(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所要の工具が取り付けられたツールホルダが、主軸モータによって回転駆動される主軸のテーパ穴に前記ツールホルダのテーパシャンク部を挿入した状態で前記主軸に着脱自在に取り付けられる工作機械において、前記テーパシャンク部が前記テーパ穴に挿入された状態でクランプ機構により前記ツールホルダを前記主軸の近接方向に引っ張るクランプ力が付与されたときに、前記ツールホルダの回転軸心が前記主軸の回転軸心に一致するように前記ツールホルダの前記主軸に対する相対位置をガイドする位置決めガイド手段と、前記位置決めガイド手段による位置決めが行われたときに、前記ツールホルダの押圧部を前記主軸の受部に前記クランプ力により押し付けて前記ツールホルダを前記主軸に固定する位置固定手段とを備え、前記位置決めガイド手段が、前記主軸の前記ツールホルダの取り付け側の主軸端面における前記テーパ穴の開口周縁部からリング状に突設され、前記開口周縁から前記主軸端面に向けて断面湾曲形状となったガイド受面を有するガイド位置決め突部と、前記ツールホルダの前記主軸に対向するホルダ端面に形成されて前記ガイド位置決め突部を嵌まり込ませる溝形状を有する受け溝部とを備えるとともに、前記受け溝部の内周側溝壁面と溝底面との境界角部に設定された位置決め当接部と前記ガイド受面と前記テーパ穴の開口周端との境界角部に設定された位置決め受部とが同じ径に設定されてなり、前記位置固定手段が、前記受け溝部内に前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で互いに接触する前記位置決め当接部および前記位置決め受部をそれぞれ前記押圧部および前記受部として構成されていることを特徴とする工作機械。
前記位置固定手段が、さらに、前記受け溝部における外周側溝壁面と前記ホルダ端面との境界角部からなる支持当接部と、前記受け溝部内に前記前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で前記支持当接部が当接される前記ガイド受面とからなる構成を備えている請求項1に記載の工作機械。
所要の工具が取り付けられたツールホルダが、主軸モータによって回転駆動される主軸のテーパ穴に前記ツールホルダのテーパシャンク部を挿入した状態で前記主軸に着脱自在に取り付けられる工作機械において、前記テーパシャンク部が前記テーパ穴に挿入された状態でクランプ機構により前記ツールホルダを前記主軸の近接方向に引っ張るクランプ力が付与されたときに、前記ツールホルダの回転軸心が前記主軸の回転軸心に一致するように前記ツールホルダの前記主軸に対する相対位置をガイドする位置決めガイド手段と、前記位置決めガイド手段による位置決めが行われたときに、前記ツールホルダの押圧部を前記主軸の受部に前記クランプ力により押し付けて前記ツールホルダを前記主軸に固定する位置固定手段とを備え、前記位置決めガイド手段が、前記主軸の前記ツールホルダの取り付け側の主軸端面における前記テーパ穴の開口周縁部からリング状に突設され、前記開口周縁から前記主軸端面に向けて断面湾曲形状となったガイド受面を有するガイド位置決め突部と、前記ツールホルダの前記主軸に対向するホルダ端面に形成されて前記ガイド位置決め突部を嵌まり込ませる溝形状を有する受け溝部とを備えるとともに、前記受け溝部の外周側溝壁面と前記ホルダ端面との境界角部に設定された位置決め保持部と、前記ガイド受面と前記主軸端面との境界角部に設定された位置決め受部とが同じ径に設定されてなり、前記位置固定手段が、前記受け溝部内に前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で互いに当接する前記ホルダ端面および前記主軸端面をそれぞれ前記押圧部および前記受部として構成されていることを特徴とする工作機械。
所要の工具が取り付けられたツールホルダが、主軸モータによって回転駆動される主軸のテーパ穴に前記ツールホルダのテーパシャンク部を挿入した状態で前記主軸に着脱自在に取り付けられる工作機械において、前記テーパシャンク部が前記テーパ穴に挿入された状態でクランプ機構により前記ツールホルダを前記主軸の近接方向に引っ張るクランプ力が付与されたときに、前記ツールホルダの回転軸心が前記主軸の回転軸心に一致するように前記ツールホルダの前記主軸に対する相対位置をガイドする位置決めガイド手段と、前記位置決めガイド手段による位置決めが行われたときに、前記ツールホルダの押圧部を前記主軸の受部に前記クランプ力により押し付けて前記ツールホルダを前記主軸に固定する位置固定手段とを備え、前記位置決めガイド手段が、前記主軸の前記ツールホルダの取り付け側の主軸端面における前記テーパ穴の開口周縁部から前記主軸の回転軸心に対し平行方向に延びるリング状に突設され、そのリング状の外周面の突出先端部から断面半円形状の円環状となったガイド位置決め受部が径方向外方に向け膨出形成されているガイド位置決め突部と、前記ツールホルダの前記主軸に対向するホルダ端面に形成されて前記ガイド位置決め突部を嵌まり込ませる溝形状を有する受け溝部とを備えるとともに、前記受け溝部における前記ツールホルダの回転軸心に平行面となった外周側溝壁面と、この外周側溝壁面に摺接するガイド位置決め受部の径方向外方の頂部とが同じ径に設定されてなり、前記位置固定手段が、前記受け溝部内に前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で互いに当接する前記ホルダ端面および前記主軸端面をそれぞれ前記押圧部および前記受部として構成されていることを特徴とする工作機械。
【背景技術】
【0002】
