(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945914
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】フラックス残渣除去用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
B23K 1/00 20060101AFI20160621BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20160621BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20160621BHJP
C11D 3/26 20060101ALI20160621BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20160621BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
B23K1/00 Y
C11D7/50
C11D3/43
C11D3/26
H01L21/304 647A
B08B3/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-44137(P2012-44137)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-181060(P2013-181060A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】善福 和貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/005068(WO,A1)
【文献】
特開平08−245988(JP,A)
【文献】
特開平08−245989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00
B08B 3/08
C11D 3/26
C11D 3/43
C11D 7/50
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール及びブチルプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の分岐状ノニオン化合物(1)と、ブチルジグリコール及びヘキシルジグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の直鎖状ノニオン化合物(2)とからなる有機溶剤(A)20〜40重量%、ならびに水(B)60〜80重量%を含有し、かつ、前記式(1)の分岐状ノニオン系化合物と式(2)の直鎖状ノニオン系化合物との重量比((1)/(2))が0.5/3〜3/0.3であり、かつ、曇点が20〜90℃である水溶液を用いてなる、フラックス残渣除去用洗浄剤。
【請求項2】
ブチルジグリコール及びヘキシルジグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の直鎖状ノニオン化合物(2)からなる有機溶剤(A)20〜40重量%、ならびに水(B)60〜80重量%を含有し、かつ、曇点が20〜90℃である水溶液を用いてなる、フラックス残渣除去用洗浄剤。
【請求項3】
有機溶剤(A)の沸点が200℃以下である、請求項1又は2のフラックス残渣除去用洗浄剤。
【請求項4】
さらにアミノアルコール(C)を含有する、請求項1〜3のいずれかのフラックス残渣除去用洗浄剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの洗浄剤をその曇点以上の温度でフラックス残渣が付着した被洗浄物に接触させることを特徴とする、物品の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管時には均質な溶液である一方、使用時には白濁状態となり、フラックス残渣を好適に除去できる洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フラックス残渣とは、ICやコンデンサ、抵抗器等の電子部品をプリント基板等にハンダ付した際、ハンダ接合部付近に残留するフラックス成分をいう。フラックスとしては一般にロジン類をベース材としたもの(以下、ロジン系フラックスという)が使用されており、電極に直接塗布する場合もあれば、ハンダ合金粉末と混合しハンダペーストとして使用される場合もあり、表面実装基板の製造においては後者の態様が主流である。
【0003】
ハンダペーストによる表面実装のプロセスは様々であるが、一例を挙げると、プリント基板の電極上にハンダペーストがスクリーン印刷やディスペンサー等によって供給され、その上に電子部品を載置し、当該基板をハンダ金属の融点以上に加熱することによって、電子部品と電極が接合される。
【0004】
前記のようにハンダ付は高温で行われるため、ハンダペーストからロジン系フラックスが飛散し、電極周囲に残渣として付着することがある。残渣は少量であれば格別問題ないが、多量であると表面実装基板の検品作業や信頼性に悪影響が及ぶ。一方、ハンダ接合部はフラックス残渣膜により不可避的に覆われるが、残渣中の酸成分(樹脂酸、活性剤等)による腐食が進行したり、残渣膜表面の微細なクラックにおいて所謂マイグレーション現象による悪影響を受けたりする。
【0005】
それゆえ、フラックス残渣は通常、各種洗浄剤で除去する必要があり、斯界では従来、ロジン系フラックスに適した洗浄剤として様々な製品が提案されてきた(例えば特許文献1〜3を参照。)。本出願人も例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテルやポリオキシアルキレングリコールエステル等のグリコール系溶剤からなる洗浄剤を種々提案している(例えば特許文献4〜7を参照。)。
