(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車用バックドア構造の従来例を述べる。
図8はバックドアを備えた自動車の後部を示す斜視図、
図9は
図8のIX−IX線矢視断面図である。
図8に示すように、自動車100は、例えば跳ね上げ式のバックドア102を備えている。バックドア102は、車体104のバックドア開口部105を開閉するものである。
図9に示すように、バックドア102は、バックドアフレーム107とバックウインドウ109と中見え防止部材111とを備えている。バックドアフレーム107は、窓枠部113を有している。窓枠部113は、インナーパネル114とアウターパネル115とからなる。インナーパネル114の内外の両フランジ114aと、アウターパネル115の内外の両フランジ115aとは、相互に接合されている。これにより、窓枠部113は、閉断面構造の四角筒状に形成されている。
【0003】
バックウインドウ109は、バックドアフレーム107の窓枠部113の車外側の側壁部(詳しくはアウターパネル115の側壁部115b)に接着材117により接着されている。中見え防止部材111は、バックウインドウ109に両面テープ等(不図示)により接着されている。中見え防止部材111は、バックウインドウ109と窓枠部113(詳しくはアウターパネル115のフランジ115a)との間の隙間119を覆うカバー部121を有している。中見え防止部材111によって、バックドア102を開けたときに外部に露呈する隙間119が隠蔽されている。これにより、バックドア102の見栄えが向上されている。なお、中見え防止部材111はアウターパネル115のフランジ115aには接合されていない。また、バックウインドウをバックドアフレームの窓枠部に接着する構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例によると、バックウインドウ109がバックドアフレーム107の窓枠部113に接合されている。このため、バックウインドウ109の配置にかかる設計の自由度が制約されるという問題があった。その理由としては、次の(1)、(2)が挙げられる。
(1)車体104のバックドア開口部105(
図8参照)に配置されるウェザストリップ(不図示)によって、バックドア開口部105の開口形状が制約される。例えば、ウェザストリップを急角度で折り曲げると、中空部が潰れてシール不良になる。このため、ウェザストリップのシール不良を考慮することにより、バックドア開口部105の形状が制約される。これにともない、バックドアフレーム107の形状も制約される。
(2)バックドアフレーム107の窓枠部113(
図9参照)の断面形状は、アウターパネル115及びインナーパネル114の成形性によって制約される。このため、窓枠部113に対するバックウインドウ109の接着位置が制約される。
【0006】
また、バックウインドウ109に対して見切り線を介して隣接される車体側の部材123としては、例えば、クォーターパネル、リヤコンビネーションランプ等がある。一般的に、車体側の部材123(
図9中、実線123参照)は、バックウインドウ109の外表面に対して段差なく連続させることによって、自動車100の見栄えが向上されている。しかし、例えば、自動車100(
図8参照)のデザインの要望によって、車体側の部材123を、
図9に二点鎖線123で示すように、車両後方(
図9において上方)へ大きく張り出したい場合がある。この場合、上記したバックウインドウ109の配置にかかる設計の自由度の制約によって、バックウインドウ109と車体側の部材123との間に段差sが生じる。このため、自動車100(
図8参照)の見栄えが損なわれることがある。このように、バックウインドウ109をバックドアフレーム107の窓枠部113に接合する構造では、車体側の部材123に対してバックウインドウ109を段差sなく連続させることが難しく、自動車100のデザインにかかる設計の自由度が制約される。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ウインドウの配置にかかる設計の自由度を向上することのできる自動車用バックドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、窓枠部を有するバックドアフレームと、前記バックドアフレームの窓枠部の車外側に配置されるウインドウと、前記ウインドウと前記窓枠部との間の隙間を覆うカバー部を有する中見え防止部材とを備える自動車用バックドア構造であって、前記バックドアフレームに前記ウインドウが前記中見え防止部材を介して接合されている。この構成によると、バックドアフレームにウインドウが中見え防止部材を介して接合されるものであるから、従来例のバックウインドウの配置にかかる設計上の制約に関係なく、ウインドウの配置にかかる設計の自由度を向上することができる。ひいては、自動車のデザインにかかる設計の自由度を向上することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記中見え防止部材のカバー部は、前記隙間の開口側端部を覆うように配置されている。