特許第5945974号(P5945974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945974凝縮混合装置及びこれを有する蒸発ガス再液化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945974
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】凝縮混合装置及びこれを有する蒸発ガス再液化装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   F17C13/00 302A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-249220(P2013-249220)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-105739(P2015-105739A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年10月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁則
(72)【発明者】
【氏名】林 謙年
(72)【発明者】
【氏名】山口 以昌
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−045327(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00713064(GB,A)
【文献】 特開昭62−097633(JP,A)
【文献】 特開平04−045832(JP,A)
【文献】 特開昭50−125359(JP,A)
【文献】 特開昭61−028427(JP,A)
【文献】 特開2011−025171(JP,A)
【文献】 特表2009−507624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側へ向け漸次内径を小さくする縮径部に引き続き最小径をなす喉部を経て該喉部から漸次内径を大きくする拡径部が形成されたベンチュリ管型の流管を有し、流管外から蒸気を流管内へ注入するために、該流管の半径方向かつ下流側方向に向いた蒸気孔が流管の軸線方向の複数位置で上記拡径部の内径面に注入開口を有するように形成されていて、流管内を下流に向け流れる低温液体へ蒸気孔の注入開口から蒸気を注入して該蒸気を凝縮して低温液体に混合する凝縮混合装置において、
拡径部は、軸線方向で複数位置に段部が形成されていて、該段部で順次拡径され軸線方向で下流側に向け延びる内周面をもつ段状拡径部を有し、注入開口が上記段部の直後に位置して形成されており、上記段状拡径部が、該段状拡径部の半径の2.5〜8倍の区間長にわたり軸線方向に延びていることを特徴とする凝縮混合装置。
【請求項2】
段部に対して上流側で隣接する先行の段状拡径部と下流で隣接する後続の段状拡径部との半径差が、上記先行の段状拡径部の径の12〜30%の寸法となっていることとする請求項1に記載の凝縮混合装置。
【請求項3】
段状拡径部は、その区間長を最下流側の段状拡径部以外の段状拡径部で一定の長さとしていることとする請求項1又は請求項に記載の凝縮混合装置。
【請求項4】
段状拡径部は、下流側になるほど区間長を長くしていることとする請求項1又は請求項に記載の凝縮混合装置。
【請求項5】
貯槽内に貯留された低温液体から発生する蒸発ガスを、貯槽から払い出された低温液体に混合して凝縮させ再液化する蒸発ガス再液化装置において、
