(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印加される直流電圧の極性に応じて正又は負のイオンを放出する2n個(nは自然数)の放電針を有し、これら放電針をn個ずつ第1グループと第2グループとにグループ分けしてなる放電部と、
前記第1グループに正極性の直流電圧を印加し前記第2グループに負極性の直流電圧を印加する第1極性パターン、及び前記第1グループに負極性の直流電圧を印加し前記第2グループに正極性の直流電圧を印加する第2極性パターンの何れかを選択的に前記放電部に対し出力可能な極性出力部と、
前記極性出力部から出力させる極性パターンを制御する極性制御部と、
前記極性出力部に接続され、該極性出力部に対し給電する電源とを備えたイオナイザであって、
前記極性制御部は、
前記放電針の第1グループ及び第2グループに流れる電流値をそれぞれ検出する電流検出部を有し、
負極性の直流電圧が印加されていた一方のグループの電流値から、正極性の直流電圧が印加されていた他方のグループの電流値を引いた値が所定値よりも大きくなった時に、前記極性出力部から出力させる極性パターンを、その時まで出力されていた一方の極性パターンから他方の極性パターンに切り替える指令信号を、該極性出力部に対し出力するように構成されていることを特徴とするイオナイザ。
印加される直流電圧の極性に応じて正又は負のイオンを放出する2n個(nは自然数)の放電針を有し、これら放電針をn個ずつ第1グループと第2グループとにグループ分けしてなる放電部と、
前記第1グループに正極性の直流電圧を印加し前記第2グループに負極性の直流電圧を印加する第1極性パターン、及び前記第1グループに負極性の直流電圧を印加し前記第2グループに正極性の直流電圧を印加する第2極性パターンの何れかを選択的に前記放電部に対し出力可能な極性出力部と、
前記極性出力部に接続され、該極性出力部に対し給電する電源とを備えたイオナイザの制御方法であって、
前記放電針の第1グループ及び第2グループに流れる電流値をそれぞれ検出し、負極性の直流電圧が印加されていた一方のグループの電流値から、正極性の直流電圧が印加されていた他方のグループの電流値を引いた値が所定値よりも大きくなった時に、前記極性出力部から出力させる極性パターンを、その時まで出力されていた一方の極性パターンから他方の極性パターンへと切り替えることを特徴とするイオナイザの制御方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電針に高電圧を印加して発生させた正又は負のイオンを利用して、帯電したワーク等を電気的に中和するためのイオナイザ及びその制御方法に関する。
【0002】
従来から、静電破壊や静電吸着等の静電気による障害を防ぐために、放電針に高電圧を印加してコロナ放電により正及び負のイオンを発生させる除電装置すなわちイオナイザが使用されている。このようなイオナイザは、主として、放電針に直流電圧を印加する方式(以下、DC方式と記す。)と、放電針に交流電圧を印加する方式(以下、AC方式と記す。)とに分類される。
【0003】
このうち、前記DC方式は、正イオンを放出する放電針と負イオンを放出する放電針とを有していて、それぞれの放電針に正負の直流電圧を印加することで、これら正負の各放電針から正負のイオンを同時に放出する方式である。そのため、放電針に交流電圧を印加する前記AC方式と比較すると、正及び負のイオンの再結合を抑制することができ、その結果、より多くの正負各イオンを遠くまで飛ばすことが可能となり、除電速度をより速くすることができるという利点がある。
【0004】
ところで、このようなコロナ放電式のイオナイザにおいては、使用時間の長期化に伴って放電針が腐食や磨耗等により劣化するが、その際、特に正極の放電針の方が負極の放電針よりも劣化し易いことが知られている。そのため、正負の各放電針から放出されるイオンバランスが経時的に崩れ、除電性能が低下してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、このようなイオンバランスの経時的な偏りを防止するため、特許文献1や特許文献2では、第1グループの放電針から一方の極性のイオンを放出すると同時に、第2グループの放電針から他方の極性のイオンを放出し、且つ一定期間毎に前記各グループから放出するイオンの極性を反転させるように構成された除電装置が提案されている。
