特許第5945605号(P5945605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945605高反応性オレフィン機能性ポリマーを作製する重合開始系および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945605
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】高反応性オレフィン機能性ポリマーを作製する重合開始系および方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/10 20060101AFI20160621BHJP
   C08F 4/42 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   C08F10/10
   C08F4/42
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-547502(P2014-547502)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-504941(P2015-504941A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】US2012069822
(87)【国際公開番号】WO2013090764
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】13/328,569
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507088266
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
(73)【特許権者】
【識別番号】514060134
【氏名又は名称】インフィニウム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ファウス,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ディミトロフ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ラジーフ
(72)【発明者】
【氏名】エマート,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】フア,ジュン
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−203917(JP,A)
【文献】 特開昭48−060784(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/048216(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/014968(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/008890(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/120551(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/074211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/42−4/82
C08F 10/00−10/14
C08F 110/00−110/14
C08F 210/00−210/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50モル%のエキソ−オレフィン含量を有するポリブテンの調製のための方法であって、該方法は、
i) イソブテンまたはイソブテン含有モノマー混合物を、酸素および/または硫黄含有ルイス塩基と複合体化したルイス酸触媒と、実質的にまたは完全に非極性の溶媒中で接触させる工程、ならびに
ii) 開始剤を用いて、該イソブテンまたはイソブテン含有モノマー混合物の重合を開始する工程
を含み、該ルイス酸触媒は、式MR”
(式中、Mは、Fe、Ga、Hf、ZrおよびWから選択される金属であり;R”は、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)基であり;Yはハロゲンであり;mは0または1〜5の整数であり;nは1〜6の整数である、但し、m+nは金属Mの原子価と等しい)
のルイス酸であり、該開始剤は、式RX
(式中、Xはハロゲン(halide)であり;Rは安定なカルボカチオンを形成し得るヒドロカルビル基であり、基Xに結合する基Rの炭素は、第3級、ベンジル(benzylic)またはアリル(allylic)の炭素である)
の化合物である、方法。
【請求項2】
該ルイス塩基が、
非環式ジヒドロカルビルエーテル、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、
5〜7員環基を有する塩基性環式エーテル、
ジヒドロカルビルケトン、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、
〜C12脂肪族アルコール、
〜C12脂肪族アルデヒド、
非環式脂肪族エステル、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、
5〜7員環基を有する環式脂肪族エステル、
