【文献】
Moriyuki Sato, Atsumi Kogawa,Preparation and thermal properties of semi-rigid homopoly(imide-carbonate)s composed of symmetric aromatic diimide units using diphenyl carbonate,European Polymer Journal,2001年,37,1151-1157
【文献】
Moriyuki Sato, Tomohiro Hirata, Ken-ichi Mukaida,Thermotropic liquid-crystalline aromatic-aliphatic polyimides, 6 Poly(ester-imide)s based on 3,4:3',4'-biphenyldicarboximide,Macromol. Rapid Commun.,1994年,15,203-209
【文献】
Tomohiro Hirata, Moriyuki Sato, Ken-ichi Mukaida,Thermotropic liquid-crystalline aromatic-aliphatic polyimides, 3 Poly(imide-carbonate)s based on 3,4:3',4'-biphenyldicarboximide,Macromol. Chem. Phys.,1994年,195,1611-1622
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリエステル、それから作成されるフィルム、及びそれらの合成方法に関する。特に、本発明は、新規なポリ(アルキレンナフタレート)のコポリマーに関し、特に、改良された耐熱性及び熱機械的安定性を示すポリ(エチレンナフタレート)(PEN)に関する。
【0002】
ガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)および結晶化度は、ポリエステルの熱機械的特性を決定する重要なパラメータである。これまでの研究では、熱可塑性ポリマー、主にホモポリマーのTgを増加させることには成功しているが、典型的には、対応してTmの増加を伴うものであった。熱可塑性ポリマーは、溶融加工性(例えば、押出機中で)も有しているべきであり、好ましくは経済的な条件下(例えば、約320℃未満、好ましくは従来の押出機を使用することができる300°C未満)で溶融加工性を有しているべきであることから、このようなTmの増加は不利になり得る。より高い処理温度では、ポリマー押出は、高価な専用機器及び大量のエネルギーを必要とし、また典型的には分解生成物につながる。溶融加工温度は、ポリマーの分解温度よりも十分に低くなくてはならない(例えば、少なくとも約20℃程度低い)。いくつかの場合では、Tmを維持した上でTgを増加させるためにコモノマーがポリマーに導入されてきたが、分解温度とTmとの一致にもつながり、これは溶融物中での分解生成物の生成をもたらす。
【0003】
より硬いコモノマーの導入によってポリエステルのガラス転移温度を高める試みもまた、多くなされてきた。しかしながら、そのようなコモノマーはまた、ポリマー鎖を結晶格子に組むことを妨害し、Tgが増加する一方で、典型的にはTm及び結晶化度の両方がコモノマー部分が増加するに従い減少し、最終的にはアモルファス材料になる。ポリマー材料から製品を作成するために、ポリマーが結晶性を示し、許容可能な熱機械的特性を有する製品を実現することが、しばしば重要となる。
【0004】
PENは、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET;Tg=78°C)に比べて高いガラス転移温度(Tg=120°C)を有する半結晶性コポリマーであるが、それらの結晶融点は大きくは異ならない(Tm=268°C(PEN)、260°C(PET))。PENの熱機械的安定性は、PETのそれよりも著しく大きい。より硬いコモノマーの導入によりTgを向上させる多くの試みでは、PENよりも極めて安価なPETに焦点があてられてきた。PENよりも高いTgを有する市販の半結晶性ポリエステルは存在しない。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、高Tg(約143−146°C)半結晶性熱可塑性ポリマーの数少ない例のうちの一つであり、工学および生物医学的用途において使用実績がある。しかし、PEEKは、特定の種類の製品についてのみ適しており、例えば二軸延伸フィルムの製造には適していない。PEEKはまた、非常に高価であり、高い結晶融点(約350°C)を有している。
【0005】
本発明の目的は、改良された耐熱性および熱機械的安定性を示すポリエステルを提供することにある。本発明の更なる目的は、経済的条件下でポリマーが溶融加工性を有さなくなる程度にまでTmを増大させることなく(すなわち、ポリマーが約320℃未満、好ましくは300℃未満で熱加工性を有するように)、高い又は増加したTgを有する熱可塑性ポリマーを提供することにある。本発明の更なる目的は、高Tgかつ高Tmを示す、半結晶性ポリエステルを提供することである。本発明の更なる目的は、そのTm及び/又は結晶化度をそれほど低下させること無く、好ましくはその分解温度をさほど低下させること無く、ポリエステルのTgを増加させることである。
【0006】
本明細書で使用される場合、用語「Tmをさほど減少させることなく」とは、Tmの減少が10%を超えないこと、好ましくは5%を超えないことを意味する。
【0007】
本明細書で使用される場合、用語「結晶化度をそれほど減少させること無く」とは、ポリエステルが商業上有益な結晶化度、好ましくは、約10%〜約60%、好ましくは約20%〜約50%の範囲の結晶化度を保持することを意味する。
【0008】
本発明のさらなる目的は、そのTm及び/又は結晶化度をさほど低下させることなく、好ましくはその分解温度をさほど低下させること無く、対応ベースポリエステルよりも高いTgを有するコポリエステルを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、従来のポリエステルにおけるモノマーの部分置換に適しており、Tm及び/又は結晶化度をさほど低下させること無く、好ましくは分解温度をさほど低下させること無く、前記ポリエステルのTgを増加させるコモノマーを提供することである。
【0010】