この構成によると、中見え防止部材のカバー部により、隙間の開口側端部を覆うことができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記中見え防止部材は、前記ウインドウに一体化され、前記中見え防止部材は、前記カバー部に連続しかつ前記窓枠部に接合される接合部を有している。この構成によると、ウインドウに一体化した中見え防止部材を、バックドアフレームの窓枠部に容易に接合することができる。また、中見え防止部材のカバー部に連続する接合部を窓枠部に接合することにより、振動等によるカバー部のばたつきを抑制することができる。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記中見え防止部材の接合部は、前記バックドアフレームの窓枠部が有するフランジに接合されている。この構成によると、中見え防止部材の周辺部の見栄えを向上することができる。
【0012】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明において、前記中見え防止部材には、前記カバー部を補強する補強リブを有している。この構成によると、補強リブによってカバー部を補強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0015】
[実施形態1]
実施形態1を説明する。
図1はバックドアを備えた自動車の後部を示す斜視図、
図2は
図1のII−II線矢視断面図である。
図1に示すように、自動車10は、例えば跳ね上げ式のバックドア12を備えている。バックドア12は、車体14のバックドア開口部15を開閉するものである。
図2に示すように、バックドア12は、バックドアフレーム17とバックウインドウ19と中見え防止部材21とを備えている。バックドアフレーム17は、窓枠部23を有している。窓枠部23は、インナーパネル24とアウターパネル25とからなる。インナーパネル24の内外の両フランジ24aと、アウターパネル25の内外の両フランジ25aとは、相互に接合されている。これにより、窓枠部23は、閉断面構造の四角筒状に形成されている。
【0016】
インナーパネル24の主体部分は断面U字状に形成されている。また、アウターパネル25の主体部分は断面逆U字状に形成されている。インナーパネル24の両フランジ24aとアウターパネル25の両フランジ25aとの接合部は、窓枠部23の車内外方向の中央部に配置されている。また、窓枠部23の閉断面内には、リィンフォースメント27がインナーパネル24に沿って設けられている。リィンフォースメント27の内端部(
図2において左端部)は、インナーパネル24の内側のフランジ24aとアウターパネル25の内側のフランジ25aとの間に介在されている。なお、本実施形態のバックドアフレーム17及びウェザストリップ(不図示)は、例えば従来例のものと同じである。
【0017】
バックウインドウ19は、バックドアフレーム17の窓枠部23の車外側に配置されている。バックウインドウ19は、窓枠部23内の窓開口部を閉鎖するように配置されている。バックウインドウ19は、バックドアフレーム17の窓枠部23に接合されていない。バックウインドウ19は、透明性を有する樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂により成形された樹脂製パネルからなる。なお、バックウインドウ19は本明細書でいう「ウインドウ」に相当する。
【0018】
中見え防止部材21は、バックウインドウ19の室内側の外周部に一体成形により一体化されている。中見え防止部材21は、不透明性(半透明性を含む)の着色樹脂、例えばガラス繊維やカーボンブラックが配合された黒色のポリカーボネート樹脂からなる。中見え防止部材21は、ベース部30とカバー部32と接合部34とを有している。ベース部30は、バックウインドウ19の車内側の面の周縁部に対して全周に亘って積層状に形成されている。ベース部30によりバックウインドウ19の周縁部がブラックアウト化されている。ベース部30の外周面は、バックウインドウ19の外周面と同一面又は略同一面をなしている。
【0019】
カバー部32は、バックウインドウ19と窓枠部23(詳しくは、アウターパネル25の外側のフランジ25a)との間の隙間36の開口側端部を覆うように形成されている。すなわち、カバー部32は、ベース部30の外端部から窓枠部23のアウターパネル25の外側のフランジ25aの外端部に向かって断面直線状に延在している。また、カバー部32のカバー幅すなわちベース部30と接合部34との間の寸法は、バックウインドウ19(詳しくは外表面19a)と車体側の部材38(詳しくはバックウインドウ19の外表面19aに見切り線を介して隣接する外端面又は外端部38a)との間に段差が生じない又はほとんど生じないように調整して設定されている。また、カバー部32のカバー幅は、カバー部32の長手方向(
図2において紙面表裏方向)に関して、バックウインドウ19と窓枠部23(詳しくは、アウターパネル25の外側のフランジ25a)との間の隙間36の変化に応じて変化している。また、接合部34は、カバー部32の先縁部から内方(