上述のマシニングセンタで加工される工作物は多岐にわたり、それに伴って使用される工具も種々雑多である。この種類や形状が互いに異なる種々の工具を選択的にマシニングセンタの同じ主軸に支障なく取り付けるために、各種工具が、主軸に着脱自在に取り付けできるツールホルダにそれぞれ予め取り付けられており、加工工程に従って所要の工具が取り付けられたツールホルダが選択されて主軸に取り付けられる。
【0003】
この種の工作機械は一般に
図9(a)に示すような構造を備えている(例えば、特許文献1〜3参照)。すなわち、主軸モータ(図示せず)により回転駆動される中空軸状の主軸40には、ツールホルダ41が取り付けられる一端側の取付部42の内部に、内周面が所定のテーパ角で一端面の開口に向け漸次拡径する取付用テーパ穴43が形成されている。一方、前記ツールホルダ41は、主軸40への取り付けに際して把持される円環状のフランジ部44の一方側(図の右方側)に、先端に工具(図示せず)が取り付けられるホルダ部45が突設されているとともに、フランジ部44の他方側(図の左方側)に、先端に向けてその外周面が前記テーパ穴43のテーパ角と等しい一定のテーパ角で漸次縮径する円錐台形状のテーパシャンク部46が一体形成されている。ホルダ部45に予め工具が取り付けられたツールホルダ41は、テーパシャンク部46が主軸40のテーパ穴43に挿入されたのちに矢印方向へのクランプ力Fcにより引っ張られることにより、テーパシャンク部46の外周面がテーパ穴43の内周面に密着して固定され、主軸40に対して一体回転するように取り付けられる。
【0004】
なお、この工作機械では、主軸40とフランジ部44の各々の対向端面40a,44a間に僅かな隙間cがある状態でテーパシャンク部46の外周面がテーパ穴43の内周面に密着するように設定されている。この隙間cを設けているのは以下のような理由による。すなわち、ツールホルダ41を主軸40に取り付けるに際して、テーパシャンク部46の外周面とテーパ穴43の内周面とが密着するのと同時に、フランジ部44と主軸40の各々の対向端面40a,44a同士も密着するように各々の内,外周面と端面40a,44aとを高精度な寸法に形成するのが極めて困難である。そこで、この工作機械では、テーパシャンク部46の外周面とテーパ穴43の内周面とがクランプ力Fcによって確実に密着するように図っている。
【0005】
また、従来では、
図10(a)に示すような構成を備えた工作機械も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
図10(a)において、
図9(a)と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して重複する説明を省略する。この工作機械では、テーパ穴43に挿入されたテーパシャンク部46の外周面とテーパ穴43の内周面との間に僅かな隙間が存在する状態で、
図10(a)に矢印で示したテーパシャンク部46に作用するクランプ力Fcによってフランジ部44のテーパシャンク部46側の端面44aを主軸40のテーパ穴43の開口端周辺の端面40aに密着させることにより、ツールホルダ41が主軸40に取り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年において、マシニングセンタのような工作機械に対して金型等の被加工物を高効率で、且つ高精度に加工することが要望されており、この要望を実現するために、大出力で高回転数の主軸モータを搭載して主軸40の回転を高速化することが行われている。しかしながら、
図9(a)の工作機械では、主軸40が高速回転するのに伴って主軸40に生じる遠心力が増大し、この大きな遠心力によってテーパ穴43がテーパシャンク部46の外径よりも大きな内径に拡径する状態に主軸40が変形する。これは、主軸40がツールホルダ41に比べて遠心力の影響を受け易いためである。このようにテーパ穴43が拡径すると、テーパ穴43とテーパシャンク部46との密着度が低下するため、テーパ穴43によるテーパシャンク部46の把持力が低下し、ツールホルダ41にびびり振動が発生し易くなって被加工物の加工精度が低下する。
【0008】
また、主軸40の高速回転によってテーパ穴43が拡径すると、
図9(b)に示すように、ツールホルダ41に作用しているクランプ力Fcによってテーパシャンク部46が拡径したテーパ穴43内に入り込み、ツールホルダ41は、フランジ部44の端面44aが主軸40の端面40aに当接する位置まで矢印で示す軸心方向に変位してしまう。このように、位置固定されている主軸40に対するツールホルダ41の相対位置が
図2(b)にdで示す距離だけ変化してしまうと、ツールホルダ41に取り付けられた工具が被加工物に対して予め設定された相対位置からdで示す距離だけずれてしまうので、これによっても被加工物の加工精度が低下する。
【0009】
さらに、主軸40の高速回転によってテーパ穴43が拡径すると、上述のようにテーパ穴43によるテーパシャンク部46の把持力が低下するため、
図9(c)に示すように、工具が被加工物に押し付けられることによる反力によってホルダ部45に曲げ荷重Fが加わったときに、主軸40の回転軸心C1に対しツールホルダ41の回転軸心C2がずれてしまい、この状態で主軸40が回転すると、主軸40にびびり振動が発生して、被加工物に対する加工精度が大きく低下してしまう。
【0010】
一方、
図10(a)の工作機械では、ツールホルダ41のフランジ部44の端面44aがクランプ力Fcによって主軸40の端面40aに押し付けられるので、主軸40が高速回転する場合にもツールホルダ41が軸心方向へ向けて変位することがないが、以下のような課題がある。すなわち、自動工具交換装置を備えたマシニングセンタのような工作機械では、各種工具がそれぞれ取り付けられてツールマガジンに格納されている複数のツールホルダ41のうちから加工工程に従って選択されたツールホルダ41がツールマガジンから取り出されて主軸40に自動的に装着される。このとき、
