特許第5945891号(P5945891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5945891
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】自動販売機システム
(51)【国際特許分類】
   G07F 9/00 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   G07F9/00 P
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-9429(P2016-9429)
(22)【出願日】2016年1月21日
【審査請求日】2016年1月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512120801
【氏名又は名称】株式会社日本マシンサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】片桐 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】片桐 拓弥
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−165190(JP,A)
【文献】 特開2015−32072(JP,A)
【文献】 特開2007−241608(JP,A)
【文献】 特許第5506996(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる事業体が行う複数の異なるプロジェクトに利用される少なくとも1台の自動販売機と、
複数の異なる事業体において少なくとも一人存在する一般管理者が操作するコンピュータである一般管理者コンピュータと、
無料モード要請情報を送信する送信部と、
記憶部と
を備えた自動販売機システムであって、
自動販売機は、自販機業者によって運営管理されており、自販機業者のルートサービスマンによって商品の補充及び販売代金の回収が行われるものであって、複数の異なる事業体の各々は自販機業者以外の事業体であり、
自動販売機は、
筐体内に設けられた商品収容部及び商品払い出し機構と、
前面扉に設けられた複数の商品選択ボタンと、商品取り出し口と、金銭投入部と
を備えており、
筐体内には、商品選択ボタンで選択された商品と金銭投入部から投入された金銭とに従って商品払い出し機構を制御する自販機制御ユニットと、プロジェクト制御ユニットとが設けられており、
自販機制御ユニットは、通常モードと無料モードとを切り替えるモード制御部と、モード復帰部とを備えており、無料モードは商品を無料で払い出すモードであって、モード復帰部は、モード制御部が通常モードから無料モードに切り替えた際、当該無料モードで商品の払い出しが行われた後に自動的に通常モードに復帰させるものであり、
プロジェクト制御ユニットは、自販機制御ユニットに接続されていて自販機制御ユニットに無料モード指令信号を出力するユニットであって、自販機制御ユニットのモード制御部は、プロジェクト制御ユニットから無料モード指令信号が出力された際に通常モードから無料モードへの切り替えを行うものであり、
プロジェクト制御ユニットは、受信部と、判断部と、無料モード指令出力部と、実績情報記録部と、データ出力部とを備えており、
各一般管理者には、当該事業体に属するユーザーに対してフリーユーザーIDの発行権限が与えられており、一般管理者コンピュータは、フリーユーザーIDを記憶部に記憶させることができるコンピュータであり、
フリーユーザーIDは、無料モードでの商品の払い出しを受けるユーザーを特定可能な情報であるとともに、当該フリーユーザーIDを発行した一般管理者が所属する事業体を特定可能な情報であり、
プロジェクト制御ユニットの受信部は、無料モード要請情報を送信部から受信するものであり、
判断部は、受信部が受信した無料モード要請情報にフリーユーザーIDが含まれているかどうか又はフリーユーザーIDが含まれていて当該フリーユーザーIDが記憶部に記憶されたフリーユーザーIDと一致するかどうかを判断するものであり、
無料モード指令出力部は、無料モード要請情報にフリーユーザーIDが含まれていると判断部が判断したか又はフリーユーザーIDが含まれていて当該フリーユーザーIDが記憶部に記憶されたフリーユーザーIDと一致すると判断部が判断した際に無料モード指令信号を自販機制御ユニットに出力するものであり、
実績情報記録部は、無料モード指令信号が出力された際に、当該フリーユーザーIDと無料モードでの商品の払い出し個数とを実績情報として記憶部に記憶するものであり、
データ出力部は、記憶部に記憶された実績情報を外部に出力するものであることを特徴とする自動販売機システム。
【請求項2】
前記送信部は、前記記憶部に記憶されていないフリーユーザーIDを含む無料モード要請情報を送信するものであって、当該無料モード要請情報を1回のみ前記受信部に送信できるものであることを特徴とする請求項1記載の自動販売機システム。
【請求項3】
前記送信部は、無料モードでの商品の払い出しを受けるユーザーが操作するユーザーコンピュータであって、前記無料モード要請情報を送信するアプリケーションソフトウェアがインストールされ、前記無料モード要請情報を近距離無線通信により前記受信部に送信するコンピュータであり、
アプリケーションソフトウェアは、前記無料モード要請情報を1回のみ送信できるものであることを特徴とする請求項2記載の自動販売機システム。
【請求項4】
前記送信部は、前記記憶部に記憶されているフリーユーザーIDを含む無料モード要請情報を送信するものであって、当該無料モード要請情報を繰り返し前記受信部に送信できるものであることを特徴とする請求項1記載の自動販売機システム。
【請求項5】
前記送信部は、無料モードでの商品の払い出しを受けるユーザーが操作するユーザーコンピュータであって、前記無料モード要請情報を送信するアプリケーションソフトウェアがインストールされ、前記無料モード要請情報を近距離無線通信により前記受信部に送信するコンピュータであり、
アプリケーションソフトウェアは、前記無料モード要請情報を繰り返し送信できるものであることを特徴とする請求項4記載の自動販売機システム。
【請求項6】
前記記憶部は、前記プロジェクト制御ユニット内に設けられており、
前記受信部及び前記一般管理者コンピュータは近距離無線通信可能なものであり、前記一般管理者コンピュータは、近距離無線通信によりフリーユーザーIDを送信して前記記憶部に記憶させることができるものであることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の自動販売機システム。
【請求項7】
前記受信部はインターネットに接続されており、
前記一般管理者コンピュータは、インターネットを介してフリーユーザーIDを送信して前記記憶部に記憶させることができるものであることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の自動販売機システム。
【請求項8】
データ出力部は、前記自動販売機における商品の補充及び販売代金の回収を行う前記自販機業者のルートサービスマンが操作するコンピュータに対して前記実績情報を出力するものであることを特徴とする請求項1乃至7記載の自動販売機システム。
【請求項9】
前記実績情報部は、前記実績情報を実績情報ファイルに記録し、実績情報ファイルを前記記憶部に記憶させるものであり、
実績情報ファイルは、前記実績情報記録部が実績情報を追加して記録する以外は内容の改変ができない状態で作成されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の自動販売機システム。
【請求項10】
前記自動販売機は複数設けられており、複数の自動販売機は異なる自販機業者によって運営管理されるものであり、
前記データ出力部が出力した実績情報を処理して各自販機業者に対する支払い額を算出するとともに各事業体に対して無料モードでの商品提供の対価を請求する精算用コンピュータが設けられており、
前記実績情報記録部は、当該無料モードでの商品の払い出しが行われた自動販売機を運営管理する自販機業者を特定することができる状態で前記実績情報を記録するものであることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の自動販売機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、自動販売機を本来の目的とは異なる目的で異なる複数のプロジェクトに利用するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、清涼飲料等の商品を販売する各種の自動販売機が街頭や各種施設等において設置され、利用されている。多くの場合、自動販売機で商品を販売する事業者(以下、自販機業者という)と、自動販売機が設置されている場所の所有者とは異なる。例えば商店や一般の宅地等において空いたスペースがある場合、自販機業者はその商店や宅地のオーナーに対して自動販売機を置かせてもらうよう要請し、了解がもらえれば契約をして自動販売機を設置する。この場合、契約には、商品の販売代金の一部をマージン(自動販売機の設置料)としてオーナーに支払う旨が含まれる。自動販売機の所有権は自販機業者にあり、自販機業者がオーナーからスペースを借りて営業する形になる。自販機業者のルートサービスマンは定期的に自動販売機の設置場所を訪れ、自動販売機に商品を補充し、販売代金を回収する業務を行う。
【0003】
