(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945945
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
F23L 1/02 20060101AFI20160621BHJP
F23J 1/00 20060101ALI20160621BHJP
F23G 5/20 20060101ALI20160621BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
F23L1/02
F23J1/00 B
F23G5/20 A
F23L15/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-170200(P2012-170200)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29244(P2014-29244A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 亨
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−088022(JP,A)
【文献】
特開昭61−161304(JP,A)
【文献】
特開2003−114015(JP,A)
【文献】
特開2002−039516(JP,A)
【文献】
特開2006−207969(JP,A)
【文献】
特開2001−027410(JP,A)
【文献】
特開2003−269711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 1/02
F23G 5/20
F23J 1/00
F23L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉と、該廃棄物焼却炉に接続され該廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を加熱処理または溶融処理する灰処理炉と、燃料及び燃焼用空気の供給を受けて燃焼火炎を該灰処理炉内に吹き込む加熱装置とを備える廃棄物処理装置において、
上記灰処理炉の炉内温度を測定する温度測定装置と、該温度測定装置で測定された炉内温度に基づいて、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御する制御装置とを有し、
制御装置は、温度測定装置で測定された炉内温度の変動を検知することにより、加熱装置に供給される燃焼用空気量と灰処理炉にリーク流入する空気量との和をなす加熱装置の燃焼に使われる総空気量の変動を検知し、温度測定装置で測定された炉内温度が所定の温度より低下するときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を減少して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量のうちの灰処理炉にリーク流入する空気量の増加分と相殺して、総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御し、また、温度測定装置で測定された炉内温度が所定の温度より上昇するときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を増加して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御することで、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にして、灰処理炉内温度を所定の温度にするように、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御することを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
灰処理炉は、廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を溶融処理する灰溶融炉であり、
温度測定装置は、上記灰溶融炉内で生成された溶融スラグの温度を測定する放射温度計であることとする請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
