(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有するセパレータを挟んで交互に積層された発電要素を備えた非水電解質二次電池において、少なくとも一部の正極板に負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成され、該非対向状態の正極活物質層と対向する絶縁部材を備え、前記発電要素は、帯状の導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、帯状の導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有する帯状のセパレータを介して重ね合わされた状態で長手方向に巻回されて構成されるとともに、最内周に配置された正極板であって、前記負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が内側に向けて形成された正極板を有し、前記絶縁部材は、発電要素の最内周にある前記正極板の非対向状態の正極活物質層に沿って配置され、重ね合わされた正極板及び負極板の巻回中心となる芯材で構成された内側絶縁部材を有していることを特徴とする非水電解質二次電池。
導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有するセパレータを挟んで交互に積層された発電要素を備えた非水電解質二次電池において、少なくとも一部の正極板に負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成され、該非対向状態の正極活物質層と対向する絶縁部材であって、セパレータとは別に設けられた絶縁部材を備え、前記発電要素は、帯状の導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、帯状の導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有する帯状のセパレータを介して重ね合わされた状態で長手方向に巻回されて構成されるとともに、最外周に配置された正極板であって、前記負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が外側に向けて形成された正極板を有し、前記絶縁部材は、発電要素の最外周にある前記正極板の非対向状態の正極活物質層に沿って配置され、発電要素全体を包囲するシート又は袋で構成された外側絶縁部材を有していることを特徴とする非水電解質二次電池。
前記セパレータは、電気絶縁性を有する基層と、該基層上に積層された無機質層とで構成され、前記無機質層を正極活物質層に対向させて配置されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記構成の非水電解質二次電池は、充放電すると正極板(正極活物質層)近傍にある導電性を有する部分に電解析出(電析)が発生して内部短絡等が発生するといった問題がある。すなわち、正極板の正極活物質層から放出される電荷は、当該正極板の近傍にある導電性を有する部分に向けて最短距離で移動しようとするため、充電時において負極板の負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層(電荷を吸収すべく対向した負極活物質層の存在しない正極活物質層)からの電荷が近傍にある導電性を有する部分(負極板のエッジ(負極活物質層の境界)や電池ケースが金属製である場合には電池ケースの内面)に向けて一斉に移動する結果、当該部分で電荷を吸収できずに電析が発生してしまう。そのため、上記構成の非水電解質二次電池は、電析による析出物が針状に成長し、該析出物が正極板等と接触して内部短絡等が発生する虞がある。
【0012】
そこで、本発明は、充放電に伴う電気容量の低下を抑えつつ内部短絡等の原因となる電析の発生を抑えることのできる非水電解質二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る非水電解質二次電池は、導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有するセパレータを挟んで交互に積層された発電要素を備えた非水電解質二次電池において、少なくとも一部の正極板に負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成され、該非対向状態の正極活物質層と対向する絶縁部材を備え、前記発電要素は、帯状の導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、帯状の導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有する帯状のセパレータを介して重ね合わされた状態で長手方向に巻回されて構成されるとともに、最内周に配置された正極板であって、前記負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が内側に向けて形成された正極板を有し、前記絶縁部材は、発電要素の最内周にある前記正極板の非対向状態の正極活物質層に沿って配置され、重ね合わされた正極板及び負極板の巻回中心となる芯材で構成され
た内側絶縁部材を有していることを特徴とする。
【0014】
上記構成の非水電解質二次電池によれば、少なくとも一部の正極板に負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成されているため、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層は、電荷の吸収及び放出する相手方となる負極活物質層が存在しないことになる。
【0015】
