【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業(高出力産業用燃料電池スタック実現のための金型技術、金属プレス技術、実装技術、及びめっき技術の高度化研究開発)委託研究、産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[燃料電池1]
先ず、本発明に係る燃料電池用セパレータユニット60(
図2を参照)を備える燃料電池1の全体構成について、
図1を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、
図1の上下方向を燃料電池1の上下方向と規定して記述する。また、
図1においては、矢印Aの方向を前方と規定して記述する。
【0020】
本実施形態における燃料電池1は、所謂「固体高分子型燃料電池」であって、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜を電解質として備える燃料電池である。
燃料電池1は、主に積層体2やエンドプレート3や締付板4などにより構成される。
【0021】
積層体2は、燃料電池1の電源機能を発現するために、該燃料電池1に備えられる構造体である。
積層体2は、例えば水平方向、且つ前後方向(矢印Aとの平行方向)に積層される、複数の単位セル50・50・・・からなるスタック構造体として構築される。
【0022】
なお、前記単位セル50は、積層体2を構成する一単位として設けられ、本発明に係るセパレータユニット60(
図2を参照)と、高分子電解質膜を含むMEA55が貼設されるMEAプレート54とを各々積層することによって構成される。
従って、積層体2は、複数のセパレータユニット60・60・・・と、MEA55・55・・・(より具体的には、MEAプレート54・54・・・)とが、順に交互に積層配置されることによって構成されるのである。
【0023】
次に、エンドプレート3について説明する。
エンドプレート3は、積層体2による起電力を燃料電池1の外部に取り出すために、該燃料電池1に備えられる部品である。
エンドプレート3は、導電性材料からなる矩形板状の部材からなり、その側端部の一部には、端子部3aが突設されている。
【0024】
そして、エンドプレート3・3は、一組の積層体2に対して二枚設けられ、該積層体2の前後方向(複数の単位セル50・50・・・の積層方向。以下同じ。)の両端面(積層体2の最前面側、及び最後面側)において、前記積層体2を挟持するようにして積層配置される。
【0025】
なお、積層体2の前後両端面とエンドプレート3・3との間には、図示せぬ導電性のシート状パッキンが各々挟着されており、前記間隙部(積層体2とエンドプレート3との間)より、燃料ガス(本実施形態においては、水素を採用)や、酸化ガス(本実施形態においては、空気を採用)や、冷却水が漏洩するのを防止する構成となっている。
【0026】
次に、締付板4について説明する。
締付板4は、図示せぬ複数本の拘束バーとともに、積層体2と、エンドプレート3・3との積層姿勢(より具体的には、複数の単位セル50・50・・・と、二枚のエンドプレート3・3との積層方向側の形状。以下同じ。)を保持するために、燃料電池1に備えられる部品である。
締付板4・4は、絶縁材料からなる十分な厚みを有した矩形板状の部材からなり、一組の積層体2に対して二個設けられる。
【0027】
そして、締付板4・4は、積層体2の前後両側に配設される二枚のエンドプレート3・3の、更に前後方向の両端面(即ち、前側のエンドプレート3の前面側、及び後側のエンドプレート3の後面側)において、これらの積層体2とエンドプレート3・3とを同時に挟持するようにして積層配置される。
つまり、本実施形態における燃料電池1においては、積層方向の後方から前方に向かって、締付板4、エンドプレート3、積層体2、エンドプレート3、締付板4と順に積層配置される。
【0028】
なお、締付板4は、前述したような絶縁材料に限定されることなく、導電性を有する金属材料によっても形成することは可能である。但し、この場合においては、締付板4とエンドプレート3との電気的結合の発生を防止するために、シート状の絶縁部材を、これら締付板4とエンドプレート3との間に挟着することが必要となる。
【0029】
ここで、前側に配設される締付板4(以下、適宜「前側締付板4F」と記載する)の平面の左右両側には、前後方向に貫通する複数の貫通孔4a・4a・・・が設けられる。
また、後側に配設される締付板4(以下、適宜「後側締付板4R」と記載する)の平面の左右両側には、複数の貫通孔4b・4b・・・が、前記貫通孔4a・4a・・・に対して、各々同軸上に形成される。
さらに、エンドプレート3の平面の左右両側には、複数の貫通孔3b・3b・・・が、前記貫通孔4a・4a・・・(或いは、貫通孔4b・4b・・・)に対して、各々同軸上に形成される。
【0030】
そして、前後方向に延出する複数の拘束バー(図示せず)が、これら複数の貫通孔4a・4a・・・、4b・4b・・・、3b・3b・・・に対して、それぞれ同時に貫通するようにして配置されるとともに、各拘束バーの両端部には、ナット等が締め付けられる。
これにより、積層体2を構成する複数の単位セル50・50・・・、及び二枚のエンドプレート3・3は、前側締付板4Fと後側締付板4Rとを介して、前後方向に隙間なく拘束されることとなり、積層体2とエンドプレート3・3との積層姿勢が堅固に保持されるのである。
【0031】