ジアルキルスルフィド、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、および
塩基性ジヒドロカルビルチオカルボニル化合物、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、ならびに
それらの混合物
から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該非極性溶媒が、飽和C炭化水素、不飽和C炭化水素、およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該イソブテンまたはイソブテン含有モノマー混合物が、
純粋なイソブテン;
約5%〜約50%のブテン−1、約2%〜約40%のブテン−2、約2%〜約60%のイソブタン、約2%〜約20%のn−ブタン、および約0.5%までのブタジエンを含むC精製所カット(refinery cut)、ここで、全てのパーセントは、C精製所カットの全質量に基づく質量による;ならびに
純粋なイソブテンおよび該C精製所カットの混合物
から選択される、請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
該複合体が、該イソブテンまたはイソブテン含有モノマーと、約1mM〜約200mMである媒体1リットル当たりのルイス酸−ルイス塩基複合体のミリモル濃度で接触される、請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
該ルイス酸と該ルイス塩基が、該ルイス酸を溶媒に溶解し溶液を形成し、次いで、該溶液に該ルイス塩基を添加することによって、複合体化される、請求項1〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
重合プロセスが連続的に行われる、請求項1〜6いずれか記載の方法。
【請求項8】
実質的にまたは完全に非極性の溶媒中でのイソブテンまたはイソブテン含有モノマー混合物の重合を触媒し、少なくとも50モル%のエキソ−オレフィン含量を有するポリブテン生成物を提供するための触媒−開始剤系(system)であって、該触媒は、酸素および/または硫黄含有ルイス塩基と複合体化したルイス酸触媒を含み、該ルイス酸触媒は、式MR”
(式中、Mは、Fe、Ga、Hf、ZrおよびWから選択される金属であり;R”は、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)基であり;Yはハロゲンであり;mは0または1〜5の整数であり;nは1〜6の整数である、但し、m+nは金属Mの原子価と等しい)
のルイス酸であり、該開始剤は、式RX
(式中、Xはハロゲン(halide)であり;Rは安定なカルボカチオンを形成し得るヒドロカルビル基であり、基Xに結合する基Rの炭素は、第3級、ベンジル(benzylic)またはアリル(allylic)の炭素である)
の開始剤である、触媒−開始剤系。
【請求項9】
該ルイス塩基が、
非環式ジヒドロカルビルエーテル、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、
5〜7員環基を有する塩基性環式エーテル、
ジヒドロカルビルケトン、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、
〜C12脂肪族アルコール、
〜C12脂肪族アルデヒド、
非環式脂肪族エステル、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、
5〜7員環基を有する環式脂肪族エステル、
ジアルキルスルフィド、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、および
塩基性ジヒドロカルビルチオカルボニル化合物、ここで、各ヒドロカルビル基は、独立して、C〜C12ヒドロカルビルから選択される、ならびに
それらの混合物
から選択される、請求項8記載の触媒−開始剤系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年12月16日(16.12.2011)に出願された米国特許出願第13/328, 569号の継続出願であり、その優先権を主張し、その全教示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、高反応性オレフィンポリマーを作製するための方法であって、該ポリマー鎖の少なくとも50mol%が、末端二重結合を有する方法、およびこれを達成するための新規の重合開始系(system)に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
イソブチレン(IB)のカルボカチオン重合は、大きな科学的および工業的関心の主題である。ポリイソブチレン(PIB)の特有の特性は、化学的に安定で完全に飽和されたポリマーを、医療デバイスから原動機のオイルおよび燃料添加物としての使用に適切な無灰(ashless)(金属非含有)分散剤/界面活性剤までの範囲の用途を有する望ましい物質にすることである。これらの無灰分散剤/界面活性剤は、オレフィン末端基を有する低分子量(約500〜約5000の数平均分子量(
【化1】
))PIBまたはポリブテン(IBとC4オレフィンのコポリマー)由来のオリゴアミン末端基を有する油溶性界面活性剤であることを特徴とし得る。
【0004】