本発明の目的はTmの増加を排除するものではないが、あらゆるTmの増加は、溶融加工が不経済的となり、Tm及び分解温度が一致するほどに大きいものであってはらならない。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「コポリエステル」は、エステル結合を含み、3種類以上のコモノマーから誘導されるポリマーを意味する。本明細書で使用される場合、用語「対応ベースポリマー」は、エステル結合を有し、エステル形成官能基を有する2種類のコポリマーから誘導されるポリマーであり、対応ベースポリエステルのコモノマーを含むコモノマーから誘導されるコポリエステルの比較対象とされるポリマーを意味する。エステル形成官能基を有するコモノマーは、好ましくは、2つのエステル形成官能基を有する。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「半結晶性」とは、本明細書に記載される試験に従って測定される少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%の結晶化度を意味する。
【0013】
本発明は、脂肪族グリコール、ナフタレンジカルボン酸、および式(I)のモノマーから誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを提供する。
【化1】
式中、nは2、3又は4であり、好ましくは、2である。
【0014】
驚いたことに、本発明者らは、今回、特定のコモノマー(I)をナフタレートポリエステルに組み込むことにより、単にTgが実質的に増加するだけでなく、Tmをさほど減少させること無く、結晶化度をさほど損なうことなく、Tgが増加することを見出した。本発明のコポリエステルは熱可塑性である。本明細書に記載されるコポリエステルは、半結晶特性を示す。本発明のコポリエステルは、容易に高分子量で得ることができる。本発明に係るコポリエステルは、320℃未満(好ましくは300℃未満)で高強度製品に溶融加工することができる。本明細書において、コポリエステルは、コ(ポリエステル−イミド)とも呼ばれる。
【0015】
コモノマー(I)は、コポリエステルのグリコール部分の一部を構成する。好ましい実施態様において、コモノマー(I)は、コポリエステルのグリコール部分の約1〜約50モル%の範囲で存在し、好ましくは約1〜約40モル%、好ましくは約1〜約30モル%、好ましくは少なくとも約5モル%、より好ましくは少なくとも約8モル%、好ましくは約25モル%以下、好ましくは約22モル%以下であり、一実施態様において約10〜20モル%の範囲で存在する。より好ましい実施態様では、コモノマー(I)は、コポリエステルのグリコール部分の約5〜約25モル%の範囲で存在し、好ましくは約5〜20モル%、好ましくは約5〜約15モル%である。本発明者らは、コモノマー(I)のモル分率が低い場合であっても、Tgが少ないながらも有効に増加することを見出した。例えば、nが2であるコモノマー(I)を5モル%だけ含むPENをベースとするコポリエステルは、約9℃のTgの上昇を示す。上記のようにコモノマー(I)のモル分率がより高い場合、高い値のTm及び結晶化度を伴ってTgが更に有効に増加し、上述のように約320℃を超える溶融加工が一般的にはより高コストであるにもかかわらず、有益な特性を得ることができる。
【0016】
コポリエステルのナフタレンジカルボン酸成分は、2,5−、2,6−、又は2,7−ナフタレンジカルボン酸から選択することができ、好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸である。
【0017】
脂肪族グリコールは、好ましくは、C
2、C
3又はC
4脂肪族ジオールから選択され、より好ましくはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールから選択され、より好ましくはエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールから選択され、最も好ましくはエチレングリコールである。脂肪族グリコールにおける炭素原子数は、コモノマー(I)中の数(n)と同じであっても異なっていてもよいが、結晶性を維持するため、特にコモノマーの量を増加させて結晶性を維持するために、同じであることが最も好ましい。すなわち、脂肪族グリコールは、好ましくは式HO(CH
2)
mOHを有し、ここでm=nである。
【0018】
一実施態様において、脂肪族グリコールは1,4−ブタンジオールであり、n=4である。好ましい実施態様において、脂肪族グリコールはエチレングリコールであり、n=2である。
【0019】
酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸から選択されるコポリエステルは、下記式(II)によって記述することができる。
【化2】
式中:
nは式(I)で定義された通りであり;
基Xは、前記脂肪族グリコールの炭素鎖であり;
p及びqは、それぞれ、脂肪族グリコールを含有する繰り返しエステル単位及びモノマー(I)を含有する繰り返しエステル単位のモル分率であり、すなわち、qは1〜50(好ましくは少なくとも8)であり,pは「100−q」である。
【0020】
一実施態様において、コポリエステルは、1種類を超える脂肪族グリコール及び/又は、1種類を超えるナフタレンジカルボン酸、及び/又は、1種類を超える式(I)のモノマーを含んでいていてもよい。しかしながら、好ましくは、コポリエステルは、単一の種類の脂肪族グリコールを含有する。好ましくは、コポリエステルは、単一の種類のナフタレンジカルボン酸を含有する。好ましくは、コポリエステルは、単一の種類の式(I)のモノマーを含有する。好ましくは、コポリエステルは、単一種類の脂肪族グリコールと、単一種類のナフタレンジカルボン酸と、単一種類の式(I)のモノマーとを含有する。
【0021】
コポリエステルは、少量の他のグリコールを含有していてもよく、好ましい実施態様において、そのような他のグリコールは、総グリコール部分の10モル%以下、好ましくは5モル%以下、好ましくは1モル%以下であるが、最大限に性能を高めるために、グリコール部分はコモノマー(I)及び上述の脂肪族グリコールからなることが好ましい。
【0022】
本発明のコポリエステルは、少量(好ましくは総酸成分の10モル%以下、好ましくは5モル%以下、好ましくは1モル%)の1以上の他のジカルボン酸(好ましくは、芳香族ジカルボン酸)を含んでいてもよく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,6−ヘキサンジオールを含んでいてもよい。しかしながら、好ましくは、酸成分は、ナフタレンジカルボン酸からなる。
【0023】