ところで、一方の締付板4(本実施形態においては、前側締付板4F)の平面部には、複数の凹部(より具体的には、第一乃至第四凹部41・42・43・44)が形成されており、該凹部には、複数の支持ブラケット(より具体的には、第一乃至第四支持ブラケット5・6・7・8)が、ボルト等を介して、各々着脱可能に固設されている。
【0032】
具体的には、前側締付板4Fの前面において、例えば、その上部には、左右方向(平面視にて、複数の単位セル50・50・・・の積層方向との直交方向。以下同じ。)に延出する略長方形状の第一凹部41と、台形状の第二凹部42とが各々設けられるとともに、その下部には、同じく左右方向に延出する略長方形状の第三凹部43と、正方形状の第四凹部44とが各々設けられている。
【0033】
前記第一凹部41の底面において、その右部には、前後方向に貫通する貫通孔41aが形成されるとともに、その左部には、略逆三角形状に開口する開口部41bが形成されている。
また、第二凹部42の底面において、その中央部には、略台形状に開口する開口部42aが形成されている。
また、第三凹部43の底面において、その左部には、前後方向に貫通する貫通孔43aが形成されるとともに、その右部には、左右方向に延出する長方形状の開口部43bが形成されている。
さらに、第四凹部44の底面において、その中央部には、正方形状に開口する開口部44aが形成されている。
【0034】
一方、第一支持ブラケット5は、略長方形状の板部材からなるベースプレート5aと、該ベースプレート5aの平面の左右両部に各々垂設される二本の配管部材5b・5cとにより構成されるとともに、前記ベースプレート5aの形状は、第一凹部41の形状と同等となっている。
【0035】
そして、第一支持ブラケット5は、二本の配管部材5b・5cが、ともに前方に向かって延出するようにして配設され、ベースプレート5aを介して第一凹部41に嵌設される。
これにより、ベースプレート5aの平面の右部に垂設される配管部材(以下、「第一右側配管部材」と記載する)5bと、第一凹部41の底面の右部に形成される貫通孔41aとが、互いに連結されることとなる。また、ベースプレート5aの平面の左部に垂設される配管部材(以下、「第一左側配管部材」と記載する)5cと、第一凹部41の底面の左部に形成される開口部41bとが、互いに連結されることとなる。
【0036】
また、第二支持ブラケット6は、台形状の板部材からなるベースプレート6aと、該ベースプレート6aの平面の中央部に垂設される配管部材(以下、「第二配管部材」と記載する)6bとにより構成されるとともに、前記ベースプレート6aの形状は、第二凹部42の形状と同等となっている。
【0037】
そして、第二支持ブラケット6は、第二配管部材6bが前方に向かって延出するようにして配設され、ベースプレート6aを介して第二凹部42に嵌設される。
これにより、ベースプレート6aの平面の中央部に垂設される第二配管部材6bと、第二凹部42の底面の中央部に形成される開口部42aとが、互いに連結されることとなる。
【0038】
また、第三支持ブラケット7は、略長方形状の板部材からなるベースプレート7aと、該ベースプレート7aの平面の左右両側部に各々垂設される二本の配管部材7b・7cとにより構成されるとともに、前記ベースプレート7aの形状は、第三凹部43の形状と同等となっている。
【0039】
そして、第三支持ブラケット7は、二本の配管部材7b・7cが、ともに前方に向かって延出するようにして配設され、ベースプレート7aを介して第三凹部43に嵌設される。
これにより、ベースプレート7aの平面の右部に垂設される配管部材(以下、「第三右側配管部材」と記載する)7bと、第三凹部43の底面の右側に形成される開口部43bとが、互いに連結されることとなる。また、ベースプレート7aの平面の左部に垂設される配管部材(以下、「第三左側配管部材」と記載する)7cと、第三凹部43の底面の左部に形成される貫通孔43aとが、互いに連結されることとなる。
【0040】
さらに、第四支持ブラケット8は、正方形状の板部材からなるベースプレート8aと、該ベースプレート8aの平面の中央部に垂設される配管部材(以下、「第四配管部材」と記載する)8bとにより構成されるとともに、前記ベースプレート8aの形状は、第四凹部44の形状と同等となっている。
【0041】
そして、第四支持ブラケット8は第四配管部材8bが前方に向かって延出するようにして配設され、ベースプレート8aを介して第四凹部44に嵌設される。
これにより、ベースプレート8aの平面の中央部に垂設される第四配管部材8bと、第四凹部44の底面の中央部に形成される開口部44aとが、互いに連結されることとなる。
【0042】
以上に示したように、本実施形態における燃料電池1は、積層体2やエンドプレート3・3や締付板4・4(より具体的には、前側締付板4Fと後側締付板4R)などにより構成されるとともに、前側締付板4Fの前面には、複数の支持ブラケット(より具体的には、第一乃至第四支持ブラケット5・6・7・8)が固設される。
【0043】
そして、第一支持ブラケット5において、第一右側配管部材5bの延出端部には、冷却水供給用の配管部材(以下、「冷却水供給配管」と記載する)11が既知の継手部材を介して接続され、また、第一左側配管部材5cの延出端部には、酸化ガス(空気)供給用の配管部材(以下、「酸化ガス供給配管」と記載する)12が既知の継手部材を介して接続される。
【0044】
また、第二支持ブラケット6において、第二配管部材6bの延出端部には、燃料ガス(水素)供給用の配管部材(以下、「燃料ガス供給配管」と記載する)13が既知の継手部材を介して接続される。
【0045】