請求項1ないし請求項のいずれか一つに記載の凝縮混合装置と、蒸発ガスを圧縮する蒸発ガス圧縮機と、貯槽から低温液体を送出する送出ポンプとを備え、該送出ポンプで低温液体を凝縮混合装置の流管へ上流側から供給し、上記蒸発ガス圧縮機で蒸発ガスを凝縮混合装置の蒸気孔から上記流管内へ注入するようになっていることを特徴とする蒸発ガス再液化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気と低温液体を接触させ蒸気を凝縮し液化して低温液体に混合する凝縮混合装置及びこれを有する蒸発ガス再液化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)をはじめとする低温液体をタンクで貯蔵する場合、外部からのタンクへの入熱によりタンク内の低温液体の一部が蒸発し、タンク内には蒸発ガスが発生する。低温液体がLNGの場合には、メタンを主成分とする蒸発ガスが発生する。
【0003】
発生した蒸発ガスは、そのまま圧縮して都市ガスとして需要側へ供給することも可能であるが、圧縮動力が非常に大きくなる。そこで、かかる動力を削減するために、蒸発ガスを再液化して液の状態で昇圧した後に再びガス化して都市ガスとして供給することが考えられる。再液化するには、蒸発ガスを圧縮し、そして冷却する工程を経ることになるが、その冷却方法として、タンクからの低温液体としての払出LNGの冷熱で蒸発ガスを冷却する、つまり圧縮された蒸発ガスをLNGとの間で熱交換して冷却する方法が、特許文献1,2に開示されている。
【0004】
特許文献1では、圧縮された蒸発ガスを熱交換器でLNGと熱交換して冷却する方式(間接熱交換方式)が開示されている。しかし、熱交換器を要するこの間接熱交換方式では、熱交換のための十分な伝熱面積を確保するために大型の熱交換器が必要となり、設備が大型になりコストが嵩むという問題がある。さらには、伝熱が伝熱面を介しての間接であるため、この伝熱面での伝熱性能の改善も求められる。
【0005】
これに対し、特許文献2では、圧縮された蒸発ガスをLNG配管内に吹き込みLNGと直接に接触させて熱交換する方式(直接接触熱交換方式)が開示され、蒸発ガスのLNG中への吹込み方法として、LNG配管内を流れる払出しLNGの流れ方向と直交する方向もしくはLNGの流れ方向に逆らう方向になるように一つの蒸発ガス供給ノズルをLNG配管内に配置する装置が開示されている。該蒸発ガス供給ノズルは、LNG配管内でL字状に屈曲されていて、LNG配管の中心線上に該ノズルの吐出口が位置していて蒸発ガスがLNGの流れと逆方向に向けてLNG中へ吐出されている。吐出された蒸発ガスは、LNGとの熱交換により冷却され、凝縮して液化しLNGと混合される。
【0006】
このような特許文献2の直接接触熱交換方式は、伝熱面を介さずに熱交換するためLNGと蒸発ガスの両者が接する界面での伝熱性能は向上する。しかし、直接接触熱交換方式では、気体である蒸発ガスと低温液体であるLNGの密度の違いから、蒸発ガスと低温液体の接触、混合が十分に行われないことに起因して液化効率が悪くなりやすい。その改善のために、気体の蒸発ガスと低温液体のLNGとを混合し蒸発ガスを凝縮させ混合する効率的な装置が要望されているが、特許文献2の方法であっても、気体の蒸発ガスと液体のLNGの接触、混合を十分に確保でき、所望の液化性能を確保できるとは言い難い。
【0007】
一方、直接接触熱交換方式には、特許文献2の形式以外のものとして、ベンチュリ管型の流管内を流れる低温液体に蒸気を注入して直接接触させ蒸気を凝縮し混合する凝縮混合装置が特許文献3,4に開示されている。この特許文献3,4に開示されている形式の装置にあっては、流管に対して半径方向から蒸気を注入する蒸気孔が形成されていて、蒸気は、流管内を流れる低温液体のベンチュリ現象によって蒸気孔から流管内へ吸引される。吸引された直後の蒸気は低温液体中に気泡として存在し、その後、凝縮し低温液体に混合される。
【0008】
先ず、特許文献3にあっては、ベンチュリ管の喉部よりも下流側をなす拡径部に、円周方向そして液体の流れ方向の複数位置に、小口径の蒸気孔が多数、形成されている。蒸気は、それら複数の蒸気孔から分散して上記拡径部へ吸引されるので、吸引された直後の蒸気の気泡径は小さい。その結果、蒸気の凝縮は短時間で完了し、拡径部内でのウォーターハンマー作用が抑制される。