このような自動販売機において、自動販売機を本来の目的とは異なる用途に使用する場合がある。いわゆる災害対応自販機がその一例である。災害対応自販機とは、大地震のような大きな災害が生じた際、被災者への支援の一環として自動販売機内の商品を無料で提供することを可能にした自動販売機である。この種の自動販売機は、商品を無料で払い出す無料モードでの動作が可能となっている。通常の有料で商品を払い出すモード(以下、通常モードという)から無料モードへの切り替えは、自動販売機の前面扉に設けられた鍵穴を操作することで可能となっている。自動販売機内の制御ユニットはこの鍵穴につながっており、鍵穴の操作によって無料モードに切り替える機能が搭載されている。鍵穴を操作する鍵(以下、無料モード用鍵)は、当該自動販売機の設置場所で何らかの管理を行っている者が保有、管理している。例えば地方公共団体の施設に設置されるものについて災害対応自販機とされ、その施設の管理者が無料モード用鍵を保有、管理する。そして、災害時の無料モードへの切り替えは、その管理者の判断で行われ、その費用は当該地方公共団体が負担するといった運用が想定されている。
【0004】
一方、このような災害対応自販機とは別に、本願の出願人によって出願された技術として、企業のオフィスに設置された自動販売機について、来客へのおもてなし用に商品を無料提供する自動販売機の技術が開示されている(特許文献1)。この技術においても、通常モードから無料モードへの切り替えを行って商品の無料提供を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5506996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は、ある特定の事業所に設置された自動販売機を想定している。そのような自動販売機の設置、営業形態もあるが、多くの自動販売機は、人が自由に往来したり出入りしたりするパブリックな場所に設置されている。したがって、自動販売機の利用者は、特定の事業所に所属する者に限定はされず、様々な者が自動販売機を利用する。
【0007】
このような一般的な自動販売機の利用形態を考えると、ある特定の事業所のある特定の目的(用途)においてのみ利用されることを前提にするのではなく、種々の目的で利用されることを前提にし、その最適な利用方法を検討すべきである。
本願の発明は、この点を考慮して為されたものであり、異なる複数のプロジェクトを遂行するのに自動販売機をその本来の目的とは異なる目的で利用する際に好適に使用される自動販売機システムを提供することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、
複数の異なる事業体が行う複数の異なるプロジェクトに利用される少なくとも1台の自動販売機と、
複数の異なる事業体において少なくとも一人存在する一般管理者が操作するコンピュータである一般管理者コンピュータと、
無料モード要請情報を送信する送信部と、
記憶部と
を備えた自動販売機システムであって、
自動販売機は、自販機業者によって運営管理されており、自販機業者のルートサービスマンによって商品の補充及び販売代金の回収が行われるものであって、複数の異なる事業体の各々は自販機業者以外の事業体であり、
自動販売機は、
筐体内に設けられた商品収容部及び商品払い出し機構と、
前面扉に設けられた複数の商品選択ボタンと、商品取り出し口と、金銭投入部と
を備えており、
筐体内には、商品選択ボタンで選択された商品と金銭投入部から投入された金銭とに従って商品払い出し機構を制御する自販機制御ユニットと、プロジェクト制御ユニットとが設けられており、
自販機制御ユニットは、通常モードと無料モードとを切り替えるモード制御部と、モード復帰部とを備えており、無料モードは商品を無料で払い出すモードであって、モード復帰部は、モード制御部が通常モードから無料モードに切り替えた際、当該無料モードで商品の払い出しが行われた後に自動的に通常モードに復帰させるものであり、
プロジェクト制御ユニットは、自販機制御ユニットに接続されていて自販機制御ユニットに無料モード指令信号を出力するユニットであって、自販機制御ユニットのモード制御部は、プロジェクト制御ユニットから無料モード指令信号が出力された際に通常モードから無料モードへの切り替えを行うものであり、
プロジェクト制御ユニットは、受信部と、判断部と、無料モード指令出力部と、実績情報記録部と、データ出力部とを備えており、
各一般管理者には、当該事業体に属するユーザーに対してフリーユーザーIDの発行権限が与えられており、一般管理者コンピュータは、フリーユーザーIDを前記記憶部に記憶させることができるコンピュータであり、
フリーユーザーIDは、無料モードでの商品の払い出しを受けるユーザーを特定可能な情報であるとともに、当該フリーユーザーIDを発行した一般管理者が所属する事業体を特定可能な情報であり、
プロジェクト制御ユニットの受信部は、無料モード要請情報を送信部から受信するものであり、
判断部は、受信部が受信した無料モード要請情報にフリーユーザーIDが含まれているかどうか又はフリーユーザーIDが含まれていて当該フリーユーザーIDが記憶部に記憶されたフリーユーザーIDと一致するかどうかを判断するものであり、
無料モード指令出力部は、無料モード要請情報にフリーユーザーIDが含まれていると判断部が判断したか又はフリーユーザーIDが含まれていて当該フリーユーザーIDが記憶部に記憶されたフリーユーザーIDと一致すると判断部が判断した際に無料モード指令信号を自販機制御ユニットに出力するものであり、
実績情報記録部は、無料モード指令信号が出力された際に、当該フリーユーザーIDと無料モードでの商品の払い出し個数とを実績情報として記憶部に記憶するものであり、
データ出力部は、記憶部に記憶された実績情報を外部に出力するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記送信部は、前記記憶部に記憶されていないフリーユーザーIDを含む無料モード要請情報を送信するものであって、当該無料モード要請情報を1回のみ前記受信部に送信できるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記送信部は、無料モードでの商品の払い出しを受けるユーザーが操作するユーザーコンピュータであって、前記無料モード要請情報を送信するアプリケーションソフトウェアがインストールされ、前記無料モード要請情報を近距離無線通信により前記受信部に送信するコンピュータであり、
アプリケーションソフトウェアは、前記無料モード要請情報を1回のみ送信できるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記送信部は、前記記憶部に記憶されているフリーユーザーIDを含む無料モード要請情報を送信するものであって、当該無料モード要請情報を繰り返し前記受信部に送信できるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項4の構成において、前記送信部は、無料モードでの商品の払い出しを受けるユーザーが操作するユーザーコンピュータであって、前記無料モード要請情報を送信するアプリケーションソフトウェアがインストールされ、前記無料モード要請情報を近距離無線通信により前記受信部に送信するコンピュータであり、
アプリケーションソフトウェアは、前記無料モード要請情報を繰り返し送信できるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至5いずれかの構成において、
前記記憶部は、前記プロジェクト制御ユニット内に設けられており、
前記受信部及び前記一般管理者コンピュータは近距離無線通信可能なものであり、前記一般管理者コンピュータは、近距離無線通信によりフリーユーザーIDを送信して前記記憶部に記憶させることができるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項1乃至5いずれかの構成において、前記受信部はインターネットに接続されており、
前記一般管理者コンピュータは、インターネットを介してフリーユーザーIDを送信して前記プロジェクト制御ユニットの記憶部に記憶させることができるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項1乃至7いずれかの構成において、データ出力部は、前記自動販売機における商品の補充及び販売代金の回収を行う前記自販機業者のルートサービスマンが操作するコンピュータに対して前記実績情報を出力するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項1乃至8いずれかの構成において、前記実績情報部は、前記実績情報を実績情報ファイルに記録し、実績情報ファイルを前記記憶部に記憶させるものであり、
実績情報ファイルは、前記実績情報記録部が実績情報を追加して記録する以外は内容の改変ができない状態で作成されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項1乃至9いずれかの構成において、前記自動販売機は複数設けられており、複数の自動販売機は異なる自販機業者によって運営管理されるものであり、
前記データ出力部が出力した実績情報を処理して各自販機業者に対する支払い額を算出するとともに各事業体に対して無料モードでの商品提供の対価を請求する精算用コンピュータが設けられており、
前記実績情報記録部は、当該無料モードでの商品の払い出しが行われた自動販売機を運営管理する自販機業者を特定することができる状態で前記実績情報を記録するものであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0009】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、異なるなる複数の事業体が行う異なる複数のプロジェクトについて1台の自動販売機の無料モードが利用されて商品の無料払い出しが行われるので、自販機業者の売上の増大に大きく貢献するという効果がある。