しかしながら、この特許文献1や特許文献2に開示された除電装置は、前記各グループの放電針の極性を0.05s以下という短い周期(一定期間)で反転させるものであるため、上述したようなDC方式の長所を十分に生かしつつ、イオンバランスの経時的な偏りを防止する必要がある場合には、必ずしも最適な解決策を提供し得るものであるとは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述したようなDC方式のイオナイザの長所を十分に生かしつつ、使用時間の長期化に伴う放電針の腐食や磨耗等による劣化の度合いを、各放電針の間で均一化することにより、イオンバランスの経時的な偏りを防止することができると同時に、放電針全体として寿命をも改善することが可能なイオナイザ及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るイオナイザは、印加される直流電圧の極性に応じて正又は負のイオンを放出する2n個(nは自然数)の放電針を有し、これら放電針をn個ずつ第1グループと第2グループとにグループ分けしてなる放電部と、前記第1グループに正極性の直流電圧を印加し前記第2グループに負極性の直流電圧を印加する第1極性パターン、及び前記第1グループに負極性の直流電圧を印加し前記第2グループに正極性の直流電圧を印加する第2極性パターンの何れかを選択的に前記放電部に対し出力可能な極性出力部と、前記極性出力部から出力させる極性パターンを制御する極性制御部と、前記極性出力部に接続され、該極性出力部に対し給電する電源とを備えたイオナイザであって、前記極性制御部は、前記放電針の第1グループ及び第2グループに流れる電流値をそれぞれ検出する電流検出部を有し、負極性の直流電圧が印加されていた一方のグループの電流値から、正極性の直流電圧が印加されていた他方のグループの電流値を引いた値が所定値よりも大きくなった時に、前記極性出力部から出力させる極性パターンを、その時まで出力されていた一方の極性パターンから他方の極性パターンに切り替える指令信号を、該極性出力部に対し出力するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このとき、上記イオナイザにおいて、前記極性出力部は、前記第1グループの放電針に正極性の直流電圧を印加する第1正極回路と、前記第1グループの放電針に負極性の直流電圧を印加する第1負極回路と、前記第2グループの放電針に正極性の直流電圧を印加する第2正極回路と、前記第2グループの放電針に負極性の直流電圧を印加する第2負極回路と、前記電源と前記第1正極回路との間の電気的接続をオン/オフする第1スイッチと、前記電源と前記第1負極回路との間の電気的接続をオン/オフする第2スイッチと、前記電源と前記第2正極回路との間の電気的接続をオン/オフする第3スイッチと、前記電源と前記第2負極回路との間の電気的接続をオン/オフする第4スイッチとを有し、前記極性制御部からの指令信号により、前記第1スイッチと前記第4スイッチとをオンにすると共に前記第2スイッチと前記第3スイッチとをオフにすることで前記第1極性パターンを出力し、前記第1スイッチと前記第4スイッチとをオフにすると共に前記第2スイッチと前記第3スイッチとをオンにすることで前記第2極性パターンを出力するように構成されていても良い。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るイオナイザの制御方法は、印加される直流電圧の極性に応じて正又は負のイオンを放出する2n個(nは自然数)の放電針を有し、これら放電針をn個ずつ第1グループと第2グループとにグループ分けしてなる放電部と、前記第1グループに正極性の直流電圧を印加し前記第2グループに負極性の直流電圧を印加する第1極性パターン、及び前記第1グループに負極性の直流電圧を印加し前記第2グループに正極性の直流電圧を印加する第2極性パターンの何れかを選択的に前記放電部に対し出力可能な極性出力部と、前記極性出力部に接続され、該極性出力部に対し給電する電源とを備えたイオナイザの制御方法であって、前記放電針の第1グループ及び第2グループに流れる電流値をそれぞれ検出し、負極性の直流電圧が印加されていた一方のグループの電流値から、正極性の直流電圧が印加されていた他方のグループの電流値を引いた値が所定値よりも大きくなった時に、前記極性出力部から出力させる極性パターンを、その時まで出力されていた一方の極性パターンから他方の極性パターンへと切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1グループの放電針に正極性の直流電圧を印加すると同時に第2グループの放電針に負極性の直流電圧を印加する第1極性パターン、及び前記第1グループの放電針に負極性の直流電圧を印加すると同時に前記第2グループの放電針に正極性の直流電圧を印加する第2極性パターンの何れかを、選択的に放電部に対し出力可能な極性出力部を設け、前記放電針の第1グループ及び第2グループに流れる電流値をそれぞれ検出し、負極性の直流電圧が印加されていた一方のグループの電流値から、正極性の直流電圧が印加されていた他方のグループの電流値を引いた値が所定値よりも大きくなった時に、前記極性出力部から出力させる極性パターンを、その時まで出力されていた一方の極性パターンから他方の極性パターンへと切り替えるように構成されている。