オレフィン末端基を有する低分子量IBホモポリマーまたはコポリマーを作製するための2つの主要な工業的方法が開発されている。「従来の」方法では、C4混合物およびハロゲン化アルミニウムに基づいた触媒系を使用して、高い三置換オレフィン含量を有するポリブテンを作製する。三置換オレフィン末端基の低い反応性のために、無水マレイン酸と反応するようにポリブテンを塩素化してポリブテニル無水コハク酸を得て、次いでこれをオリゴアルキレンイミンと反応させ、ポリブテニルスクシンイミド型無灰分散剤/界面活性剤を生じる必要がある。他の方法では、純粋なIB供給流、および低温での重合反応においてアルコールまたはエーテルのいずれかを有するBF3複合体系触媒を使用して、高いエキソオレフィン性末端基含量を有する高反応性PIB(HR PIB)が得られる。従来のポリブテンの三置換オレフィンとは対照的に、PIBエキソオレフィンは、熱「エン」反応中で無水マレイン酸と容易に反応して、PIB無水コハク酸およびその後ポリイソブテニルスクシンイミド無灰分散剤を生じる。最終生成物は塩素を含まないので、HR PIBは、従来のポリブテンよりも望ましい。しかしながらBF3は、取り扱いが困難であり、ポリマーはフッ素を含み得る。さらに、上述したように、この方法は純粋なIB供給流および低温(例えば-30℃)を必要とするので、より高価な製品が生じる。
【0005】
HR PIBを作製するための上述の商業的な方法は、Rathに対する米国特許第5,408,018号(およびDE-A 2702604)に報告されている。その後、Rath et al.に対する米国特許第6,407,186号、第6,753,389号および第7,217,773号ならびにWettling et al.に対する米国特許第6,846,903号、第6,939,943号および第7,038,008号に、ある範囲の方法の強化が報告された。異なる温度管理(regime)および低い滞留時間を使用する改変された方法も、以前に記載された(例えば、Baxter et al.に対する米国特許第6,562,913号および第6,683,138号)。これらの開示の全てには、BF3触媒およびアルコールまたはエーテル共触媒を使用して行われる重合が記載される。かかる触媒性プロセスは、特に一般的に入手可能な混合C4ラフィネートI流を用いて使用される場合、ポリマー中に残存フッ素を残し得る。少量のフッ素が存在するだけでも、HFの放出のために下流の官能基化反応器において問題が生じ、そのため高価なフッ素除去後処理が必要になる。
【0006】
そのため、HR PIBを作製するための他の方法を見出すための多くの試みがなされている。例えば、ほとんど定量的なエキソオレフィン末端基を有するPIBは、tert-塩素末端PIB(PIB-Cl)を、カリウムtert-ブトキシドおよびアルカリエトキシドなどの強塩基と、かん流テトラヒドロフラン(THF)中で20〜24時間反応させ(Kennedy, J.P.; Chang, V.S.C.; Smith, R.A.; Ivaen, B. Polym. Bull. 1979, 1, 575)、リビングPIB(living PIB)をメトアリルトリメチルシラン(methallyltrimethylsilane)でクエンチし(Nielsen, L.V.; Nielson, R.R.; Gao, B.; Kops, J.; Ivaen, B. Polymer 1997, 38, 2528.)、リビングPIBを障害塩基(hindered base)(例えば、2,5-ジメチルピロールまたは1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン)でクエンチし(Simison, K.L.; Stokes, C.D.; Harrison, J.J.; Storey, R.F. Macromolecules 2006, 39, 2481)、リビングPIBをアルコキシシランまたはエーテル化合物でクエンチし(Storey, R.F.; Kemp, L.L.米国特許出願公報2009/0318624 A1、2009年12月24日)、リビングPIBをモノスルフィドと反応させ、次いで得られたスルホニウム塩の分解物を塩基と反応させること(Morgan. D.L.; Stokes, C.D.; Meierhoefer, M.A.; Storey, R.F. Macromolecules 2009, 42, 2344)により得られている。しかしながら、上述の方法の全ては、中程度の極性溶媒中、低温でのリビングカチオン性重合を含み、高価な反応物を使用するので、高価である。
【0007】
元素の周期表のV族およびVI族の酸化物に基づくハロゲン非含有金属触媒の広範な開示が、Sigwart et al.に対する米国特許第6,441,110に記載されたが、これらの触媒は、不均一であり、平均的な量のエキソ-オレフィンのみの、乏しいモノマー変換を生じた。ニトリルリガンドおよび弱い配位結合アニオンを有する元素の周期表系の3〜12周期由来の金属に基づく別の触媒系が、Bohnepoll et al.に対する米国特許第7,291,758号に記載された。これらの触媒は、極性ジクロロメタン溶液中のみで使用され、無極性の全ての炭化水素媒体では使用されなかった。
【0008】
