(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
棒状金具の一端部に、プリント基板のスルーホールに圧入されて該スルーホール内面の導体と電気的に導通される基板圧入部を備える一方、前記棒状金具の他端部に、相手側部材と接続される接続部を備えたプレスフィット端子において、
前記棒状金具は、所定長さで切断された金属角線材によって構成されており、該金属角線材は、表面にめっき層が施されていると共に前記スルーホールの内径寸法よりも大きな幅寸法を有している一方、
前記基板圧入部が、前記金属角線材の幅方向中央部分において板厚方向に打ち抜かれて設けられた貫通穴と、該貫通穴を挟んで前記幅方向の両側に残された前記金属角線材の両側縁部によって構成された撓み変形可能な一対の弾性接触部とを含んで構成されており、
前記弾性接触部よりも先端側には、前記金属角線材の前記両側縁部が切断されており、前記スルーホールの内径寸法よりも小さな幅寸法とされた先端挿入部が設けられている
ことを特徴とするプレスフィット端子。
棒状金具の一端部に、プリント基板のスルーホールに圧入されて該スルーホール内面の導体と電気的に導通される基板圧入部を備える一方、前記棒状金具の他端部に、相手側部材と接続される接続部を備えたプレスフィット端子の製造方法であって、
前記スルーホールの内径寸法よりも大きな幅寸法を有すると共に表面にめっき層が施された金属角線材の両側縁部を切断することにより、前記スルーホールの内径寸法よりも小さな幅寸法とされた先端挿入部を形成する一端部切断工程と、
前記金属角線材の前記先端挿入部から所定寸法に亘る領域において、前記金属角線材の幅方向中央部分を板厚方向に打ち抜いて貫通穴を設けると共に、該貫通穴を挟んで前記幅方向の両側に残された前記金属角線材の両側縁部により、撓み変形可能な一対の弾性接触部を構成して前記基板圧入部を形成する基板圧入部形成工程と、
前記先端挿入部および前記基板圧入部が形成された前記金属角線材を所定長さに切断して前記棒状金具を得る線材切断工程とを含む
ことを特徴とするプレスフィット端子の製造方法。
前記金属角線材における前記他端側の側縁部の切断幅寸法を異ならせることによって、前記接続部の幅寸法が異なる複数種類のプレスフィット端子を形成する接続部変形工程をさらに含んでいる請求項5に記載のプレスフィット端子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板に設けられた導体に接続される端子金具の一種として、プレスフィット端子が知られている。従来のプレスフィット端子は、特開2005−353567号公報(特許文献1)に記載されているように、金属平板をプレス打ち抜き加工して形成された棒状金具から構成されており、その一端部には、プリント基板のスルーホールに圧入されて内面の導体と電気的に導通される基板圧入部が設けられている一方、他端部には、相手側部材と接続する接続部が設けられている。特に、基板圧入部は、棒状金具の幅方向中央部分に貫通穴を打ち抜くことにより、貫通穴の両側に残された棒状金具の両側縁部を撓み変形可能な一対の弾性接触部とすることにより、構成されている。
【0003】
このように、従来のプレスフィット端子は、金属平板をプレス打ち抜き加工することにより、所望形状に形成されていることから、非常に歩留まりが悪いという問題があった。また、基板圧入部を構成する一対の弾性接触部は、スルーホール内面の導体に圧接される外面がプレス打ち抜き加工による切断面とされていることから、弾性接触部の表面にめっき層を形成する後めっき加工が必要となるという問題もあった。
【0004】
そこで、特開2012−174400号公報(特許文献2)には、表面を被覆するめっき層が形成された金属線材を切断することにより、棒状金具を得る一方、棒状金具に一端側に潰し加工を施して扁平部を形成した後、扁平部の中央部分を打ち抜き加工して貫通孔を設けることにより、一対の弾性接触部を有する基板圧入部を形成するようにしたプレスフィット端子が提案されている(特許文献2、
図10参照)。
【0005】
