで、トリフルオロ酢酸無水物(1.6mL)をこの溶液に添加する。反応媒質を25℃で2時間撹拌し、これは上記反応スキームの第一のステップに対応する。次いで、反応媒質をジオキサンの還流点(reflux point) で2時間加熱して、第一のステップ中に形成されたアミド化合物の脱水を可能にし、これは第一のステップ中に取得された残留トリフルオロ酢酸で触媒される。
【0055】
次いで、反応媒質を蒸発させる。次いで、水(60mL)を添加し、取得された水相を2×50mLの酢酸エチルで抽出する。次いで、有機相を合わせ、炭酸リチウム水溶液(60mLの水中0.5gのLiCO)で抽出する。
【0056】
取得された水相は着色しているため、活性炭での処理によって脱色する。処理後、この水相を蒸発させ、2.01gのリチウム塩を得、これは90.5%の収率に対応するものである。