より最近では、ある範囲の開始剤または外来性の水(adventitious water)と共に、AlCl3-OBu2複合体がIBの重合を開始し、極性溶媒(CH2Cl2/ヘキサン80/20 v/v)中で、ある温度範囲(-60〜-20℃)で95%までの高エキソオレフィン末端基を有するPIBを生じることが報告されている(Vasilenko, I.V.; Frolov, A.N.; Kostjuk, S.V. Macromolecules 2010, 43(13), 5503-5507)。独立して、-20〜20℃の範囲の温度で、CH2Cl2中、AlCl3またはFeCl3ジアルキルエーテル複合体と共に、開始剤として外来性の水を使用して、同様の結果が報告された(Lui, Q.; Wu Y.; Zhang, Y.; Yan. P.F.; Xu, R.W. Polymers 2010, 51, 5960-5969)。しかしながら、極性溶媒CH2Cl2が必要であるために、この方法の商業的な可能性は疑問視される。AlCl3-OBu2は、溶媒の非存在下で、開始剤を添加しないかまたは開始剤として水を添加して、末端ビニリデン結合を有するPIBを生じることが報告されている(Koenig et al.のUSPG 2011/0201772A1)。しかしながら、ハロゲン化アルキル、エーテル、エステル、アルコールおよびブレンステッド酸などの従来のカチオン性開始剤のいずれも、AlCl3を有する無極性媒体中で重合を直接開始することは見出されなかった。そのため、無極性炭化水素媒体中での高反応性PIBまたはポリブテンの調製のための強く経済的な方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
ここで、特定の組み合わせのルイス酸/ルイス塩基複合体と共に使用した従来のカチオン性開始剤が、-30℃〜+50℃の温度で、炭化水素溶媒中、IBの重合を開始させて、高収率の高反応性PIBを生じることが見出された。
【0010】
本発明の触媒-開始剤系の触媒は、無極性媒体中に、ルイス塩基(B)と複合体化したルイス酸触媒(MR"Yn)を含む。ルイス塩基に対するルイス酸の親和性は、ルイス酸が少なくとも部分的に従来のカチオン性開始剤(RX)と相互作用して、イソブチレンのカチオン性重合を開始するR+の形成を可能にし得るようなものであるべきである。最初に複合体化されたルイス塩基は、成長中のカルボカチオン鎖の迅速な脱プロトン化に影響を及ぼして、カチオン鎖の異性化または塩基の遊離溶液への拡散の前に、エキソ-オレフィンを形成し得るべきである。ルイス塩基がルイス酸と複合体化しない場合は、少なくとも最初に、成長中のカルボカチオンの脱プロトン化が、エキソ-オレフィンの望ましい高収率が与える異性化に対して十分に迅速でない。ルイス酸とルイス塩基の相互作用が、従来の開始剤との相互作用を妨げるほどに強すぎる場合は、重合は不十分であるかまたは全く起こらない。ルイス酸またはルイス酸-ルイス塩基複合体はさらに、外来性の水の存在下または非存在下のいずれかにおいて、従来の開始剤と相互作用できなければならない。それによるモノマー変換が実質的に外来性の水に依存する触媒は、プロトントラップ(例えば、2,6-ジtert-ブチルピリジンまたは「DTBP」)の存在下での変換の完全な消失により証明されるように、従来の開始剤の存在下であっても適切でない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の実施に有用なルイス酸触媒は、一般式(MR"mYn)で表され得、式中、Mは、Fe、Ga、Hf、ZrおよびW、好ましくはGaまたはFe、より好ましくはGaから選択され;R"は、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)基、好ましくはC1〜C8ヒドロカルビル基、より好ましくはC1〜C8アルキル基であり;mは、0または1〜5の整数、好ましくは0または1、より好ましくは0であり;Yは、ハロゲン(F、Cl、Br)、好ましくはClまたはBrのいずれか、より好ましくはClであり;nは、1〜6の整数、好ましくは3〜5であり;ただし、m+nは、Mの原子価と等しい。本明細書で使用する場合、用語「ヒドロカルビル(hydrocarbyl)」は、水素原子および炭素原子を含み、かつ炭素原子を介して化合物の残りに直接結合する、化合物の化学基を意味する。該基は、炭素および水素以外の一つ以上の原子(「ヘテロ原子」)を含み得、ただし該原子は、該基のヒドロカルビルの性質には本質的に影響しないものである。
【0012】
ルイス塩基(B)は、エーテル、アルコール、ケトン、アルデヒドおよびエステルなどの酸素および/または硫黄含有求核基、ならびにチオエーテルおよびチオケトンなどの硫黄含有求核基から選択される。適切なルイス塩基の具体例としては、それぞれのヒドロカルビル基が独立してC1〜C12ヒドロカルビルから選択される非環式ジヒドロカルビルエーテル、5〜7員環基を有する環式エーテル、それぞれのヒドロカルビル基が独立してC1〜C12ヒドロカルビルから選択されるジヒドロカルビルケトン、C1〜C12脂肪族アルコール、C1〜C12脂肪族アルデヒド、それぞれのヒドロカルビル基が独立してC1〜C12ヒドロカルビルから選択される非環式脂肪族エステル、5〜7員環基を有する環式脂肪族エステル、それぞれのヒドロカルビル基が独立してC1〜C12ヒドロカルビルから選択されるジヒドロカルビルスルフィド、およびそれぞれのヒドロカルビル基が独立してC1〜C12ヒドロカルビルから選択されるジヒドロカルビルチオカルボニル化合物が挙げられる。上述のルイス塩基のヒドロカルビル基は、好ましくはアルキル基、より好ましくはC1〜C4アルキルである。上述のルイス塩基のヒドロカルビル基および環式脂肪族基は、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはヘテロ原子含有部分で置換され得、ルイス塩基として機能するかかる化合物(例えば、C1〜C4「低級アルキル」基)の能力を有意に阻害しない他の置換基でさらに置換され得る。
【0013】
「開始剤」は、外来性の水の存在下または非存在下およびプロトントラップの存在下で、重合を開始し得る化合物として定義される。本発明の開始剤(RX)は、ヒドロカルビルR基を含み、Xに対する炭素連結基(carbon linking group)Rは、安定なカルボカチオン(例えば、t-ブチル+)を形成し得る第三級、ベンジル性またはアリル性のヒドロカルビル基であり、X基はハロゲンである。
