(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945787
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20160621BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20160621BHJP
H05B 33/28 20060101ALI20160621BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20160621BHJP
H05B 33/24 20060101ALI20160621BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20160621BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/28
H05B33/26 A
H05B33/24
H05B33/10
H05B33/26 Z
H05B33/06
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-534408(P2013-534408)
(86)(22)【出願日】2011年10月5日
(65)【公表番号】特表2013-544007(P2013-544007A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】IB2011054373
(87)【国際公開番号】WO2012052866
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月3日
(31)【優先権主張番号】10188231.4
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005362
【氏名又は名称】オーエルイーディーワークス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OLEDWorks GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ボエルネル ヘルベルト フリードリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フムメル ヘルガ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン クラウディア
【審査官】
横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−217078(JP,A)
【文献】
特表2007−538363(JP,A)
【文献】
特開2003−167116(JP,A)
【文献】
特開2000−117885(JP,A)
【文献】
特開2006−228570(JP,A)
【文献】
特開2009−245734(JP,A)
【文献】
特開2004−079512(JP,A)
【文献】
特開2006−222070(JP,A)
【文献】
特開2009−037810(JP,A)
【文献】
特開2006−190993(JP,A)
【文献】
特開2005−322640(JP,A)
【文献】
特開2009−021089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/0−33/28
H01L 51/50−51/56
G02B 5/00−5/136
G02B 1/10−1/18
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上にエレクトロルミネッセンス層スタックを有する有機エレクトロルミネッセンス装置であって、前記エレクトロルミネッセンス層スタックが、前記基板に面する第1電極と、第2電極との間に挟まれる1つ以上の有機層を備える有機発光層スタックを有し、前記第2電極が、少なくとも、前記有機発光層スタックの上の透明な導電性保護層、前記有機発光層スタック内の前記有機層の最も低いガラス転移温度より低いガラス転移温度を持つ、前記保護層の上の透明な有機導電性ゆがみ層、及び前記ゆがみ層に応力を生じさせる、前記ゆがみ層の上の応力誘起層の層スタックを有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記応力誘起層が、金属層であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