【0009】
次に、特許文献4にあっては、ベンチュリ管の喉部の直後に段差をもって急拡径されてから等径で下流側に延び流路断面積を一定とした区間を形成し、気体流入孔は、流路を段差で急拡径させた該段差の位置に1箇所だけ設けられている。
【0010】
また、他の方式の凝縮混合装置として、特許文献5には、管内の混合室を流通する低温液体としての水に蒸発ガスとしての蒸気を注入して該蒸気を凝縮して水に混合することにより温水を生成する凝縮混合装置が開示されている。この凝縮混合装置には、混合室内で水に旋回を付与するための固定旋回羽根が設けられており、該固定旋回羽根によって水と蒸気との混合効率の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭55‐145897
【特許文献2】特開平08‐173781
【特許文献3】特開平04‐045832
【特許文献4】特開2013-039497
【特許文献5】特開平7−116486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献3,4のような装置においても、気体の蒸発ガスを昇圧して、低温液体としてのLNGに直接接触させる場合、十分な凝縮混合性能が確保されないと、LNGに合流した蒸発ガスが完全に液化されず、液化されないままで気泡が残留した状態で液送ポンプに供給されると、液送が困難になるのみならず、液送ポンプの故障の原因にもなる。
【0013】
このように、所定量の蒸気を液体のベンチュリ現象で、さらに効率的に吸引するには、蒸気を吸引する蒸気孔の配置、ベンチュリ管内の圧力損失の低減するための最適な形状や構造など、凝縮混合装置としての最適な構造が求められることになる。また、特許文献5のような凝縮混合性能を向上させる旋回付与機構を備えた凝縮混合装置において、該凝縮混合装置内の流体は固定旋回羽根を通過するため、凝縮混合装置の圧力損失が大きくなるという問題がある。
【0014】
かかる事情に鑑み、本発明は、気体の蒸発ガスを昇圧して、この蒸発ガスをLNG等の低温液体に直接接触させて再液化させる際に、蒸発ガスを効果的に凝縮して低温液体へ混合する凝縮混合装置及び該装置を有して再液化を効果的に実現できる蒸発ガス再液化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題は、本発明によると、次のような構成の凝縮混合装置そしてこれを有する蒸発ガス再液化装置により解決される。
【0016】
<凝縮混合装置>
上流側から下流側へ向け漸次内径を小さくする縮径部に引き続き最小径をなす喉部を経て該喉部から漸次内径を大きくする拡径部が形成されたベンチュリ管型の流管を有し、流管外から蒸気を流管内へ注入するために、該流管の半径方向かつ下流側方向に向いた蒸気孔が流管の軸線方向の複数位置で上記拡径部の内径面に注入開口を有するように形成されていて、流管内を下流に向け流れる低温液体へ蒸気孔の注入開口から蒸気を注入して該蒸気を凝縮して低温液体に混合する凝縮混合装置において、拡径部は、軸線方向で複数位置に段部が形成されていて、該段部で順次拡径され軸線方向で下流側に向け延びる内周面をもつ段状拡径部を有し、各段状拡径部の域内での上流側位置に蒸気孔の注入開口が設けられていることを特徴とする凝縮混合装置。
【0017】
かかる本発明において、段部は、該段部に対して上流側で隣接する先行の段状拡径部と下流で隣接する後続の段状拡径部との半径差が上記先行の段状拡径部の内径の12〜30%の寸法となっていることが好ましい。
【0018】
また、本発明において、段状拡径部は、該段状拡径部の半径の2.5〜8倍の区間長にわたり軸線方向に延びていることが好ましい。
【0019】
<蒸発ガス再液化装置>
