(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、明細書中の説明における「前」「後」「左」「右」「上」「下」は、図面中の「前」「後」「左」「右」「上」「下」と注記された方向を指す。
【0012】
<1.ロボットシステムの全体構成>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、本実施形態のロボットシステムの全体構成について説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のロボットシステム1は、第1ロボット2及び第2ロボット3と、ロボットコントローラ4(コントローラ)と、画像処理装置5と、コンベア6とを有する。このロボットシステム1は、パレットP上に積まれた複数の物品Wを1つずつ荷下ろしするデパレタイズ作業を行う。なお、物品Wの大きさによっては2個以上ずつを荷下ろししてもよい。
【0014】
第1ロボット2は物品Wを操作するロボットである。第1ロボット2は、作業ツールとして吸着パッド22(保持部材)等を有するロボットハンド10を備え、パレットPの近傍(
図1に示す例では左前側の位置)に設置される。第2ロボット3は、カメラ7及びレーザセンサ8を有するロボットハンド20を備え、パレットPの近傍(
図1に示す例では右前側の位置)に設置される。
【0015】
ロボットコントローラ4は、ロボット2,3及びそれらのロボットハンド10,20の動作を制御するように構成されている。
【0016】
第1ロボット2及び第2ロボット3は、ロボットハンド10,20が異なる点を除き、基本的に同様な構成であるので、ここでは第1ロボット2について説明する。第2ロボット3については、要部に符号を付して説明を省略する。なお、第1ロボット2が特許請求の範囲に記載のロボットに相当し、ロボットハンド10が特許請求の範囲に記載のロボットハンドに相当する。
【0017】
第1ロボット2は、デパレタイズ作業を行う作業現場の設置箇所(この例では図示しない床部)に固定された基台12と、基台12の上端部に回転可能に取り付けられた回転体13と、回転体13に取り付けられたアーム14とを備えている。
【0018】
回転体13は、基台12の上端部に水平面内で回転可能に設けられている。回転体13と基台12との連結部(又はその近傍)には、回転体13を回転駆動するアクチュエータAc1が設置されている。
【0019】
アーム14は、回転体13側の基端側からその反対の先端側にかけて順に、第1アーム部14a、第2アーム部14b、第3アーム部14c、第4アーム部14d、及び第5アーム部14eを連結して構成されている。
【0020】
第1アーム部14aは、回転体13の上端部に鉛直面内で回転可能に連結され、第2アーム部14bは、第1アーム部14aに鉛直面内で回転可能に連結され、第3アーム部14cは、第2アーム部14bに該第2アーム部14bの延出方向と垂直な面内で回転可能に連結され、第4アーム部14dは、第3アーム部14cに鉛直面内で回転可能に連結され、第5アーム部14eは、第4アーム部14dに該第4アーム部14dの延出方向に垂直な面内で回転可能に連結されている。
【0021】
第1アーム部14aと回転体13との連結部(又はその近傍)には、第1アーム部14aを回転駆動するアクチュエータAc2が設置され、第2アーム部14bと第1アーム部14aとの連結部(又はその近傍)には、第2アーム部14bを回転駆動するアクチュエータAc3が設置され、第3アーム部14cと第2アーム部14bとの連結部(又はその近傍)には、第3アーム部14cを回転駆動するアクチュエータAc4が設置され、第4アーム部14dと第3アーム部14cとの連結部(又はその近傍)には、第4アーム部14dを回転駆動するアクチュエータAc5が設置され、第5アーム部14eと第4アーム部14dとの連結部(又はその近傍)には、第5アーム部14eを回転駆動するアクチュエータAc6が設置されている。なお、第1ロボット2及び第2ロボット3の構成態様はこの例に限定されるものではなく、種々の態様を取り得る。
【0022】
第1及び第2ロボット2,3は、ロボットコントローラ4によるそれぞれのアクチュエータAc1〜Ac6の駆動制御により、アーム14の先端のロボットハンド10,20が所定の順で所要の位置に至るように動作を制御される。
【0023】