記応力誘起層が、5nmより大きい厚さを持つことを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記保護層が、金属酸化物で作成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記保護層が、20nmより大きい厚さを持つことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記ゆがみ層が、前記有機発光層スタック内の前記有機層の最も低いガラス転移温度より少なくとも30℃下のガラス転移温度を持つことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
前記ゆがみ層が、前記ゆがみ層の導電率を高めるために前記ゆがみ層にドーピングされる適切な量の導電性材料を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
前記ゆがみ層が、20nmより大きな層厚を持つことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
前記第2電極が、前記応力誘起層の上に堆積され、前記応力誘起層より大きな内部応力を持つ応力増強層を更に有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項10】
前記応力増強層が、Mn、Cu、Cr又はそれらの混合物で作成される金属層であることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項11】
アルミニウム又は銅で作成される配電層が前記第2電極の上に堆積されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項12】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を製造する方法であって、
前記有機発光層スタックの上に、少なくとも、透明な導電性保護層、透明な有機導電性ゆがみ層、及び応力誘起層の層スタックを有する前記第2電極を堆積させるステップと、
前記エレクトロルミネッセンス層スタックを、前記ゆがみ層内のゆがみを得るのに十分な期間の間、前記ゆがみ層のガラス転移温度より上であり、前記有機発光層スタック内の前記有機層の最も低いガラス転移温度より下である温度まで加熱するステップとを有する方法。
【請求項13】
前記ゆがみ層にゆがみをもたらすために、前記加熱するステップ中に、予め成形されたゆがめ器具で、前記ゆがみ層をスタンプ加工するステップを更に有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エレクトロルミネッセンス層スタックを加熱する前に前記応力誘起層の上に応力増強層を堆積させるステップを更に有する請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱するステップの後に、前記第2電極の上に配電層を堆積させることによって前記第2電極を厚くするステップを更に有する請求項12乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上させた光アウトカップリングを備える有機エレクトロルミネッセンス装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス装置(又はダイオード)は、このような有機エレクトロルミネッセンス装置(OLED)に駆動電圧が印加されるときに有機分子が光を発する装置である。OLEDは、一般に、透明な基板であって、2つの電極層、一般に、基板の上の透明な陽極及び有機層スタックの上の反射陰極の間に有機発光層スタックを有する基板の上に置かれるエレクトロルミネッセンス層スタックを備える透明な基板を有する。有機分子は湿気及び酸素に影響されやすいことから、層スタックは、基板の上で封止されるガス密カバー蓋によってカプセル化される。OLEDを動作させるためには、数ボルト程度、例えば2乃至15Vの駆動電圧が印加される。
【0003】