また、フリーユーザーIDはユーザーを特定可能な情報であるとともに当該フリーユーザーIDを発行した事業体を特定できる情報であるので、誰が無料で商品の払い出しを受けたが事後的に特定でき、また事業体に対する対価の請求も正しく容易にできる。
さらに、各事業体にとっては、プロジェクトの遂行に自動販売機の無料モードを利用するので、商品の購入や保管、提供等の手間は不要であり、人的コストや管理コストが大幅に削減されるという効果がある。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、記憶部に登録されたフリーユーザーIDとの一致を判断しないかわりに、1回のみ無料モードでの商品の払い出しがされる1回限定型の構成が可能であるので、一般管理者がフリーユーザーIDをプロジェクト制御ユニットに登録する必要のない使用方法が可能となる。このため、一般管理者が自動販売機の設置場所から離れた場所にいる場合、特に好適となる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、送信部がユーザーコンピュータであるため、カードのような媒体から情報を読み取って送信する構成と比べると、安価に且つ容易に実現できる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、一つのフリーユーザーIDで繰り返し無料モードでの商品の払い出しができるので、事業会社において接待応対等の用途で無料モードを繰り返し利用する必要がある場合、特に好適となる。
また、請求項5記載の発明によれば、上記効果に加え、送信部がユーザーコンピュータであるため、カードのような媒体から情報を読み取って送信する構成と比べると、安価に且つ容易に実現できる。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、プロジェクト制御ユニット内に記憶部が設けられており、一般管理者が近距離無線通信によりプロジェクト制御ユニットにフリーユーザーIDを送信して記憶部に記憶させるので、プロジェクト制御ユニットは、インターネットへの接続環境を整えている必要はなく、この点でランニングコストが安くできる。
また、請求項7記載の発明によれば、上記効果に加え、一般管理者はインターネットを介してフリーユーザーIDを送信して記憶部に記憶させることができるので、一般管理者が自動販売機から離れた場所にいる場合、特に好適となる。
また、請求項8記載の発明によれば、上記効果に加え、実績情報の収集を自販機業者がルートサービスの際に行うことができ、インターネットを介して行う必要がない。このため、簡便であり、また通信費が不要なのでランニングコストが安くできる。
また、請求項9記載の発明によれば、上記効果に加え、実績情報の改変ができないので、無料モードでの商品の払い出しに対する対価請求の信憑性が高くなる。
また、請求項10記載の発明によれば、上記効果に加え、無料モードでの商品の払い出しがどの自販機業者の自動販売機で行われたかが容易に特定できるので、各自販機業者に対する支払い額の算出が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る自動販売機システムの概略図である。
図2図1に示すシステムが備える自動販売機1の斜視概略図である。
図3図2に示す自動販売機1において前面扉12を開けた状態の斜視概略図である。
図4】実施形態のシステムが備える自動販売機1の制御ブロック図である。
図5】フリーユーザーIDの発行権限について示した概念図である。
図6】フリーユーザーIDの一例を概念的に示した図である。
図7】一般管理者DBFの構造の一例を示した概略図である。
図8】FUID管理ファイルの構造の一例について示した概略図である。
図9】ユニット内プログラムの概略を示したフローチャートである。
図10】実績情報ファイルの構造の一例を示した概略図である。
図11】第二の実施形態の自動販売機システムの概略図である。
図12】支払い用データベースファイルの構造の一例を示した概略図である。
図13】請求用データベースファイルの構造の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、実施形態に係る自動販売機システムの概略図である。図1に示す自動販売機システムは、少なくとも1台の自動販売機1と、複数の一般管理者コンピュータ2と、無料モード要請情報を送信する送信部と、記憶部42とを備えて構成されている。
自動販売機1は、この実施形態では清涼飲料の自動販売機1となっている。但し、本願発明において自動販売機1はこの種のものに限定されるものではない。自動販売機1は、自販機業者によって運営管理されており、自販機業者によって商品の補充及び販売代金の回収が行われるものである。
【0012】
実施形態において、自動販売機1は、複数の異なる事業体が行う複数の異なるプロジェクトに利用されるものである。ここでの事業体とは、自販機業者以外の事業体である。事業体としては、典型的には事業会社が想定されているが、事業会社以外の団体(例えば地方公共団体、非営利法人、宗教法人等)であっても良い。また、一つの事業会社における複数の異なる部署が「複数の異なる事業体」に該当する場合もある。例えば、ある会社の営業部と総務部とが「複数の異なる事業体」に該当する場合もある。したがって、「事業」とは、「業務」も含めた広い概念である。
【0013】
図2は、図1に示すシステムが備える自動販売機1の斜視概略図である。図2に示すように、自動販売機1は、筐体11と、筐体11の前面に設けられた前面扉12とを備えている。図3は、図2に示す自動販売機1において前面扉12を開けた状態の斜視概略図である。
図2に示すように、筐体11内には、販売する缶入り又はPETボトル入りの清涼飲料を収容した商品収容部111が設けられている。図2に示すように、前面扉12には、商品の見本を展示した展示部121、購入する商品を選択する各商品選択ボタン122、購入のための硬貨や紙幣を投入する金銭投入部123、購入した商品を取り出す取り出し口124、釣り銭払い出し部125などが設けられている。金銭投入部123は、コインメックやビルバリを含んでおり、投入された硬貨や紙幣が真正なものであるかどうか判断し、真正なものであればその種別、合計額を算出するものである。
【0014】
また、筐体11内には、自動販売機1の動作を制御する制御ユニット(以下、自販機制御ユニットという)3が設けられている。図3に示すように、自販機制御ユニット3は、前面扉12の裏面に固定されている。自販機制御ユニット3は、ユニットボックス内にプロセッサやメモリ等の各部を収容した構造となっており、金銭投入部123で投入された金銭が規定の金額に達しているかどうかの判断等を行うものである。
【0015】
一方、商品収容部111は、自販機制御ユニット3からの信号に従って商品を一つずつ払い出す払い出し機構14を備えており、自販機制御ユニット3は、投入された金銭が所定の金額に達していると判断した場合、払い出し機構14に信号を送り、選択された商品を取り出し口124に払い出すようになっている。これらの構成や機構の構造は、通常の自動販売機1と同様のものとすることができる。
【0016】
図4は、実施形態のシステムが備える自動販売機1の制御ブロック図である。自動販売機1は、前述した災害対応自販機と同様、無料モードでの動作が可能となっており、自販機制御ユニット3は、通常モードと無料モードとを切り替えて制御を行うことが可能ものとなっている。具体的には、図4に示すように、自販機制御ユニット3内にはモード制御部31が設けられている。また、前面扉12には、無料モード用鍵穴151が設けられており(図2中不図示)、無料モード用鍵穴151は、自販機制御ユニット3内のモード制御部31につながっている。
【0017】
無料モード用鍵穴151を操作すると、手動により通常モードから無料モードに切り替えられる。無料モードの場合、金銭投入なしに各商品選択ボタン122が点灯した状態となり、いずれかの商品選択ボタン122を押すことで商品が無料で払い出される。この実施形態における自動販売機1は、この災害対応自販機を転用したものとなっている。
【0018】
また、図4に示すように、自販機制御ユニット3は、モード復帰部32を備えている。
モード復帰部32は、無料モード指令信号が送信されて無料モードで商品の払い出しが行われた後、所定時間経過後に通常モード復帰信号を自販機制御ユニット3に送る部分である。通常モード復帰信号は、無料モード用鍵穴が逆向きに操作された場合に出力されるのと同じ信号である。モード復帰部32は、復帰までの時間を設定する設定回路、タイマー回路、復帰信号を出力するポート等で構成されている。
【0019】
自販機制御ユニット3は、商品の払い出しが完了した際に“1”を出力する出力ポート(以下、払い出し個数出力ポート)33を備えている。払い出し個数出力ポート33は、通常、自動販売機1における商品のトータルの払い出し個数を管理するためのものであるが、モード復帰部32は、払い出し個数出力ポート33の値をモニタしている。無料モードに移行した後、払い出し個数出力ポート33のカウントが1つ増加した際、モード復帰部32はタイマー回路をスタートさせ、設定回路で設定された時間が経過した際、自動的に通常モードに復帰させる信号をモード制御部31に出力する。尚、復帰までの時間は、例えば30秒程度まで(0秒を含む)の任意の時間がされるが、以下の説明では、一例として復帰時間は0秒であるとする。
【0020】
図4に示すように、このような自動販売機1には、プロジェクト制御ユニット4が搭載されている。図3に示すように、プロジェクト制御ユニット4は、筐体11内に収められている。プロジェクト制御ユニット4は、自動販売機1の上記無料モード機能を、異なる複数のプロジェクトに利用するための制御ユニットである。
【0021】