従って、上記構成の非水電解質二次電池は、重ね合わされた正極板(正極活物質層)と負極板(負極活物質層)との間で電荷が移動する際に、負極板に吸収された電荷の全量が放出されずに正極板と負極板との間で移動する電荷量(充放電に寄与する電荷)が減少しても、負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層から放出される電荷で減少した電荷を補うことができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、充放電を繰り返し行っても電気容量の減少が抑えられ、初期の電気容量と同等の電気容量で充放電することができる。
【0016】
そして、上記構成の非水電解質二次電池は、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層と対向する絶縁部材を備えているため、充放電に伴う電析の発生を防止することができる。
【0017】
より具体的に説明すると、この種の非水電解質二次電池は、充電時に正極板(正極活物質層)から放出された電荷が導電性を有する部分に向けて最短距離で移動することになる。従って、セパレータを介して負極板に重ね合わされた正極板(正極活物質層)から放出された電荷は、セパレータを通過して負極活物質層に向けて移動し、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層(対応する負極活物質層が存在しない正極活物質層)から放出された電荷については、移動距離が最短となる位置(直近の位置)にある導電性を有する部分に向けて移動しようとする。
【0018】
そのため、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層(対応する負極板が存在しない正極板)から放出される電荷の移動を規制しなければ、その電荷が近傍にある導電性を有する部分(例えば、負極活物質層や集電部材、電池ケースが金属製である場合には電池ケースの内面)に集中して電析が発生する虞がある。
【0019】
しかしながら、上記構成の非水電解質二次電池は、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層に対して絶縁部材が対向配置されているため、当該正極活物質層(負極活物質層と非対向状態の正極活物質層)から放出される電荷の移動が絶縁部材によって規制される(電荷の移動経路が制限される)結果、当該正極活物質層から放出される電荷が負極活物質層に到達するまでの時間を長期化させることができる。すなわち、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層から放出された電荷が一カ所に短時間で集中することを防止することができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、内部短絡等の原因となる電析の発生を抑えることもできる。
上記構成の非水電解質二次電池によれば、前記発電要素は、最内周の正極板に前記負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成されているため、最内周に配置された正極板の正極活物質層は、対応する負極活物質層(当該正極活物質との関係で電荷を吸収及び放出する負極活物質層)が存在しないことになる。
従って、上記構成の非水電解質二次電池は、重ね合わされた正極板(正極活物質層)と負極板(負極活物質層)との間で電荷が移動する際に、負極板に吸収された電荷の全量が放出されずに正極板と負極板との間で移動する電荷量(充放電に寄与する電荷)が減少しても、最内周で負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層から放出される電荷で減少した電荷を補うことができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、充放電を繰り返し行っても電気容量の減少が抑えられ、初期の電気容量と同等の電気容量で充放電することができる。
そして、上記構成の非水電解質二次電池は、前記絶縁部材が発電要素の最内周にある正極板の前記非対向状態の正極活物質層に沿って配置されるため、充放電に伴う電析の発生を防止することができる。
より具体的に説明すると、この種の非水電解質二次電池は、充電時に正極板(正極活物質層)から放出された電荷が導電性を有する部分に向けて最短距離で移動することになる。従って、セパレータを介して負極板に重ね合わされた正極板(正極活物質層)から放出された電荷は、セパレータを通過して負極活物質層に向けて移動し、最内周にある正極板の正極活物質層(対応する負極活物質層が存在しない正極活物質層)から放出された電荷については、移動距離が最短となる位置(直近の位置)にある導電性を有する部分に向けて移動しようとする。
そのため、最内周にある正極板の正極活物質層(対応する負極板が存在しない正極板)から放出される電荷の移動を規制しなければ、その電荷が近傍にある導電性を有する部分(例えば、負極活物質層や集電部材、電池ケースが金属製である場合には電池ケースの内面)に集中して電析が発生する虞がある。
しかしながら、上記構成の非水電解質二次電池は、発電要素の最内周で負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層に対して絶縁部材が対向配置されているため、当該正極活物質層(負極活物質層と非対向状態の正極活物質層)から放出される電荷の移動が絶縁部材によって規制される(電荷の移動経路が制限される)結果、当該正極活物質層から放出される電荷が負極活物質層に到達するまでの時間を長期化させることができる。すなわち、最内周にある正極板の正極活物質層から放出された電荷が一カ所に短時間で集中することを防止することができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、内部短絡等の原因となる電析の発生を抑えることもできる。