廃棄物焼却炉と、該廃棄物焼却炉に接続され該廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を加熱処理または溶融処理する灰処理炉と、燃料及び燃焼用空気の供給を受けて燃焼火炎を該灰処理炉内に吹き込む加熱装置とを備える廃棄物処理装置において、
上記灰処理炉から排出される排ガスの組成を検出するガス分析装置と、該ガス分析装置で検出された排ガスの組成に基づいて、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御する制御装置とを有し、
制御装置は、ガス分析装置で検出された排ガスの組成の変動を検知することにより、加熱装置に供給される燃焼用空気量と灰処理炉にリーク流入する空気量との和をなす加熱装置の燃焼に使われる総空気量の変動を検知し、ガス分析装置で検出された排ガス中の酸素濃度が所定の濃度より増加するとき及び一酸化炭素濃度が所定の濃度より低下するときのうち少なくとも一つのときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を減少して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量のうちの灰処理炉にリーク流入する空気量の増加分と相殺して、総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御し、また、ガス分析装置で検出された排ガス中の酸素濃度が所定の濃度より低下するとき及び一酸化炭素濃度が所定の濃度より増加するときのうち少なくとも一つのときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を増加して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御することで、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にして、排ガスの組成を所定の組成にするように、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御することを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項4】
蒸気による空気の間接加熱又は燃料燃焼による空気加熱により、高温空気を生成する高温空気生成装置をさらに有し、該高温空気生成装置は、高温空気を燃焼用空気として加熱装置に供給するように加熱装置に接続されていることとする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
廃棄物焼却炉からの排ガスの一部と外部からの空気を混合し高温空気を生成する高温空気生成装置をさらに有し、該高温空気生成装置は、高温空気を燃焼用空気として加熱装置に供給するように加熱装置に接続されていることとする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の廃棄物処理装置。
【請求項6】
廃棄物焼却炉と、該廃棄物焼却炉に接続され該廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を加熱処理または溶融処理する灰処理炉と、燃料及び燃焼用空気の供給を受けて燃焼火炎を該灰処理炉内に吹き込む加熱装置とを備える廃棄物処理装置による廃棄物処理方法において、
上記灰処理炉の炉内温度を測定し、測定された炉内温度に基づいて、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御することとし、
上記燃焼用空気の供給量の制御は、測定された炉内温度の変動を検知することにより、加熱装置に供給される燃焼用空気量と灰処理炉にリーク流入する空気量との和をなす加熱装置の燃焼に使われる総空気量の変動を検知し、測定された炉内温度が所定の温度より低下するときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を減少して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量のうちの灰処理炉にリーク流入する空気量の増加分と相殺して、総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御し、また、測定された炉内温度が所定の温度より上昇するときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を増加して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御することで、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にして、灰処理炉内温度を所定の温度にするように、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御するように行うことを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項7】