また、第三支持ブラケット7において、第三右側配管部材7bの延出端部には、酸化ガス(空気)排出用の配管部材(以下、「酸化ガス排出配管」と記載する)14が既知の継手部材を介して接続され、また、第三左側配管部材7cの延出端部には、冷却水排出用の配管部材(以下、「冷却水排出配管」と記載する)15が既知の継手部材を介して接続される。
【0046】
さらに、第四支持ブラケット8において、第四配管部材8bの延出端部には、燃料ガス(水素)排出用の配管部材(以下、「燃料ガス排出配管」と記載する)16が既知の継手部材を介して接続されるのである。
【0047】
[単位セル50]
次に、積層体2を構築する単位セル50の構成について、
図2乃至
図6を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、
図2乃至
図6の上下方向を単位セル50(より具体的には、酸化ガス配流板51、シールプレート52、燃料ガス配流板53、及びMEAプレート54)の上下方向と規定して記述する。また、
図2においては、矢印Aの方向を前方と規定して記述する。
【0048】
単位セル50は、
図2に示すように、主に酸化ガス配流板51やシールプレート52や燃料ガス配流板53やMEAプレート54などにより構成される。
ここで、酸化ガス配流板51、シールプレート52、及び燃料ガス配流板53は、前方から後方に向かって順に積層配置されるとともに「かしめ」などが施され、セパレータユニット60として予め一体化されている。また、セパレータユニット60の後端面(即ち、燃料ガス配流板53の後面側)には、MEAプレート54が積層配置される。
このように、単位セル50は、予め一体化されたセパレータユニット60と、MEAプレート54との積層構造体として構築されるのである。
【0049】
酸化ガス配流板51は、高分子電解質膜を含むMEA55の他方の側面(本実施形態においては、後側面)において、酸化ガス(空気)が供給される酸化ガス室を形成するセパレータとして、単位セル50に備えられる部材であって、集電体としての機能を兼ね備える。
酸化ガス配流板51は、導電性材料からなる長方形状の薄板部材からなり、長手方向を上下方向(側面視にて、複数の単位セル50・50・・・の積層方向との直交方向。以下同じ。)としつつ、前後方向に積層配置される。
【0050】
酸化ガス配流板51の平面の上下両部には、左右方向に延出する長方形状の開口部51e・51fが各々形成される。
また、酸化ガス配流板51の右側端部の上部と下部、及び左側端部の上部と下部には、矩形状の突出部51A・51B・51C・51Dが各々形成されるとともに、これらの突出部51A・51B・51C・51Dの中央部には、矩形状の開口部51a・51b・51c・51dが各々形成されている。
【0051】
そして、
図3に示すように、酸化ガス配流板51の平面には、エンボス加工による複数の波状部が形成される。
具体的には、上部に形成される開口部51e(以下、「上側開口部51e」と記載する)と、下部に形成される開口部51f(以下、「下側開口部51f」と記載する)との間において、上下方向に延出する一直線状の複数の波状部(以下、「第一波状部」と記載する)61・61・・・が、各々平行に形成される。
また、これらの上側開口部51e、下側開口部51f、及び複数の第一波状部61・61・・・を同時に包囲するようにして、矩形枠状の波状部(以下、「第二波状部」と記載する)62が形成される。
さらに、突出部51A・51B・51C・51Dにおける開口部51a・51b・51c・51dを各々包囲するようにして、矩形枠状の複数の波状部(以下、「第三波状部」と記載する)63・63・・・がそれぞれ形成される。
【0052】
なお、これらの第一乃至第三波状部61・62・63は、何れも酸化ガス配流板51の前面において凸状となり、且つ後面において凹状となるようにして形成されている。
そして、酸化ガス配流板51の前面側に、後述するMEAプレート54が積層されると、複数の第一波状部61・61・・・の突出端部は、MEA55の後面に当接されることとなる。
これによって、互いに隣り合う第一波状部61・61の間には、酸化ガス配流板51の前面と、MEA55の後面とによって囲まれた一直線状の空間部70が形成されることとなり、該空間部70をもって、酸化ガス(空気)が供給される酸化ガス室として利用されるのである。
【0053】
次に、シールプレート52について説明する。
シールプレート52は、酸化ガス配流板51と、後述する燃料ガス配流板53との間において、冷却水の流通経路を確保するために、単位セル50に備えられる部材である。
シールプレート52は、
図4に示すように、導電性材料からなる薄板部材からなり、前述した酸化ガス配流板51と略同等な外形形状を有する一方、平面においてエンボス加工による波状部が形成されることがなく、複数の開口部が形成される点について、前記酸化ガス配流板51と相異する。
なお、以下の説明においては、主に、酸化ガス配流板51との相異点について記載し、該酸化ガス配流板51と同等な点については記載を省略する。
【0054】
シールプレート52の平面の上下両部において、上側開口部52eの下方、及び下側開口部52fの上方には、複数の長孔64・64・・・及び丸孔65・65が一組となって、各々形成されている。
【0055】
前記長孔64・64・・・は、各々一方側に傾斜させて形成され、互いに左右方向に平行となるようにして配設される。また、これらの長孔64・64・・・の左右両側には、丸孔65・65が各々配設される。
そして、これらの長孔64・64・・・、及び丸孔65・65が配設される領域(
