特許第5945757号(P5945757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945757
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】電気二重層キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/26 20130101AFI20160621BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01G11/26
   H01G11/62
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-46113(P2012-46113)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-183037(P2013-183037A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(74)【代理人】
【識別番号】230111796
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 忠敬
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】小松 大輔
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−214442(JP,A)
【文献】 特開2002−110472(JP,A)
【文献】 特開平11−238653(JP,A)
【文献】 特開2004−289130(JP,A)
【文献】 特開平11−340094(JP,A)
【文献】 特開2009−230899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分極性正電極と分極性負電極とがセパレータを挟んで配置され、これをさらに両側から挟みこむ集電板を備え、内部に電解液が含浸された電気二重層キャパシタであって、
前記分極性正電極前記分極性負電極の面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)が1.33より大きく、
前記電解液は、カチオンのファンデルワールス体積がアニオンのファンデルワールス体積よりも大きいイオン液体であるEMI−FSI(1-ethyl-3-methyl imidazorium bis (fluorosulfonyl)imide)を含有する
ことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気二重層キャパシタであって、
前記分極性正電極と前記分極性負電極の面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)が2.25から3.52の範囲内である
ことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに関し、特に、低温環境下で使用する場合に有用な電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタ(以下、EDLCと呼称する)は、主に対向する一対の炭素電極とそれを電気的に分離するセパレータ、さらに容量発現を行う有機系電解液からなるセルを有する。前記セルの外周部にパッキンを配置して、当該セル間の電気的絶縁を確保し、液漏れを防いでいる。さらに、集電極と、前記集電極に接続する端子(リード線)とが設けられており、電気を外に取り出し可能になっている。一般的に、セパレータには不織布、電極には活性炭と導電補助材とバインダを含むシート状あるいは集電極上に塗布されたものが用いられている。
【0003】
なお、下記の特許文献1には、負極側の電極量(質量)を多くし、負極側の静電容量を増加させて分担電位の低減を図るようにした電気二重層コンデンサが開示されている。下記の特許文献2には、正極と負極の静電容量比を1:0.6として正極の分担電位を負極に課すことで、正極側における反応電流を抑制した電気二重層コンデンサが開示されている。下記の特許文献3には、分極性正電極の面積が分極性負電極の面積より大きく、分極性正電極の側端部が分極性負電極の側端部よりも外側に張り出す部分を有する構造とし、充電時の分極性正電極の周辺部に流れる電流密度を小さくし、大電流動作での劣化を抑制し、サイクル性能の向上を図った電気二重層キャパシタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−150318号公報
【特許文献2】特公平6−65206号公報
【特許文献3】特開2007−214442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電デバイスは、様々な分野で需要が高まっており、例えば、極低温下(−40℃以下)での動作性能が要求されている。例えば、寒冷地で使用する自動車(ブーストアップ、回生など)や風力発電機(ブレードピッチ制御など)への適用が期待されている。
