【実施例】
【0012】
図1に示すように、本発明に係る飲料サーバーの実施例は、本体10と、中蓋20と、外蓋30の部分に大別することができる。本体10は、上端が解放された四角形の箱形をしており、複数(図示の例では6本)の飲料缶60を収容可能な内部空間14を有している。中蓋20は本体10の上端近くの内部に前記内部空間14を閉鎖した状態で設置される。外蓋30は中蓋20を覆って本体10の上端部に被さり内部空間14を気密にする。
【0013】
[本体10の構造]
図4乃至
図6に示すように、本体10は、底を有する外壁11および内壁12からなる二重構造になっている。外壁11と内壁12との間には空間13が形成され、空間13には断熱材が充填され、本体10の断熱効果が高められている。外壁11と内壁12はともに上端が解放していて、内壁12の上端は外壁11の上端よりも低い位置にある。
【0014】
内壁12は、上端近くにおいて、全周にわたって外方に突出し、さらに内壁12本体の上端と同じ高さまで垂直に立ち上がった鍔部122を有している。鍔部122は、外壁11の上端近くの内側に形成されている段部に当たっている。鍔部122と内壁12本体の上端部との間に溝121が形成され、溝121にパッキン50が埋め込まれている。
図7、
図8にも示すように、パッキン50は内壁12の全周に及んでいる。パッキン50は、外力が加わらない自然状態では、上端部分が鍔部122と内壁12本体の上端よりも上に突出している。
【0015】
内壁12の底部は、飲料サーバーの幅方向すなわち正面から見て左右方向の中央部が上方への隆起部123になっている。隆起部123は、本体10の内部空間14に列をなして収容される複数の飲料缶60の列と列を区分するとともに、保冷体40の支持部材として機能する。
【0016】
本体10の外壁11には、前面上端部の左右方向中央部において前方への突出部124が一体成形されている。突出部124は上端が解放した皿のような形をしていて飲料排出パイプ24を保持している。本体10の外壁11の背面上端部には、外蓋30のフック37を掛け止める軸17が水平方向に支持されている。
【0017】
[中蓋20の構造]
次に、中蓋20の構成について詳細に説明する。
図4乃至
図6、
図9に示すように、中蓋20は、上板25と下板26が重ね合わされた構造になっている。下板26は外縁部が下向きの突縁部261になっている。突縁部261は、下板26の外縁部が下向きに直角に曲がり、さらに水平方向外方に直角に曲がり、さらに上向きに直角に曲がることにより、断面がU字状になっている。上板25は外縁部が下向きの突縁部251になっている。上板25の突縁部251は下板26の断面U字状の突縁部261に嵌っている。
【0018】
上板25と下板26は接着などによって密着した状態で一体化され、中蓋20を構成している。中蓋20は本体10の上端部内方に嵌ることができる形になっていて、下板26の突縁部261がパッキン50の上面に当接するように寸法が定められている。中蓋20が下向きに加圧されると、パッキン50が圧縮され、本体10と中蓋20とが気密に接合するようになっている。
【0019】
中蓋20の下面側から、本体10に収容可能な飲料缶60の本数に対応した数の、また、収容される飲料缶の位置に対応した位置から揚液パイプ21が垂れ下がっている。各揚液パイプ21は、中蓋20の底面から本体10の内部空間14に収容される飲料缶60の底までの距離よりも長く、各揚液パイプ21の先端部211は互いに反対側から斜めに切除されてV字状に形成されている。飲料缶60の底部は、中心部がドーム状に盛り上がり、その周囲は溝状になっている。飲料缶60に挿入された揚液パイプ21は、先端部211が飲料缶60のドーム状の盛り上がりに沿って滑り、飲料缶60の上記溝状の部分に落ち込む。したがって、上記溝状の部分に溜まっている飲料を揚液パイプ21から汲み上げることができ、飲料缶60内の飲料の残量を少なくすることができる。
【0020】
中蓋20には、揚液パイプ21から汲み上げる飲料を本体10の外に向かって搬送するための連結路22と合流部23を有している。連結路22と合流部23は、中蓋20を構成する上板25と下板26の少なくとも一方に溝乃至は凹部を形成し、上板25と下板26を重ねて結合して前記溝乃至は凹部を塞ぐことによって形成することができる。図示の例では、下板26に連結路22と合流部23を形成し、これを上板25で塞ぐことによって連結路22と合流部23が形成されている。
