(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の太陽電池モジュールの設置方法では、押え具と太陽電池モジュールと固定部材にそれぞれ形成された取付け穴に、固定具としての差し込みピンを貫通させることにより、屋根の野地板に押え具と太陽電池モジュールと固定部材とを一体に固定するため、面内及び面外方向に伸縮する下地に太陽電池モジュールを設置する際に上記設置方法を適用することは難しい。すなわち、上記設置方法では下地が伸縮すると、下地の伸縮により発生する力が太陽電池モジュールに作用して太陽電池モジュールが歪む。このため、太陽電池モジュールの破損や発電性能の低下が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、下地の伸縮による電子部材の歪を抑制し、電子部材の破損を阻止する電子部材固定構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る電子部材固定構造は、建物の屋根に取り付けられる膜材からなり、面方向に伸縮する下地と、前記下地の表面側に配置されたシート状の電子部材と、前記電子部材の少なくとも周縁部に設けられ、前記電子部材を前記下地との間に隙間を設けて前記下地に取り付ける、又は前記電子部材の少なくとも周縁部に設けられ、前記電子部材の中央部を前記下地に接着させずに取り付けると共に、面ファスナーを除く部材であり、変形して前記下地の伸縮による力を吸収する伸縮吸収部材と、を有
し、前記伸縮吸収部材は、前記電子部材の裏面に接合されると共に、端部が前記電子部材の周囲から離れた位置で前記下地に固定され、前記下地の伸縮に追従して伸縮するシート状の伸縮部材であるものである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、
建物の屋根に取り付けられる膜材からなり、面方向に伸縮する下地の表面に、シート状の電子部材の少なくとも
周縁部に設けられた伸縮吸収部材を介して電子部材が取り付けられて
いる。その際、伸縮吸収部材は、電子部材を下地との間に隙間を設けて下地に取り付け、又は電子部材の中央部を下地に接着させずに取り付けているため、下地が伸縮したときに下地の伸縮により発生する力が伸縮吸収部材によって吸収される。これによって、下地の伸縮による電子部材の歪の発生が抑制され、電子部材の破損を阻止することができる。
また、建物の屋根に膜材からなる下地が取り付けられており、電子部材が伸縮吸収部材を介して膜材からなる下地に取り付けられたときに、膜材からなる下地の伸縮により発生する力が吸収され、電子部材の歪の発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
また、シート状の伸縮部材が電子部材の裏面に接合されると共に、伸縮部材の端部が電子部材の周囲から離れた位置で下地に固定されることで、電子部材が伸縮部材を介して下地に取り付けられている。下地が面方向に伸縮したときに、下地の伸縮に追従して電子部材の周囲の伸縮部材が伸縮することで、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0013】
請求項
2の発明に係る電子部材固定構造は、
建物の屋根に取り付けられる膜材からなり、面方向に伸縮する下地と、前記下地の表面側に配置されたシート状の電子部材と、前記電子部材の少なくとも周縁部に設けられ、前記電子部材を前記下地との間に隙間を設けて前記下地に取り付ける、又は前記電子部材の少なくとも周縁部に設けられ、前記電子部材の中央部を前記下地に接着させずに取り付けると共に、面ファスナーを除く部材であり、変形して前記下地の伸縮による力を吸収する伸縮吸収部材と、を有し、前記伸縮吸収部材は、前記下地に固定され、前記電子部材に形成された孔部に挿通されると共に先端に前記電子部材の抜け止めを備えたゴムピンであるものである。
【0014】
請求項
2に記載の発明によれば、下地に固定されたゴムピンが電子部材に形成された孔部に挿通されており、電子部材がゴムピンを介して下地に取り付けられると共に、ゴムピンの先端の抜け止めにより電子部材がゴムピンから外れることが阻止される。下地が面方向に伸縮したときに、下地の伸縮に追従してゴムピンが弾性変形することで、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0017】
請求項
3の発明に係る電子部材固定構造は、建物の屋根に取り付けられる膜材からなり、面方向に伸縮する下地と、前記下地の表面側に配置されたシート状の電子部材と、前記電子部材の少なくとも周縁部に設けられ、前記電子部材を前記下地との間に隙間を設けて前記下地に取り付ける、又は前記電子部材の少なくとも周縁部に設けられ、前記電子部材の中央部を前記下地に接着させずに取り付けると共に、面ファスナーを除く部材であり、変形して前記下地の伸縮による力を吸収する伸縮吸収部材と、を有し、前記伸縮吸収部材は、一端部側が前記下地に固定されると共に他端部側で前記電子部材を吊り下げ支持し、前記下地の伸縮により弾性変形する板ばねであるものである。