図10(a)の工作機械では、テーパ穴43の内周面の径がテーパシャンク部46の外周面の径よりも僅かに大きく設定されて両者の間に隙間が存在するので、自動工具交換装置によりツールホルダ41が主軸40に自動的に取り付けられるときに、
図10(b)に示すように、ツールホルダ41が、これの回転軸心C2が主軸40の回転軸心C1に対しずれる相対配置で主軸40に装着されるおそれがある。このようにツールホルダ41が偏心状態で取り付けられた主軸40が高速回転されたときには、ツールホルダ41にびびり振動が発生して被加工物の加工精度が低下する。
【0011】
また、この工作機械では、ツールホルダ41の径方向への変位を防止する機械的な位置
決め機構が存在しないことから、クランプ力Fcを極めて大きく設定した場合であっても、主軸40が高速回転された状態で工具が被加工物に押し付けられることによる反力によってホルダ部45に曲げ荷重が加わったときにツールホルダ41が径方向に変位するおそれがあり、これによっても被加工物の加工精度が低下する。
【0012】
本発明は、交換すべきツールホルダを主軸に対して所定の相対位置に高精度、且つ容易に位置決めして主軸に取り付けることができ、主軸が高速回転する場合においてもツールホルダの変位を確実に防止して被加工物を高精度に加工することができる工作機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、所要の工具が取り付けられたツールホルダが、主軸モータによって回転駆動される主軸のテーパ穴に前記ツールホルダのテーパシャンク部を挿入した状態で前記主軸に着脱自在に取り付けられる工作機械において、前記テーパシャンク部が前記テーパ穴に挿入された状態でクランプ機構により前記ツールホルダを前記主軸の近接方向に引っ張るクランプ力が付与されたときに、前記ツールホルダの回転軸心が前記主軸の回転軸心に一致するように前記ツールホルダの前記主軸に対する相対位置をガイドする位置決めガイド手段と、前記位置決めガイド手段による位置決めが行われたときに、前記ツールホルダの押圧部を前記主軸の受部に前記クランプ力により押し付けて前記ツールホルダを前記主軸に固定する位置固定手段とを
備え、前記位置決めガイド手段が、前記主軸の前記ツールホルダの取り付け側の主軸端面における前記テーパ穴の開口周縁部からリング状に突設され、前記開口周縁から前記主軸端面に向けて断面湾曲形状となったガイド受面を有するガイド位置決め突部と、前記ツールホルダの前記主軸に対向するホルダ端面に形成されて前記ガイド位置決め突部を嵌まり込ませる溝形状を有する受け溝部とを備えるとともに、前記受け溝部の内周側溝壁面と溝底面との境界角部に設定された位置決め当接部と前記ガイド受面と前記テーパ穴の開口周端との境界角部に設定された位置決め受部とが同じ径に設定されてなり、前記位置固定手段が、前記受け溝部内に前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で互いに接触する前記位置決め当接部および前記位置決め受部をそれぞれ前記押圧部および前記受部として構成されていることを特徴とする工作機械を提供する。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記位置固定手段が、さらに、前記受け溝部における外周側溝壁面と前記ホルダ端面との境界角部からなる支持当接部と、前記受け溝部内に前記前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で前記支持当接部が当接される前記ガイド受面とからなる構成を備えている工作機械を提供する。
【0015】
請求項3に係る発明は、所要の工具が取り付けられたツールホルダが、主軸モータによって回転駆動される主軸のテーパ穴に前記ツールホルダのテーパシャンク部を挿入した状態で前記主軸に着脱自在に取り付けられる工作機械において、前記テーパシャンク部が前記テーパ穴に挿入された状態でクランプ機構により前記ツールホルダを前記主軸の近接方向に引っ張るクランプ力が付与されたときに、前記ツールホルダの回転軸心が前記主軸の回転軸心に一致するように前記ツールホルダの前記主軸に対する相対位置をガイドする位置決めガイド手段と、前記位置決めガイド手段による位置決めが行われたときに、前記ツールホルダの押圧部を前記主軸の受部に前記クランプ力により押し付けて前記ツールホルダを前記主軸に固定する位置固定手段とを
備え、前記位置決めガイド手段が、前記主軸の前記ツールホルダの取り付け側の主軸端面における前記テーパ穴の開口周縁部からリング状に突設され、前記開口周縁から前記主軸端面に向けて断面湾曲形状となったガイド受面を有するガイド位置決め突部と、前記ツールホルダの前記主軸に対向するホルダ端面に形成されて前記ガイド位置決め突部を嵌まり込ませる溝形状を有する受け溝部とを備えるとともに、前記受け溝部の外周側溝壁面と前記ホルダ端面との境界角部に設定された位置決め保持部と、前記ガイド受面と前記主軸端面との境界角部に設定された位置決め受部とが同じ径に設定されてなり、前記位置固定手段が、前記受け溝部内に前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で互いに当接する前記ホルダ端面および前記主軸端面をそれぞれ前記押圧部および前記受部として構成されていることを特徴とする工作機械を提供する。
【0016】
請求項4に係る発明は、所要の工具が取り付けられたツールホルダが、主軸モータによって回転駆動される主軸のテーパ穴に前記ツールホルダのテーパシャンク部を挿入した状態で前記主軸に着脱自在に取り付けられる工作機械において、前記テーパシャンク部が前記テーパ穴に挿入された状態でクランプ機構により前記ツールホルダを前記主軸の近接方向に引っ張るクランプ力が付与されたときに、前記ツールホルダの回転軸心が前記主軸の回転軸心に一致するように前記ツールホルダの前記主軸に対する相対位置をガイドする位置決めガイド手段と、前記位置決めガイド手段による位置決めが行われたときに、前記ツールホルダの押圧部を前記主軸の受部に前記クランプ力により押し付けて前記ツールホルダを前記主軸に固定する位置固定手段とを