実施形態のシステムにおいて、無料モードの利用は、各プロジェクトの目的に応じて行われる。例えば、ある事業体では、販売促進(プロモーション)の目的で顧客に対してインセンティブ(景品)として自動販売機1内の商品の無料提供のために行われる。また、ある別の事業体では、従業員に対する福利厚生の一環として自動販売機1内を従業員に無料提供するために行われる。さらに別の事業体では、来客に対するおもてなし(儀礼)の一環として自動販売機1内の商品を無料提供するために行われる。
【0022】
無料モードでの商品の払い出しは、無料モードで商品の払い出しをして良いという承認が必要であり、この判断は、プロジェクト制御ユニット4において行われる。この実施形態では、無料モードでの商品の払い出しが許可されるID(以下、フリーユーザーID)が発行されるようになっており、プロジェクト制御ユニット4には、このフリーユーザーIDが登録される。そして、無料モードでの商品の払い出しを希望するユーザーは、送信部によって無料モード要請情報をプロジェクト制御ユニット4に送信するようになっており、正しいフリーユーザーIDが送信されたと判断された場合、無料モードでの利用が承認され、無料で商品が払い出されるようになっている。
【0023】
この実施形態では、「正しいフリーユーザーID」が送信されたとは、この実施形態では二つの異なるパターンがある。一つは、送信された無料モード要請情報の中に、記憶部に記憶されたフリーユーザーIDと一致するIDが含まれている場合である。これは、そのフリーユーザーIDが特に回数の制限なく無料払い出しができるIDである場合のパターンである。以下、このパターンを標準型という。もう一つのパターンは、そのフリーユーザーIDでは、無料払い出しが1回限りである場合のパターンである。この場合は、フリーユーザーIDが無料モード要請情報に含まれている限り、特に照合を行うことなく無料モードでの利用が承認される。以下、このパターンを1回限定型という。
【0024】
実施形態のシステムにおいて、フリーユーザーIDは、階層構造の認証系統に従って発行されるようになっている。まず、この点について説明する。図5は、フリーユーザーIDの発行権限について示した概念図である。
図5に示すように、この実施形態では、フリーユーザーIDの発行権限は、根本的には上級管理者が持っている。但し、実際にフリーユーザーIDを発行するのは、一般管理者であり、上級管理者は、一般管理者にフリーユーザーIDの発行権限を付与する形となっている。
【0025】
上級管理者は、自販機業者の担当者が想定されている。また、一般管理者は、事業体に属するものである。各事業体に少なくとも一人の一般管理者がいることが前提となっている。即ち、この実施形態のシステムでは、自販機業者が各事業体に対してフリーユーザーIDの発行権限を与え、各事業体はこれに基づいて各ユーザーにフリーユーザーIDが発行される。そして、各ユーザーは、付与されたフリーユーザーIDによって無料モードにて商品の提供を受けるようになっている。
【0026】
上記の点を前提として、具体的な技術構成を以下に説明する。まず、フリーユーザーIDについて説明する。図6は、フリーユーザーIDの一例を概念的に示した図である。
この実施形態において、フリーユーザーIDは、ユーザー個人を特定する情報であるとともに、そのフリーユーザーIDを発行した事業体を特定できる情報となっている。具体的には、フリーユーザーIDは、英数字を組み合わせた情報であるが、ユーザー個人を特定する個人特定部と、発行した一般管理者を特定する発行者特定部とを有している。発行者特定部は、一般管理者IDである。一般管理者は、いずれかの事業体に所属するものであり、発行した事業体も一般管理者IDによって特定される。
【0027】
このような一般管理者IDは、上級管理者が操作するコンピュータ(以下、上級管理者コンピュータ)51において一元的に管理されるようになっている。上級管理者コンピュータ51の記憶部には、各一般管理者の情報を記録したデータベースファイルである一般管理者DBFが記憶されている。
図7は、一般管理者DBFの構造の一例を示した概略図である。図7に示すように、一般管理者DBFは、「事業体名称」、「事業体ID」、「一般管理者ID」等のフィールドから成るレコードを多数記録したデータベースファイルである。
【0028】
自販機業者は、各事業体と契約を結ぶ。この契約には、当該事業体に所属する一般管理者が発行したフリーユーザーIDにより無料で払い出された商品1個あたりの自販機業者への支払い額が含まれる。この契約の後、自販機業者は事業体に対し、一般管理者IDを発行する。そして、一般管理者IDを組み込んだ状態のフリーユーザーIDが当該一般管理者からユーザーに発行され、ユーザーはそのフリーユーザーIDにより無料で商品の提供を受ける。
【0029】
図5に示すように、一人の一般管理者は、通常、複数のユーザーに対してフリーユーザーIDを発行する。フリーユーザーIDの発行数に応じて無料での商品の払い出し個数が増えることになり、当該事業体の負担額が増えることになる。一般管理者は、この点を考慮しながら当該事業体の判断に基づいてフリーユーザーIDを発行することになる。
【0030】
上記のようなスキームで行われる商品の無料提供のための具体的な技術構成について、以下に説明する。
まず、自動販売機1におけるプロジェクト制御ユニット4について説明する。商品の無料提供は、自動販売機1を上述した無料モードで動作させることで行われる。これは、プロジェクト制御ユニット4が、フリーユーザーIDを正しく受信したと判断した際に無料モード指令信号を自販機制御ユニット3に出力することで行われる。
【0031】
より具体的に説明すると、図4に示すように、プロジェクト制御ユニット4は、受信部41と、記憶部42と、判断部43と、無料モード指令出力部44と、実績情報記録部45と、データ出力部46とを備えている。即ち、この実施形態では、記憶部42はプロジェクト制御ユニット4内に設けられている。記憶部42には必要に応じてフリーユーザーIDが記憶されるようになっており、受信部41は、フリーユーザーIDを含み得る無料モード要請情報を受信するものとなっている。
【0032】
図4に示すように、自販機制御ユニット3内のモード制御部31に対して、プロジェクト制御ユニット4の無料モード指令出力部44が接続されている。無料モード指令出力部44は、判断部43での判断結果に従い、無料モード指令信号をモード制御部31に出力するものである。無料モード指令信号は、無料モード用鍵穴151が操作された場合と同様の信号である。
【0033】
記憶部42は、不揮発型のメモリ又は小型のハードディスク等である。フリーユーザーIDは、ファイル(以下、FUIDファイルと略称する)に記録され、このファイルが記憶部42に記憶される。FUIDファイルは、例えばCSVのような汎用形式のファイルとなっている。
FUIDファイルへのフリーユーザーIDの記録は、当該自動販売機1におけるフリーユーザーIDの登録(その自動販売機1を無料モードで利用できることの登録)という意味合いであるので、一般管理者によって行われる。即ち、一般管理者コンピュータ2がフリーユーザーIDを受信部41に送信することで行われる。これには、大きく分けて二つの態様がある。一つは、一般管理者コンピュータ2がプロジェクト制御ユニット4をその周辺装置として認識でフリーユーザーIDを書き込む態様と、一般管理者コンピュータ2がプロジェクト制御ユニット4と間でインターネット100のようなネットワークを介して通信を行ってフリーユーザーIDを書き込む態様である。両者それぞれ一長一短あるが、まず前者の態様について説明する。
【0034】
一般管理者コンピュータ2は、ある態様ではスマートフォンやタブレットPCのようなモバイル型コンピュータである。この場合、一般管理者コンピュータ2には、フリーユーザーID書き込み用のアプリケーションソフトウェア(以下、FUID書き込みアプリという)21がダウンロードされ、一般管理者コンピュータ2で実行可能とされる。
【0035】
図1に示すように、FUID書き込みアプリ21は、自販機業者が運営するサーバ(以下、自販機業者サーバ)5からダウンロードされる。典型的な態様では、自販機業者サーバ5は、このシステムの運用のためのサイト(以下、自販機システム運用サイト)を開設している。このサイトにおいて、一般管理者IDを入力してログインすると、FUID書き込みアプリ21がダウンロードされるようサイトが構築される。自販機業者サーバ5の記憶部42には、FUID書き込みアプリ21のプログラムファイルやそのインストールプログラムのファイルが記憶される。これらの構成は、周知のサーバ技術で実現可能なので、詳細な説明は省略する。尚、FUID書き込みアプリ21がダウンロードされて一般管理者コンピュータ2にインストールされると、FUID書き込みアプリ21内に定数として当該一般管理者IDが設定される。
【0036】
この態様では、一般管理者コンピュータ2は、近距離無線通信によりフリーユーザーIDを書き込み構成とされる。具体的に説明すると、この実施形態では、受信部41は、Bluetooth通信によりデータを受信可能な構成とされており、Bluetoothインターフェース40を備えている(Bluetoothはブルートゥース エスアイジー,インコーポレイテッドの登録商標である)。
受信部41は、近距離無線通信用のアンテナ411を備えている。図2及び図3に示すように、アンテナ411は、筐体11の上面に固定されており、筐体11を貫通して設けた不図示の配線により受信部41に接続されている。筐体11は頑丈な金属製であるので、無線通信を阻害しないようアンテナ411を筐体11の外側としている。
【0037】
一方、一般管理者コンピュータ2は、スマートフォン、タブレットPCといったモバイルコンピュータであり、Bluetoothインターフェース20を標準で備えている。FUID書き込みアプリ21は、プロジェクト制御ユニット4を一般管理者コンピュータ2の周辺装置として認識し、FUIDファイルを開いてFUIDファイル内にフリーユーザーIDを記録するようプログラミングされている。
