特許第5945641号(P5945641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5945641
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20160621BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01L21/68 C
   B65G49/07 H
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-553940(P2015-553940)
(86)(22)【出願日】2015年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2015070788
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-149618(P2014-149618)
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397049158
【氏名又は名称】株式会社ハーモテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 斉
(72)【発明者】
【氏名】徳永 英幸
(72)【発明者】
【氏名】河西 裕二
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−030654(JP,A)
【文献】 特開2009−028862(JP,A)
【文献】 特開平08−264626(JP,A)
【文献】 特開2001−148414(JP,A)
【文献】 特開平07−017628(JP,A)
【文献】 特開2011−151233(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/083615(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/083613(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/083609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67−21/687
B65G 49/06
B65G 49/07
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出することにより被保持体との間に負圧を発生させて前記被保持体を保持する保持装置に対する液体の供給を制御するための制御装置であって、
前記保持装置は、
柱状の本体と、
前記本体に形成され、前記被保持体に臨む平坦状の端面と、
前記端面に形成される凹部と、
前記凹部内に吐出口を介して液体を吐出する1以上の流体通路と
を備え、
前記制御装置は、
前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記1以上の流体通路のうち少なくとも1つの流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たすよう液体の供給を制御し、
前記少なくとも1つの流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記少なくとも1つの流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流が形成されるように液体の供給を制御する
制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記凹部内に供給される液体の流量を第1の量に設定し、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記少なくとも1つの流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たし、
前記少なくとも1つの流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記凹部内に供給される液体の流量を前記第1の量から、前記第1の量よりも多い第2の量に変更し、前記少なくとも1つの流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流を形成させる
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記1以上の流体通路は、
前記凹部の底面に設けられた第1の吐出口から液体を吐出する第1の流体通路と、
前記凹部の内周側面に設けられた第2の吐出口から液体を吐出する第2の流体通路と
を含み、
前記制御装置は、
前記第1の流体通路を介して前記凹部内に液体を供給し、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記第2の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たし、
前記第2の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記第1の流体通路を介した液体の供給を停止し、前記第2の流体通路を介して前記凹部内に液体を供給して旋回流を形成させる
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記1以上の流体通路は、
前記凹部の内周側面に設けられた第3の吐出口から液体を吐出して第1の旋回流を形成する第3の流体通路と、
前記凹部の前記内周側面に設けられた第4の吐出口から液体を吐出して、前記第1の旋回流の旋回方向とは逆方向に旋回する第2の旋回流を形成する第4の流体通路と
を含み、
前記制御装置は、
前記第3及び第4の流体通路を介して前記凹部内に液体を供給し、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記第3の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たすよう液体の供給を制御し、