第2ロボット3は、アーム14の先端、すなわち第5アーム部14eの先端に、上記カメラ7及びレーザセンサ8を備えたロボットハンド20が取り付けられている。ベースプレートPに積載された物品Wの荷卸し時、第2ロボット3は、ロボットコントローラ4による制御で、アーム14の先端のロボットハンド20をパレットPに積載された複数の物品Wの上方に位置させる。そして、その状態で、まず、レーザセンサ8が最上段の物品Wの上面を走査することで、物品Wの上面までの距離情報を取得し、上面が最も高い位置に存在する物品Wを特定する。特定された物品Wの上面までの距離情報は、ロボットコントローラ4へ入力される。
【0024】
次に、ロボットハンド20のカメラ7がロボットコントローラ4へ入力された距離情報に基づき、特定された物品Wの上面を撮像し、特定された物品Wの上面の画像情報を生成する。生成された画像情報は、カメラ7から出力されて画像処理装置5に入力される。そして、画像処理装置5が入力された画像情報について画像認識処理を実行することで、物品Wの上面の外形情報(寸法や形状等)が取得される。取得された物品Wの上面の外形情報は、ロボットコントローラ4へ入力される。
【0025】
第2ロボット3は、レーザセンサ8によるパレットP上の物品Wの走査及びカメラ7による撮像が終了すると、ロボットコントローラ4による制御により、ロボットハンド20がパレットPの上方位置からパレットPの側方の待機位置(
図1に示す例ではパレットPの右側の位置)へ退避される。第2ロボット3のロボットハンド20の退避と並行して(又は退避後に)、第1ロボット2は、上記物品Wの距離情報や外形情報等に基づいたロボットコントローラ4による制御により、ロボットハンド10を待機位置(例えばコンベア6の上方位置)からパレットPの上方に移動させる。そして、第1ロボット2は、ロボットハンド10を下降して吸着パッド22を特定された物品Wの上面に接触させ、吸着パッド22で物品Wを吸着して保持する。次いで、第1ロボット2は、ロボットコントローラ4による制御により、ロボットハンド10を上昇させてパレットPの上方からコンベア6の上方に移動する。そして、第1ロボット2は、ロボットハンド10をコンベア6に向けて下降させ、吸着パッド22に保持された物品Wをコンベア6の搬送面6aに載置する。
【0026】
コンベア6は、搬送面6aが矢印方向に移動することにより、搬送面6aに載置された物品Wを搬出位置へ搬送するように構成されている。このコンベア6の第1ロボット2による物品Wの載置位置には、コンベア6に載置される物品Wの底面位置を検出する光電センサ28が設置されている。光電センサ28は、後述の
図5に示すセンサ32と同様な透過型のセンサである。光電センサ28は、コンベア6の幅方向一方側に位置する投光部28a及び幅方向他方側に位置する受光部28bを備える。これら投光部28a及び受光部28bは、光軸Lがコンベア6の搬送面6aより所定の高さHだけ上方に位置するように配置されている。
【0027】
この光電センサ28は、第1ロボット2が吸着パッド22により保持した物品Wをコンベア6に向けて下降する際、物品Wの底面を検出する。ロボットコントローラ4は、物品Wの底面が検出された時点で第1ロボット2の動作を停止するが、ロボットハンド10は惰走により所定距離だけ下降する。このロボットハンド10の惰走による下降距離と上記高さHは、ほぼ一致(高さHが若干量長い)するように予め設定されている。これにより、ロボットコントローラ4は、光電センサ28により物品Wの底面が検出された際に第1ロボット2の動作を停止し、その後吸着パッド22による保持を解除することで、物品Wの高さ方向の寸法によらずに当該物品Wをコンベア6に円滑に載置することができる。
【0028】
なお、上記高さHをロボットハンド10の惰走による下降距離よりも所定距離Dだけ大きく設定しておき、ロボットコントローラ4が、第1ロボット2の動作を停止した後に上記所定距離Dだけロボットハンド10(物品W)を下降させ、その後吸着パッド22による保持を解除してもよい。
【0029】
<2.ロボットハンドの詳細構造>
第1ロボット2のロボットハンド10の詳細構造について、
図3により説明する。
図3(a)は、ロボットハンド10の上面図、
図3(b)は、ロボットハンド10の下面図、
図3(c)は、
図3(a)のA−A線端面図である。
図3(a)〜
