(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同じ搬送波波長で反対方向に光ファイバ媒体を介して光データ信号を伝送する方法であって、受動光学要素を備えることができ、また光ファイバ線に/からデータ信号を入力/出力するための透過双方向信号分配器で終端された光ファイバ線を使用することを含み、あらかじめ、もしくは前記方法の実施中に、光受信器の入力部位に到達する反射信号電力全体を、特定の光通信システムで測定もしくは計算し、前記測定値又は計算値を、前記受信器によるデータ信号抽出のために許容可能な最大ノイズ電力と比較し、次いで、送信器と前記受信器との間の前記光信号の経路における高反射要素を除去及び/または再分散することによって、または前記要素を低反射要素に交換することによって、前記光受信器の前記入力部位に到達する前記反射信号の電力全体を、前記光受信器の前記入力部位に到達する光信号全体から標的光信号を分けるために許容可能なレベルにまで低減し、前記光信号の伝送を、特定の光通信システムに対して同じ搬送波波長で反対方向に行う、方法。
【背景技術】
【0002】
最大10Gbpsのデータレートを有する高速二重チャネルを作り出すために、SFP+モジュールを使用することが知られている(http://en.wikipedia.org/wiki/Small_form−factor_pluggable_transceiver#cite_note−spec−11,SFF−8431)。例えば、WDM SFP+モジュールは、単一ファイバで二重通信チャネルを作り出すためのものである。
【0003】
前記方法の欠点は、ファイバの使用効率が低いこと、および同じファイバに同時に他のデバイスを接続することが不可能なことである。
【0004】
同じファイバを介して同じ波長で異なる方向に2つのデータストリームを伝送するために光サーキュレータを使用することが知られている(米国特許第5212586号明細書)。光サーキュレータは、完全受動デバイスであり、その動作原理は、偏光面の非相反的回転の効果(いわゆる、ファラデー効果)に基づく。2つの互いに直交する偏光面を、データ伝送で使用する。それらの一方がある方向に光信号を伝え、他方が反対方向に光信号を伝える。
【0005】
前記方法の欠点は、光サーキュレータの価格によって決まるコストが比較的高いこと、およびファイバの使用効率が低いことがある(この効率は、光サーキュレータの透明窓によって限定される)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
二重チャネルを作り出す既存の方式は、信号受信および伝送のために、2つのファイバまたは2つの波長のいずれかを必要とする。しかしながら、これらの方法は、二重通信チャネルを設けるために、大量の限られた資源(光ファイバおよびスペクトルバンド)を必要とするため、効果的ではない。例えば、標準CWDMシステムはこれらの方式を使用しており、1ファイバあたり8つの二重チャネルしか作り出せない。
【0010】
本明細書で提供する方法は、方向を分割するために、(例えば、波長または偏光による)信号の選択的分割の何らかの技術を使用する必要が無く、さらなる信号多重化のための用途を広げる。
【0011】
また、本方法を使用する二重チャネルの作成においては、チャネルが、従来の方法でのような2キャリアではなく1キャリアしか使わないため、4光波混合干渉が発生しない。
【0012】
さらに、本方法は、基本的にスペクトル多重化要素を光ファイバに接続する方式を変更するので、従来のポイント・ツー・ポイント方式に加えて、高速分散単一ファイバ通信ネットワークの生成を可能にする。
【0013】
本方法を波長分割多重化方法(WDM、CWDM、DWDMなど)と組み合わせて使用することで、光ファイバの使用効率を2倍に増やし、本方法で作成された通信チャネルの信頼性を向上し、受動波長分割多重化要素の必要な量を大幅に少なくすることによって、チャネルコストを下げる。
【0014】
使用結果(使用した波長分割多重化方法による)
注意:この表は、単一ファイバ、すなわち、8チャネルCWDMのための従来の波長分割多重化(WDM)方法との比較を示す。
【0015】
本方法は、3年間、事業者ネットワークで試験され、効果が証明された。
【0016】
本方法を適用するための基本は、標準パラメータを有する均質ファイバの物理特性により決まる光信号の送信中に、ファイバで生成される反射信号の電力全体が無視できると仮定することであった。
【0017】
均質ファイバにおける反射信号のレベルを評価するために、十分長い均質ファイバにおける放射入力点で、反射信号のパラメータを測定するための多くの実験を行った。
【0018】
主な標準型の単一モードファイバの場合の実験結果は、反射信号レベルが−55から−70dBであることを示した。
【0019】