ところが、特許文献2に記載のプレスフィット端子では、確かに、金属線材を切断して棒状金具を得ることにより、歩留りの向上は図られているものの、基板圧入部を構成する弾性接触部が、金属線材が潰し加工された扁平部に形成されている。それ故、潰し加工された扁平部において、金属線材の表面めっき層が剥がれたり破損している可能性が高く、スルーホール内面の導体に圧接される弾性接触部の外面に十分なめっき層が残存していないおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、歩留りの向上を達成しつつ、後めっき加工を要することなく弾性接触部の外面にめっき層を確実に設けることができる、新規な構造のプレスフィット端子と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
プレスフィット端子に関する本発明の第一の態様は、棒状金具の一端部に、プリント基板のスルーホールに圧入されて該スルーホール内面の導体と電気的に導通される基板圧入部を備える一方、前記棒状金具の他端部に、相手側部材と接続される接続部を備えたプレスフィット端子において、前記棒状金具は、
所定長さで切断された金属角線材によって構成されており、該金属角線材は、表面にめっき層が施されていると共に前記スルーホールの内径寸法よりも大きな幅寸法を有している一方、前記基板圧入部が、前記金属角線材の幅方向中央部分
において板厚方向に打ち抜かれて設けられた貫通穴と、該貫通穴を挟んで前記幅方向の両側に残された前記金属角線材の両側縁部によって構成された撓み変形可能な一対の弾性接触部とを含んで構成されており、前記弾性接触部よりも先端側には、前記金属角線材の前記両側縁部が切断され
ており、前記スルーホールの内径寸法よりも小さな幅寸法とされた先端挿入部が設けられていることを、特徴とする。
【0009】
本発明においては、プレスフィット端子を構成する棒状金具が、金属角線材から形成されている。これにより、プレスフィット端子を、歩留り良く製造することが出来る。そして、基板圧入部が、金属角線材の中央部分を板厚方向に打ち抜いて設けられた貫通穴と、貫通穴の両側に残された金属角線材の両側縁部によって構成された弾性接触部とによって構成されている。これにより、基板圧入部を金属板を打ち抜いて形成する場合のように、弾性接触部の外面が切断面とされてめっき層を失うようなことが無く、金属角線材に予め施された表面めっき層を残存しつつ弾性接触部を形成することが出来、後めっき加工を要することなくプレスフィット端子を製造することが出来る。
【0010】
特に、弾性接触部の外面に、切断や鍛造等の加工を一切施すことなく基板圧入部が形成されていることから、切断によるめっき層の切り落しや鍛造によるめっき層のひび割れ等を回避して、弾性接触部の外面にめっき層を確実に残存させることが出来る。また、弾性接触部の外面の面積の減少を招くことも無い。その結果、弾性接触部のめっき層を有効に確保すると共に、スルーホール内面との接触面積も有効に確保することが出来て、接続信頼性の向上を図ることができる。
【0011】
プレスフィット端子に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記棒状金具において、前記基板圧入部よりも長さ方向中央側には、前記金属角線材
において板厚方向で潰し加工されている部分の、板幅方向の突出によって構成された基板当て止め部が設けられているものである。
【0012】
本態様によれば、基板当て止め部をプリント基板に当接させることにより、プレスフィット端子のスルーホールへの差し込み量を規定することが出来る。そして、棒状金具を形成する金属角線材の幅寸法が元々スルーホールの内径寸法よりも大きな幅寸法とされていることから、大きな突出量を確保することは困難な潰し加工でも、有効な係止力を発揮する基板当て止め部を形成することが出来る。
【0013】
プレスフィット端子に関する本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記棒状金具には、前記金属角線材の前記両側縁部
の切断面によって、前記先端挿入部から前記基板圧入部に向かって次第に拡幅して延出するテーパ状部が
構成されているものである。
【0014】
本態様によれば、テーパ状部が設けられていることにより、幅寸法の小さな先端挿入部から、幅寸法の大きな基板圧入部に向けて、幅寸法が次第に大きくされている。これにより、スルーホールへの挿入に際するプリント基板への突き当たりを抑えることが出来て、スルーホールへの挿入をより円滑に行なうことが出来る。