図4における領域X)は、突出部52Aの左側方(或いは、突出部52Dの右側方)に位置するとともに、開口部52a(或いは、開口部52d)の上下寸法と略同等な上下幅寸法となるように設定されている。
【0056】
シールプレート52の平面において、その上部に配設される、複数の長孔64・64・・・及び丸孔65・65(以下、適宜「上部長孔群66」と記載する)と、その下部に配設される、複数の長孔64・64・・・及び丸孔65・65(以下、適宜「下部長孔群67」と記載する)との間には、長方形状の開口部68が、上下方向に延出しつつ、左右両側に僅かな幅の縁部を残すようにして形成される。
換言すると、シールプレート52は、開口部68を内部に有する枠形状の薄板部材として形成される。
【0057】
シールプレート52の前後両面には、シーラント(コーキング材)の塗工によって形成された複数のシール部材が固着されている。
具体的には、上部長孔群66、下部長孔群67、及び開口部68を同時に包囲するようにして、矩形枠状のシール部材(以下、「第一シール部材」と記載する)71が固着される。
また、上部開口部52e、及び下部開口部52fを各々包囲するようにして、矩形枠状のシール部材(以下、「第二シール部材」と記載する)72・72が各々固着される。
さらに、突出部52A・52B・52C・52Dにおける開口部52a・52b・52c・52dを各々包囲するようにして、矩形枠状の複数のシール部材(以下、「第三シール部材」と記載する)73・73・・・がそれぞれ固着される。
【0058】
なお、図示しないが、シールプレート52の後面において、突出部52Aの開口部52aと、上部長孔群66との間(
図4に示す領域Y1。但し、シールプレート52の後面における領域を示す。)においては、シール部材が除去されている。
また、同じく図示しないが、シールプレート52の後面において、突出部52Dの開口部52dと、下部長孔群67との間(
図4に示す領域Y2。但し、シールプレート52の後面における領域を示す。)においては、他の領域に比べて高さの低いシール部材が固着されている。
【0059】
そして、このような形状からなるシールプレート52の前面側に酸化ガス配流板51が積層されると、前記シールプレート52の第一シール部材71、及び第二シール部材72・72は、前記酸化ガス配流板51の後面に形成される断面視凹形状の第二波状部62内に、同時に嵌入されることとなる。
また、それぞれの突出部52A・52B・52C・52Dに固着される複数の第三シール部材73・73・73・73は、酸化ガス配流板51の各突出部51A・51B・51C・51Dの後面に形成される、断面視凹形状の第三波状部63・63・63・63内に嵌入されることとなる。
【0060】
一方、シールプレート52の後面側には燃料ガス配流板53が積層されることとなるが、この際、該シールプレート52の後面に固着される第一乃至第三シール部材71・72・73は、後述するように、前記燃料ガス配流板53の前面に形成される、断面視凹形状の複数の波状部に各々嵌入されることとなる。
【0061】
こうして、酸化ガス配流板51と燃料ガス配流板53との間において、シールプレート52における上部長孔群66、下部長孔群67、及び開口部68を同時に包囲する領域や、上側開口部52eや、下側開口部52fや、各突出部52A・52B・52C・52Dの開口部52a・52b・52c・52dは、第一乃至第三シール部材71・72・73によって各々シールされることとなり、燃料ガス(水素)や、酸化ガス(空気)や、冷却水などの漏洩防止が図られている。
【0062】
また、酸化ガス配流板51と燃料ガス配流板53との間にシールプレート52を積層配置することによって、これらの酸化ガス配流板51と燃料ガス配流板53との間(より具体的には、シールプレート52の開口部68によって囲まれた範囲)には、前後方向の隙間が形成されることとなり、本実施形態においては、該隙間をもって冷却水室を構成するとともに、冷却水の流通経路を確保することとしている。
従って、従来の燃料電池に見られるような、互いのセパレータ(即ち、酸化ガス配流板と燃料ガス配流板)に形成される波状部の形状によって、冷却水の流れが妨げられることもないのである。
【0063】
次に、燃料ガス配流板53について説明する。
燃料ガス配流板53は、高分子電解質膜を含むMEA55の一方の側面(本実施形態においては、前側面)において、燃料ガス(水素)が供給される水素ガス室を形成するセパレータとして、単位セル50に備えられる部材であって、集電体としての機能を兼ね備える。
燃料ガス配流板53は、
図5に示すように、導電性材料からなる薄板部材からなり、前述した酸化ガス配流板51と略同等な外形形状を有する一方、エンボス加工による波状部の構成について、前記酸化ガス配流板51と一部相異する。
なお、以下の説明においては、主に、酸化ガス配流板51との相異点について記載し、該酸化ガス配流板51と同等な点については記載を省略する。
【0064】
燃料ガス配流板53の平面には、エンボス加工による複数の波状部が形成される。
具体的には、上側開口部53eの下方において、左右方向に延出する一直線状の複数の波状部(以下、「第四波状部」と記載する)76・76・・・が、各々平行に形成されており、これら複数の第四波状部76・76・・・は、一方(右方)の端部において、突出部53Aの開口部53aと各々連通されている。
また、下側開口部53fの上方において、左右方向に延出する一直線状の複数の波状部(以下、「第五波状部」と記載する)77・77・・・が、各々平行に形成されており、これら複数の第五波状部77・77・・・は、他方(左方)の端部において、突出部53Dの開口部53dと各々連通されている。
