(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  布団カバーを開いた状態において、前記部位が布団カバーの裏面側に配され、かつ該部位の面積比率が、裏面の表面積対比3%以上である、請求項1に記載の布団カバー。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<布帛a>
  本発明の布団カバーは単繊維径が10〜10000nmの繊維Aを含む布帛aからなる部位を有する。
 
【0009】
(繊維A)
  前記繊維Aにおいて、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜10000nm(好ましくは10〜1000nm、より好ましくは250〜800nm、特に好ましくは510〜800nm)の範囲内であることが肝要である。該単繊維径が10nmよりも小さい場合は繊維強度が低下するため実用上好ましくない。逆に、該単繊維径が10000nmよりも大きい場合は、十分な滑り止め効果が得られないおそれがあり好ましくない。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
  前記繊維Aにおいて、フィラメント糸(長繊維)の場合、フィラメント数は特に限定されない。優れた滑り止め効果を得る上で500本以上(より好ましくは2000〜50000本)であることが好ましい。また、該フィラメント糸の総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、30〜800dtexの範囲内であることが好ましい。
  前記繊維Aの繊維形態は特に限定されず、短繊維でもよいし長繊維(フィラメント糸)でもよい。なかでも長繊維(フィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
 
【0010】
  前記繊維Aを形成するポリマーの種類としては特に限定されないが、ポリエステル系ポリマー又はナイロン系ポリマーが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクル又はケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物及びチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルや、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸でもよい。前記ポリエステルポリマー中には、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種又は2種以上含まれていてもよい。
 
【0011】
(繊維B)
  本発明の布団カバーに含まれる布帛aは、前記繊維Aだけで構成されてもよいが、前記繊維Aと、他の繊維として単繊維径が10000nmより大の繊維Bとで構成されると、布帛aの保形性が向上し好ましい。
  ここで、前記繊維Bは、その単繊維径が10000nmより大(好ましくは10〜33μm)であることが好ましい。なお、33μmは繊度に換算すると約10dtexである。該繊維Bの単繊維径が10000nm(10μm)以下であると、布帛aの保形性が損なわれるおそれがある。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、前記と同様、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
  前記繊維Bにおいて、フィラメント糸(長繊維)の場合、フィラメント数は特に限定されないが、1〜300本の範囲内であることが好ましい。総繊度は10〜800dtexの範囲内であることが好ましい。
  また、かかる繊維Bの繊維形態は特に限定されず紡績糸でもよい。特に、長繊維(マルチフィラメント糸)やポリウレタン繊維等、あるいは両者を使用することが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。また繊維Bは1種類でもよいし、繊維B1、繊維B2、繊維B3・・・・と複数種類でもよい。
 
【0012】
  前記繊維Bを形成するポリマーの種類としては特に限定されない。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステル、ポリエーテルエステル、ウレタンなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクル又はケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物及びチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルやポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸でもよい。なかでも、滑り止め効果をより向上させる場合はポリエーテルエステルやポリウレタンなどの弾性樹脂が好ましい。前記フィラメント糸Bを形成するポリマー中には、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種又は2種以上含まれていてもよい。
  なお、前記繊維Bは複合糸であってもよい。例えば、ポリウレタン繊維やポリエーテルエステル系繊維などからなる弾性繊維糸条と、ポリエステル系繊維糸条とをインターレース空気ノズルなどにより空気混繊させた複合糸、弾性繊維糸条のまわりにポリエステル系糸条をカバリングした複合糸、紡績糸を用いた複合糸などが好ましい。
 
【0013】
  本発明の布団カバーに含まれる布帛において、表裏どちらか一方表面に前記繊維Aが露出していることが好ましい。例えば、前記繊維Aが布団に接触するように使用することにより、布団との摩擦力が向上し、優れた滑り止め効果が得られる。ここで、電子顕微鏡を用いて50倍の倍率で生地表面を撮影し、写真のなかで、繊維Aが占める面積AAと、繊維Bが占める面積BAとを計測し、繊維Aの面積割合(%)(=AA/(AA+BA)×100)の値が30%以上(好ましくは100%)であることが好ましい。特に、前記布帛aの表裏どちらか一方表面に前記繊維Aのみが露出していることが好ましい。前記繊維Aのみが露出している表面を布団側に用いて布団カバーを使用すると、布団との摩擦力が向上し、優れた滑り止め効果が得られる。
 