【0006】
上述の蓄電デバイスとして、例えば、電池、レドックスキャパシタなど化学反応を伴うものがある。この種の蓄電デバイスは、極低温下では反応速度が極めて低下し機能を十分に発現しないため、極低温下で使用できなかった。
【0007】
そこで、上述の極低温下で動作可能な蓄電デバイスとして、化学反応を伴わない上述のEDLCに大きな期待が寄せられている。
【0008】
EDLCでは、極低温下において、下記の問題に起因する抵抗(直流成分)の増加により動作性が低下している。
(1)電解液の溶媒の凝固もしくは粘度の増加
(2)溶媒の溶解度の低下に伴う電解質の析出
【0009】
一般的に、上述の問題は、例えばアセトニトリルやγ−ブチロラクトンなどのような低粘度、且つ、低融点の非水系(有機溶剤)電解液や、硫酸や水酸化カリウム水溶液などの水系電解液を用いることで改善を図ることができる。しかしながら、前者では、引火点が低い、有害ガス(シアン系、麻薬系)が発生するなどの問題がある。また、後者では、水の分解電位が低いため、蓄電デバイスの動作電圧が低いという問題がある。そこで、例えば、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのような、粘度および引火点が高く有害なガスが発生しない有機溶媒を用いて、極低温下で動作するEDLCが求められる。
【0010】
また、電解質や電極、セパレータなどの各部材の観点から、極低温下での性能向上に関する検討も多数報告されている。例えば、電解液の電解質にイオン液体を用いることで、極低温下での溶解度の低下や電解質の析出の問題を解決する報告がある。また、細孔径が数nm以上(メソ孔)の炭素材料を用いた電極とすることで、極低温下でのキャパシタ性能の低下を抑制する報告がある。さらに、孔径および気孔率の大きいセパレータを用いることで、極低温下におけるイオン伝導度の低下を抑制し、低抵抗化を図ることが可能であるとの報告がある。
【0011】
上述の報告により、上述のEDLCにおいて、極低温下での性能の向上を図ることができるものの、さらなる性能の向上が求められていた。
【0012】
以上のことから、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、極低温下でも低抵抗な電気二重層キャパシタを提供することを目的としている。さらには、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、極低温下でも低抵抗で、且つ高容量な電気二重層キャパシタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した課題を解決する第1の発明に係る電気二重層キャパシタは、
分極性正電極と分極性負電極とがセパレータを挟んで配置され、これをさらに両側から挟みこむ集電板を備え、内部に電解液が含浸された電気二重層キャパシタであって、
前記分極性正電極前記分極性負電極の面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)が1.33より大きく、
前記電解液が、カチオンのファンデルワールス体積がアニオンのファンデルワールス体積よりも大きいイオン液体であるEMI−FSI(1-ethyl-3-methyl imidazorium bis (fluorosulfonyl)imide)を含有する
ことを特徴とする。
【0015】
前述した課題を解決する第の発明に係る電気二重層キャパシタは、
上述した第1の電気二重層キャパシタであって、
前記分極性正電極と前記分極性負電極の面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)が2.25から3.52の範囲内である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電気二重層キャパシタによれば、極低温下であっても低抵抗化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る電気二重層キャパシタの主な実施形態を示す概略図である。
図2】本発明に係る電気二重層キャパシタの特性図であって、図2(a)にセル電圧の特性を示し、図2(b)に正極・負極電位の特性を示す。
図3】イオン液体の粘度とアニオンのファンデルワールス体積との関係を示すグラフである。
図4】試験体A1〜A5の−40℃での各電極面積比と直流抵抗および放電容量の関係を示すグラフである。
図5】比較体A1〜A3の−40℃での各電極面積比と直流抵抗および放電容量の関係を示すグラフである。
図6】比較体B1〜B3の−40℃での各電極面積比と直流抵抗および放電容量の関係を示すグラフである。
図7】比較体C1〜C3の−40℃での各電極面積比と直流抵抗および放電容量の関係を示すグラフである。
図8】比較体D1〜D3の−40℃での各電極面積比と直流抵抗および放電容量の関係を示すグラフである。