前記第3の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記第3の流体通路を介した液体の供給を維持したまま、前記第4の流体通路を介した液体の供給を停止し、前記第3の流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流を形成させる
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
液体を吐出することにより被保持体との間に負圧を発生させて前記被保持体を保持する保持装置に対する液体の供給を制御するための制御方法であって、
前記保持装置は、
柱状の本体と、
前記本体に形成され、前記被保持体に臨む平坦状の端面と、
前記端面に形成される凹部と、
前記凹部内に吐出口を介して液体を吐出する1以上の流体通路と
を備え、
前記制御方法は、
前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記1以上の流体通路のうち少なくとも1つの流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たすよう液体の供給を制御するステップと、
前記少なくとも1つの流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記少なくとも1つの流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流が形成されるように液体の供給を制御するステップと
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出することにより板状の部材との間に負圧を発生させて当該部材を保持する保持装置の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハやガラス基板等の板状の部材を非接触で搬送するための装置が開発されている。例えば、特許文献1では、ベルヌーイの定理を用いて板状の部材を非接触で搬送する装置が提案されている。この装置では、装置下面に開口する円筒室内に流体を供給して旋回流を発生させ、当該旋回流の中心部の負圧によって板状部材を吸引する一方、当該円等室から流出する流体によって当該装置と板状部材との間に一定の距離を保つことで、板状の部材の非接触での搬送を可能としている。特許文献1では、流体として液体を用いることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−51260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液体を吐出することにより被保持体との間に負圧を発生させて当該被保持体を保持する保持装置において、発生する負圧を増大させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体を吐出することにより被保持体との間に負圧を発生させて前記被保持体を保持する保持装置に対する液体の供給を制御するための制御装置であって、前記保持装置は、柱状の本体と、前記本体に形成され、前記被保持体に臨む平坦状の端面と、前記端面に形成される凹部と、前記凹部内に吐出口を介して液体を吐出する1以上の流体通路とを備え、前記制御装置は、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たすよう液体の供給を制御し、前記流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流が形成されるように液体の供給を制御する制御装置を提供する。
【0006】
上記の制御装置は、前記凹部内に供給される液体の流量を第1の量に設定し、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たし、前記流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記凹部内に供給される液体の流量を前記第1の量から、前記第1の量よりも多い第2の量に変更し、前記流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流を形成させてもよい。
【0007】
また、上記の保持装置において、前記1以上の流体通路は、前記凹部の底面に設けられた第1の吐出口から液体を吐出する第1の流体通路と、前記凹部の内周側面に設けられた第2の吐出口から液体を吐出する第2の流体通路とを含み、上記の制御装置は、前記第1の流体通路を介して前記凹部内に液体を供給し、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記第2の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たし、前記第2の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記第1の流体通路を介した液体の供給を停止し、前記第2の流体通路を介して前記凹部内に液体を供給して旋回流を形成させてもよい。
【0008】
また、上記の保持装置において、前記1以上の流体通路は、前記凹部の内周側面に設けられた第3の吐出口から液体を吐出して第1の旋回流を形成する第3の流体通路と、前記凹部の前記内周側面に設けられた第4の吐出口から液体を吐出して、前記第1の旋回流の旋回方向とは逆方向に旋回する第2の旋回流を形成する第4の流体通路とを含み、上記の制御装置は、前記第3及び第4の流体通路を介して前記凹部内に液体を供給し、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記第3の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たすよう液体の供給を制御し、前記第3の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記第3の流体通路を介した液体の供給を維持したまま、前記第4の流体通路を介した液体の供給を停止し、前記第3の流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流を形成させてもよい。
【0009】