【0065】
そして、これらの第四波状部76・76・・・、及び開口部53aを同時に包囲するようにして、矩形枠状の波状部(以下、「第六波状部」と記載する)78が形成される。
また、これらの第五波状部77・77・・・、及び開口部53dを同時に包囲するようにして、矩形枠状の波状部(以下、「第七波状部」と記載する)79が形成される。
【0066】
また、上側開口部53e、下側開口部53f、及び突出部53B・53Dにおける開口部53b・53dを各々包囲するようにして、矩形枠状の複数の波状部(以下、「第八波状部」と記載する)80・80・80・80がそれぞれ形成される。
【0067】
さらに、第四波状部76・76・・・と第五波状部77・77・・・との間において、上下方向に延出する「L字」形状の複数の波状部(以下、「第九波状部」と記載する)81・81・・・が、各々平行に形成される。
また、これら複数の第九波状部81・81・・・を同時に包囲するようにして、矩形枠状の波状部(以下、「第十波状部」と記載する)82が形成される。
【0068】
なお、これらの第四乃至第十波状部76・77・・・82は、何れも燃料ガス配流板53の前面において凹状となり、且つ後面において凸状となるようにして形成される。
そして、燃料ガス配流板53の後面側に、後述するMEAプレート54が積層されると、複数の第九波状部81・81・・・の突出端部は、MEA55の前面に当接されることとなる。
これによって、互いに隣り合う第九波状部81・81の間には、燃料ガス配流板53の後面と、MEA55の前面とによって囲まれた「L字」形状の空間部83が形成されることとなり、該空間部83をもって、燃料ガス(水素)が供給される燃料ガス室として利用されるのである。
【0069】
また、燃料ガス配流板53の前面側には、シールプレート52が積層されることとなるが、この際、該シールプレート52の第一シール部材71は、燃料ガス配流板53の第六波状部78、第七波状部79、及び第十波状部82の内部に、同時に嵌入される。
また、シールプレート52の第二シール部材72・72は、燃料ガス配流板53の上側開口部53e、及び下側開口部53fの周囲にそれぞれ形成される第八波状部80・80内に各々嵌入される。
また、シールプレート52において右側端部の下部の突出部52Bに設けられる第三シール部材73、及び左側端部の上部の突出部52Cに設けられる第三シール部材73は、燃料ガス配流板53において右側端部の下部の突出部53Bに設けられる第八波状部80内、及び左側端部の上部の突出部53Cに設けられる第八波状部80内に各々嵌入される。
さらに、シールプレート52において右側端部の上部の突出部52Aに設けられる第三シール部材73、及び左側端部の下部の突出部52Dに設けられる第三シール部材73は、燃料ガス配流板53の第六波状部78内、及び第七波状部79内に各々嵌入される。但し、前述したように、領域Y1内における第三シール部材73は除去されており、また領域Y2内における第三シール部材73は他の領域に比べて高さが低くなっていることから、複数の第四波状部76・76・・・と、突出部53Aの開口部53aとの連通状態、及び複数の第五波状部77・77・・・と、突出部53Dの開口部53dとの連通状態が、これら第三シール部材73・73によって、各々遮断(シール)されることはない。
【0070】
次に、MEAプレート54について説明する。
MEAプレート54は、膜・電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)55を備え、起電部品として単位セル50に備えられる部材である。
MEAプレート54は、熱可塑性樹脂からなる薄板部材からなり、前述した酸化ガス配流板51と略同等な外形形状を有する一方、平面においてエンボス加工による波状部が形成されることがなく、膜・電極接合体(以下、単に「MEA」と記載する)55を備える点について、前記酸化ガス配流板51と相異する。
なお、以下の説明においては、主に、酸化ガス配流板51との相異点について記載し、該酸化ガス配流板51と同等な点については記載を省略する。
【0071】
MEAプレート54の平面において、上側開口部54eと下側開口部54fとの間には、長方形状の開口部69が、上下方向に延出しつつ、左右両側に僅かな幅の縁部を残すようにして形成される。
換言すると、MEAプレート54は、開口部69を内部に有する枠形状の薄板部材として形成される。
【0072】
前記開口部69は、前述したシールプレート52(
図4を参照)の開口部68と同等な形状に形成される。また、セパレータユニット60の後端面(即ち、燃料ガス配流板53の後面側)に、MEAプレート54が積層配置された状態において、開口部69は、シールプレート52の開口部68と、正面視にて重畳する位置に形成されている。
【0073】
そして、開口部68には、MEA55が、該開口部68を閉塞するようにして貼設されている。
【0074】
ここで、図示しないが、MEA55は、主にシート状の高分子電解質膜や燃料極や酸化ガス極によって構成される。
前記高分子電解質膜は、電解質としてMEA55に備えられる物質であって、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、例えば、ナフィオン(商品名、デュポン社製)などのイオン交換樹脂により形成される。
一方、燃料極、及び酸化ガス極は、負極、及び正極としてMEA55に各々備えられる物質であって、白金、パラジュウム、或いはこれらの合金などの触媒を担持した導電性微粒子を、ポリテトラフルオロエチレンのような樹脂結合剤によって結着させつつ保持した多孔質体により形成される。