また、上記構成の非水電解質二次電池によれば、正極板及び負極板の巻回中心となる芯材が正極板(正極活物質層)から放出される電荷の移動を規制する絶縁部材に兼用されるため、新たな構成を追加することなく(構造を複雑化させることなく)、最内周の正極板(正極活物質層)から放出される電荷の移動を規制することができる。
【0020】
本発明に係る非水電解質二次電池は、導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有するセパレータを挟んで交互に積層された発電要素を備えた非水電解質二次電池において、少なくとも一部の正極板に負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成され、該非対向状態の正極活物質層と対向する絶縁部材
であって、セパレータとは別に設けられた絶縁部材を備え、前記発電要素は、帯状の導電性基材上に正極活物質層の形成された正極板と、帯状の導電性基材上に負極活物質層の形成された負極板とが、電気絶縁性を有する帯状のセパレータを介して重ね合わされた状態で長手方向に巻回されて構成されるとともに、最外周に配置された正極板であって、前記負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が外側に向けて形成された正極板を有し、前記絶縁部材は、発電要素の最外周にある前記正極板の非対向状態の正極活物質層に沿って配置され、発電要素全体を包囲するシート又は袋で構成され
た外側絶縁部材を有していることを特徴とする。
【0021】
上記構成の非水電解質二次電池によれば、少なくとも一部の正極板に負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成されているため、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層は、電荷の吸収及び放出する相手方となる負極活物質層が存在しないことになる。
従って、上記構成の非水電解質二次電池は、重ね合わされた正極板(正極活物質層)と負極板(負極活物質層)との間で電荷が移動する際に、負極板に吸収された電荷の全量が放出されずに正極板と負極板との間で移動する電荷量(充放電に寄与する電荷)が減少しても、負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層から放出される電荷で減少した電荷を補うことができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、充放電を繰り返し行っても電気容量の減少が抑えられ、初期の電気容量と同等の電気容量で充放電することができる。
そして、上記構成の非水電解質二次電池は、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層と対向する絶縁部材を備えているため、充放電に伴う電析の発生を防止することができる。
より具体的に説明すると、この種の非水電解質二次電池は、充電時に正極板(正極活物質層)から放出された電荷が導電性を有する部分に向けて最短距離で移動することになる。従って、セパレータを介して負極板に重ね合わされた正極板(正極活物質層)から放出された電荷は、セパレータを通過して負極活物質層に向けて移動し、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層(対応する負極活物質層が存在しない正極活物質層)から放出された電荷については、移動距離が最短となる位置(直近の位置)にある導電性を有する部分に向けて移動しようとする。
そのため、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層(対応する負極板が存在しない正極板)から放出される電荷の移動を規制しなければ、その電荷が近傍にある導電性を有する部分(例えば、負極活物質層や集電部材、電池ケースが金属製である場合には電池ケースの内面)に集中して電析が発生する虞がある。
しかしながら、上記構成の非水電解質二次電池は、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層に対して絶縁部材が対向配置されているため、当該正極活物質層(負極活物質層と非対向状態の正極活物質層)から放出される電荷の移動が絶縁部材によって規制される(電荷の移動経路が制限される)結果、当該正極活物質層から放出される電荷が負極活物質層に到達するまでの時間を長期化させることができる。すなわち、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層から放出された電荷が一カ所に短時間で集中することを防止することができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、内部短絡等の原因となる電析の発生を抑えることもできる。
上記構成の非水電解質二次電池によれば、前記発電要素は、最外周の正極板に前記負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層が形成されているため、最外周に配置された正極板の正極活物質層は、対応する負極活物質層(当該正極活物質との関係で電荷を吸収及び放出する負極活物質層)が存在しないことになる。
【0022】
従って、上記構成の非水電解質二次電池は、重ね合わされた正極板(正極活物質層)と負極板(負極活物質層)との間で電荷が移動する際に、負極板に吸収された電荷の全量が放出されずに正極板と負極板との間で移動する電荷量(充放電に寄与する電荷)が減少しても、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方で負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層から放出される電荷で減少した電荷を補うことができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、充放電を繰り返し行っても電気容量の減少が抑えられ、初期の電気容量と同等の電気容量で充放電することができる。