この際、FUID書き込みアプリ21は、定数として設定されている一般管理者IDを組み込みながら、フリーユーザーIDを自動生成し、FUIDファイルに書き込む。FUIDは、FUIDアプリは、フリーユーザーIDが誰に対して付与された特定できるように、氏名、所属/属性等の個人情報を一般管理者コンピュータ2において一般管理者に入力させるようになっている。ここで入力された情報は、一般管理者コンピュータ2の記憶部に記憶される管理用のファイル(以下、FUID管理ファイル)22に記録されるようになっている。
【0038】
図8は、FUID管理ファイル22の構造の一例について示した概略図である。図8に示すように、FUID管理ファイル22は、データベースファイルであり、「フリーユーザーID」、「氏名」、「所属/属性」等のフィールドから成るレコードを、発行したフリーユーザーIDの分だけ記録したファイルである。
FUID書き込みアプリ21は、フリーユーザーIDの書き込みの際、「氏名」、「所属/属性」といった入力欄を有するページを一般管理者コンピュータ2に表示するようになっており、このページに送信ボタンが設けられている。送信ボタンには、書き込み用のモジュールの起動ボタンとなっており、送信ボタンがタップされると、フリーユーザーIDが自動生成されてプロジェクト制御ユニット4の記憶部42に記憶されるとともに、FUID管理ファイル22にレコードが新しく追加され、生成されたフリーユーザーIDや、入力された氏名等の情報が記録されるようFUID書き込みアプリ21がプログラミングされている。
【0039】
尚、「所属/属性」のフィールドの情報は、プロジェクトの種類によって異なる。例えば、プロジェクトが事業会社における各種業務である場合、「所属/属性」のフィールドは、フリーユーザーIDを付与した従業員の所属部署ということになる。また、ある事業体が顧客に対して行う販売促進がプロジェクトである場合、「所属/属性」は顧客である旨の情報であったり、顧客の種別の情報であったりする。
【0040】
一般管理者は、このようにしてプロジェクト制御ユニット4に書き込んだフリーユーザーIDを、当該ユーザーに通知する。通知は、電子メールで伝えることが想定されているが、メモや口頭等で伝える場合もあり得る。尚、FUID書き込みアプリ21には、発行先のユーザーにフリーユーザーIDを通知する電子メールを自動生成するプログラムが含まれている場合があり得る。このようにフリーユーザーIDをプロジェクト制御ユニット4に書き込み、ユーザーにフリーユーザーIDを通知することで、フリーユーザーIDの発行が完了する。
【0041】
このようにして発行されたフリーユーザーIDは、標準型の場合、無料モード要請情報を受信した際に判断部43において参照され、書き込まれたフリーユーザーIDに一致するIDが無料モード要請情報に含まれていると、無料モード指令信号が出力される。以下、この動作のための技術構成について説明する。
この実施形態では、無料モード要請情報を送信する送信部は、ユーザーが操作するモバイルコンピュータ(以下、ユーザーコンピュータ)6となっている。ユーザーコンピュータ6も、スマートフォンやタブレットPC等であり得る。したがって、ユーザーコンピュータ6も、近距離無線通信のインターフェースとしてBluetoothインターフェース60を標準で備えている。
【0042】
ユーザーは、無料モード要請情報の送信用のアプリケーションソフトウェア(以下、無料モード要請送信アプリという)61をユーザーコンピュータ6にダウンロードし、実行可能としておく。無料モード要請送信アプリ61は、前述した自販機システム運用サイトでダウンロード可能となっている。この際、ユーザーは、通知されたフリーユーザーIDで自販機システム運用サイトにログインする。ログインが完了すると(フリーユーザーIDが認証されると)、無料モード要請送信アプリ61のダウンロードが可能になる。ここでも、無料モード要請送信アプリにフリーユーザーIDが定数として設定された状態でアプリがダウンロードされる。
【0043】
無料モード要請送信アプリは、プロジェクト制御ユニット4をBluetooth機器として認識して無料モード要請情報を送信するアプリケーションプログラムである。この実施形態では、無料モード要請送信アプリとして、異なる二種類のものが想定されている。一つは、標準型に対応したアプリ61である。これは、フリーユーザーIDを含んでおり、判断部43において、記憶部42に一致するフリーユーザーIDがあるかどうか判断されるアプリである。以下、このアプリ61を標準型要請アプリと呼ぶ。もう一つは、1回限定型に対応したアプリ62である。これは、フリーユーザーIDは含むものの、記憶部42に一致するフリーユーザーIDがあるかどうかは判断されず、そのフリーユーザーIDでの無料払い出しの実績が記録されるのみであるアプリである。以下、このアプリ62を1回限定型要請アプリと呼ぶ。
【0044】
判断部43は、プロジェクト制御ユニット4に含まれるプロセッサと、実装されたプログラム(以下、ユニット内プログラム)とによって構成されている。判断部43は、複雑な処理をするものではないので、プログラムが書き込めるワンチップマイコンのような簡易なデバイスで実現できる。また、受信部41と判断部43を含めた構成として、Bluetooth対応のネットワークプロセッサも各種市販されており、この中から適宜選択して使用することも可能である。このような構成において、ユニット内プログラムが実装されている。
【0045】
図9は、ユニット内プログラムの概略を示したフローチャートである。図9に示すように、ユニット内プログラムは、受信部41で受信した情報が無料モード要請情報であるかどうか判断する。例えば、一連のコードの最初の数ビッドを無料モード要請情報であるかどうか判別する部分(以下、識別部)として割り当てておき、それで判断するようコードが構成される。この場合、識別部は、標準型要請アプリ61で送信された要請情報であるか、一回限定型要請アプリ62で送信された要請情報であるかも識別できるものとされる。
【0046】
図9に示すように、ユニット内プログラムは、受信した無料モード要請情報を処理し、無料モード要請情報であるかどうかを判断する。無料モード要請情報であれば、いずれのタイプのアプリからの要請情報であるかを判断する。そして、一回限定型要請アプリ62からの要請情報である場合、要請情報に含まれるフリーユーザーIDを取得し、そのまま無料モード指令出力部44に無料モード指令信号を出力させる。
また、標準型要請アプリ61からの要請情報である場合、フリーユーザーIDを取得した後、記憶部42に記憶されたフリーユーザーIDの中に一致するものがあるかどうか判断する。一致するものがあれば、無料モード指令信号を出力させる。このような処理が行われるよう、ユニット内プログラムはプログラミングされている。
【0047】
尚、判断部43をユーザーコンピュータ6側に持たせることも可能である。この場合、FUID内に一致するフリーユーザーIDがあるかどうかをユーザーコンピュータ6のCPUが判断するよう無料モード情報送信アプリがプログラミングされることになる。無料モード情報送信アプリがフリーユーザーIDが一致したと判断すると、無料モード指定出力部から無料モード指令信号が出力される。但し、この場合、フリーユーザーIDが含まれていないか又は不一致にもかかわらず無料モード指令信号が出力されるよう無料モード情報送信アプリを改変する不正がされると対応ができない。したがって、無料モード指令信号の出力においては、プロジェクト制御ユニット4側がマスターであって(スレイブでななく)自律的に判断する構成であることが望ましい。
【0048】
無料モード信号出力部と自販機制御ユニット3のモード制御部31との接続は、有線接続でも良く、同様に近距離無線接続であっても良い。前者の場合、自動販売機1の筐体内に設けられた配線で接続される。後者の場合、モード制御部31にはBluetoothインターフェースが設けられる。無料モード信号出力は、0か1の単純な出力ポートでよく、通常は0であり、無料モード指令信号を出力する場合に1を出力するポートで良い。モード制御部31は、無料モード指令信号出力部の値を常時モニタしており、それが1に切り替わった際、無料モード用鍵穴が操作されたのと同様、自販機制御ユニット3を無料モードに切り替える構成とされる。
【0049】
次に、プロジェクト制御ユニット4の実績情報記録部45について説明する。
実績情報記録部45は、無料モード指令信号が出力された際に、当該フリーユーザーIDと無料モードでの商品の払い出し個数とを払い出し実績情報として記憶部42に記憶するものである。この実施形態では、実績情報記録部45は、判断部43と同様、プロジェクト制御ユニット4に含まれるプロセッサと、実装されたユニット内プログラムによって構成されている。図9に示すように、ユニット内プログラムは、フリーユーザーIDが一致して無料モード指令信号を出力させた際、そのフリーユーザーIDと、プログラムの動作日時、払い出し個数とを記憶部42に記憶するようプログラミングされている。
【0050】
具体的には、記憶部42には、実績情報記録用のファイル(以下、実績情報ファイル)が記憶されている。図10は、実績情報ファイルの構造の一例を示した概略図である。実績情報ファイルも、CSVのような汎用形式のデータベースファイルである。図8に示すように、実績情報ファイルは、「フリーユーザーID」、「日時」、「個数」等のフィールドから成るレコードを記録したデータベースファイルである。この例では、1回の無料モード要請情報の送信で1個のみの商品が無料払い出しされる設定であるので、「個数」のフィールドには常に1が記録される。ユニット内プログラムは、無料モード指令信号を出力した際、実績情報ファイルに新しくレコードを追加し、各フィールドの情報を記録してファイルを更新するようプログラミングされている。
尚、実績情報ファイルは、ユニット内プログラムによって開かれて実績情報が追加されて記録される以外は、改変ができないファイルとして作成される。即ち、ユニット内プログラムに対してのみ、内容改変を含むアクセス権が与えられている。