備え、前記位置決めガイド手段が、前記主軸の前記ツールホルダの取り付け側の主軸端面における前記テーパ穴の開口周縁部から前記主軸の回転軸心に対し平行方向に延びるリング状に突設され、そのリング状の外周面の突出先端部から断面半円形状の円環状となったガイド位置決め受部が径方向外方に向け膨出形成されているガイド位置決め突部と、前記ツールホルダの前記主軸に対向するホルダ端面に形成されて前記ガイド位置決め突部を嵌まり込ませる溝形状を有する受け溝部とを備えるとともに、前記受け溝部における前記ツールホルダの回転軸心に平行面となった外周側溝壁面と、この外周側溝壁面に摺接するガイド位置決め受部の径方向外方の頂部とが同じ径に設定されてなり、前記位置固定手段が、前記受け溝部内に前記ガイド位置決め突部が嵌め入れられた時点で互いに当接する前記ホルダ端面および前記主軸端面をそれぞれ前記押圧部および前記受部として構成されていることを特徴とする工作機械を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る工作機械によれば、ツールホルダの主軸への取り付けに際して、テーパシャンク部がテーパ穴に挿入された状態でツールホルダにクランプ力が付与されたときに、ツールホルダが、これの回転軸心が主軸の回転軸心に一致するように主軸に対する相対位置を変位するように位置決めガイド手段によりガイドされる。これにより、この工作機械は、ツールホルダの交換に際して、ツールホルダの主軸に対する相対位置を容易に、且つ高精度に位置決めできるので、ツールホルダにびびり振動が発生するのが極力抑制されて、被加工物の加工精度の低下を確実に防止できる。また、この工作機械は、テーパ穴とテーパシャンク部との密着によりツールホルダを主軸に取り付ける構造の従来の工作機械とは異なり、ツールホルダの押圧部を主軸の受部に前記クランプ力により軸心方向に押し付けてツールホルダを主軸に固定するようになっているので、主軸が高速回転したときに発生する遠心力によるテーパ穴の拡径に起因して生じるテーパシャンク部の把持力の低下やツールホルダの軸心方向への変位といった不具合が生じることがなく、これらの発生に伴う被加工物の加工精度の低下が無関係となる。
【0020】
更に詳細には、請求項
1に係る工作機械によれば、ツールホルダの主軸への取り付けに際して、ツールホルダのテーパシャンク部が主軸のテーパ穴に挿入された状態においてクランプ力が付与されることにより、受け溝部内にガイド位置決め突部が強制的に嵌め入れられ、このときに、ツールホルダの受け溝部の位置決め当接部に主軸のガイド位置決め突部の位置決め受部が当接される。この互いに当接される位置決め当接部と位置決め受け部とは同じ径に設定されているから、ツールホルダの回転軸心が主軸の回転軸心に対しずれた相対配置でテーパシャンク部がテーパ穴に挿入されても、位置決め当接部と位置決め受け部とが当接するようガイドされることにより、ツールホルダが、これの回転軸心が主軸の回転軸心に一致する所定の相対配置に位置修正されて、主軸に対し高精度に位置決めされる。この位置決め状態において互いに接触する位置決め当接部が位置決め受け部にクランプ力により押し付けられてツールホルダが主軸に固定される。
【0021】
請求項
2に係る工作機械によれば、ツールホルダは、径方向の異なる2箇所が主軸に係合された状態で主軸に取り付けられることから、主軸が高速回転したときにも主軸に対しこれの径方向へ向けて変位するのが確実に阻止される。そのため、主軸が高速回転するのに加えて、被加工物からの反力による大きな曲げ荷重が加わった場合であっても、ツールホルダの曲げ剛性の低下を招くことがなく、被加工物を高精度に加工できる。
【0022】
請求項
3に係る工作機械によれば、クランプ機構のクランプ力によりツールホルダのテーパシャンク部が主軸のテーパ穴内に強く引き込まれたときに、ツールホルダの受け溝部内に主軸のガイド位置決め突部の全体が強制的に挿入されることにより、共にほぼ同一の径に設定された受け溝部の位置決め保持部とガイド位置決め突部の位置決め受部とが互いに当接される。これにより、ツールホルダは、これの回転軸心が主軸の回転軸心に一致するように主軸に対する相対位置を修正するようにガイドされて、主軸に対して容易に、且つ高精度に位置決めされる。また、受け溝部内にガイド位置決め突部の全体が嵌め入れられたときに、ツールホルダのホルダ端面が主軸の主軸端面にクランプ力により強く押し付けられて、ツールホルダが主軸に固定される。
【0023】
請求項
4に係る工作機械によれば、主軸とツールホルダの各々の軸心が互いにずれた配置でテーパシャンク部がテーパ穴に挿入されても、ガイド位置決め突部の先端のガイド位置決め受部が受け溝部の開口周端部に当接した時点で、ツールホルダがクランプ機構のクランプ力で引っ張られることにより、受け溝部の外周側溝壁面の開口周縁が、ガイド位置決め突部のガイド位置決め受部における断面半円形状のガイド位置決め受面に摺接しながらガイドされることにより、受け溝部の外周側溝壁面内にガイド位置決め受部の頂部が入り込む状態となる。このとき、受け溝部の外周側溝壁面がガイド位置決め受部の頂部とほぼ同じ径に設定されているから、ツールホルダは、これの回転軸心が主軸の回転軸心に一致する相対配置に容易に、且つ高精度に位置決めされる。この位置決め状態において、ツールホルダのホルダ端面が主軸の主軸端面にクランプ力で押し付けられて、ツールホルダが主軸に固定される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明の第1実施形態に係る工作機械を示す断面図であり、この工作機械は、主軸1Aにツールホルダ2Aが着脱自在に取り付けられるようになっている。主軸1Aは、中空の軸状であって、複数の軸受3を介して筒状の外装ケース4の内部で回転自在に保持されており、主軸モータ(図示せず)により回転駆動されるようになっている。主軸1Aにおけるツールホルダ2Aが取り付けられる一端側の取付基部7の内部に、内周面が所定のテーパ角で開口部8に向け漸次拡径する取付用テーパ穴9が形成されている。取付基部7における開口部8の周辺の主軸端面10からはガイド位置決め突部11が一体に突設されている。このガイド位置決め突部11の詳細については後述する。