OLED装置は、屋内照明用の大面積光源である。しかしながら、OLED装置から発せられる光の量は、発光層によって内部で生成される光の量の20%だけである。OLED装置の効率を高めるためには、光アウトカップリングの改善が望まれる。OLED装置における主な損失要因は、OLED装置の平らな形状による光の捕捉(trapping)である。一般に、生成される光の約50%しかガラス基板に入らず、約20%しか空中へ逃げない。残りの50%は、高屈折率有機層及びインジウムスズ酸化物(ITO)電極内を伝わる導波モードで捕捉される。従来、これらのモードで捕捉された光は、経済的な方法で抽出されるのがとりわけ困難であった。光アウトカップリングを改善するために、捕捉された光を散乱させる回折格子を備える特別な基板が用いられている。ITO電極及びOLED層スタックは、このような構造の上に置かれる。このような構造は、結果として生じる平らではない層スタックの、平らなOLED層スタックを備えるOLED装置と比べて耐短絡性が低い形態を、OLED層スタックに導入するだろう。構造化基板(Structured substrate)は、製造する手間及び製造コストを更に増やすだろう。
【0004】
文献WO 2010/064186 A1は、光反射層(OLED装置の裏面上の電極)がOLED装置からの光アウトカップリングを向上させる散乱光をもたらす変形を有する有機発光装置を開示している。これらの変形は、光反射面の裏面に当たるレーザービームによって生成される。レーザービームは、反射層及び有機層を有する層構造に熱をもたらす。層スタックをこのレーザービームで両電極間に挟まれる有機層のガラス転移温度以上に加熱する場合、層スタック全体が、ゆがみ又はしわを形成する。これらのゆがみ又はしわの形成は、反射層の下の有機層が加熱により柔らかくなる際にしわが寄ることによって緩和される、金属保護膜(反射層)における応力によって引き起こされる。これらのしわは、広い周期性分布及び方向ランダム性を備える準周期的なものであり、光アウトカップリングを向上させるブラッグ・グレーティングの一種の役割を果たす。しかしながら、ガラス転移温度以上で処理されたOLED装置は、ほとんどの場合、縮まり、生じるしわの谷底において、陰極と陽極との間の距離が非常に短いことから、高い電流密度をもたらす。両電極は、時として、直に接触し得る。それ故、上記のように処理されたOLED装置は、低い製造歩留まりでしか製造されることができず、短絡が生じる可能性が高いことにより、耐用年数にわたっての信頼性が低い。容易に、確実に、低コストで製造されることができる、改善された光アウトカップリングを備えるOLED装置を供給する要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、容易に、確実に、低コストで製造されることができる、改善された光アウトカップリングを備えるOLED装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、基板の上にエレクトロルミネッセンス層スタックを有する有機エレクトロルミネッセンス装置であって、前記エレクトロルミネッセンス層スタックが、前記基板に面する第1電極と、第2電極との間に挟まれる1つ以上の有機層を備える有機発光層スタックを有し、前記第2電極が、少なくとも、前記有機発光層スタックの上の透明な導電性保護層、前記有機発光層スタック内の前記有機層の最も低いガラス転移温度より低いガラス転移温度を持つ、前記保護層の上の透明な有機導電性ゆがみ層、及び前記ゆがみ層に応力を生じさせる、前記ゆがみ層の上の応力誘起層の層スタックを有する有機エレクトロルミネッセンス装置によって達成される。本発明によるOLED装置は、発せられる光の波長に依存しない、光アウトカップリングの大幅な改善を示す。前記OLED装置を製造するのに、一般的なインジウムスズ酸化物(ITO)で覆われたガラス基板が依然として用いられ得る。本OLED装置は、OLED装置内の層状構造に損傷を与えずにOLED装置の光アウトカップリングを改善するための、非常に安価で、信頼性が高い解決策である。必要とされる製造ステップは、容易に実行される。
【0007】
前記ゆがみ層は、前記エレクトロルミネッセンス層スタックの、平らな層として準備される、予め堆積された層の上に、平らな層として堆積される。前記応力誘起層も、最初は、前記ゆがみ層の上に、平らな層として堆積される。前記ゆがみ層内のゆがみは、前記ゆがみ層のガラス転移温度より上の温度での前記ゆがみ層の加熱時に、前記ゆがみ層と直に接触している前記応力誘起層の応力を利用することによって得られる。ガラス転移又はガラス化は、通常、急速冷却すると生じる、ガラス形成液体のガラスへの変化を指す。それは、各々が異なる物理的特性を持つ、物質の2つの異なる状態(液体及びガラス)の間で生じる動的な現象である。原子配列の有意な対称性又は長距離秩序を全く形成せずに、ガラス転移の温度範囲(「ガラス転移範囲」)を通して冷却すると、液体は、熱膨張係数(TEC)の減少があるまで、融点より上であるのとほぼ同じ割合で、より連続的に収縮する。ガラス転移温度、T