廃棄物焼却炉と、該廃棄物焼却炉に接続され該廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を加熱処理または溶融処理する灰処理炉と、燃料及び燃焼用空気の供給を受けて燃焼火炎を該灰処理炉内に吹き込む加熱装置とを備える廃棄物処理装置による廃棄物処理方法において、
上記灰処理炉から排出される排ガスの組成を検出し、検出された排ガスの組成に基づいて、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御することとし、
上記燃焼用空気の供給量の制御は、検出された排ガスの組成の変動を検知することにより、加熱装置に供給される燃焼用空気量と灰処理炉にリーク流入する空気量との和をなす加熱装置の燃焼に使われる総空気量の変動を検知し、検出された排ガス中の酸素濃度が所定の濃度より増加するとき及び一酸化炭素濃度が所定の濃度より低下するときのうち少なくとも一つのときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を減少して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量のうちの灰処理炉にリーク流入する空気量の増加分と相殺して、総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御し、また、検出された排ガス中の酸素濃度が所定の濃度より低下するとき及び一酸化炭素濃度が所定の濃度より増加するときのうち少なくとも一つのときに、加熱装置への燃焼用空気の供給量を増加して、加熱装置の燃焼に使われる総空気量を加熱装置の燃焼に使われる空気の予め設定された供給量とするように制御することで、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にして、排ガスの組成を所定の組成にするように、上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御するように行うことを特徴とする廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却炉で廃棄物を焼却処理し、該廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を灰処理装置で加熱処理または溶融処理する廃棄物処理装置
及び廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、焼却炉から排出された焼却灰を加熱して溶融するロータリキルン型の灰溶融炉が開示されている。該灰溶融炉は、炉本体であるロータリキルンの一端側に焼却灰を溶融するための加熱装置としての燃焼バーナが設けられている。該燃焼バーナは、燃料および燃焼用空気の供給を受けて燃焼火炎を灰溶融炉内に吹き込むことにより、焼却灰を直接加熱そして溶融する。
【0003】
この特許文献1の加熱装置では、一般的に、上記加熱装置に供給される燃焼用空気の空気比は予め所定の値に設定されており、廃棄物処理装置の運転中に変更されることはない。ここで、「空気比」とは、供給する燃料の燃焼に必要な理論空気量に対する実際に供給する空気量の比率である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−156893
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、廃棄物処理装置の運転中、次に述べるような問題が生じる。まず、廃棄物処理装置の周囲の環境、例えば気温等に起因して、該燃焼用空気の温度が変動した場合、その変動に応じて該燃焼用空気の空気密度が変動するので、燃焼用空気の実際の供給量は変動することとなる。この結果、予め設定した空気比で加熱装置に燃焼用空気を供給できなくなり、加熱装置から灰溶融炉内に吹き込まれ燃焼する火炎の温度が不安定となり、その結果、灰溶融炉の炉内温度は不安定となる。
【0006】