【0014】
<布帛aの製造>
  布帛aは例えば以下の製造方法により製造することができる。
(繊維A)
  まず、海成分と、その径が10〜10000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維(繊維A用繊維)を用意する。かかる海島型複合繊維としては、特開2007−2364号公報に開示された海島型複合繊維マルチフィラメント(島数100〜1500)が好ましく用いられる。
  すなわち、前記海成分ポリマーとしてアルカリ水溶液易溶解性ポリマーを用いる。かかるアルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
 
【0015】
  一方、島成分ポリマーとしては、繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種又は2種以上含まれていてもよい。
  上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。また、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。その際、島成分の形状が真円でない場合は外接円の直径を求める。前記の海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
 
【0016】
  かかる海島型複合繊維は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型複合繊維は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とすることが好ましい。あるいは、吐出された海島型複合繊維を一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程を通した後に巻き取る方法でも構わない。
  かくして得られた海島型複合繊維(マルチフィラメント)において、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度0.5〜10.0dtex、フィラメント数5〜75本、総繊30〜170dtexの範囲内であることが好ましい。また、かかる海島型複合繊維の沸水収縮率としては5〜30%の範囲内であることが好ましい。
  なお、前記フィラメント糸として、花弁型複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維などの複合繊維からなる極細繊維や、通常の紡糸、延伸工程により得られた極細繊維でもよい。
 
【0017】
(繊維B)
  一方、必要に応じて、単繊維径が10000nmより大の繊維Bを用意する。かかる繊維Bの単繊維繊度としては0.1dtex以上(好ましくは0.1〜50dtex)であることが好ましい。
  前記繊維Bとしては、沸水収縮率10%以上(より好ましくは20〜40%)の範囲内の高収縮ポリエステルか、弾性糸(ポリウレタン弾性糸又はポリエーテルエステル弾性糸)であることが好ましい。なお、前記のような高い沸水収縮率を得るには、共重合ポリエステルを用いて常法により紡糸、延伸するとよい。その際、共重合ポリエステルとしては、共重合ポリエステルの主構成モノマーがテレフタル酸及びエチレングリコールであり、この主構成モノマーに共重合する第三成分が、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA、及びビスフェノールスルフォンからなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。特に、前記の共重合ポリエステルが、酸成分がモル比(テレフタル酸/イソフタル酸)90/5〜85/15のテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、グリコール成分がエチレングリコールからなる共重合ポリエステルであることが好ましい。このような共重合ポリエステルを用いることにより高い沸水収縮率が得られる。
 
【0018】
(布帛aの織編成)
  次いで、前記海島型複合繊維と、必要に応じて繊維Bとを用いて布帛aを常法により織編成する。かかる布帛において、前記海島型複合繊維が布帛の表裏どちらか一方表面に露出することが好ましい。
  その際、前記海島型複合繊維と繊維Bとが混繊糸として布帛中に含まれていてもよいが、前記フィラメント糸Aと前記フィラメントBとを交編又は交織することにより布帛(編物又は織物)を織編成することが好ましい。
  前記海島型複合繊維だけでなく前記繊維Bをも用いる場合、前記海島型複合繊維とフィラメント糸Bとの総繊度比としては、90:10〜20:80の範囲内であることが好ましい。
 
【0019】
  ここで、前記布帛の組織は、織物でもよいし編物でもよいし不織布でもよく特に限定されない。また、前記布帛の組織は特に限定されない。例えば、よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が例示される。たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等などが例示される。織物組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。もちろん、これらに限定されない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。
 
【0020】
(アルカリ水溶液処理)
  次いで、前記布帛にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去すると、海島型複合繊維が単繊維径10〜10000nmの繊維Aとなり、単繊維径が10〜10000nmの繊維Aを含む布帛aが得られる。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。
 
【0021】
(染色加工)
  また、該アルカリ水溶液による溶解除去処理工程の前工程及び/又は後工程において、生地に染色加工を施してもよい。カレンダー加工(加熱加圧加工)やエンボス加工を施してもよい。さらに、常法の起毛加工、撥水加工、さらには、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
 