また、本発明は、液体を吐出することにより被保持体との間に負圧を発生させて前記被保持体を保持する保持装置に対する液体の供給を制御するための制御方法であって、前記保持装置は、柱状の本体と、前記本体に形成され、前記被保持体に臨む平坦状の端面と、前記端面に形成される凹部と、前記凹部内に吐出口を介して液体を吐出する1以上の流体通路とを備え、前記制御方法は、前記凹部内において旋回流が形成されない状態において、前記流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内を液体で満たすよう液体の供給を制御するステップと、前記流体通路の吐出口が液体で覆われるまで前記凹部内が液体で満たされた後に、前記流体通路から前記凹部内に吐出される液体により旋回流が形成されるように液体の供給を制御するステップとを有する制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体を吐出することにより被保持体との間に負圧を発生させて当該被保持体を保持する保持装置において、負圧を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る旋回流形成体1の一例を示す斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1のB−B線断面図である。
図4】搬送システム100の回路構成の一例を示す図である。
図5】マイクロコンピュータ4により実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。
図6】流量と吸引圧との関係の一例について示すグラフである。
図7】第2実施形態に係る旋回流形成体5の一例を示す斜視図である。
図8図7のC−C線断面図である。
図9図7のD−D線断面図である。
図10】搬送システム200の回路構成の一例を示す図である。
図11】マイクロコンピュータ4Aにより実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。
図12】第3実施形態に係る旋回流形成体7の一例を示す斜視図である。
図13図12のE−E線断面図である。
図14図12のF−F線断面図である。
図15】搬送システム300の回路構成の一例を示す図である。
図16】マイクロコンピュータ4Bにより実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。
図17】搬送装置10の構成の一例を示す図である。
図18】搬送装置20の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0012】
1…旋回流形成体、2…電磁弁、3…液体供給ポンプ、4…マイクロコンピュータ、5…旋回流形成体、7…旋回流形成体、10…搬送装置、11…本体、12…凹部、13…端面、14…吐出口、15…傾斜面、16…供給口、17…環状通路、18…連通路、19…供給路、20…搬送装置、51…本体、52…凹部、53…端面、54…吐出口、55…傾斜面、56…噴出口、57…導入口、58…導入路、59…環状通路、60…連通路、61…供給口、62…供給路、71…本体、72…凹部、73…端面、74…吐出口、75…傾斜面、76…導入口、77…導入路、100…搬送システム、101…基体、102…摩擦部材、103…孔部、200…搬送システム、201…基体、300…搬送システム
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
1.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る旋回流形成体1の一例を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線断面図である。図3は、図1のB−B線断面図である。旋回流形成体1は、半導体ウェハやガラス基板等の板状部材を保持して搬送するための装置である。旋回流形成体1は、液体を吐出することにより板状部材との間に負圧を発生させて当該部材を保持する。ここで液体とは、例えば純水や炭酸水である。旋回流形成体1の材質は、例えばアルミニウム合金である。この旋回流形成体1は、本発明に係る「保持装置」の一例である。
【0014】
旋回流形成体1は、図1乃至図3に示されるように、本体11と、凹部12と、端面13と、2個の吐出口14と、傾斜面15とを備える。本体11は、円柱形状を有する。端面13は、本体11の一の面(具体的には、被保持体たる板状部材に臨む面)(以下、「底面」という。)に平坦状に形成される。凹部12は、円柱形状を有し、端面13に形成される。凹部12は、本体11と同軸に形成される。
【0015】
2個の吐出口14は、本体11の、凹部12に面する内周側面に形成される。2個の吐出口14は、互いに対向するように配置される。具体的には、本体11又は凹部12の中心軸の軸心を中心に点対称に配置される。各吐出口14を介して、旋回流形成体1に供給された液体は凹部12内に吐出される。傾斜面15は、凹部12の開口部に形成される。
【0016】
旋回流形成体1はまた、図2及び図3に示されるように、供給口16と、環状通路17と、連通路18と、2本の供給路19とを備える。供給口16は、円形状を有し、本体11の上面(すなわち、底面と反対の面)の中央に設けられる。供給口16は、例えばチューブを介して、後述する液体供給ポンプ3に接続され、この供給口16を介して本体11内に液体が供給される。環状通路17は、円筒形状を有し、凹部12を囲むように本体11の内部に形成される。環状通路17は、凹部12と同軸に形成される。環状通路17は、連通路18から供給される液体を供給路19に供給する。連通路18は、本体11の内部に設けられ、本体11の底面又は上面の半径方向に直線状に延びる。
【0017】
連通路18は、その両端部において環状通路17と連通する。連通路18は、供給口16を介して本体11内に供給される液体を環状通路17に供給する。2本の供給路19は、それぞれ、吐出口14を介して凹部12内に液体を吐出し、凹部12内に旋回流を形成する。具体的には、各供給路19は、端面13に対して略平行、且つ凹部12の外周に対して接線方向に延びるように形成され、その一端は環状通路17と連通し、他端は吐出口14と連通する。供給路19は、本発明に係る「流体通路」の一例である。
【0018】