また、特許文献1のように、灰溶融炉の炉本体がロータリキルンである場合には、該ロータリキルンの回転部と固定部との摺動部分に設けられたシール部の摩耗や経年劣化、さらには該ロータリキルン自体の熱膨張等に起因して、ロータリキルン内に外部の空気が流入することがある。このように外部からの空気(リーク空気)が流入すると、その分、燃焼バーナの燃焼に使われる空気量が増加する。したがって、予め設定した空気比で燃焼用空気を供給したとしても、実質的には燃焼バーナの燃焼において空気比が大きくなっていることになり、灰溶融炉内で燃焼する火炎の温度が低下し、その結果、灰溶融炉内温度が低下する。加熱装置から吹き込まれ燃焼する火炎の温度が不安定となることにより灰溶融炉の炉内温度が不安定となったり、火炎の温度が低下することにより灰溶融炉の炉内温度が低下すると、灰溶融炉内での焼却灰の溶融や熱処理が十分に行われないという問題が生じる。
【0007】
また、火炎温度および灰溶融炉内温度が低下した場合には、通常、加熱装置への燃料の供給量を増加させるなどの対策が講じられるが、その場合、燃料の増加分に応じてコストも増大してしまう。また、リーク空気量が増大し、灰溶融炉内で燃焼する火炎温度および灰溶融炉温度が大きく低下して、燃料の供給量の増加だけでは対処しきれない場合には、リークを防止するように灰溶融炉の大規模な補修を行う必要が生じ、コスト的に大きな損失に繋がる。
【0008】
このような事情に鑑みて、本発明は、灰溶融炉内を加熱する加熱装置に供給される燃焼用空気の温度が変動したり、灰溶融炉に外部からリーク空気が流入する場合でも、灰溶融炉内で燃焼する火炎温度および灰溶融炉温度が不安定となったり低下したりすることにより、灰溶融炉内での焼却灰の溶融や熱処理が適正に行われなくなることを防止する廃棄物処理装置
及び廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る廃棄物処理装置は、廃棄物焼却炉と、該廃棄物焼却炉に接続され該廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を加熱処理または溶融処理する灰処理炉と、燃料および燃焼用空気の供給を受けて燃焼火炎を該灰処理炉内に吹き込む加熱装置とを備える。
【0010】
かかる廃棄物処理装置において、本発明では、上記灰処理炉の炉内状況を検出する炉内状況検出装置と、該炉内状況検出装置で検出された炉内状況に基づいて、炉内が予め設定された状況となるように上記加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御する制御装置とを有することを特徴としている。
【0011】
このように、本発明では、炉内状況検出装置で検出された炉内状況に基づいて、炉内が予め設定された状況となるように加熱装置への燃焼用空気の供給量が制御される。この結果、廃棄物処理装置の運転中に、例えば、燃焼用空気の温度変動や灰処理炉へのリーク空気の流入に起因する炉内状況の変動が生じた場合でも、灰処理炉内全体を見たときに、該灰処理炉内に供給そして流入する総空気量と、予め設定された加熱装置への燃焼用空気の供給量とが等しくなるように、加熱装置への燃焼用空気の供給量が制御される。したがって、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にできるので、加熱装置から吹き込まれる火炎温度及び灰処理炉内温度を安定させ、最適な炉内状況を維持でき、灰処理炉内での焼却灰の溶融や熱処理を適正に行うことができる。
【0012】
炉内状況検出装置は、灰処理炉の炉内温度を測定する温度測定装置であり、制御装置は、上記温度測定装置で測定された炉内温度に基づいて、炉内温度が所定の温度となるように燃焼用空気の供給量を制御することが好ましい。
【0013】
既述したように、燃焼用空気の温度や灰処理炉内へのリーク空気量が変動すると、灰処理炉の炉内温度が変動する。具体的には、燃焼用空気の温度が上昇すると炉内温度が上昇し、リーク空気量が増加すると炉内温度が低下する傾向にある。上述したように、本発明では、上記温度測定装置で測定された炉内温度に基づいて、炉内温度が所定の温度となるように加熱装置への燃焼用空気の供給量が制御される。この結果、廃棄物処理装置の運転中に灰処理炉の炉内温度が変動しても、灰処理炉内全体を見たときに、該灰処理炉内に供給そして流入する総空気量と、予め設定された加熱装置への燃焼用空気の供給量とが等しくなるように、加熱装置への燃焼用空気の供給量が制御される。したがって、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にでき、灰処理炉内で燃焼する火炎温度および灰処理炉内温度を所定の温度に維持でき、灰処理炉内での焼却灰の溶融や熱処理が適正に行われる。また、灰処理炉は、廃棄物焼却炉から排出された焼却灰を溶融処理する灰溶融炉であり、温度測定装置は、上記灰溶融炉内で生成された溶融スラグの温度を測定する放射温度計であることが好ましい。