【0023】
そして、上記構成の非水電解質二次電池は、前記絶縁部材が発電要素の最内周及び最外周に少なくとも何れか一方にある正極板の前記非対向状態の正極活物質層に沿って配置されるため、充放電に伴う電析の発生を防止することができる。
【0024】
より具体的に説明すると、この種の非水電解質二次電池は、充電時に正極板(正極活物質層)から放出された電荷が導電性を有する部分に向けて最短距離で移動することになる。従って、セパレータを介して負極板に重ね合わされた正極板(正極活物質層)から放出された電荷は、セパレータを通過して負極活物質層に向けて移動し、最内周及び最外周にある正極板の正極活物質層(対応する負極活物質層が存在しない正極活物質層)から放出された電荷については、移動距離が最短となる位置(直近の位置)にある導電性を有する部分に向けて移動しようとする。
【0025】
そのため、最内周及び最外周にある正極板の正極活物質層(対応する負極板が存在しない正極板)から放出される電荷の移動を規制しなければ、その電荷が近傍にある導電性を有する部分(例えば、負極活物質層や集電部材、電池ケースが金属製である場合には電池ケースの内面)に集中して電析が発生する虞がある。
【0026】
しかしながら、上記構成の非水電解質二次電池は、発電要素の最外周で負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層に対して絶縁部材が対向配置されているため、当該正極活物質層(負極活物質層と非対向状態の正極活物質層)から放出される電荷の移動が絶縁部材によって規制される(電荷の移動経路が制限される)結果、当該正極活物質層から放出される電荷が負極活物質層に到達するまでの時間を長期化させることができる。すなわち、最外周にある正極板の正極活物質層から放出された電荷が一カ所に短時間で集中することを防止することができる。これにより、上記構成の非水電解質二次電池は、内部短絡等の原因となる電析の発生を抑えることもできる。
また、上記構成の非水電解質二次電池によれば、発電要素全体の電気絶縁を図りつつ電荷の移動を規制することができる。
【0027】
この場合、前記発電要素は、最内周に正極活物質層を内側に向けた正極板が配置され、前記絶縁部材は、重ね合わされた正極板及び負極板の巻回中心となる芯材で構成され
た内側絶縁部材を有していてもよい。このようにすれば、正極板及び負極板の巻回中心となる芯材が正極板(正極活物質層)から放出される電荷の移動を規制する絶縁部材に兼用されるため、新たな構成を追加することなく(構造を複雑化させることなく)、最内周の正極板(正極活物質層)から放出される電荷の移動を規制することができる。
【0028】
本発明の一態様として、前記発電要素は、最外周に正極活物質層を外側に向けた正極板が配置され、前記絶縁部材は、発電要素全体を包囲するシート又は袋で構成され
た外側絶縁部材を有していてもよい。このようにすれば、発電要素全体の電気絶縁を図りつつ電荷の移動を規制することができる。
【0029】
本発明のさらに別の態様として、前記セパレータは、電気絶縁性を有する基層と、該基層上に積層された無機質層とで構成され、前記無機質層を正極活物質層に対向させて配置されてもよい。このようにすれば、正極活物質層から放出される電荷が無機質層に沿って移動するようになる。そのため、正極活物質層から放出された電荷は、拡散されつつ負極板に向けて移動することになり、正極活物質層からの電荷を負極板が均一に吸収(保持)することができる。従って、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方にある正極板(正極活物質層)から放出された電荷の移動時間が長期化して該電荷の負極板への供給が間に合わないような状況になることがなく、必要な電気容量で維持させることができる。
【0030】
また、本発明のさらに別の態様として、前記絶縁部材は、正極板側と反対側とに貫通した多数の微孔が穿設されていてもよい。このようにすれば、最内周及び最外周にある正極板の正極活物質層から放出された電荷の移動速度を適正なものにすることができる。すなわち、絶縁部材に多数の微孔を穿設すると、正極活物質層から放出された電荷が絶縁部材の微孔を通過して直近の負極活物質層に向けて移動することになるが、その絶縁部材の微孔の孔径を適宜設定することで、絶縁部材に沿って移動する電荷と絶縁部材の微孔を通過して移動する電荷との割合(電荷の拡散)を調整することができ、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方にある正極板(正極活物質層)から放出された電荷が負極活物質層に到達する時間を適正時間に設定することができる。これにより、内部短絡等の原因となる電析の発生を確実に抑えることができる。また、上述の如く、絶縁部材に多数の微孔が穿設されることで、電解液が浸透し易くなり、また、充放電によって発生するガスが発電要素の外側に抜け易くなる。特に、負極板に対向しない正極活物質層が存在する場合、正極板上で電解液が分解されることでガスの発生量が多くなるため、充放電によって発生するガスが発電要素の外側に抜け易くなることは有用である。
【0031】