すなわち、本発明のコポリエステルは、好ましくは、脂肪族グリコール、ナフタレンジカルボン酸及び上記で定義された式(I)のモノマーのみを含む。
【0024】
本発明のコポリエステルは、典型的には約310℃までの温度で縮合またはエステル交換によりポリエステル材料を製造する、公知の技術に従って合成することができる。重縮合は、固相重合工程を含んでいてもよい。固相重合は、流動床中、例えば窒素による流動床中又は真空流動床中、回転式真空乾燥機を用いて実施することができる。適切な固相重合技術は、例えば、参照によってその開示が本明細書に取り込まれるEP−A−0419400に開示されている。一実施態様において、コポリエステルは、汚染物質(例えば触媒残渣、望ましくない無機堆積物、及びポリマー製造時における他の副生成物)の濃度が低減されたポリマー材料を与えるゲルマニウム系触媒を用いて調製される。一実施態様では、後述のスキーム(1)に例示されるように、脂肪族グリコールをナフタレンジカルボン酸と反応させてビス(ヒドロキシアルキル)−ナフタレートを生成し、次いで、高温高圧条件下、触媒の存在下で、所望のモル比でモノマー(I)と反応させる。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、式(I)の化合物が提供される。
【化3】
式中、nは2,3又は4であり,好ましくは2である。
【0026】
本発明の更なる態様によれば、式(I)の化合物の合成方法が提供され、この方法は、4,4’−ビフタル酸無水物(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)としても知られる)を、式HO(CH
2)
nNH
2(式中、nは2,3又は4)で表されるアルカノールアミンと溶媒中で接触させる工程と、混合物を加熱(好ましくは、約110〜約140°Cの温度範囲まで、約6〜約15時間)する工程とを含む。適当な溶媒としては、トルエンとDMAcとの混合物が挙げられる。反応中、例えば共沸蒸留により、副生成物の水が反応系から適切に除去される。合成及び単離における更なる工程は、典型的には、以下の工程を含む。
(i)加熱する工程の後に、高温の反応混合物をほぼ同体積の水に加え、次いで攪拌し、ろ過し、洗浄し(例えば、水、続いてメタノールを用いる)、乾燥させる工程。
(ii)乾燥した固形材料を水中で沸騰させ、残留溶媒を除去し、次いで加熱ろ過し、メタノールで洗浄し、乾燥させる工程。
【0027】
本発明のコポリエステルは、高温にさらされる用途及び高い熱機械的特性が要求される用途での使用に特に適している。本発明のコポリエステルは、PEEKが使用されてきた用途における製品の製造用に用いられてもよく、それらには、機械部品(例えばベアリング、ピストン部品、ポンプ、圧縮板バルブ);ケーブル絶縁体;超高真空用途用部品;高性能バイオマテリアル(医療用インプラントを含む);及び航空宇宙産業、自動車産業、テレトロニック産業並びに化学プロセス産業における他の用途が含まれる。PEEKに対する本発明に係るコポリエステルの利点は、さほどTmを低下することなく、匹敵するTgを示す点にある。本発明に係るコポリエステルは、繊維の形態又は成形組成物として用いることができる。
【0028】
本発明の更なる態様によれば、脂肪族グリコール、ナフタレンジカルボン酸及び上述の式(I)で定義されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含有する繊維又は成形組成物若しくは成形品が提供される。繊維若しくは成形組成物又は成形品は、当業界における公知の技術に従って製造され得る。
【0029】
本発明のコポリエステルはまた、フィルム製造にも適している。二軸延伸フィルムは、特に磁気記録媒体用のベースフィルムとして有用であり、特に、狭いが安定したトラックピッチを実現し、高密度記録若しくは高情報容量を実現するためにトラックずれが低減されることが要求される磁気記録媒体(例えば、LTO(Linear Tape Open)フォーマットのようなサーバーバックアップ/データ記憶装置に適した磁気記録媒体)用のベースフィルムとして、有用である。また、本発明のコポリエステルは、熱機械的に安定なバックプレーンが最終製品の製造にあたり重要である電子及び光電子デバイス(特に、フィルムがフレキシブルであることが求められるもの)において使用されるフィルム(好ましくは、二軸延伸フィルム)の製造に適しており、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置(特に、有機発光ディスプレイ(OLED)デバイス)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、太陽電池(PV)及び半導体装置(有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ、集積回路一般など)の製造に適しており、特にフレキシブルなそのような装置に適している。
【0030】
本発明の更なる態様によれば、脂肪族グリコール、ナフタレンジカルボン酸、及び上記の通り定義される式(I)のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有するコポリエステルを含むフィルムが提供される。フィルムは、好ましくは延伸フィルム、好ましくは二軸延伸フィルムである。前記コポリエステルは、好ましくはフィルムの主成分であり、フィルムの総重量の少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%を占める。前記コポリエステルは、好ましくはフィルムにおいて使用される唯一のポリエステルである。
【0031】
本発明のコポリエステルがフィルム又は他の製品に成形される場合、コポリエステルにおけるコモノマー(I)の好適な量は、コポリエステル自体について上述した好ましい範囲であり、好ましくはコポリエステルにおけるグリコール部分の約5〜約25モル%、好ましくは約5〜約20モル%、好ましくは約5〜約15モル%である。
【0032】