【0006】
ところで、これら洗浄剤は一般的に、洗浄効率を高めるべく50〜60℃程度に加温された状態で使用されるが、粘度を下げて取り扱いをよくしたり、VOC排出を抑えたりするために、洗浄現場では洗浄剤を予め水で希釈することがある。しかし、当然のことではあるが、水の配合量を多くすればするほど洗浄成分である有機溶剤の比率が低下するため、フラックス残渣を十分に除去できなくなる。
【0007】
こうした問題を解消するべく、例えば特許文献8において、SP(溶解度パラメータ)値が異なる3種の有機溶剤を組み合わせた洗浄剤が提案されている。このものは、水を配合する前は均一な溶液であるが、使用前に比較的多量の水を配合し撹拌することによって白濁し、その状態においてフラックス残渣を好適に除去するとされている。しかし、使用直前に水を都度配合しなければならないため、作業性の点で難がある。また、この洗浄剤は水を加えた後に長時間放置すると有機溶剤と水の二層に分離するため、洗浄剤が余った場合、次に使用する際に再度撹拌しなければならないという点でも不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−313195号公報
【特許文献2】特開平7−197095号公報
【特許文献3】特開平7−331287号公報
【特許文献4】特開平5−175641号公報
【特許文献5】特開平7−97596号公報
【特許文献6】特開平7−73893号公報
【特許文献7】特開2002−201492号公報
【特許文献8】特開2010−189635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、常温では均質な水溶液であるが、使用時(加温時)には白濁状態となってフラックス残渣を好適に除去できる、新規な洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、所定のノニオン系化合物からなる有機溶剤に水を比較的多量に含ませた水溶液が前記課題を達成する洗浄剤として有用であることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、
プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール及びブチルプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の分岐状ノニオン化合物(1)と、ブチルジグリコール及びヘキシルジグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の直鎖状ノニオン化合物(2)とからなる有機溶剤(A)20〜40重量%、ならびに水(B)60〜80重量%を含有し、
かつ、前記式(1)の分岐状ノニオン系化合物と式(2)の直鎖状ノニオン系化合物との重量比((1)/(2))が0.5/3〜3/0.3であり、かつ
、曇点が20〜90℃である水溶液を用いてなる、フラックス残渣除去用洗浄剤;
ブチルジグリコール及びヘキシルジグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の直鎖状ノニオン化合物(2)からなる有機溶剤(A)20〜40重量%、ならびに水(B)60〜80重量%を含有し、かつ、曇点が20〜90℃である水溶液を用いてなる、フラックス残渣除去用洗浄剤;当該洗浄剤をその曇点以上の温度でフラックス残渣が付着した被洗浄物に接触させることを特徴とする、物品の洗浄方法、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄剤は、前記したように、常温では均質な水溶液であるが、その曇点以上に加温することによって二層に分離し、さらにその状態で撹拌することにより白濁する。そして、この白濁状態の洗浄剤により、フラックス残渣を好適に除去することが可能になる。また、本発明の洗浄剤に添加剤としてアミノアルコール類を配合した場合には、洗浄後に析出物が発生し難くなるため、繰り返し使用に適するようになる。また、常温では均質であることより一液の状態で貯蔵できる利点もある。また、揮発性が高いため、後の水リンス工程を設ける必要が特になく、全行程の簡素化を図ることもできる。その他、水の含有量が多いため、VOC排出量も少なく、非危険物として取り扱うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の洗浄剤は
プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール及びブチルプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の分岐状ノニオン化合物(1)と、ブチルジグリコール及びヘキシルジグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の直鎖状ノニオン化合物(2)とからなる有機溶剤(A)20〜40重量%、ならびに水(B)60〜80重量%を含有し、
かつ、前記式(1)の分岐状ノニオン系化合物と式(2)の直鎖状ノニオン系化合物との重量比((1)/(2))が0.5/3〜3/0.3であり、かつ
、曇点が20〜90℃である水溶液を用いたものと、
ブチルジグリコール及びヘキシルジグリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の直鎖状ノニオン化合物(2)からなる有機溶剤(A)20〜40重量%、ならびに水(B)60〜80重量%を含有し、かつ、曇点が20〜90℃である水溶液を用いたものとである。
【0017】
なお、必要に応じ、(A)成分とともに、前記
化合物(1)および
化合物(2)
