【実施例】
【0039】
本実施例に係る電気二重層キャパシタの効果を確認するための確認試験を以下に説明するが、本発明は以下に説明する確認試験のみに限定されるものではない。
【0040】
<試験体A>
図1に示すように、分極性正電極と分極性負電極とがセパレータを挟んで配置され、これをさらに両側から挟みこむ集電板を備え、内部に電解液を含浸した電気二重層キャパシタであって、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、1.33、2.25、3.52である電気二重層キャパシタの試験体A1(面積比0.44)、試験体A2(面積比1.00)、試験体A3(面積比1.33)、試験体A4(面積比2.25)、および試験体A5(面積比3.52)とした。
【0041】
試験体A1〜A5で使用した電極は、活性炭(80wt%)、導電助剤(10wt%)、結着剤(10wt%)からなるシート状活性炭電極(厚み175μm、密度0.50g/cm
3)である。セパレータには、セルロース系セパレータ(厚み35μm、密度0.40g/cm
3)を2枚使用した。電解液として、1mol/Lの濃度でプロピレンカーボネート(PC)溶媒に溶解させたイオン液体EMI−FSI(1-ethyl-3-methyl imidazorium bis (fluorosulfonyl)imide)を用いた。FSIアニオンのファンデルワールス体積は、
図3に示すように、102Å
3である。
【0042】
<比較体A>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体をEMI-BF
4(1-ethyl-3-methyl imidazorium tetrafluoroborate)に変更し、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体A1(面積比0.44)、比較体A2(面積比1.00)、比較体A3(面積比2.25)とした。なお、イオン液体、電極面積比以外については、上述の試験体Aと同様の構成とした。BF
4アニオンのファンデルワールス体積は、
図3に示すように、54Å
3である
【0043】
<比較体B>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体をEMI-TFSI(1-ethyl-3-methyl imidazorium bis (trifluoromethanesulfonyl)imide)に変更し、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体B1(面積比0.44)、比較体B2(面積比1.00)、比較体B3(面積比2.25)とした。なお、イオン液体以外については、上述の試験体Aと同様の構成とした。TFSIアニオンのファンデルワールス体積は、
図3に示すように、156Å
3である。
【0044】
<比較体C>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体をDEME-BF
4(N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl) ammonium tetrafluoroborate)に変更し、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体C1(面積比0.44)、比較体C2(面積比1.00)、比較体C3(面積比2.25)とした。なお、イオン液体以外については、上述の試験体Aと同様の構成とした。
【0045】
<比較体D>
上述の試験体Aにおいて、イオン液体の代わりに従来の固形電解質(TEA-BF
4:tetraethyl ammmonium tetrafluoroborate)とし、分極性正電極の面積と分極性負電極の面積との面積比(分極性正電極面積/分極性負電極面積)がそれぞれ0.44、1.00、2.25である電気二重層キャパシタの比較体D1(面積比0.44)、比較体D2(面積比1.00)、比較体D3(面積比2.25)とした。
【0046】
<試験方法>
<<直流抵抗および放電容量>>
上記の試験体A1〜A5、比較体A1〜A3,B1〜B3,C1〜C3,D1〜D3に対し、環境温度−40℃において、0〜2.3Vの電圧範囲で充放電試験(10C充電、10〜100C放電)を行い、単位面積あたりの抵抗値(Ω・cm
2:直流抵抗)および100Cでの電極体積あたりの放電容量(mAh/cm
3:放電電流mA×放電時間h))をそれぞれ求めた。1Cは、デバイス容量を1時間で放電しきる電流量である。直流抵抗は、放電開始直前の電圧と放電曲線の接線(直線領域)との差を放電電流で除することで算出した。試験体A1〜A5の試験結果を表1および
図4に示し、比較体A1〜A3の試験結果を表1および
図5に示し、比較体B1〜B3の試験結果を表1および
図6に示し、比較体C1〜C3の試験結果を表1および
図7に示し、D1〜D3の試験結果を表1および
図8に示す。なお、表1に示す結果は、試験体A1にて電極面積比が1.00(対称電極構造)のときの直流抵抗および放電容量の値を100%として比較した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1および
図4に示すように、試験体A1〜A5においては、電極面積比が1.33より大きい場合は、電極面積比1.00に対し90%以上の放電容量を維持しつつ、直流抵抗はおおよそ+5〜−10%の範囲を維持していることが明らかとなった。電極面積比2.25〜3.52の範囲では、非対称電極構造において、電極面積比1.00に対し90%以上の放電容量を維持しつつ直流抵抗を約10%低減できることが明らかとなった。
