(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945876
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】半導電性磁気ブラシ現像における能動的バンディング補正
(51)【国際特許分類】
G03G 15/06 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
G03G15/06 101
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-104765(P2012-104765)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2012-252324(P2012-252324A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】13/151,314
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エイチ・ウェイマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エス・ファッチ
【審査官】
中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−122564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/06
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)中に現像剤を含む現像剤ハウジングを備えるステップと、
(b)半導電性現像剤と一体となり、前記現像剤ハウジングから磁気ロール上の前記半導電性現像剤を受け取るように構成されている、少なくとも1つの磁気ロールを備えるステップと、
(c)前記少なくとも1つの磁気ロールに直流電源を用いて直流バイアスを印加するステップと、
(d)前記少なくとも1つの磁気ロールに交流バイアスを印加するステップと、
(e)前記少なくとも1つの磁気ロールにおける交流電流信号の大きさを測定するとともにフィルタリングするステップと、
(f)前記フィルタリングされた交流電流信号を増幅し、前記増幅された交流電流信号を前記直流電源に対して交流結合するステップと、
(g)前記交流結合から生じる、時間的に変化する補正電圧を発生させるステップと、
(h)前記直流バイアスを、前記補正電圧を用いて調節するステップであって、前記補正電圧は、光受容体と前記磁気ロールとの間隔に応じて変化する前記測定された交流電流信号における変化量と一致する、前記ステップと、を含む、
電荷保持基板と、前記電荷保持基板に載せられた画像の半導電性磁気ブラシ現像器とを含む電子写真マーキングエンジンにおける50Hzを下回るバンディング周波数成分を能動的に補正するための方法。
【請求項2】
(e)における前記フィルタリングされた交流電流信号をローパスフィルタリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ローパスフィルタリングされた交流電流信号を約50Hzでフィルタリングする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(d)の前記測定された交流電流信号が全波ブリッジを介して整流され、アナログオプトカプラを介して通過させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
印刷周期の間、リアルタイムで、(a)〜(h)における前記方法を実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
磁気ブラシを備えるステップと、
前記磁気ブラシへの交流電流の大きさを測定し、前記磁気ブラシへの交流電流をフィルタリングするステップと、
前記測定され、および、フィルタリングされた交流電流信号を増幅するステップと、
前記磁気ブラシに直流バイアスを印加するための直流電源を備えるステップと、
前記増幅された交流電流信号を前記直流電源に対して交流結合するステップと、
バンディング用に補正するために、前記直流電源への前記増幅された交流電流信号の前記交流結合から生じる補正電圧を用いて前記磁気ブラシバイアスへの前記直流バイアスを調節するステップであって、前記補正電圧は、光受容体と磁気ロールとの間隔に応じて変化する前記測定された交流電流信号における変化量と一致する、前記ステップとを含む、
磁気ブラシ現像器によって現像された画像からバンディングを除去するための方法。
【請求項7】
前記フィルタリングされた交流電流信号をローパスフィルタリングする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ローパスフィルタリングされた交流電流信号を約50Hzでフィルタリングする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記磁気ブラシ電流の大きさを測定するために、前記測定された交流電流信号が全波ブリッジを介して整流され、アナログオプトカプラを介して通過させられる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
印刷周期の間、リアルタイムで、前記方法を実行するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
半導電性磁気ブラシ現像装置に少なくとも1つの磁気ロールを含むステップと、