【0015】
プレスフィット端子に関する本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記テーパ状部において、前記棒状金具の長さ方向に直交する断面の角部が丸められているものである。
【0016】
本態様によれば、棒状金具の両側縁部が切断されて形成されたテーパ状部の切断縁部が、角が落された形状とされている。これにより、テーパ状部をスルーホールに圧入する際に、スルーホール内面の導体を削るおそれをより軽減することが出来、より優れた接続信頼性を得ることが出来る。
【0017】
プレスフィット端子の製造方法に関する本発明の第一の態様は、棒状金具の一端部に、プリント基板のスルーホールに圧入されて該スルーホール内面の導体と電気的に導通される基板圧入部を備える一方、前記棒状金具の他端部に、相手側部材と接続される接続部を備えたプレスフィット端子の製造方法であって、前記スルーホールの内径寸法よりも大きな幅寸法を有すると共に表面にめっき層が施された金属角線材の両側縁部を切断することにより、前記スルーホールの内径寸法よりも小さな幅寸法とされた先端挿入部を形成する一端部切断工程と、前記金属角線材の前記先端挿入部から所定寸法に亘る領域において、前記金属角線材の幅方向中央部分を板厚方向に打ち抜いて貫通穴を設けると共に、該貫通穴を挟んで前記幅方向の両側に残された前記金属角線材の両側縁部により、撓み変形可能な一対の弾性接触部を構成して前記基板圧入部を形成する基板圧入部形成工程と、前記先端挿入部および前記基板圧入部が形成された前記金属角線材を所定長さに切断して前記棒状金具を得る線材切断工程とを含むことを、特徴とする。
【0018】
本発明に従う製造方法によれば、金属角線材でプレスフィット端子を形成することにより、プレスフィット端子を歩留り良く製造することが出来る。そして、金属角線材の幅方向中央部分に貫通穴を形成して、貫通穴の両側を弾性接触部として基板圧入部を形成したことにより、弾性接触部の外面に金属角線材のめっき層を残存させることが出来、後めっき加工を要することなくプレスフィット端子を製造することが出来る。
【0019】
特に、潰し加工等を要することなく弾性接触部が形成されることから、例えば潰し加工で弾性接触部の外面が延ばされて、外面のめっき層に分裂を生じる等のおそれも回避することが出来る。また、弾性接触部の外面の面積の減少も回避することが出来る。これにより、弾性接触部のめっき層を有効に確保すると共に、スルーホール内面との接触面積も有効に確保することが出来て、接続信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
プレスフィット端子の製造方法に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記金属角線材における前記他端側の側縁部の切断幅寸法を異ならせることによって、前記接続部の幅寸法が異なる複数種類のプレスフィット端子を形成する接続部変形工程をさらに含んでいるものである。
【0021】
本態様に従う製造方法においては、金属角線材の側縁部の切断幅寸法を異ならせることにより、接続部の幅寸法が異ならされた複数種類のプレスフィット端子を、同一の金属角線材から容易且つコスト効率良く製造することが出来る。これにより、特に使用頻度が低く、必要本数が少ない幅寸法の接続部を有するプレスフィット端子を、コスト効率良く製造することが出来る。一方、基板圧入部の形状は各プレスフィット端子間で同形状とされることから、複数種類のプレスフィット端子間で、基板への接続安定性を均等に保つことが出来る。なお、本態様において、好ましくは、金属角線材の他端側の側縁部をプレス金型で打ち抜くことで切断し、プレス金型内の入れ子を変更することによって、前記側縁部の切断幅寸法が変更される態様が採用される。このようにすれば、接続部の幅寸法毎に専用の金型を用意する必要が無く、金型費を削減することが出来る。また、接続部変形工程を実施するタイミングは、金属角線材から棒状金具を切り離す前でも、後でも良い。例えば、金属角線材から棒状金具を切り離す前で、前ロットとなる棒状金具と次ロットとなる棒状金具が連結された状態の金属角線材の両側縁部を切断することで、前ロットの接続部変形工程と同時に、次ロットの前記一端部切断工程を実施する等しても良いし、金属角線材から棒状金具を切り離した後に、得られた棒状金具に対して接続部変形工程を実施する等しても良い。