gは、融点より低い。無機ガラスの熱膨張、熱容量及び多くの他の特性は、粘性とは対照的に、ガラス転移温度で相対的に急激な変化を示す。この急激な変化が生じる温度が、ガラス転移温度と示される。例として、α-NPDのガラス転移温度T
gは95℃であり、TPDのT
gは60℃であり、MTDATAのT
gは75℃である。それとは対照的に、正孔伝導材料として用いられるに適したスピロ化合物は、120℃より大きいT
gを持つ。当業者は、本発明の範囲内で、前記当業者の専門知識に従って、他のガラス転移温度を持つ他の有機材料を選択し得る。前記ゆがみ層内の前記ゆがみの形成は、前記ガラス転移温度より上の温度で柔らかくなっている前記ゆがみ層の上の前記応力誘起層の内層応力の緩和によって引き起こされる。前記ゆがみ層を堆積させるための適切な堆積技術は、真空蒸着である。誘起される応力は、好ましくは、引張応力である。応力の緩和は、ゆがみ層及び応力誘起層のしわの寄った層スタックをもたらす。結果として生じる、ゆがみ層及び応力誘起層の層スタック内のゆがみは、前記応力誘起層からの光を後方散乱させるブラッグ・グレーティングの一種の役割を果たす。前記応力誘起層は、好ましくは、可能な限り多くの光を後方反射するための高い反射率を持つミラー層である。前記ゆがみにより、前記後方反射は、ランダムな角度で生じ、前記OLED装置の外へ結合されるのに適した入射角内で前記基板の表面に入る光をもたらす。最良の結果は、ゆがみ構造内の最も高い箇所と最も低い箇所との間でほぼ10乃至20nmの平均差を持つゆがみ構造で達成される。前記電極間の前記有機発光層スタックの前記有機層は、前記電極間のあらゆる短絡の発生を防止するために平らな層のままでなければならない。この平らな構造は、前記ゆがみ層内にゆがみを生じさせるために加えられる温度を、前記有機発光層スタック内の前記有機層の全てのガラス転移温度より下にすることによって維持される。その後、前記電極間の形態は、前記有機発光層スタックのガラス転移温度より上の温度で加熱されてゆがんだOLEDと比べて短絡の発生を防止する平らな形態のままである。更に、前記応力誘起層によって誘起される応力は、前記有機発光層スタックの平らな形態を維持するために、前記有機発光層スタックから分離されなければならない。前記保護層は、前記基板と前記保護層との間に堆積される層を、前記保護層の上に堆積される層によって誘起される応力から保護する。前記保護層は、内部応力なしにアモルファスの硬い透明な層を形成する熱蒸着によって堆積される。本発明によって提供されるOLED装置は、前記応力誘起層から前記基板へ後方反射される光の反射角のランダムな変化により、改善された光アウトカップリングを示す。前記OLED装置は、一般的な堆積技術で平らな層を付すことによって容易に製造されることができ、前記OLED装置は、前記有機発光層スタック内の平らな形状(平らな形態)の維持による短絡の防止により、確実に動作する。確実な動作は、形態に基づく短絡による製造ロスの発生を防止し、それ故、低コストで製造されることができる。
【0008】
前記有機エレクトロルミネッセンス装置は、光を発生させるために有機小分子又はポリマを利用し得る。従って、OLEDは、小分子有機発光装置(SMOLED)又はポリマ発光装置(PLED)と呼ばれ得る。しかしながら、SMOLEDのより優れた発光性能のため、SMOLEDの方がより好ましい。基板を通して光を発するOLEDは、下部発光体と示される。下部発光体の基板は、2つの基本的に平行な表面を持つ透明な材料、例えば、ガラス又はプラスチックで作成される。前記OLEDの、前記基板とは反対側の面を通して光を発するOLEDは、上部発光体と示される。前記エレクトロルミネッセンス層スタックは、陽極及び陰極としての少なくとも2つの電極、及びそれらの間の有機発光層スタックを有する。幾つかの実施例においては、前記電極間に配設される、正孔輸送層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、例えば埋め込み発光分子を備える母材を有する1つ以上の発光層などの複数の有機層があり得る。当業者には、様々な数/タイプの層を有する多様なエレクトロルミネッセンス層スタックが知られており、当業者は、所望のアプリケーションに依存して適切なエレクトロルミネッセンス層スタックを選ぶことができる。他の例においては、有機発光層スタックは、光を発することができる有機層を1つしか含まなくてもよい。下部発光体の場合には、前記基板の上に堆積される電極は、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)製の、透明な陽極である。本発明によるOLED装置は、下部発光体又は上部発光体であり得る。上部発光体の場合には、前記応力誘起層も透明又は半透明でなければならない。下にある層に必要とされる内層応力を誘起する少なくとも半透明な層は、薄い金属層、例えば、約10nmの厚さのアルミニウム層によって達成され得る。