【0014】
炉内状況検出装置は、灰処理炉から排出される排ガスの組成を検出するガス分析装置であり、制御装置は、上記ガス分析装置で検出された排ガスの組成に基づいて、排ガスの組成が所定の組成になるように燃焼用空気の供給量を制御することとしてもよい。
【0015】
灰処理炉内で廃棄物の焼却灰を加熱し溶融する際に、発生する排ガスには一酸化炭素など有害物が含まれるため、煙突等から排出する排ガス中のこれら有害物の濃度が規制されていて、この規制に適合するように灰処理炉の操業が制御されている。燃焼用空気の温度や灰処理炉内へのリーク空気量が変動すると、灰処理炉内で発生する排ガスの組成が変動する。例えば、燃焼用空気の温度が上昇し、空気密度が小さくなり燃焼用空気供給量が減少すると、排ガス中の酸素濃度が低下し、一酸化炭素濃度が上昇する傾向にある。また、リーク空気量が増加すると、排ガス中の酸素濃度が増加し、一酸化炭素の濃度が低下する傾向にある。上述したように、本発明では、上記ガス分析装置で検出された排ガスの組成に基づいて、排ガスの組成が所定の組成になるように燃焼用空気の供給量が制御される。この結果、廃棄物処理装置の運転中に上記排ガスの組成が変動しても、灰処理炉内全体を見たときに、該灰処理炉内に供給そして流入する総空気量は、予め設定された加熱装置への燃焼用空気の供給量と等しくなる。したがって、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にでき、灰処理炉内で燃焼する火炎温度および灰処理炉内温度を所定の温度に維持でき、灰処理炉内での焼却灰の溶融や熱処理が適正に行われる。
【0016】
ガス分析装置は、排ガスの組成として、該排ガスに含有される少なくとも酸素及び一酸化炭素のうち少なくとも一つの濃度を検出し、制御装置は、上記ガス分析装置で検出された排ガスの組成に基づいて、排ガスの組成が所定の組成になるように燃焼用空気の供給量を制御することが好ましい。
【0017】
蒸気による空気の間接加熱又は燃料燃焼による空気加熱により高温空気を生成する高温空気生成装置をさらに有し、該高温空気生成装置は、高温空気を燃焼用空気として加熱装置に供給するように加熱装置に接続されていることが好ましい。
【0018】
廃棄物焼却炉からの排ガスの一部と外部からの空気を混合し高温空気を生成する高温空気生成装置をさらに有し、該高温空気生成装置は、高温空気を燃焼用空気として加熱装置に供給するように加熱装置に接続されていることとしてもよい。
【0019】
このように、高温空気生成装置により高温空気を生成し燃焼用空気として加熱装置に供給することにより、加熱装置の火炎温度を効率的に上昇し灰処理炉内を加熱する能力を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、廃棄物処理装置の運転中に灰処理炉内の状況が変化しても、この変化に応じて加熱装置への燃焼用空気の供給量が制御される。この結果、燃焼用空気の温度変動や灰処理炉へのリーク空気の流入に起因する炉内状況の変動が生じた場合でも、灰処理炉内全体を見たときに、該灰処理炉内に供給そして流入する総空気量と、予め設定された加熱装置への燃焼用空気の供給量とが等しくなるように、加熱装置への燃焼用空気の供給量が制御される。したがって、加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にできるので、加熱装置から吹き込まれる火炎温度及び灰処理炉内温度を安定させ、最適な炉内状況を維持でき、灰処理炉内での焼却灰の溶融や熱処理を適正に行うことができる。また、加熱装置に供給される燃料を必要最小限の量に留めることができ、その分、燃料コストの上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る廃棄物処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る廃棄物処理装置1の構成を示すブロック図である。廃棄物処理装置1は、外部から廃棄物を受け入れて該廃棄物を焼却処理する廃棄物焼却炉2(以下、単に「焼却炉2」という)と、焼却炉2に接続され該焼却炉2から排出された焼却灰を溶融処理する灰処理装置3とを有している。また、上記焼却炉2の上部は、排ガス処理装置4が接続されている。焼却炉2から排出された排ガスは、該排ガス処理装置4で無害化処理された後、煙突5から外部へ放出されるようになっている。