推定によれば、標準単一モードファイバ開口部の場合、実用的な最大長のファイバにおける反射信号レベルは、−55dBを超えられないことが示唆される。
【0020】
算出および測定の結果、以下のことが示唆される。
【0021】
光信号の送信中に、光通信システムの入力部位で受信した反射信号電力の最大部分は、光ファイバ媒体の高反射点で生成され、一方、標準パラメータを有する均質ファイバの物理特性により決まる戻り放射電力のパーセンテージは無視できる。
【0022】
通信システムの高反射点(以下、反射要素)は、例えば、コネクタとすることができ、受動光学要素(減衰器、CWDMコンポーネントなど)を採用することができる。
【0023】
したがって、1つの単一モードファイバを介して同じ波長の光信号を反対方向に送信するためには、受信器の入力部位において、通信システムの反射要素によって生成される反射信号(ノイズ)が、データ信号を確実に抽出するのに十分低ければ足りる。
【0024】
使用した算出モデルは、
−光送信器;
−光受信器;
−任意の双方向(透過)信号結合/分割デバイス(例えば、光学スプリッタ/カプラー);
−他の受動光学コンポーネントからなる光ファイバ媒体;
−例えば、カプラー/スプリッタ、波長分割多重化要素、コネクタなどとすることができる反射要素
を備える。
【0025】
この方式の場合、光ファイバ媒体の内部で反射した信号のレベルは、ノイズ全体に主として、ならびに最も大きく影響し、光受信器の最小許容可能ノイズレベルよりも低くするべきである。
【0026】
DLFWチャネルの設計および/または本明細書で提供する方法による既存の通信システム内での作成の間、送信器信号の経路内で生じる反射要素のすべてによって生成され、光受信器に到達する反射信号の電力全体を主に算出すべきである。
【0027】
受信器の入力部位での反射信号の総電力P
refは、信号の経路内で生じる反射要素のそれぞれから受信器の入力に到達する反射信号の電力の合計に等しい。
【0028】
n個の反射要素を備える方式の場合、
であり、ここで、P
refは、光受信器に到達する反射信号の総電力であり、P
ref_iは、i番目の反射要素から受信器に到達する反射信号の電力である。
【0029】
i番目の反射要素から受信器に至る光学電力P
ref_iは、i番目の反射要素の対数電力レベルp
ref_iに基づき計算され、:
であり、これは
で算出される。ここで、p
trは、送信器信号レベル(dBW)であり、A
iは、送信器の閉端とi番目の反射要素との間の光学的損失(dB)であり、A
ref_iは、i番目の反射要素の戻り損失(dB)(反射要素仕様の場合)、A
ret_iは、i番目の反射要素と受信器閉端との間の逆方向光学的損失(dB)である。
【0030】
その場合、
であり、したがって、
である。
【0031】
受信器の入力部位での総反射信号の対数レベルは、
すなわち
である。
【0032】
以下の仮定は、受信器入力でのノイズを算出するためのものである。
1.反対側の端から反射された信号の電力は、その経路における大きな損失(二重線損失に等しい)を踏まえて無視できると考えられる。例えば、(スプリッタでの損失を踏まえて)15dBの損失および機械的接続での16dBの反射損失を伴うシステムの場合、反対側の端から反射され、光受信器の入力部位に到達する信号の電力レベルは、(送信電力レベルが0dBWである場合)−46dBWであり、一方、このレベルの損失を伴うシステムで使用される受信器の感度は、少なくとも−26dBWである。
2.受信器入力部位での二次反射信号ノイズ(反射からの反射)の電力は、無視できる。計算によれば、受信器入力部位での二次反射信号ノイズ電力レベルは、一次反射信号の総ノイズ電力よりも60dB以上低いことが示唆される。
3.均質ファイバにおける信号反射電力レベルは、無視できる(−55dB)。
【0033】
上記または他の理由に起因する受信器入力での総ノイズ電力レベルは、無視できると考えられ、考慮に入れない。
【0034】
受信器入力部位での反射信号の算出された電力レベルp
n_refは、他の種類のノイズ(遠端反射、均一ファイバにおける反射、および隣接CWDMチャネルからのノイズを含む)に対する3dBの安全率(すなわち、50%)を有する装置仕様で示される受信器の最大許容可能ノイズp
max_n_rec(典型的に、−35から−40dB)と比較される。
【0036】
さらに、装置仕様が受信器入力部位での最小許容対数信号ノイズ比(p
min_snr,dB)を定義する場合、
であり、p
recは、受信器入力部位で受信した反対側送信器端末からの信号の有効レベルである。
【0037】
上記の条件は、データ信号の伝送に関係する全デバイスで満たされるべきである。すべての測定および算出は、必要な波長に対してなされる。
【0038】