【0014】
重合媒体は、ヘキサンまたは飽和および不飽和のC4炭化水素の混合物などの実質的または完全に無極性の媒体でなければならない。
【0015】
本発明の重合プロセスにおいて、供給原料は、純粋なイソブチレンまたは例えばナフサの熱または触媒クラッキング操作により生じるC4カットなどのイソブチレンを含む混合C4ヒドロカルビル供給原料であり得る。したがって、適切な供給原料は典型的に、供給物の総質量に対して少なくとも10質量%および100質量%までのイソブチレンを含む。イソブチレンに加えて、工業的に重要な供給原料としての使用に適した従来のC4カットは典型的に、約5%〜約50%のブテン-1、約2%〜約40%のブテン-2、約2%〜約60%のイソブタン、約2%〜約20%のn-ブタンおよび約0.5%までのブタジエン(全てのパーセンテージは、総供給物質量に対する質量による)を含む。イソブチレンを含む供給原料は、例えば典型的に25%未満、好ましくは約10%未満、最も好ましくは5%未満の少量の、プロパジエン、プロピレンおよびC5オレフィンなどの他の非C4重合性オレフィンモノマーも含み得る。C4カットは、水、極性不純物およびジエン類を除去する従来の手段により精製され得る。
【0016】
用語「ポリブテン」は、本明細書で使用される場合、イソブチレンのホモポリマーだけでなく、イソブチレンとその他の従来のC4カットのC4重合性モノマー、ならびに5個の炭素原子を含む非C4エチレン性不飽和オレフィンモノマーの1つ以上のコポリマーを含むことを意図し、ただしかかるコポリマーは、典型的に、ポリマー数平均分子量(
【化2】
)に対して、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも65質量%、最も好ましくは少なくとも80質量%のイソブチレン単位を含む。
【0017】
ルイス酸とルイス塩基は、例えばルイス酸を溶媒(例えば、ジクロロメタンまたは1,2-ジクロロエタン)に溶解して溶液を形成し、次いで該溶液を撹拌しながら該溶液にルイス塩基を添加することにより複合体化され得る。該複合体は、溶媒と共に重合化媒体に添加され得、代替的に、該溶媒は、複合体の重合化媒体への添加前に除去され得る。
【0018】
複合体中のルイス塩基に対するルイス酸のモル比は、典型的に、約1:0.5〜約1:2、好ましくは約1:0.7〜約1:1.5、より好ましくは約1:0.8〜約1:1.2、例えば約1:0.9〜約1:1.1の範囲内または1:1に維持される。
【0019】
本発明の方法に使用されるルイス酸-ルイス塩基複合体の量は、ポリブテンポリマー生成物、ブテンの変換およびポリブテンの収率の目標
【化3】
を達成するための開始剤およびモノマーの濃度、反応時間および温度に関して調節され得る。上記のことを考慮すると、ルイス酸-ルイス塩基複合体は典型的に、約1mM〜約200mM、好ましくは約5mM〜約100mM、より好ましくは約10mM〜約50mM、例えば約10mM〜約30mMの、反応混合物1リットル当たりのルイス酸-ルイス塩基複合体のミリモル濃度で、液相反応混合物中のブテンモノマーに接触するのに十分な量で使用される。
【0020】
開始剤は典型的に、ルイス酸-ルイス塩基複合体の量とは独立して、約1mM〜約200mM、好ましくは約5mM〜約100mM、より好ましくは約10mM〜約50mM、例えば約10mM〜約30mMの、媒体1リットル当たりの開始剤のミリモル濃度で、液相反応混合物中のブテンモノマーに接触するのに十分な量で使用される。
【0021】
重合反応は、バッチワイズ(batch-wise)で、半連続的にまたは連続的に実施され得る。工業的スケールでは、重合反応は、好ましくは連続的に実施される。管状反応器、管束反応器またはループ反応器、すなわち反応材料が連続して循環する管または管束反応器などの従来の反応器が使用され得る。
【0022】
重合反応は液相中で実施され、環または分岐の形成とは逆に、直線状または鎖状の重合が誘導される。したがって、周囲温度下で気体状の供給物が使用される場合、供給物を液相中に維持するために、反応圧を調節し、および/または供給物を不活性溶媒または液体希釈剤に溶解することが好ましい。供給物を含む典型的なC4カットは、圧力下で液体であり、溶媒または希釈剤を必要としない。該プロセスでの使用に適した典型的な希釈剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン等のC3〜C6アルカンが挙げられる。
【0023】
ルイス酸-ルイス塩基複合体は典型的に、溶媒に部分的もしくは完全に溶解された液体として、または固体として反応器内に導入される。好ましくは、重合は、反応温度でC4供給物を液状に維持するのに十分な圧力またはより高い圧力で実施される。開始剤は、ルイス酸-ルイス塩基複合体と共に液体形態でモノマー供給物もしくは反応混合物に導入され得るか、または好ましくは、ルイス酸-ルイス塩基複合体添加ラインとは別のラインにより、液体形態でモノマー供給物もしくは反応混合物に導入される。
【0024】
液相反応混合物温度は、典型的には約-30℃〜約+50℃、好ましくは約-10℃〜約+30℃、より好ましくは0℃〜約+20℃、例えば0℃〜約+10℃となるように、従来の手段により調節される。
【0025】
重合されるブテンの滞留時間は、約5秒〜数時間であり得るが、典型的には約1〜約300分、例えば2〜約120分、好ましくは約5〜約60分である。
【0026】