本発明のさらに別の態様として、前記絶縁部材は、正極活物質層と対向する面が凹凸面で構成されてもよい。このようにすれば、正極活物質層から放出される電荷が絶縁部材の凹凸面に沿って移動するようになる。そのため、正極活物質層から放出された電荷は、拡散されつつ負極活物質層(電荷が移動できる経路での最短距離の位置にある負極活物質層)に向けて移動することになる。従って、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方にある正極板(正極活物質層)から放出された電荷の全量が負極活物質層に到達する時間を適正時間に設定することができる。これにより、内部短絡等の原因となる電析の発生を確実に抑えることができる。また、上述の如く、絶縁部材の正極活物質層と対向する面が凹凸面で構成されることで、電解液が浸透し易くなり、また、充放電によって発生するガスが発電要素の外側に抜け易くなる。特に、負極板に対向しない正極活物質層が存在する場合、正極板上で電解液が分解されることでガスの発生量が多くなるため、充放電によって発生するガスが発電要素の外側に抜け易くなることは有用である。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明の非水電解質二次電池によれば、充放電に伴う電気容量の低下を抑えつつ内部短絡等の原因となる電析の発生を抑えることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池(以下、単に二次電池という)について、添付図面を参照して説明する。
【0035】
かかる二次電池は、ロッキングチェア型電池であり、本実施形態においては、リチウムイオン二次電池を対象としている。本実施形態に係る二次電池は、
図1乃至
図3に示す如く、発電要素2を備えている。より具体的には、本実施形態に係る二次電池1は、前記発電要素2と、該発電要素2を収容する電池ケース3と、電池ケース3の外側に配置された一対の出力端子4,5と、各出力端子4,5を発電要素2に対して電気的に接続するための一対の集電部材6,7とを備えている。
【0036】
前記発電要素2は、
図4に示す如く、帯状の正極板20と帯状の負極板21とが電気絶縁性を有するセパレータ22を介して重ね合わされた状態で長手方向に渦巻き状に巻回されて形成されている。すなわち、正極板20、負極板21、及びセパレータ22は、何れも帯状に形成されており、長手方向を一致させた状態で、正極板20、セパレータ22、負極板21、セパレータ22の順に積層した上で渦巻き状に巻回されることで発電要素2が形成されている。本実施形態に係る発電要素2は、電気絶縁性を有する芯材23を備えており、該芯材23を中心にして前記正極板20、負極板21、及びセパレータ22が渦巻き状に巻回されている。
【0037】
前記正極板20は、
図5に示す如く、帯状の導電性基材(以下、正極基材という)20aと、該正極基材20a上に形成された正極活物質層20bとで構成されている。本実施形態に係る正極板20は、正極基材20aの両面に正極活物質層20bが形成されている。そして、該正極板20は、正極基材20aの長手方向の全長又は略全長に亘って正極活物質層20bが形成され、長手方向と直交する幅方向の一端部に正極活物質層20bの非形成領域(正極基材20a)からなる正極リード部L1が形成されている(
図3参照)。
【0038】
前記正極基材20aは、導電性を有する材質であれば特に制限がなく、公知のものを任意に採用することができる。具体的には、前記正極基材20aには、アルミニウム、ニッケルメッキ銅、チタン、タンタル、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料、導電性ポリマー、又は、導電性物質層を形成した樹脂等を採用することができ、中でもアルミニウムは、正極基材20aに好適である。また、前記正極基材20aの形態としては、箔等のシート体、発泡体、焼結多孔体、エキスパンド格子等を採用することができる。さらに、前記正極基材20aは、任意の形状の孔をあけたものも用いることもできる。
【0039】
本実施形態に係る二次電池1は、上述の如く、リチウムイオン二次電池であるため、前記正極活物質層20bは、リチウムイオンを吸蔵・放出できるものであれば特に制限はなく、任意の活物質層を適宜使用することができ、例えば、LixMOy(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LixMnO3、LixNiyCo(1-y)O2、LixNiy'Mny"Co(1-y'-y")O2、LixNiyMn(2-y)O4等)、或いは、LiwMex(XOy)x(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えば、P、Si、B、V)で表されるポリアニオン化合物(LiNiPO4、LiCoPO4、Li3V2(PO4)3、Li2MnSiO4、Li2CoPO4F等)から選択することができる。また、これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、一部他の元素又はアニオン種で置換されていてもよい。さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラスチレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等が挙げられるが、これに限定されるものでは
ない。また、これらの化合物は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
前記負極板21は、帯状の導電性基材(以下、負極基材という)21aと、該負極基材21a上に形成された負極活物質層21bとで構成されている。本実施形態に係る負極板21は、負極基材21aの両面に負極活物質層21bが形成されている。そして、負極板21は、負極基材21aの長手方向の全長又は略全長に亘って負極活物質層21bが形成され、長手方向と直交する幅方向の他端部に負極活物質層21bの非形成領域(負極基材21a)からなる負極リード部L2が形成されている(
図3参照)。
【0041】
前記負極基材21aは、導電性を有する材質であれば特に制限がなく、公知のものを任意に採用することができる。具体的には、前記負極基材21aには、アルミニウム、ニッケルメッキ銅、チタン、タンタル、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料、導電性ポリマー、又は、導電性物質層を形成した樹脂等を採用することができ、中でも銅は負極基材21aに好適である。また、前記負極基材21aの形態としては、箔等のシート体、発泡体、焼結多孔体、エキスパンド格子等を採用することができる。さらに、前記負極基材21aは、任意の形状の孔をあけたものも用いることもできる。