以上説明した旋回流形成体1に対して供給口16を介して液体が供給されると、その液体は、連通路18、環状通路17及び供給路19を通って吐出口14から凹部12内に吐出される。凹部12に吐出された液体は、凹部12内において旋回流となって整流され、その後凹部12の開口部から流出する。その際、端面13に対向して板状部材が存在する場合には、凹部12への外部流体(例えば、空気)の流入が制限され、旋回流の遠心力とエントレインメント効果により、旋回流中心部の単位体積あたりの流体分子の密度が小さくなり、旋回流形成体1と板状部材との間に負圧が発生する。この結果、板状部材は周囲の流体によって押圧されて端面13側に引き寄せられる。その一方で、端面13と板状部材との距離が近づくにつれて、凹部12内から流出する液体の量が制限され、吐出口14から凹部12内へ吐出される液体の速度が遅くなり、旋回流中心部の圧力が上昇する。この結果、板状部材は端面13とは接触せず、板状部材と端面13との間には一定の距離が保たれる。
【0019】
図4は、旋回流形成体1を含む搬送システム100の回路構成の一例を示す図である。図4に示されるように、旋回流形成体1の供給口16は、例えばチューブにより、電磁弁2を介して液体供給ポンプ3に接続される。電磁弁2は、マイクロコンピュータ4と接続される。
【0020】
電磁弁2は、具体的には比例電磁弁であり、マイクロコンピュータ4から出力される制御信号に基づいて、その開度が調整される。マイクロコンピュータ4は、所定のプログラムに従って電磁弁2に対して制御信号を出力し、旋回流形成体1に対して供給される液体の流量(より具体的には、単位時間当たりに旋回流形成体1に供給される液体の量)を制御する。このマイクロコンピュータ4は、本発明に係る「制御装置」の一例である。
【0021】
図5は、マイクロコンピュータ4により実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。この制御動作は、大気中において旋回流形成体1により板状部材を吸引して保持し、搬送する際に実行される。なお、本動作の説明では、旋回流形成体1は、その凹部12の開口部が天向きの状態で(言い換えると、その凹部12が鉛直方向と逆方向に開口する状態において)板状部材を吸引して搬送する場合を想定している。
【0022】
本制御動作のステップSa1においてマイクロコンピュータ4は、電磁弁2を制御して、旋回流形成体1に対する液体の供給を開始する。この際、旋回流形成体1に対しては、第1の流量で液体が供給される。ここで、第1の流量とは、旋回流形成体1の凹部12内において旋回流が形成されない流量のことである。凹部12内において旋回流が形成されてしまうと、旋回流の遠心力により液体が凹部12から流出してしまい、凹部12内に液体が溜まらないからである。
【0023】
次に、マイクロコンピュータ4は、タイマによる計時を開始する(ステップSa2)。そして、マイクロコンピュータ4は、所定時間が経過した否かを判断する(ステップSa3)。この所定時間とは、旋回流形成体1の凹部12が満水になるまでに要する時間であって、当該時間は予め計測されて、マイクロコンピュータ4に記憶される。
【0024】
マイクロコンピュータ4は、所定時間が経過していない場合には(ステップSa3:NO)待機し、所定時間が経過すると(すなわち、旋回流形成体1の凹部12が満水になると)(ステップSa3:YES)、電磁弁2を制御して、旋回流形成体1に対して第2の流量での液体の供給を開始する(ステップSa4)。ここで、第2の流量とは、上記の第1の流量よりも多い流量であって、旋回流形成体1の凹部12内において旋回流の形成を可能にする流量である。この状態において、旋回流形成体1の端面13に対向して板状部材が存在すると、旋回流形成体1と板状部材との間に負圧が発生し、この負圧により板状部材は旋回流形成体1により吸引され、保持されることになる。
以上がマイクロコンピュータ4により実行される制御動作についての説明である。
【0025】
図6は、旋回流形成体1の凹部12内が空の状態から旋回流の形成を開始した場合と、凹部12が満水の状態で旋回流の形成を開始した場合とにおいて、流量と吸引圧との関係の一例について示すグラフである。同グラフの横軸は流量(単位:L/min)を示し、縦軸は吸引圧(単位:kPa)を示している。同グラフによれば、いずれの流量においても、凹部12が満水の状態で旋回流の形成を開始した場合の吸引圧は、凹部12内が空の状態から旋回流の形成を開始した場合の吸引圧と比較して2倍以上となっていることがわかる。
なお、同グラフに示す吸引圧は、株式会社ハーモテック社製のKUMADE(登録商標)Cup(型番:KMCP−60CW)を用いて測定した。
【0026】
以上説明した本実施形態に係る制御動作によれば、凹部12内において旋回流を形成する前に凹部12内を満水にし、その後に旋回流を形成するようにしているため、図6に示すように、凹部12内が空の状態において旋回流の形成を開始する場合と比較して、高い吸引圧を得ることができる。また、本実施形態に係る制御動作によれば、旋回流形成体1の凹部12内は板状部材の搬送中、液体により満たされているため、板状部材の表面が乾燥することにより発生するウォーターマーク(別名、水染み)の形成が防止される。なお、このウォーターマークは、板状部材が半導体ウェハの場合、一般的に酸化物により組成される。
【0027】
2.第2実施形態
図7は、本発明の第2実施形態に係る旋回流形成体5の一例を示す斜視図である。図8は、図7のC−C線断面図である。図9は、図7のD−D線断面図である。旋回流形成体5は、半導体ウェハやガラス基板等の板状部材を保持して搬送するための装置である。旋回流形成体5は、液体を吐出することにより板状部材との間に負圧を発生させて当該部材を保持する。ここで液体とは、例えば純水や炭酸水である。旋回流形成体5の材質は、例えばアルミニウム合金である。この旋回流形成体5は、本発明に係る「保持装置」の一例である。
【0028】
旋回流形成体5は、図7乃至図9に示されるように、本体51と、凹部52と、端面53と、2個の吐出口54と、傾斜面55と、噴出口56とを備える。本体51は、円柱形状を有する。端面53は、本体51の一の面(具体的には、被保持体たる板状部材に臨む面)(以下、「底面」という。)に平坦状に形成される。凹部52は、円柱形状を有し、端面53に形成される。凹部52は、本体51と同軸に形成される。
【0029】
2個の吐出口54は、本体51の、凹部52に面する内周側面に形成される。2個の吐出口54は、互いに対向するように配置される。具体的には、本体51又は凹部52の中心軸の軸心を中心に点対称に配置される。各吐出口54を介して、旋回流形成体5に供給された液体は凹部52内に吐出される。傾斜面55は、凹部52の開口部に形成される。噴出口56は、円形状を有し、凹部52の底面中央に設けられる。この噴出口56は、後述する導入路58と連通し、液体を吐出する。
