(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945938
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】エアゾール容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/70 20060101AFI20160621BHJP
B65D 83/38 20060101ALI20160621BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
B65D83/70
B65D83/38
B05B9/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-123457(P2012-123457)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-249074(P2013-249074A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明彦
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 巧
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−238866(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3130193(JP,U)
【文献】
特開2007−176536(JP,A)
【文献】
特開2006−103754(JP,A)
【文献】
特開平07−300168(JP,A)
【文献】
特開2006−176131(JP,A)
【文献】
特開2004−099180(JP,A)
【文献】
米国特許第05199615(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0127022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D83/08−83/76
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状内容物及び噴射剤を高圧状態で収容する容器本体(2)と、マウンティングキャップ(20)を介して前記容器本体(2)の口筒部(3)に装着されて前記液状内容物を噴出させるバルブ機構(10)とを備えたエアゾール容器であって、
前記口筒部(3)の内周面(3A)の平面視形状が楕円状に形成されていると共に、楕円の長径領域(φα)に対応する内周面(3A)上の2箇所に前記口筒部(3)の径方向の厚みが最も薄い薄肉部(3a)を有し、さらに前記口筒部(3)の外周面(3B)上で且つ前記2箇所の薄肉部(3a)と対応する位置に外溝(3b)がそれぞれ形成されていることを特徴とするエアゾール容器。
【請求項2】
容器本体(2)が、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートで形成されている請求項1記載のエアゾール容器。
【請求項3】
バルブ機構(10)が、フランジ(12)を有するハウジング(11)と、液状内容物を外部に吐出する吐出通路(13a)と前記吐出通路(13a)に連通する連通路(13b)とを有し、マウンティングキャップ(20)の上面に形成された挿通孔(20b)に挿通されて移動自在に設けられたステム(13)と、前記ハウジング(11)に設けられ、前記ステム(13)の移動に応じて前記挿通孔(20b)の閉鎖及びその解除を行うステムラバー(17)と、前記容器本体(2)の口筒部(3)の上面と前記フランジ(12)の下面との間に配置されるパッキン(15)と、前記ハウジング(11)内に内蔵されると共に前記ステム(13)を上方に付勢するコイルスプリング(16)と、前記ハウジング(11)の下端に連通し前記容器本体(2)の底部(7)方向に延びるディップチューブ(14)と、を有して構成される請求項1又は2に記載のエアゾール容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下での内圧上昇による容器本体の破裂を防止する防爆機構を備えたエアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状内容物を噴射剤と共に容器内に高圧状態で収容し、容器本体の上部に取り付けられたバルブ機構から液状内容物を噴出させるようにしたエアゾール容器が広く利用されている。
このようなエアゾール容器を、例えば直射日光の照射によって高温環境下となりやすい自動車内等に放置したりすると、容器本体内の圧力が上昇して破裂し、バルブ機構がエアゾール容器から飛び出す虞がある。