図3(c)に示すように、第1ロボット2のロボットハンド10は、この例では平面視で略正方形状であるベースプレート21と、ベースプレート21に設置された複数の上記吸着パッド22と、ベースプレート21に設置された複数の第1〜第3近接センサ24〜26とを備えている。ベースプレート21は、予め定められた保持対象となる複数の物品Wのうち最大のものの寸法に対応した外形寸法(例えば略同一の外形寸法)を有している。
【0030】
(2−1.吸着パッドの構成)
複数の吸着パッド22は、
図3(b)に示すように、ベースプレート21の面方向に分散するように縦横に設置されている。この例では、外側の2つの吸着パッド22の間の内側位置に1つの吸着パッド22が配置される態様で、ベースプレート21の四辺に沿った外周部位置から内側の中心位置まで設けられている。なお、吸着パッド22の配置態様はこの例に限定されるものではなく、種々の態様を取り得る。各吸着パッド22は、
図3(c)に示すように、ベースプレート21の下面に配置されたベローズ式の吸着部22aと、吸着部22aをベースプレート21に支持する吸引管22bとを備えている。吸引管22bには図示しない真空源からの吸引管路が接続されている。吸着パッド22は、吸引管路及び吸引管22bを介して吸着部22aの内部を吸引することにより、吸着部22aが接触された物品Wの上面に吸着し、物品Wを保持する。複数の吸着パッド22は、吸引の有無を切り替えることにより、ベースプレート21の吸着パッド22による吸着領域を大小様々に変更可能であり、保持対象の物品Wの外形に応じた吸着をすることができる。
【0031】
(2−2.近接センサ)
ベースプレート21にそれぞれ複数設けられた第1〜第3の近接センサ24〜26について説明する。
【0032】
第1近接センサ24(第1センサ)は、ベースプレート21の面方向に分散して配置されている。この例では、第1近接センサ24は、ベースプレート21に対し、
図3(a)中の上から2列目、3列目、5列目〜9列目の各列の吸着パッド22のうちの所定の吸着パッド22同士の間に位置するように設けられている。なお、第1近接センサ24の配置態様はこの例に限定されるものではなく、種々の態様を取り得る。第1近接センサ24は、吸着パッド22に吸着された物品Wの存在を検出する在荷センサとして使用されるもので、例えば
図4に示すような反射型の光電センサ30が用いられる。ベースプレート21の第1近接センサ24に対応する位置には、ベースプレート21を上下方向に貫通する光の通路孔24aが設けられている。
【0033】
反射型の光電センサ30は、
図4に示すように、検出対象物31の一方側に配置された投光部30aと受光部30bとを有する。この光電センサ30は、投光部30aから検出対象物31に対し赤外線等の光λ1を投光し、その光λ1が検出対象物31で反射されて光量が減少した反射光λ2を受光部30bで受光し、受光部30bで受光した受光量が一定以上であると、光電センサ30から一定距離の範囲内に検出対象物31が存在することを検出し、例えばセンサONとなる。そして、検出対象物31が光電センサ30から一定距離の範囲の外に離れると、検出対象物31からの反射光λ2の光量の減衰が大きくなって、受光部30bで受光した受光量が一定未満となり、一定距離内に検出対象物31が存在しないことを検出し、例えばセンサOFFとなる。
【0034】
第1近接センサ21は、上記一定距離の範囲が、ベースプレート21の下面位置から吸着パッド22の先端より所定距離下方の位置までの範囲に設定されている。そして、第1近接センサ21は、上記通路孔24aを介して投光及び受光をし、ベースプレート21の下面から一定距離の範囲内に物品Wが存在するか否かを検出する。このような構成である第1近接センサ21をベースプレート21の面方向に分散して配置することにより、センサのON/OFF情報に基づいて、吸着パッド22で保持した物品Wの外形情報(寸法、形状)を認識することができる。
【0035】
また、ロボットハンド10の移動(下降や横方向への移動)中にその移動経路に障害物が存在する場合、第1近接センサ24で当該障害物を検出し、衝突を防止することも可能である。
【0036】
さらに、吸着パッド22により物品Wを保持した際には、当該物品Wの外形に応じた領域の第1近接センサ24は物品Wの存在を検出(センサON)するはずである。したがって、物品Wの保持中に全ての第1近接センサ24が物品が存在しないことを検出(センサOFF)した場合には、物品Wが落下したとみなすことができる。つまり、物品Wの落下を検知することも可能である。
【0037】