図9】試験体A1〜A5の25℃での各電極面積比と正極・負極電位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る電気二重層キャパシタの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[主な実施形態]
本発明に係る電気二重層キャパシタの主な実施形態を図1図3に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る電気二重層キャパシタ1は、セパレータ11と、このセパレータ11を介し対向して配置される分極性電極である正極(以下、分極性正電極と称す)12および負極(以下、分極性負電極と称す)13とからなるセル10を備える。セル10は両側から集電極14,15で挟みこまれる。電気二重層キャパシタ1は、内部に電解液17を含浸し、外装体としてアルミラミネートフィルム16で封止する構造となっている。集電極14,15には正極端子18および負極端子19がそれぞれ接続しており、外部に電荷を取り出し可能になっている。
【0023】
さらに、電気二重層キャパシタ1は、分極性正電極12の面積が分極性負電極13の面積よりも大きい非対称電極構造となっている。これにより、図2(a)および図2(b)に示すように、正極および負極電位(分担電位)を制御している。
【0024】
前記電解液17は、カチオンのファンデルワールス体積がアニオンのファンデルワールス体積よりも大きいイオン液体を、電解液そのもの、または電解質(塩)として含有している。これにより、極低温下でも、低抵抗な電気二重層キャパシタを実現することができる。
【0025】
また、分極性正電極12と分極性負電極13の面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)は、例えば1.33より大きくなるように調整される。これにより、極低温下でも、低抵抗な電気二重層キャパシタを実現することができる。さらに、分極性正電極12と分極性負電極13の面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)を2.25から3.52の範囲に調整することにより、極低温下でも、低抵抗で、且つ高容量な電気二重層キャパシタを実現することができる。
【0026】
イオン液体のアニオンのファンデルワールス体積は55Å3〜155Å3の範囲に調整される。これは、イオン液体のアニオンのファンデルワールス体積が55Å3より小さくなると、カチオンとの間の距離が近くなり強い相互作用(結合力)が働くため、イオン液体は固体状態に近づき粘度が高くなってしまう。逆に、イオン液体のアニオンのファンデルワールス体積が155Å3より大きくなると、カチオンおよびアニオンの移動が妨げられるため、粘度が高くなってしまう。
【0027】
ここで、上述のイオン液体の粘度とイオン伝導度には、一般に反比例の関係(Walden則)が成り立つため、上記アニオンは、イオン液体の粘度を低下させるものである、すなわち、イオン伝導度を向上させるものである。
【0028】
よって、イオン液体のアニオンのファンデルワールス体積を55Å3〜155Å3の範囲に調整することにより、分極性負電極(カチオン吸脱着)側の電位を大きくし、極低温(−40℃)下でカチオンの移動度が向上し、低抵抗化を図ることができる。極低温下では化学(分解)反応が進みにくいことから、負極電位を高めて、カチオンの移動速度を電位(電界)で加速させることで、低抵抗化を実現することができる。言い換えれば、本実施形態では、アニオンと比較してカチオンのサイズが大きく移動度が低いことから、非対称電極構造により分極性負電極(カチオン吸脱着)側の分担電位を高くし、カチオンに選択的に電位差を与えることで、極低温下での抵抗上昇に起因すると考えられるカチオンの移動律速、すなわち、カチオンの移動速度を分担電位(電界)で強制的に加速させることで、低抵抗化を図り且つ高容量化が可能となる。
【0029】
イオン液体のカチオンのファンデルワールス体積は、イオン液体のアニオンのファンデルワールス体積より大きく、且つ100Å3〜200Å3の範囲に調整される。これにより、カチオンとアニオンの相互作用が最適となり、極低温下でも、低抵抗で、且つ高容量な電気二重層キャパシタをより確実に実現することができる。
【0030】
ここで、アニオンのファンデルワールス体積とイオン液体の粘度との関係について、図3を参照して以下に説明する。
図3に示すように、アニオンのファンデルワールス体積とイオン液体の粘度との関係には、イオン液体の粘度が最小となるアニオンのファンデルワールス体積があり、これはカチオンの種類が変わってもその傾向は同様であることが分かる。よって、イオン液体の粘度を小さくすることで、カチオン、アニオン共に移動速度が大きくなり、低抵抗化に寄与することができる。
【0031】
したがって、本実施形態に係る電気二重層キャパシタ1によれば、極低温下でも低抵抗化を図り、且つ高容量化が可能となる。
【0032】
なお、一般的なイオン液体のカチオン(ファンデルワールス体積が100Å3〜200Å3程度)において、図3に示す関係と同様の傾向になることが推測される。そのようなカチオンにおいては、ファンデルワールス体積が55Å3〜155Å3のアニオンと組み合わせると、アニオンとカチオンとの相互作用が最適となるため、粘度が最小なる。
