特許第5945929号(P5945929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5945929-廃棄物ガス化溶融装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945929
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化溶融装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/24 20060101AFI20160621BHJP
   F23G 5/14 20060101ALI20160621BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20160621BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20160621BHJP
   C10J 3/00 20060101ALI20160621BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20160621BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   F23G5/24 B
   F23G5/24 C
   F23G5/14 F
   F23K1/00 Z
   B09B3/00 302C
   B09B3/00 302Z
   C10J3/00 L
   C10B53/00 A
   C10B53/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-85461(P2012-85461)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-213647(P2013-213647A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−93069(JP,A)
【文献】 特開2006−2042(JP,A)
【文献】 特開2012−31335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/24
B09B 3/00
C10B 53/00 − 53/02
C10J 3/00
F23G 5/14
F23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された廃棄物を熱分解そしてガス化し、コークスにより高温燃焼帯を形成し廃棄物の熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉と、ガス化し発生した可燃ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、二次燃焼した燃焼ガスから熱回収し蒸気を生成するボイラとを備える廃棄物ガス化溶融装置において、
バイオマス原料から炭化物を生成し、この炭化物を廃棄物ガス化溶融炉へコークスの一部の代替燃料として供給する炭化物製造装置を備え、
炭化物製造装置は、バイオマス原料を受入れバイオマス原料を加熱し熱分解して炭化物を生成する反応部と、反応部を加熱する加熱部とを有し
反応部が、生成した炭化物を廃棄物ガス化溶融炉の投入口へ供給するように接続され、
加熱部が、二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一方で回収される廃熱の供給を受けるように二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一方に接続されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項2】
炭化物製造装置は、該炭化物製造装置で炭化物とともに生成される揮発ガスを二次燃焼室へ燃料として供給するように、該二次燃焼室に接続されていることとする請求項1に記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項3】
二次燃焼室とボイラは、排ガスに含まれる飛灰が落下した落下飛灰を回収して排出する落下飛灰排出部を有しており、
上記落下飛灰を炭化物製造装置でバイオマス原料と混合するために該炭化物製造装置に供給するように上記落下飛灰排出部が炭化物製造装置に接続されていることとする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解、ガス化し、熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、ガス化して可燃性ガスを発生させ、熱分解残渣を溶融しスラグにして排出するガス化溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、残渣を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような処理を行なう溶融炉には幾つかの方式があるが、その一つとして、竪型をなすシャフト式廃棄物ガス化溶融炉がある。
【0004】
このシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉底部に堆積させた燃料としてのコークスを燃焼させ、この高温のコークス上へ廃棄物を投入して、熱分解及び部分酸化させてガス化するとともに残渣を溶融してスラグにする処理を行なう方式の炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト式廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の機能が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉底部にコークスを堆積させたコークス床を有する高温燃焼帯が形成され、この高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、炉体の上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部をなしている。
【0006】
かかる溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれで酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。高温燃焼帯には主羽口が設けられていて、投入されて堆積されたコークス床のコークスを燃焼させて、廃棄物の熱分解残渣を溶融する溶融熱源を得るために酸素富化空気が吹き込まれる。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させるとともに、廃棄物を熱分解及び部分酸化させるために空気が吹き込まれる。また、フリーボード部には三段目羽口が設けられ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持するために空気が吹き込まれる。
【0007】
このようにシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解され、ガスと残渣が生成される。主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス床のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の熱分解残渣が溶融されスラグとメタルとして排出される。高温燃焼帯のコークス燃焼により発生した高温ガスが高温燃焼帯の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出煙道より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出されガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、酸性ガス中和剤との反応により酸性ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【0008】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部にコークスを堆積させたコークス床が形成され、コークスが燃焼して熱分解残渣の溶融熱源となっているが、近年、化石燃料に由来するコークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減するとともに、廃棄物溶融炉の運転費を低減することが要望されている。一方、コークスの代替として建築廃材のおがくずを加熱圧縮成形し炭化した炭化物や木炭などの生物由来の有機性資源である塊状バイオマスを利用することで、生物の成長過程をも含めて全体としてみれば大気中の二酸化炭素を増加せずにコークス使用量の削減分だけ二酸化炭素排出量を削減する廃棄物溶融方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−060830
【特許文献2】特開2005−249310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
二酸化炭素排出量を削減するとともに、廃棄物溶融炉の運転費を低減するため、廃棄物溶融炉における燃料としてのコークスの使用量を低減するべく、特許文献2のようにコークスの代替として塊状バイオマスを購入して利用するとしても、購入される塊状バイオマスはコークスに比べてさほど安価ではないため、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができないという問題がある。また、まだ、塊状バイオマスは流通市場に安定して供給されるに到っていないため、購入や搬入の調整や、コストが嵩むことなどに問題があり、塊状バイオマスを利用して廃棄物ガス化溶融炉を安定して操業することができるか懸念がある。
【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減するとともに、溶融熱源を得る燃料の点で、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができ、安定した操業ができる廃棄物ガス化溶融装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
バイオマスはFAO(国際食料農業機関)によって分類されており、バイオマスとして、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材、稲わら、籾殻等の木質系バイオマス、さらに、製紙系バイオマス、農業残渣、家畜糞尿、食品廃棄物等の未利用バイオマス資源等を挙げることができる。本発明では、これらのバイオマスを原料として「バイオマス原料」と表記する。
【0013】