図2において左方)に向かって延在するフランジ状に形成されている。接合部34は、窓枠部23のアウターパネル25の外側のフランジ25aに対応している。
【0020】
バックウインドウ19と中見え防止部材21とにより、一体成形品であるバックウインドウモジュール40が構成されている。バックウインドウモジュール40は、例えば、透明性を有する樹脂を射出成形することによりバックウインドウ19を形成する工程と、バックウインドウ19に着色樹脂を射出成形することにより中見え防止部材21を形成する工程とを備える二色成形により形成されている。
【0021】
バックウインドウモジュール40は、バックウインドウ19による窓枠部23の車外側にバックウインドウ19を配置した状態で、中見え防止部材21の接合部34をバックドアフレーム17の窓枠部23のアウターパネル25の外側のフランジ25aに接着材42を介して接着すなわち接合することにより、バックドアフレーム17に装着されている。したがって、中見え防止部材21によって、バックドア12を開けたときに外部に露呈する隙間36が隠蔽されている。これにより、バックドア12の見栄えが向上されている。また、接合部34とフランジ25aとの間における接着材42の外側には、接着材42のはみ出しを防止する発泡材等よりなるダム44が設けられている。
【0022】
前記した自動車用バックドア構造によると、バックドアフレーム17にバックウインドウ19が中見え防止部材21を介して接合されている。これにより、従来例のバックウインドウ19の配置にかかる設計上の制約に関係なく、バックウインドウ19の配置にかかる設計の自由度を向上することができる。ひいては、自動車10のデザインにかかる設計の自由度を向上することができる。
【0023】
詳しくは、自動車10のデザインの要望によって、例えば窓枠部23に対して車体側の部材38を車両後方へ大きく張り出したい場合(
図2参照)がある。この場合には、中見え防止部材21のカバー部32のカバー幅(ベース部30と接合部34との間の寸法)を、バックウインドウ19と車体側の部材38との間に段差が生じない又はほとんど生じないように調整して設定すればよい。このため、従来例のバックドアフレーム及びウェザストリップ(不図示)に変更を加えることなく、バックウインドウ19(詳しくは外表面19a)と車体側の部材38(詳しくは外端面又は外端部38a)とを面一化することができる。これにより、自動車10の見栄えを向上することができる。したがって、従来例のバックウインドウ19の配置にかかる設計上の制約に関係なく、バックウインドウ19の位置を調整することができる。よって、バックウインドウ19の配置にかかる設計の自由度を向上することができる。ひいては、自動車10のデザインにかかる設計の自由度を向上することができる。
【0024】
また、バックウインドウモジュール40は、バックウインドウ19に中見え防止部材21が一体成形により一体化されたものであるから、別部品としての中見え防止部材を廃止することができる。これにより、バックドア12の部品点数及び組付け工数を削減し、コストを削減することができる。
【0025】
また、中見え防止部材21のカバー部32は、隙間36の開口側端部を覆うように配置されている。したがって、中見え防止部材21のカバー部32により、隙間36の開口側端部を覆うことができる。
【0026】
また、中見え防止部材21は、バックウインドウ19に一体化され、中見え防止部材21は、カバー部32に連続しかつ窓枠部23(詳しくは、アウターパネル25のフランジ25a)に接合される接合部34を有している。したがって、バックウインドウ19に一体化した中見え防止部材21を、バックドアフレーム17の窓枠部23に容易に接合することができる。また、中見え防止部材21のカバー部32に連続する接合部34を窓枠部23に接合することにより、振動等によるカバー部32のばたつきを抑制することができる。
【0027】
また、中見え防止部材21の接合部34は、バックドアフレーム17の窓枠部23が有するフランジ(詳しくは、アウターパネル25の外側のフランジ25a)に接合されている。したがって、中見え防止部材21の周辺部の見栄えを向上することができる。
【0028】
[実施形態2]実施形態2を説明する。本実施形態以降の実施形態は、実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
図3はバックドア構造を示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態の中見え防止部材46は、ベース部48とカバー部50と接続部52と接合部54とを有している。ベース部48及びカバー部50は、実施形態1(
図2参照)のベース部30及びカバー部32と同様に形成されている。本実施形態では、実施形態1(
図2参照)における接合部34が省略されている。
【0029】
接続部52は、ベース部48の内外方向(