【0021】
各揚液パイプ21はそれぞれ対応する連結路22に連通し、各連結路22は一括して合流部23に連通している。合流部23には飲料排出パイプ24の内部空間が連通している。
図4に示すように、飲料排出パイプ24は、一端部が上板25を貫通して合流部23から立ち上がり、水平方向前方に折れ曲がって上板25の上面に沿い中蓋20の外方に伸び出ている。本体10の所定位置に中蓋20を装着すると、飲料排出パイプ24は本体10の突出部124の上方から斜め下に向かって伸び、突出部124に形成されている案内孔125から斜め下前方に向かって突出する。
【0022】
複数の飲料缶60から飲料が均等に汲み上げられるように、各揚液パイプ21から合流部23に至る経路の長さ及び断面積は等しくなっている。図示の例では、
図8に示すように、合流部23に近い飲料缶60に対応する連結路22は中蓋20内を迂回して形成され、合流部23から遠い飲料缶60に対応する連結路22は直線に近い形に形成されている。
【0023】
中蓋20は、各揚液パイプ21と各連結路22との結合部にそれぞれ、各揚液パイプ21を個別に開閉可能な栓27を有している。各栓27は、操作部が中蓋20の上面側に設けられている。各栓27は手動により水平面内で約90度の範囲で回転操作可能で、各栓27の回転操作により、各揚液パイプ21から各連結路22につながる部分を開閉することができる。
図11は栓27の回転操作による前記結合部の開閉の様子を示しており、回転操作により回転する部分と固定部分があり、回転部分の通路と固定部分の通路が合致すれば開、双方の通路がずれると閉となる。
【0024】
中蓋20の後端部の幅方向中央には、空気受け口28が設けられている。空気受け口28は、中蓋20を厚さ方向に貫く孔に弾性材からなるブッシュ状の部材がはめ込まれることによって形成されている。空気受け口28には外蓋30の空気供給パイプ36が嵌ることができる。
【0025】
中蓋20は、上板25と一体成形することによってつまみ29が設けられている。つまみ29をつまむことによって中蓋20を持ち、中蓋20を本体10に着脱することができる。
【0026】
[外蓋30の構造]
次に、外蓋30の構成について詳細に説明する。
図4、
図5に示すように、外蓋30は、扁平な皿を伏せた形の上部外側板38と、上部外側板38の下端の開口に嵌められた底板39とを有してなる。外蓋30には、上部外側板38の後端の外側に、本体10の軸17に係合するフック37が一体に形成されている。フック37を軸17の下側から引っ掛け、軸17を中心にして外蓋30を回転させることにより外蓋30を本体10の上端開口部に被せることができる。
【0027】
図1乃至
図3に示すように、外蓋30の左右両側には、本体10の左右両側に設けられているバックル18を引っ掛けるフック301が形成されている。バックル18はフック301に引っ掛けてロック態様にすることによって、外蓋30を本体10に引き付けることができる。バックル18とフック301の構造は、既に広く知られているので、説明を省略する。
【0028】
図4に示すように、上部外側板38と底板39との間に生じている空間には、外蓋30の後部においてポンプ31が組み込まれている。ポンプ31は電動モータによって駆動され圧縮空気を生成するモータで、外蓋30に内蔵されている電池によって駆動される。ポンプ31によって生成される圧縮空気は前述の空気供給パイプ36から外蓋30外に供給される。前記圧縮空気の供給路は、空気供給パイプ36と別の空気供給パイプに枝分かれしていて、別の空気供給パイプは、
図10に示す排気管33に連通している。
【0029】
外蓋30が本体10の上端に被せられ、バックル18をフック301に引っ掛けて外蓋30を本体10に引き付けると、
図4に示すように、空気供給パイプ36が中蓋20の空気受け口28に嵌る。また、中蓋20の縁部が外蓋30の底板39の縁部に押され、中蓋20の突縁部261がパッキン50に押し付けられる。こうして中蓋20と本体10の周縁部が気密に接合し、本体10の内部空間14が気密に保たれる。この状態でポンプ31を稼働させると、空気供給パイプ36と空気受け口28を介して本体10の内部空間14に圧縮空気が供給され、内部空間14の気圧が高くなる。