【0024】
灰処理装置3は、焼却炉2の下部にシュート6を介して接続され該焼却炉2から排出された焼却灰を溶融処理する灰溶融炉7を有している。該灰溶融炉7は、横型をなすロータリキルン型の溶融炉であり、該灰溶融炉7の一端側に接続されたシュート6から焼却灰を受け入れる。また、灰溶融炉7の他端側には、焼却灰を加熱して溶融するための火炎を灰溶融炉7内に吹き込むバーナ等の加熱装置8が設けられている。
【0025】
灰溶融炉7は、溶融排ガスライン9で焼却炉2と接続されている。該灰溶融炉7内で焼却灰が溶融処理されて発生した排ガス(以下、「溶融排ガス」という)は、溶融排ガスライン9を経て焼却炉2に供給されるようになっている。溶融排ガスは、高温となっているので、焼却炉2に供給されることにより、該焼却炉2内での廃棄物の焼却処理に寄与する。また、灰溶融炉7での焼却灰の溶融処理により生成された溶融スラグは、該灰溶融炉7に設けられた取出口(図示せず)から取り出される。
【0026】
加熱装置8は、本実施形態では、燃料および燃焼用空気の供給を受けて火炎を灰溶融炉7内に吹き込むバーナとして構成されている。上記燃料は、例えば、液化天然ガス(LNG)や灯油などである。該燃料を加熱装置8に供給するための配管である燃料供給ライン10には、バルブ11と燃料流量計12とが設けられている。燃料は、バルブ11で流量を調整されて加熱装置8に供給され、その流量は燃料流量計12によって測定される。
【0027】
上記燃焼用空気は、後述する高温空気生成装置14で生成された高温空気が燃焼用空気として用いられる。該燃焼用空気を加熱装置8に供給するための配管である空気供給ライン13には、高温空気生成装置14と、ブロワ15と、空気用ダンパ16と、空気流量計17とが設けられている。高温空気生成装置14で外部から取り入れた空気(外気)が加熱されることにより生成された高温空気が燃焼用空気とされ、該燃焼用空気は、ブロワ15で引き込まれた後、空気用ダンパ16で流量を調整されて加熱装置8に供給され、その流量は空気流量計17によって測定される。空気用ダンパ16は後述の制御装置22に制御されて開度が調整されるようになっており、これによって、燃焼用空気の流量が調整される。
【0028】
高温空気生成装置14は、好ましい形態として、
図1に示されるように、蒸気による空気(外気)の間接加熱又はバーナ(図示せず)での燃料燃焼による空気(外気)の加熱により高温空気を生成し、燃焼用空気として生成している。上記蒸気としては、例えば、焼却炉2等から熱回収して発生させた蒸気のうち余剰蒸気を使用してもよい。また、高温空気の生成の形態はこれに限られず、例えば、高温空気生成装置14は、排ガス処理装置4で無害化処理された高温の排ガスの一部を取り入れ外気と混合して、高温空気を生成し、燃焼用空気として生成するようにしてもよい。
【0029】
灰溶融炉7には、炉内温度を計測するための炉内温度計20が温度測定装置として設けられている。該炉内温度計20は、例えば、放射温度計であり、灰溶融炉7で生成された溶融スラグの温度を炉内温度として測定する。また、灰溶融炉7のキルン出口部の排ガスの組成を検出するガス分析装置としての分析計21が接続されている。該分析計21は、上記溶融排ガスの組成、具体的には、溶融排ガス中の酸素(O
2)及び一酸化炭素(CO)のうち少なくとも一つの濃度(以下、「酸素等濃度」という)を連続的または間欠的に測定する。
【0030】
炉内温度計20および分析計21には、制御装置22が電気的に接続されている。該制御装置22は、炉内温度計20で測定された炉内温度に対応する信号を受けるとともに、分析計21に測定された酸素等濃度に対応する信号を受ける。そして、測定された炉内温度および酸素等濃度に基づいて、炉内温度および酸素等濃度が所定の温度そして濃度となるように、空気用ダンパ16の開度を制御することにより、加熱装置8への燃焼用空気の供給量を調整する。
【0031】
以下、廃棄物処理装置1による廃棄物処理を説明する。焼却炉2に供給された廃棄物は該焼却炉2内で焼却処理される。この焼却処理により発生した排ガスは、排ガス処理装置4で無害化処理された後、煙突5から外部へ放出される。一方、焼却炉2内の焼却処理で生じた焼却灰は、シュート6を経て灰溶融炉7へ供給される。
【0032】