【0033】
ファンデルワールス体積が55Å3〜155Å3のアニオンと各種カチオンからなるイオン液体のアニオンとして、例えば、CH3CO2、F(HF)2.3、N(CN)2、C(CN)3、B(CN)4、CH3SO3、CF3CO2、BF3n2n+1(n=1、2、3)、CF3SO3、AlCl4、NbF6、SbF6、FSI、N(SO2CF3)(SO2F)、TSAC(N(COCF3)(SO2CF3))などが挙げられる。
【0034】
上記イオン液体のカチオンは、特に限定されるものではないが、例えば、イミダゾリウム系(1,3−ジアルキルイミダゾリウム、1,2,3−トリアルキルイミダゾリウムなど)、ピリジウム系(1-methl-1-propylpiprodonium(PP13)、1-methyl-1-propylpyrrolidinium(P13)、1-methyl-1-butylpyrrolidinium(P14)など)、脂肪族系(DEME、TEMA、TEA、TMPA(N,N,N-trimethyl-N-propylammonium)など)、ホスフォニウム系(P2225(Triethylpentylphosphonium)、P2228(Triethyloctylphosphonium)、P4441(Tributylmethylphosphonium)など)などが挙げられる。
【0035】
上述の非対称電極構造は、分極性正電極の面積はもちろん厚み、重量、密度、部材(活物質、導電助剤、結着剤、集電体)が分極性負電極よりも大きければ良く、特に限定されるものではない。非対称電極構造により、分極性負電極側に電位を大きくとれるため、極低温(−40℃)下でのカチオンの移動度を向上させ低抵抗化を図ることができる。
【0036】
分極性正電極の方が分極性負電極よりも大きい非対称電極構造において、上記カチオンとアニオンとを組み合わせたイオン液体であれば、上述の電解液17と同様の効果を奏する。
【0037】
上述の電解液17は、イオン液体単体としても、電解質として有機溶媒などの溶剤に溶解させたものでも良い。電解液17をイオン液体単体とすることで、不燃性・不揮発性などの特徴を有するものとすることができ、高温下での使用に有用であり、安全性・信頼性の高い電気二重層キャパシタとすることが可能である。また、粘性の低いイオン液体もしくは溶媒と組み合わせるとより好ましい。なお、有機溶媒として、粘度および引火点が高く有害なガスが発生しないもの、例えば、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0038】
さらには、分極性正電極および分極性負電極に使用する活性炭などの多孔質材料として、メソ孔が多い細孔分布を有する材料、例えば、細孔径(1nm〜10nm)に細孔容積のピークを持つ材料を用いるとより好ましい。これは、10Å以下の細孔にはカチオンが入り込めず、電気容量を発現するために有効な電気二重層を形成できないからである。一般的な電解質のカチオンサイズ(数nm)は、アニオン(数Å)のそれよりも10倍程度大きいため、キャパシタの電気容量はカチオンサイズ律則となっている。特に、低温では電解液自体の粘度が高くなるため、細孔径の影響が顕著となるからである。
【実施例】
【0039】
本実施例に係る電気二重層キャパシタの効果を確認するための確認試験を以下に説明するが、本発明は以下に説明する確認試験のみに限定されるものではない。
【0040】
<試験体A>
図1に示すように、分極性正電極と分極性負電極とがセパレータを挟んで配置され、これをさらに両側から挟みこむ集電板を備え、内部に電解液を含浸した電気二重層キャパシタであって、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、1.33、2.25、3.52である電気二重層キャパシタの試験体A1(面積比0.44)、試験体A2(面積比1.00)、試験体A3(面積比1.33)、試験体A4(面積比2.25)、および試験体A5(面積比3.52)とした。
【0041】
試験体A1〜A5で使用した電極は、活性炭(80wt%)、導電助剤(10wt%)、結着剤(10wt%)からなるシート状活性炭電極(厚み175μm、密度0.50g/cm3)である。セパレータには、セルロース系セパレータ(厚み35μm、密度0.40g/cm3)を2枚使用した。電解液として、1mol/Lの濃度でプロピレンカーボネート(PC)溶媒に溶解させたイオン液体EMI−FSI(1-ethyl-3-methyl imidazorium bis (fluorosulfonyl)imide)を用いた。FSIアニオンのファンデルワールス体積は、図3に示すように、102Å3である。
【0042】