【0018】
請求項
3に記載の発明によれば、板ばねの一端部側が下地に固定されると共に板ばねの他端部側が電子部材を吊り下げ支持することで、電子部材が板ばねを介して下地に取り付けられている。下地が伸縮したときに板ばねの弾性変形により、下地の伸縮により発生する力が吸収され、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0021】
請求項
4の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の発明において、前記電子部材がフレキシブル性を備えた太陽電池であるものである。
【0022】
請求項
4に記載の発明によれば、電子部材がフレキシブル性を備えた太陽電池であり、下地が面方向に伸縮しても太陽電池の歪の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子部材固定構造によれば、下地の伸縮による電子部材の歪を抑制し、電子部材の破損を阻止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1を用いて、本発明の電子部材固定構造の第1実施形態について説明する。
【0028】
図1には、電子部材固定構造10の全体構成が断面図にて示されており、
図1(A)には膜材の伸長前の状態が、
図1(B)には膜材の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造10は、面方向に伸縮する下地としての膜材12と、膜材12の表面上に配置されたシート状の電子部材としての太陽電池モジュール14と、太陽電池モジュール14を膜材12に取り付けるための伸縮吸収部材としての上下一対の面ファスター16と、を備えている。
【0029】
膜材12は、建物(図示省略)の屋根に取り付けられる屋根材であり、テントやドーム型の屋根材などに使用されている。膜材12は、ガラス繊維、又はポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂製の繊維を編みこんだ基布の表面に、撥油性、撥水性に優れたフッ素樹脂被膜を形成したものである。フッ素樹脂被膜によって膜材12の表面に汚れが付着しにくく、耐久性に優れている。膜材12は、建物の内圧や建物の外部に吹き付ける風などの外力によって、面方向(面内方向と面外方向の両方を含む)に伸縮するものである。すなわち、膜材12は、施工時に初期張力を導入しながら施工される。また、施工後には、風、熱膨張、積雪、溜水などの外力によって張力がかかり、面方向に伸縮する。本実施形態では、膜材12は、例えば最大5%程度伸びる構成とされている。
【0030】
太陽電池モジュール14は、フレキシブル性を備えたシート状部材であり、ポリイミドなどの電気絶縁性を有する樹脂製のフィルム基板上に薄膜の太陽電池セルを配置し、電極と共に太陽電池セルの表面(受光面)を光透過性の保護フィルムで被覆したものである。太陽電池セルとフィルム基材、及び太陽電池セルと保護フィルムとは接着剤で接着されている。太陽電池セルは、例えば、結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi、CIGS化合物半導体などの光発電素子で構成されている。太陽電池モジュール14は、任意の曲率で曲げることができるものである。本実施形態では、太陽電池モジュール14は略長方形状に形成されており、例えば、長さが3500〜6000mmで、幅が350〜500mmで、厚さが1〜10mmとされている。なお、太陽電池モジュール14の寸法はこれに限定されるものではない。また、本実施形態では、太陽電池モジュール14の縦方向の引張強度は約1400〜1500N/cm、横方向の引張強度は約1100〜1200N/cmとされている。
【0031】
面ファスター16は、太陽電池モジュール14の裏面に接着剤22により接合(接着固定)された上側面ファスナー(一方の面ファスナー)18と、膜材12の表面に接着剤24により接合(接着固定)された下側面ファスナー(他方の面ファスナー)20と、で構成されている。上側面ファスナー18は、太陽電池モジュール14の裏面に接着剤22により接合されるシート状の基部18Aと、基部18Aの表面に対して交差する方向に延びた多数のループ部18Bと、を備えている。下側面ファスナー20は、膜材12の表面に接着剤24により接合されるシート状の基部20Aと、基部20Aの表面に対してほぼ直交する方向に延びた多数のフック部20Bと、を備えている。そして、上側面ファスナー18の多数のループ部18Bに下側面ファスナー20の多数のフック部20Bがそれぞれ係止されることで、上側面ファスナー18と下側面ファスナー20とが貼り付くようになっている。