【0012】
そのため、正イオンを放出しているグループに属する放電針の劣化度合が進んで、負イオンを放出しているグループに属する放電針の劣化度合との差が、所定の基準値より大きくなった時には、これら放電針に対し、その時までとは逆極性の直流電圧がそれぞれ印加される。したがって、DC方式のイオナイザの長所を十分に生かしつつも、使用時間の長期化に伴う放電針の腐食や磨耗等による劣化の度合いが、両グループの各放電針の間で均一化されることにより、イオンバランスの経時的な偏りを防止することができると同時に、両グループに属する放電針全体としての寿命をも改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るイオナイザの実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、イオナイザ1は、高周波電圧を出力する電源2と、図示しない除電対象物に対して正及び負のイオンを放出する放電部10と、前記放電部10に対して正及び負の直流高電圧を印加する直流電圧出力部(極性出力部)20と、前記直流電圧出力部20から前記放電部10に印加する直流高電圧の極性を制御する極性制御部30とで構成されている。
【0015】
前記電源2は、前記直流電圧出力部20に接続されており、該直流電圧出力部20に対する給電をオン/オフしてイオナイザ1を稼働/停止させることが可能な電源スイッチ2aを有している。
【0016】
前記放電部10は、印加される直流高電圧の極性に応じて、コロナ放電により正又は負のイオンを発生させる2n(n:自然数)個の放電針11,12から構成されている。そして、これら2n個の放電針11,12は、第1グループのn個の放電針11と、第2グループのn個(すなわち、第1グループと同数)の放電針12とにグループ分けされている。これら第1グループ及び第2グループの放電針11,12には互いに逆極性の直流高電圧が印加され、正極性の直流高電圧が印加されたグループの放電針からは正イオンが放出され、負極性の直流高電圧が印加されたグループの放電針からは負イオンが放出されるようになっている。
【0017】
前記直流電圧出力部20は、前記第1グループの放電針11と前記第2グループの放電針12とに対して互いに逆極性の直流高電圧を出力するものであって、前記第1グループの放電針11に正極性の直流高電圧を印加する第1直流電圧出力回路21と、前記第1グループの放電針11に負極性の直流高電圧を印加する第2直流電圧出力回路22と、前記第2グループの放電針12に正極性の直流高電圧を印加する第3直流電圧出力回路23と、前記第2グループの放電針12に負極性の直流高電圧を印加する第4直流電圧出力回路24とにより構成されている。
【0018】
前記第1及び第3直流電圧出力回路21,23はそれぞれ、前記電源2から出力された高周波電圧を昇圧する第1及び第3昇圧トランス21a,23aと、これら昇圧トランス21a,23aで昇圧された高周波電圧を正極性の直流高電圧に変換して、前記第1及び第2グループの放電針11,12にそれぞれ出力する第1及び第2正極回路21b,23bと、前記電源2とこれら正極回路21b,23bとの間の電気的接続をそれぞれ個別にオン/オフすることができる第1及び第3スイッチ21c,23cとを備えている。
【0019】
また、前記第2及び第4直流電圧出力回路22,24も同様に、前記電源2から出力された高周波電圧を昇圧する第2及び第4昇圧トランス22a,24aと、これら昇圧トランス22a,24aで昇圧された高周波電圧を負極性の直流高電圧に変換して、前記第1及び第2グループの放電針11,12にそれぞれ出力する第1及び第2負極回路22b,24bと、前記電源2とこれら負極回路22b,24bとの間の電気的接続をそれぞれ個別にオン/オフすることができる第2及び第4スイッチ22c,24cとを備えている。
【0020】