<比較体A>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体をEMI-BF4(1-ethyl-3-methyl imidazorium tetrafluoroborate)に変更し、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体A1(面積比0.44)、比較体A2(面積比1.00)、比較体A3(面積比2.25)とした。なお、イオン液体、電極面積比以外については、上述の試験体Aと同様の構成とした。BF4アニオンのファンデルワールス体積は、図3に示すように、54Å3である
【0043】
<比較体B>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体をEMI-TFSI(1-ethyl-3-methyl imidazorium bis (trifluoromethanesulfonyl)imide)に変更し、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体B1(面積比0.44)、比較体B2(面積比1.00)、比較体B3(面積比2.25)とした。なお、イオン液体以外については、上述の試験体Aと同様の構成とした。TFSIアニオンのファンデルワールス体積は、図3に示すように、156Å3である。
【0044】
<比較体C>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体をDEME-BF4(N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl) ammonium tetrafluoroborate)に変更し、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体C1(面積比0.44)、比較体C2(面積比1.00)、比較体C3(面積比2.25)とした。なお、イオン液体以外については、上述の試験体Aと同様の構成とした。
【0045】
<比較体D>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体の代わりに従来の固形電解質(TEA-BF4:tetraethyl ammmonium tetrafluoroborate)とし、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体D1(面積比0.44)、比較体D2(面積比1.00)、比較体D3(面積比2.25)とした。
【0046】
<試験方法>
<<直流抵抗および放電容量>>
上記の試験体A1〜A5、比較体A1〜A3,B1〜B3,C1〜C3,D1〜D3に対し、環境温度−40℃において、0〜2.3Vの電圧範囲で充放電試験(10C充電、10〜100C放電)を行い、単位面積あたりの抵抗値(Ω・cm2:直流抵抗)および100Cでの電極体積あたりの放電容量(mAh/cm3:放電電流mA×放電時間h))をそれぞれ求めた。1Cは、デバイス容量を1時間で放電しきる電流量である。直流抵抗は、放電開始直前の電圧と放電曲線の接線(直線領域)との差を放電電流で除することで算出した。試験体A1〜A5の試験結果を表1および図4に示し、比較体A1〜A3の試験結果を表1および図5に示し、比較体B1〜B3の試験結果を表1および図6に示し、比較体C1〜C3の試験結果を表1および図7に示し、D1〜D3の試験結果を表1および図8に示す。なお、表1に示す結果は、試験体A1にて電極面積比が1.00(対称電極構造)のときの直流抵抗および放電容量の値を100%として比較した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1および図4に示すように、試験体A1〜A5においては、電極面積比が1.33より大きい場合は、電極面積比1.00に対し90%以上の放電容量を維持しつつ、直流抵抗はおおよそ+5〜−10%の範囲を維持していることが明らかとなった。電極面積比2.25〜3.52の範囲では、非対称電極構造において、電極面積比1.00に対し90%以上の放電容量を維持しつつ直流抵抗を約10%低減できることが明らかとなった。
【0049】
表1および図5に示すように、比較体A1〜A3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は97〜116%で放電容量は69〜75%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。
【0050】
表1および図6に示すように、比較体B1〜B3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は114〜120%であり、放電容量は52〜78%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。
【0051】
表1および図7に示すように、比較体C1〜C3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は134〜145%であり、放電容量は30〜45%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。
【0052】