【0009】
前記エレクトロルミネッセンス層は、湿気又は酸素が前記有機発光層スタック内に入り込むのを防止して十分な耐用年数を持つOLEDを提供するために、カバー蓋によって覆われる。前記カバー蓋は、カバー蓋と基板との間のカプセル化されたボリューム内への湿気及び/又は酸素の拡散に対する十分な障壁を与える任意の適切な剛体材料で作成される。前記カバー蓋は、少なくとも湿気及び酸素に対して十分にガス密である適切な封止材料、例えば、ガラスフリット(非導電性材料)又は導電性封止材料(例えば、導電性充填剤を備えるエポキシ接着剤)を付すことによって、前記基板の上で封止される。「前記基板の上で封止される」という用語は、カバー蓋と基板との間の密着接続を示す。上に付加的な層(例えば、第1及び/又は第2電極のためのコンタクトパッド)を備える基板の場合には、前記カバー蓋は、これらの層にわたって前記基板に封止される。前記カバー蓋は、内面及び外面を持ち、前記内面は、前記カバー蓋の、前記エレクトロルミネッセンス層スタックに面する面を示す。それに応じて、前記外面は、前記カバー蓋の他方の面である。前記カバー蓋の形状は、前記カバー蓋の前記内面と前記エレクトロルミネッセンス層スタックとの間に隙間を与えるよう適合される。前記隙間は、前記OLED装置の外部から前記カバー蓋への如何なる機械的衝撃も前記エレクトロルミネッセンス層に到達するのを防止するだろう。ゲッタ材料が、前記隙間内に配設され得る、一般に、前記カバー蓋の前記内面に取り付けられ得る。カバー蓋とエレクトロルミネッセンス層スタックとの間の前記隙間は、数ミリメートルまでの寸法を持ち得る。一般に、前記隙間には、ガス、例えば乾燥窒素が充填される。他の例においては、前記隙間には、乾燥周囲空気が充填され得る。
【0010】
本発明においては、「伝導性」という用語は、「電気的に」という用語が用いられていない場合であっても、常に、導電性材料又は構成要素を示す。
【0011】
実施例において、前記応力誘起層は、金属層、好ましくは、アルミニウム層である。蒸着又はスパッタリングで準備される金属層は、小さな層厚では、必要とされる応力、好ましくは引張応力を誘起することができる。好ましい材料として、アルミニウムは、前記ガラス転移温度より上の温度での前記ゆがみ層の加熱時に所望のゆがみを自然に形成する。前記所望のゆがみを得るためには、前記応力誘起層の厚さは、5nmより大きく、好ましくは、50nm未満であり、より好ましくは、10nmと25nmとの間である。前記応力誘起層が厚すぎる場合には、ゆがむ挙動は十分ではない。前記応力誘起層が薄すぎる場合には、誘起される応力が小さすぎて前記ゆがみ層をゆがめることができない。前記応力誘起層は、好ましくは、前記第2電極に誘起される所要応力を供給するために真空蒸着によって堆積される。
【0012】
別の実施例においては、前記保護層は、金属酸化物で作成され、好ましくは、MoO
3、WO
3、V
2O
5又はこれらの材料の混合物で作成されるこれらの材料は、前記有機発光層が、前記第2電極層スタックに誘起される応力によって影響を及ぼされるのを防止することができる。別の実施例においては、前記保護層は、20nmより大きい、好ましくは、40nmより大きい、より好ましくは、60nmより大きい厚さを持つ。このような層厚を持つ保護層は、前記有機発光層が、前記第2電極層スタックに誘起される応力によって影響を及ぼされるのを防止することができる。前記保護層のための必要とされる厚さは、誘起される前記応力の強さに依存する。更に、或る最小限の厚さの前記導電性保護層は、前記有機発光層スタック内への電流注入を可能な限り均一に保つために、前記ゆがみ構造による前記ゆがみ層内のばらつきのある横方向導電性を一様にするのに役立つ。
【0013】
