特許第5945803号(P5945803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945803
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】医用画像読影システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   A61B5/00 D
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-50482(P2012-50482)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-183851(P2013-183851A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
(72)【発明者】
【氏名】南部 恭二郎
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−508350(JP,A)
【文献】 特開2007−312918(JP,A)
【文献】 特開2009−045121(JP,A)
【文献】 特開2009−082182(JP,A)
【文献】 特開2009−082441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 6/00 − 6/14
G06Q 50/22 − 50/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未読影検査データと、
異常が確認されているデータであって、異常像の見つけやすさにレベル分けされた既知異常データと、
前記既知異常データを前記未読影検査データに対して所定の混合比率で混合し、前記未読影検査データのランダムな位置に挿入された読影データを生成する読影データ生成部と、
前記読影データに含まれる前記既知異常データに対して行われる読影判定の正誤を判定する正誤判定部と、
前記既知異常データに対する読影結果の集計を行う集計部と、
前記混合比率を前記読影結果の状況に応じて再設定する混合比率設定部と、
前記読影結果の状況に応じて読影者に対する注意喚起メッセージを発生するメッセージ発生部と、
を有する医用画像読影システム。
【請求項2】
前記未読影検査データに対する前記既知異常データの混合比率は、0パーセントを含む請求項1記載の医用画像読影システム。
【請求項3】
記読影データ生成部は、前記読影データ内に異なるレベルの前記既知異常データを混合する請求項2記載の医用画像読影システム。
【請求項4】
前記メッセージ発生部は、読影開始時に前記既知異常データが読影データに含まれていることを告知する注意喚起メッセージを発生する請求項3記載の医用画像読影システム。
【請求項5】
正常な医用画像の一部に、異常像を追加して擬似的な異常データを作成する異常画像データ生成部をさらに設け、この異常画像データを前記既知異常データとする請求項4記載の医用画像読影システム。
【請求項6】
読影終了後に、前記集計部は、前記既知異常データに対する読影の正誤率を集計し、正誤率を表示する請求項5記載の医用画像読影システム。
【請求項7】
前記集計部は、読影時間中の前記既知異常データに対する正誤率をリアルタイムに測定し、前記正誤率が所定の閾値以下の場合に、前記メッセージ発生部は、正誤率の低下を告知する注意喚起のメッセージを発生する請求項6記載の医用画像読影システム。
【請求項8】
前記正誤率が低下した場合に、前記混合比率を読影中に増加させる請求項7記載の医用画像読影システム。
【請求項9】
前記集計部に時間経過測定部を設け、読影データ一枚当たりに費やす読影時間が所定の閾値よりくなった時には、前記混合比率を読影中に増加させる請求項8記載の医用画像読影システム。
【請求項10】
前記集計部に時間経過測定部を設け、読影開始からの時間経過に応じて混合比率設定部は前記混合比率を読影中に変化させる請求項9記載の医用画像読影システム。
【請求項11】
前記集計部に読影枚数計測部を設け、読影開始からの読影枚数に応じて混合比率設定部は前記混合比率を読影中に変化させる請求項10記載の医用画像読影システム。
【請求項12】
前記読影データに対して、2回の読影を行う場合に、前記読影データ生成部は、前記既知異常データの出力順番を変化させる請求項6記載の医用画像読影システム。
【請求項13】
前記読影データに対して、2回の読影を行う場合に、1回目の読影の正誤率が所定の閾値以下の場合に、2回目の読影開始時に、1回目の正誤率が良好でないことを告知する注意喚起メッセージを発生する請求項12記載の医用画像読影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像の読影などに使用する医用画像読影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康診断などにおいても超音波診断装置、マンモグラフィー装置、X線CT装置など高度な医療機器による検診が行われるようになり、読影医は、同種の医用画像を大量に読影する必要に迫られている。しかし、読影医も人間であるから大量の読影を行うと、読影が雑になり異常を見落とす可能性を否定できない。また、医用診断装置の高度化により、読影医の技術レベルにも差が生じる。この読影の誤判断を防止するために同じ検査データに対して他の読影医が読影を行い、その読影結果を照合するなどの措置がとられることがある。この措置を2重読影と呼ぶ。