【0027】
一方、前記ツールホルダ2Aには、主軸1Aへの取り付けに際して把持して移送される円環状のフランジ部12を備え、このフランジ部12の一方側(図の右方側)に、先端に工具13が着脱自在に取り付けられるホルダ部14が一体に設けられている。また、ツールホルダ2Aには、フランジ部12の他方側(図の左方側)に、先端に向けてその外周面がテーパ穴9のテーパ角と同じ一定のテーパ角で漸次縮径する円錐台形状のテーパシャンク部17が一体形成されている。このテーパシャンク部17は、テーパ穴9に挿入されたときにテーパ穴9の内周面との間に僅かな隙間ができる外径を有する外周面に形成されている。フランジ部12における主軸1Aに対向するホルダ端面18には、主軸1Aのガイド位置決め突部11が嵌まり込む環状の受け溝部19が形成されている。この受け溝部19の詳細については後述する。
【0028】
ツールホルダ2Aを主軸1Aに着脱自在に取り付けるためのクランプ機構20は以下のような構成になっている。すなわち、テーパシャンク部17には、外周面がテーパシャンク部17と同一のテーパ角を有する円錐台形状に形成された中空状のテーパ延長部材21が、テーパシャンク部17の外周面をテーパの縮径方向に延長する配置で連結されており、このテーパ延長部材21の内部に、中央部に挿通孔22aが形成された円盤状の係止部材22が、円盤状の外周端面がテーパ延長部材21の内周面に密接する配置でテーパ延長部材21に固定されている。一端部および他端部にそれぞれプルスタッド23および掛止突部25が形成された連結扞24が、係止部材22の挿通孔22aを挿通して掛止突部25がテーパシャンク部17と係止部材22との間に位置し、且つプルスタッド23がテーパ延長部材21の外部に位置する配置で設けられている。主軸1Aの中空部の内部後端(図の左端)位置には、多数枚の皿ばねの撓みを利用してクランプ力Fcを発生させる周知のクランプ力発生部27が配置されている。プルスタッド23を掴持するコレット28を先端に備えたドローバ29は、主軸1Aの中空部内においてこれの軸心方向に移動可能に配置された状態でクランプ力発生部27に連結されている。
【0029】
このクランプ機構20は、選択された任意のツールホルダ2Aを主軸1Aに取り付けるクランプ時に、クランプ発生部27に発生するクランプ力Fcによりドローバ29がクランプ方向(図の左方向)に引っ張られることによってコレット28がプルスタッド23を掴持するので、連結扞24が掛止突部25を介して係止部材22をクランプ方向に引っ張る。この引っ張られる係止部材22はテーパ延長部材21に対してくさび状に係止するので、クランプ発生部27のクランプ力Fcでツールホルダ2Aのテーパシャンク部17が
主軸1Aのテーパ穴9内に引き込まれて、ツールホルダ2Aが主軸1Aに取り付けられる。一方、ツールホルダ2Aを主軸1Aから取り外すアンクランプ時には、油圧シリンダ(図示せず)の作動によりドローバ29が前方(図の右方)に押し出されるように移動され、これによりコレット28が開いてプルスタッド23への掴持が解除され、これによりツールホルダ2Aのテーパシャンク部17をテーパ穴9から引出し可能な状態となる。
【0030】
図2は
図1の要部の拡大断面図、
図3は
図2の分解断面図をそれぞれ示す。
図3において、主軸1Aのガイド位置決め突部11は、取付基部7の主軸端面10からリング状に一体に突設されている。このガイド位置決め突部11のリング状の内周面がテーパ穴9に連続するテーパ角に形成されて、この内周面の先端がテーパ穴9の開口部8になっている。また、ガイド位置決め突部11は、開口部8の開口周端から主軸端面10にかけて径方向に湾曲形状に膨出するガイド受面11aを有し、このガイド受面11aの内周端で、且つ開口部8の開口周端が、所定の径R1を有する位置決め受部11bになっている。
【0031】
一方、ツールホルダ2Aの環状の受け溝部19は、これの内周側溝壁面19aが、テーパシャンク部17に連続するテーパ角を有するテーパ面に形成され、溝底面19bと内周側溝壁面19aとの境界角部が、ガイド位置決め突部11の位置決め受部11bと同じ径R1を有する円形の位置決め当接部19cになっている。また、受け溝部19の外周側溝壁面19dは、溝開口に向け拡径する傾斜面に形成されて、この外周側溝壁面19dとホルダ端面18との境界角部が、ガイド位置決め突部11のガイド受面11aに接触する支持当接部19eになっている。
【0032】
この工作機械では、
図1のクランプ機構20がアンクランプ状態となって主軸1Aからツールホルダ2Aが取り外されたのちに、例えば自動工具交換装置により選択されたツールホルダ2Aが、これのフランジ部12を把持した状態で移送されて、主軸1Aに自動的に取り付けられる。この取り付けの際に、
図3に示すように、ツールホルダ2Aの回転軸心C2が主軸1Aの回転軸心C1に対しずれた相対配置でツールホルダ2Aのテーパシャンク部17がテーパ穴9に挿入されても、
図2に示すように、テーパシャンク部17がテーパ穴9に挿入されていく過程において各々の軸心C1,C2が互いに一致するように相対位置が補正されていき、ツールホルダ2Aが主軸1Aに対し所定の相対位置に位置決めされる。
【0033】