反応器中の触媒の均一な分散を確実にするために、混合により、またはバッフルプレートもしくは振動バッフルなどの適切なバッフルを用いて、または反応器管断面を、適切な流速が確立されるのに必要な大きさにすることにより、反応器内容物の乱流が生じ得る。
【0027】
本発明の方法は、典型的には、約20%〜約100%、好ましくは約50%〜約100%、より好ましくは約70%〜約100%の範囲のイソブチレン変換を達成するように実施される。温度制御および触媒供給速度の併用により、約400ダルトン〜約4000ダルトン、好ましくは約700ダルトン〜約3000ダルトン、より好ましくは約1000ダルトン〜約2500ダルトンの
【化4】
を有し;典型的に約1.1〜約4.0、好ましくは約1.5〜約3.0の分子量分布(MWD)を有し;ポリマーの総モル数に対して、50mol%より高い、好ましくは60mol%より高い、より好ましくは70mol%より高い、例えば約80mol%〜約95mol%のエキソ-オレフィン含量;約20mol%未満、例えば約15mol%未満、好ましくは約10mol%未満、より好ましくは約5mol%未満の四置換オレフィン含量;および約10mol%未満、例えば約5mol%未満、好ましくは約2mol%未満、より好ましくは約1mol%未満の塩素含量を有するポリブテンの形成が可能になる。
【0028】
ポリマーの目標分子量が達成されると、ポリマー生成物は、反応器から排出され得、重合触媒を不活性化し、かつ重合を終結させる媒体中に送られ得る。適切な不活性化媒体としては、水、アミン、アルコールおよび腐食薬(caustic)が挙げられる。次いで、残存C4炭化水素および低分子量オリゴマーを留去することにより、ポリイソブチレン生成物を分離し得る。好ましくは、通常、水または腐食薬で洗浄することにより残存量の触媒が除去される。
【0029】
本発明は、本発明の範囲内にある全ての可能な態様を列挙することを意図せず、かつそのように解釈されるべきでない以下の実施例についての参照により、さらに理解されよう。
【実施例】
【0030】
実施例
ルイス酸(LA)ルイス塩基(LB)複合体の調製
全ての操作は、乾燥N2雰囲気MBraun 150-Mグローブボックス(Innovative Technology Inc., Newburyport, MA)中で行った。最初に、LA(3.9mmol)を、隔膜を有するねじ頂部を備えた20mlバイアル中の3.36mlのジクロロメタンに溶解した。バイアルを0℃に冷却して、1M複合体を形成した。次いで、溶液を撹拌しながら、1分間かけてLB(3.9mmol)を滴下した。溶液を+25℃に維持して、調製から1時間以内に使用した。
【0031】
重合
重合は、乾燥N2雰囲気MBraun 150-Mグローブボックス(Innovative Technology Inc., Newburyport, MA)中で行った。重量測定法で収率を測定した。数平均分子量(
【化5】
)および多分散度指数(PDI)をサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。1H NMRにより末端基の分布を測定した。反応が完了へとさらに導かれ得るかどうかの一つの指標である未反応塩素付加PIB(PIB-Cl)の量を、プロトンNMR分光学により測定した。
【0032】
実施例1(比較)
1:1のモル比のLA.LB複合体AlCl3.ジブチルエーテル(0.022M)を使用して、ヘキサン中、-20℃で20分間イソブチレン(IB)(1M)を重合させた。IBおよびヘキサンは、隔膜を有するねじ頂部を備えた75ml培養チューブ内であらかじめ混合した。LA.LB複合体は最後に添加した。過剰な量の水性NH4OHを使用して重合をクエンチした。
【表1】
【0033】
示されるように、AlCl3は、開始剤を添加することなく、ヘキサン中でIBを重合させる。開始は、調節が困難な不十分な量の外来性の水による。モノマー変換は低く、多分散度は高かった。
【0034】
実施例2(比較)
LA.LB複合体AlCl3.ジイソプロピルエーテル(0.02M)を0℃で使用した以外は実施例1と同様にIBの重合を行った。
【表2】
【0035】
モノマー変換は低いままであり、多分散度は高いままであった。より高い重合温度により収率は増加したが、同時により多くの異性化が生じた。
【0036】
実施例3(比較)
1:1のモル比のLA.LB複合体AlCl3.ジブチルエーテル(0.022M)を使用して、ジクロロメタン/ヘキサン80/20(v/v)中、クミルアルコール(CumOH、0.018M)および2,6-ジtert.-ブチルピリジン(DTBP、0.006 M)の存在下、-40℃で3分間IB(1M)を重合した。IB、ヘキサン、CumOHおよびDTBPは、隔膜を有するねじ頂部を備えた75ml培養チューブ内であらかじめ混合した。LA.LB複合体は最後に添加した。過剰な量の水性NH4OHにより重合をクエンチした。
モノマー変換:0%。
【0037】
DTBP(プロトントラップ)により鎖転移が抑制された場合に、開始剤を添加して変換が達成されなかったことは、開始は、外来性の水のみによるということを示す。添加した開始剤として、クミルアルコールは、ヘキサン中のAlCl3によりイオン化され得ない。
【0038】
実施例4(比較)
60分間にした以外は実施例1と同様にIBの重合を行った。
【表3】
【0039】
モノマー変換は低いままであり、多分散度は高いままであったが、重合時間は増加した。
【0040】
実施例5(比較)
2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン、すなわち「TMPCl」(0.015M)の存在下とした以外は実施例4と同様にIBの重合を行った。
【表4】
【0041】