【0049】
表1および
図5に示すように、比較体A1〜A3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は97〜116%で放電容量は69〜75%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。
【0050】
表1および
図6に示すように、比較体B1〜B3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は114〜120%であり、放電容量は52〜78%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。
【0051】
表1および
図7に示すように、比較体C1〜C3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は134〜145%であり、放電容量は30〜45%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。
【0052】
表1および
図8に示すように、比較体D1〜D3においては、試験体A1〜A5の試験結果と比較し、直流抵抗は191〜331%であり、放電容量は20〜23%となっており、低抵抗化および高容量化の傾向が無いことが明らかとなった。なお、本比較体D1〜D3においては、極低温下での溶解度の低下や電解質の析出による抵抗上昇および放電容量低下が生じることが明らかとなった。
【0053】
<<電位>>
上記の試験体A1〜A5に対し、25℃、2.3V充電時における正極および負極の電位(vs.SHE)を調べた。これら試験体A1〜A5の試験結果を表2および
図8に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2および
図8に示すように、試験体A1〜A5においては、電極面積比1.33より大きい非対称電極構造において、負極側の分担電位を大きくできることが明らかとなった。
【0056】
よって、ファンデルワールス体積が102Å
3であるFSIアニオンを有するイオン液体において、電位分担率(正/負極電極の絶対値)が0.89より小さいとき、極低温環境(−40℃)下での放電容量が電極面積比1.00に対し約90%以上の放電容量を維持しつつ、直流抵抗はおおよそ+5〜−10%の範囲を維持していることが明らかとなった。また、電位分担率(正/負極電極の絶対値)が0.68より小さいとき、極低温環境(−40℃)下での放電容量が電極面積比1.00に対し約90%を維持したまま直流抵抗を約10%低減できることが明らかとなった。
【0057】
ファンデルワールス体積が55Å
3より小さいアニオン(BF
4など)や155Å
3より大きいアニオン(TFSIなど)を有するイオン液体もしくは従来の固形電解質(TEABF
4)では、非対称電極構造による効果が無いことが明らかとなった。
【0058】
以上の結果より、ファンデルワールス体積が55Å
3〜155Å
3のアニオンと各種カチオンからなるイオン液体において、負極よりも正極の方が大きい非対称電極構造(具体的には、正/負極が1.33より大きい)とすることで、−40℃で低抵抗かつ高容量な電気二重層キャパシタを得ることができることが明らかとなった。
【0059】
なお、上述の試験体A1〜A5では、カチオンがアニオンよりも大きい一般的なイオン液体を用いたため、本効果はアニオンのファンデルワールス体積に依存するところが大きかったが、カチオンによって特に限定されるものではない。アニオンがカチオンよりも大きいイオン液体の場合は、逆にカチオンのファンデルワールス体積による影響が大きくなり、非対称電極構造も上述の電気二重層キャパシタ1と逆の構成とする方が好ましいと考えられる。すなわち、アニオンがカチオンよりも大きいイオン液体を適用する場合には、非対称電極構造として、正極の面積を小さく、負極の面積を大きくすることで低抵抗化の効果が得られると考えられる。
【0060】
なお、一般的なイオン液体のカチオン(ファンデルワールス体積が100Å
3〜200Å
3程度)においては、ファンデルワールス体積が55Å
3〜155Å
3のアニオンと組み合わせると、アニオンとカチオンとの相互作用が最適(粘度が最小)となるが、カチオンのファンデルワールス体積がアニオンのそれよりも小さいイオン液体においては、カチオンとアニオンのファンデルワールス体積の組み合わせが逆転していると考えられる。
【0061】
したがって、上述した試験結果から、ファンデルワールス体積が55Å
3〜155Å
3のアニオンと各種カチオンからなるイオン液体において、負極よりも正極の方が大きい非対称電極構造、具体的には、正/負極が1.33より大きく、好ましくは2.25から3.52の範囲とすることで、極低温環境(−40℃)下で低抵抗かつ高容量な電気二重層キャパシタを得ることができることが確認された。
【0062】
さらに、極低温下では化学(分解)反応が進みにくいことを利用して、上述の非対称電極構造により負極(カチオン吸脱着)側の分担電位を高くし、カチオンに選択的に電位差を与えることで、極低温下での抵抗上昇に起因すると考えられるカチオンの移動律速を改善し、低抵抗化且つ高容量化が可能となった。
【0063】
気温が−40℃程度まで低下するような寒冷地に設置される風力発電機のピッチ制御用非常用電源や、寒冷地用自動車の駆動・回生用蓄電デバイスなど、化学反応を伴う蓄電デバイス(電池など)では動作できないような極低温環境下で動作する蓄電デバイスを提供することが可能となった。