【発明の効果】
【0022】
プレスフィット端子およびその製造方法に関する本発明においては、表面にめっき層が形成された金属角線材から棒状金具を形成すると共に、金属角線材に貫通穴を形成して、貫通穴の両側の金属角線材の側縁部で弾性接触部を形成し、それら貫通穴と弾性接触部で基板圧入部を構成した。これにより、プレスフィット端子をコスト効率良く製造することが出来る。更に、スルーホールの内面と接触する弾性接触部の外面にめっき層を品質良く形成することが出来ると共に、弾性接触部の外面の面積を有効に確保することが出来る。その結果、より優れた接続信頼性を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、
図1〜
図3に、本発明の第一の実施形態としてのプレスフィット端子10を示す。プレスフィット端子10は、棒状金具12の一端部となる一方の端部14に基板圧入部16が形成されていると共に、他端部となる他方の端部18に接続部20が形成された一体成形品とされている。
【0026】
棒状金具12は、金属角線材22が所定長さに切断されることによって形成されている。金属角線材22は、形状加工によってばね性を付与出来る程度の剛性を備えたものが好適に採用され、例えばタフピッチ銅や黄銅等の銅合金、鉄等から形成された、一定の断面形状をもって延びる線材とされている。
図3から明らかなように、本実施形態の金属角線材22は、長方形の四隅の角部23が丸められた扁平断面形状とされている。なお、
図3に併せ示すように、金属角線材22の断面で長手方向となる幅寸法:Wは、後述するプリント基板44のスルーホール46の内径寸法:Rよりも僅かに大きくされている。金属角線材22の周上の表面には、全面に亘ってめっき層24a〜24dが施されている。めっき層24a〜24dは、例えば、銅やニッケル等の下地メッキに、錫等が積層メッキされて形成されている。
【0027】
このような金属角線材22から切り出された棒状金具12の一方の端部14に、基板圧入部16が形成されている。基板圧入部16は、貫通穴26と、貫通穴26の両側に形成された一対の弾性接触部28a,28bを含んで構成されている。
【0028】
貫通穴26は、金属角線材22の幅方向(
図2中、左右方向)の中央部分が板厚方向(
図3における上下方向)に打ち抜かれることで形成されている。本実施形態における貫通穴26は、一方の対角線が他方よりも長くされて、棒状金具12の中心軸:O上を延びる略ひし形形状とされており、中心軸:O上の頂点部分には丸みが付されている。但し、貫通穴26の形状は何等限定されることはなく、楕円を含む円形状、矩形状や多角形状、その他任意の形状が適宜に採用され得る。
【0029】
そして、金属角線材22の幅方向中央部分が打ち抜かれて貫通穴26が形成されることにより、貫通穴26を挟んで幅方向の両側に残された金属角線材22の両側縁部30a,30bによって弾性接触部28a,28bが構成されている。貫通穴26が略ひし形とされていることによって、弾性接触部28a,28bは、棒状金具12の軸方向(
図2中、上下方向)で、中央部分の幅寸法(
図2中、左右方向寸法)が小さくされており、軸直角方向(
図2中、左右方向)に撓み変形可能とされている。弾性接触部28a,28bは、棒状金具12の厚さ寸法を異ならせることなく形成されており、弾性接触部28a,28bの厚さ寸法(
図3中、上下方向寸法):tは、棒状金具12の厚さ寸法、即ち、金属角線材22の厚さ寸法:Tと等しくされている。そして、弾性接触部28a,28bの外面32a,32bには、金属角線材22の表面に形成されためっき層24b,24dが全面に亘って形成されている。また、外面32a,32bは、金属角線材22の形状がそのまま残されることにより、角部23が円弧形状に丸められた断面形状とされている。
【0030】
さらに、棒状金具12の一方の端部14において、弾性接触部28a,28bよりも更に先端側(