フィルムの形成は、当技術分野で周知の従来の押出技術によって実施することができる。概略的には、そのプロセスは、溶融ポリマーの層を適切な温度範囲の温度、例えば約280〜約300°Cの範囲で押し出す工程、押出物を急冷する工程、及び急冷された押出物を延伸させる工程を含む。延伸は、延伸フィルムを製造するための当技術分野において公知のあらゆるプロセス、例えば、インフレーション成形法又はフラットフィルムプロセスにより、実施できる。二軸延伸は、フィルム面内における2つの相互に直交する方向への延伸によって実施され、機械的および物理的特性の満足する組合せを実現する。インフレーション法では、熱可塑性ポリエステルチューブを押出し、続いて急冷し、再加熱し、次いで内部ガス圧によって膨張させて横延伸を誘起し、縦延伸を誘起するような速度で引き出すことにより、同時二軸延伸が実現される。好ましいフラットフィルムプロセスでは、フィルム形成ポリエステルをスロットダイを通じて押し出し、冷却キャスティングドラム上で急冷することで、ポリエステルがアモルファス状態にまで急冷されることを保証する。続いて、急冷された押出物をポリエステルのガラス転移温度を超える温度で少なくとも1方向に引き延ばすことにより、延伸が実施される。急冷されたフラットな押出物を、まず1方向、通常縦方向、すなわちフィルム引き出し装置の順方向に引き延ばし、続いて横方向に引き延ばすことで、連続的な延伸を実施してもよい。押出物の順方向への引き延ばしは、回転ロールの組の上で又は2組のニップロール間で簡便に実施され、続いて横方向への引き伸ばしがテンター装置で行われる。引き伸ばしは一般に、延伸フィルムの寸法が、引き伸ばし方向またはそれぞれの引き伸ばし方向において、その当初の寸法の2から5倍、より好ましくは2.5から4.5倍になるように行われる。典型的には、引き伸ばしは、ポリエステルのTgよりも高い温度、好ましくはTgよりも約15℃高い温度で行われる。一方向での延伸しか必要とされない場合、より大きな延伸比(例えば、約8倍まで)を使用してよい。装置方向および横方向に均等に引き伸ばすことは、必ずしも必要ではないが、バランスのとれた性質が望まれる場合は好ましい。
【0033】
延伸フィルムは、所望するポリエステルの結晶化を誘発させるため、ポリエステルのガラス転移温度よりも高い温度で、しかしその溶融温度よりも低い温度で、寸法支持下でヒートセットすることにより、寸法を安定化させてもよく、また寸法を安定させることが好ましい。ヒートセット中、「トウイン」として知られる手順により、少量の寸法緩和を横方向TDで行うことができる。トウインでは、2から4%程度の寸法収縮をもたらすことができるが、プロセス方向または装置方向MDにおける同様の寸法緩和は、低い線張力が必要でありかつフィルムの制御および巻取りが問題となるので、実現するのが難しい。実際のヒートセット温度および時間は、フィルムの組成およびその所望の最終熱収縮に応じて変わることになるが、引裂き抵抗などのフィルムの靱性が実質的に低下するように選択すべきではない。これらの制約の範囲内で、約180から245℃のヒートセット温度が一般に望ましい。ヒートセット後、所望するポリエステルの結晶化を誘発させるため、フィルムは典型的には急冷させられる。
【0034】
一実施態様において、フィルムは更に、インライン緩和工程の使用により安定化させられてもよい。若しくは、緩和処理は、オフラインで実施されてもよい。この追加工程において、フィルムはヒートセット工程よりも低い温度で、より低いMD及びTD張力で、加熱される。フィルムが受ける張力は低張力であり、典型的にはフィルム幅において5kg/m未満、好ましくは3.5kg/m未満,より好ましくは1〜約2.5kg/mの範囲,典型的には1.5〜2kg/mの範囲である。フィルム速度を制御する緩和工程において、フィルム速度の減少(つまり歪緩和)は、典型的には0〜2.5%の範囲であり、好ましくは0.5〜2.0%である。熱安定化工程において、フィルムの横方向における寸法の増加はない。熱安定化工程で用いられる温度は、最終フィルムにより所望される特性の組合せに応じて変わり、高温であるほど良好な、すなわち小さい残留収縮率特性が得られる。135〜250℃の温度が一般的には望ましく、好ましくは150〜230℃であり,より好ましくは170〜200℃である。加熱時間は用いられる温度次第であるが、典型的には10〜40秒の範囲であり、20〜30秒が好ましい。熱安定化プロセスは、フラット及び垂直な構成を含む様々な方法によって実施でき、別工程である「オフライン」であってもよく、フィルム製造工程に連続する「インライン」であってもよい。このようにして処理されたフィルムは、そのようなポストヒートセット緩和を行うことなく製造されたフィルムよりも小さな熱収縮を示す。
【0035】
フィルムは、更にポリエステルフィルムの製造に用いられるあらゆる他の公知の添加剤を含有することができる。すなわち、抗酸化剤、UV吸収剤、加水分解安定剤、架橋剤、染料、充填剤、顔料、ボイド形成剤、潤滑剤、ラジカル捕捉剤、熱安定剤、難燃剤および阻害剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ助剤、光沢向上剤、分解促進剤、粘度調整剤および分散安定剤などの薬剤が適切に導入されてもよい。そのような成分は、公知の方法でポリマーに導入することができる。例えば、フィルム形成ポリマーが誘導されるモノマー反応物に混合することによって、又は、転動又はドライブレンドによって、若しくは押出機中に混合し、続いて冷却し、通常、微粒又はチップになるように粉砕することによって、成分をポリマーと混合してもよい。マスターバッチ技術もまた用いることができる。フィルムは、特に、製造時のハンドリング性及び巻線性を改善することができ、光学的性質を調節するために用いることができる、微粒子フィラーを含んでいてもよい。例えば、微粒子フィラーとしては、微粒子無機フィラー(例えば、アルミナ、チタニア、タルク、シリカ(特に沈降又はケイソウ土シリカ及びシリカゲル)等の金属又は半金属酸化物、チャイナ・クレーおよびアルカリ金属塩(例えばカルシウム及びバリウムの炭酸塩及び硫酸塩))を用いることができる。
【0036】
フィルムの厚さは、約1〜約500μmとすることができ、典型的には約250μm以下、典型的には約150μm以下である。特に、本発明のフィルムが磁気記録媒体用に使用される場合、多層フィルムの厚みは好ましくは約1〜約10μmの範囲であり、より好ましくは約2から約10μm、より好ましくは約2〜約7μm、より好ましくは約3〜約7μmであり、一実施態様において約4〜約6μmである。フィルムが本明細書で説明される電子及び表示デバイスにおける層として用いられる場合、多層フィルムの厚みは、典型的には約5〜約350μmの範囲であり、好ましくは約250μm以下であり、一実施態様において約100μm以下であり、更なる一実施態様において約50μm以下であり、典型的には少なくとも約12μmであり、より典型的には少なくとも約20μmである。