【0003】
通常、健康診断にて行われる医用画像の読影数は数百から数千例に及ぶ。しかしこの中の医用画像の有病画像(異常画像)は、1%未満である。特に肺がんなどの例では、この有病画像率は0.1%とさらに低くなる。
【0004】
さらに2重読影において、2回目の読影を行う読影医は、検査データの有病画像率が低いことに加え、結果がわかっている検査データを読影することになるため、読影医のモチベーションが低下する懸念もある。
【0005】
また、読影を補助するものとしてCAD(Computer-Aided Diagnosis)があり、コンピュータによる画像解析により異常と思われる領域を読影医に提供が可能である。しかし、このCADを使用しても有病画像の検出率は100%でなく、誤った陽性(偽陽性)や誤った陰性(偽陰性)を含んでしまうという課題がある。
【0006】
このような読影医の見落としの可能性を低減するために、実際に読影に要する時間と標準読影時間とが比較され、読影時間が短過ぎる場合には、誤操作警告メッセージが表示され、再度同じ医用画像の読影を行うものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−82182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題を解決し、読影時の陽性の見落としを低減すると同時に読影効率の良い医用画像診断システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、実施形態の医用画像読影システムは、未読影検査データと、異常が確認されているデータであって、異常像の見つけやすさにレベル分けされた既知異常データと、前記既知異常データを前記未読影検査データに対して所定の混合比率で混合し、前記未読影検査データのランダムな位置に挿入された読影データを生成する読影データ生成部と、前記読影データに含まれる前記既知異常データに対して行われる読影判定の正誤を判定する正誤判定部と、前記既知異常データに対する読影結果の集計を行う集計部と、前記混合比率を前記読影結果の状況に応じて再設定する混合比率設定部と、前記読影結果の状況に応じて読影者に対する注意喚起メッセージを発生するメッセージ発生部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における医用画像読影システムのブロック構成図。
図2】同実施形態における混合比率設定部の既知異常データの混合に対する説明図。
図3】同実施形態における集計部のブロック構成図。
図4】同実施形態における医用画像読影システムの動作を説明するフローチャート。
図5】同実施形態における読影判定画面の例。
図6】同実施形態における集計部の集計処理の説明図。
図7】同実施形態における読影結果の表示例。
図8】第2の実施形態における異常画像生成部の異常画像生成処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための実施形態について図1から図8に示す図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の医用画像読影システムは、病院内のネットワークに接続され、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)などのシステムと連携して構築することが可能であり、既存のシステムとの整合性が容易に得られる。
【0013】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本実施形態が適用される医用画像読影システムは、検査データ保存部1、既知異常データ保存部2、読影データ生成部3、混合比率設定部4、表示部5、モニタ6、操作部7、正誤判定部8、読影レポート作成部9、集計部10、メッセージ発生部11、異常画像生成部12、および既知正常データ保存部13を有する。
【0014】
検査データ保存部1は、健康診断などで検査された同種の医用画像の未読影検査データが保存される。また、既知異常データ保存部2には、有病が予め知られている既知異常データが保存される。
【0015】
読影データ生成部3は、検査データ保存部1に保存される未読影検査データと、既知異常データ保存部2に保存される既知異常データを所定の混合比率で混合し、読影データを生成する。また、既知異常データを混合する順番は未読影検査データに対してランダムに挿入される。
【0016】
混合比率設定部4は、読影データ生成部3で生成する読影データにおいて、未読影検査データに対する既知異常データの混合比率を設定し、集計部10の集計結果に応じてこの混合比率を変化させる。
【0017】
表示部5は、読影データを順次モニタ6に表示させ、操作部7に接続されたマウス、キーボードなどのユーザインタフェースなどを使用し、読影データが異常(有病)であるか正常(無病)であるかの読影判定結果を読影者に入力させる。
【0018】
正誤判定部8は、読影データが既知異常データである場合、操作部7から入力された読影判定結果の正誤を判定する。