【0003】
このため容器本体の破裂を防止する防爆機構を備えたエアゾール容器が開発されており、このようなエアゾール容器としては例えば以下の特許文献1及び特許文献2などが存在する。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載のエアゾール容器は、共に容器本体の口元部の外周面に略縦軸方向に延びる縦溝を形成し、容器本体が破裂する前に、口元部とこの口元部を封止するマウンティングキャップとの間のシール圧を減少させて封止状態を解除すると共に、縦溝を通じて内部の液状内容物及び噴射剤を外部に逃がすことにより、容器本体の内圧の上昇を抑制するようにした構成である。
【0005】
ここでシール圧を減少させる方法は、特許文献1に記載のエアゾール容器がマウンティングキャップの変形を利用する構成であるのに対し、特許文献2に記載のエアゾール容器は容器側の熱変形を利用する構成である。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載のエアゾール容器では、高温下で内圧が異常に上昇したとき、ハウジングに上向きの力がかかり、マウンティングキャップの下端縁が外向きに広がってマウンティングキャップがいくらか上昇するため、ガスケットないしステムラバーのシール圧が不充分になり、容器内部のガスが外部に漏れ出る、というものである。
【0007】
他方、特許文献2に記載のエアゾール容器では、高温下に置かれた容器本体11の口元部14における下端部26が熱変形して、マウンティングカップ12の裾部28を保持する保持力が弱くなると共に、容器本体11の内部圧力が上昇して容器本体11が変形し、その首部15の変形によりマウンティングカップ12の裾部28が押し拡げられることを利用したものであり、マウンティングカップ12が、バルブ機構13と共に容器本体11の軸方向に若干移動し、バルブ機構13のフランジ部18Aと容器本体11の口元部14における上面14Aとの間にリーク通路29が形成される、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−99180号公報
【特許文献2】特開平7−300168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のエアゾール容器では、上昇した内圧がハウジングに作用して直接マウンティングキャップを持ち上げる構成であるため、内圧が均一に作用しないと、マウンティングキャップを均等に持ち上げることができなくなってガス抜き作業が不十分になやすい、と云う問題がある。特に口元部の開口面積が広くなるほど、このような問題は顕著となりやすい。
【0010】
他方、特許文献2に記載のエアゾール容器では、首部の変形を利用する構成であるため、マウンティングキャップを均等に持ち上げることが可能であり、特許文献1に比較してガス抜き作業を確実に行うことが可能となっている。
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載のエアゾール容器では首部の変形量が極めて小さいため、マウンティングカップの軸方向への移動が十分ではなく、ガス抜き作業を迅速且つ確実に行うには限界がある、と云う問題がある。
【0012】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、防爆機構を備えたエアゾール容器において、高温環境下において容器本体の口筒部上端に変形を生じさせてリーク通路を確保することにより、ガス抜き作業の迅速性及び確実性を向上させたエアゾール容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
液状内容物及び噴射剤を高圧状態で収容する容器本体と、マウンティングキャップを介して容器本体の口筒部に装着されて液状内容物を噴出させるバルブ機構とを備えたエアゾール容器であって、
口筒部の内周面の平面視形状
が楕円状に形成
されていると共に、
楕円の長径領域に対応する内周面上の2箇所に口筒部の径方向の厚み
が最も薄い薄肉部を有し、さらに口筒部の外周面上で且つ2箇所の薄肉部と対応する位置に外溝がそれぞれ形成されていることを特徴とする、と云うものである。
【0014】
上記手段からなるエアゾール容器では、楕円の長径領域に対応する口筒部の径方向の厚みを肉薄化した薄肉部とすることにより、この薄肉部の機械的強度の弱化を達成する。このため、本体容器が高温環境下に置かれて内圧が異常に高まり、上昇した内圧が作用することで薄肉部を起点とする口筒部の変形が容易となる。さらに温度が上昇した場合には、熱変形が加わることでさらなる口筒部の変形の促進が達成される。
【0016】
また、長径領域に対応する外周面、すなわち薄肉部に対応する外周面上に外溝をそれぞれ配置することにより、口筒部の部分的な肉薄化をさら促進することでさらなる変形の容易化を達成する。