【0037】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で説明されるフィルム(特に二軸延伸フィルム)を含む電子又は光電子デバイスが提供され、特に、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置(特に、有機発光ディスプレイ(OLED)デバイス)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、太陽電池(PV)及び半導体装置(一般的には有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ、集積回路一般等)などの電子又は光電子デバイスが提供され、特にフレキシブルなそのような装置が提供される。
【0038】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で説明されるフィルム(特に二軸延伸フィルム)をベースフィルムとして含み、更にその一表面上に磁性層を有する磁気記録媒体が提供される。磁気記録媒体としては、例えば、QIC又はDLTのようなリニアトラックシステムデータ記録テープ、及び、より高容量なタイプのSDLT又はLTOが挙げられる。温度/湿度変化によるベースフィルムの寸法変化が小さく、そのため、テープの高容量化を保証するためにトラックピッチを狭くした場合であっても。トラックずれが少ない高密度及び高容量に適した磁気記録媒体が提供される。
【0039】
本明細書において開示される新規化合物の特性を特徴づけるため、次の試験方法を用いた。
(i)ガラス転移温度(Tg);冷結晶化温度(Tcc)、結晶融点(Tm)及び結晶化度(Xc)を、示差走査熱量計(DSC;TA Instruments Universal製 V4.5A machine)を用いて、以下の試験方法に従い、その他の点についてはASTM E1356−98に記述された方法に従って測定した。走査期間中(約1.5〜3時間)、試料を乾燥窒素雰囲気下に置いた。試料(4−6mg)を、20℃/分の速度で20℃から300℃まで加熱し、300℃で5分間保持し、続いて20℃/分の速度で20℃まで冷却し、次いで20℃から350℃まで10℃/分の速度で加熱した。2回目の熱走査時に、熱的性質を記録した。
Tgの値を、ASTM E1356−98に記載されるように、DSC走査時(熱流量(W/g)対温度(℃))に観察されたガラス転移開始温度の外挿値として求めた。
Tcc及びTmの値を、DSC走査から、それぞれの転移において熱流量がピークとなった温度として求めた。
結晶化度(X
c)を、下記式に従って計算した。
X
c=ΔH
m/ΔH
m°
式中、
ΔH
m=溶融吸熱の積分から計算される融解エンタルピーの実験値であり;
ΔH
m°=結晶化度が100%である対応ポリ(アルキレンーナフタレート)ホモポリマー(すなわち、式(I)のコモノマーを有さない)の融解エンタルピーの理論値である。すなわち、エチレングリコール、ナフタレンジカルボン酸、及び式(I)のコモノマー由来の繰り返し単位を含む本発明のコポリエステルについて、ΔH
m°は、文献((B. Wunderlich, Macromolecular Physics, Academic Press, New York, (1976))に規定される、100%結晶性のPENポリマーの理論的融解エンタルピー(103J/g)である。
ここで、結晶化度は、200℃で2時間アニールした試料について測定した。試料のアニールは、DSC加熱サイクル時に実施した。これらの結晶化度測定についての完全な加熱サイクルは、以下の通りである。
(i)20℃/分で20℃から300℃まで加熱。
(ii)300℃で5分間維持
(iii)20℃/分で20℃まで冷却
(iv)20℃/分で200℃まで加熱
(v)200℃で120分間維持
(vi)20℃まで冷却
(vii)10℃/分で20℃から400℃まで加熱
熱特性を、最後の熱走査時に記録した。
(ii)固有粘度(η
inh)を、ポリマーのCHCl
3/TFA(2:1)溶液(25℃、0.1%w/v)について、Schott-Gerate CT-52 auto-viscometer、キャピラリーNo.53103を用いて決定した。固有粘度を、下記式により計算した。
η
inh=ln[(t
2/t
1)/c]
式中、
η
inh=固有粘度(dL/g)
t
1=溶媒の流下時間(s)
t
2=ポリマー溶液の流下時間(s)
c=ポリマー濃度(g/dL)
である。
【0040】
本発明は、更に以下の実施例によって例示される。なお、実施例は単に例示するためのものであり、上述したように、本発明を限定するものではないことが理解されるであろう。本発明の範囲を逸脱しない限り、細部の変更がなされてもよい。
【0041】
実施例
本発明のコポリエステルを調製するための反応スキームが、以下のスキーム1に示される。
【化4】
スキーム1. コモノマー1の合成及びそのビス(ヒドロキシエチル2,6−ナフタレート)との共重合によるコ(ポリエステル−イミド)類(2)の調製(スキーム1中のzは、コポリマー全体における重合度を示す)
【0042】
実施例1:N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4,4’−ビフタルイミド(モノマー1)の合成
【化5】
4,4’−ビフタル酸二無水物(5.65g、19.20mmol)、エタノールアミン(2.4ml、39.37mmol)、DMAc(40ml)およびトルエン(35mL)溶液を250ml丸底フラスコに投入し、130℃で終夜加熱した。
Dean−Stark装置を、副生成物の水を共沸により留去するために使用した。次いで、高温の反応混合物を水(〜400ml)に加え、白色沈殿物を得た。続いて、これを6時間攪拌し、ろ過し、水(2×40ml)及びMeOH(2×40ml)により洗浄し、真空オーブンにより100℃で終夜乾燥させた。生成物を水中(40ml)で4時間沸騰させ、次いで加熱ろ過し、MeOH(2×25ml)で洗浄し、ろ過し、真空オーブンにより80℃で終夜乾燥させることにより、残留溶媒を除去した。単離された生成物は、白色粉状であった。(6.21g,81%), m.p. (DSC) 286 ℃,
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm) 8.22 (m, 4H
b+c), 7.97 (d, J = 8.16 Hz, 2Ha), 4.85 (t, J = 11.96 Hz, 2Hf), 3.67 (t, J = 11.28 Hz, 4Hd), 3.59 (m, 4Hf),
13C NMR (400 MHz, DMSO) 167.48 (C
7+8), 144.00 (C1), 137.17 (C
6), 132.75 (C
4), 131.42(C
3), 123.53 (C
5), 121.68 (C
2), 57.90 (C
9), 40.42 (C
10), IR: 3445, 2944, 1763, 1684, 1384, 1011, 739 cm
-1.