【0042】
前記負極活物質層21bは、金属イオンを吸蔵・放出する活物質層で構成される。本実施形態に係る二次電池1に用いる負極活物質層21bとしては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質層21bとしては、黒鉛や、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等の炭素質材料、SnOやSiO等の金属酸化物、チタン酸リチウム等のリチウム複合酸化物、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物を用いることが安全性の観点から好ましい。
【0043】
前記セパレータ22は、電気絶縁性を有する基層22aと、該基層22a上に積層された無機質層22bとを備えている。
【0044】
前記基層22aは、樹脂シートであり、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン誘導体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステル等のポリエステル等を採用でき、耐電解液性や耐久性等の観点から、ポリエチレンや、ポリプロピレンを採用することが好ましい。
【0045】
本実施形態に係るセパレータ22の基層22aは、表裏に貫通した多数の微孔が穿設されている。すなわち、本実施形態に係る基層22aは、多孔質な樹脂シートで構成されている。そして、本実施形態に係る基層22aは、0.5μm〜50μmの厚みに設定されている。
【0046】
前記無機質層22bは、多数の無機粒子(図示しない)と、無機粒子を基層22aに結着するバインダ(図示しない)とを含んでいる。
【0047】
前記無機粒子は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、チタニア、アルミナシリケート等を採用することができ、平均粒子径が0.1μm〜1μmに設定される。すなわち、無機粒子が細かすぎる(0.1μmよりも小さい)と、無機粒子間の隙間が狭くなりすぎて電解液の供給が遅くなり、無機粒子が大きすぎる(1μmよりも大きい)と、無機質層22bの厚みを薄くすることが困難になるため、電解液の供給と無機質層22bの厚みを考慮すると、前記無機粒子の平均粒子径は、0.1μm〜1μmに設定されることが好ましい。そして、本実施形態において、無機粒子は、球状又は塊状に形成されている。すなわち、無機粒子が薄片等のように扁平状に形成されると、隣り合う無機粒子同士が面接触する機会が増えて無機粒子間に電解液を供給するための隙間が形成しにくくなるため、本実施形態に係る無機粒子は、隣り合う無機粒子と点接触するような形態に形成されている。これにより、前記無機質層22bは、平均細孔径(無機粒子間の平均間隔)が基層22aよりも大きな多孔質層になっている。従って、本実施形態に係るセパレータ22(無機質層22b)は、リチウムイオン(電荷)が拡散し易い形態に形成されている。
【0048】
前記バインダは、樹脂材料で構成されるが、電解液に対して不溶であり、且つ当該二次電池1の使用範囲で電気科学的に安定なものを用いることが好ましい。より具体的には、前記バインダは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、SBR等を採用することができる。
【0049】
本実施形態に係るセパレータ22は、無機粒子の平均粒子径が0.1〜1μmであることを前提に、無機質層22bの厚みが0.5μm〜50μmに設定される。無機質層22bの厚みは、電解液の供給促進の観点から、1μm以上であることが好ましく、当該二次電池1のエネルギー密度を確保する観点から、10μm以下であることが好ましい。
【0050】
そして、本実施形態に係るセパレータ22は、無機粒子間に基層22aの微孔と連通した微小隙間が形成され、正極板20と負極板21との間での電荷の移動を許容できるようになっている。
【0051】
図4に戻り、発電要素2は、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方に正極板20が配置される。そして、該発電要素2は、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方の正極板20に負極板の負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bが形成される。
【0052】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る発電要素2は、正極板20の長手方向の長さが負極板21の長手方向の長さよりも長く設定されている。すなわち、正極板20は、長手方向の一端側及び他端側の少なくとも何れか一方側が負極板21の長手方向の一端及び他端の少なくとも何れか一方からはみ出るように長さ設定されている。本実施形態に係る発電要素2は、正極板20の長手方向の長さが負極板21の長手方向の長さよりも巻回状態における一周分の長さだけ長く設定されている。これにより、該発電要素2は、負極活物質層21bよりも正極活物質層20bが広く形成されている。そして、該発電要素2は、正極活物質層20bと負極活物質層21bとが向かい合わせになるように、正極板20と負極板21とがセパレータ22を介して重ね合わされている。すなわち、正極板20及び負極板21は、セパレータ22を挟んで互いの活物質層20b,21bを対向させるように配置されている(
図5参照)。そして、本実施形態に係る発電要素2は、セパレータ22に無機質層22bが設けられているため、セパレータ22は無機質層22bを正極活物質層20と対向させた状態で配置されている。なお、
図4において正極板20、負極板21、及びセパレータ22が間隔を開けて示されているが、実際にはこれらは互いに密接した状態で積層されている。