すなわち、主軸1Aとツールホルダ2Aの各々の軸心C1,C2が互いにずれた相対配置でテーパシャンク部17がテーパ穴9に挿入された場合、ガイド位置決め突部11が受け溝部19内に入り込んでいくときに、受け溝部19の支持当接部19eがガイド位置決め突部11のガイド受面11aの湾曲形状の外面に摺接しながらガイドされることにより、ツールホルダ2Aは、これの回転軸心C2が主軸1Aの回転軸心C1に合致するように主軸1Aに対する相対位置が自動的に修正されていく。
【0034】
そして、クランプ機構20のクランプ力Fcによりツールホルダ2Aのテーパシャンク部17が主軸1Aのテーパ穴9内に強く引き込まれたときに、
図2に示すように、ガイド位置決め突部11の全体が受け溝部19内に強制的に挿入されて、共に同一の径R1に設定された受け溝部19の位置決め当接部19cとガイド位置決め突部11の位置決め受部11bとが互いに当接する。このとき、フランジ部12のホルダ端面18と主軸1Aの主軸端面10とは当接しない配置で互いに対面するよう設定されているので、クランプ力Fcが、受け溝部19の位置決め当接部19eとガイド位置決め突部11の位置決め受部11bとを直接的に密接させるように作用する。ここで、位置決め当接部19eと位置決め受部11bとが共に同じ径R1に設定されているから、ツールホルダ2Aは、主軸1Aに対し各々の回転軸心C1,C2が互いに一致する相対配置となるように自動的に位置補正されて高精度に位置決めされる。また、
図2に明示するように、ツールホルダ2Aの受け
溝部19の円形の位置決め当接部19cは、ガイド位置決め突部11のガイド受面11aの膨出根元部に当接する。
【0035】
この工作機械では、ツールホルダ2Aの受け溝部19の位置決め当接部19cが主軸1Aのガイド位置決め突部11の位置決め受け部11bにクランプ力Fcで押し付けられるともに、受け溝部19の円形の位置決め当接部19cがガイド位置決め突部11のガイド受面11aの膨出根元部にクランプ力Fcで押し付けられることにより、ツールホルダ2Aが主軸1Aに固定される。したがって、この工作機械は、テーパ穴とテーパシャンク部との密着によりツールホルダを主軸に取り付ける構造の従来の工作機械とは異なり、ツールホルダ2Aの受け溝部19における2箇所が軸心方向へのクランプ力により主軸1Aに押し付けられて固定されるので、主軸1Aが高速回転したときに発生する遠心力によるテーパ穴9の拡径に起因して生じるテーパシャンク部17の把持力の低下やツールホルダ2Aの軸心方向への変位といった不具合が発生することがなく、これらの発生に伴う被加工物の加工精度の低下を招くことがない。
【0036】
しかも、ツールホルダ2Aは、主軸1Aへの取り付けに際してテーパシャンク部17がテーパ穴9に挿入されるときに、主軸1Aのガイド位置決め突部11が自体の受け溝部19内に嵌め入れられることにより、上述したように、自体の回転軸心C2が主軸1Aの回転軸心C1に一致するようにガイドされて、主軸1Aに対し高精度に位置決めされる。このツールホルダ2Aの主軸1Aに対する位置決めは、受け溝部19内にガイド位置決め突部11がクランプ力により強制的に嵌め込まれるときに行われるから、容易に、且つ確実に達成できる。そのため、この工作機械は、主軸1Aが高速回転されたときにも、主軸1Aにびびり振動が発生するのが極力抑制されるので、これによっても被加工物の加工精度の低下を一層確実に阻止できる。
【0037】
さらに、この工作機械では、ツールホルダ2Aが主軸1Aに取り付けられたときに、ガイド位置決め突部11が受け溝部19内に入り込んで位置決め受部11bが位置決め当接部19cに当接されるのに加えて、受け溝部19の外周側溝壁面19dにおける支持当接部19eが、ガイド位置決め突部11の湾曲状に膨出するガイド受面11aを把持する配置で係合する。これにより、ツールホルダ2Aは、径方向の異なる2箇所が主軸1Aに係合された状態で主軸た1Aに取り付けられることから、主軸1Aが高速回転したときにも主軸1Aに対しこれの径方向へ向け変位するのが確実に阻止される。さらに、主軸1Aが高速回転するのに加えて、被加工物からの反力による大きな曲げ荷重が加わった場合であっても、ツールホルダ2Aの曲げ剛性の低下を招くことがなく、被加工物の加工精度が一層向上する。
【0038】
図4は本発明の第2実施形態に係る工作機械の要部の断面図、
図5は
図4の分解断面図をそれぞれ示し、これらの図において、
図2および
図3と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この工作機械が第1実施形態のものと相違するのは以下に説明する構成のみである。すなわち、
図5に示すように、主軸1Bの取付基部7の主軸端面10からリング形状に突設されたガイド位置決め突部30は、リング形状の内周面30aが、テーパ穴9の周端部の径R2を保ったまま主軸1Bの回転軸心C1に対し平行方向に開口部8まで延出されている。また、ガイド位置決め突部30は、開口部8の開口周端から主軸端面10にかけて湾曲形状に膨出するガイド受面30bを有し、このガイド受面30bと主軸端面10との境界角部が所定の外径R4を有する位置決め受部30cになっている。
【0039】
一方、ツールホルダ2Bの環状の受け溝部31は、内周側溝壁面31aがガイド位置決め突部30の内周面30aの内径R3よりも僅かに大きな径R2に設定されて、ガイド位置決め突部30が嵌まり込むことができるようになっている。受け溝部31の溝底面31
bは、ガイド位置決め突部30における主軸端面10から回転軸心C1に沿った突出長よりも僅かに大きな溝深さ位置に形成されて、受け溝部31にガイド位置決め突部30の全体が嵌まり込んだときに、ガイド位置決め突部30における回転軸心C1に沿った突出先端部が溝底面31bに当接しないように設定されている。受け溝部31の外周側溝壁面31cは、回転軸心C1に対し溝開口に向け拡径する傾斜面に形成されて、この外周側溝壁面31cとホルダ端面18との境界角部により円形の位置決め保持部31dが形成されている。この位置決め保持部31dは、ガイド位置決め突部30の位置決め受部30cと同じ径R4に設定されて、受け溝部31内にガイド位置決め突部30の全体が嵌まり込んでホルダ端面18が主軸端面10に当接したときに、位置決め受部30cに係合する。