貯槽内に貯留された低温液体から発生する蒸発ガスを、貯槽から払い出された低温液体に混合して凝縮させ再液化する蒸発ガス再液化装置において、既出の凝縮混合装置と、蒸発ガスを圧縮する蒸発ガス圧縮機と、貯槽から低温液体を送出する送出ポンプとを備え、該送出ポンプで低温液体を凝縮混合装置の流管へ上流側から供給し、上記蒸発ガス圧縮機で蒸発ガスを凝縮混合装置の蒸気孔から上記流管内へ注入するようになっていることを特徴とする蒸発ガス再液化装置。
【0020】
本発明によらない場合、蒸気孔から吸引された直後の蒸気は、低温液体との接触時間、接触面積が小さいため凝縮できず、液体中に気泡として存在してしまうが、本発明による凝縮混合装置そして蒸発ガス再液化装置では、蒸気孔を上記段状拡径部の域内での上流側位置に、すなわち、蒸気孔をベンチュリ管の拡径部の段部で急拡大した直後に位置するようにしたので、上記段部にて急拡大した直後の空間を、低温液体中に混じって蒸気の気泡が流れる十分な大きさの空間として確保でき、この空間において蒸気と低温液体との接触時間を十分に確保することができ、蒸気を低温液体により冷却し凝縮させ混合させることができる。さらに、段状拡径部の空間内で流管中の低温液体の流れにあまり影響を受けずに効率良く蒸気がベンチュリ現象で良好に吸引される。
【0021】
また、本発明では、段状拡径部を複数設け、それぞれの段状拡径部に蒸気孔を形成させるので、蒸気孔は小口径で多数、円周方向ならびに液体の流れ方向に分散配置されているようにすることができるので、蒸気の気泡径が小さくなり、蒸気の凝縮と低温液体との混合が促進され、ウォーターハンマー作用は抑制される。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上のように、凝縮混合装置の流管に段状拡径部を複数設けて順次拡径させると共に蒸気孔の注入開口を各段状拡径部の域内で上流側に位置させたので、先行する段状拡径部に対して拡径した部分の空間で、蒸発ガスを低温液体中へ確実に導入して凝縮させ混合する構成としたので、蒸発ガスを低温液体中に効果的に再液化させることができ、ポンプに蒸発ガスが気体のまま流入してポンプに障害が発生するのを防止できる。また、このような構成の凝縮混合装置を有する蒸発ガス再液化装置では、蒸発ガスの再液化が効率よく短時間で完了すると共に、その結果、装置構成がコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態装置の蒸発ガス再液化装置の概要構成図である。
図2図1装置に用いられる凝縮混合装置の断面図であり、(A)は装置全体、(B)は(A)の一部についての拡大断面図である。
図3図2装置についての段状拡径部を設けることによる効率向上率に関する実験結果を示すグラフであり、(A)は段差寸法比、(B)は区間長寸法比についての効率向上率を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態としての凝縮混合装置を備えた蒸発ガス再液化装置の概要構成図である。
【0026】
図1において、符号1は本実施形態の蒸発ガス再液化装置であり、後に図2に詳細に示される構造の凝縮混合装置2を有していて該凝縮混合装置2の入口側(図にて左側)には、該凝縮混合装置2へ低温液体11を送出する送出ポンプ3そして蒸発ガス12を注入する蒸発ガス圧縮機4が接続されている。
【0027】
低温液体11は、例えば、タンク(図示せず)内に貯蔵されている液化天然ガス(LNG)の一部であり、また、蒸発ガス12は、例えば、上記タンク内の液化天然ガスの一部が蒸発して発生したボイルオフガス(BOG)である。
【0028】
図1に見られるように、低温液体11は送出ポンプ3により送出されて上記凝縮混合装置2へ流入する。この凝縮混合装置2内を流れる上記低温液体11へ、蒸発ガス圧縮機4で圧縮された蒸発ガス12が注入される。
【0029】