【0032】
なお、膜材12の表面のフッ素樹脂被膜は難接着性を有するため、下側面ファスナー20の基部20Aを膜材12の表面に接着剤24により接着固定する際は、予め膜材12の被接着部のフッ素樹脂被膜の表面処理を行うことが好ましい。表面処理方法としては、重クロム酸カリウム、金属ナトリウムやナトリウム−ナフタレン錯体を用いた化学的処理方法、コロナ放電、プラズマ放電、スパッタエッチング等の放電処理による方法、フッ化アルゴンエキシマレーザーを照射して処理する方法などが用いられる。また、フッ素樹脂被膜の表面処理方法については、特開2007−330885号公報等に記載されている。
【0033】
接着剤22、24としては、反応硬化型の接着剤、ホットメルト型接着剤などが用いられる。例えば、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、臭素系接着剤、アクリル変性シリコーン系接着剤などが用いられる。本実施形態では、上側面ファスナー18は太陽電池モジュール14の裏面に接着剤22により接着固定され、下側面ファスナー20は膜材12の表面に接着剤24により接着固定されているが、接着剤22、24に代えてゴム系、アクリル樹脂系などの粘着剤を用いてもよい。
【0034】
上側面ファスナー18は、太陽電池モジュール14の裏面の周縁部に沿って設けられている。言い換えると、上側面ファスナー18は、太陽電池モジュール14の裏面全体に設けられているわけではなく、太陽電池モジュール14の裏面の一部に設けられている。下側面ファスナー20は、膜材12の表面における太陽電池モジュール14の上側面ファスナー18と対応する位置に設けられている。上側面ファスナー18と下側面ファスナー20とが貼り付くことによって、太陽電池モジュール14が上側面ファスナー18及び下側面ファスナー20を介して膜材12に取り付けられる。その際、上側面ファスナー18の多数のループ部18Bと下側面ファスナー20の多数のフック部20Bが伸縮する方向に変形することで、膜材12の伸縮による力を吸収し、太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制するようになっている。
【0035】
図示を省略するが、太陽電池モジュール14の内部に設けられた電極には配線が接続されており、上側面ファスナー18及び下側面ファスナー20の内側に配線が引き出されて外部の電源と接続される配線処理が施されている。また、太陽電池モジュール14は、膜材12の表面に複数並べて配置されており、本実施形態の電子部材固定構造10により膜材12の表面に取り付けられている。
【0036】
次に、本実施形態の電子部材固定構造10の作用並びに効果について説明する。
【0037】
図1(A)に示されるように、太陽電池モジュール14の裏面の周縁部に接合された上側面ファスナー18が、膜材12の表面に接合された下側面ファスナー20に貼り付けられることで、太陽電池モジュール14が上側面ファスナー18及び下側面ファスナー20を介して膜材12の表面に取り付けられている。
図1(B)に示されるように、建物(図示省略)の屋根に取り付けられた膜材12が、建物の内圧や風などの外力等によって面方向(面内方向及び面外方向)に伸縮したとき、上側面ファスナー18の多数のループ部18Bと下側面ファスナー20の多数のフック部20Bが伸縮する方向に変形することで、膜材12の伸縮により発生する力が吸収される。これによって、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール14の歪の発生が抑制され、太陽電池モジュール14の破損を阻止することができる。なお、
図1(B)では、膜材12が面方向に伸長した状態が示されている。
【0038】
例えば、膜材12は最大約5%伸びる可能性があり、太陽電池モジュール14は約2〜3%程度の歪で発電素子が壊れ、発電能力が低下する可能性があるが、本実施形態では、上側面ファスナー18及び下側面ファスナー20が変形することによって、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール14の歪の発生が抑制される。このため、太陽電池モジュール14の破損や発電能力の低下を阻止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、太陽電池モジュール14の裏面に設けられた上側面ファスナー18を膜材12の表面に設けられた下側面ファスナー20に貼り付けることによって太陽電池モジュール14を取り付けるため、太陽電池モジュール14の設置が容易であり、施工時の作業性がよい。また、上側面ファスナー18と下側面ファスナー20とを剥がすことで太陽電池モジュール14を取り外すことができるため、太陽電池モジュール14の交換を容易に行うことができる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0041】