実施例5と実施例4の比較により、AlCl3がLAである場合は、TMPClは重合を開始しないことが示される。変換、Mnおよび末端基分布は実質的に同じままであった。
【0042】
実施例6(比較)
1:1のモル比のLA.LB複合体AlCl3.ジイソブチルエーテル(0.022 M)を使用して、TMPCl(0.015M)およびDTBP(0.006M)の存在下、0℃で20分間、ヘキサン中でIB(1M)を重合させた。IB、ヘキサン、TMPClおよびDTBPを、隔膜を有するねじ頂部を備えた75ml培養チューブ内であらかじめ混合した。LA.LB複合体は最後に添加した。過剰な量の水性NH4OHを用いて重合をクエンチした。
モノマー変換:0%
【0043】
実施例3と同様に、DTBP(プロトントラップ)により鎖転移が抑制された場合に、開始剤を添加しても変換は達成されず、これは、開始は外来性の水のみを介することを示す。添加した開始剤としてのTMPClは、ヘキサン中のAlCl3.ジイソブチルエーテルによりイオン化され得ない。
【0044】
実施例7(比較)
1:1のモル比のLA.LB複合体AlCl3.ジイソプロピルエーテル(0.02M)を使用して、t-ブチルアルコールすなわち「tBuOH」(0.015M)の存在下、0℃で20分間、ヘキサン中でIB(1M)を重合させた。IB、ヘキサンおよびtBuOHは、隔膜を有するねじ頂部を備えた75ml培養チューブ内であらかじめ混合した。LA.LB複合体は最後に添加した。過剰な量のメタノールにより重合をクエンチした。
【表5】
【0045】
添加した開始剤としてのtBuOHは、実施例2(開始剤として外来性の水)と比較して変換を向上しなかったが、エキソ含量は増加した。
【0046】
実施例8(比較)
TMPClの代わりに塩化クミル(CumCl)を使用して、AlCl3.ジイソブチルエーテルの代わりにAlCl3.ジイソプロピルエーテルを使用した以外は、実施例6と同様にIBの重合を行った。
モノマー変換:2%
【0047】
実施例6と同様に、DTBP(プロトントラップ)により鎖転移が抑制された場合に、開始剤を添加しても変換は達成されず、これは、開始は外来性の水のみによることを示す。添加した開始剤としてのCumClは、ヘキサン中のAlCl3.ジイソプロピルエーテルによりイオン化され得ない。
【0048】
実施例9(比較)
1:1のモル比のLA.LB複合体GaCl3.ジイソプロピルエーテル(0.02M)を使用して、ヘキサン中、0℃で20分間、IB(1M)を重合させた。IBおよびヘキサンは、隔膜を有するねじ頂部を備えた75mlの培養チューブ内であらかじめ混合した。LA.LB複合体の添加により重合が開始した。過剰な量の水性NH4OHにより重合をクエンチした。
【表6】
【0049】
開始剤の非存在下、開始は外来性の水のみによるものであり、モノマー変換は低いままであった。
【0050】
実施例10(発明)
1:1のモル比のLA.LB複合体GaCl3.ジイソプロピルエーテル(0.02M)を使用して、TMPCl(0.02M)の存在下、0℃で20分間、ヘキサン中でIB(1M)を重合させた。IB、ヘキサンおよびTMPClは、隔膜を有するねじ頂部を備えた75mlの培養チューブ内であらかじめ混合した。LA.LB複合体の添加により、重合が開始した。過剰な量の水性NH4OHにより重合をクエンチした。
【表7】
【0051】
実施例11(比較)
LA GaCl3(0.02M)を使用して、TMPCl(0.02M)およびイソプロピルエーテル(0.02M)の存在下、0℃で20分間、ヘキサン中でIB(1M)を重合させた。IB、ヘキサン、イソプロピルエーテルおよびTMPClは、隔膜を有するねじ頂部を備えた75mlの培養チューブ内であらかじめ混合した。ヘキサン(0.02 M)中GaCl3の1M溶液の添加により、重合を開始した。過剰な量の水性NH4OHにより重合をクエンチした。
【表8】
【0052】
実施例10と比較する。ルイス塩基(イソプロピルエーテル)を最初にGaCl3と複合体化させなかった場合、エキソ-オレフィン含量は、異性化および切断(cleavage)のために減少する。
【0053】
実施例12(発明)
TMPCl.[tBuCl]=0.01Mの代わりに2-クロロ-2-メチルプロパン(tBuCl)を使用した以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
【表9】
【0054】
実施例10と比較する。TMPClと比較してより低い濃度のtBuClにより、より高いMWおよび同様のエキソ-オレフィン含量が生じた。
【0055】
実施例13(比較)
TMPClの代わりに2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン(tBuOH)を使用した以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
【表10】
【0056】
実施例10と比較する。TMPClと比較して、開始剤としてtBuOHを用いると、有意な異性化および切断が生じ、変換はほとんど見られない。
【0057】
実施例14(発明)
重合時間を40分に増加した以外は実施例12と同様にIBの重合を行った。
【表11】
【0058】
実施例12と比較する。より長い反応時間により、一定のMWで、変換が増加し、PIB-Clが減少し、エキソ-オレフィン含量が増加した。
【0059】
実施例15(比較)
TMPClを使用しない以外は、実施例12と同様にIBの重合を行った。
【表12】
【0060】
実施例12と比較する。開始剤の非存在下で、外来性の水のみによる開始では、モノマー変換は低い。
【0061】
実施例16(比較)