【0019】
読影レポート作成部9は、読影データが未読影の検査データである場合に、読影レポートを作成するための処理を行う。
【0020】
集計部10は、既知異常データに対する読影判定結果の正誤を集計し、正誤率の低下、読影の時間経過、および読影枚数などの進捗状況を加味した集計を行う。
【0021】
メッセージ発生部11は、集計部10の集計結果に基づき、読影者に対する注意喚起や集計結果などの種々のメッセージを発生する。
【0022】
異常画像生成部12は、既知正常データ保存部13に保存される正常(無病)画像データの一部に異常(有病)画像を付け加えて、既知異常データを生成する。この異常画像生成部12については第2の実施形態で説明する。
【0023】
既知正常データ保存部13は、今回読影を行う検査データ以外の正常画像が保存される。例えば、過去に撮影した検査データや他施設のデータベースに保存されている正常画像などである。
【0024】
図2は、混合比率設定部4において行われる既知異常データの混合に対する説明図である。縦軸は医用画像の頻度を表し、横軸は異常像の見つけ易さを表している。
【0025】
曲線21は、読影データに含まれる異常像の見つけ易さに対する統計的ヒストグラムである。A点付近は正常画像データであり、B点付近は病気の進行が非常に進んでおり、誰が見ても異常だと判断できる異常画像データである。このためA点付近の頻度が高く、B点に近づくに従って頻度が低下した曲線となる。したがってA点付近では、正常画像がほとんどであるため、この中から有病画像を見つけるのは非常に難しい。逆にB点では、読影者1000人中1000人とも異常像があることを見つけられる点とも言える。このようにA点に近づくほど読影の難易度は上昇していく。
【0026】
斜線で示す領域22は、既知異常データの混合比率を示している。また、この場合、読影の難易度を5つのレベルに分類し、L1〜L5とする。数字が高いほど読影の難易度は高い。また、既知異常データの混合比率は通常、読影データ全体の数10分の1〜数100分の1程度の既知異常データを混合するのが好ましい。
【0027】
図2の例では、各難易度レベルL1〜L5の既知異常データを同じ頻度となるように、統計的ヒストグラム21に対し斜線で示す領域22を混合している。また、L3の難易度レベルを他の難易度レベルに比べて多くするなど、各難易度レベルL1〜L5に対して混合比率を独立して設定することも可能である。
【0028】
図3は、集計部10のブロック構成図を示している。集計部10は、時間経過計測部31、読影数計測部32、および読影結果集計部33を有する。
【0029】
時間経過計測部31では、読影の経過時間などを計測する。そしてその計測時間と所定の時間閾値とを比較し、読影の進捗状況を判断する。時間計測の種類は、例えば、(1)読影1枚当たりに費やす平均時間や(2)読影開始からの経過時間などである。これらの計測時間と、所定の標準時間(時間閾値)とを比較し、この時間閾値との大小関係により、読影者に注意喚起を行うか、既知異常データの混合比率を変化させるか、またその両者を行うかを判断する。
【0030】
読影数計測部32は、既知異常データに対する読影の読影数と読影の正誤を計測する。これにより読影がどの位行われているかが判断できる。この計測値は、時間経過計測部31に渡され、読影1枚当たりに要する読影時間の算出などに使用される。また、読影数と所定の読影数閾値とを比較し、この読影数閾値との大小関係により既知異常データの混合比率を変化させるかどうか判断する。
【0031】
読影結果集計部33は、時間経過計測部31の計測時間と、読影数計測部32の読影数、既知異常データに対する読影の正誤率を集計する。さらに正誤率と所定の正誤率閾値とを比較し、この正誤率閾値との大小関係により、読影者に注意喚起を行うか、既知異常データの混合比率を変化させるか、またはその両者を行うか判断する。
【0032】
以上の構成による医用画像読影システムの動作を、図4を用いて説明する。また、図5はモニタ6に表示する読影データの表示例、および読影の判定入力画面を示している。図6は集計部10で行われる集計処理の説明図である。
【0033】
まず、ステップST401において、読影が開始される。ステップST402では、読影者に対する注意喚起が行われる。例えば、「既知の検査データが自動的に混入されている可能性があります。」などのメッセージをメッセージ発生部11で発生させ、表示部5に表示させる。このようなメッセージを表示させることで、読影者に対し注意喚起し、読影に対するモチベーションを向上させる。
【0034】
ステップST403において、読影データ生成部3は表示させる画像データを未読影検査データにするか、既知異常データにするかの画像選択を行う。既知異常データは、混合比率設定部4から取得する混合比率に基づいて選択され、さらに未読影検査データにランダムに挿入される。
【0035】
ステップST404において、選択された画像データを表示部5に接続されたモニタ6に表示する。図5に示すように、表示画面51には、読影データを表示する領域52と、読影判定を入力するための有病ボタン53A、無病ボタン53Bが配置されている。
【0036】