別の実施例においては、前記ゆがみ層は、前記有機発光層スタック内の前記有機層の最も低いガラス転移温度より少なくとも30℃下のガラス転移温度を持つ。前記有機発光層スタックの平らな形態を維持するためには、前記ゆがみ層のガラス転移温度と、前記エレクトロルミネッセンス層スタック内の他の有機層のガラス転移温度との間の差が必要とされる。少なくとも30℃の差は、前記ゆがみ層を前記ゆがみ層のガラス転移温度より上の温度で加熱する間の、応力の緩和中の前記有機発光層スタックの現在の形状への如何なる悪影響も防止するだろう。例として、ゆがみ層がT
g=60℃を持つTPDで作成される場合には、T
g=95℃を持つα-NPDなどのOLED装置のための一般的な有機材料が、前記有機発光層スタック内で利用可能である。T
g>120℃を持つスピロ化合物も、前記有機発光層スタック内の正孔伝導材料として用いられ得る。
【0014】
別の実施例においては、前記ゆがみ層は、前記ゆがみ層の導電率を高めるために前記ゆがみ層にドーピングされる適切な量の導電性材料を有する。前記ゆがみ層の導電率の向上は、前記第2電極にわたってのより均一な電流分布をサポートするだろう。前記ゆがみ層のドーピングは、前記有機発光層スタック内の前記有機層のドーピングと同じ方法で実施されることができる。有機発光材料のための一般的なn型及びp型ドーパントは、前記ゆがみ層のためにも用いられ得る。例として、α-NPD又はTPDには、0.1%乃至10%の間で変化する量のドーパントがドーピングされ得る。
【0015】
別の実施例においては、前記ゆがみ層は、20nmより大きな層厚、好ましくは、150nm未満の厚さ、より好ましくは、50nmと100nmとの間の厚さを持つ。アウトカップリング挙動は、前記ゆがみ構造内の最も高い箇所と最も低い箇所との間の差が10nm乃至20nmである状態で最も優れた結果を示した。層厚は、20nmより大きくなければならない。厚すぎるゆがみ層は、必要とされるゆがみ挙動を示さないだろう。それ故、前記ゆがみ層の層厚は、150nmより小さくすべきである。
【0016】
別の実施例においては、前記第2電極は、前記応力誘起層の上に堆積され、前記応力誘起層より大きな内部応力を持つ応力増強層を更に有する。前記応力誘起層によって誘起される応力が、必要とされるゆがみ挙動(例えば、前記ゆがみ構造内の最も高い箇所と最も低い箇所との間の或る差又は或る周期性)を得るのに十分ではない場合には、付加的な層、前記応力増強層によって、応力が増強され得る。好ましい実施例においては、前記応力増強層は、Mn、Cu、Cr又はそれらの混合物で作成される金属層である。前記応力増強層は、必要とされる応力特性を供給するよう、真空蒸着によって堆積され得る。
【0017】
別の実施例においては、好ましくはアルミニウム又は銅で作成される配電層が前記第2電極の上に堆積される。前記配電層は、導電性であり、前記ゆがみ層及び前記保護層より低いシートを持つ。前記配電層は、付加的に配電をサポートし、より均一な明るさを持つ光を放射するOLED装置を供給する。前記配電層のための好ましい材料は、それらの優れた導電率及び対応する低いシート抵抗のため、アルミニウム及び銅である。
【0018】
本発明は、更に、本発明による有機エレクトロルミネッセンス装置を製造する方法であって、
− 前記有機発光層スタックの上に、少なくとも、透明な導電性保護層、透明な有機導電性ゆがみ層、及び応力誘起層の層スタックを有する前記第2電極を堆積させるステップと、
− 前記エレクトロルミネッセンス層スタックを、前記ゆがみ層内のゆがみを得るのに十分な期間の間、前記ゆがみ層のガラス転移温度より上であり、前記有機発光層スタック内の前記有機層の最も低いガラス転移温度より下である温度まで加熱するステップであって、好ましくは、前記期間が20秒と40秒との間であるステップとを有する方法に関する。本発明による方法の利点は、OLED装置を供給するための一般的な製造ステップのほとんどが適用できることである。本発明を実現するために前記第2電極を層スタックとして堆積させるための付加的に必要とされる製造ステップは、容易に実行される。前記第2電極の層の材料の堆積は、例えば蒸着によって実施されることができる。前記加熱は、前記OLEDを炉内に配置し、前記炉を所望の温度まで加熱することによって実行されることができる。
【0019】