2,6-ジ-tertブチルピリジン(DTBP);[DTBP]=0.005Mの存在下とした以外は実施例15と同様にIBの重合を行った。
【表13】
【0062】
実施例15と比較する。DTBP(プロトントラップ)により鎖転移が抑制されることにより、開始は外来性の水のみによることが示される。
【0063】
実施例17(発明)
[DTBP]=0.005Mの存在下とした以外は実施例10と同様にIBの重合を行った。
【表14】
【0064】
実施例10と比較する。DTBPにより収率は減少するが、排除はされない。MWおよびエキソ-オレフィン含量は維持される。AlCl3を用いた実施例6と比較すると、DTBPの存在下で変換は達成されなかった。
【0065】
実施例18(発明)
+10℃とした以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
【表15】
【0066】
実施例10と比較する。より高温で、変換、MWおよびエキソ-オレフィン含量は維持された。
【0067】
実施例19(発明)
[IB]=4Mとした以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
【表16】
【0068】
実施例10と比較する。モノマーに対してより低いモル比の触媒により、MWが増加し、収率が減少するが、エキソ-オレフィン含量は維持される。
【0069】
実施例20(発明)
GaCl3.2,4-ジメチル-3-ペンタノンLA.LB複合体を使用した以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
【表17】
【0070】
実施例10と比較する。ケトンは、同等のMWおよびエキソ-オレフィン含量を有してルイス塩基として有効であるが、変換はより低い。
【0071】
実施例21(比較)
GaCl3.トリエチルアミンLA.LB複合体を使用した以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
モノマー変換:0%
実施例10と比較する。トリエチルアミンは効果的な塩基ではない。
【0072】
実施例22(比較)
SnCl4.ジイソプロピルエーテルLA.LB複合体を使用した以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
モノマー変換:0%
実施例10と比較する。SnCl4は効果的なルイス酸触媒ではない。
【0073】
実施例23(比較)
SbCl5.ジイソプロピルエーテルLA.LB複合体を使用した以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
モノマー変換:0%
実施例10と比較する。SbCl5は効果的なルイス酸触媒ではない。
【0074】
実施例24(発明)
FeCl3.ジイソプロピルエーテルLA.LB複合体を使用した以外は、実施例10と同様にIBの重合を行った。
【表18】
【0075】
実施例10と比較する。同様のMWでより高いエキソ-オレフィン含量を有し、FeCl3は効果的なルイス酸触媒であるが、変換は低い。
【0076】
実施例25(発明)
1:1のモル比のLA.LB複合体FeCl3.クロロメチルエチルエーテル(0.02M)を使用して、tBuCl(0.02M)の存在下、0℃で20分間、ヘキサン中でIB(1M)を重合した。IB、ヘキサンおよびtBuClは、隔膜を有するねじ頂部を備えた75mlの培養チューブ内であらかじめ混合した。LA.LB複合体の添加により、重合が開始した。過剰な量の水性NH4OHにより重合をクエンチした。
【表19】
【0077】
実施例26
種々のルイス酸およびルイス塩基の組み合わせならびに複合体を使用して、ヘキサン中[TMPCl]=0.02M、0℃、20分間での[IB]=1Mの重合を行った。それぞれの場合、重合はNH4OHで終結させた。
【表20】
【0078】
実施例27(発明)
ヘキサン中[TMPCl]=0.02M、0℃、20分間での[IB]=1Mの重合。NH4OHで終結。
【表21】
【0079】
実施例28(発明)
ヘキサン中0℃での[HfCl4.iPr2O]=0.02M(450nmのPTFE膜により濾過したDCM溶液)、[tBuCl]=0.01Mによる[IB]=1Mの重合。MeOHで終結。
【表22】
【0080】
実施例29(発明)
C4供給物組成、IB=35%、1-ブテン=10%、2-ブテン=6%、ヘキサン=49%中0℃でのIBの重合。
【表23】
【0081】
実施例30(発明)
C4供給物組成、IB=44%、1-ブテン=26.4%、トランス2-ブテン=14.7%、ヘキサン=14.5%中0℃でのIBの重合。
【表24】
【0082】
本発明を説明するために特定の例示的な態様および詳細を提供してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示されるものからの種々の生成物および方法の変化がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定する。
【0083】
全ての引用される特許、試験手順、優先権書類および他の引用される書類は、参照による援用が可能になる全ての支配権について、これらのものが本明細書と一致する程度にまで参照により十分に援用される。
【0084】
本発明の特定の特徴は、一連の数値上限および一連の数値下限によって記載される。本明細書には、これらの限度の任意の組み合わせで形成される全ての範囲が開示される。本明細書に記載される上限および下限、ならびに範囲および比の限度は、独立して組み合され得ること、これらの限度の全ての組み合わせは、そうではないと示されなければ本発明の範囲内にあることが理解されよう。