図2中、下側)には、先端挿入部34が形成されている。先端挿入部34は、金属角線材22の両側縁部30a,30bが切断されることによって形成されており、これにより、先端挿入部34の幅寸法:wは、後述するスルーホール46の内径寸法:Rよりも小さくされている。例えば、本実施形態における先端挿入部34は、略1.50mm×0.64mmの扁平断面を有する金属角線材22の両側縁部30a,30bが切断されることによって、中心軸:O上を延びる0.64mm×0.64mmの正方形断面とされている。なお、先端挿入部34の先端縁部には、従来から用いられている端子と同様に、テーパ状の先端先細部35が形成されている。
【0031】
そして、幅寸法が小さくされた先端挿入部34と基板圧入部16との接続部分には、テーパ状部36,36が形成されている。テーパ状部36,36は、金属角線材22の両側縁部30a,30bが切断されることによって先端挿入部34と共に形成されており、先端挿入部34から基板圧入部16に向けて拡幅する形状とされている。
【0032】
また、棒状金具12において、基板圧入部16よりも長さ方向(
図2中、上下方向)の中央側(
図2中、上側)には、一対の基板当て止め部42,42が設けられている。基板当て止め部42,42は、棒状金具12の板幅方向(
図3中、左右方向)に突出された突起形状とされている。基板当て止め部42,42は、金属角線材22の両側縁部30a,30bが板厚方向(
図3中、上下方向)に潰し加工されて、板幅方向の外側に突出されることで形成されている。なお、本実施形態の基板当て止め部42,42は略三角の突起形状とされているが、基板当て止め部42,42の具体的形状は限定されることはなく、例えば矩形状等でも良い。
【0033】
そして、棒状金具12の他方の端部18側に、接続部20が形成されている。接続部20は、必要に応じて、金属角線材22の他方の端部18側の両側縁部30a,30bが幅方向で切断されることにより、所望の断面形状に設定されている。本実施形態における接続部20は、0.64mm×0.64mmの正方形断面形状とされている。なお、接続部20の先端縁部には、従来から用いられている端子と同様に、テーパ状の後端先細部43が形成されている。
【0034】
このようなプレスフィット端子10は、
図4に示すように、先端挿入部34から、プリント基板44のスルーホール46に挿入される。プレスフィット端子10のスルーホール46への差し込み量は、基板当て止め部42,42がプリント基板44に当接されることで規定されるようになっており、これにより、弾性接触部28a,28bが、スルーホール46に挿入される。棒状金具12の幅寸法:Wが、スルーホール46の内径寸法:Rよりも大きくされていることから、弾性接触部28a,28bがスルーホール46に圧入されて、棒状金具12の板幅方向(
図4中、左右方向)で相互に接近する方向に撓み変形される。そして、弾性接触部28a,28bの相互に離隔する方向の弾性復元力により、弾性接触部28a,28bの外面32a,32bが、スルーホール46の内面に形成された導体としてのスルーホールめっき47に圧接される。これにより、プレスフィット端子10が、接続部20を突出した状態でプリント基板44に固定されて、弾性接触部28a,28bがスルーホールめっき47と電気的に導通されると共に、接続部20に、図示しないコネクタ等の相手側部材が接続される。
【0035】
次に、このようなプレスフィット端子10を製造するのに好適に用いることの出来る、プレスフィット端子の製造方法に関する本発明の第一の実施形態を、
図5を参照しつつ説明する。
【0036】
先ず、
図5(a)に示す金属角線材22を用意する。前述のように、金属角線材22は、角部が丸められた略長手矩形の断面形状を有している。このような金属角線材22は、例えば
図6に示すように、ダイス48を用いたダイス引き加工で好適に形成することが出来る。ダイス48の整形部50は、角部が丸められた略長手矩形の断面形状とされている。そして、例えばタフピッチ銅や黄銅等の銅合金や、鉄等などから形成された素線材52がダイス48を通じて引き抜かれて、整形部50を通過することにより、略角丸四角の断面形状に整形される。このように成形された素線材52に、銅やニッケル等の下地メッキが施され、下地メッキに積層して錫等のメッキが施されることにより、表面にめっき層24a〜24dが形成された、角丸四角形状断面の金属角線材22を得ることが出来る。このようにして得られた金属角線材22は、図示しないリール等に巻回されて、巻出し可能に支持されると共に、図示しない成形加工ステージに対して、棒状金具12の単位長さ毎に間欠的に送り出されるようになっている。