【0030】
旋回流形成体5はまた、図8及び図9に示されるように、導入口57と、導入路58と、環状通路59と、連通路60と、供給口61と、2本の供給路62とを備える。導入口57は、円形状を有し、本体51の上面(すなわち、底面と反対の面)の中央に設けられる。導入口57は、例えばチューブを介して液体供給ポンプ3Aに接続され、この導入口57を介して本体51内に液体が供給される。導入路58は、本体51の内部に設けられ、本体51の中心軸に沿って直線状に延びる。導入路58は、その一端が導入口57と連通し、他端が前述の噴出口56と連通する。導入路58は、本発明に係る「流体通路」の一例であって、特に「第1の流体通路」の一例である。
【0031】
環状通路59は、円筒形状を有し、凹部52を囲むように本体51の内部に形成される。環状通路59は、凹部52と同軸に形成される。環状通路59は、連通路60から供給される液体を供給路62に供給する。連通路60は、本体51の内部に設けられ、本体51の中心軸と平行に直線状に延びる。連通路60は、その一端において環状通路59と連通し、他端において供給口61と連通する。供給口61は、円形状を有し、本体51の上面に設けられる。供給口61は、例えばチューブを介して液体供給ポンプ3Aに接続され、この供給口61を介して本体51内に流体が供給される。
【0032】
2本の供給路62は、それぞれ、吐出口54を介して凹部52内に液体を吐出し、凹部52内に旋回流を形成する。具体的には、各供給路62は、端面53に対して略平行、且つ凹部52の外周に対して接線方向に延びるように形成され、その一端は環状通路59と連通し、他端は吐出口54と連通する。供給路62は、本発明に係る「流体通路」の一例であって、特に「第2の流体通路」の一例である。
【0033】
以上説明した旋回流形成体5に対して供給口61を介して液体が供給されると、その液体は、連通路60、環状通路59及び供給路62を通って吐出口54から凹部52内に吐出される。凹部52に吐出された液体は、凹部52内において旋回流となって整流され、その後凹部52の開口部から流出する。その際、端面53に対向して板状部材が存在する場合には、凹部52内への外部流体(例えば、空気)の流入が制限され、旋回流の遠心力とエントレインメント効果により、旋回流中心部の単位体積あたりの流体分子の密度が小さくなり、旋回流形成体1と板状部材との間に負圧が発生する。この結果、板状部材は周囲の流体によって押圧されて端面53側に引き寄せられる。その一方で、端面53と板状部材との距離が近づくにつれて、凹部52内から流出する液体の量が制限され、吐出口54から凹部52内へ吐出される液体の速度が遅くなり、旋回流中心部の圧力が上昇する。この結果、板状部材は端面53とは接触せず、板状部材と端面53との間には一定の距離が保たれる。
【0034】
図10は、旋回流形成体5を含む搬送システム200の回路構成の一例を示す図である。図10に示されるように、旋回流形成体5の導入口57は、例えばチューブにより、電磁弁2Aを介して液体供給ポンプ3Aに接続される。また、旋回流形成体5の供給口61は、例えばチューブにより、電磁弁2Bを介して液体供給ポンプ3Aに接続される。電磁弁2A及び2Bは、マイクロコンピュータ4Aと接続される。
【0035】
電磁弁2A及び2Bは、それぞれマイクロコンピュータ4Aから出力されるオンオフ制御信号に基づいて、液体供給ポンプ3Aから供給される液体の通過を許可したり遮断したりする。マイクロコンピュータ4Aは、所定のプログラムに従って電磁弁2A及び2Bに対してオンオフ制御信号を出力し、旋回流形成体5に対する液体の供給を制御する。このマイクロコンピュータ4Aは、本発明に係る「制御装置」の一例である。
【0036】
図11は、マイクロコンピュータ4Aにより実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。この制御動作は、大気中において旋回流形成体5により板状部材を吸引して保持し、搬送する際に実行される。なお、本動作の説明では、旋回流形成体5は、その凹部52の開口部が天向きの状態で(言い換えると、その凹部52が鉛直方向と逆方向に開口する状態において)板状部材を吸引して搬送する場合を想定している。
【0037】
本制御動作のステップSb1においてマイクロコンピュータ4は、電磁弁2Aを制御して、導入口57を介した旋回流形成体5への液体の供給を開始する。すなわち、凹部52底面に設けられた噴出口56からの凹部52内への液体の供給を開始する。この際、電磁弁2Bは閉状態を維持しており、凹部52内周側面に設けられた吐出口54からは凹部52内に液体は供給されない。そのため、凹部52内には旋回流は形成されない。
【0038】
次に、マイクロコンピュータ4Aは、タイマによる計時を開始する(ステップSb2)。そして、マイクロコンピュータ4Aは、所定時間が経過した否かを判断する(ステップSb3)。この所定時間とは、旋回流形成体5の凹部52が満水になるまでに要する時間であって、当該時間は予め計測されて、マイクロコンピュータ4Aに記憶される。
【0039】
マイクロコンピュータ4Aは、所定時間が経過していない場合には(ステップSb3:NO)待機し、所定時間が経過すると(すなわち、旋回流形成体5の凹部52が満水になると)(ステップSb3:YES)、電磁弁2Aを制御して、導入口57を介した旋回流形成体5への液体の供給を停止するとともに、電磁弁2Bを制御して、供給口61を介した旋回流形成体5への液体の供給を開始する(ステップSb4)。この結果、凹部52の内周側面に設けられた吐出口54から凹部52内に液体が供給されて、凹部52内に旋回流が形成される。この状態において、旋回流形成体5の端面53に対向して板状部材が存在すると、旋回流形成体5と板状部材との間に負圧が発生し、この負圧により板状部材は旋回流形成体5により吸引され、保持されることになる。
以上がマイクロコンピュータ4Aにより実行される制御動作についての説明である。
【0040】