また、ロボットシステム1ではレーザ走査や画像認識処理により保持対象の物品の外形情報が取得されるので、コントローラは当該外形情報に基づいて物品の存在を検出する(センサONとなる)第1近接センサ24(の領域)を予測することができる。したがって、物品の保持中に実際にその存在を検出した第1近接センサ24(の領域)と上記予測した第1近接センサ24(の領域)とに相違があった場合には、誤った物品(指定された物品以外の物品)を保持したとみなすことができる。つまり、誤った物品が保持されたことを検知することも可能である。
【0038】
第2近接センサ25(第2センサ)は、
図3(a)に示すように、ベースプレート21の少なくとも輪郭に沿って略等間隔に設けられる。この例では、ベースプレート21の四隅、四辺の外周部の各中央部、及びベースプレート21の中心部に設けられている。なお、第2近接センサ25の配置態様はこの例に限定されるものではなく、種々の態様を取り得る。この第2近接センサ25は、吸着パッド24による物品Wの押し込みを防止する押し込み防止センサとして使用されるもので、例えば
図5に示すような透過型の光電センサ32が使用される。
【0039】
透過型の光電センサ32は、
図5に示すように、検出対象物31を挟んだ一方側及び他方側にそれぞれ投光部32a及び受光部32bを有する。光電センサ32は、投光部32aから検出対象物31に対し光λ1を投光し、その光λ1の光路に検出対象物31が存在すると、検出対象物31を透過して(遮断を含む)光量が減少した透過光λ3を受光部32bで受光する。そして、受光部32bで受光した受光量が一定以下であると、検出対象物31が存在することを検出し、例えばセンサONになる。そして、検出対象物31が投光された光λ1の光路から外れると、受光部32bで受光した受光量が一定以上となり、検出対象物31が存在しないことを検出し、例えばセンサOFFとなる。
【0040】
第2近接センサ25は、
図3(c)に示すように、吸引管22bに接続されたロッド22cを挟んで、横方向一方側及び他方側に投光部25a及び受光部25bを備え、所定高さの位置に固定的に設置されている。ロッド22cは、上記検出対象物31に相当する部材で、吸着パッド22の上下動にしたがって上下動する。これにより、吸着パッド22が物品Wの上面に接触し、さらにベースプレート21が下降して当該ベースプレート21の下面と物品Wの上面とが所定の距離よりも近づいた場合に、投光部25aから投光される光の光路がロッド22cにより遮断され、ベースプレート21と物品Wとの近接が検出される。
【0041】
ここで、ロボットシステム1では、レーザセンサ8のレーザ走査により最上段の物品Wの上面までの距離情報が取得され、その距離情報に基づいてロボットハンド10が下降される。しかし、距離情報に誤検出があった場合、特に実際の距離よりも大きな距離として誤検出された場合には、ロボットハンド10(吸着パッド22)が物品Wを押し込んでしまい、物品Wの破損や変形を招くおそれがある。
【0042】
そこで上記のような構成である第2近接センサ25をロボットハンド10に設けることにより、ベースプレート21が物品Wに近接する前にロボットハンド10の下降を停止することができる。これにより、上記押し込みによる物品Wの破損や変形を防止することができる。また、このような押し込みはベースプレート21の全体で均等に行われるので、主としてベースプレート21の外周部に配置されたセンサで検出すれば足りる。したがって、第2近接センサ25をベースプレート21の輪郭に沿って略等間隔に配置することで、必要最小限のセンサで押し込み防止を図ることができる。
【0043】
第3近接センサ26(第3センサ)は、ベースプレート21の輪郭の外側に配置される。この例では、ベースプレート21の四辺のうちの隣り合う二辺の外側に設置されている。ベースプレート21の上記二辺の各外周部には長方形状の水平な支持フレーム27が連設され、第3近接センサ26は、各支持フレーム27の外側に2箇所ずつ配置されている。なお、第3近接センサ26の配置態様はこの例に限定されるものではなく、種々の態様を取り得る。例えば、第3近接センサ26はベースプレート21の四辺の外側にそれぞれ設置されてもよい。第3近接センサ26は、吸着パッド22で吸着する物品Wのサイズオーバーの確認用に用いられるもので、第1近接センサ24と同様、例えば
図4に示すような反射型の光電センサ30が用いられる。支持フレーム27の第3近接センサ26に対応する位置には、支持フレーム27を貫通する光の通路孔26aが設けられている。
【0044】