【0037】
そして、
図5(b)に示すように、金属角線材22に潰し加工を行なうことにより、先に金属角線材22から切り出されることとなる棒状金具12aの後端先細部43と、棒状金具12aの次に金属角線材22から切り出されることとなる棒状金具12bの先端先細部35とが連設された切断部54と、基板当て止め部42,42とを形成する。
【0038】
次に、
図5(c)に示すように、先に切り出される棒状金具12aと次に切り出される棒状金具12bに跨って、金属角線材22の両側縁部30a,30bを打ち抜いて切断することにより、先に切り出される棒状金具12aの接続部20と、次に切り出される棒状金具12bの先端挿入部34およびテーパ状部36,36とを形成する一端部切断工程を実施する。棒状金具12aと棒状金具12bに跨って両側縁部30a,30bを切断することにより、棒状金具12aの接続部20と、棒状金具12bの先端挿入部34およびテーパ状部36,36とを効率良く形成することが出来る。
【0039】
そして、
図5(d)に示すように、基板圧入部形成工程を実施する。基板圧入部形成工程では、金属角線材22のテーパ状部36,36から先端挿入部34と反対方向で所定範囲に亘る領域において、金属角線材22の幅方向中央部分を板厚方向に打ち抜いて貫通穴26を形成すると共に、貫通穴26の両側に残された金属角線材22の両側縁部30a,30bによって弾性接触部28a,28bを構成して基板圧入部16を形成する。
【0040】
次に、
図5(e)に示すように、先端挿入部34、テーパ状部36,36、基板圧入部16等が形成された金属角線材22を切断部54で切断する線材切断工程を実施することにより、金属角線材22から棒状金具12を切り離す。このようにして、プレスフィット端子10を得ることが出来る。
【0041】
本実施形態の製造方法によれば、プレスフィット端子10を、金属角線材22から歩留り良く製造することが出来る。更に、プレスフィット端子10においてスルーホール46に圧入される基板圧入部16を、めっきが施された金属角線材22に貫通穴26を形成してその両側の側縁部30a,30bを弾性接触部28a,28bとして構成することにより、弾性接触部28a,28bの外面32a,32bに金属角線材22のめっき層24b,24dを残すことが出来て、後めっき等を要することがなく、プレスフィット端子10を速やか且つコスト効率良く製造することが出来る。しかも、潰し加工等のように金属角線材22の厚さ寸法を異ならせることなく弾性接触部28a,28bを形成出来ることから、弾性接触部28a,28bの外面32a,32bにめっき層24b,24dを確実に残存させることが出来る。
【0042】
そして、このような製造方法によって得られたプレスフィット端子10によれば、弾性接触部28a,28bの外面32a,32bに金属角線材22のめっき層24b,24dが残される。また、外面32a,32bは鍛造や切断等の加工が一切施されないことから、金属角線材22の厚さ寸法:T(
図3参照)がそのまま維持されると共に、めっき層24b,24dの損傷を回避することが出来る。これにより、スルーホールめっき47との接触面積を有効に確保することが出来る。更に、弾性接触部28a,28bの厚さ寸法を確保出来ることから、弾性接触部28a,28bの強度を確保することが出来る。その結果、優れた接続信頼性を得ることが出来る。加えて、金属角線材22の幅寸法を異ならせることなく弾性接触部28a,28bを形成できることから、スルーホール46への圧入力を調節する要因となる、弾性接触部28a,28bが形成された基板圧入部16の幅寸法:Wを安定させることも出来る。
【0043】
また、本実施形態のプレスフィット端子10によれば、弾性接触部28a,28bの外面32a,32bの断面形状が、角部23(