以上説明した本実施形態に係る制御動作によれば、凹部52内において旋回流を形成する前に凹部52内を満水にし、その後に旋回流を形成するようにしているため、第1実施形態と同様に、凹部52内が空の状態において旋回流の形成を開始する場合と比較して、高い吸引圧を得ることができる。また、本実施形態に係る制御動作によれば、旋回流形成体5の凹部52内は板状部材の搬送中、液体により満たされているため、第1実施形態と同様に、ウォーターマークの形成が防止される。
【0041】
3.第3実施形態
図12は、本発明の第3実施形態に係る旋回流形成体7の一例を示す斜視図である。図13は、図12のE−E線断面図である。図14は、図12のF−F線断面図である。旋回流形成体7は、半導体ウェハやガラス基板等の板状部材を保持して搬送するための装置である。旋回流形成体7は、液体を吐出することにより板状部材との間に負圧を発生させて当該部材を保持する。ここで液体とは、例えば純水や炭酸水である。旋回流形成体7の材質は、例えばアルミニウム合金である。この旋回流形成体7は、本発明に係る「保持装置」の一例である。
【0042】
旋回流形成体7は、図12乃至図14に示されるように、本体71と、凹部72と、端面73と、4個の吐出口74a,74b,74c及び74d(以下、総称して「吐出口74」という。)と、傾斜面75と、4個の導入口76a,76b,76c及び76d(以下、総称して「導入口76」という。)と、4本の導入路77a,77b,77c及び77d(以下、総称して「導入路77」という。)とを備える。
【0043】
本体71は、円柱形状を有する。端面73は、本体71の一の面(具体的には、被保持体たる板状部材に臨む面)(以下、「底面」という。)に平坦状に形成される。凹部72は、円柱形状を有し、端面73に形成される。凹部72は、本体71と同軸に形成される。
【0044】
4個の吐出口74は、それぞれ円形状を有し、本体71の、凹部72に面する内周側面に形成される。4個の吐出口74は、当該内周側面の軸方向中央部に配置される。吐出口74a及び74cは、互いに対向するように配置される。具体的には、本体71又は凹部72の中心軸の軸心を中心に点対称に配置される。吐出口74b及び74dは、互いに対向するように配置される。具体的には、本体71又は凹部72の中心軸の軸心を中心に点対称に配置される。旋回流形成体7に供給された液体は各吐出口74を介して凹部72内に吐出される。
【0045】
傾斜面75は、凹部72の開口部に形成される。4個の導入口76は、それぞれ円形状を有し、本体71の外周側面に形成される。4個の導入口76は、後述する液体供給ポンプ3Bと例えばチューブにより接続され、この導入口76を介して本体71内に液体が供給される。
【0046】
4本の導入路77は、端面73に対して略平行、且つ凹部72の外周に対して接線方向に延びるように形成される。各導入路77は、吐出口74と導入口76とを連結する。具体的には、導入路77aは、吐出口74aと導入口76aとを連結し、導入路77bは、吐出口74bと導入口76bとを連結し、導入路77cは、吐出口74cと導入口76cとを連結し、導入路77は、吐出口74dと導入口76dとを連結する。
【0047】
各導入路77は、互いに平行に延びるように配置される。導入路77aと導入路77dとは、同一直線上に配置され、導入路77bと導入路77dとは、同一直線上に配置される。導入路77a及び77cは、凹部72内に液体を吐出して、凹部72内に、旋回流形成体7の底面側から見て反時計回りに旋回する旋回流を形成する。導入路77b及び77dは、凹部72内に液体を吐出して、凹部72内に、旋回流形成体7の底面側から見て時計回りに旋回する旋回流を形成する。各導入路77は、本発明に係る「液体通路」の一例である。特に、導入路77a及び77cは、本発明に係る「第3の流体通路」の一例であり、導入路77b及び77dは、本発明に係る「第4の流体通路」の一例である。
【0048】
以上説明した旋回流形成体7に対して、例えば導入口76a及び76cを介して液体が供給されると、その液体は、導入路77を通って吐出口74a及び74cから凹部72内に吐出される。凹部72に吐出された液体は、凹部72内において旋回流となって整流され、その後、凹部72の開口部から流出する。その際、端面73に対向して板状部材が存在する場合には、凹部72内への外部流体(例えば、空気)の流入が制限され、旋回流の遠心力とエントレインメント効果により、旋回流中心部の単位体積あたりの流体分子の密度が小さくなり、負圧が発生する。この結果、板状部材は周囲の流体によって押圧されて端面73側に引き寄せられる。その一方で、端面73と板状部材との距離が近づくにつれて、凹部72内から流出する液体の量が制限され、吐出口74a及び74cから凹部72内へ吐出される液体の速度が遅くなり、旋回流中心部の圧力が上昇する。この結果、板状部材は端面73とは接触せず、板状部材と端面73との間には一定の距離が保たれる。
【0049】
図15は、旋回流形成体7を含む搬送システム300の回路構成の一例を示す図である。図15に示されるように、旋回流形成体7の導入口76a及び76cは、例えばチューブにより、電磁弁2Cを介して液体供給ポンプ3Bに接続される。一方、導入口76b及び76dは、例えばチューブにより、電磁弁2Dを介して液体供給ポンプ3Bに接続される。電磁弁2C及び2Dは、それぞれマイクロコンピュータ4Bと接続される。
【0050】
電磁弁2C及び2Dは、マイクロコンピュータ4Bから出力されるオンオフ制御信号に基づいて、液体供給ポンプ3Bから供給される液体の通過を許可したり遮断したりする。マイクロコンピュータ4Bは、所定のプログラムに従って電磁弁2C及び2Dに対してオンオフ制御信号を出力し、旋回流形成体7に対する液体の供給を制御する。このマイクロコンピュータ4Bは、本発明に係る「制御装置」の一例である。
【0051】
図16は、マイクロコンピュータ4Bにより実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。この制御動作は、大気中において旋回流形成体7により板状部材を吸引して保持し、搬送する際に実行される。なお、本動作の説明では、旋回流形成体7は、その凹部72の開口部が天向きの状態で(言い換えると、その凹部72が鉛直方向と逆方向に開口する状態において)板状部材を吸引して搬送する場合を想定している。
【0052】