【0030】
外蓋30は、本体10の突出部124に対応して突出部124に被さる突出部302を有している。突出部302には、ノブの形をした操作部材32が設けられている。操作部材32は軸303に支持されて突出部302から上方に突出し、軸303を中心に、垂直面内において前後方向に回転操作することができる。操作部材32は垂直に立ち上がった姿勢で中立位置を保ち、前後方向に回転操作すると、中立位置に戻るように付勢されている。
【0031】
操作部材32は飲料の排出と非排出の切り替え操作を行うもので、操作部材32はスイッチと連動している。操作部材32が前後に回転操作されるとスイッチがオンし、中立位置に戻るとスイッチがオフになる。スイッチがオンすると、ポンプ31と超音波発生装置35が稼働する。
【0032】
操作部材32の下部には操作部材32と一体に、軸303の斜め下前後に腕304,305が伸びている。
図10に示すように、腕304,305の下方直近に前記排気管33が通っている。排気管33の先端は外蓋30内において大気に開放している。排気管33は柔軟性と復元性のある素材からなる。操作部材32が前後に回転操作されると、腕304または腕305に押されて排気管33が閉鎖され、排気管33の操作を開放すると排気管33が解放される。操作部材32、腕304,305を含む構成部分は、排気管33の開閉機構34を構成している。中蓋20側の飲料排出パイプ24と排気管33の開閉機構34が干渉しないように、飲料排出パイプ24は斜め下に向けられ、案内孔125に至っている。
【0033】
図4に示すように、外蓋30内には突出部302の近くにおいて超音波発生装置35が組み込まれている。外蓋30が本体10に被せられ、本体10に密着した状態で飲料排出パイプ24に超音波発生装置35が近接する。超音波発生装置35は前記電池によって駆動される。
【0034】
この実施例では、
図1乃至
図3などに示すように、6本の飲料缶60が2列に3個ずつ並んで収容される。2列の飲料缶60相互間には、縦方向の部分円筒面が両側に3個ずつ並んだ形の空間が生じる。この空間には、この空間の形に合わせて作られた保冷体40が挿入される。保冷体40は一般によく知られている構造のもので、プラスチック製の容器に保冷液が封入されたものである。保冷体40を冷凍庫で予め冷凍しておき、飲料サーバーを使用するとき本体10内の所定の空間に挿入する。こうすることにより、本体10の内部空間14を長時間にわたり冷やすことができる。
【0035】
ここまでの説明で明らかなように、ポンプ31と超音波発生装置35およびこれらを駆動する電池などの電気部品は、外蓋30のみに組み込まれ、本体10、中蓋20には電気部品はない。この種の飲料サーバーは、使用によって汚れやすい部分は本体10と中蓋20であり、汚れた部分は水洗いされることが想定される。本実施例に係る飲料サーバーは、電気部品が組み込まれている外蓋30を本体10から分離することは容易である。すなわち、外蓋30を回転させて本体10の上端を開放した状態で、外蓋30のフック37を本体10の軸17から外せばよい。これによって本体10、中蓋20、外蓋30が分離されるので、中蓋20と外蓋30を水洗いすればよい。中蓋20と外蓋30には電気部品が組み込まれていないので、水洗いしても動作不良になることはなく、メンテナンスが容易であるという利点がある。
【0036】
[実施例の使用方法、動作]
次に、ここまで説明してきた実施例に係る飲料サーバーの使用方法およびそれに伴う動作について説明する。
図1、
図7などに示すように、本体10の内部空間14に1本または複数本の飲料缶60を収容する。予め各飲料缶60のプルトップ方式などからなる飲み口を開けておく。ここでは、飲料缶60としてビール缶を収容した場合について説明する。
【0037】
飲料缶60の列相互間に保冷体40を挿入する。
図7、
図8はこの状態を示している。次に、中蓋20を本体10の上端開放部に設置し、本体10の上端開放部を塞ぐ。このとき、各飲み口から揚液パイプ21を対応する飲料缶60に挿入する。6本の飲料缶60を収容する場合は全ての栓27を開く。飲料缶60が6本に満たない場合は、不使用の揚液パイプ21に対応する栓27は閉じておく。仮に、不使用の揚液パイプ21に対応する栓27が開いたままであるとすると、本体10の内部空間14が不使用の揚液パイプ21を通じて大気圧に開放され、後で説明する飲料の供給ができなくなる。