【0075】
そして、燃料極、及び酸化剤極によって、高分子電解質膜を挟持するようにして、これらの高分子電解質膜、燃料極、及び酸化ガス極を各々積層することによって、MEA55は構成される。
【0076】
なお、MEA55は、セパレータユニット60の後端面(即ち、燃料ガス配流板53の後面側)に、MEAプレート54が積層配置された状態において、常に、燃料極が前面側(即ち、燃料ガス配流板53側)となるように、且つ酸化ガス極が後面側(即ち、酸化ガス配流板51側)となるようにして、前記MEAプレート54の開口部69に配設される。
【0077】
ところで、MEAプレート54の前後両面には、弾性部材からなる帯状のシール部材75が各々貼設されている。
よって、MEAプレート54の前面側に、セパレータユニット60の後端面(即ち、燃料ガス配流板53の後面側)が積層され、或いは、MEAプレート54の後面側に、セパレータユニット60の前端面(即ち、酸化ガス配流板51の前面側)が積層されたとしても、MEAプレート54の上下両部に形成される上側開口部54eや下側開口部54f、複数の突出部54A・54B・54C・54Dに各々形成される開口部54a・54b・54c・54d、及び開口部69に貼設されるMEA55は、シール部材75によって確実にシールされるようになっている。
【0078】
以上のような構成からなる複数の単位セル50・50・・・を、規則的に積層配置することによって、積層体2は構成される。
そして、このような積層体2を備える燃料電池1に供給される、燃料ガス(水素)や酸化ガス(空気)や冷却水は、以下に示すように、各単位セル50内を循環した後、前記燃料電池1の外部に排出されることとなる。
【0079】
即ち、
図1に示すように、燃料ガス供給配管13によって、燃料電池1に供給される燃料ガス(水素)は、第二支持ブラケット6を介して、前側締付板4Fの開口部42aへと導かれ、エンドプレート3を通過した後、積層体2に供給される。
【0080】
積層体2に供給された燃料ガス(水素)は、
図2に示すように、各単位セル50内において、先ず始めに、酸化ガス配流板51の突出部51Cに形成される開口部51cを通過し、続いて、シールプレート52の突出部52Cに形成される開口部52cを通過し、その後、さらに、燃料ガス配流板53の突出部53Cに形成される開口部53cを通過する。
【0081】
そして、前記開口部53cを通過した燃料ガス(水素)の一部は、その後、MEAプレート54の突出部54Cに形成される開口部54cを通過し、後方に位置する別の単位セル50へと供給される。
【0082】
一方、前記開口部53cを通過した燃料ガス(水素)の残りの他部は、その後、燃料ガス配流板53の後面側に形成される複数の空間部83・83・・・(
図5を参照)に沿いつつ、前記燃料ガス配流板53の後面と、MEAプレート54(より具体的には、MEA55)の前面との間を、上方から下方に向かって流れ、前記燃料ガス配流板53の突出部53Bへと導かれる。
【0083】
その後、燃料ガス配流板53の突出部53Bに到達した、燃料ガス(水素)の残りの他部は、前記突出部53Bの開口部53bを通過し、続いて、シールプレート52の突出部52Bに形成される開口部52bを通過し、さらに、酸化ガス配流板51の突出部51Bの開口部51bを通過する。
【0084】
そして、燃料ガス(水素)の残りの他部は、エンドプレート3(
図1を参照)を通過した後、前側締付板4Fの開口部44aへと導かれ、第四支持ブラケット8を介して、燃料ガス排出配管16に導かれ、燃料電池1の外部へと排出されるのである。
【0085】
また、
図1に示すように、酸化ガス供給配管12によって、燃料電池1に供給される酸化ガス(空気)は、第一支持ブラケット5を介して、前側締付板4Fの開口部41bへと導かれ、エンドプレート3を通過した後、積層体2に供給される。
【0086】
積層体2に供給された酸化ガス(空気)の一部は、
図2に示すように、各単位セル50内において、酸化ガス配流板51の上側開口部51e、シールプレート52の上側開口部52e、燃料ガス配流板53の上側開口部53e、MEAプレート54の上側開口部54e、と順に通過し、後方に位置する別の単位セル50へと供給される。
【0087】
一方、積層体2に供給された酸化ガス(空気)の残りの他部は、酸化ガス配流板51の前面側に形成される複数の空間部70・70・・・(
図3を参照)に沿いつつ、前記酸化ガス配流板51の前面と、MEAプレート54(より具体的には、MEA55)の後面との間を、上方から下方に向かって流れ、前記酸化ガス配流板51の下側開口部51fへと導かれる。
【0088】
その後、酸化ガス配流板51の下側開口部51fに到達した、酸化ガス(空気)の残りの他部は、前方に位置する別の単位セル50へと供給され、MEAプレート54の下側開口部54f、燃料ガス配流板53の下側開口部53f、シールプレート52の下側開口部52f、酸化ガス配流板51の下側開口部54fと順に通過する。
【0089】
そして、酸化ガス(空気)の残りの他部は、エンドプレート3(
図1を参照)を通過した後、前側締付板4Fの開口部43bへと導かれ、第三支持ブラケット7を介して、酸化ガス排出配管14に導かれ、燃料電池1の外部へと排出されるのである。
【0090】
さらに、
図1に示すように、冷却水供給配管11によって、燃料電池1に供給される冷却水は、第一支持ブラケット5を介して、前側締付板4Fの貫通孔41aへと導かれ、エンドプレート3を通過した後、積層体2に供給される。