【0017】
また本発明の他の手段は、
請求項1記載のエアゾール容器において、容器本体
が、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートで形成
されている、と云うものである。
【0018】
上記手段では、楕円状からなる口筒部の内周面及び外溝の形成を容易に行うことができると共に、口筒部の内圧上昇による変形を達成する。
【0019】
また本発明の他の手段は、請求項1
又は2に記載のエアゾール容器において、バルブ機構が、フランジを有するハウジングと、液状内容物を外部に吐出する吐出通路と吐出通路に連通する連通路とを有し、マウンティングキャップの上面に形成された挿通孔に挿通されて移動自在に設けられたステムと、ハウジングに設けられ、ステムの移動に応じて挿通孔の閉鎖及びその解除を行うステムラバーと、容器本体の口筒部の上面とフランジの下面との間に配置されるパッキンと、ハウジング内に内蔵されると共にステムを上方に付勢するコイルスプリングと、ハウジングの下端に連通し容器本体の底部方向に延びるディップチューブと、を有して構成される、と云うものである。
【0020】
上記手段では、容器本体内に液体内容物及び噴射剤(ガス)を高圧状態で収容すると共に液体内容物の外部への吐出を達成する。
また高温環境下に置かれたときには、本体容器側の口筒部の変形によってマウンティングキャップを持ち上げ、口筒部の上面とマウンティングキャップの下面に配置されるパッキンとの間にリーク通路の形成を達成する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、内圧が上昇すると、楕円状の内周面を有する口筒部は、長径領域に設けられた薄肉部を起点として容易に変形し、上端面のうち短径領域に設けられた押上げ面が上方に盛り上がるように隆起変形するようになる。その結果、押上げ面がマウンティングキャップを均等に持ち上げるため、上端面のうち長径領域に設けられたリーク面とマウンティングキャップの下面に設けられたパッキンとの間にリーク通路が形成され、内部のガス抜き作業を迅速且つ確実に行うことができる。よって、エアゾール容器の安全性を向上させることができる。
【0022】
ま
た口筒部の上端面のうちの押上げ面の上方への変形を容易とすることができるため、リーク通路が確保されてガス抜き作業の迅速性及び確実性をさらに向上させることができる。
【0023】
また請求項
2に記載の、容器本体
が、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートで形成
されている構成では、液状内容物及び噴射剤を高圧状態で収容することができると共に、高温環境下に置かれたときに、温度上昇に伴う内圧上昇による変形を口筒部に生じさせることが可能となるため、ガス抜き作業の迅速性及び確実性に優れたエアゾール容器を提供することができる。
【0024】
また請求項
3に記載の、バルブ機構が、フランジを有するハウジングと、液状内容物を外部に吐出する吐出通路と吐出通路に連通する連通路とを有し、マウンティングキャップの上面に形成された挿通孔に挿通されて移動自在に設けられたステムと、ハウジングに設けられ、ステムの移動に応じて挿通孔の閉鎖及びその解除を行うステムラバーと、容器本体の口筒部の上面とフランジの下面との間に配置されるパッキンと、ハウジング内に内蔵されると共にステムを上方に付勢するコイルスプリングと、ハウジングの下端に連通し容器本体の底部方向に延びるディップチューブと、を有して構成されるものでは、液体内容物及び噴射剤(ガス)を高圧状態で収容した容器本体内から液体内容物を確実に吐出することができる。また高温環境下に置かれたときには、本体容器側の口筒部の変形によってマウンティングキャップを持ち上げ、口筒部の上面とマウンティングキャップの下面に配置されるパッキンとの間にリーク通路を形成するため、ガス抜き作業を確実且つ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のエアゾール容器の実施例を示す正面図である。
【
図2】エアゾール容器の部分断面図であると共にバルブ機構の構成を示す断面図である。
【
図3】エアゾール容器を構成する容器本体の口筒部を示す平面図である。
【
図4】変形前の口筒部を示す半断面図であり、Aは
図3のA−A線半断面図、Bは
図3のB−B線半断面図である。
【
図5】変形後の口筒部を示す断面図であり、Aは
図3のA−A線断面図、Bは
図3のB−B線断面図である。
【
図6】バルブ機構を装着した状態における変形後の口筒部を示す断面図であり、Aは
図3のA−A線断面に相当する断面図、Bは