図2には、電子部材固定構造30の全体構成が断面図にて示されており、
図2(A)には膜材12の伸長前の状態が、
図2(B)には膜材12の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造30は、シート状の太陽電池モジュール14を膜材12に取り付けるための伸縮吸収部材としてのシート状の伸縮部材32を備えている。シート状の伸縮部材32は、太陽電池モジュール14の裏面のほぼ全面に接着剤34により接合されると共に、伸縮部材32の端部が太陽電池モジュール14の周囲から離れた位置で膜材12の表面に接着剤36により接合されている。本実施形態では、シート状の伸縮部材32は、略長方形状の太陽電池モジュール14よりひと回り大きい略長方形状に形成されており、伸縮部材32の裏面の周縁部が膜材12の表面に接着剤36により接合されている。なお、接着剤34、接着剤36としては、前述した反応硬化型の接着剤、ホットメルト型接着剤などが用いられる。また、接着剤34、接着剤36に代えて、粘着剤を用いてもよい。
【0042】
伸縮部材32は、例えば、面方向に伸縮可能なゴム製のシート部材からなり、膜材12の伸縮に追従して伸縮するようになっている。伸縮部材32の引張剛性が太陽電池モジュール14の引張剛性に比べて小さければ、歪は太陽電池モジュール14の周囲の伸縮部材32に集中する。
【0043】
このような電子部材固定構造30では、シート状の伸縮部材32が太陽電池モジュール14の裏面に接着剤34により接合されると共に、伸縮部材32の縁部が太陽電池モジュール14の周囲から離れた位置で接着剤36により膜材12の表面に接合されることで、太陽電池モジュール14が伸縮部材32を介して膜材12に取り付けられている。膜材12が面方向に伸縮したときに、膜材12の伸縮に追従して太陽電池モジュール14の裏面に接合された部位の周囲の伸縮部材32が伸縮することで、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。このため、太陽電池モジュール14の破損や発電能力の低下を阻止することができる。
【0044】
次に、本発明の第3実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1及び第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0045】
図3には、電子部材固定構造50の全体構成が断面図にて示されており、
図3(A)には膜材12の伸長前の状態が、
図3(B)には膜材12の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造50は、シート状の太陽電池モジュール52と、太陽電池モジュール52を膜材12に取り付けるための伸縮吸収部材としての複数のゴムピン54と、を備えている。ゴムピン54は、円柱状の軸部54Aと、軸部54Aの先端に軸部54Aの直径よりも大きく形成された抜け止めとしての頭部54Bと、を備えている。軸部54Aの端面は、膜材12の表面に図示しない接着剤又は粘着剤により接合されている。
【0046】
太陽電池モジュール52の周縁の4隅を含む複数箇所には、ゴムピン54の軸部54Aが挿通される円形状の孔部52Aが設けられている。孔部52Aの内径は、軸部54Aの直径よりも大きく形成されており、孔部52A内を軸部54Aが移動可能となっている。また、頭部54Bの外径は、孔部52Aの内径よりも大きく形成されており、太陽電池モジュール52の孔部52Aがゴムピン54の頭部54Bから抜けるのを阻止するようになっている。ゴムピン54は、太陽電池モジュール52の孔部52Aの位置に合わせて膜材12の表面に複数設けられている。本実施形態では、太陽電池モジュール52を膜材12の表面に仮止めした後、ゴムピン54の軸部54Aを太陽電池モジュール52の孔部52Aに挿通して軸部54Aの端面を膜材12の表面に接着剤又は粘着剤により接合する。
【0047】
このような電子部材固定構造50では、膜材12の表面に固定された複数のゴムピン54の軸部54Aが太陽電池モジュール52の孔部52Aにそれぞれ挿通されており、太陽電池モジュール52がゴムピン54を介して膜材12に取り付けられると共に、ゴムピン54の先端の頭部54Bにより太陽電池モジュール52の孔部52Aがゴムピン54から抜けることが阻止される。