別の実施例においては、前記方法は、前記ゆがみ層にゆがみをもたらすために、前記加熱するステップ中に、予め成形されたゆがめ器具で、好ましくはシリコーン又はゴムで作成されるゆがめ器具で、前記ゆがみ層をスタンプ加工するステップを更に有する。前記ゆがみ層のガラス転移温度より上の温度は、前記ゆがめ器具で、又は前記応力緩和に加えて前記ゆがめ器具で、成形されることができる、柔らかいゆがみ層を供給する。前記ゆがめ器具は、前記ゆがみ層に所望のゆがみ構造をスタンプ加工(又は印刷)するために所望のゆがんだ面を有する必要がある。前記ゆがめ器具は、前記ゆがみ層の下の層への如何なる損傷も防止するためにシリコン又はゴムで作成されるスタンプ又はステンシルであり得る。この場合もまた、前記保護層が、前記ゆがみ構造の柔らかいスタンプ加工を可能にするのに十分な、下の層に対する機械的保護を供給する。前記ステンシル又はスタンプは、例えばセキュリティホログラムのためのホログラフィック原版が作成されるのと同じ方法で製造され得る。他の例においては、前記原版の製造自体にゆがめるプロセスが用いられ得る。前記第2電極のエンボス加工(スタンプ加工)の利点は、所定のパターンのゆがみである。
【0020】
別の実施例においては、前記方法は、前記エレクトロルミネッセンス層スタックを加熱する前に前記応力誘起層の上に応力増強層を堆積させるステップを有する。別の実施例においては、前記方法は、前記加熱するステップの後に、前記第2電極の上に配電層を堆積させることによって前記第2電極を厚くするステップを更に有する。堆積される前記配電層は、本発明によるOLED装置の改善された光アウトカップリングを維持するために、前記ゆがみ構造を維持しなければならない。
【0021】
下記の実施例を参照して、本発明のこれら及び他の態様を説明し、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】加熱ステップ後のゆがみ構造を備える
図1のOLEDを示す。
【
図3】第2電極の上に配電層を更に有する本発明によるOLEDの別の実施例を示す。
【
図4】ゆがみ層にゆがみがエンボス加工又はスタンプ加工される本発明によるOLED装置の別の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明によるOLEDの実施例を示しており、ここで、有機エレクトロルミネッセンス装置は、基板1の上にエレクトロルミネッセンス層スタック2、3、4を有し、エレクトロルミネッセンス層スタック2、3、4は、基板1に面する第1電極2と第2電極4との間に挟まれる1つ以上の有機層を備える有機発光層スタック3を有する。第2電極4は、少なくとも、有機発光層スタック3の上の透明な導電性保護層41、有機発光層スタック3内の有機層の最も低いガラス転移温度より低いガラス転移温度を持つ、保護層41の上の透明な有機導電性ゆがみ層42、及びゆがみ層42に応力を生じさせる、ゆがみ層42の上の応力誘起層43の層スタックを有する。第2電極は、堆積された後も依然として平らな形状を持つ。75nmの厚さを持つゆがみ層42に誘起される10nmの厚さを持つ応力誘起層としてのアルミニウム層の応力は、ゆがみ層42のガラス転移温度T
g未満の温度、例えば室温においては、ゆがみBをもたらすのには十分ではない。本発明によるOLED装置構造の明示的な例が、例A及びBにおいて示されている。ここで、OLE層スタックという用語は、有機発光層スタック3を示しており、CDLという用語は、配電層を示している。「d」は、特定の層の層厚を示している。
【表1】
【0024】
例Aにおいては、ゆがみ層のT
gは、有機発光層スタックの最も低いT
gより低い38℃である。
【表2】
【0025】
この例Bにおいては、ゆがみ層のT
gは、有機発光層スタックの最も低いT
gより低い73℃である。
【0026】
例A及びBにおいて、Bis-OXDは、4,4'-ビス(5-フェニル-[1,3,4]オキサジアゾル-2-イル)-2,2'-ジナフチルビフェニルを示しており、(hpp)は、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジンのアニオンを示している。これらの例においては、保護層の変形例として、WO
3の代わりにMoO
3又はV
2O
5が用いられ得る。
【0027】
図2は、ゆがみ構造内の最も高い箇所と最も低い箇所との間で15nmの差Dを持つゆがみBをゆがみ層42内に得るために、エレクトロルミネッセンス層2、3、4スタックを、30秒の期間の間、ゆがみ層42のガラス転移温度T
gより上で、有機発光層スタック3内の有機層の最も低いガラス転移温度より下の温度まで加熱するステップを加えた後のOLED装置を示している。50nmの厚さを持つ保護層41としてのWO
3層は、WO