図3参照)が丸められた角丸四角形状とされていることから、スルーホールめっき47を削るおそれを軽減することが出来る。加えて、基板当て止め部42,42がプリント基板44に当接されることによって、プレスフィット端子10のスルーホール46への挿入量を精度良く規定することが出来る。そして、金属角線材22が、スルーホール46の内径寸法:Rよりもやや大きな幅寸法を有していることから、潰し加工で基板当て止め部42,42を金属角線材22から僅かに突出させるだけでも、有効な係止力を得ることが出来る。
【0044】
なお、本実施形態のプレスフィット端子10は、
図7に示すように、キャリア56に複数を装着することで、所謂バンドリアとして提供することも出来る。キャリア56の具体的形状は限定されるものではないが、例えば、薄肉で変形容易な帯状の金属板等から形成されており、複数の保持部58が連続して形成されている。保持部58の両端縁部には、プレスフィット端子10の接続部20を長さ方向の2箇所で支持する略コの字形状の一対の支持部60,60が立ち上げられて形成されている。また、保持部58における支持部60,60の間には、接続部20を係止する鉤状の係止部62が切り起こされて形成されている。
【0045】
このようなキャリア56の各保持部58にプレスフィット端子10を装着してバンドリアとして構成することで、プリント基板44への挿入時の取扱い性を向上して端子挿入作業を簡素化したり、搬送時にはキャリア56を巻回することで取扱い性を向上出来ると共に、大型のパーツフィーダや、組立現場での端子の切断作業を不要とすることが出来る。また、必要に応じて、金属角線材22が切断されて素線材52が露出されるプレスフィット端子10の長さ方向の両端面にめっきを施すことも可能となる。なお、プレスフィット端子10をキャリア56に装着してバンドリアとして提供するような場合には、例えば、一端部切断工程(
図5(c))の後に線材切断工程を実施して棒状金具12を切り出して、棒状金具12をキャリア56に装着した後に基板圧入部形成工程(
図5(d))を実施して貫通穴26と弾性接触部28a,28bを形成するようにしても良い。
【0046】
次に、
図8に、プレスフィット端子に関する本発明の第二の実施形態としてのプレスフィット端子63の要部を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態としてのプレスフィット端子10と同様の部材および部位には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。
【0047】
本実施形態においては、テーパ状部36,36のそれぞれにおいて、先端挿入部34と接続する始端縁部64、弾性接触部28a,28bと接続する終端縁部65、および始端縁部64から終端縁部65に至る外縁部66が、プレス加工等により丸められている。これにより、テーパ状部36,36が、始端縁部64において先端挿入部34と屈曲部を有することなく滑らかに接続されていると共に、終端縁部65において、弾性接触部28a,28bと屈曲部を有することなく滑らかに接続されている。また、
図9に、
図8におけるIX−IX切断面を示すように、テーパ状部36,36は、金属角線材22の切断縁部であると共に、棒状金具12の長さ方向に直交する断面の角部となる4つの外縁部66が丸められていることにより、始端縁部64から終端縁部65に亘って、断面の角部が丸められている。なお、
図9は、理解を容易とするために、切断面のみを示している。本実施形態のプレスフィット端子63によれば、スルーホール46への差込時における始端縁部64や終端縁部65、外縁部66のスルーホール46への引っ掛かりを軽減することが出来て、スルーホールめっき47が損傷するおそれをより軽減することが出来る。
【0048】
また、
図10に、プレスフィット端子に関する本発明の第三の実施形態としてのプレスフィット端子70を示す。プレスフィット端子70の棒状金具72は、略1.50mm×0.64mmの扁平断面形状を有する金属角線材74から切り出されている。そして、プレスフィット端子70の接続部76は、金属角線材74の両側縁部30a,30bを切断することなく、金属角線材74そのままの幅寸法をもって形成されている。これにより、プレスフィット端子70の接続部76は、扁平断面のタブ形状とされている。
【0049】