【0051】
次に、データ出力部46について説明する。
データ出力部46は、記憶部42に記憶された実績情報を外部に出力できるようにするために設けられている。この実施形態では、この実施形態では、データ出力部46は、受信部41と同様、近距離無線通信インターフェースとしてのBluetoothインターフェース40によって構成されている。データ出力部46は、外部のBluetooth機器との認証(ペアリング)やファイル転送等のプロファイルを含む。データ出力部46は、Bluetooth通信により実績情報ファイルを外部のBluetooth機器に転送可能になっているが、この際、パスキーで認証された相手にのみ実績情報ファイルを転送するよう構成されている。
【0052】
次に、このような実施形態の自動販売機システムの動作(利用例)について説明する。
上記のように、実施形態の自動販売機システムは、複数の異なる事業体が行う複数の異なるプロジェクトに利用されることが前提となっている。以下の説明では、例えばAという会社があり、この会社は、ある種のプロモーションの一環として実施形態の自動販売機システムを利用するとする。ここでは、プロモーションがプロジェクトである。また、A社とは別に、Bという会社があり、この会社では、来客時のおもてなし(接客対応)として実施形態の自動販売機システムが利用されるとともに、社員の福利厚生として実施形態の自動販売機システムが利用される。したがって、以下の説明では、プロモーションする
以下の説明では、プロモーション、接客対応、福利厚生が異なる複数のプロジェクトということになる。
【0053】
A社の利用形態についてより具体的な例を示すと、例えば、何らかのアプリのダウンロード、電子メールアドレスの登録やSNSへのユーザー登録、サイトへの会員登録といったウェブサイト上の顧客の行為を促進するために実施形態のシステムが利用される。この場合、A社は、そのような行為をウェブサイトでさせるためのサーバ(以下、プロジェクト用サーバ)60を運用している。このプロジェクト用サーバ60には、無料モード要請アプリのうち1回限定型要請アプリ62がアップされている。プロジェクト用サーバ60は、ウェブサイト上での顧客の所定の行為が完了すると、1回限定型要請アプリ62を当該顧客にダウンロードさせる。より具体的には、あるウェブサイトで例えば電子メールアドレス登録をすると自動販売機1で清涼飲料が1本無料でもらえる旨の顧客に告知する。顧客は、スマートフォン又はタブレットPC等の自分のモバイルコンピュータ(ユーザーコンピュータ)6において氏名、住所等の個人情報とともに電子メールアドレスを入力して送信する。これにより、1回限定型要請アプリ62をダウンロードするボタンが表示され、それをタップすると、1回限定型要請アプリ62がユーザーコンピュータ6にダウンロードされる。
【0054】
この際、フリーユーザーIDが自動生成され、ダウンロードされる1回限定型要請アプリ62に定数として設定される。このようなダウンロードがされるよう、プロジェクト用サーバ60が構築される。A社が運営、管理している上記ウェブサイトでは、当然ながら、各顧客が入力、送信した氏名や電子メールアドレス等の情報がデータベースファイル63に記録され、管理される。したがって、一回限定型要請アプリ62のダウンロードの際に設定されるフリーユーザーIDは、ユーザー個人を特定し得る情報である。尚、上記以外の例としては、登録された電子メールアドレスにメールが送信され、そのメール中にダウンロード用のURL(ハイパーリンク)が記載される構成もあり得る。
【0055】
一回限定型要請アプリ62をダウンロードしたユーザーは、自動販売機1のところに行き、自分のモバイルコンピュータ6により一回限定型要請アプリ62を実行する。これにより、無料モード要請情報がBluetooth通信によりプロジェクト制御ユニット4に送信され、プロジェクト制御ユニット4内の無料モード指令出力部44が無料モード指令を自販機制御ユニット3に出力する。この結果、自動販売機1が無料モードに移行し、顧客は無料で商品の払い出しを受ける。商品の払い出しが完了すると、モード制御部31は直ちに通常モードに復帰する。
ここでの無料モード要請送信アプリは、一回限定型要請アプリ62であるので、アプリ実行後は、自動的にこのアプリは実行不可となる。例えば、アプリが自動的に当該モバイルコンピュータから削除されるか、又はアイコンがグレー化されて実行できない状態に変更されるようプログラミングされる。
【0056】
また、B社については、自販機業者サイトにおいて標準タイプとして用意されているFUID書き込みアプリ21が使用される。この場合、接客対応を行う部署を営業部とすると、営業部に所属する一般管理者は、一般管理者コンピュータ2にFUID書き込みアプリ21をダウンロードする。この際、この一般管理者IDが発行される。一般管理者は、一般管理者コンピュータ2を操作して、FUID書き込みアプリ21を実行し、各営業部員にフリーユーザーIDを発行する。
【0057】
各営業部員は、自分のユーザーコンピュータ6に標準型要請アプリ61をダウンロードする。この際、自分のフリーユーザーIDが標準型要請アプリ61内に設定される。そして、来客があった際に標準型要請アプリ61を実行し、無料モード要請情報の送信を行う。この結果、無料モード要請情報をプロジェクト制御ユニット4が受信し、無料モード指令出力部44から無料モード指令が出力される。同様に自動販売機1が無料モードに移行し、営業部員は清涼飲料を無料で入手し、来社した顧客に提供する。
【0058】
また、B社のうち、福利厚生を担当する総務部に所属する別の一般管理者も、FUID書き込みアプリ21を自分の一般管理者コンピュータ2にダウンロードする。同様に、この一般管理者用に一般管理者IDが発行される。一般管理者は、FUID書き込みアプリ21を一般管理者コンピュータ2上で実行し、福利厚生用に適宜フリーユーザーIDを発行する。例えば、社内運動会のようなイベントの際、部署単位にとりまとめ役を決め、その者にフリーユーザーIDを発行し、適宜の本数の清涼飲料が無料にて払い出されるようにする。各とりまとめ訳は、同様に自分のユーザーコンピュータ6に標準型要請アプリ61をダウンロードし、必要な本数の清涼飲料の提供を無料で受け、各員に配る。
実施形態の自動販売機システムは、以上のような利用が一例として考えられる。
【0059】
次に、このようにして利用される実施形態の自動販売機システムにおける無料払い出し費用の精算について説明する。
上記のように各プロジェクトにおいてユーザーは無料にて自動販売機1の商品の払い出しを受ける。この費用は、各事業体が負担することになる。自販機業者は、事業体ごとに無料払い出しの個数を計算し、各事業体に対して請求書を発行する。
より具体的に説明すると、自販機業者のルートサービスマンは、自動販売機1に商品の補充と代金の回収を行うルートサービスの際、スマートフォン又はタブレットPC等のモバイルコンピュータ(以下、ルートサービスコンピュータという)7を持参する。ルートサービスコンピュータ7には、プロジェクト制御ユニット4から実績情報を読み出すためのプログラム(以下、実績情報読み出しプログラム)71がインストールされている。
【0060】
自販機業者は、多数の自動販売機1を保有、運営管理している。したがって、実施形態の自動販売機システムは、実際には複数又は多数の自動販売機1を備えている。各自動販売機1は、管理用のID(以下、自販機ID)が付与されている。実績情報ファイルは、どの自動販売機1における実績情報かを特定できるよう自販機IDを使用したファイル名となっている。
【0061】
ルートサービスコンピュータ7は、同様にBluetoothインターフェース70を備えている。プロジェクト制御ユニット4の記憶部42に記憶された実績情報ファイルは、読み取りの際にはパスキーが必要となっている。実績情報読み出しプログラム71には、パスキーが設定されており、パスキーをプロジェクト制御ユニット4の受信部41に送信しつつ、実績情報ファイルの内容を読み取るようプログラミングされている。尚、パスキーは、各自動販売機1において同じものであっても構わない。
【0062】
実績情報読み出しプログラム71は、例えば実績情報ファイルをそのままコピーしてルートサービスコンピュータ7の記憶部42に記憶するようプログラミングされる。自販機業者のオフィスには、精算用コンピュータ8が設けられている。ルートサービスマンは、ルートサービスを終えて帰社した後、コピーした実績情報ファイルを精算用コンピュータ8にさらにコピーする。精算用コンピュータ8の記憶部42には、各自動販売機1のプロジェクト制御ユニット4からコピーした実績情報ファイルが記憶される。
【0063】
精算用コンピュータ8には、精算プログラムがインストールされている。自販機業者の費用請求担当者は、月に1回程度、精算用コンピュータ8により精算プログラムを実行して費用請求を行う。即ち、精算プログラムは、各実績情報ファイルを開き、事業体毎に無料モードでの払い出し個数を集計する。そして、各事業体との間で取り決められている無料払い出し個数の対価を掛けて合計の請求額を算出し、請求書を発行する。尚、一つの法人において複数の事業体が存在している場合、それら事業体の合計の請求額が算出されて請求される場合があり得る。
【0064】
上記請求額の算出の際、精算プログラムは、実績情報ファイルの各レコードに記録されているフリーユーザーIDを解析し、どの事業体で行われた無料モード払い出しであるかを特定する。即ち、精算プログラムは、フリーユーザーIDから一般管理者IDを特定し、その一般管理者IDを検索キーにして一般管理者DBFを検索することで、当該一般管理者が所属している事業体を特定する。
実績情報ファイルの内容から、どのフリーユーザーIDで何個の商品の無料払い出しがされたかをリスト化することができる。精算プログラムは、費用精算の明細としてこのリストを作成し、各事業体への請求書に添付することも可能である。
【0065】