前記半導電性磁気ブラシ現像装置に少なくとも1つの磁気ロール交流電流信号を備えるステップと、
前記少なくとも1つの磁気ロール交流電流信号の大きさを測定し、および、それをフィルタリングするステップと、
前記フィルタリングされた交流電流信号を増幅するステップと、
直流電源を供給して、前記半導電性磁気ブラシ現像装置に直流バイアスを印加するステップと、
直流電源エラー増幅器を備えるステップと、
前記フィルタリングされた交流電流信号を前記直流電源エラー増幅器に対して交流結合するステップと、
前記半導電性磁気ブラシ現像装置電源上の前記直流バイアスを、前記直流電源エラー増幅器への前記フィルタリングされた交流電流信号の前記交流結合から生じる補正電圧を用いて調節するステップであって、前記補正電圧は、光受容体と前記磁気ロールとの間隔に応じて変化する前記測定された交流電流信号における変化量と一致する、前記ステップと、を含む、
前記半導電性磁気ブラシ現像装置を用いたリプログラフィーエンジンにおいてバンディング周波数成分を能動的に補正するか、あるいは、ゼロにするための、電子補償方法。
【請求項12】
前記フィルタリングされた交流電流信号をローパスフィルタリングする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バンディング周波数成分は50Hz以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ローパスフィルタリングされた交流電流信号を約50Hzでフィルタリングする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般的に、印刷に関するものであり、特に、半導電性磁気ブラシによって現像された画像におけるバンディングの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷システムにおけるバンディングは、例えば米国特許第5,539,505号および第6,285,837B1号に見られるような半導電性磁気ブラシ(SCMB)現像に基づく電子写真マーキングエンジンに関する工学技術の課題であって、そうあり続けるだろう。画像のバンディングは、プロセス方向へのハーフトーン密度の変化から生じる、それ自体、プロセスを横断する方向における濃淡の帯として現れる、画質の不具合である。バンディングは、主として、光受容体と磁気ロールとの振れに起因する、光受容体(PR)ドラムと磁気ロールとの間隔のばらつきのために生じる。光受容体および/または磁気ロールの振れに起因した現像ニップの機械的変化によって、現像剤ニップの密度(ロールの質量)、したがってバンディングによって生じる現像性が調節される。バンディングは、時刻ゼロにおいて常に明らかなわけではないが、それ自体、現像剤の保持期間として現れる。したがって、他の材料状態要因は、例えば、トナー濃度/摩擦電気、トナー保持期間、および場合によっては、材料の加工および流量特性といったものである。材料状態要因は、よく理解されていないのであるが、光受容体ドラムと磁気ロールとの間隔における、非常に小さい、初めは容認可能な変化の影響を拡大してしまう可能性がある。
【0003】
結果として、バンディングは、克服が非常に困難な問題であるし、部品の許容範囲を狭めるといったコストのかかる機械的対応策以外に、この影響を補償する方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、SCMB現像に広範に適用可能であり、磁気ロール直流バイアスを調節することによって機械的現像エラーを能動的に補正することを含む、電子現像補償方法を開示する。初めに、磁気ロール交流電流を測定し、フィルタリングする。次に、ローパスフィルタリングされた電流信号を増幅し、交流を磁気直流電源エラー増幅器に結合する。フィードバック回路が、交流電流の変化量と一致するように、現像剤電源の直流バイアスに加えられる時間的に変化する補正電圧を発生させる。これら全てのステップは、簡単なアナログ電子技術によってリアルタイムでなされる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】全波整流および500Hzでのローパスフィルタリング後の、磁気ロール交流電流を示すグラフである。
【
図3】
図2の交流電流のFFTを示すグラフである。
【
図4】直流現像剤電圧に加えられる電子補正の前および後のブラックハーフトーンの走査画像を示す図である。
【
図5】バンディングFFT印刷走査を示す図である。
【
図6】一実施形態による一つの例示的な電子現像補償方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の好ましい一実施形態に関連して本開示を以下に示すが、本開示をその実施形態に限定することを意図したものではないということを理解されたい。一方、代替案、変形例、均等物の全てが、添付の特許請求の範囲によって規定されているような本開示の精神および範囲に含まれる代替案、変形例、均等物の全てを対象としていることが意図される。
【0007】
本開示の特性の全体的な理解のために、図面を参照されたい。図面では、全体にわたって同じ参照符号を用いて同一の部材を特定している。
【0008】
図1は、一実施形態によるプリンタ100を概略的に示す図である。プリンタ100は、概して、印刷エンジン104、出力経路106、仕上げ器108に効果的に接続されている印刷可能基板媒体の1つまたは複数の供給部を含む。図示したように、印刷エンジン104は、個々のカラー画像の形成に適した複数の画像処理/現像(SCMB)システム110を備えた、多色エンジンであってもよい。さらに、スタッカ装置112が、当該分野において知られているように備えられていてもよい。