上述したように、ベースプレート21は、予め定められた保持対象となる複数の物品Wのうち最大のものの寸法に対応した外形寸法(例えば略同一の外形寸法)を有している。このようなベースプレート21の輪郭の外側に第3近接センサ26を設置することにより、物品Wの保持中に第3近接センサ26で物品Wを検出した場合には、予め定められた最大寸法よりも大きな物品Wを保持したとみなすことができる。つまり、物品Wのサイズオーバーを検知することができる。
【0045】
また、ロボットハンド10の下方向や横方向への移動中にその移動経路に障害物が存在する場合、ロボットハンド10が当該障害物と衝突する前に第3近接センサ26で当該障害物を検出することができるので、ロボットハンド10の移動を停止することで当該障害物との衝突を防止することも可能である。
【0046】
<3.ロボットコントローラの機能的構成>
ロボットコントローラ4は、
図6に示すように、外形認識部34と、吸着領域設定部35と、載置制御部36とを備えている。外形認識部34は、吸着パッド22で物品Wを保持した際の複数の第1近接センサ24の検出結果に基づいて、物品Wの外形情報(寸法、形状)を認識する。吸着領域設定部35は、認識された外形情報に基づいてベースプレート21における吸着を実行する吸着パッド22の領域を設定する。載置制御部36は、ロボットハンド10の下降動作を、吸着パッド22で保持した物品Wの底面が光電センサ28により検出された時点で停止させ、その後に吸着パッド22による保持を解除して物品Wをコンベア6に載置するように制御する。なお、
図6では図示を省略するが、ロボットコントローラ4は、上記以外にもロボット2,3の動作を制御するための種々の機能を有している。
【0047】
<4.画像認識エラー時の物品の吸着保持動作>
第1ロボット2のロボットハンド10の吸着パッド22によりパレットP上の物品Wを保持するに当たり、第2ロボット3のロボットハンド20に設けられたカメラ7によりパレットP上の物品Wの上面を撮像する。ここで、パレットPにおいて同一形状の複数の物品W(例えば段ボール箱等)が隙間無く横並びに配置されている場合、それらを複数の物品Wとして画像認識することができず、単一の物品として誤認識する可能性がある。
【0048】
本実施形態では、上記のように複数の物品Wが単一の物品として画像認識された場合、当該誤認識された物品の寸法が、予め定められた保持対象となる複数の物品Wのうち最大のものの寸法を超えることから、画像認識エラーとして認識される。そして、ロボットコントローラ4は、このような画像認識エラーが生じた場合、ベースプレート21の複数の吸着パッド22のうち予め定められた最小寸法の物品Wに対応する領域の吸着パッド22を作動させて物品Wを試験的に吸着して保持し、その際の第1近接センサ24検出結果に基づいて物品Wの外形情報(寸法、形状)を認識する。そして、認識された物品Wの外形情報に基づいてベースプレート21の吸着を実行する吸着パッド22の領域を設定し、設定された領域の吸着パッド22により物品Wを再度吸着して保持する。以下、この動作について詳細に説明する。
【0049】
図7は、上記画像認識エラー時の物品の吸着保持動作の一例を表す説明図である。
図7(a)において、パレットPに積載された2つの物品W1,W2は、隙間なく横並びに配置されており、カメラ7の撮像による画像認識では1つの物品W′として誤認識され、画像認識エラーが生じたものとする。この場合、ロボットコントローラ4は、ベースプレート21の吸着パッド22のうち予め定められた最小寸法の物品Wに対応する最小領域38に位置する吸着パッド22を作動させて、例えばその最小領域38をパレットPの隅部(
図7(a)中左上側の隅部)に寄せた態様で物品W′の上面に吸着させ、物品W′を保持する。そして、ロボットハンド10を上昇させると、2つの物品W1,W2のうち吸着パッド22による吸着で保持された一方(
図7(a)中左側)の物品W1のみが持ち上げられ、他方(
図7(a)中右側)の物品W2はパレットPに残存したままになる。このため、ベースプレート21の複数の第1近接センサ24で物品の検出を行うと、第1近接センサ24は、吸着された上記物品W1に対応した第1近接センサ24だけが物品を検出してONとなり、その外側に位置した第1近接センサ24は物品を検出せずにOFFとなる。これにより、ロボットコントローラ4の外形認識部34は、第1近接センサ24の検出結果に基づいて、物品W1の外形情報(寸法、形状)を認識する。