本制御動作のステップSc1においてマイクロコンピュータ4Bは、電磁弁2C及び2Dを制御して、導入口76a〜76dを介した旋回流形成体7への液体の供給を開始する。この結果、導入口76a及び76cを介して凹部72内に供給される液体は、旋回流形成体7の底面側から見て反時計回りに旋回する旋回流を形成しようとするのに対し、導入口76b及び76dを介して凹部72に内供給される液体は、旋回流形成体7の底面側から見て時計回りに旋回する旋回流を形成しようとする。その結果、両者の流れは打ち消し合い、凹部72内には旋回流は形成されない。
【0053】
次に、マイクロコンピュータ4Bは、タイマによる計時を開始する(ステップSc2)。そして、マイクロコンピュータ4Bは、所定時間が経過した否かを判断する(ステップSc3)。この所定時間とは、旋回流形成体7の凹部72が満水になるまでに要する時間であって、当該時間は予め計測されて、マイクロコンピュータ4Bに記憶される。
【0054】
マイクロコンピュータ4Bは、所定時間が経過していない場合には(ステップSc3:NO)待機し、所定時間が経過すると(すなわち、旋回流形成体7の凹部72が満水になると)(ステップSc3:YES)、電磁弁2Cは開状態に維持したまま、電磁弁2Dを制御して、導入口76b及び76dを介した旋回流形成体7への液体の供給を停止する(ステップSc4)。この結果、凹部72には導入口76a及び76cを介してのみ液体が供給されることになり、凹部72内には旋回流が形成されることになる。この状態において、旋回流形成体7の端面73に対向して板状部材が存在すると、旋回流形成体7と板状部材との間に負圧が発生し、この負圧により板状部材は旋回流形成体7により吸引され、保持されることになる。
以上がマイクロコンピュータ4Bにより実行される制御動作についての説明である。
【0055】
以上説明した本実施形態に係る制御動作によれば、凹部72内において旋回流を形成する前に凹部72内を満水にし、その後に旋回流を形成するようにしているため、第1及び第2実施形態と同様に、凹部72内が空の状態において旋回流の形成を開始する場合と比較して、高い吸引圧を得ることができる。また、本実施形態に係る制御動作によれば、旋回流形成体7の凹部72内は板状部材の搬送中、液体により満たされているため、第1及び第2実施形態と同様に、ウォーターマークの形成が防止される。
【0056】
4.変形例
上記の各実施形態は、以下のように変形してもよい。また、以下の2以上の変形例は、互いに組み合わせてもよい。
【0057】
4−1.変形例1
上記の第1実施形態に係る旋回流形成体1は、板状部材のサイズによっては、板状のフレームに複数取り付けて使用されてもよい。図17は、本変形例に係る搬送装置10の構成の一例を示す図である。具体的には、図17(a)は、搬送装置10の底面図であり、図17(b)は、搬送装置10の側面図である。搬送装置10は、図17に示されるように、基体101と、12個の旋回流形成体1と、12個の摩擦部材102と、6個の孔部103とを備えている。
【0058】
基体101は、円板形状を有する。基体101の材質は、例えばアルミニウム合金である。12個の旋回流形成体1は、基体101の一の面(具体的には、被保持体たる板状部材Wと対向する面)(以下、「底面」という。)に設けられる。12個の旋回流形成体1は、当該底面において、同一の円の周上に配置される。12個の旋回流形成体1は、基体101の外周に沿って等間隔に配置される。
【0059】
12個の摩擦部材102は、それぞれ円柱形状を有し、基体101の底面に設けられる。12個の摩擦部材102は、当該底面において、旋回流形成体1が配置されるのと同一の円の周上に等間隔に配置される。2個の旋回流形成体1の間に1個の摩擦部材102が配置される。各摩擦部材102は、被保持体たる板状部材Wの表面と接触して、当該表面との間に生じる摩擦力により板状部材Wの移動を防止する部材である。各摩擦部材102の材質は、例えばフッ素ゴムである。6個の孔部103は、基体101に設けられた、略角丸長方形の貫通孔である。6個の孔部103は、基体101において同一の円の周上に等間隔に配置される。孔部103がその周上に配置される円は、旋回流形成体1がその周上に配置される円と同心である。孔部103は旋回流形成体1よりも基体101表面の中心寄りに配置される。
【0060】
なお、搬送装置10において、旋回流形成体1に代えて、第2実施形態に係る旋回流形成体5や、第3実施形態に係る旋回流形成体7が取り付けられてもよい。
【0061】
4−2.変形例2
上記の変形例1において、搬送装置10の形状は変更されてもよい。図18は、本変形例に係る搬送装置20の構成の一例を示す図である。具体的には、図18(a)は、搬送装置20の底面図であり、図18(b)は、搬送装置20の側面図である。搬送装置20は、図18に示されるように、基体201と、10個の旋回流形成体1と、12個の摩擦部材102Aとを備えている。
【0062】
基体201は、二又のフォーク形状の板状部材であり、矩形の把持部2011と、把持部2011から分岐する2つの腕部2012とからなる。基体201の材質は、例えばアルミニウム合金である。10個の旋回流形成体1は、基体201を構成する2つの腕部2012の一の面(具体的には、被保持体たる板状部材Wと対向する面)(以下、「底面」という。)に設けられる。10個の旋回流形成体1は、2つの腕部2012において、同一の円の周上に配置される。各腕部2012につき5個の旋回流形成体1が等間隔に配置される。
【0063】
12個の摩擦部材102Aは、板状の部材であり、2つの腕部2012の底面に設けられる。12個の摩擦部材102Aは、当該底面において、旋回流形成体1が配置されるのと同一の円の周上に配置される。各腕部2012において、2個の摩擦部材102Aにより1個の旋回流形成体1を挟むように配置される。各摩擦部材102Aは、被搬送物たる板状部材Wの表面と接触して、当該表面との間に生じる摩擦力により板状部材の移動を防止する。各摩擦部材102Aの材質は、例えばフッ素ゴムである。
【0064】
なお、搬送装置20において、旋回流形成体1に代えて、第2実施形態に係る旋回流形成体5や、第3実施形態に係る旋回流形成体7が取り付けられてもよい。
【0065】
4−3.変形例3
上記の各実施形態に係る制御動作においては、旋回流形成体を、その凹部の開口部が天向きとなるようにして板状部材を搬送する場合を想定しているが、板状部材を搬送する際の旋回流形成体の姿勢はこれに限られない。例えば、旋回流形成体を、その凹部が鉛直方向に開口する状態において板状部材を搬送するようにしてもよい。または、旋回流形成体を、その凹部が鉛直方向に対して所定の角度傾けた方向に開口する状態において板状部材を搬送するようにしてもよい。これらの場合、旋回流形成体の凹部を満水にする過程においては、旋回流形成体の端部と板状部材表面との間の距離が、例えば吐出口14の断面積よりも小さくなるように板状部材を旋回流形成体に対して配置するようにしてもよい。または、旋回流形成体の端部と板状部材表面との間の隙間の体積が流量よりも小さくなるように板状部材を旋回流形成体に対して配置するようにしてもよい。