このように、予め要求される断面寸法の金属角線材74を用いることによって、金属角線材74の側縁部30a,30bの切断作業を要することなく、プレスフィット端子70をよりコスト効率良く形成することも出来る。また、接続部76の両側面にも金属角線材74のめっき層24b,24dが残されることから、より優れた接続信頼性を得ることも出来る。
【0050】
次に、
図11に、プレスフィット端子の製造方法に関する本発明の第二の実施形態を示す。本実施形態の製造方法においては、先ず、金属角線材22の接続部20に相当する他方の端部18側の両側縁部30a,30bが切断されずに残されて、先端挿入部34、基板圧入部16、基板当て止め部42,42、接続部20等が形成された棒状金具12が形成される。この棒状金具12は、前記第一の実施形態と略同様にして形成することが出来、例えば前記
図5(c)に示した一端部切断工程において、接続部20に相当する両側縁部30a,30bを切断することなく、テーパ状部36,36のみを形成することで得ることが出来る。
【0051】
このような棒状金具12を、プレス金型78にセットする。プレス金型78において、棒状金具12の接続部20の両側縁部30a,30bと対応する位置には、一対の入れ子80a,80bが交換可能に取り付けられている。このようなプレス金型78を用いて棒状金具12にプレス打ち抜き加工を行なうことにより、入れ子80a,80bで他方の端部18側の側縁部30a,30bを切断する接続部変形工程を実施する。このようにして、プレスフィット端子82aを製造することが出来る。
【0052】
そして、接続部変形工程において、側縁部30a,30bの切断幅寸法:w1,w2が異ならされた入れ子80a,80bを複数種類用意して、プレス金型78に選択的に組み合わせることにより、
図12(a)〜(d)に示すように、接続部20の幅寸法:wtが異ならされた複数種類のプレスフィット端子82a〜82dを製造することが出来る。例えば、プレスフィット端子82aの接続部20を0.64mm×0.64mm、プレスフィット端子82bの接続部20を0.64mm×0.8mm、プレスフィット端子82cの接続部20を0.64mm×1.0mm、プレスフィット端子82dの接続部20を0.64mm×1.5mm等のように異なる幅寸法に設定することが出来る。なお、プレスフィット端子82dは、両側縁部30a,30bを切断せずに接続部20とされたものであり、金属角線材22の幅寸法がそのまま接続部20の幅寸法として用いられている。
【0053】
このような製造方法によれば、共通の金属角線材22から、接続部20の幅寸法が異なる複数種類のプレスフィット端子82a〜82dを製造することが出来る。そして、共通のプレス金型78を用いて、入れ子80a,80bを交換するのみで複数種類のプレスフィット端子82a〜82dを製造出来ることから、各端子毎に専用の金型を用意する必要が無く、複数種類のプレスフィット端子をコスト効率良く製造することが出来、特に、使用頻度が低く必要本数が少ないプレスフィット端子でも、コスト効率良く製造することが出来る。また、各プレスフィット端子82a〜82dにおいて、基板圧入部16が同一形状とされることから、プリント基板44との接続信頼性を略同一に確保することも出来る。
【0054】
なお、プレスフィット端子の製造工程において、接続部変形工程を実施する順序は、前記実施形態に限定されない。例えば、棒状金具12を金属角線材22から切断する前に、前記第一の実施形態で示した
図5(c)の一端部切断工程時に行なう等しても良い。また、入れ子80a,80bの切断幅寸法:w1,w2は、互いに異ならされていても良いし、入れ子80a,80bの何れか一方のみを用いて、側縁部30a,30bの何れか一方のみを切断する等しても良い。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、金属角線材の断面形状の成形は、ダイスに限定されるものではなく、カセットローラやタークスローラ等を用いたり、これらをダイスと組み合わせて用いる等しても良い。更に、前記実施形態における金属角線材22は、角部が丸められた角丸四角の断面形状とされていたが、必ずしも角部が丸められている必要はない。更にまた、基板当て止め部は必ずしも必要ではない。