【0050】
その後、
図7(b)に示すように、吸着領域設定部35が、認識された物品W1の外形情報に基づいて、ベースプレート21の吸着を実行する吸着パッド22の領域39を物品W1の外形寸法に対し過不足ない適正な領域となるように設定する。そして、ロボットコントローラ4は、設定された適正な領域39の吸着パッド22を改めて作動して、吸着パッド22により物品Wを再度吸着して保持する。
【0051】
<5.ロボットコントローラによる制御手順>
上記画像認識エラー時のロボットコントローラ4による制御手順の一例を
図8に示す。ロボットコントローラ4は、レーザセンサ8によるパレットP上の最上段の物品Wの上面までの距離の測定、及び距離の測定によって特定された最上段の物品Wのカメラ7による撮像をし、上述した画像認識エラーを認識した場合にこのフローに示す処理を開始する。
【0052】
まずステップS10において、ロボットコントローラ4は、第1ロボット2に制御信号を出力し、上記物品Wの距離情報や外形情報等に基づいた位置制御により、第1ロボット2のロボットハンド10をパレットPの上方に移動させる。そして、ロボットコントローラ4は、ロボットハンド10を下降させ、ベースプレート21の予め定められた最小寸法の物品に対応する領域の吸着パッド22を作動させ、吸着パッド22で特定された物品Wを試験的に吸着して保持し、例えば物品Wの持ち上げ等の操作を行う。
【0053】
その後、ステップS20において、ロボットコントローラ4は、吸着パッド22で物品Wを保持した状態で、ベースプレート21の複数の第1近接センサ24による検出結果を取得する。
【0054】
次に、ステップS30において、ロボットコントローラ4の外形認識部34は、第1近接センサ24の検出結果に基づいて物品Wの外形情報(寸法、形状)を認識する。前述のように、複数の第1近接センサ24のうち保持された物品Wに対応した第1近接センサ24だけがONとなり、保持された物品Wの外側に位置した第1近接センサ24はOFFとなるので、物品Wの外形情報(寸法、形状)が認識される。ロボットコントローラ4は、外形情報の認識後、ロボットハンド10を下降させて吸着パッド22による保持を解除し、物品WをパレットP上に載置する。
【0055】
ステップS40では、ロボットコントローラ4の吸着領域設定部35は、認識された物品Wの外形情報に基づき、ベースプレート21での吸着を実行する吸着パッド22の領域(吸着領域)を設定する。なお、この吸着領域の設定後に、上記物品WのパレットPへの載置を行ってもよい。
【0056】
その後、ステップS50において、ロボットコントローラ4は、上記設定された吸着領域の吸着パッド22を改めて作動して、吸着パッド22により物品Wを再度吸着して保持し、物品Wを操作する。これにより、吸着パッド22により物品Wを安定的に保持してコンベア6へ移動することができる。ステップS50が終了すると、本フローを終了する。
【0057】
<6.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の第1ロボット2は、パレットP上に積まれた物品Wを1つずつ荷下ろしするデパレタイズ作業を行う。この際、第2ロボット3のロボットハンド20のレーザセンサ8によりパレットPに搭載された最上段の物品Wの上面を走査することで上面までの距離情報が取得され、上面が最も高い位置に存在する物品Wが特定される。そして、ロボットハンド20のカメラ7により特定した物品Wの上面を撮像して、画像処理装置5で画像認識処理を実行することで、上面の外形情報が取得される。第1ロボット2は、これらの距離情報や外形情報等に基づいてロボットハンド10を移動させ、物品Wを保持する。
【0058】
ここで、パレットPにおいて例えば段ボール箱のような同一形状の複数の物品Wが隙間無く横並びに配置されている場合、それらを複数の物品Wとして画像認識することができず、単一の物品として誤認識する可能性がある。このような誤認識が生じた場合、物品Wの落下やエラーによる運転停止等を招くこととなり、デパレタイズ作業が中断される可能性がある。
【0059】