ステップST405においては、読影者は、表示画面51に表示された読影データに対して読影を行う。読影判定は、操作部7に接続されたマウスまたはキーボードにより有病ボタン53A、無病ボタン53Bを押下する。このボタン押下情報は、正誤判定部8に送られ、表示読影データが既知異常データの場合は、有病ボタン53A、無病ボタン53Bの押下情報と比較され正誤が判定される(ステップST406)。
【0037】
図6に示すように、集計部10では、各読影データが未読影の検査データなのか、既知異常データなのかは、読影データ生成部3から通知されており、その情報と、ボタン押下情報が管理されている。例えば、2枚目の例では、既知異常データに対して有病と判断されており、この場合正しく読影されている。しかし読影データは既知異常データであるから読影レポートをわざわざ作成する必要がない。そのため、メッセージ発生部11では、例えば「この画像は既知の検査データです。読影レポートを記載する必要はありません。」などのメッセージを表示部5に接続されたモニタ6に表示する。
【0038】
また、3枚目と4枚目に示す例では、未読影の検査データに対して無病と判断されているため、無病時の読影レポートを作成する。5枚目に示す例では、未読影の検査データに対して有病と判断されているため、有病時の読影レポートを作成する。読影レポート作成は、モニタ6に読影レポート作成のメニューが出現させ、読影者は読影レポートの作成をすることができる。
【0039】
さらに、7枚目に示す例では、既知異常データに対して無病と判断されている。このような場合には、読影者に対して注意喚起を行う「読影に間違いがあります」などのメッセージを表示部5に接続されたモニタ6に表示する。しかし、読影に間違いがある度、メッセージを出しているだけでは、メッセージが表示された時ののみ対応すればよいということになってしまうため、これでは読影データに対して正しい読影が達成されないことになる。
【0040】
集計部10によって集計された正誤率や読影時間、読影数などを加味し、読影者に対する注意喚起メッセージとともに、混合比率設定部4で設定する既知異常データの混合比率を変化させる。ここでは、この動作を注意喚起動作と定義する。
【0041】
したがってステップST407において、この注意喚起動作条件に一致するかどうかを判断し、一致する場合は(ステップST407:Yes)、注意喚起動作を行い(ステップST408)、一致しない場合は、次の読影データを表示する。
【0042】
ステップST408の注意喚起動作については種々考えられる。
(1)現在までの正誤率をリアルタイムに逐次計測する。このリアルタイムな正誤率とは、例えば現在までに1000個の読影データを読影し、その中に既知異常データが10枚含まれていたとする。そして10枚中2枚の既知異常データに対して誤った判断をした場合は、80%の正誤率となる。もし、読影開始後の最初の既知異常データで誤った判断をした場合などは、0%の正誤率となる。この正誤率が正誤率閾値より低下した時点で、読影結果の信憑性が疑われるため、「読影誤りが多いです。もう一度最初から読影しなおしてください」などの注意喚起メッセージを出すことで、最初からの読影を促す。
(2)リアルタイムな正誤率が正誤率閾値より低下した時点で、既知異常データの混合比を上昇させる。例えば、正誤率閾値を50%とし、この閾値より正誤率が低下したら混合比率を10%高くする。
(3)時間経過計測部31において1つの読影データに対する読影時間を計測し、既知異常データの混合比率を変化させる。例えば標準的な読影時間より早いペースで読影が進行している場合には、既知異常データの混合比率を増加させる。この標準的な読影時間は時間閾値に設定する。また、1つの読影データに対する読影時間は、1データ毎に求めてもよいし、ある読影データに対して所定データ数前の読影時間を加味した平均読影時間を求めてもよい。具体的には読影開始時の読影時間より、途中での読影時間が半分になったら既知異常データの混合比率を2倍にする。
(4)時間経過計測部31において読影開始からの経過時間を測定し、その経過時間に応じて既知異常データの混合比率を変化させる。例えば、読影開始から10分経過するたびに混合比率を5%ずつ増加させる。
(5)読影数計測部32において、読影開始からの読影数を計測し、その読影数に応じて既知画像データの混合比率を変化させる。例えば1000枚の読影データのうち800枚の読影が完了した時点で既知異常データの混合比率を2倍に増やす。
などである。なお、読影者が不得意な難易度レベルの既知異常データの混合比率を変化させるとさらに効果的である。
【0043】
ステップST409において、読影データ全てに対して読影が完了したかどうかを判断する。読影が完了していれば(ステップST409:Yes)、ステップST410の読影結果表示に進む。読影が未完了であれば(ステップST409:No)、ステップST403に戻り読影を続ける。
【0044】
ステップST410では、読影結果を表示する。図7に読影結果の表示例を示す。図7(a)は、読影者全員のスコア表を示し、図7(b)は読影者本人のスコア表を示している。図7(a)に示すように、スコア表71aには、読影者氏名、既知異常データの難易度レベルに応じた正誤率、読影時間、読影レベルなどが表示される。読影者Aの場合、すべての難易度レベルの既知異常データに対して正しい判定がなされており、読影レベルは5と表示される。また読影者Bの場合、レベルL5の既知異常データに対する誤判断があるため、読影レベルは4と表示される。また、読影者Cでは、レベルL3〜L5までの既知異常データに対して誤判断があるため、読影レベルは3と表示される。