上記構成に係る実施形態の自動販売機システムによれば、異なる複数の事業体が行う異なる複数のプロジェクトについて1台の自動販売機1の無料モードが利用されて商品の無料払い出しが行われる。無料モードでの商品の払い出しは、自販機業者にとっては通常の有料での商品の販売と同じなので、売上の増大に大きく貢献するという効果がある。
また、無料モードでの商品の払い出しの対価の請求において、無料モード指令信号を出力した際のフリーユーザーIDが実績情報ファイルに記録されており、フリーユーザーIDは、ユーザーを特定できる情報であるとともに当該を発行した一般管理者を特定できる情報でもあるので、個数を集計して費用を請求する作業が容易に行える。尚、本願発明は、精算用コンピュータ8まで含めた自動販売機システムの発明として捉えることも可能である。
【0066】
尚、各事業体にとってみると、各プロジェクトの遂行に自動販売機1の無料モードを利用するので、対価の負担はあるものの、手間(人件費)については格段に安価に行えるものとなる。例えば、プロジェクトがプロモーションである場合、1個限定型アプリをサーバに用意しておいてユーザーにダウンロードさせるだけで良い。この種のプロモーションは何らかの景品を進呈することで行われるが、実施形態によらない場合、景品を郵送したり又は窓口で進呈したりすることが必要で、手間やコストがかかる。実施形態によれば、そのような手間やコストはかからず、格段に安くできる。
また、接客対応や福利厚生といったプロジェクトについても、商品は常に自動販売機1に用意されており、商品の購入や保管の手間はかからない。一般管理者を定めてフリーユーザーIDを発行させるだけで良いので、極めて簡便である。
【0067】
実施形態の自動販売機システムのより具体的な利用状況を想定してみると、ある事業会社内に自動販売機1が設置されているとする。この場合、この自動販売機1は、来客時には接客対応の従業員が自分のユーザーコンピュータ6を使用することで接客用の清涼飲料の無料払い出しに利用される。また、社内運動会のようなイベント又は残業時等において福利厚生として清涼飲料が無料提供される。このような場合も、会社は、そのような福利厚生用の清涼飲料を予め購入して保管しておく手間は不要である。その上、自動販売機1自体は、通常モードでも動作するものであるので、従業員に対する利便性の提供という本来の役目も果たせる。
【0068】
例えばある従業員が個人的にウェブサイトでアプリをダウンロードして景品として無料モードで商品の提供を受け、その従業員が接客対応用として商品の無料提供を受け、さらに福利厚生として商品の無料提供を受ける、という事例もあり得る。また、異なる複数の事業会社のオフィスが入居しているビルの喫茶コーナーに置かれた自動販売機1において、それら異なる事業会社それぞれにおけるプロジェクト遂行用に無料モードでの払い出しが行われることがあり得る。これらの種々の利用形態が考えられ、実施形態の自動販売機システムは、高い汎用性を有し、それ故に、自販機業者の売上アップに大きく貢献する。
【0069】
また、データ出力部46が、ルートサービスコンピュータ7に対して実績情報を出力するので、実績情報の収集を自販機業者がルートサービスの際に行うことができ、インターネットを介して行う必要がない。このため、簡便であり、また通信費が不要なのでランニングコストが安くできる。
さらに、実績情報は、ユニット内プログラムが実績情報を追加して記録する以外は改変ができないファイルとして作成されるので、各事業体による改変は勿論、各自販機業者においても改変はできない。このため、無料モードでの商品の払い出しに対する対価請求の信憑性が高くなる。
【0070】
次に、第二の実施形態の自動販売機システムについて説明する。
図11は、第二の実施形態の自動販売機システムの概略図である。この実施形態では、自販機業者、各事業体に加え、仲介会社が存在していることが前提となっている。仲介会社は、各事業体と自販機業者との仲介を行う会社であり、一種の代理店である。
周知のように、清涼飲料の自動販売機1の業界には、複数の異なる飲料メーカー系の複数の自販機業者が存在している。したがって、ある事業会社には、異なる自販機業者の複数の自動販売機1が設置されていることが想定される。これら複数の自販機業者が実施形態の自動販売機システムを当該事業会社のプロジェクトに利用した場合、各自販機業者との間で費用の精算をしなければならず、面倒である。また、プロモーションのようなプロジェクトに実施形態のシステムが利用される場合、ある特定の自販機業者の自動販売機1に限らず、他の多くの自販機業者でも景品としての商品の無料払い出しができる方が、ユーザーにとって利便性が高くなり、選択の幅も広がるので、好適である。第二の実施形態のシステムは、これらの点を考慮したものとなっている。
【0071】
具体的に説明すると、第二の実施形態の自動販売機システムでは、自動販売機1が複数存在しており、それら自動販売機1が異なる自販機業者のものであることが前提となっている。そして、この実施形態において、一つのフリーユーザーIDは、異なる自販機業者の自動販売機1についても使用できるものとなっている。
より具体的に説明すると、この実施形態でも、各自動販売機1はプロジェクト制御ユニット4を備えており、プロジェクト制御ユニット4は、一般管理者コンピュータ2によりフリーユーザーIDが書き込まれるものである。そして、ユーザーコンピュータ6からの無料モード要請情報の送信を受け、無料モード要請情報のタイプに応じてフリーユーザーIDの一致を判断し、一致すれば、無料モード指令信号を自販機管理ユニットに出力する。つまり、異なる自販機業者の自動販売機1に対して基本的に同じ構成のプロジェクト制御ユニット4が内蔵されている。
【0072】
この実施形態のシステムが第二の実施形態のシステムと異なるのは、実績情報ファイルを利用した費用精算のための構成の点である。第二の実施形態において、各自販機業者において、ルートサービスマンが商品の補充や代金の回収を行い、その際、ルートサービスコンピュータ7に実績情報ファイルをコピーする。各自動販売機1には自販機IDが付与されており、実績情報ファイルは、自販機IDに対応したファイル名となっている。したがって、実績情報ファイルのファイル名から、どの自動販売機1で記録された実績情報であるかが特定できる。
【0073】
一方、第二の実施形態では、精算用コンピュータ9は、仲介会社の担当者が操作するコンピュータとなっている。第二の実施形態において、実績情報ファイルに記録された実績情報は、各無料モードでの商品の払い出しが、どの自販機業者の自動販売機1で行われたかを特定できる情報となっている。このための構成として、実績情報ファイルのファイル名の構成が異なっている。即ち、第二の実施形態では、実績情報ファイルのファイル名は、自販機業者を特定できるファイル名となっている。このための構成としては、幾つか考えられるが、例えば自販機IDの中に自販機業者IDが含まれるようにする。例えば、ある自販機業者が“GH5678”といIDを有しており、その自販機業者が運営管理する自動販売機1について、自販機業者内の管理のための番号は“VM0111”であった場合、実施形態のシステム上の自販機IDは、“GH5678-VM0111”とする。そして、そのIDの自動販売機1で作成される実績情報ファイルのファイル名は、GH5678-VM0111.dbfというファイル名とする。このようにすると、ファイル名によって自販機業者が特定される。この他、自販機IDと自販機業者とを対応づけて記録したデータベースファイルを予め作成し、このファイルを検索することで自販機業者を特定する構成でも良い。
【0074】
各自販機業者は、各ルートサービスマンが各ルートサービスコンピュータ7にコピーしてきた各実績情報ファイルを、社内コンピュータ81からメール添付又はファイル交換サービス等のものにより仲介会社に送る。仲介会社の担当者は、各自販機業者から送られる各実績情報ファイルを開き、自販機業者を特定した上で内容をとりまとめ、各自販機業者への支払いを各事業体に代わって行う。図12は、この支払いの際に利用される支払い用データベースファイル92の構造の一例を示した概略図である。
【0075】
図12に示すように、支払い用データベースファイル92は、「自販機ID」、「自販機業者ID」、「自販機業者名」、「無料モード個数」などのフィールドから成るレコードが多数記録されたである。仲介会社の担当者は、各実績情報ファイルを開き、合計数(無料モードでの払い出し数)を集計する。そして、集計された個数を、自販機業者毎にさらに集計して、図12に示す支払い用データベースファイル92を作成する。そして、この内容に基づいて、各自販機業者に費用の支払いをする。即ち、各レコードのうち、同一の自販機業者のレコードの「無料モード個数」の値を合算し、その金額を当該自販機業者に支払う。
【0076】
一方、仲介業者は、各事業体に対して費用請求をする。図13は、この際に作成される請求用データベースファイル93の構造の一例を示した概略図である。図13に示すように、請求用データベースファイル93は、「自販機ID」、「設置場所説明」、「自販機業者ID」、「自販機業者名」、「無料モード個数」等のフィールドから成るレコードを多数記録したデータベースファイルである。
【0077】
各事業体への費用請求を能率良く行うため、通常はプログラム(以下、請求プログラムという)91が作成され、精算用コンピュータ9にインストールされる。請求プログラム91は、各実績情報ファイルを開き、各レコードの「フリーユーザーID」から一般管理者IDを取得し、一般管理者IDからその一般管理者が所属する事業体を特定する。そして、事業体毎に無料モードでの払い出し個数をカウントして集計する。この処理をすべて実績情報ファイルについて行い、事業体毎に無料モードでの払い出し個数の合計を計算するよう請求プログラム91はプログラミングされる。請求プログラム91を実行することにより、図11に示すような請求用データベースファイル93が作成される。仲介業者の担当者は、請求用データベースファイル93に基づいて各事業体に費用を請求する。