高温空気生成装置14では、蒸気による空気の間接加熱又はバーナでの燃料燃焼による空気加熱により高温空気が生成され、該高温空気が燃焼用空気として加熱装置8へ供給される。該燃焼用空気の供給量は、制御装置22からの制御を受けた空気用ダンパ16の開度に応じて調整される。加熱装置8は、燃料と燃焼用空気の供給を受け燃焼火炎を灰溶融炉7へ吹き込む。灰溶融炉7へ供給された上記焼却灰は、加熱装置8から吹き込まれる火炎で加熱されて溶融処理される。この溶融処理により発生した排ガス(溶融排ガス)は、焼却炉2へ戻され、廃棄物の焼却処理に寄与する。また、上記溶融処理で生じた溶融スラグは灰溶融炉7外へ取り出される。
【0033】
灰溶融炉7で焼却灰の溶融処理が行われている間、炉内温度計20によって溶融スラグの温度が炉内温度として測定される。また、分析計21によって灰溶融炉7のキルン出口部の排ガス中に含まれる酸素及び一酸化炭素のうち少なくとも一つの濃度(酸素等濃度)が計測される。制御装置22は、上記炉内温度および酸素等濃度の測定結果に基づいて、炉内温度を所定の温度とするとともに、排ガス中酸素等濃度を所定の濃度とするように、空気用ダンパ16の開度を調整して燃焼用空気の流量を調整する制御を行う。
【0034】
例えば、外気から取り込む空気の温度の低下や灰溶融炉7内へ流入するリーク空気量の増加が生じると、炉内温度計20で測定される炉内温度が低下するとともに、分析計21で測定される排ガス中酸素の濃度の増加、一酸化炭素の濃度の低下が生じる。この場合、制御装置22は、燃焼空気用ダンパ16の開度を小さくするように制御する。この結果、加熱装置8への燃焼用空気の供給量が減少し、リーク空気量の増加と相殺され、加熱装置8における空気比は所定の範囲となり、加熱装置8から吹き込まれる燃焼火炎の温度が上昇し、灰溶融炉7内の炉内温度が上昇して所定の温度に制御され、排ガス中酸素等濃度が所定の濃度に制御される。
【0035】
一方、外気から取り込む空気の温度の上昇が生じると、炉内温度計20で測定される炉内温度が上昇するとともに、分析計21で測定される排ガス中酸素の濃度の低下、一酸化炭素の濃度の上昇が生じる。この場合、制御装置22は、燃焼空気用ダンパ16の開度を大きくするように制御する。この結果、加熱装置8への燃焼用空気の供給量が増加し、灰溶融炉7内の炉内温度が所定の温度に制御され、排ガス中酸素等濃度が所定の濃度に制御される。
【0036】
このようにして、炉内温度および排ガス中酸素等濃度の測定結果に応じて、制御装置22が空気用ダンパ16の開度を調整することにより、加熱装置8への燃焼用空気の供給量が調整され、灰溶融炉7内の炉内温度が所定の温度に制御され、排ガス中酸素等濃度が所定の濃度に制御される。
【0037】
このように、本実施形態では、加熱装置8への燃焼用空気の供給量が、炉内温度および排ガス中酸素等濃度の測定結果に応じて調整される。したがって、廃棄物処理装置1の運転中に、例えば、燃焼用空気の温度変動や灰溶融炉7内へのリーク空気量の増加等の炉内状況に変動が生じた場合でも、灰溶融炉7内全体を見たときに、該灰溶融炉7内に供給そして流入する総空気量は、予め設定された加熱装置8への燃焼用空気の供給量と等しくなるように加熱装置8への燃焼用空気の供給量が制御される。したがって、加熱装置8の燃焼に使われる空気の空気比を予め設定された値にできるので、加熱装置8から吹き込まれる火炎温度及び灰溶融炉7内温度を安定させ、最適な炉内状況を維持でき、灰溶融炉7内での焼却灰の溶融を適正に行うことができる。また、焼却灰の溶融が適正に行われるため、溶融排ガス中の酸素等濃度が所定の濃度に制御され、煙突から排出する排ガス中の有害物を規制範囲に抑制することができる。また、本実施形態では、炉内温度を安定させることができるので、加熱装置8に供給される燃料を必要最小限の量に留めることができ、その分、燃料のコストの上昇を抑制できる。
【0038】
本実施形態では、高温空気生成装置14で蒸気による空気の間接加熱又はバーナでの燃料燃焼による空気加熱により高温空気が生成され、燃焼用空気として加熱装置8に供給するので、加熱装置8の火炎温度を上昇し灰溶融炉7内を加熱する能力を高めることができ、灰溶融炉内の焼却灰の溶融をより安定して行うことができる。
【0039】
本実施形態では、制御装置22は、炉内温度および酸素等濃度の両方に基づいて燃焼用空気の供給量を制御することとしたが、これに代えて、燃焼用空気の供給量の制御が、炉内温度および酸素等濃度のいずれか一方のみに基づいて行われることとしてもよい。炉内温度に基づいて制御を行う場合には、分析計21は必須ではなく、酸素等濃度に基づいて制御を行う場合には、炉内温度計20は必須ではない。
【0040】