【0053】
本実施形態に係る発電要素2は、正極板20が最内周で負極板21よりも余分に巻回されている。すなわち、本実施形態に係る発電要素2は、正極板20の長手方向の長さが負極板21の長手方向の長さよりも長く設定されているため、巻き初め(巻回中心)で正極板20が負極板21よりも多く巻回され、正極板20と負極板21との巻き終わり(終端)が一致している。
【0054】
本実施形態に係る発電要素2は、長尺な正極板20(所定長さに裁断される前の正極板20)、長尺な負極板21(所定長さに裁断される前の負極板21)、及び長尺なセパレータ22(所定長さに裁断される前のセパレータ22)が長手方向を一致させた状態で重ね合わされ、積層状態にある正極板20、負極板21及びセパレータ22が先端側から芯材23を中心にして所定の巻き数で巻回された後に切断されることで形成される。
【0055】
本実施形態に係る発電要素2は、長尺な正極板20と負極板21とを重ね合わせるときに、正極板20の先端側が負極板21の先端から突出した状態になるように正極板20と負極板21とを重ね合わせ、重ね合わされた正極板20と負極板21とを該正極板20が内側になるように巻回した後に両者を同じ位置で切断することで形成することができる。また、本実施形態に係る発電要素2は、長尺な正極板20と負極板21とを重ね合わせるときに、正極板20及び負極板21の先端を一致させるように正極板20と負極板21とを重ね合わせ、重ね合わされた正極板20と負極板21とを巻回した後に両者を異なる位置で切断することで形成することもできる。
【0056】
そして、本実施形態に係る発電要素2は、上述の如く、正極基材20aの両面に正極活物質層20b,20bが形成されているため、最内周にある正極板20が正極基材20aの両面に形成された正極活物質層20b,20bのうちの一方の正極活物質層20bを巻回中心側に向けて配置され、最外周にある正極板20が正極基材20aの両面に形成された正極活物質層20b,20bのうちの他方の正極活物質層20bを外側に向けて配置されている(
図5参照)。これにより、本実施形態に係る発電要素2は、最内周及び最外周に負極板21の負極活物質21bと非対向状態の正極活物質層20bが配置されている。
【0057】
そして、該二次電池1は、発電要素2の最内周及び最外周に少なくとも何れか一方に対応する負極板21(負極活物質層21b)が存在しない正極板20(正極活物質層20b)が配置されることを前提に、発電要素2の最内周及び最外周に少なくとも何れか一方に沿って配置された絶縁部材9,10を備えている。
【0058】
本実施形態に係る二次電池1は、対応する負極板21の存在しない正極板20が発電要素2の最内周及び最外周に配置される(負極活物質層21bと向かい合うことのない正極活物質層20bが発電要素2の最内周及び最外周に配置される)ため、発電要素2の最内周にある正極板20に沿って配置された絶縁部材(以下、内側絶縁部材という)9と、発電要素2の最外周にある正極板20に沿って配置された絶縁部材(以下、外側絶縁部材という)10とを備えている。
【0059】
本実施形態に係る二次電池1は、上述の如く、正極板20及び負極板21が芯材23を中心にして巻回されるため、該芯材23が発電要素2の最内周(正極板20)に沿って配置される内側絶縁部材9として兼用されている。かかる内側絶縁部材9(芯材23)は、最内周にある正極板20の正極活物質層20bと対向配置されることで、該最内周の正極板20(正極活物質層20b)から放出される電荷の移動を規制するようになっている。すなわち、本実施形態に係る二次電池1は、対応する負極板21が存在しない正極板20(正極活物質層20b)に対して内側絶縁部材9を対向配置することで、最内周にある正極活物質層20bから放出された電荷が直近にある導電性を有する部分(電池ケースの内面や負極板21)に向けて最短距離で到達するのを規制するようになっている。
【0060】
内側絶縁部材9(芯材23)は、電気絶縁性を有し、且つイオン導電性の低い素材又は電解液の濡れ性が低い素材が採用される。より具体的には、前記内側絶縁部材9は、電気絶縁性を有し且つ電解液に耐えられる樹脂材料であって、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビリニデン)等で構成される。
【0061】
本実施形態に係る内側絶縁部材9は、樹脂シートを扁平筒状にしたもので両端が開放している。そして、本実施形態に係る内側絶縁部材9(樹脂シート)は、正極板20側と反対側とに貫通した多数の微孔(図示しない)が穿設されている。すなわち、該内側絶縁部材9は、多孔質樹脂シートが採用されている。
【0062】
内側絶縁部材9を構成する樹脂シートにおける微孔の孔径は、電荷の拡散効率を考慮して設定される。具体的には、内側絶縁部材9を構成する樹脂シートの微孔の孔径は、電荷の拡散効率と周囲との電気絶縁性を考慮すれば、1μm〜100μmに設定することが好ましい。なお、電荷の拡散効率のみを考慮すれば、内側絶縁部材9の微孔の孔径は、1mm程度であってもよい。該内側絶縁部材9(芯材23)を構成する樹脂シートを多孔質にするには、例えば、レーザー加工や、溶孔、熱針加工等の溶融加工の他、発泡成形で形成したり、樹脂シートを溶融不織布で構成したりしてもよい。
【0063】
前記外側絶縁部材10は、絶縁袋と言われるもので、発電要素2全体を包み込めるように形成されている。該外側絶縁部材10は、電気絶縁性を有する樹脂シートを折り畳んで袋状にされたり、前記樹脂シートを袋状に予め成型されたりしている。
【0064】
本実施形態に係る外側絶縁部材10は、最外周にある正極板20の正極活物質層20bと対向配置されることで、該最外周の正極板20(正極活物質層20b)から放出される電荷の移動を規制するようになっている。すなわち、本実施形態に係る外側絶縁部材10は、内側絶縁部材9と同様に、電気絶縁性を有し、且つイオン導電性の低い素材又は電解液の濡れ性が低い素材が採用される。より具体的には、電気絶縁性を有し且つ電解液に耐えられる樹脂材料(例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビリニデン)等)で構成される。