図3(B)に示されるように、膜材12が面方向に伸縮したときに、膜材12の伸縮に追従してゴムピン54の軸部54Aが孔部52Aの壁面に当たって弾性変形することで、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール52の歪の発生を抑制することができる。
【0048】
次に、本発明の第4実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0049】
図4には、電子部材固定構造70の全体構成が断面図にて示されており、
図4(A)には膜材12の伸長前の状態が、
図4(B)には膜材12の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造70は、シート状の太陽電池モジュール14を膜材12に取り付けるための伸縮吸収部材としてのばね部材72を備えている。本実施形態では、ばね部材72はコイルスプリングからなり、シート状の太陽電池モジュール14の縁部の外側に複数設けられている。ばね部材72の一端部には取付部材74が取り付けられており、取付部材74は接着剤76(又は粘着剤)により膜材12の表面に固定されている。ばね部材72の他端部には取付部材78が取り付けられており、取付部材78は太陽電池モジュール14の縁部に図示しない接着剤等により固定されている。ばね部材72は、太陽電池モジュール14の面方向に沿って伸縮可能とされている。
【0050】
太陽電池モジュール14の裏面の中央部付近には、太陽電池モジュール14の一箇所を膜材12の表面に固定する略矩形状の固定部材80が設けられている。固定部材80の上面は図示しない接着剤等により太陽電池モジュール14の裏面に接合されており、固定部材80の下面は図示しない接着剤等により膜材12の表面に接合されている。
【0051】
このような電子部材固定構造70では、ばね部材72の一端部が取付部材74により膜材12の表面に固定されると共に、ばね部材72の他端部が取付部材78により太陽電池モジュール14の縁部に固定されることで、太陽電池モジュール14が複数のばね部材72を介して膜材12の表面に取り付けられている。
図4(B)に示されるように、膜材12が面方向に伸縮したときに、ばね部材72が太陽電池モジュール14の面方向に沿って弾性変形により伸縮することで、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。
【0052】
また、太陽電池モジュール14の中央部付近の一箇所が固定部材80により膜材12の表面に固定されることで、膜材12が伸縮しても膜材12に対する太陽電池モジュール14の位置を安定化させることができる。
【0053】
次に、本発明の第5実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1〜第4実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0054】
図5には、電子部材固定構造90の全体構成が断面図にて示されており、
図5(A)には膜材12の伸長前の状態が、
図5(B)には膜材12の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造90は、シート状の太陽電池モジュール14を膜材12に取り付けるための伸縮吸収部材としてのゴム部材92を備えている。ゴム部材92は、太陽電池モジュール14の縁部に沿って配置された長尺状のエアチューブからなり、長手方向と直交する方向の断面が筒状に形成されている(
図5参照)。本実施形態では、ゴム部材92は、太陽電池モジュール14の縁部の周囲に配置されている。本実施形態では、ゴム部材92は、太陽電池モジュール14の縁部の全周に設けられているが、太陽電池モジュール14の縁部に部分的に配置される構成でもよい。
【0055】
ゴム部材92の筒部の一端部側に取付部材94が取り付けられており、取付部材94は接着剤96(又は粘着剤)により膜材12の表面に固定されている。ゴム部材92の筒部の他端部側には取付部材98が取り付けられており、取付部材98は太陽電池モジュール14の縁部に図示しない接着剤等により固定されている。取付部材94、98は、必ずしもゴム部材92の長手方向の全長に設けられている必要はなく、ゴム部材92の長手方向に間隔をおいて複数設けられている構成でもよい。ゴム部材92は、膜材12の伸縮に追従して伸縮可能となっている。
【0056】
このような電子部材固定構造90では、太陽電池モジュール14が筒状のゴム部材92を介して膜材12の表面に取り付けられている。