【0043】
実施例2:5モル%のモノマー1を含有するPENのコポリマーの合成
ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2,6−ナフタレート(4.7498g、15.62mmol)、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4,4’−ビフタルイミド(0.3128g、0.82mmol)およびGeO
2(5.2mg、0.04mmol)を、ゴムシールされた攪拌機ガイドとガラス撹拌棒が取り付けられたシュレンク管に投入した。
反応混合物を、不活性窒素雰囲気下、管状炉を用いて、30分かけて200℃まで加熱した。1〜2分をかけて徐々に2.8トルで減圧し、メカニカルスターラーを用いて300rpmで撹拌し、反応混合物を10分間で300℃に加熱した。この温度を、1.5時間維持し、溶融物の粘性がより増加した。その後、窒素を系内にパージし、撹拌機を取り外し、混合物を冷却した。反応管を切断し、ポリマーを含むガラス管を破壊した。ポリマーを、CHCl
3/TFA(2:1)(〜50ml)溶液中で、ガラス及び攪拌機から溶離させ、ガラスをろ過した。褐色溶液を真空中で、〜10−15mlにまで濃縮し、MeOH(〜120ml)中に滴下した。得られた白色ポリマービーズをろ過し、MeOH(2×15ml)で洗浄し、真空オーブン中で終夜乾燥させた。Tg = 128℃, Tcc = 220℃, Tm = 257℃, Td = 425℃, ΔHm = 35 Jg
-1, η
inh = 0.47 dLg
-1. (Tdは、10%の重量減少が観察される温度を意味する) 生成物は、クロロホルム/トリフルオロ酢酸中、及びヘキサフルオロプロパン−2−オール中で完全に溶解した。
【0044】
実施例3:10モル%のモノマー1を含有するPENのコポリマーの合成
ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2,6−ナフタレート(4.5012g,14.79mmol)、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4,4’−ビフタルイミド(0.6253g,1.64mmol)およびGeO
2(5.5mg,0.04mmol)を、ゴムシールされた攪拌機ガイドとガラス撹拌棒が取り付けられたシュレンク管に投入した。反応混合物を、不活性窒素雰囲気下、管状炉を用いて、30分かけて200℃まで加熱した。1〜2分をかけて徐々に3.3トルで減圧し、メカニカルスターラーを用いて300rpmで撹拌し、反応混合物を10分間で300℃に加熱した。この温度を、1.5時間維持し、溶融物の粘性がより増加した。その後、窒素を系内にパージし、撹拌機を取り外し、混合物を冷却した。反応管を切断し、ポリマーを含むガラス管を破壊した。ポリマーを、CHCl
3/TFA(2:1)(〜50ml)溶液中で、ガラス及び攪拌機から溶離させ、ガラスをろ過した。褐色溶液を真空中で、〜10−15mlにまで濃縮し、MeOH(〜120ml)中に滴下した。得られた白色ポリマービーズをろ過し、MeOH(2×15ml)で洗浄し、真空オーブン中で終夜乾燥させた。Tg = 134℃, Tcc = 227℃, Tm = 270 ℃, ΔHm = 32 Jg
-1, η
inh = 0.41 dLg
-1. 生成物は、クロロホルム/トリフルオロ酢酸中、及びヘキサフルオロプロパン−2−オール中で完全に溶解した。
【0045】
実施例4;15モル%のモノマー1を含有するPENのコポリマーの合成
ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2,6−ナフタレート(4.2507g,13.97mmol)、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4,4’−ビフタルイミド(0.9374g,2.46mmol)およびGeO
2(5.1mg,0.04mmol)を、ゴムシールされた攪拌機ガイドとガラス撹拌棒が取り付けられたシュレンク管に投入した。反応混合物を、不活性窒素雰囲気下、管状炉を用いて、30分かけて200℃まで加熱した。1〜2分をかけて徐々に3.8トルで減圧し、メカニカルスターラーを用いて300rpmで撹拌し、反応混合物を10分間で300℃に加熱した。この温度を、3時間維持し、溶融物の粘性がより増加した。その後、窒素を系内にパージし、撹拌機を取り外し、混合物を冷却した。反応管を切断し、ポリマーを含むガラス管を破壊した。ポリマーを、CHCl
3/TFA(2:1)(〜50ml)溶液中で、ガラス及び攪拌機から溶離させ、ガラスをろ過した。褐色溶液を真空中で、〜10−15mlにまで濃縮し、MeOH(〜120ml)中に滴下した。得られた白色ポリマービーズをろ過し、MeOH(2×15ml)で洗浄し、真空オーブン中で終夜乾燥させた。 Tg = 140 ℃, Tcc = 234 ℃, Tm = 278 ℃, Td = 471 ℃, ΔHm = 33 Jg
-1, η
inh = 0.61 dLg
-1. 生成物は、クロロホルム/トリフルオロ酢酸中、及びヘキサフルオロプロパン−2−オール中で完全に溶解した。生成物は、溶融物から結晶化する。
【0046】
実施例5:20モル%のモノマー1を含有するPENのコポリマーの合成
ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2,6−ナフタレート(4.0012g,13.15mmol)、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4,4’−ビフタルイミド(1.2508g,3.29mmol)およびGeO
2(5.2mg,0.04mmol)を、ゴムシールされた攪拌機ガイドとガラス撹拌棒が取り付けられたシュレンク管に投入した。反応混合物を、不活性窒素雰囲気下、管状炉を用いて、30分かけて200℃まで加熱した。1〜2分をかけて徐々に0.7トルで減圧し、メカニカルスターラーを用いて300rpmで撹拌し、反応混合物を10分間で300℃に加熱した。この温度を、2時間維持し、溶融物の粘性がより増加した。その後、窒素を系内にパージし、撹拌機を取り外し、混合物を冷却した。反応管を切断し、ポリマーを含むガラス管を破壊した。ポリマーを、CHCl
3/TFA(2:1)(〜50ml)溶液中で、ガラス及び攪拌機から溶離させ、ガラスをろ過した。褐色溶液を真空中で、〜10−15mlにまで濃縮し、MeOH(〜120ml)中に滴下した。得られた白色ポリマービーズをろ過し、MeOH(2×15ml)で洗浄し、真空オーブン中で終夜乾燥させた。Tg = 143℃, Tm = 286℃, ΔHm = 26 Jg
-1, η
inh = 0.61 dLg
-1. 生成物は、クロロホルム/トリフルオロ酢酸中、及びヘキサフルオロプロパン−2−オール中で完全に溶解した。
【0047】
実施例6:25モル%のモノマー1を含有するPENのコポリマーの合成
ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2,6−ナフタレート(3.7507g,12.32mmol)、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4,4’−ビフタルイミド(1.5625g,4.11mmol)およびGeO
2(5.1mg,0.04mmol)を、ゴムシールされた攪拌機ガイドとガラス撹拌棒が取り付けられたシュレンク管に投入した。反応混合物を、不活性窒素雰囲気下、管状炉を用いて、30分かけて200℃まで加熱した。1〜2分をかけて徐々に4.0トルで減圧し、メカニカルスターラーを用いて300rpmで撹拌し、反応混合物を10分間で300℃に加熱した。この温度を、1.5時間維持し、溶融物の粘性がより増加した。その後、窒素を系内にパージし、撹拌機を取り外し、混合物を冷却した。反応管を切断し、ポリマーを含むガラス管を破壊した。ポリマーを、CHCl
3/TFA(2:1)(〜50ml)溶液中で、ガラス及び攪拌機から溶離させ、ガラスをろ過した。褐色溶液を真空中で、〜10−15mlにまで濃縮し、MeOH(〜120ml)中に滴下した。得られた白色ポリマービーズをろ過し、MeOH(2×15ml)で洗浄し、真空オーブン中で終夜乾燥させた。Tg = 147℃, Tm = 287℃, ΔHm = 44 Jg
-1, η
inh = 0.54 dLg
-1. 生成物は、クロロホルム/トリフルオロ酢酸中、及びヘキサフルオロプロパン−2−オール中で完全に溶解した。
【0048】
実施例の実験データが、下記表1にまとめられている。
テーブル1
【表1】
【0049】
コントロール試料は、純粋なPENであり、N、N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4,4’−ビフタルイミドを用いない点以外は実施例2について説明した手順に従って合成した。
【0050】
上述の実施例2、3及び5のポリマーをそれぞれ溶融圧縮し、熱延伸により元の寸法の少なくとも6倍に延伸することができる、薄い丈夫なフィルム(約0.5mm厚;約2−3mm幅、及び約2cm長)を形成した。また、実施例2及び5を、10%w/w ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)溶液としてガラススライド上に塗布し、乾燥後、強靭なフレキシブルフィルムを得た。
【0051】
実施例7及び8
6モル%(実施例7)又は10モル%(実施例8)のモノマーを含有するコポリマーを、上述の合成方法を用いて、大規模(5ガロン反応器を使用)で製造し、次いで終夜乾燥させ(8時間、150℃)、それらから二軸延伸フィルムを製造した。また、100%PENフィルムをコントロールとして調製した。
【0052】
コポリマーに応じ、275℃から300℃の温度範囲で、ポリマーを押出機(シングルスクリュー;スクリュー速度約80rpm)に供給した。静電的に固定され、キャスティングドラムの周りに通され、最前方でスクラップワインダーに引き出されたキャストフィルムを得た。安定後、様々なキャスティングドラム速度(2、3及び5m/分)により、様々な厚みでキャスト試料を収集した。続いて、Long Stretcher(T.M. Long Co., Somerville, New Jerseyから入手可能)を用いてキャストフィルムを延伸した。Long Sretcherは、昇降蓋を有する加熱オーブンの内側に取り付けられた油圧作動ストレッチヘッドを備えている。延伸機構の動作は、2組の延伸バー(一方は固定され、他方は可動であり、通常、相互に取り付けられる)の相対動作に基づいている。延伸バーは、延伸における量(延伸比)及び速度(延伸速度)を制御する油圧ラムに取り付けられている。各延伸バー上には、パンタグラフシステムに接続された空気圧試料クリップが装着されている。試料ローディングシステムが、空気圧クリップ内にサンプルを配置するために使用される。所定サイズ(7.1×7.1cmまたは11.1×11.1cmのいずれか)になるように切断されたキャスト試料が、アームの端部に取り付けられた真空プレート上に、対称に配置される。アームがオーブン内に移動し、試料がクリップ間に位置するように下げられる。クリップが窒素圧力により閉じられ、フィルムを保持し、ローディングアームが引き出される。オーブンが、2個のプレートヒーターにより、150℃で加熱される。蓋が下げられ、空気ヒーターが試料を所定温度にまで速やかに加熱する(典型的には160℃〜170℃)。適切なプレヒート時間(30〜60秒)の後、作業員による手動で延伸が開始される。この装置を使用することにより、おおよそ2.5〜500mm/秒の範囲の延伸速度、及び7倍までの延伸比が達成できる。特にそうでないと記載されない限り、これらの実施例においては、直交する方向における同時2軸延伸が用いられる。