上記凝縮混合装置2の出口側には、昇圧ポンプ5が接続されていて、低温液体11中への注入後に凝縮して該低温液体11に混合された蒸発ガス12を液化状態で含んで凝縮混合装置2から排出された混合低温液体11Aを昇圧する。昇圧された混合低温液体11Aは、例えば、該低温液体が液化天然ガスならば、気化器へもたらされ再びガス化されてから都市ガスとして需要側に送出される。
【0030】
凝縮混合装置2は、図2(A)に示されているように、横型筒状のケーシング6内に、ベンチュリ管型の流管7が収められており、ケーシング6と流管7の間には、ステンレススチールなどの繊維状金属細線の織物あるいは編物から成る挿填物8が挿填されている。
【0031】
ケーシング6は、低温液体11の流れ方向における上流側に入口部6Aと、下流側に出口部6Bと、それらの中間位置で流管7が収容配置される流管収容部6Cとを有しており、入口部6Aと出口部6Bは内径が等しく、流管収容部6Cにて内径が増大されている。入口部6A、出口部6Bそして流管収容部6Cの中心となる軸線Xは同一の直線上に位置している。上記流管収容部6Cは、その内径が上記流管7の外径よりも大きく、該流管7の周囲に空間を形成し、この空間に分散して上記挿填物8が挿填されている。さらに、上記流管収容部6Cの上部上流側位置には、上方に開口する蒸発ガス注入部6Dが開口形成されていて、蒸発ガス圧縮機4から圧送されてくる蒸発ガス12を該蒸発ガス注入部6Dで受け入れるようになっている。
【0032】
ベンチュリ管型の流管7は、軸線X方向の両側に半径外方に突出する取付フランジ9A,9Bを有していて、該取付フランジ9A,9Bで、上記ケーシング6の流管収容部6C内に、流管7、ケーシング6の入口部6Aそして出口部6Bの軸線Xが一致して一つの直線上に位置するように取り付けられている。
【0033】
上記流管7の内部は、ケーシング6の入口部6A側に位置する縮径部7A、該縮径部7Aの直後に位置する喉部7B、そして該喉部7Bから出口部6Bに向け延びる拡径部7Cを順次形成している。上記縮径部7Aは曲面をもって比較的急激に内径が小さくなって流路断面積を絞り込んでおり、拡径部7Cは軸線X方向で長い距離にわたり内径を回復するように拡径している。喉部7Bは縮径部7Aと拡径部7Cとを低温液体の流れに対して低抵抗となるように円滑な曲線で結んでおり、最小の流路断面積となるように最小径に形成されている。
【0034】
上記拡径部7Cは、軸線X方向にて喉部7Bの直後の位置から右方のフランジ部9Bの位置までの範囲が区分されて複数の段状拡径部7C‐1,7C‐2,…,7C‐Nとして形成されている。各段状拡径部7C‐1,7C‐2,…,7C‐Nは円筒状内周面を有して同じ段状拡径部内では内径は変わらずに均一となっているが、最初の段状拡径部7C‐1に対し次の段状拡径部7C‐2、さらに次の段状拡径部7C‐3がそれぞれ上流側位置に形成された段部10B‐1,10B‐2,…でステップ状に拡径されている。
【0035】
図2(B)は、上記拡径部7Cの複数の段状拡径部7C‐1,7C‐2,…,7C‐Nのうち、その一部として、段状拡径部7C‐1,7C‐2,そして7C‐3の部分を拡大して示している。
【0036】
図2(B)において、軸線方向で中間に位置する段状拡径部7C‐2は、これに対して上流側で隣接する段状拡径部7C‐1の半径Rに対して段部10B‐2をなすようにΔRの段差寸法だけ拡大されたR+ΔRなる半径で、軸線方向に延びる区間長Lを有する円筒内面を形成している。これに対して下流側で隣接する段状拡径部7C‐3も同様に、段状拡径部7C‐2よりも拡径されて上記区間長Lだけ延びている。図2(B)において、段状拡径部7C‐1,7C‐2,…,7C‐Nの区間長Lは、最下流側の段状拡径部7C‐N以外の段状拡径部で一定の長さとしているが、下流側の段状拡径部になるほど区間長Lを長くするようにしてもよい。また、一段の段状拡径部の半径は軸線方向において、一定の寸法であって円筒内面を形成しているが、一段の段状拡径部において下流側になるほど拡径するようにしてもよい。このようにすることにより、段状拡径部の空間容積がさらに大きくなり、蒸発ガスを低温液体中へ導入して凝縮させ混合する空間をさらに大きくすることができ、より確実に蒸発ガスの凝縮混合を行うことができる。