図5(B)に示されるように、膜材12が面方向に伸縮したときに、太陽電池モジュール14の縁部に取り付けられたゴム部材92が膜材12の伸縮に追従して伸縮することで、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。
【0057】
また、太陽電池モジュール14の中央部付近の一箇所が固定部材80により膜材12の表面に固定されることで、膜材12が伸縮しても膜材12に対する太陽電池モジュール14の位置を安定化させることができる。
【0058】
次に、本発明の第6実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1〜第5実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0059】
図6には、電子部材固定構造110の全体構成が断面図にて示されており、
図6(A)には膜材12の伸長前の状態が、
図6(B)には膜材12の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造110は、シート状の太陽電池モジュール14を膜材12に取り付けるための伸縮吸収部材としての板ばね112を備えている。板ばね112は、太陽電池モジュール14の縁部の外側に配置されており、太陽電池モジュール14の縁部と直交する方向の断面が略逆U字状に形成されている。
【0060】
板ばね112の一端部には取付部材114が取り付けられており、取付部材114は接着剤116(又は粘着剤)により膜材12の表面に固定されている。板ばね112の他端部には取付部材118が取り付けられており、取付部材118は太陽電池モジュール14の縁部に図示しない接着剤等により固定されている。なお、太陽電池モジュール14の中央部付近の一箇所を膜材12の表面に固定する固定部材(
図4等を参照)を設けてもよい。
【0061】
このような電子部材固定構造110では、板ばね112の一端部側が膜材12の表面に固定されると共に板ばね112の他端部側が太陽電池モジュール14を吊り下げ支持することで、太陽電池モジュール14が板ばね112を介して膜材12に取り付けられている。
図6(B)に示されるように、膜材12が面方向に伸縮したときに、板ばね112の弾性変形により膜材12の伸縮により発生する力が吸収され、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。また、太陽電池モジュール14の縁部の外側に配置された板ばね112により太陽電池モジュール14を吊り下げ支持することで、膜材12が伸縮しても太陽電池モジュール14の位置が安定化する。
【0062】
次に、本発明の第7実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1〜第6実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0063】
図7には、電子部材固定構造130の全体構成が断面図にて示されており、
図7(A)には膜材12の伸長前の状態が、
図7(B)には膜材12の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造130は、シート状の太陽電池モジュール14の裏面の周縁部が伸縮吸収部材としての接着剤132により膜材12の表面に取り付けられている。接着剤132は、せん断変形可能な接着剤で構成されており、太陽電池モジュール14の裏面の周縁部と膜材12との間に介在されて太陽電池モジュール14を膜材12の表面に接着固定すると共に、膜材12の伸縮によりせん断変形するようになっている。接着剤132として、例えば、アクリル変成シリコーン系等の弾性接着剤が用いられている。
【0064】
このような電子部材固定構造130では、
図7(B)に示されるように、膜材12が面方向に伸縮したときに接着剤132がせん断変形することで、膜材12の伸縮によって発生する力が吸収され、太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。
【0065】
なお、上記第1〜第7実施形態では、フレキシブル性を備えたシート状の太陽電池モジュール14が用いられているが、これに限定されず、LED、液晶パネル、プラズマパネル等のシート状の電子部材を固定する構造にも本発明を適用することができる。
【0066】
上記第1〜第7実施形態では、面方向に伸縮する膜材12が用いられているが、これに限定されず、面方向に伸縮する下地であれば、膜材以外の下地にも本発明の電子部材固定構造を適用することができる。
【0067】
また、上記第1〜第7実施形態では、膜材12は建物の屋根に使用される屋根材であるが、これに限定されず、他の構造物等に使用される下地にも本発明の電子部材固定構造を適用することができる。