本発明に係る廃棄物ガス化溶融装置は、投入された廃棄物を熱分解そしてガス化し、コークスにより高温燃焼帯を形成し廃棄物の熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉と、ガス化し発生した可燃ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、二次燃焼した燃焼ガスから熱回収し蒸気を生成するボイラとを備える。
【0014】
かかる廃棄物ガス化溶融装置において、本発明ではバイオマス原料から炭化物を生成し、この炭化物を廃棄物ガス化溶融炉へコークスの一部の代替燃料として供給する炭化物製造装置を備え、炭化物製造装置は、バイオマス原料を受入れバイオマス原料を加熱し熱分解して炭化物を生成する反応部と、反応部を加熱する加熱部とを有し反応部が、生成した炭化物を廃棄物ガス化溶融炉の投入口へ供給するように接続され、加熱部が、二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一方で回収される廃熱の供給を受けるように二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一方に接続されていることを特徴としている。

【0015】
このような構成の本発明によれば、生物由来であるバイオマス原料を用いて、生物の成長過程を含めて全体としてみれば大気中の二酸化炭素を増加せずに、廃棄物ガス化溶融装置の一部として設けられた炭化物製造装置で炭化物を得て、これを溶融熱源を得る燃料として廃棄物ガス化溶融炉で燃焼させる。したがって、この炭化物使用量分だけ、廃棄物ガス化溶融炉へ供給する石炭コークス量が削減されることとなる。これは、その分だけ二酸化炭素の排出量を削減することになる。
【0016】
本発明において、炭化物製造装置は、該炭化物製造装置で炭化物とともに生成される揮発ガスを二次燃焼室へ燃料として供給するように、該二次燃焼室に接続されていることが好ましい。こうすることにより、炭化物とともに生成される揮発ガスを二次燃焼に利用でき、バイオマスの揮発可燃分を有効利用できる。
【0017】
本発明において、二次燃焼室とボイラは、排ガスに含まれる飛灰が落下した落下飛灰を回収して排出する落下飛灰排出部を有しており、上記落下飛灰を炭化物製造装置でバイオマス原料と混合するために該炭化物製造装置に供給するように上記落下飛灰排出部が炭化物製造装置に接続されていることが好ましい。落下飛灰をバイオマス原料と混合することで、炭化物製造装置においてバイオマス原料の空隙を飛灰で充填して炭化のための低酸素雰囲気がより確実に得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように、廃棄物ガス化溶融装置の一部として炭化物製造装置を備えることとし、炭化物製造装置でバイオマス原料から炭化物を得て、この炭化物を廃棄物ガス化装置の廃棄物ガス化溶融炉へ燃料として供給することとしたので、生物由来であるバイオマス原料を用いて、生物の成長過程を含めて全体としてみれば大気中の二酸化炭素を増加せずに、バイオマスから得た炭化物を燃料として廃棄物ガス化溶融炉で燃焼させる結果、この炭化物使用量だけ、廃棄ガス化溶融炉へ燃料として供給する石炭コークス量が削減されることとなり、その分だけ二酸化炭素の排出量を削減することになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態としての廃棄物ガス化溶融装置の概要構成図である。
図2図1装置における炭化物製造装置であって、(A)、(B)そして(C)に各種例の概要構成図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、竪型の廃棄物ガス化溶融炉に加えて、炭化物製造装置を設けたことを特徴としている。以下、これらの装置を含め本実施形態の廃棄物ガス化溶融装置を構成する各装置について、そしてそれらの関係について説明する。
【0021】
図1に示される本発明の一実施形態の廃棄物ガス化溶融装置は、竪型をなすシャフト式廃棄物ガス化溶融炉1(以下、ガス化溶融炉1とする)を有し、該ガス化溶融炉1の炉上部に、ガス化溶融されるべき処理対象としての廃棄物、燃料としての石炭コークス(以下「コークス」という)、そしてバイオマス炭化物(以下、「炭化物」という)、スラグの成分調整材としての石灰石を炉内へ投入するための投入口2が設けられ、また、上部側方には炉内のガスを炉外へ排出するためのガス排出口3が設けられている。また、ガス化溶融炉1の炉底部には溶融スラグと溶融金属を排出するための出滓口4が設けられている。
【0022】
上記ガス化溶融炉1の内部空間は、縦方向で3つの領域に大別されていて、下方から、炉下部に形成された下部シャフト部I、その上に位置する中部シャフト部II、上部に形成されたフリーボード部IIIを有する領域となっている。これらの各部I,II,IIIは、それぞれ次のような機能を有する領域となっている。すなわち、下部シャフト部Iは、炉下部に堆積されたコークスそして炭化物を燃焼させて高温燃焼帯を形成する領域、中部シャフト部IIは、この高温燃焼帯上に投入された廃棄物の堆積により形成された廃棄物層の廃棄物を熱分解させる領域、フリーボード部IIIは、廃棄物の燃焼により生成された可燃性ガスを部分燃焼させる領域である。
【0023】
ガス化溶融炉1の上方には、都市ごみ等の廃棄物、コークスそして炭化物、生成するスラグの成分調整材として使用する石灰石をそれぞれ供給する供給装置(図示せず)が配設されており、この供給装置から供給された廃棄物、コークスそして炭化物、石灰石は搬送コンベア(図示せず)により搬送され炉上部の上記投入口2から炉内に投入される。
【0024】