このイオナイザ1においては、前記極性制御部30からの指令信号により、前記第1〜第4スイッチ21c〜24cのオン/オフの組合せが切り替えるられるように構成されている。そうすることにより、前記直流電圧出力部20が、前記第1グループに属するn個の放電針11全てに正極性の直流高電圧を印加し、前記第2グループに属するn個の放電針12全てに負極性の直流高電圧を印加する第1極性パターンと、前記第1グループに属するn個の放電針11全てに負極性の直流高電圧を印加し、前記第2グループに属するn個の放電針12全てに正極性の直流高電圧を印加する第2極性パターンと、の何れかを選択的に前記放電部10に対して出力することができるようになっている。すなわち、前記第1極性パターンを前記放電部10に対して出力するときは、第1及び第4スイッチ21c,24cがオン、第2及び第3スイッチ22c,23cがオフとなり、その一方で、前記第2極性パターンを前記放電部10に対して出力するときは、第2及び第3スイッチ22c,23cがオン、第1及び第4スイッチ21c,24cがオフとなるように、各スイッチ21c〜24cが前記指令信号により制御されるようになっている。
【0021】
前記極性制御部30は、前記直流電圧出力部20に出力させる極性パターンに対応する信号、すなわち、極性パターンの識別信号を出力する指令回路31と、この指令回路31から出力された識別信号を反転させ、その反転させた信号を前記指令信号として前記第2及び第3スイッチ22c,23cに対し出力する論理反転回路32と、前記直流電圧出力部20から前記第1グループに属する放電針11全体に流れる電流値Ia、及び前記第2グループに属する放電針12全体に流れる電流値Ibとをそれぞれ検出する電流検出部33とを含んでいる。なお、第1及び第4スイッチ21c,24cに対しては、前記指令回路31からの識別信号が反転されることなくそのまま前記指令信号として出力されるようになっている。
【0022】
ところで、このようなコロナ放電式のイオナイザ1においては、使用時間の長期化に伴って放電部10の各放電針11,12が腐食や磨耗等により徐々に劣化するが、その際、特に正極の放電針の方が負極の放電針よりも劣化が進み易いことが知られている。そのため、例えば長期間にわたって、第1グループの放電針11に正極性の直流高電圧のみを印加し、第2グループの放電針12に負極性の直流高電圧のみを印加していると、第2グループの放電針12よりも第1グループの放電針11の劣化が進み、その結果、放電部10から放出される正負のイオンバランスが崩れて(すなわち、イオンバランスが負側に大きく偏って)、除電性能が低下してしまう虞がある。また同時に、両グループに属するこれら放電針11,12全体としての寿命、すなわち放電部10の寿命も低下してしまう。
【0023】
そこで、本発明に係るイオナイザ1においては、前記極性制御部30の指令回路31が、前記第1極性パターン及び前記第2極性パターンのそれぞれに割り当てられたフラグiの何れかを記憶するフラグ記憶部31aと、該フラグ記憶部31aに記憶されたフラグi(すなわち極性パターン)に対応する前記識別信号を出力する指令部31bと、前記フラグ記憶部31aに記憶されたフラグiと前記電流検出部33により検出された放電針の第1及び第2グループの電流値Ia,Ibとに基づいて、負極性の直流高電圧が印加されている放電針のグループの電流値から、正極性の直流高電圧が印加されている放電針のグループの電流値を引いた値(電流差ΔI)を、予め設定された所定の閾値Ik(>0)と比較し、この電流差ΔIが閾値Ikよりも大きい(ΔI>Ik)時に極性切替信号を出力する比較演算部31cと、該比較演算部31cからの極性切替信号により、前記フラグ記憶部31aに記憶されている一方の極性パターンに対応するフラグiを、他方の極性パターンに対応するフラグiに書き換えるフラグ更新部31dとを有している。
【0024】
そうすることにより、例えば、第1極性パターンに対応するフラグiを「オン(i=1)」、第2極性パターンに対応するフラグiを「オフ(i=0)」としたとき、前記フラグ記憶部31aに記憶されているフラグiが「オン(i=1)」である場合には、第1極性パターンに対応する識別信号が前記指令部31bから出力され、この識別信号に基づいて、前記第1及び第4スイッチ21c,24cをオンにし、第2及び第3スイッチ22c,23cをオフにする指令信号が前記極性制御部30から前記直流電圧出力部20に対し出力される。逆に、前記フラグ記憶部31aに記憶されているフラグiが「オフ(i=0)」である場合には、第2極性パターンに対応する識別信号が前記指令部31bから出力され、この識別信号に基づいて、前記第2及び第3スイッチ22c,23cをオンにし、第1及び第4スイッチ21c,24cをオフにする指令信号が前記極性制御部30から前記直流電圧出力部20に対し出力される。
【0025】
そして、正極性の直流高電圧が印加されていたグループの放電針の劣化が相対的に進んで前記電流差ΔIが閾値Ikを越える度に、前記フラグ記憶部31aのフラグiがフラグ更新部31dによって書き換えられ、各グループに属する放電針11,12に対し、これまでとは逆極性の直流高電圧が印加される。そのため、正及び負のイオンの再結合を抑制し、より多くの正負各イオンを遠くまで飛ばすことができるというDC方式(直流方式)の長所を十分に生かしつつも、使用時間の長期化に伴う放電針の腐食や磨耗等による劣化の度合いを、第1グループの放電針11と第2グループの放電針12との間で均一化することにより、イオンバランスの経時的な偏りを防止することができると同時に、両グループに属するこれら放電針11,12全体としての寿命、すなわち放電部10の寿命をも改善することが可能となる。