【0091】
積層体2に供給された冷却水は、
図2に示すように、各単位セル50内において、先ず始めに、酸化ガス配流板51の突出部51Aに形成される開口部51aを通過し、続いて、シールプレート52の突出部52Aに形成される開口部52aを通過し、燃料ガス配流板53の突出部53Aに形成される開口部53aへと導かれる。
【0092】
そして、前記開口部53aに到達した冷却水の一部は、その後、該開口部53aを通過し、さらに、MEAプレート54の突出部54Aに形成される開口部54aを通過して、後方に位置する別の単位セル50へと供給される。
【0093】
一方、前記開口部53aに到達した冷却水の残りの他部は、その後、燃料ガス配流板53の前面側に形成される複数の第四波状部76・76・・・(
図5を参照)に沿いつつ、前記燃料ガス配流板53の前面と、シールプレート52の後面との間を、右方から左方に向かって流れる。
この際、前記冷却水は、シールプレート52の上部長孔群66を通って、該シールプレート52の前面側に染み出ることとなる。
【0094】
その後、開口部53aに到達した冷却水の残りの他部は、シールプレート52の開口部68内において、酸化ガス配流板51の後面と、燃料ガス配流板53の前面との間を、上方から下方に向かって流れ、シールプレート52の下部長孔群67へと導かれる。
【0095】
シールプレート52の下部長孔群67に到達した冷却水の残りの他部は、該下部長孔群67を通って、該シールプレート52の後面側に染み出ることとなる。
その後、前記冷却水は、燃料ガス配流板53の前面側に形成される複数の第五波状部77・77・・・(
図5を参照)に沿いつつ、前記燃料ガス配流板53の前面と、シールプレート52の後面との間を、右方から左方に向かって流れ、燃料ガス配流板53の突出部53Dに形成される開口部53dへと導かれる。
【0096】
そして、燃料ガス配流板53の突出部53Dに到達した、冷却水の残りの他部は、シールプレート52の突出部52Dに形成される開口部52dを通過し、続いて、酸化ガス配流板51の突出部51Dの開口部51dを通過する。
【0097】
その後、冷却水の残りの他部は、エンドプレート3(
図1を参照)を通過した後、前側締付板4Fの貫通孔43aへと導かれ、第三支持ブラケット7を介して、冷却水排出配管15に導かれ、燃料電池1の外部へと排出されるのである。
【0098】
ところで、前述したように、酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53は、ともに単位セル50における集電体としての機能を備えるところ、これら酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53が置かれる使用環境は、一般的に高電流密度環境、且つ厳しい腐食環境となっている。
よって、酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53は、このような使用環境に対する耐久性を十分に備える必要がある。
【0099】
そこで、本実施形態における酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53においては、電流存在下にて耐食性陽極酸化膜を形成することが可能な、チタン(又は、チタン合金)やアルミニウム(又は、アルミニウム合金)やステンレス合金を素材とする薄板部材によって形成することとし、これら酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53の耐振動特性の向上を可能にしている。
【0100】
また、本実施形態における酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53においては、チタン(又は、チタン合金)やアルミニウム(又は、アルミニウム合金)やステンレス合金からなる素材に対して、下地メッキを施すことなく直接的に、耐マイグレーションに極めて優れた薄膜ロジウムメッキを施すこととしている。
これによって、本実施形態における酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53においては、使用環境に対する耐久性と、電気導電性との双方の向上を可能にしている。
【0101】
以上に示したように、本実施形態におけるセパレータユニット60は、
互いに対向する一対のMEA(高分子電解質膜)55の間に配置される燃料電池用セパレータユニットであって、該セパレータユニット60は、一方のMEA(高分子電解質膜
)55の
燃料極側に隣接されるとともに、該
MEA(高分子電解質膜
)55との間に、燃料ガス
(本実施形態においては、水素)が供給される燃料ガス室(即ち、複数の空間部83・83・・・)を形成する燃料ガス配流板(第一セパレータ)53と、
他方のMEA(高分子電解質膜
)55の
酸化ガス極側に隣接されるとともに、
該MEA(高分子電解質膜
)55との間に、酸化ガス
(本実施形態においては、空気)が供給される酸化ガス室(即ち、複数の空間部70・70・・・)を形成する酸化ガス配流板(第二セパレータ)51と、を備
え、前記燃料ガス配流板(第一セパレータ)53及び酸化ガス配流板(第二セパレータ)51は、互いに金属製の薄板部材からなり、前記燃料ガス配流板(第一セパレータ)53の前記
燃料極側の平面部には、燃料ガス室を形成する断面視凹状の複数の
第九波状部81・81・・・が形成され、前記酸化ガス配流板(第二セパレータ)51の前記