【0053】
Long Stretcher上で得られたフィルムは、次いで、Laboratory Crystallisation Rigを用いて結晶化させられ、所定時間、所定温度で保持される。この装置では、試料は、空気圧により落とされるフレームに固定され、加熱されたプラテン間に所定時間保持され、その後、氷水中に投入されることにより急冷される。
【0054】
フィルム試料の密度を、校正した硝酸カルシウム/水密度カラムを用いて測定した。全てのフィルム試料の結晶化度を、既知のPENの密度及び結晶度の値を用いて、次の文献データに基づき、計算した。
結晶化度0%のPENの密度=1.325g/cm
3
結晶化度100%のPENの密度=1.407g/cm
3
【0055】
フィルムの密度及び結晶化度の結果を、以下の表2、3及び4に示す。
表2:PENコントロールフィルム
【表2】
※ 連続延伸を用いた以外は上述の方法で製造
【0056】
表3:PENcoBPDI−6フィルム(実施例7)
【表3】
※ 連続延伸を用いた以外は上述の方法で製造
【0057】
表4:PENcoBPDI−10フィルム(実施例8)
【表4】
※ 連続延伸を用いた以外は上述の方法で製造
【0058】
上述の表のデータは、本発明のコポリマーが、従来のフィルム−ラインで用いられている典型的なテンター条件下で、結晶性二軸延伸フィルムに製造され得ることを示しており、このようにして製造されたフィルムが優れた結晶性を有することを示している。
【0059】
実施例9及び10
また、上述の実施例7及び8に対応するフィルムを、従来のテンターライン上で製造し、二軸延伸された結晶化フィルムをインラインで製造した。順方向延伸ロールの温度を、Tgを10〜15℃超える温度に設定し、順方向の延伸比を2.8〜3.3の範囲とした。次いで、延伸フィルムを以下の条件下でテンターに通した。
テンター予熱温度:120℃
横方向延伸温度:130℃
Crystalliser 1温度:225℃
Crystalliser 2温度:220℃
横方向延伸比: 3〜3.3倍
【0060】
テンター法により得られた二軸延伸フィルムは、安定であり、優れた結晶性を示した。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕脂肪族グリコール、ナフタレンジカルボン酸、および式(I)のモノマー由来の繰り返し単位を含むコポリエステル。
(式中、n=2、3又は4であり、
コモノマー(I)は、コポリエステルにおけるグリコール部分の一部を構成する)
〔2〕式(II)を有する、前記〔1〕に記載されたコポリエステル。
(式中、n=2、3又は4であり、
基Xは、前記脂肪族グリコールの炭素鎖であり、
p及びqは、それぞれ、脂肪族グリコール含有繰り返しエステル単位及びモノマー(I)含有繰り返しエステル単位のモル分率である)
〔3〕モノマー(I)が、コポリエステルにおけるグリコール部分の約5〜約50モル%の範囲で存在する、前記〔1〕又は〔2〕に記載されたコポリエステル。
〔4〕モノマー(I)が、コポリエステルにおけるグリコール部分の少なくとも約8モル%の範囲で存在する、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載されたコポリエステル。
〔5〕ナフタレンジカルボン酸が、2,6−ナフタレンジカルボン酸である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載されたコポリエステル。
〔6〕脂肪族グリコールが、C2、C3又はC4脂肪族ジオールから選択される、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載されたコポリエステル。
〔7〕脂肪族グリコールが、エチレングリコールである、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載されたコポリエステル。
〔8〕脂肪族グリコールにおける炭素原子数が、コモノマー(I)における数nと同じである、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載されたコポリエステル。
〔9〕n=2である、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれかに記載されたコポリエステル。
〔10〕式(I)の化合物。
(式中、n=2である)
〔11〕前記〔1〕乃至〔9〕のいずれかに記載されたコポリエステルを含む、ポリエステルフィルム、特に延伸フィルム、特に、二軸延伸フィルム。
〔12〕前記〔1〕乃至〔9〕のいずれかに記載されたコポリエステルを含む、繊維若しくは成形組成物、又は成形品。