図2は中蓋20を本体10に設置した状態を示している。
【0038】
次に、外蓋30を、本体10の軸17を中心に回転させ、中蓋20を上から覆って本体10の開放上端部に被せる。さらに、本体10側のバックル18を外蓋30のフック301に引っ掛け、バックル18で外蓋30を本体10に引き付ける。
図4乃至
図6、
図9はこの状態を示している。外蓋30が本体10に向かって引き付けられることにより、中蓋20の周縁部上面が外蓋30の周縁部によって押され、中蓋20の周縁部下面が本体10の周縁部に押し付けられる。
【0039】
中蓋20の周縁部と本体10の周縁部との間に前記パッキン50が介在することにより、本体10と中蓋20で画される空間が気密状態に保持される。本体10に収容される飲料缶60が6本に満たなくても、不使用の揚液パイプ21に対応する栓27は閉じられているため、本体10の内部空間14が外気に連通することはない。
【0040】
この状態で操作部材32を前方または後方に倒すようにして回転操作すると、
図10に示すように、排気管33の開閉機構34も動作し、腕304または腕305が排気管33を押しつぶし、排気管33を閉鎖する。排気管33の閉鎖により、本体10の内部空間14が密閉された空間になる。排気管33の閉鎖と同時にポンプ31と超音波発生装置35が稼働し始める。ポンプ31の稼働により空気供給パイプ36、空気受け口28を経て空気が本体10の内部空間14に送り込まれ、内部空間14の気圧が高まる。
【0041】
内部空間14の気圧が高まることによって各飲料缶60内のビールの上面に圧力がかかり、各飲料缶60内のビールが揚液パイプ21に押し上げられる。押し上げられたビールはそれぞれ
図8に示す連結路22を通って合流部23に至り、さらに、飲料排出パイプ24を通って外部に排出される。ビールが飲料排出パイプ24を通るとき、超音波発生装置35の稼働によってビールに超音波振動が付与され、ビールがきめ細かな炭酸の泡を伴って排出される。これをコップで受け取ると、ビールがきめ細かな泡で覆われ、飲料缶60から直接飲むよりも一段と美味しいビールを飲むことができる。
【0042】
ビールを適量供給したら、操作部材32の回転操作を停止し、操作部材32を付勢力によって中立位置に復帰させる。操作部材32の復帰操作でポンプ31と超音波発生装置35の稼働が停止し、各飲料缶60からのビールの供給が停止する。操作部材32が中立位置に復帰することにより、
図10に示す開閉機構34も原位置に復帰して排気管33が解放され、本体10の内部空間14が大気圧に開放される。したがって、ポンプ31の停止とともに直ちにビールの供給が停止する。仮に開閉機構34がないとすれば、本体10の内部空間14が大気圧に戻るのが遅れ、飲料排出パイプ24からいわゆる液だれが生じて望ましくない。
【0043】
[実施例に係る飲料サーバーで得られる効果]
以上説明した実施例に係る飲料サーバーによれば、以下のような効果を得ることができる。
主要な構成部分を本体10と、中蓋20と、外蓋30に分け、中蓋20に、各飲料缶60内の飲料を汲み上げる溶液パイプ21を設けたため、本体10に収容する飲料缶60の数が増えても、準備操作が容易である。
【0044】
中蓋20を覆って外蓋30を本体10の上端に被せれば、本体10の内部空間14の気密が保たれて飲料の供給が可能になり、この点からも準備操作が容易である。
飲料缶60の数が本体10の内部空間14に収容可能な数に満たない場合は、不使用の溶液パイプ21に対応する栓27を操作して溶液パイプ21に通じる飲料の供給路を閉鎖すればよい。栓27の操作は容易である。
【0045】
本体10の内部空間14全体を気密状態にし、内部空間14に空気を送り込んで各飲料管60内の飲料を供給する仕組みになっているため、サイズの異なる飲料缶60が混在していても、各飲料缶60から飲料を供給することができる。
【0046】
各揚液パイプ21から飲料排出パイプ24に至る飲料の流路は、横断面および全長を等しくしてあるため、各飲料缶60から均等に飲料を供給することができる。
その他の効果は、実施例の具体的説明において記載し、また、具体的説明から推定することができるので、記載を省略する。