以外の成分として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルや、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリアルキレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールエステル等を併用できる。
【0018】
(B)成分としては、イオン交換水、純水、市水等が挙げられる。
【0019】
本発明の洗浄剤における(A)成分及び(B)成分の含有量は特に限定されないが、本発明の洗浄剤の常温での透明性、使用時(加温下での撹拌時)での白濁性、及びフラックス残渣の除去性能を考慮して、順に20〜40重量%程度および60〜80重量%程度であり、好ましくは25〜35重量%および65〜75重量%である。
【0020】
本発明の洗浄剤はその曇点である20〜90℃を境に前記白濁の有無を判断する。ここに曇点とは、JIS K3211で定義される用語であり、本発明においては、洗浄剤を昇温させたときに二層に分離し始める温度をいう。曇点は、好ましくは25〜70℃程度、いっそう好ましくは30〜50℃程度である。
【0021】
(A)成分の物性は格別限定されないが、被洗浄物の乾燥性の点より沸点が通常200℃以下、好ましくは140〜200℃程度、いっそう好ましくは140〜180℃程度のものが好ましい。
【0022】
本発明に係る水溶液には、被洗浄物の汚染物質を洗浄剤中に安定して溶解または分散させル目的で、各種公知のアミノアルコール(C)(以下、(C)成分という)を含めることができる。具体的には、直鎖状または分岐状のアルキル基(炭素数1〜5程度)を有するアミノアルコールが挙げられ、n−ブチルジエタノールアミン、エチルエタノールアミン、n−ブチルエタノールアミン等を例示できる。また、(C)成分は、フラックス残渣がロジンをベース材とするフラックスによるものであるときに特に有効であり、洗浄後に当該フラックスの成分に由来する析出物が発生し難くなる。また、(C)成分としては、被洗浄物の乾燥性を加味すると、沸点250℃未満のものが、特に沸点150〜200℃程度のものが好ましい。本発明の洗浄剤における(C)成分の含有量は特に限定されないが、本発明に係る水溶液100重量%とした場合に通常0〜5重量%程度、好ましくは0.1〜1重量%となる範囲である。
【0023】
本発明の物品の洗浄方法は、本発明の洗浄剤をその曇点以上の温度でフラックス残渣が付着した被洗浄物に接触させることを特徴とする。被洗浄物としては、フラックス残渣、具体的にはロジン系フラックス残渣が付着したものであれば特に限定されない。例えば、ICやコンデンサ、抵抗器等の電子部品を、ロジン系フラックスを含むハンダペーストによってプリント基板に表面実装したものが挙げられる。また、ロジン系フラックスとしては、一般にロジン類をベース材としてものあれば特に限定されず、他に各種活性剤やチキソトロピック剤、添加剤等を含んでいてよい。
【0024】
被洗浄物に本発明の洗浄剤を接触させる手段は特に限定されず、例えば浸漬洗浄やシャワー洗浄、超音波洗浄、液中ジェット洗浄等の各種方法が挙げられる。また、洗浄の際に各種ミキシング手段を併用することにより、白濁状態が達成される。
【0025】
また、洗浄後の被洗浄物は乾燥工程に付される。乾燥後の水リンス工程は特に必要ないが、設ける場合には、リンス温度を本発明の洗浄剤の曇点以下とすることにより、前記
化合物(1)および
化合物(2)
をリンス水で除去しやすくなる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲がそれらによって何ら限定されないことはもとよりである。なお、部は重量基準である。
【0027】
<洗浄剤組成物の調製>
実施例1
(A)成分としてプロピルプロピレングリコール30部、(B)成分として純水70部をビーカーに入れ、よく撹拌することにより洗浄剤組成物を調製した。
【0028】
実施例1〜5、比較例1
各成分を表1に変更した他は実施例1に順じて洗浄剤組成物を調製した。なお、表中の数字は部数を示す。
【0029】
<洗浄試験用試験板の作製>
市販の銅板(2.0cm×4.0cm×0.3mm)にリング状の鉛フリーハンダ合金を載せた。次いで、市販のアクリル化ロジン(商品名「KE−604」、荒川化学工業(株)製)とイソプロピルアルコールからなるフラックス溶液(不揮発分80%)をリング内部にスポイドで三滴注入した。次いで当該銅板をホットプレートに載せ、250℃で加熱し、鉛フリーハンダ合金を溶融させたところ、フラックス残渣で覆われたドーム状のハンダ合金が残された。このようにして得られた銅板を洗浄試験基板Aとする。
【0030】
前記フラックス溶液に代えて、荒川化学工業(株)製の鉛フリーハンダフラックス(商品名「A59−26−35」;ベースロジンとしてKE−604、その他各種活性剤含む)とイソプロピルアルコールからなるフラックス溶液(不揮発分80%)を用い、前記同様の方法によりハンダ合金付の銅板を作製した。これを洗浄試験基板Bとする。
【0031】
<洗浄試験>
実施例1の洗浄剤組成物を100mLのビーカーに入れ、60℃に加温して、スターラーで撹拌し、懸濁状態にした。次いで、その状態の洗浄剤組成物に前記洗浄試験板AとBを浸漬し、フラックス残渣が溶解するまでの時間をそれぞれ測定し、以下の基準で洗浄力を評価した。他の実施例及び比較例の洗浄液組成物についても同様に洗浄力を評価した。
【0032】
3分未満・・・◎
3分以上、4分未満・・・○
4分以上、5分未満・・・△
5分以上・・・×
【0033】
<析出物の確認>
洗浄試験後、撹拌を止め、洗浄液の前記温度を維持した状態でその外観を観察し、析出物の発生の有無を以下の基準で目視判断した。
【0034】
析出物無し・・・○
析出物有り・・・×
【0035】
【表1】
【0036】
PFG:プロピルプロピレングリコール
PFDG:プロピルプロピレンジグリコール
BDG:ブチルジグリコール
HeDG:ヘキシルジグリコール
MEM:エチルエタノールアミン