ガス化溶融炉1に形成された上記下部シャフト部I、中部シャフト部II、フリーボード部IIIの各部に対して、それぞれ酸素含有ガスを吹き込む羽口が炉壁に設けられている。すなわち、下部シャフト部Iには、堆積されたコークスそして炭化物を燃焼させて高温燃焼帯を形成し、熱分解残渣を溶融するための酸素富化空気を吹き込む主羽口5が設けられ、中部シャフト部IIには、投入されて堆積された廃棄物を部分燃焼させるとともに廃棄物を緩やかに流動させながら熱分解させるための空気を吹き込む副羽口6が設けられ、フリーボード部IIIには、廃棄物が熱分解して生成した可燃性ガスを部分燃焼させて内部を所定温度に維持するための空気を吹き込む三段羽口7が設けられている。
【0025】
ガス排出口3に二次燃焼室10が接続して設けられており、ガス化溶融炉1で廃棄物を熱分解して生成した可燃性ガスを受けてこれを燃焼する。二次燃焼室10には、二次燃焼のための空気を吹き込む空気送風口11と、後述の炭化物製造装置13からの揮発ガスを受けてこれを二次燃料室10へ供給する揮発ガス供給口が設けられているとともに、下部には落下飛灰排出部10Aが設けられている。また、二次燃焼室10で可燃性ガスを燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12が上記二次燃焼室10に連通して設けられている。
【0026】
炭化物製造装置13は、筒体に内部空間として形成された反応部と、該反応部に対して外部から熱を加える加熱部とを有している。例えば、図2(A)に示されるように、筒体13Aの内部を反応部とし、該筒体13Aの外周面をとり囲み環状空間を形成する環状筒体形状のジャケット13Bを加熱部とすることができる。かかる炭化物製造装置13は、反応部にバイオマス原料の投入を受け、加熱部が二次燃焼室10又はボイラ12からの廃熱の供給を受け、これを熱源として、上記反応部内のバイオマス原料を低酸素雰囲気で熱分解して炭化物と可燃性の揮発ガスとを生成し、これらを排出するようになっている。二次燃焼室10又はボイラ12からの廃熱の供給方法としては、発生させた蒸気を供給してもよいし、蒸気と熱交換させた熱媒体を供給してもよい、ここで、バイオマス原料としては食品残渣、木屑等保有熱量の高いものが好ましい。このような炭化物製造装置13は、生成された炭化物を上記廃棄物ガス化溶融炉1の投入口2へ供給するように接続され、また炭化物とともに生成された揮発性ガスを二次燃焼室10へ供給するように接続されている。
【0027】
炭化物製造装置13は、図2(A)の例に限られず、例えば、図2(B)のように、反応部として密閉された筒体13A’そしてその周囲に設けられた加熱部としてのジャケット13B’を有しており、上記筒体13A’内に攪拌部材13C’が回転している装置としてもよい。
【0028】
さらに、炭化物製造装置13は、図2(C)のように、横型として、反応部としての横型筒体13A’’の外周に加熱部としてのジャケット13B’’を設け、上記横型筒体13A’’内にらせん羽根を有しモータ13D’’で回転駆動される攪拌搬送部材13C’’を配することとしてもよい。この場合、横型筒体13A’’の左端開口からバイオマス原料を反応部へ供給し、右端開口から炭化物を取り出すことができ、バイオマス原料の供給そして炭化物の取り出しは連続して行うことができる。
【0029】
図1にて、二次燃焼室10に連設されたボイラ12の出口たる排気部12Aから排出される排ガスは、図示しない排ガス処理装置によりダストと酸性ガスが除去され大気に放出可能なように無害化され、煙突等を経て大気へ放出される。
【0030】
このような廃棄物ガス化溶融装置では、炭化物製造装置13がバイオマス原料から生成された炭化物をガス化溶融炉1へ燃料として供給するように該ガス化溶融炉1と接続されているとともに、上記炭化物製造装置13でバイオマス原料を乾留して炭化物を生成する際に、揮発する乾留ガスが可燃ガスを含んでいるので、好ましい形態として、同時に生成された揮発ガスを二次燃焼室10へ燃料として供給するように該二次燃焼室10と接続されていて、この揮発ガスを二次燃焼室10で燃焼して燃焼熱をボイラ12で熱回収し、バイオマス原料の熱エネルギーを有効利用できるようになっている。
【0031】
さらに、二次燃焼室10そしてボイラ12は、好ましい形態として、二次燃焼室10そしてボイラ12からの落下飛灰の少なくとも一部を、落下飛灰排出部10Aを経て落下飛灰を炭化物製造装置13へのバイオマス原料と混合すべく供給するように該炭化物製造装置13と接続されている。
【0032】
このように構成された本実施形態における廃棄物ガス化溶融装置の操業は次のように行われる。
【0033】
ガス化溶融炉1では、供給装置からの廃棄物、コークス、バイオマス炭化物、石灰石が該ガス化溶融炉1の上部に設けられた投入口2を経て、それぞれ所定量ずつ炉内へ投入され、主羽口5、副羽口6、及び三段羽口7から、それぞれ酸素富化空気又は空気が炉内へ吹き込まれる。上記投入口から投入された廃棄物は、炉内で中部シャフト部IIに堆積して廃棄物層を形成し、下部シャフト部Iの高温燃焼帯から上昇してくる高温ガス及び副羽口6から吹き込まれる空気によって乾燥され、次いで熱分解される。熱分解により生成した可燃性ガスの一部が、フリーボード部IIIにて、三段羽口7から吹き込まれる空気により燃焼されて雰囲気温度が850℃以上の温度に保たれ、タール分を分解させる等の処理が施されてから、発生ガスはガス化溶融炉1の上部に設けられているガス排出口3を経て、炉外に設けられた二次燃焼室10へ送られ、二次燃焼用空気が吹き込まれ燃焼し、その燃焼ガスがボイラ12へ送られ熱回収される。中部シャフト部IIの廃棄物層で廃棄物が熱分解した残渣は下降し、コークスが燃焼されている高温燃焼帯が形成されている下部シャフト部Iに達し、該下部シャフト部Iにて、残存する可燃物としての固定炭素が燃焼し、不燃物が溶融し溶融スラグと溶融金属になる。溶融スラグと溶融金属は出滓口4から排出され、炉外に設けられた水砕装置(図示せず)に供給され冷却固化され、冷却固化された水砕スラグと水砕金属が回収される。