【0037】
上記段状拡径部7C‐2には、その域内での上流側位置に蒸気孔10‐2の注入開口10A‐2が位置している。図2(B)の例では、上記注入開口10A‐2の上流側縁が上記段部10B‐2の位置にくるように形成されている。上記蒸気孔10‐2は、流管7の管壁を半径方向に貫通して形成されていて、半径内方に向け軸線方向下流側に傾くように形成されている。他の蒸気孔10‐1,10‐3,…,10‐Nも同様に対応する段状拡径部7C‐1,7C‐3,…,7C‐Nに対して、それぞれの域内での上流側に注入開口10A‐1、10A‐3、10A‐Nが位置するようにして設けられている。
【0038】
本発明では、蒸気孔10‐1,10‐2,…,10‐Nをベンチュリ管の拡径部の段部10B‐1,10B‐2,…で急拡大した直後に位置するようにしたので、上記段部10B‐1,10B‐2,…にて急拡大した直後の区間長Lにわたる空間を、低温液体中に混じって蒸発ガスの気泡が流れる十分な大きさの空間として確保でき、この空間において蒸発ガスと低温液体との接触時間を十分に確保することができ、蒸発ガスを低温液体により冷却し凝縮させ混合させることができる。さらに、段状拡径部の空間内で流管中の低温液体の流れにあまり影響を受けずに効率良く蒸発ガスがベンチュリ現象で良好に吸引されるようになる。
【0039】
上述の段部をもった段状拡径部の形態が蒸発ガスを低温液体中で凝縮させ混合するのに有効であるが、段状拡径部の寸法を適切に設定することにより、この効果をより確実に奏するようにできる。例えば、ベンチュリ管型の流管7の内径を急拡大させる段部10B‐1,10B‐2,…の寸法ΔRが大きすぎると、低温液体の流れにはこの段部の位置から乱れが生じ、蒸気孔10‐1,10‐2,…周辺での蒸発ガスの吸引を阻害する。この結果、低温液体のベンチュリ現象による蒸気の吸引の効率が低下する。したがって、ベンチュリ管拡径部内径を急拡大させる段差寸法を最適に設定する必要がある。
【0040】
そこで、発明者は、どのような段差寸法とすれば、蒸発ガスの低温液体への吸引の効率が良好となるか、種々実験を重ねた。その実験にもとづき、段差寸法とベンチュリ現象による吸引の効率性を検討した結果を図3(A)に示す。段差寸法比は、段差寸法のその直前半径に対する比率(%)、すなわち、段部の上流側に位置する段状拡径部の半径に対する段差寸法の比率(%)で表したものである。効率向上率は、低温液体をベンチュリ管に流送するのに必要な動力を同じとして、低温液体のベンチュリ現象によって吸引される蒸発ガスの流量が、段差を設けないときに比べて増加する比率を効率向上率(%)として表したものである。図3(A)に見られるように、段差寸法をその直前半径の5〜40%の範囲にすることにより段差を設けないときに比べて効率向上率が増加しており、段差寸法をその直前半径の12〜30%の範囲にすることにより効率向上率が70%以上となり高い吸引効率となることが判る。
【0041】
さらに、本発明では、上記段差半径についてのみならず、ベンチュリ管拡径部内径を急拡大した段状拡径部の区間長(軸線方向長さである一区間の長さ)についても適正な範囲があると考え、これについても実験を行った。一区間の長さが短ければ、蒸発ガスと低温液体の混合が不十分なうちに、次の段状拡径部へ移行してしまうので、蒸気孔近傍の低温液体のみ温度が上昇してしまい、その結果、後流において蒸発ガスと低温液体の温度差が小さくなるので蒸発ガスが凝縮しにくくなってしまう。一方で、区間長が長すぎると、ベンチュリ管内の圧力損失が大きくなるのでより大きな動力を必要とし、また装置が大きくなるのでコストアップに繋がる。段状拡径部の半径に対する区間長寸法の比率である区間長寸法比とベンチュリ管の吸引の効率向上率(%)についての実験の結果、図3(B)に見られるように、区間長寸法は段状拡径部の半径の2.5〜8倍が適正であることが判明した。