【0040】
この工作機械においても、第1実施形態の工作機械と同様に、ツールホルダ2Bがフランジ部12を把持した状態で移送されて主軸1Bに取り付けられる際に、
図5に示すように、ツールホルダ2Bの回転軸心C2が主軸1Bの回転軸心C1に対してずれた相対配置でツールホルダ2Bのテーパシャンク部17が主軸1Bのテーパ穴9に挿入されても、
図4に示すように、各々の軸心C1,C2が互いに一致するようにツールホルダ2Bの主軸1Bに対する相対位置が自動的に修正されて、ツールホルダ2Bが主軸1Bに位置決めされる。
【0041】
すなわち、
図5に示すように主軸1Bとツールホルダ2Bの各々の軸心C1,C2が互いにずれた配置でテーパシャンク部17がテーパ穴9に挿入された場合、テーパシャンク部17の外周面が、テーパ穴9の開口部8の開口周端、つまりガイド位置決め突部30の開口周端に摺動することにより、ツールホルダ2Bの主軸1Bに対する相対位置が、受け溝部31内にガイド位置決め突部30が入り込めるようにガイドされる。受け溝部31の内周側溝壁面31aの径R2はガイド位置決め突部30の内周面30aの径R3よりも僅かに小さく設定されているので、受け溝部31の内周側溝壁面31aにガイド位置決め突部30の内周面30aが嵌まり込んだ時点で、ツールホルダ2Bはこれの回転軸心C2が主軸1Bの回転軸心C1にほぼ合致するように位置修正される。
【0042】
そして、クランプ機構20のクランプ力によりツールホルダ2Bのテーパシャンク部17が主軸1Bのテーパ穴9内に強く引き込まれたときに、
図4に示すように、ガイド位置決め突部30の全体が受け溝部31内に強制的に挿入される。これにより、共にほぼ同一の径R4に設定された受け溝部31の位置決め保持部31dとガイド位置決め突部30の位置決め受部30cとが互いに密接されるから、ツールホルダ2Bが、主軸1Bに対し各々の回転軸心C1,C2が互いに一致する相対配置に確実に、且つ高精度に位置決めされる。ツールホルダ2Bのホルダ端面18は、主軸1の主軸端面10にクランプ力により強く押し付けられて、ツールホルダ2Bが主軸1Bに固定される。このとき、受け溝部31の溝底面31bとガイド位置決め突部30の突出端とは当接しない状態で互いに対面するよう設定されているので、クランプ力が、ツールホルダ2Bのホルダ端面18を主軸1Bの主軸端面10に押し付ける押圧力として直接的に作用するので、ツールホルダ2Bが主軸1Bに強固に固定される。
【0043】
この工作機械では、ツールホルダ2Bが、受け溝部31よりも外周側のホルダ端面18が主軸1Bの主軸端面10にクランプ力Fcによって押し付けられることにより主軸1Bに固定される。そのため、この工作機械は、テーパ穴とテーパシャンク部との密着によりツールホルダを主軸に取り付ける構造の従来の工作機械とは異なり、主軸1Bが高速回転したときに発生する遠心力によるテーパ穴9の拡径に起因して発生するテーパシャンク部17の把持力の低下やツールホルダ2Bの軸方向へ変位といった不具合が無関係となるから、曲げ剛性および耐びびり振動性の低下を招くことがなく、被加工物を高い加工精度で加工することができる。
【0044】
また、この工作機械では、ツールホルダ2Bを主軸1Bに取り付ける際に、ツールホルダ2Bの受け溝部31内に主軸1Bのガイド位置決め突部30がクランプ力の付与を受けて嵌まり込むことにより、共に同じ径R4に設定されているツールホルダ2Bの位置決め保持部31dと主軸1Bの位置決めガイド受部30cとが係合して、ツールホルダ2Bが、自体の回転軸心C2が主軸1Bの回転軸心C1に一致するように位置修正されて、主軸1Bに対して容易に、且つ高精度に位置決めされる。また、受け溝部31内にガイド位置決め突部30の全体が嵌まり込んだときには、主軸1Bの位置決めガイド受部30cにツールホルダ2Bの位置決め保持部31dが係合することにより、上述のようにツールホルダ2Bが主軸1Bに対し高精度に位置決めされるのに加えて、ツールホルダ2Bが主軸1Bに対し径方向へ変位するのを阻止するように作用する。そのため、この工作機械においても、主軸1Bが高速回転された場合であってもツールホルダ2Bにびびり振動が発生しようとするのが極力抑制され、これによっても被加工物の加工を高精度に行える。
【0045】
図6は本発明の第3実施形態に係る工作機械の要部の断面図、
図7は
図6の分解断面図をそれぞれ示し、これらの図において、第1実施形態を示す
図2および
図3と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図7に示すように、主軸1Cの取付基部7の主軸端面10からリング状に突設されたガイド位置決め突部32は、リング状の内周面32aがテーパ穴9に連続するテーパ角を有する傾斜面に形成されて、その先端がテーパ穴9の開口部8になっており、この点は第1実施形態と同様である。そして、この工作機械が第1実施形態のものと相違するのは以下のような構成である。すなわち、リング状のガイド位置決め突部32の外周面32bは、主軸1Cの回転軸心C1に対し平行面に形成され、この外周面32bの突出先端部から径方向外方に向け突出する断面半円形状の円環状となったガイド位置決め受部32cが膨出形成されている。
【0046】
一方、ツールホルダ2Cの受け溝部33の内周側溝壁面33aは、テーパシャンク部17の外面と同じテーパ角を有してテーパシャンク部17を延出させる配置で形成されている。受け溝部33の溝底面33bは、ガイド位置決め突部32の突出長とほぼ同じ溝深さ位置に形成されている。受け溝部33の外周側溝壁面33cは、ツールホルダ2Cの回転軸心C2に平行な面に形成され、ガイド位置決め受部32cの径方向外方の頂部の外径つまりガイド位置決め突部32の外径R5とほぼ同じ径R5に設定されている。