表1および図8に示すように、比較体D1〜D3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は191〜331%であり、放電容量は20〜23%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。なお、本比較体D1〜D3においては、極低温下での溶解度の低下や電解質の析出による抵抗上昇および放電容量低下が生じることが明らかとなった。
【0053】
<<電位>>
上記の試験体A1〜A5に対し、25℃、2.3V充電時における正極および負極の電位(vs.SHE)を調べた。これら試験体A1〜A5の試験結果を表2および図8に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2および図8に示すように、試験体A1〜A5においては、電極面積比1.33より大きい非対称電極構造において、負極側の分担電位を大きくできることが明らかとなった。
【0056】
よって、ファンデルワールス体積が102Å3であるFSIアニオンを有するイオン液体において、電位分担率(正/負極電極の絶対値)が0.89より小さいとき、極低温環境(−40℃)下での放電容量が電極面積比1.00に対し約90%以上の放電容量を維持しつつ、直流抵抗はおおよそ+5〜−10%の範囲を維持していることが明らかとなった。また、電位分担率(正/負極電極の絶対値)が0.68より小さいとき、極低温環境(−40℃)下での放電容量が電極面積比1.00に対し約90%を維持したまま直流抵抗を約10%低減できることが明らかとなった。
【0057】
ファンデルワールス体積が55Å3より小さいアニオン(BF4など)や155Å3より大きいアニオン(TFSIなど)を有するイオン液体もしくは従来の固形電解質(TEABF4)では、非対称電極構造による効果が無いことが明らかとなった。
【0058】
以上の結果より、ファンデルワールス体積が55Å3〜155Å3のアニオンと各種カチオンからなるイオン液体において、負極よりも正極の方が大きい非対称電極構造(具体的には、正/負極が1.33より大きい)とすることで、−40℃で低抵抗かつ高容量な電気二重層キャパシタを得ることができることが明らかとなった。
【0059】
なお、上述の試験体A1〜A5では、カチオンがアニオンよりも大きい一般的なイオン液体を用いたため、本効果はアニオンのファンデルワールス体積に依存するところが大きかったが、カチオンによって特に限定されるものではない。アニオンがカチオンよりも大きいイオン液体の場合は、逆にカチオンのファンデルワールス体積による影響が大きくなり、非対称電極構造も上述の電気二重層キャパシタ1と逆の構成とする方が好ましいと考えられる。すなわち、アニオンがカチオンよりも大きいイオン液体を適用する場合には、非対称電極構造として、正極の面積を小さく、負極の面積を大きくすることで低抵抗化の効果が得られると考えられる。
【0060】
なお、一般的なイオン液体のカチオン(ファンデルワールス体積が100Å3〜200Å3程度)においては、ファンデルワールス体積が55Å3〜155Å3のアニオンと組み合わせると、アニオンとカチオンとの相互作用が最適(粘度が最小)となるが、カチオンのファンデルワールス体積がアニオンのそれよりも小さいイオン液体においては、カチオンとアニオンのファンデルワールス体積の組み合わせが逆転していると考えられる。
【0061】
したがって、上述した試験結果から、ファンデルワールス体積が55Å3〜155Å3のアニオンと各種カチオンからなるイオン液体において、負極よりも正極の方が大きい非対称電極構造、具体的には、正/負極が1.33より大きく、好ましくは2.25から3.52の範囲とすることで、極低温環境(−40℃)下で低抵抗かつ高容量な電気二重層キャパシタを得ることができることが確認された。
【0062】
さらに、極低温下では化学(分解)反応が進みにくいことを利用して、上述の非対称電極構造により負極(カチオン吸脱着)側の分担電位を高くし、カチオンに選択的に電位差を与えることで、極低温下での抵抗上昇に起因すると考えられるカチオンの移動律速を改善し、低抵抗化且つ高容量化が可能となった。
【0063】
気温が−40℃程度まで低下するような寒冷地に設置される風力発電機のピッチ制御用非常用電源や、寒冷地用自動車の駆動・回生用蓄電デバイスなど、化学反応を伴う蓄電デバイス(電池など)では動作できないような極低温環境下で動作する蓄電デバイスを提供することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る電気二重層キャパシタは、極低温下でも低抵抗化を図ることができるため、電気機器産業や自動車産業や発電産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 電気二重層キャパシタ
10 セル
11 セパレータ
12 電極(正極)
13 電極(負極)
14,15 集電体
16 アルミラミネートフィルム
17 電解液
18 正極端子
19 負極端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9