【0066】
4−4.変形例4
上記の各実施形態に係る制御動作においては、旋回流形成体の凹部内を満水にしてから凹部内において旋回流を形成するようにしているが、必ずしも凹部内を満水にする必要はない。例えば、凹部内の半分を液体で満たしてから旋回流を形成するようにしてもよい。または、少なくとも流体通路の吐出口が液体で覆われる程度に凹部内を液体で満たしてから旋回流を形成するようにしてもよい。本発明の発明者による実験によれば、凹部内を必ずしも満水にしなくても、ある程度の量の液体で満たされていれば、その量に応じて吸引圧が高くなることが確認されている。
【0067】
4−5.変形例5
上記の各実施形態に係る制御動作においては、旋回流形成体の凹部内が満水になるまでに要する時間を予め計測しておき、その時間が経過したときに凹部内が満水になったものと判断しているが、センサで実際に凹部内の液面の高さを検出して、その高さが所定量に達したときに凹部内が満水になったものと判断するようにしてもよい。例えば、超音波式の液面検出センサを用いて、凹部内が満水になったか否かを検出するようにしてもよい。
【0068】
4−6.変形例6
上記の各実施形態においてマイクロコンピュータ4、4A又は4Bにより実行されるプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、メモリ等の記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよい。また、当該プログラムは、インターネット等の通信回線を介してダウンロードされてもよい。
【0069】
4−7.変形例7
上記の第1実施形態に係る旋回流形成体1の本体11の形状は、円柱に限られず角柱や楕円柱でもよい。また、旋回流形成体1に設けられる吐出口14の位置は、凹部12の内周側面の軸方向中央部に限られない。また、旋回流形成体1に設けられる供給路19の数は2本に限られず、1本であっても3本以上であってもよい。また、供給路19の、凹部12の外周に対する進入方向は、接線方向に限られない。また、傾斜面15は設けなくてもよい(すなわち、端面13の端部は面取りしなくてもよい)。以上述べた変形は、第2実施形態に係る旋回流形成体5や、第3実施形態に係る旋回流形成体7に採用してもよい。
また、第2実施形態に係る旋回流形成体5の噴出口56の位置は、凹部52の底面中央に限られない。
【0070】
4−8.変形例8
上記の搬送装置10の基体101の構成は、上記の変形例1に示される例に限られない。また、搬送装置10の基体101に設けられる摩擦部材102及び孔部103の数、形状及び配置は、上記の変形例1に示される例に限られない。これらの要素は、搬送装置10により搬送される板状部材Wのサイズ、形状及び材質に応じて決定されてよい。摩擦部材102及び孔部103は、そもそも搬送装置10の基体101に設けられなくてもよい。摩擦部材102が搬送装置10の基体101に設けられない場合、基体101には、板状部材Wの位置決めをするために、周知のセンタリングガイドが設置されてもよい(例えば、特開2005−51260号公報参照)。同様に、上記の搬送装置20の基体201の構成もまた、上記の変形例2に示される例に限られない。
【0071】
4−9.変形例9
上記の搬送装置10の基体101に設けられる旋回流形成体1の数、構成及び配置は、上記の変形例1に示される例に限られない。これらの要素は、搬送装置10により搬送される板状部材Wのサイズ、形状及び材質に応じて決定されてよい。例えば、旋回流形成体1の数は12個未満でも13個以上でもよい。また、旋回流形成体1は、基体101の外周に沿って2列以上並べられてもよい。同様に、上記の搬送装置20の基体201に設けられる旋回流形成体5の数、構成及び配置もまた、上記の変形例2に示される例に限られない。
【0072】
4−10.変形例10
上記の第2実施形態に係る制御動作において、ステップSb1において旋回流形成体5に対して供給される液体の流量は、第1実施形態に係る第1の流量としてもよい。また、ステップSb4において旋回流形成体5に対して供給される液体の流量は、第1実施形態に係る第2の流量としてもよい。
上記の第3実施形態に係る制御動作において、ステップSc1において導入口76a及び76cを介して旋回流形成体7に対して供給される液体の流量は、第1実施形態に係る第1の流量としてもよい。また、ステップSc4において導入口76a及び76cを介して旋回流形成体7に対して供給される液体の流量は、第1実施形態に係る第2の流量としてもよい。
【0073】
4−11.変形例11
上記の第1実施形態に係る旋回流形成体1において、周知の電動ファンを採用してもよい(電動ファンについては、例えば特開2011−138948号公報参照)。具体的には、電動ファンを旋回流形成体1の凹部12内に、その回転軸が凹部12と同軸となるように設け、制御動作のステップSa1においては駆動を停止しておき、ステップSa4において駆動を開始するようにしてもよい。すなわち、電動ファンを、旋回流を形成する際に駆動するようにしてもよい。電動ファンを採用する場合、第1実施形態に係る吐出口14は、凹部12の底面に設けられてもよい。
なお、電動ファンは、第2実施形態に係る旋回流形成体5と、第3実施形態に係る旋回流形成体7に対しても同様の方法により採用してもよい。
【要約】
本発明に係る制御装置は、液体を吐出することにより被保持体との間に負圧を発生させて被保持体を保持する保持装置に対して供給される液体の流量を制御する。保持装置は、柱状の本体と、本体に形成され、被保持体に臨む平坦状の端面と、端面に形成される凹部と、凹部内に液体を吐出する1以上の流体通路とを備える。制御装置は、凹部内において旋回流が形成されない状態において、凹部内を所定量の液体で満たす。そして、凹部内が所定量の液体で満たされた後に、流体通路から凹部内に吐出される液体により旋回流を形成させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18