【0047】
この工作機械においても、第1実施形態の工作機械と同様に、ツールホルダ2Cがフランジ部12を把持した状態で移送されて主軸1Cに取り付けられる際に、
図7に示すように、ツールホルダ2Cの回転軸心C2が主軸1Bの回転軸心C1に対しずれた相対配置でツールホルダ2Cのテーパシャンク部17が主軸1Cのテーパ穴9に挿入されても、
図6に示すように、各々の軸心C1,C2が互いに一致するように相対位置が自動的に修正されてツールホルダ2Cが主軸1Cに位置決めされる。
【0048】
すなわち、
図7に示すように主軸1Cとツールホルダ2Cの各々の軸心C1,C2が互いにずれた配置でテーパシャンク部17がテーパ穴9に挿入されても、ガイド位置決め突部32の先端のガイド位置決め受部32cが受け溝部33の開口周縁に当接した時点でツールホルダ2Cがクランプ機構のクランプ力で引っ張られることにより、受け溝部33の外周側溝壁面33cの開口周端部が、ガイド位置決め突部32のガイド位置決め受部32cにおける断面半円形状のガイド面に摺接しながらガイドされることにより、受け溝部33の外周側溝壁面33c内にガイド位置決め受部32cの頂部が入り込む状態となる。つまり、ガイド位置決め突部32におけるガイド位置決め受部32cを含む部分が受け溝部33内に密接状態に嵌まり込む。ここで、受け溝部33の外周側溝壁面33cがガイド位置決め突部32のガイド位置決め受部32cの外径R5とほぼ同じ径R5に設定されているから、ツールホルダ2Cは、主軸1Cに対し各々の回転軸心C1,C2が互いに一致する相対配置に確実に位置修正されて、主軸1Cに対し容易に、且つ高精度に位置決めされ
る。
【0049】
そして、ツールホルダ2Cがクランプ方向に向けさらに引っ張られることにより、
図6に示すように、ツールホルダ2Cのホルダ端面18が主軸1Cの主軸端面10にクランプ力で押し付けられて、ツールホルダ2Cが主軸1Cに固定される。したがって、この工作機械においても、テーパ穴とテーパシャンク部との密着によりツールホルダを主軸に取り付ける構造の従来の工作機械とは異なり、主軸1Cが高速回転したときに発生する遠心力によるテーパ穴9の拡径に起因して発生するテーパシャンク部17の把持力の低下やツールホルダ2Cの軸方向へ変位といった不具合が発生することがなく、曲げ剛性および耐びびり振動性の低下を招くことがないので、被加工物を高精度に加工することができる。
【0050】
さらに、この工作機械においても、ツールホルダ2Cは、受け溝部33内に嵌まり込んだガイド位置決め突部32によって径方向への変位が阻止される。そのため、主軸1Cが高速回転されたときにも、ツールホルダ2Cにびびり振動が発生しようとするのが極力抑制されるので、これによっても被加工物を高精度に加工することができる。
【0051】
図8は本発明の第4実施形態に係る工作機械の要部の断面図を示し、同図において、第1実施形態を示す
図2と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この工作機械が第1実施形態のものと相違するのは以下の構成のみである。すなわち、この工作機械は、第1実施形態のガイド位置決め突部11および受け溝部19を設けずに、ツールホルダ2Dのホルダ端面18の全体が主軸1Dの主軸端面10に押し付けられることによりツールホルダ2Dが主軸1Dに固定されるようになっている。また、主軸1Dのテーパ穴9には、所定の膨出高さで径方向内方へ向け断面湾曲形状で膨出する位置決め環状条部34が、テーパ穴9の周面に沿って形成されている。この位置決め環状条部34は、複数形成されているが、いずれの位置決め環状条部34においても、テーパ穴9内に全体が嵌め入れられた状態のテーパシャンク部17への各対向箇所の外径にほぼ等しい内径に設定されている。換言すると、各位置決め環状条部34は、これらの内部を貫通したテーパシャンク部17をツールホルダ2Dと主軸1Dとの各々の回転軸心C1,C2が一致するように位置決めできる内径に形成されている。したがって、ツールホルダ1Dのテーパシャンク部17の全体がクランプ力によりテーパ穴9内に嵌め入れられたときには、テーパシャンク部17が各位置決め環状条部34を貫通することにより、ツールホルダ2Dが、自体の回転軸心C1が主軸1Dの回転軸心C1に一致するように位置決めされる。
【0052】
この工作機械においても、主軸1Dとツールホルダ2Dの各々の軸心C1,C2が互いにずれた配置でテーパシャンク部17がテーパ穴9に挿入されても、クランプ機構のクランプ力によってツールホルダ2Dのテーパシャンク部17がテーパ穴9の各位置決め環状条部34に対し所定の相対位置まで貫通されたときに、ツールホルダ2Dが、自体の回転軸心C1が主軸1Dの回転軸心C1に一致するように高精度に位置決めされる。そのため、主軸1Dが高速回転されたときにも、ツールホルダ2Dにびびり振動が発生しようとするのが極力抑制されるので、被加工物を高精度に加工することができる。
【0053】
また、この工作機械は、ツールホルダ2Dが、これのホルダ端面18がクランプ力によって主軸1Dの主軸端面10に押し付けられることにより主軸1Dに固定されるので、主軸1Dが高速回転したときにもテーパシャンク部17の把持力の低下やツールホルダ2Dの軸方向への変位といった不具合の発生が無関係となり、曲げ剛性および耐びびり振動性の低下を招くことがないので、被加工物を高精度で加工することができる。特に、この工作機械は、構造が簡単である利点がある。
【0054】
なお、本発明は、以上の実施形態で示した内容に限定されるものでなく、本発明の要旨
を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。