本実施形態では、ロボットハンド10のベースプレート21に複数の近接センサ(第1〜第3の近接センサ24〜26)が配置される。これにより、上記のように画像認識できなかった場合に、とりあえず吸着パッド22により物品Wを保持して持ち上げ操作し、操作した状態での複数の近接センサの検出結果に基づいて物品Wの外形情報(寸法、形状)を認識することができる。その結果、認識された物品Wの外形情報に基づいて吸着パッド22による適切な保持態様を設定することが可能となり、当該設定された態様で物品Wを再度保持して操作することができる。このようにして、デパレタイズ対象となる物品Wの誤認識が生じた場合でも、物品Wの落下やエラーによる運転停止等を発生させることなく、デパレタイズ作業を継続して実行することができる。
【0060】
また、本実施形態では特に、複数の近接センサに、ベースプレート21の面方向に分散して配置された上記複数の第1近接センサ24が含まれる。面方向に分散配置された第1近接センサのON/OFF情報により、操作した物品Wの外形情報(寸法、形状)が明確となり、認識精度を高めることができる。
【0061】
また、前述したように、ロボットハンド10の移動(下降や横方向への移動)中にその移動経路に障害物が存在する場合、第1近接センサ24で当該障害物を検出することで衝突を防止することができる。さらに、物品Wの落下を検知したり、誤った物品が保持されたことを検知することも可能である。
【0062】
また、本実施形態では特に、複数の近接センサは、ベースプレート21の輪郭に沿って略等間隔に配置された上記第2近接センサ25を含む。これにより、前述したように、ロボットハンド10の押し込みによる物品Wの破損や変形を防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では特に、複数の近接センサに、ベースプレート21の輪郭の外側に配置された第3近接センサ26が含まれる。これにより、前述したように、物品Wのサイズオーバーを検知することができる。また、ロボットハンド10の移動(下降や横方向への移動)中にその移動経路に障害物が存在する場合、第3近接センサ26で当該障害物を検出することで衝突を防止することができる。
【0064】
また、本実施形態では特に、保持部材として、ベースプレート21に面方向に分散して配置され、各々が物品Wの上面に吸着するように構成された複数の吸着パッド22を設置する。これにより、保持対象の物品Wの外形に応じて吸着を実行する吸着パッド22を適宜選択することが可能となり、多様な大きさや形状の物品を保持することが可能となる。また、パレットP内での保持対象の物品Wの載置位置に応じてベースプレート21における吸着位置を変更することも可能となるので、デパレタイズの作業効率を向上できる。
【0065】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、第1ロボット2が載置した物品Wを搬送するコンベア6と、物品Wの載置位置においてコンベア6の搬送面6aの上方に配置され、コンベア6の幅方向一方側に位置する投光部28a及び幅方向他方側に位置する受光部28bを備えた光電センサ28とを有する。
【0066】
これにより、ロボットコントローラ4の載置制御部36が、ロボットハンド10の下降動作を、吸着パッド22で保持した物品Wの底面が光電センサ28により検出された際に停止させ、その後に吸着パッド22による保持を解除して物品Wをコンベア6に載置するように制御することで、物品Wの高さによらずに当該物品Wをコンベア6に円滑に載置することができる。したがって、物品Wの高さを検出するためのカメラやセンサ等の装置が不要となり、ロボットシステム1を簡潔な構成とすることができる。
【0067】
<7.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、以上の実施形態では、第1ロボット2の他に第2ロボット3を設けて、第2ロボット3にカメラ7及びレーザセンサ8を搭載したが、第1ロボット2にカメラ7及びレーザセンサ8を搭載することによって第2ロボット3を省略し、第1ロボット2の1台だけを設けてもよい。
【0069】
また、第1〜第3近接センサ24〜26は光電型のセンサとしたが、静電容量型、超音波型など光電型以外のセンサであってもよい。
【0070】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態等による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0071】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態等は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。