【0009】
印刷エンジン104は電子写真式にマーキングしてもよいが、他のマーキング技術が、例えば、インク・ジェット・マーキング、イオノグラフィーによるマーキング、または同様の方法によって用いられてもよいということが認識されているだろう。1形態では、プリンタ100は、ゼロックス社のDC8000(商標)DigitalPressであってもよい。例えば、印刷エンジン104は、光受容体114における入力画像データのトナー画像をレンダリングしてもよい。ここで、光受容体114は、次に、画像を基板に転写する。
【0010】
ユーザが本明細書において開示された複数の実施形態による印刷システム100の様々な態様を制御できるように、表示装置120が備えられていてもよい。表示装置120は、ブラウン管、液晶表示装置、プラズマ、または他の表示装置を含んでいてもよい。
【0011】
現像剤の導電率を制御し、画質(すなわち、バックグラウンド)を改善するために、交流バイアスがSCMB現像システム110に用いられる。本開示によって、現像システムのそれぞれは、電荷保持基板または光受容体114と磁気ロール(図示せず)との間に位置付けられた現像剤ニップ、および、交流バイアス設定値(Vpp、周波数、デューティサイクル)において一印刷周期の間、現像ニップを介して流れる交流電流のリアルタイム測定器を含んでいる。望ましい現像ニップでは、光受容体と磁気ロールとの間隔が一定であるので、交流電流は一定である。実システムでは、光受容体と磁気ロールとの振れ、および、光受容体と磁気ロールとの中心に対する駆動部の中心のずれのゆえに、光受容体と磁気ロールとの間隔は、周期的に変化する。現像ニップを見てみると、交流(容量性)電流は、光受容体と磁気ロールとの間隔が最小であるか、その逆である場合に、最高値に達する。したがって、交流電流によって、光受容体と磁気ロールとの間隔は周期的に変化する。同様に、現像性によって、光受容体と磁気ロールとの間隔は変化する。交流電流および現像性が完全に相互関係があるのかないのかについては、知られていないが、この相互関係が十分に優れているゆえに、直流磁気バイアスに補正を加えてバンディングを十分に軽減するには交流電流の変化が有益であるということは、経験から分かる。110の現像剤地点に加えられた磁気バイアスを、現像ニップの密度および/または機械的エラーのリアルタイムの「測定用電極」として用いることができる。この機械的エラーは、磁気ロール直流バイアスを調節することによって、能動的に補正される。
【0012】
実際には、現像剤バイアス線における磁気ロール交流電流を、印刷周期中にリアルタイムで以下のように測定した。磁気ロール交流電流を、全波ブリッジを介して整流し、磁気ロール交流電流の大きさを測定するために、アナログオプトカプラを介して通過させた。後者の信号を、次に、100Hzでローパスフィルタリングする。後者の信号の一例を
図2に示す。下の曲線は、ゼロックスのDC8000(商標)プリンタにおける富士ゼロックスのFC2トナーの試験中に、15kの現像剤印刷寿命において測定された交流電流を表し、一方、上の曲線は、試験中に40Kで測定された結果を示している。15Kではバンディングは観測されなかったが、40Kでは観測された。したがって、電流を測定することによって、機械のバンディング動作を判別できる。
【0013】
図2に例示された上述のローパスフィルタリングされた電流信号を、次に、増幅し、磁気直流電源エラー増幅器に交流結合する。交流結合を、直流を補正することによって行い、直流バイアスに直流オフセットを加えないようにした。フィードバック回路は、時間的に変化する補正電圧を発生させる。補正電圧は、交流電流の変化と一致した現像剤電源における直流バイアスに加えられたものである。名目上の直流現像電圧が544Vであった1つの試験では、バンディングを相殺するために必要とされる補正電圧は、約5Vp‐pであった。磁気直流供給部を測定して、50Hz以下の周波数応答を得た。周波数応答は、最大の補正が10Hz未満で生じるので、このおよび最も多くの用途にとって十分以上である。
【0014】
図2に示した交流電流波形の周波数成分を、
図3に示す。光受容体と磁気ロールとの両方の基本的な回転数、および、回転数の2倍の回転数が、交流電流が変化した主な部品に見られ、13Hzを越える部品は試験において見当たらなかった。
【0015】
以上に詳述した方法を用いて、50Hzを下回るバンディング周波数成分を能動的に補正するか、あるいは、ゼロにした。
図4は、補正された印刷物および補正されなかった印刷物のデジタル走査を示すとともに、得られた補正の大きさを視覚的に示している。
図5は、
図3の印刷物のバンディングFFTを示している。FFTは、光受容体が倍になり、磁気ロールバンディング周波数がハーフトーンから取り除かれることを示している。
【0016】
要約すると、SCMB現像に基づく電子写真マーキングエンジンにおいて、50Hzを下回るリアルタイムでのバンディング周波数成分を能動的に補正するか、あるいは、ゼロにするための1つの例示的な電子現像補償方法を、200として
図6に示し、方法は、ステップ210において、磁気ロール交流電流の大きさを測定することを含んでいる。次に、ステップ220では、信号をローパスフィルタリングする。続いてステップ230では、信号に、適切に補正された増幅を行う。ステップ240では、信号を用いて、ステップ210における交流電流の変化量と一致するように、磁気ロール直流電源を調節する。これらのステップを、一印刷周期の間、リアルタイムで実行する。