【0045】
また図7(b)に示すように、スコア表71bは、読影者本人のみにしか表示させないようにすることも可能である。
【0046】
このように読影結果に対して読影レベルが表示されることによって、自分が行った読影に対して客観的な評価を知ることができる。そして読影レベルが低い場合には、本人に注意喚起を行う。
【0047】
さらには、読影結果のスコア表は、読影時間も加味されて読影レベルの評価がなされてもよい。また注意喚起だけでなく、極端に読影レベルが低い場合などには、今回の読影は不採用とし、「他の医師による読影が必要」というようなメッセージを出力してもよい。
【0048】
そしてステップST411において1回目の読影が完了する。
【0049】
ここで、2重読影についての注意喚起動作を説明する。1回目読影において、読影者のスコアが悪い時、2人目の読影者による2回目の読影開始時に「前の読影者の正誤率が低いです。注意して下さい。」などの注意喚起メッセージを表示する。この注意喚起動作は、1回目の読影のスコアが所定の読影レベルに達していれば表示されない。
【0050】
また、2重読影の場合には、未読影検査データの順番、既知異常データの挿入順序、およびその挿入位置を変化させることが好ましい。
【0051】
なお、本実施形態の説明においては、未読影検査データに既知異常データを挿入する場合について説明を行ったが、既知異常データの混合比率は0%としても構わない。むしろその方が効果的な場合もある。従ってステップST402で「既知の検査データが自動的に混入されている可能性があります。」などの注意喚起の告知を行うものの、実際には混合されていないという場合も存在する。
【0052】
従って第1の実施形態によれば、読影データ内に未読影の検査データとあらかじめ有病であると分かっている既知異常データが所定の混合比率で混合される。そして、既知異常データが読影データ内に混合されていることが、あらかじめ読影者に告知されるため、読影者は誤判断をしないように注意する。
【0053】
また、読影終了後に読影者自身が既知異常データに対する正誤率を確認できるため、自分が行った読影対して客観的な評価・判定を知ることができる。
【0054】
さらに、挿入されている既知異常データが読影の容易さでレベル分けされているため、各レベルの正誤率を集計することで読影者の読影レベルを病院側が判断可能である。
【0055】
(第2の実施形態)
未読影検査データと既知異常データにおいては、画像の画質などを同じにしなければ、読影者は画質の違いなどで既知異常データを判別できてしまう。画質の他には撮影装置の違いによる部位の倍率の差異や、撮影者のくせによる部位の位置などでも既知異常データを判別できてしまう。このため、未読影検査データと同一画質の有病画像が十分準備できない可能性がある。
【0056】
本実施形態では、このような場合を解決する方法として既知異常データを人工的に作成する方法について説明する。図8は異常画像生成部12で生成される異常画像の生成についての説明図である。まず、図1の既知正常データ保存部13から正常画像81を取得する。図8の正常画像81はマンモグラフィーによる検査画像の模式図である。この正常画像81の一部の画素を異常画像82の画素と置き換えることにより、異常画像を所定の場所に追加して既知異常データを作成することができる。
【0057】
このように、第2の実施形態によれば、沢山ある既知正常データの一部に異常画像を追加することで既知異常データを作成することができるため、有病率の少ない既知異常データを十分準備ができないという問題点を解決できる。また、付加する異常画像を変えることにより読影のレベルに応じた既知異常データが作成できる。
【0058】
さらに、未読影検査データと既知異常データの画質を同じにすることができるため、読影医に見分けられる可能性が低減する。
【0059】
本実施形態によれば、読影データに既知の異常データが挿入されているため、読影中の読影医のモチベーションを高めることができる。しかも既知の異常データに対する正誤率の低下などの際に注意喚起のメッセージを出すことが可能である。このため読影の誤判断を低減すると同時に読影効率の良い医用画像診断システムが実現可能である。
【0060】
また、本実施形態においては、既知の異常データを挿入する場合について説明したが、既知の正常データをさらに挿入してもよい。そうすれば、第2の実施形態で述べたように、医用画像の画質によって既知データを見分けられても、読影者は正常か異常かを判定する必要に迫られる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…検査データ保存部、
2…既知異常データ保存部、
3…読影データ生成部、
4…混合比率設定部、
5…表示部、
6…モニタ、
7…操作部、
8…正誤判定部、
9…読影レポート作成部、
10…集計部、
11…メッセージ発生部、
12…異常画像生成部、
13…既知正常データ保存部、
31…時間経過計測部、
32…読影数計測部、
33…読影結果集計部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8