図3において左右方向)の中央部からバックドアフレーム17の窓枠部23の車外側の側壁部(詳しくはアウターパネル25の側壁部(符号、25bを付す))に向かって断面直線状に延在している。接続部52は、カバー部50に対して平行状をなしている。また、接合部54は、接続部52の先縁部から内方(
図3において左方)に向かって延在するフランジ状に形成されている。接合部54は、窓枠部23のアウターパネル25の側壁部25bに接着材56を介して接着すなわち接合されている。接合部54と側壁部との間における接着材56の外側には、接着材56のはみ出しを防止する発泡材等よりなるダム58が設けられている。
【0030】
[実施形態3]実施形態3を説明する。
図4はバックドア構造を示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態では、実施形態2(
図3参照)における中見え防止部材46のカバー部50が省略されている。そして、接続部52がカバー部を兼用するものとなっている。
【0031】
[実施形態4]実施形態4を説明する。
図5はバックドア構造を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、実施形態1(
図2参照)における中見え防止部材21の接合部34に代えて、接合部60が形成されている。接合部60は、カバー部32のカバー幅の中央部から内方(
図3において左方)に向かって延在するフランジ状に形成されている。接合部60は、窓枠部23のアウターパネル25の側壁部25bに接着材62を介して接着すなわち接合されている。接合部60と側壁部との間における接着材62の外側には、接着材62のはみ出しを防止する発泡材等よりなるダム64が設けられている。
【0032】
[実施形態5]実施形態5を説明する。
図6はバックドア構造を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態では、実施形態1(
図2参照)におけるバックドアフレーム17の窓枠部23のアウターパネル25が平板状に形成されている。また、中見え防止部材21の接合部34が、内方へ延出されている。接合部34は、アウターパネル25の側壁部(符号、25cを付す)に接着材66を介して接着すなわち接合されている。接合部34とアウターパネル25との間における接着材66の外側には、接着材66のはみ出しを防止する発泡材等よりなるダム68が設けられている。
【0033】
[実施形態6]
実施形態6を説明する。
図7はバックウインドウモジュールを示す断面図である。
図7に示すように、本実施形態は、実施形態1における中見え防止部材21に、カバー部32を補強する補強リブ70が設けられている。補強リブ70は、U字板状で、ベース部30及びカバー部32並びに接合部34に接続されている。すなわち、補強リブ70は、カバー部32と、ベース部30及び接合部34との間に設けられている。補強リブ70は、所定間隔毎に複数枚配置されている。したがって、補強リブ70によってカバー部32を補強することができる。また、補強リブ70は、カバー部32とベース部30又は接合部34との間に設けてもよい。
【0034】
[他の実施形態]
本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、跳ね上げ式のバックドア12に限らず、横開き式のバックドアに適用してもよい。また、本発明は、バックドア12のバックウインドウ19に並列的に配置されるウインドウ、例えばエクストラウインドウに適用してもよい。また、実施形態では、バックウインドウ19と車体側の部材38とを面一化したが、自動車10のデザインに応じて段差を設定してもよい。また、バックウインドウ19と車体側の部材38との間の段差は、バックウインドウ19に対して車体側の部材38が張り出す段差でもよいし、車体側の部材38に対してバックウインドウ19が張り出す段差でもよい。また、バックウインドウ19と車体側の部材38との間の段差は、相互に隣接する部分の少なくとも一部に設定してもよい。また、バックウインドウ19は、樹脂製パネルに代え、ガラス製パネルでもよい。また、中見え防止部材21,46は、黒色以外の色でもよい。また、中見え防止部材21,46を、バックドアフレーム17に一体化し、バックウインドウ19を接合してもよい。
【0035】
また、補強リブ70は、実施形態2(
図3参照)の中見え防止部材46のカバー部50と、ベース部48及び/又は接続部52との間に設けてもよいし、接続部52と、ベース部48及び/又は接合部54との間に設けてもよい。また、補強リブ70は、実施形態3(
図4参照)の中見え防止部材46の接続部52(カバー部)と、ベース部48及び/又は接合部54との間に設けてもよい。また、補強リブ70は、実施形態4(
図5参照)の中見え防止部材21のカバー部32の基部側部分(接合部60の延出部よりもベース部30側の部分)と、ベース部30及び/又は接合部60との間に設けてもよいし、カバー部32の先端部側部分(接合部60の延出部よりもバックドアフレーム17側の部分)と接合部60との間に設けてもよい。また、補強リブ70は、実施形態5(
図6参照)の中見え防止部材21のカバー部32と、ベース部30及び/又は接合部34との間に設けてもよい。