図3のB−B線断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明のエアゾール容器の実施例を示す正面図、
図2はエアゾール容器の部分断面図であると共にバルブ機構の構成を示す断面図、
図3はエアゾール容器を構成する容器本体の口筒部を示す平面図、
図4は変形前の口筒部を示す半断面図であり、Aは
図3のA−A線半断面図、Bは
図3のB−B線半断面図、
図5は変形後の口筒部を示す断面図であり、Aは
図3のA−A線断面図、Bは
図3のB−B線断面図、
図6はバルブ機構を装着した状態における変形後の口筒部を示す断面図であり、Aは
図3のA−A線断面に相当する断面図、Bは
図3のB−B線断面に相当する断面図である。
【0027】
図1に示すエアゾール容器1は、有底円筒状の容器本体2と、容器本体2の上端にマウンティングキャップ20を介して装着されたバルブ機構10とを有して構成されている。
容器本体2は、最上端に設けられた口筒部3、口筒部3の下端部3cから下方に垂直に形成された首部4、首部4から下方に向かって拡径状に形成された肩部5、肩部5から下方に向かってほぼ一定の径寸法で形成された胴部6及びペタロイド状からなる底部7を有し、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)などからなる合成樹脂を材料として、周知の2軸延伸ブロー成形品として一体に成型されている。この容器本体2の肉厚寸法は比較的厚く形成されており、さらに底部7をペタロイド状に形成することで容器全体として優れた耐圧特性を備えている。液体内容液とガス状の噴射剤とは、このような容器本体2の内部に充填される。
【0028】
図3に示すように、口筒部3の内周面3Aは長径φα及び短径φβを有して楕円状に形成されている。口筒部3の径方向の厚みは、長径φα側の領域(長径領域φα)が最も薄く、この部分が薄肉部3aであり、最も機械的強度が弱化した部分となっている。また口筒部3の短径φβ側の領域(短径領域φβ)は径方向の厚み寸法が最も厚く構成されており、機械的強度が最も強化された部分となっている。
なお、
図3に示すように、口筒部3の上端面3Cのうち、長径領域φαの上端面3Cが押上げ面3C1,3C1として機能し、短径領域φβの上端面3Cがリーク面3C2,3C2として機能する。
【0029】
図3に示すように、口筒部3の外周面3B上で且つ長径領域φαの軸対称となる位置には外溝3b,3bが形成されている。
図4に示すように、この実施例に示す外溝3b,3bは口筒部3の外周面3Bを軸方向(又は縦方向)に貫通する縦溝で形成した構成である。
ただし、外溝3b,3bは貫通する縦溝に限られるものではなく、例えば外溝3bの上端は連結されて閉じており、下端のみを開放した構成であってもよい。
【0030】
図2に示すように、このバルブ機構10は、フランジ12を有するハウジング11に、ステム13が軸方向に移動自在に内蔵されている。ハウジング11の下部には、容器本体2の底部7方向に延びるディップチューブ14が嵌合されている。フランジ12と容器本体2の口筒部3の上端面3Cとの間にはパッキン15が設けられている。マウンティングキャップ20は、このフランジ12から容器本体2の口筒部3の外周を覆い、口筒部3の外周面3Bの下端部3cまで延びてハウジング11を容器本体2に強固に組み付けている。
【0031】
ハウジング11内にはコイルスプリング16が内蔵されており、ステム13を上方に付勢している。またステム13の中心には、軸方向に延びる吐出通路13aと、半径方向に穿設されて吐出通路13aに連通する連通路13bとが設けられている。
【0032】
またハウジング11の天面11Aとマウンティングキャップ20の下面との間に、連通路13bを閉鎖するステムラバー17が介装されている。通常時には、コイルスプリング16の付勢力によってステムラバー17が連通路13bを加圧するため、連通路13bが閉鎖される。そして、ステム13をコイルスプリング16の付勢力に抗して下方に押圧すると、連通路13bの閉鎖が解除されるため、容器本体2内の液体内容物がディップチューブ14からハウジング11内及び連通路13bを通って吐出通路13aに導かれ、この吐出通路13aの先端から外部へ吐出されるようになっている。
【0033】
マウンティングキャップ20は、例えばアルミニウム合金等によって形成されている。マウンティングキャップ20は、ステム13が挿入される挿通孔20bを備えた上面部20aと、上面部20aの周端縁から下方に向かって連設された筒状の裾部20cと、裾部20cの下端を折り曲げることで形成された係合部20dを有して構成成されている。
マウンティングキャップ20を口筒部3に装着したバルブ機構10の上から被せた状態で係合部20dをカシメ固定することにより、マウンティングキャップ20が口筒部3の上部に冠着されている。
【0034】