【0026】
次に、
図2のフローチャートに基づいて、前記イオナイザ1の制御方法の第1実施形態を具体的に説明する。
まず、電源スイッチ2aの操作により電源2をオフからオンへと切り替えると(S1)、該電源スイッチ2aからの電源投入信号に基づいて、前記フラグ更新部31dにより前記フラグ記憶部31aに記憶されたフラグiが「オフ(i=0)」にリセットされる(S2)。
【0027】
そして、このフラグ記憶部31aに記憶されたフラグiに基づいて、指令部31bからフラグi=0すなわち第2極性パターンに対応する「オフ」の識別信号が出力される(S3)。そうすると、この識別信号に基づいて極性制御部30から出力される指令信号により、直流電圧出力部20において、前記第1及び第4スイッチ21c,24cがオフにされると同時に、第2及び第3スイッチ22c,23cがオンにされ(S4)、その結果、第1負極回路22bから第1グループの各放電針11に対し負極性の直流高電圧が印加されると同時に、第2正極回路23bから第2グループの各放電針12に対し正極性の直流高電圧が印加される(S5)。よって、第1グループの放電針11から負のイオンが放出されると同時に、第2グループの放電針12から正のイオンが放出される。
【0028】
次に、ステップS6において、負極となっている第1グループの放電針11の電流値Iaから、正極となっている第2グループの放電針12の電流値Ibを引いた電流差ΔI(Ia−Ib)が、閾値Ik以下か否かを判断する。
その結果、その電流差ΔIが閾値Ik以下である場合には、正極となっている放電針12の負極となっている放電針11に対する相対的な劣化の度合い、すなわち放電部10から放出される正負のイオンバランスが許容範囲内にあると判定され、そのままステップS7に進んで電源2のオン/オフを確認する。そして、該電源2がオンのままでオフにされていない場合には、フラグ記憶部31aのフラグiが「オフ(i=0)」のまま維持され、引き続き、直流電圧出力部20から第2極性パターンの直流高電圧が第1及び第2グループの放電針11,12に対し印加される(S3〜S5)。なお、ステップS7において電源2がオフであった場合には、該電源2から直流電圧出力部20に対する給電が遮断されるため、前記第1,第2グループの放電針11,12からのイオンの放出が終了する。
【0029】
一方、前記ステップS6において、前記電流差ΔIが閾値Ikよりも大きい場合には、正極となっている放電針12の負極となっている放電針11に対する相対的な劣化の度合いが許容範囲を越えたと判定する。そうすると、前記比較演算部31cからの極性切替信号に基づき、前記フラグ更新部31dによって、前記フラグ記憶部31aに記憶されているフラグiが、第2極性パターンに対応する「オフ(i=0)」から第1極性パターンに対応する「オン(i=1)」に書き換えられる(S8)。
【0030】
次に、このフラグ記憶部31aの新たに記憶されたフラグiに基づいて、指令部31bからフラグi=1すなわち第1極性パターンに対応する「オン」の識別信号が出力される(S9)。そして、この識別信号に基づいて極性制御部30から出力される指令信号により、直流電圧出力部20において、前記第1及び第4スイッチ21c,24cがオンにされると同時に、第2及び第3スイッチ22c,23cがオフにされる(S10)。その結果、第1正極回路21bから第1グループの各放電針11に対し正極性の直流高電圧が印加されると同時に、第2負極回路24bから第2グループの各放電針12に対し負極性の直流高電圧が印加され(S11)、今度は、第1グループの放電針11から正のイオンが放出されると同時に、第2グループの放電針12から負のイオンが放出される。
【0031】
続いて、ステップS12において、今度は、負極となっている第2グループの放電針12の電流値Ibから、正極となっている第1グループの放電針11の電流値Iaを引いた電流差ΔI(Ib−Ia)が、前記閾値Ik以下か否かを判断する。
その結果、その電流差ΔIが閾値Ik以下である場合には、正極となっている放電針11の負極となっている放電針12に対する相対的な劣化の度合いが許容範囲内にあると判定され、そのままステップS13に進んで電源2のオン/オフを確認する。そして、該電源2がオンのままである場合には、フラグ記憶部31aのフラグiが「オン(i=1)」のまま維持され、引き続き、直流電圧出力部20から第1極性パターンの直流高電圧が第1及び第2グループの放電針11,12に対し印加される(S9〜S11)。なお、ステップS13において電源2がオフであった場合には、イオナイザ1の稼働が停止され、前記第1,第2グループの放電針11,12からのイオンの放出が終了する。