酸化ガス極側の平面部には、酸化ガス室を形成する断面視凹状の複数の第一波状部61・61・・・が形成され、前記燃料ガス配流板(第一セパレータ)53における前記
燃料極と対向
しない側面と、前記酸化ガス配流板(第二セパレータ)51における前記
酸化ガス極と対向
しない側面との間には、枠形状の薄板部材からなるシールプレート52が積層配置され、該シールプレート52には、冷却水の経路となる複数の孔部(即ち、上部長孔群66や下部長孔群67や開口部68など)が形成され、これら燃料ガス配流板(第一セパレータ)53と第二酸化ガス配流板(第二セパレータ)51とは、互いに積層状態を保持しつつ固定保持されることとなっている。
【0102】
このような構成を有することで、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60によれば、金属製の薄板部材からなる各々のセパレータ、即ち燃料ガス配流板53や酸化ガス配流板51やシールプレート52を用いて、燃料ガスや酸化ガスや冷却水が供給される室を十分に確保しつつ、単位セル50及びスタック構造体からなる積層体2を構築する時間を短縮化することができる。
【0103】
具体的には、燃料ガス配流板53の複数の波状部81・81・・・によって形成される空間
部(燃料ガス室)
83・83・・・、及び酸化ガス配流板51の複数の第一波状部61・61・・・によって形成される空間
部(酸化ガス室)
70・70・・・とともに、酸化ガス配流板51と燃料ガス配流板53との間にシールプレート52を積層配置することによって、これらの酸化ガス配流板51と燃料ガス配流板53との間(より具体的には、シールプレート52の開口部68によって囲まれた範囲)には、前後方向の隙間が形成されることとなり、本実施形態においては、該隙間をもって冷却水室を構成するとともに、冷却水の流通経路を確保することができるのである。
また、本実施形態においては、酸化ガス配流板51、シールプレート52、及び燃料ガス配流板53は、例えば「かしめ」によって、互いに積層状態を保持しつつ固定保持されており(つまり、酸化ガス配流板51とシールプレート52と燃料ガス配流板53とは、「かしめ」などによって、一体的に固設されており)、単位セル50及びスタック構造体からなる積層体2を構築する時間を短縮化することができるのである。
【0104】
また、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60において、前記シールプレート52の表裏両面には、前記孔部(即ち、上部長孔群66や下部長孔群67や開口部68など)を囲むように第一乃至第三シール部材71・72・73が貼設されることとなっている。
【0105】
このように、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60においては、酸化ガス配流板51と燃料ガス配流板53との間にて、シールプレート52における上部長孔群66、下部長孔群67、及び開口部68を同時に包囲する領域や、上側開口部52eや、下側開口部52fや、各突出部52A・52B・52C・52Dの開口部52a・52b・52c・52dは、第一乃至第三シール部材71・72・73によって各々シールされることとなり、燃料ガス(水素)や、酸化ガス(空気)や、冷却水などの漏洩防止が図られている。
【0106】
また、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60において、前記燃料ガス配流板(第一セパレータ)53、及び酸化ガス配流板(第二セパレータ)51は、チタン、又はチタン合金製の薄板部材からなることとなっている。
或いは、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60において、前記燃料ガス配流板(第一セパレータ)53、及び酸化ガス配流板(第二セパレータ)51は、アルミニウム、又はアルミニウム合金製の薄板部材からなることとなっている。
或いは、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60において、前記燃料ガス配流板(第一セパレータ)53、及び酸化ガス配流板(第二セパレータ)51は、アルミニウステンレス合金製の薄板部材からなることとなっている。
【0107】
このように、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60においては、一般的に高電流密度環境、且つ厳しい腐食環境に晒されることとなる酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53に対して、電流存在下にて耐食性陽極酸化膜を形成することが可能な、チタン(又は、チタン合金)、或いはアルミニウム(又は、アルミニウム合金)を素材とする薄板部材によって形成することとし、これら酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53の耐振動特性の向上を可能にしている。
【0108】
また、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60において、前記燃料ガス配流板(第一セパレータ)53、及び酸化ガス配流板(第二セパレータ)51の表裏両面、又は一方側の面には、薄膜ロジウムメッキが施されることとなっている。
【0109】
このように、本実施形態における燃料電池用セパレータユニット60においては、酸化ガス配流板51、及び燃料ガス配流板53の、使用環境に対する耐久性と、電気導電性との双方の向上が図られているのである。