3層の下の有機発光層3がゆがみ層42のゆがみによって影響を及ぼされるのを防止する。第2電極の層の厚さ及び/又は利用される材料が異なる場合には、誘起される応力は、所望のゆがみ構造を得るのに十分ではないかもしれない。ゆがみ層42に誘起される所要応力を調節するためには、応力誘起層43の上に堆積され、応力誘起層43より大きな内部応力を持つ追加応力増強層(ここでは図示せず)が用いられ得る。応力増強層に適した材料は、例えば、Mn、Cu、Cr又はそれらの混合物である。
図2においては、発せられる光の伝搬方向が、幾つかの例示的な例で示されている。有機発光層3内の発光は、原則として、等方性である。透明な基板1の表面にほぼ垂直な伝搬方向を持つ光5は、OLED装置をまっすぐに進むだろう。より大きな入射角で表面に入る光は、基板1の表面から後方反射され得る。このような光51は、或る入射角で第2電極層4に入るかもしれず、光51がゆがみ構造の表面に入る位置に依存するランダムな角度分布を持つ反射性応力誘起アルミニウム層43と接触するゆがみ構造42の表面から後方反射されるだろう。それ故、OLED装置を出るのに十分な入射角で基板の表面に入る反射光の伝搬方向を供給するために、光の往復反射は非常に限られた回数しか必要とされない。
【0028】
図3は、本発明によるOLED装置の別の実施例を示しており、ここで、OLED装置は、
図2と比べて、第2電極4の上の配電層6を更に有する。配電層6は、導電性であり、ゆがみ層42及び保護層41よりずっと低いシート抵抗を持つ。配電層6は、付加的に配電をサポートし、より均一な明るさを持つ光を発するOLED装置を提供する。配電層6のための好ましい材料は、それらの優れた導電率及び対応する低いシート抵抗のため、アルミニウム及び銅である。応力誘起層43もアルミニウムで作成され得るが、厚さが10nmの非常に薄い応力誘起層は、配電層6としての(例えば100nmの厚さを持つ)厚いアルミニウム層と同じ導電特性を持たない。光51に対する作用は、
図2に示されているものと同じままである。
【0029】
図4は、本発明によるOLED装置の別の実施例を示しており、ここで、ゆがみBは、ゆがめ器具7でゆがみ層42にエンボス加工又はスタンプ加工される。予め成形されたゆがめ器具7でゆがみ層42をスタンプ加工するステップSは、例えば炉内での、ゆがみ層42のガラス転移温度より上の温度でのOLED装置の加熱中に実行される。ゆがみ層42のガラス転移温度より上の温度は、ゆがめ器具7で、又は応力緩和に加えてゆがめ器具7で、成形されることができる、柔らかいゆがみ層42を供給する。ゆがめ器具7は、ゆがみ層42に所望のゆがみBをスタンプ加工S(又は印刷)するために所望のゆがんだ面を有する必要がある。ゆがめ器具7は、ゆがみ層42の下の層2及び3への如何なる損傷も防止するために、シリコンで作成されるスタンプ又はステンシルであり得る。この場合もまた、保護層41が、ゆがみ構造の柔らかいスタンプ加工を可能にするのに十分な、下の層2及び3に対する機械的保護を供給する。ステンシル又はスタンプは、例えばセキュリティホログラムのためのホログラフィック原版が作成されるのと同じ方法で製造され得る。他の例においては、原版の製造自体にゆがめるプロセスが用いられ得る。第2電極4のエンボス加工(スタンプ加工)の利点は、所定のパターンのゆがみBである。ここで、第2電極4は、
図3において示したのと同じようにしてゆがみ構造を設けた後に厚くされ得る。
【0030】
本発明を、図面において図示し、上記の説明において詳細に説明しているが、このような図及び説明は、説明的なもの又は例示的なものとみなされるべきであって、限定するものとみなされるべきではない。本発明は、開示されている実施例に限定されない。請求項に記載の発明を実施する当業者は、図面、明細及び添付の請求項の研究から、開示されている実施例に対する他の変形を、理解し、達成し得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形表記は、複数の存在を除外しない。単に、特定の手段が、相互に異なる従属請求項において引用されているという事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるように用いられることができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
2 第1電極
3 有機発光層スタック
4 第2電極
41 保護層
42 ゆがみ層
43 応力誘起層
5 まっすぐに発せられる光
51 基板表面から後方反射される光
52 ゆがみ構造からランダムに後方反射される光
6 配電層
7 ゆがめ器具
B ゆがみ
D ゆがみ構造内の最も高い箇所と最も低い箇所との間の距離
S ゆがみ層へのゆがみのエンボス加工又はスタンプ加工