【0032】
また、前記ステップS12において、前記電流差ΔIが閾値Ikよりも大きい場合には、正極となっている放電針11の負極となっている放電針12に対する相対的な劣化の度合いが許容範囲を越えたと判定する。そうすると、前記比較演算部31cからの極性切替信号に基づき、前記フラグ更新部31dによって、前記フラグ記憶部31aに記憶されているフラグiが、第1極性パターンに対応する「オン(i=1)」から再び第2極性パターンに対応する「オフ(i=0)」に書き換えられる(S2)。以降、上述した各ステップと同様の動作が繰り返される。
【0033】
図3は、イオナイザ1を
図2に示す第1実施形態で制御したときのタイミングチャートを示している。
まず、時刻t1において、電源2をオフからオンへと切り替えると、前記フラグ記憶部31aに記憶されたフラグiが「オフ(i=0)」にリセットされる。そして、このフラグ記憶部31aに記憶されたフラグi(=0)に基づき極性制御部30から出力される指令信号により、前記第1及び第4スイッチ21c,24cがオフとなり、前記第2及び第3スイッチ,22c,23cとがオンとなる。その結果、放電部10に第2極性パターンの直流高電圧が印加され、前記第1グループの放電針11から負のイオン、前記第2グループの放電針12から正のイオンが同時に放出される。
【0034】
このようにして、放電部10に対し前記第2極性パターンの直流高電圧を印加し続けると、負極である第1グループの放電針11に対し、正極である第2グループの放電針12の劣化が進み、それに伴って、該第1グループに流れる電流値Iaに対し、第2グループに流れる電流値Ibも低下していく。そして、前記電流差ΔI(Ia−Ib)が所定の閾値Ikよりも大きくなった時(t2)、前記フラグ更新部31dによりフラグiが第2極性パターンに割り当てられた「オフ(i=0)」から、第1極性パターンに割り当てられた「オン(i=1)」へと書き換えられる。
そうすると、前記第1及び第4スイッチ21c,24cがオンにされると同時に、第2及び第3スイッチ22c,23cがオフにされて、放電部10に第1極性パターンの直流高電圧が印加され、前記第1グループの放電針11から正のイオン、前記第2グループの放電針12から負のイオンが同時に放出される。
【0035】
その結果、今度は正極となった第1グループの放電針11の劣化が、第2グループの放電針12に対し進むため、両グループの放電針11,12の劣化の度合いの差(電流差ΔI)は一旦徐々に縮まるが、時間が経過すると、今度は前記第1グループの放電針11の劣化が進んで、電流差ΔI(Ib−Ia)は再び徐々に拡大していく。そして、この電流差ΔIが再び所定の閾値Ikよりも大きくなった時(t3)、前記フラグ更新部31dによりフラグiが「オン(i=1)」から、再び「オフ(i=0)」へと書き換えられ、放電部10に第2極性パターンの直流高電圧が印加され、前記第1グループの放電針11から負のイオン、前記第2グループの放電針12から正のイオンが同時に放出される。以降、前記電流差がΔIが閾値Ikよりも大きくなる度に同様の動作が繰り返され、両グループの放電針11,12の劣化の度合い差は所定の範囲に維持される。
【0036】
さらに、時刻t4において、電源2をオフにすると、前記両グループの放電針11,12からのイオンの放出が停止される。このとき、前記フラグ記憶部31aで記憶されているフラグは「オフ(i=0)」のまま保持されるが、前記第2及び第3スイッチ22c,23cはオンからオフとなる。
【0037】
以上において、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない範囲において、様々な設計変更ができることは言うまでもない。
例えば、本実施形態では、直流電圧出力部20が放電部10に対し、極性パターンの識別信号が「オフ」の時に第2極性パターンを出力し「オン」の時に第1極性パターンを出力しするようにしているが、識別信号が「オン」の時に第2極性パターンを出力し、識別信号が「オフ」の時に第1極性パターンを出力するようにしてもよい。
また、各グループのn本の放電針11,12に流れる合計電流値のをそれぞれIa,Ibとしたが、各グループにおいてn本の個々の放電針11,12に流れる電流値の平均値をそれぞれIa,Ibとしても良い。
さらに、フラグ記憶部31aのフラグiを、
図2のステップS2において「i=1」にリセットし、ステップS8において「i=0」に書き換えるようにしても良い。