【0022】
<布団カバー>
  本発明の布団カバーは該布帛aのみで構成されていてもよいが、該布帛aと他の布帛とで構成されていてもよい。例えば、市販の布団カバーの人側裏面(布団と接する面)及び/又は外側裏面(布団と接する面)に前記布帛を縫い付けてもよいし、接着(熱接着又は化学接着)していてもよい。さらには布団カバーの一部を切り欠いて前記布帛を縫い付けてもよいし、前記布帛と他の布帛とを用いてそれぞれをパーツとして縫い合わせて布団カバーとしてもよい。また、前記布帛aが布団カバーの端部から0〜50cmの位置に、縫いつけられているか又は接着されていることが好ましい。なお、かかる距離は、布団カバー端部と布帛a端部との最短距離を測定するものとする。
  また、かかる布帛aからなる部位の寸法が生地巾5〜100cm、長さ50〜200cmの範囲内であることが好ましい。なお、かかる部位の数は1箇所でもよいし複数個所でもよい。
  ここで、布団カバーを開いた状態において、前記部位が布団カバーの裏面側に配され、かつ該部位の面積比率が、裏面の表面積対比3%以上である(好ましくは3〜40%)であることが布団カバーのなかの布団をずれにくくさせる上で好ましい。
 
【0023】
  なお、該面積比率は下記式により算出される。
面積比率=[該部位の合計面積/布団カバー裏面の全表面積]×100
  ここで、「布団カバー裏面の全表面積」は
図1のように布団カバーを開いた状態で布団カバー裏面の全表面積を測定する。例えば、サイズが巾150cm×長さ210cmの布団カバーに10cm×150cmの部位を2ケ所配すると、該面積比率は以下の通りとなる。
面積比率=[(10×150×2)/(150×210)×2]×100=4.76%となる。
 
【0024】
  本発明の布団カバーは前記の布帛aを含むので、布団カバーの軽量性やソフト性を損なうことなく、布団カバーのなかの布団がずれ難い効果を有する。
  ここで、前記布帛aにおいて、摩擦抵抗値が40cN以上(好ましくは40〜50cN)であることが好ましい。
  ただし、摩擦抵抗値は下記の方法で測定した抵抗値(cN)である。すなわち、温度20℃、湿度65%RHの環境下で、
図2に模式的に示すように、平滑な台の上に試料(7)となる布帛aを敷く。次いで、該布帛aの上に、大きさが底面10cm×8cm、高さ3cm、重さが10gr(9.8cN)の布団を想定した摩擦抵抗測定ヘッド(6)を置く。該ヘッド(6)は市販の布団を購入し、側地(ポリエステル100%、平織り)及び中綿(ポリエステル100%)を該サイズに縫製したものを用いる。次いで、引張り試験機により該ヘッド(6)を500mm/分の速度で引っ張った時の抵抗値(cN)を測定する。
 