本実施形態では、灰溶融炉7はロータリキルン型であることとしたが、灰溶融炉の種類はこれに限られず、他の種類の灰溶融炉であってもよい。また、本実施形態では、焼却灰を処理する灰処理炉が灰溶融炉として構成され、該灰溶融炉で溶融処理を行うこととしたが、灰処理炉の形態はこれに限られない。例えば、灰処理炉は、焼却灰を溶融処理させることなく加熱処理する加熱炉であってもよい。
【実施例】
【0041】
[実施例]
焼却炉から排出された焼却灰を灰溶融炉に供給し、加熱装置(バーナ)からの火炎によって上記焼却灰を溶融処理した。灰溶融炉の炉内温度(溶融スラグの温度)および溶融排ガス中の酸素および一酸化炭素の濃度を計測し、炉内温度、酸素濃度および一酸化炭素濃度が、運転開始時に設定した温度そして濃度となるように、加熱装置への燃焼用空気の供給量を制御した。上記加熱装置で使用される燃料は都市ガスである。上記灰溶融炉での焼却灰の溶融量を800kg/hとして、廃棄物処理装置を1ヶ月間運転し、後述する各種の測定値を、運転開始時と運転1ヶ月後とで比較した。
【0042】
廃棄物処理装置の運転開始時における各種の測定値は次の通りである。
溶融排ガス中の酸素濃度 :1.0%
溶融排ガス中の一酸化炭素濃度:20ppm
灰溶融炉の炉内温度 :1380℃
燃料の供給量 :250m
3/h
燃焼用空気の供給量 :3000m
3/h
燃焼用空気の空気比 :1.1
【0043】
廃棄物処理装置の運転1ヶ月後における各種の測定値は次の通りである。
溶融排ガス中の酸素濃度 :1.0%
溶融排ガス中の一酸化炭素濃度:20ppm
灰溶融炉の炉内温度 :1390℃
燃料の供給量 :250m
3/h
燃焼用空気の供給量 :2500m
3/h
燃焼用空気の空気比 :0.9
【0044】
運転1ヶ月後の測定値を運転開始時の測定値と比較すると、酸素濃度および一酸化炭素濃度の変動は見られず、炉内温度も、運転開始時の温度とほぼ変わらなかった。また、燃焼用空気の空気比は、運転開始時には1.1であったのが、運転1ヶ月後には0.9と低下しているが、これは、灰溶融炉内へ流入するリーク空気量が増加したことに伴い、制御装置によってリーク空気量の増加分に応じて燃焼用空気の供給量を減少させるように制御したことによるものである。この結果、灰処理炉内全体を見たときに、加熱装置に供給そして灰処理炉に流入する総空気量と予め設定された加熱装置への燃焼用空気の供給量とが等しくなるように、加熱装置への燃焼用空気の供給量が制御される。したがって、運転1ヶ月後においても加熱装置の燃焼に使われる空気の空気比を、運転開始時に設定された値と同じように調整できているので、加熱装置から吹き込まれる火炎温度及び灰溶融炉内温度を低下させることなく安定させ、最適な炉内状況を維持でき、灰溶融炉内での焼却灰の溶融や熱処理を適正に行うことができている。そのため、運転1ヶ月後においても、溶融排ガスの酸素濃度、一酸化炭素濃度の変動がなく、灰溶融炉内の状況が悪化することなく適正に維持されている。
【0045】
[比較例]
焼却炉から排出された焼却灰を灰溶融炉に供給し、加熱装置(バーナ)からの火炎によって上記焼却灰を溶融処理した。加熱装置への燃焼用空気の供給量は、廃棄物処理装置の運転中に変更することなく、予め設定した供給量とした。上記加熱装置で使用される燃料は都市ガスである。上記灰溶融炉での焼却灰の溶融量を800kg/hとして、廃棄物処理装置を1ヶ月間運転し、各種の測定値を、運転開始時と運転1ヶ月後とで比較した。運転開始時における各種の計測値は、記述した実施例での測定値と同じである。
【0046】
廃棄物処理装置の運転1ヶ月後における各種の測定値は次の通りである。
溶融排ガス中の酸素濃度 :2.0%
溶融排ガス中の一酸化炭素濃度:0ppm
灰溶融炉の炉内温度 :1300℃
燃料の供給量 :250m
3/h
燃焼用空気の供給量 :3000m
3/h
燃焼用空気の空気比 :1.1
【0047】
運転1ヶ月後の測定値を運転開始時の測定値と比較すると、酸素濃度が上昇し、一酸化炭素濃度が減少し、炉内温度が低下したことが判る。これは、灰溶融炉内へ流入するリーク空気量が増加したことにより、予め設定されていた供給量の燃焼用空気に加えて、増加したリーク空気量の空気が加熱装置に供給されることになり、加熱装置のバーナの燃焼に使われる空気量が増加し空気比が大きくなったことにより、燃焼火炎温度が低下し、炉内温度が低下したことを示している。炉内温度が低下すると、焼却灰の溶融処理が不十分になり不具合が生じることとなり好ましくない。
【符号の説明】
【0048】
1 廃棄物処理装置
2 焼却炉(廃棄物焼却炉)
7 灰溶融炉(灰処理炉)
8 加熱装置
14 高温空気生成装置
20 炉内温度計(温度測定装置)
21 分析計(ガス分析装置)
22 制御装置