【0042】
次に、上述ように構成された本実施形態の蒸発ガス再液化装置そしてその動作を図1そして図2にもとづき説明する。
【0043】
先ず、タンク(図示せず)内の低温液体(例えば、LNG)11の一部が、送出ポンプ3によって送出されて凝縮混合装置2に導入される。また、上記タンク内で発生した蒸発ガスは、蒸発ガス圧縮機4によって大気圧と都市ガス運用圧力(4〜7MPa)の間の圧力(「中間圧」)まで昇圧された後、凝縮混合装置2に導入される。
【0044】
上記低温液体11は、凝縮混合装置2のケーシング6に設けられた入口部6Aを経て流管7に流入し、縮径部7A、喉部7Bそして拡径部7Cを流れ、ケーシング6の出口部6Bへ達する。流管7内を流れる低温液体11は、縮径部7Aで流速を高め、喉部7Bで最大流速に達し、その後、拡径部7Cで徐々に流速を低めるが、拡径部7Cでの右端における最大内径でも上記入口部6Aの内径より小さいので、拡径部7Cでの流速は入口部6Aの流入時の流速よりも高く、したがって、圧力は低くなっており、蒸気孔10‐1,10‐2,…に対しては吸引力をもたらす。
【0045】
一方、蒸発ガス12は蒸発ガス圧縮機4により昇圧されて、凝縮混合装置2のケーシング6に設けられた、蒸発ガス注入部6Dを経て上記ケーシング6内に注入される。流管7を収容しているケーシング6の流管収容部6Cには、流管7の外周に挿填物8が挿填されており、蒸発ガス圧縮機4で圧送されて上記蒸発ガス注入部6Dから注入された蒸発ガス12は、挿填物8により緩衝されそして流管収容部6C内で流管7の全周そして全長にわたり拡散する。
【0046】
上述の通り、流管7の拡径部7Cを流れる低温液体11は、ベンチュリ管現象により蒸気孔10‐1,10‐2,…に対して吸引力をもたらすので、上記流管収容部6C内に拡散している蒸発ガス12は、各蒸気孔10‐1,10‐2,…から拡径部7Cへ吸引導入される。例えば、図2(B)に示されている蒸気孔10‐2では、蒸発ガス12は、該蒸気孔10‐2から吸引されてその注入開口10A‐2を経て、段状拡径部7C‐2内に流入する。上記注入開口10A‐2は段状拡径部7C‐2の域内の上流側に位置していると共に、蒸気孔10‐2が半径内方に向け上流側に傾いているので、流入した蒸発ガスは、流管7内の低温液体11の流れに逆らうことなく低抵抗のもとで合流する。
【0047】
上記段状拡径部7C‐2は、これに対して上流側に位置する前段の段状拡径部7C‐1よりも段部10B‐2でΔR分だけ急拡径していて、この段部10B‐2よりも下流側で、区間長Lにわたる空間を形成しており、この空間を、低温液体11中に混じって蒸発ガス12の気泡が流れる十分な大きさの空間として確保でき、この空間において蒸発ガス12と低温液体11との接触時間を十分に確保することができ、蒸発ガス12を容易に低温液体11内に混入させて、蒸発ガス12を低温液体11により冷却し凝縮させ混合させることができる。この結果、蒸発ガス12は凝縮して確実に再液化し、低温液体11の一部として下流側へ流れる。このように蒸気孔から蒸発ガスの流入そして低温液体への混入による合流は、上記段状拡径部7C‐2以外の他の段状拡径部でも同様に行われる。かくして、再液化された蒸発ガスを含む混合低温液体11Aは昇圧ポンプ5で昇圧されて気化器へもたらされた後、気化器で気化されて都市ガスとして需要側に送出される。
【符号の説明】
【0048】
1 蒸発ガス再液化装置
2 凝縮混合装置
3 送出ポンプ
4 蒸発ガス圧縮機
7 流管
7A 縮径部
7B 喉部
7C 拡径部
7C‐1,7C‐2 段状拡径部
9A 取付フランジ
9B 取付フランジ
10‐1,10‐2 蒸気孔
10A‐1,10A‐2 注入開口
10B‐1,10B‐2 段部
L 区間長
R 段状拡径部の半径
ΔR 半径差(段差寸法)
図1
図2
図3