【0078】
このように、第二の実施形態では、各実績情報ファイルにおいて自販機業者が特定できるよう各情報ファイルが記録されているので、仲介業者が各自販機業者に支払いをしたり、どの自販機業者において無料モードが利用されたかを各事業体に報告したりするのが容易に行える。尚、この実施形態においても各実績情報ファイルは各自販機業者において改変ができないものとなっており、請求の信憑性が確保されている。
【0079】
上述した各実施形態において、一般管理者コンピュータ2とプロジェクト制御ユニット4との間の通信は、Bluetooth通信であったが、赤外線通信等の他の規格の近距離無線通信でも良い。
また、近距離無線通信以外の構成も採用でき、例えばプロジェクト制御ユニット4に無線LANインターフェースを設けて、無線LANにおりインターネット100に接続する構成としておいても良い。この場合、自動販売機1が置かれた場所の近くに無線LANルーターがない場合、自動販売機1の筐体内や筐体の上面等に無線LANルーターを設置する。
プロジェクト制御ユニットが無線LANによりインターネット100に接続されている場合、一般管理者は、自身のデスクトップパソコンからインターネット100経由でフリーユーザーIDの書き込みができる。このため、モバイルコンピュータを持って自動販売機1の近くまで行く必要がない。
尚、ルートサービスコンピュータ7とプロジェクト制御ユニット4との接続は、近距離無線通信の他、USBケーブルで両者を接続するような有線接続であっても良い。
【0080】
また、プロモーションのために無料モードでの商品提供を利用する場合、上記各実施形態では、1回限定型の無料モード商品提供なので、一般管理者は、フリーユーザーIDの書き込みをプロジェクト制御ユニット4に対して行う必要はなかった。しかしながら、フリーユーザーIDの偽造等を考慮すると、1回限定型の無料モード商品提供の場合でもフリーユーザーIDをプロジェクト制御ユニット4に書き込んでおき、フリーユーザーIDが一致した場合のみ無料モード商品提供を行う構成の方が望ましい。ただ、プロモーションの場合、一般管理者は、自動販売機1が置かれた場所とは関係がないところ(離れたところ)にいるのが通常であり、わざわざ自動販売機1のある場所までいくのは面倒である。したがって、インターネット100経由でフリーユーザーIDの書き込みできる構成の方がより好ましい。この場合、街頭にある多数の自動販売機1のプロジェクト制御ユニット4に同じフリーユーザーIDを書き込むことも容易に行え、ユーザーは自分が利用し易い場所にある自動販売機1を選んで商品の無料提供を受けることができるので、この点でも好ましい。
ただ、インターネット100経由での通信を前提にすると、付近に利用できる無料の無線LANルーターがない場合、プロジェクト制御ユニット4において月額の通信費が発生する問題があり、ランニングコストの面では、前述した実施形態の方が好ましい。
尚、プロジェクト制御ユニット4のインターネット100に対する接続は、有線LAN経由の場合もあり得る。例えば、自動販売機がある事業会社に設置される場合、その事業会社内の有線LAN経由でインターネット4に接続される場合があり得る。
【0081】
また、上記各実施形態では、無料モードで商品の払い出しが行われた後の復帰時間は0秒であり、1回の無料モードで1個の商品が払い出されるのみであったが、標準型の場合、2個以上の場合もあり得る。この場合は、復帰時間を5〜30秒程度の適宜の時間に設定し、この時間内に複数個の商品の無料払い出しをしてもらう。この場合、ユニット内プログラムは、払い出し個数出力ポート33をモニタしておき、1回の無料モードにおいて払い出された商品の個数を当該ポート33の出力から取得し、フリーユーザーIDとともに実績情報として実績情報ファイルに記録する。
また、フリーユーザーIDに商品の払い出し個数の情報を追加することもできる。この場合、ユニット内プログラムは、自販機制御ユニット3の払い出し個数出力ポート33をモニタしておき、そのカウントの増加分がフリーユーザーID内の数値に達したら、無料モードから有料モードに復帰するよう制御信号を自販機制御ユニット3に出力する。複数個払い出しの構成は、1回限定型であっても可能である。即ち、1回限定型ではあるが1回に複数個無料で払い出される構成である。
【0082】
また、各実施形態において、無料モード要請情報を送信する送信部はユーザーコンピュータ6であったが、無料モード要請情報を担持した媒体を読み取ってプロジェクト制御ユニット4に送信するタイプの送信部が採用されることもあり得る。例えば、フリーユーザーIDを含む無料モード要請情報を光学的もしくは磁気的に読み取り可能なカード又はICカードに担持しておき、自動販売機1の前面扉に情報を読み取るカードリーダーを設けることで本願発明は実現可能である。この場合、そのようなカードを一般管理者はユーザーに渡す一方で、カードに担持させたフリーユーザーIDをプロジェクト制御ユニットに予め書き込んでおく。但し、カードのような媒体から情報を読み取って送信する構成の場合、読み取り機を自動販売機1が読み取り機を備える必要があり、また事前にカードを作成してユーザーに配布する必要があり、コストと手間がかかる。そのようなコストと手間がかからない点で、ユーザーコンピュータ6による構成の方が優れている。
【0083】
また、各実施形態において、フリーユーザーIDが記憶される記憶部は、プロジェクト制御ユニット4内に設けられた記憶部42であったが、システムのいずれかの場所に設けられていて一般管理者コンピュータ2によりフリーユーザーIDが記憶できるように成っていれば足り、プロジェクト制御ユニット4内以外の場所に設けられる場合もあり得る。例えば、プロジェクト管理用のサーバがインターネット100上に設けられており、そのサーバの記憶部(ハードディスク等)にフリーユーザーIDが記憶される場合もあり得る。この場合、一般管理者コンピュータ2がデスクトップパソコンであり、そこからインターネット100経由でフリーユーザーIDを送信して記憶させる場合もあり得る。フリーユーザーIDがインターネット100上のサーバの記憶部に記憶されている場合、判断部43はインターネット100を介してサーバにアクセスし、記憶部に記憶されたフリーユーザーIDと一致するかどうか判断することになる。
インターネット100上にプロジェクト管理用のサーバが設けられる場合、実績情報ファイルもそのサーバの記憶部に記憶さる場合があり得る。この場合、プロジェクト制御ユニット4は、インターネット100に接続された環境とされ、ユニット内プログラムは、インターネット100経由で実績情報をサーバ上の実績情報ファイルに記録するようプログラミングされる。尚、フリーユーザーIDが記憶される記憶部と、実績情報ファイルが記憶される記憶部が別のものである場合もある。
【0084】
また、プロジェクト制御ユニット4内の記憶部42に実績情報を記憶する場合、記憶部42の容量はそれほど大きくはできないので、無料モードでの払い出しが頻繁にあると、ルートサービスマンがルートサービスの際に読み出しを行う前に記憶部42の容量をオーバーしてしまう可能性がある。この問題を避けるため、記憶部42の使用容量(又は空き容量)をチェックするプログラム又はハードウェアをプロジェクト制御ユニット4内に設けておき、使用容量が例えば50%を超えた時点で警告ランプが点灯するような構成を採用しても良い。この場合、ルートサービスマンは警告ランプが点灯している場合、必ず実績情報ファイルの読み出しを行うようにする。尚、記憶部42の使用容量がいっぱいになった際には古い情報から上書きされるよう構成されるか、又はそれ以上は書き込みができないよう構成されるが、後者の構成が採用される場合、実績情報ファイルの読み出しが行われた後、内容を削除する処理が行われる。
【0085】
尚、上記各実施形態では、自動販売機1は清涼飲料の自動販売機1であったが、他の商品の自動販売機1であっても本願発明は実施可能である。お菓子やカップ麺のような各種食品の自動販売機1であってもよく、また玩具などの物品を販売する自動販売機1であっても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 自動販売機
11 筐体
12 前面扉
2 一般管理者コンピュータ
20 Bluetoothインターフェース
21 FUID書き込みアプリ
3 自販機制御ユニット
31 モード制御部
32 モード復帰部
33 払い出し個数出力ポート
4 プロジェクト制御ユニット
41 受信部
42 記憶部
43 判断部
44 無料モード指令出力部
45 実績情報記録部
46 データ出力部
5 自販機業者サーバ
6 ユーザーコンピュータ
61 標準型要請アプリ
62 1回限定型要請アプリ
60 Bluetoothインターフェース
7 ルートサービスマンコンピュータ
71 実績情報読み出しプログラム
8 精算用コンピュータ
9 精算用コンピュータ
【要約】
【課題】 異なる複数のプロジェクトを遂行するのに自動販売機がその本来の目的とは異なる目的で好適に利用されるようにする。
【解決手段】 異なるプロジェクトを遂行する各事業体にそれぞれ所属する一般管理者は、ユーザーにフリーユーザーIDを発行する。ユーザーは、ユーザーコンピュータ6を操作して近距離無線通信により自動販売機1内のプロジェクト制御ユニット4に無料モード要請情報を送信する。プロジェクト制御ユニット4内の判断部43は、無料モード要請情報にフリーユーザーIDが含まれているか又は含まれている場合に記憶部42に記憶されたものと一致するかどうか判断し、判断結果に従って無料モード指令出力部44から自販機制御ユニット3に無料モード指令が出力される。この結果、自動販売機1が無料モードで動作し、商品が無料で払い出される。
【選択図】 図1
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図13