エアゾール容器1が高温環境下に置かれると、容器本体2内の温度上昇に伴って内圧も上昇する。
図5A、Bに示すように、容器本体2を高温環境下に置くと、上昇した内圧が容器本体2を外方向に向かって加圧する。特に拡径状に広がる肩部5に作用する加圧力は肩部5を斜め上方に加圧するため、最も機械的強度の弱化した長径領域φαに設けられた薄肉部3aに変形が生じる。このため、
図5A及び
図5Bに示すように、長径領域φαと直交する短径領域φβに設けられた押上げ面3C1,3C1が上方に隆起変形する。
その結果、
図6Aに示すように、押上げ面3C1,3C1がマウンティングキャップ20を均等に持ち上げるため、短径領域φβと直交する長径領域φαにおいてパッキン15とリーク面3C2,3C2との間にリーク通路21,21が形成される。
【0035】
そして、
図6A及び
図6Bに示すように、口筒部3が変形するとそれに伴って口筒部3の外周面3Bとマウンティングキャップ20の裾部20cとの当接部分に歪が生じて、係合部20dと下端部3cとの係合状態が解除される。このため、リーク通路21,21及び外周面3Bに形成されている外溝3b,3bを介して容器本体2内から液体内容物や噴射剤を外部に逃がすことができる。
なお、外溝3b,3bが形成されていなくとも液体内容物や噴射剤を外部に逃がすことが可能であるが、上記実施例のように外溝3b,3bを形成する構成では、より確実且つ迅速に液体内容物や噴射剤を外部に逃がすことができる。
【0036】
すなわち、内圧上昇に伴って肩部5が斜め上方の加圧力を受けると、その力は最も機械的強度の弱い部分である外溝3b,3bに集中する。そして、
図5Bに示すように、外溝3bは、その上端を基端として下端側が外方向に広がるように変位して全体的に略扇形状に変形する。このような外溝3b,3bの変形は、口筒部3の外周面3B上で且つ長径領域φαの両側でそれぞれ起こり、押上げ面3C1,3C1の変形を助長する。
【0037】
その結果、短径領域φβにおいてパッキン15と口筒部3のリーク面3C2,3C2との間に形成されるリーク通路21,21が容易に確保され、ガス抜き作業をより迅速且つ確実に行うことができる。よって、安全性に優れた防爆機能を備えたエアゾール容器とするこことができる。
【0038】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0039】
上記実施例では、口筒部3の内周面3Aを楕円状に形成し、且つ長径領域φαに対応する外周面3Bに外溝3b,3bを配置した構成を示して説明したが、本発明は少なくとも口筒部3の内周面3Aを楕円状に形成ることにより、マウンティングキャップ20を均等に持ち上げてリーク通路21,21を形成することが可能である。
そして、上述したようにこの構成に加えて外溝3b,3bを、長径領域φαに対応する外周面3B上に形成すると、口筒部3の変形がさらに容易となってマウンティングキャップ20をより確実に持ち上げることが可能となるため、リーク通路21,21のより確実に確保することが可能となる。
【0040】
また上記実施例では、外溝3bとして、上端から下端にかけての溝幅が一定の縦溝を示して説明したが、あらかじめ下端側の溝幅を上端側の溝幅よりも広めに形成しておいてもよい。この構成では、高温環境下における口筒部3の変形を助長することができるため、開口面積の大きなリーク通路21,21の形成をより確実に達成することが可能となる。
【0041】
また上記実施例では、ステム13を下方に向かって加圧することにより、液状内容物が吐出される場合を示して説明したが本発明は上記実施例に限られるものではなく、ステム13を外径方向に押圧して傾けることによって液状内容物が吐出されるエアゾール容器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のエアゾール容器は、防爆機構を備えたエアゾール容器の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ; エアゾール容器
2 ; 容器本体
3 ; 口筒部
3A ; 口筒部の内周面
3B ; 口筒部の外周面
3C ; 口筒部の上端面
3C1; 上端面上の押上げ面
3C2; 上端面上のリーク面
3a ; 薄肉部
3b ; 外溝
3c ; 口筒部の外周面の下端部
4 ; 首部
5 ; 肩部
6 ; 胴部
7 ; 底部
10 ; バルブ機構
11 ; ハウジング
11A; ハウジングの天面
12 ; フランジ
13 ; ステム
13a; 吐出通路
13b; 連通路
14 ; ディップチューブ
15 ; パッキン
16 ; コイルスプリング
17 ; ステムラバー
20 ; マウンティングキャップ
20a; 上面部
20b; 挿通孔
20c; 裾部
20d; 係合部
21 ; リーク通路
φα ; 長径又は長径領域
φβ ; 短径又は短径領域