【0034】
ガス化溶融炉1から二次燃焼室10へ送られた発生ガスに随伴されて排出された飛灰の一部は、二次燃焼室10の下部ホッパ部、ボイラ12の下部ホッパ部に落下して落下飛灰として落下飛灰排出部10Aから回収される。この両ホッパ部から回収された落下飛灰の少なくとも一部がバイオマス原料と混合されて、炭化物製造装置13へ供給される。落下飛灰排出部10Aで回収された飛灰の少なくとも一部が炭化物製造装置13のバイオマス原料供給部(図示せず)に搬送手段により搬送される。落下飛灰排出部10Aから回収された落下飛灰を一旦貯槽等に貯留し、貯槽等から炭化物製造装置13のバイオマス原料供給部(図示せず)に搬送されるようにしてもよい。炭化物製造装置13では、この落下飛灰がバイオマス原料の空隙を充填することにより空隙の酸素を少なくして低酸素雰囲気とし炭化を効率的に行うことができる。飛灰は炭化物と共に炭化物排出部(図示せず)から排出される。
【0035】
上記二次燃焼室10の燃焼により発生した燃焼ガスから、二次燃焼室10とボイラ12で回収した廃熱のうち少なくとも一部は、炭化物製造装置13への熱源として該炭化物製造装置13へ供給される。
【0036】
かかる炭化物製造装置13では、バイオマス原料供給部からのバイオマス原料を、二次燃焼室10そしてボイラ12から回収された飛灰と共に、反応部内に供給する。反応部内では、バイオマス原料同士間の空隙が飛灰で充満された低酸素雰囲気の状態で、二次燃焼室10とボイラ12での燃焼ガスの廃熱からの間接加熱により350〜500℃の温度のもとで熱分解して乾留・炭化が進行する。炭化雰囲気温度を350〜500℃の温度範囲とする理由は、350℃より低いとバイオマス原料の熱分解反応効率が低下し、500℃より高いと反応部を形成する部材の強度が低下して、支障が生ずるためである。
【0037】
バイオマス原料が熱分解される際に生成された揮発ガスは揮発ガス排出部(図示せず)から排出される。かくして、炭化物と飛灰は炭化物排出部から排出され、揮発ガスは揮発ガス排出部から排出される。
【0038】
上記炭化物排出部から排出された炭化物は、混在している飛灰と共にガス化溶融炉1へ燃料として供給され、溶融熱源として用いられる。飛灰は上記高温燃焼帯で熱分解残渣と共に溶融され、スラグ、メタルとして出滓口4から炉外へ排出される。揮発ガス排出部から排出された揮発ガスは、二次燃焼室10へ燃料として供給され、この乾留ガスを二次燃焼室10で燃焼して燃焼熱をボイラ12で熱回収し、バイオマス原料の熱エネルギーを有効利用できる。
【0039】
このような本発明では、バイオマス原料を炭化原料とし、二次燃焼室及びボイラから回収した廃熱を熱源とする炭化物製造装置により、ガス化溶融炉で発生した可燃ガスを燃焼した燃焼ガスの熱エネルギーを利用して炭化物を製造するため、下記の効果を奏することができる。
【0040】
・廃棄物ガス化溶融炉において、高温燃焼帯を形成するコークスの一部の代替として、廃棄物ガス化溶融装置の二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一つから回収した廃熱、すなわち、廃棄物から得た可燃ガスの燃焼熱を利用して製造した炭化物を利用するため、コークスの使用量を低減し、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができる。
【0041】
・バイオマス原料を炭化原料とし、廃棄物ガス化溶融炉の二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一つから回収した廃熱を熱源として製造する炭化物を利用するため、購入する炭化物より安価に炭化物を利用でき、コークスより安価な代替燃料として利用できる。
【0042】
・ガス化溶融炉に供給される廃棄物の一部を炭化原料とすることもできるので、ガス化溶融炉で溶融処理する廃棄物量を低減でき、溶融処理する廃棄物量の低減に伴い、溶融熱源として必要とするコークス使用量も低減できる。
【0043】
・炭化物を製造する熱エネルギーは、ガス化溶融炉で発生した可燃ガスを燃焼した燃焼ガスの熱エネルギーを利用するため、別に燃料を燃焼した熱エネルギーにより製造された炭化物を用いることに比べて、安価であり低い費用でコークス使用量を低減することができる。
【0044】
・廃棄物に飛灰を混合して炭化物製造装置に供給し、廃棄物の間隙に飛灰を充填させ空隙に酸素を存在させないようにして低酸素雰囲気を容易に構築でき、炭化物を効率よく製造することができる。さらに、炭化物製造装置から排出される炭化物と飛灰をガス化溶融炉内へ供給することにより、飛灰を溶融しスラグ、メタルとして排出するので、ガス化溶融炉から発生ガスに随伴されて排出され集塵機により捕集され回収して、無害化処理する必要のある飛灰量を低減することができ、飛灰処理費用を低減することができる。
【0045】
・炭化物製造装置において廃棄物を炭化する際に発生する乾留ガスを二次燃焼室に供給し燃焼して燃焼ガスから熱回収することにより、廃棄物中の可燃分の保有する発熱量を有効に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 廃棄物ガス化溶融炉
10 二次燃焼室
10A 落下飛灰排出部
12 ボイラ
13 炭化物製造装置
図1
図2