【実施例】
【0025】
  次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0026】
<溶融粘度>
  乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットする。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒
−1の時の溶融粘度を見る。
【0027】
<溶解速度>
  海・島成分の各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取り、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製する。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0028】
<単繊維径>
  布帛を電子顕微鏡で写真撮影した後、n数5で単繊維径を測定しその平均値を求めた。
【0029】
<摩擦抵抗値>
  摩擦力の代用特性として摩擦抵抗値(cN)を下記の方法で測定した。すなわち、温度20℃、湿度65%RHの環境下で、
図2に模式的に示すように、平滑な台の上に試料(7)となる布帛を敷いた。次いで、該布帛の上に、大きさが底面10cm×8cm、高さ3cm、重さが10gr(9.8cN)の布団を想定した摩擦抵抗測定ヘッド(6)を置いた。該ヘッド(6)は市販の布団を購入し、側地(ポリエステル100%、平織り)及び中綿(ポリエステル100%)を該サイズに縫製したものを用いた。次いで、引張り試験機により該ヘッド(6)を500mm/分の速度で引っ張った時の抵抗値(cN)を測定した。
【0030】
<滑り止め性>
  実施例1で得られた滑り止め布団カバー、比較例1で得られた布団カバーについて、試験者20人が1ケ月間、使用テストを行った。その際、日常のふとんで寝る際の動作において、布団カバー内の布団がズレるかどうかのズレ感について以下の3段階で評価した(3級:ほとんどズレない。2級:大きな動作によってはズレることがある。1級:小さな動きでズレることがある)。
【0031】
    [実施例1]
  島成分としてポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1200ポイズ、艶消し剤の含有量:0重量%)、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1750ポイズ)を用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。
  得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合繊維(繊維A用延伸糸A−1)は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は710nmであった。
  一方、ポリエステル高収縮糸(総繊度33dtex/12fil、帝人(株)製)A−2と延伸糸A−1とをインターレース混繊し90dtex/22filの混繊糸を用意した。また、繊維Bとして市販のポリエステル仮撚捲縮加工糸75dtex/36fil(単繊維径12600nm)を用意した。
【0032】
  次いで、これらの糸を用い、28G33インチの丸編機(福原精機製作所(株)製LPJ25)を使用してメッシュ組織の丸編地を得た。その後、得られた編地の海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、2.5%NaOH水溶液で、70℃にて30%アルカリ減量した。その後、130℃にて高圧染色を行い、最終セットとして170℃の乾熱セットを行い、布帛aとした。
  得られた布帛aにおいて、繊維A用延伸糸A−1(39dtex/8360fil)の単繊維径は710nmであった。布帛aの表側面の摩擦抵抗値は76cNであり、比較例1の布帛(24cN)の2倍以上であった。
  該布帛aを滑り止め用として、市販の掛け布団カバー(側地ポリエステル100%の平織織物、中綿ポリエステル繊維100%、サイズ150cm×210cm)の人側裏面に縫製し滑り止め布団とし、使用テストを行った。その結果、比較例1に比べふとんの滑り止め性に優れていた。なお、該布帛aは、布団カバーの就寝時の人側面の内側の、布団側面に位置するよう縫製により取り付けた。布帛aからなる部位の面積比率は4.7%であった。
【0033】
  取り付けは
図1に示すように、就寝時に人側裏面(布団側の面)に位置するよう、サイズは、長さは布団カバーの片面と同じ幅、生地巾10cmとして、布団カバーの上下端部からそれぞれ30cm離れた位置とした。
  該布団カバーに市販の布団(側地:ポリエステル繊維100%、中綿:ポリエステル繊維100%)を入れ、布団を固定する布団カバー内のひもは使用せず、就寝時に使用して滑り止め性を評価した。その結果、16名:3級(ほとんどズレない)、3名:2級(大きな動作によってはズレることがある)、1名:級(小さな動きでズレることがある)であり、20名中16名がカバー内の布団のずれ感を感じず、快適に就寝する事ができた。
  また布団カバーの洗濯後もその機能性は変わらず快適であり、布団を固定するひもの作業も不要であり、布団カバーの着脱における作業性も優れていた。
【0034】
    [比較例1]
  実施例1において、布帛aを縫い付けないこと以外は、実施例1と同様に評価した。摩擦抵抗は24cNであった。滑り止め性は、2名:3級(ほとんどズレない)、5名:2級(大きな動作によってはズレることがある)、12名:1級(小さな動きでズレることがある)であり、就寝時に中の布団はずれ大変不快であり、良く眠れなかった。 
【0035】
    [実施例2]
  実施例1において、布帛aの生地巾を30cmとして、布団カバーの端部に配置すること以外は実施例1と同様にした。カバー内の布団のずれ感を感じず、快適に就寝する事ができた。
【0036】
    [実施例3]
  実施例1において、布帛aの生地巾を25cmとして、布団カバーの端部に配置すること以外は実施例1と同様にした。カバー内の布団のずれ感を感じず、快適に就寝する事ができた。
【0037】
    [実施例4]
  実施例1において、布帛aの生地巾を20cmとして、布団カバーの端部に配置すること以外は実施例1と同様にした。カバー内の布団のずれ感を感じず、快適に就寝する事ができた。
【0038】
    [実施例5]
  実施例1において、布帛aの生地巾を20cmとして、布団カバーの上下それぞれ15cm離れた位置に配置すること以外は実施例1と同様にした。カバー内の布団のずれ感を感じず、快適に就寝する事ができた。
【0039】
    [実施例6]
  実施例1において、布帛aの生地巾を15cmとして、布団カバーの上下それぞれ15cm離れた位置に配置すること以外は実施例1と同様にした。カバー内の布団のずれ感を感じず、快適に就寝する事ができた。