解析結果並びに、光ファイバ媒体の要素組成に基づき、送信器と受信器との間の光信号の経路における高反射要素の除去及び/または再分散によって、またはより低い反射要素に前記要素を置き換えることによって、光受信器の入力部位に到達する光信号の総電力は、光受信器の入力部位に到達する全光信号から有益なデータ信号を抽出するために許容可能なレベルに下げられる。これにより、光信号の伝送は、特定の光ファイバ通信システムに対して同じ波長で反対方向に実現される。
【0039】
本方式は、波長分割多重化を伴う、または伴わないシステムにおけるチャネルの安定動作を提供し、使用する波長分割多重化の種類は重要ではない(WDM、CWDM、DWDM、HDWDM)。
【0040】
本方式は、波長分割多重化を伴わずに、またはさらなる波長分割多重化(WDM、CWDM、DWDM)を伴って実現することができる。
【0041】
商業用に実現することができる本方法による方式の一実施形態において、n個の二重チャネルは、n個の波長バンドを使用する1つの光ファイバ媒体で作成され、ただ1つの光学バンドを、光ファイバ媒体の1チャネルでの信号の受信および送信の両方のために使用する。
【0042】
本方式のユニットおよび要素の機能は、次の通りである。
1)光送信器:特定のチャネル専用の搬送波波長で変調光データ信号を生成する(能動要素)。
2)光受信器:特定のチャネル専用の搬送波波長で変調光データ信号を受信および処理する(能動要素)。
3)双方向(透過)カプラー/スプリッタ:非選択的(波長分割を伴わない)光信号スプリッティングを確実にするために、光学伝送および受信チャネルの結合/分割を行う双方向(透過)結合/分割デバイス(受動要素)。
4)少なくとも1つの光ファイバからなる光ファイバ線
5)波マルチプレクサまたはOADMコンポーネント:1つのファイバを介して異なる波長で複数の光信号の送信を可能にする波長分割マルチプレクサまたはコンポーネント(受動要素)。
【0043】
本方式は、以下のように動作する。
光送信器は、特定のチャネル専用の搬送波波長で変調光データ信号を生成する。次いで、信号は、双方向(透過)カプラー・ドロップ・スプリッタ(coupler drop−splitter)の出力部位の1つに到達し、さらに、チャネルの受信信号ならびに送信信号を送信した双方向OADMに到達する。次いで、信号は、単一光ファイバ線を介して、異なる搬送波波長を有する他のチャネルの信号と共に伝搬する。光ファイバ線の出力部位では、必要なチャネルが、OADMコンポーネントによって他のチャネル信号から分離され、双方向(透過)カプラー/スプリッタの共通入力に供給される。
【0044】
カプラー/スプリッタに到達する信号は、2つに分割される。信号の一部は、レーザ絶縁体に供給されて減衰し、他の出力の信号は、信号を処理する光受信器に到達する。
【0045】
光ファイバ通信システムのすべての受動要素は、2方向に、同時に信号を伝送することを確実にする。本方式が波長分割多重化を伴う光学システムで使用される場合、すべてのカプラー/スプリッタは、グループ化された信号伝搬範囲を越えて取り付けられ、したがって、システム全体ではなくただ1つのチャネルの信号に損失を加える。
【0046】
本システムはまた、同じ波長で反対方向に異なるチャネルからの信号を送信することが可能であり、既存のWDMチャネルのバンド密度をさらに高める。
【0047】
受信器の入力部位での反射信号レベルを測定する場合、送信器の閉端がオンであり、送信器の遠端がオフである場合に前記受信器の入力部位に到達する信号のレベルを測定することで十分である。
【0048】
以下は、本方式の実際の試験の結果である。受信および伝送のために1つの搬送波波長を使用する単一ファイバにおける二重通信チャネルを作り出す方法の実施形態の試験により、その運用性が証明され、本明細書で述べた目的を達成したことを確認した。
【0049】
該試験におけるシステムは、波長分割マルチプレクサおよび50/50スプリッタとして標準OADM/CWDMコンポーネントを備え、0.32ならびに0.35dBの損失を持つファイバおよび2つの10dBの減衰器によってシミュレートされた。各減衰器は、APCのFCソケットに接続した。端末装置は、LC型ソケットに接続した。
【0050】
試験は、1310、1330、1350、および1370nm搬送波波長で、4つの二重チャネルに対して行った。
【0051】
試験結果は、受信および伝送のために1つの搬送波波長を使用する単一ファイバにおける二重通信チャネルを作り出すための回路に対する試験レポートで提示する。
【0052】
選択したSFPモジュールの受信器感度が40dBであると見込み、その動作性は、37dB(SFP150km Syoptec,1GB)の感度で保証された。これらの結果は、既存の光ファイバおよびスペクトルバンドの使用効率を改善するために、単一ファイバにおいて選択した波長のそれぞれで二重チャネルを作り出すことの実現性を証明した。
【0053】
現在、本方式を使用して作り出された約50の通信チャネルが、事業者ネットワークで使用されている。