【0065】
また、本実施形態に係る外側絶縁部材10(樹脂シート)は、発電要素2側と反対側とに貫通した多数の微孔(図示しない)が穿設されている。すなわち、該外側絶縁部材10についても、多孔質樹脂シートが採用されている。外側絶縁部材10を構成する樹脂シートにおける微孔の孔径は、電荷の拡散効率を考慮して設定される。具体的には、外側絶縁部材10を構成する樹脂シートの微孔の孔径は、電荷の拡散効率と周囲との電気絶縁性を考慮すれば、1μm〜100μmに設定することが好ましい。なお、電荷の拡散効率のみを考慮すれば、外側絶縁部材10の微孔の孔径は、1mm程度であってもよい。該外側絶縁部材10を構成する樹脂シートを多孔質にするには、例えば、レーザー加工や、溶孔、熱針加工等の溶融加工の他、発泡成形で形成したり、樹脂シートを溶融不織布で構成したりしてもよい。
【0066】
そして、発電要素2は、前記外側絶縁部材10に全体が覆われた上で電池ケース3内に収容されている。なお、
図3及び
図4において、外側絶縁部材10が発電要素2の外周に対して隙間をあけた状態で配置されているが、実際には外側絶縁部材10は、発電要素2の外周や電池ケース3の内面に対して密接した状態になっている。
【0067】
図3に戻り、本実施形態に係る発電要素2は、幅方向(正極板20及び負極板21の長手方向と直交する幅方向と対応する方向)の一端部に正極板20(正極リード部L1)のみの積層部分が形成され、幅方向(正極板20及び負極板21が長手方向と直交する幅方向と対応する方向)の他端部に負極板21(負極リード部L2)のみの積層部分が形成されている。そして、該二次電池1は、正極板20(正極リード部L1)のみの積層部分に一方の集電部材6が電気的に接続され、負極板21(負極リード部L2)のみの積層部分に他方の集電部材7が電気的に接続されている(
図2参照)。
【0068】
前記電池ケース3は、一面を開放させた角形の箱状をなすケース本体30と、ケース本体30の開放部分を封止する蓋板31とを備えている。そして、該電池ケース3は、上述の如く、発電要素2以外に一対の集電部材6,7が収容されて電解液が充填されている。
【0069】
本実施形態に係る二次電池1は、電池ケース3(ケース本体30及び蓋板31)が金属(例えば、アルミニウム合金やステンレス合金)で構成されている。これに伴い、前記外側絶縁部材10は、電池ケース3と該電池ケース3に収容される発電要素2との電気絶縁を図るようにもなっている。
【0070】
一対の出力端子4,5は、それぞれ共通した構成であり、ケーブルやバスバー等の接続対象物(図示しない)を電気的に接続可能に形成されている。そして、一方の出力端子4は、一方の集電部材6に電気的に接続され、他方の出力端子5は、他方の集電部材7に電気的に接続されている。
【0071】
一対の集電部材6,7は、それぞれ共通した構成であり、蓋板31に固定されるベース60,70と、該ベース60,70の一端に連設されて発電要素2の幅方向の端部(正極リード部L1、負極リード部L2)に沿って配置される発電要素添設部61,71とを備えている。そして、一方の集電部材6は、発電要素2の一端部(正極リード部L1)に沿わせた発電要素添設部61が該発電要素2の一端部(正極リード部L1)とともにクリップ部材62に挟み込まれた状態で溶接され、他方の集電部材7は、発電要素2の他端部(負極リード部L2)に沿わせた発電要素添設部71が該発電要素2の他端部(負極リード部L2)とともにクリップ部材72に挟み込まれた状態で溶接される。
【0072】
そして、本実施形態に係る二次電池1は、
図1乃至
図3に示す如く、一対の出力端子4,5が電池ケース3(蓋板31)の外側で互いに対称的に配置されるとともに、一対の集電部材6,7が電池ケース3(ケース本体30)の内側で互いに対称的に配置され、一方の出力端子4が一方の集電部材6に対して間接的に接続されるとともに、他方の出力端子5が他方の集電部材7に間接的に接続されている。
【0073】
本実施形態に係る二次電池1は、一対の出力端子4,5のそれぞれの配置に対応した二カ所に蓋板31を内外から挟み込む絶縁パッキンG,Gを備えており、絶縁パッキンG,G及び蓋板31を貫通したリベット8を介して集電部材6,7と出力端子4,5とが電気的に接続されている。
【0074】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る二次電池1は、短冊状の金属板からなる接続杆41,51を備えており、該接続杆41,51の長手方向の一端部に出力端子4,5が挿通されている。そして、該二次電池1は、蓋板31の外面上に重ね合わされた絶縁パッキンG上に接続杆41、51が配置されるとともに、蓋板31の内面に重ね合わされた絶縁パッキンG上に集電部材6,7のベース60,70が配置され、前記リベット8を接続杆41,51、絶縁パッキンG,G、蓋板31、及び集電部材6,7(ベース60,70)に貫通させて該リベット8をカシメ処理することで、リベット8及び接続杆41,51を介して出力端子4,5と集電部材6,7とが電池ケース3に固定されつつ互いに電気的に接続されている。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る二次電池1の発電要素2は、正極板20が最内周及び最外周に配置されるとともに、該最内周及び最外周の正極板20に負極板21の負極活物質21bと非対向状態の正極活物質層21bが形成されているため、最内周及び最外周の正極活物質層20bは、対応する負極活物質層21b(電荷を直接吸収及び放出する負極活物質層21b)が存在しないことになる。
【0076】
従って、本実施形態に係る二次電池1は、重ね合わされた正極板20(正極活物質層20b)と負極板21(負極活物質層21b)との間で電荷が移動する際に、負極板21に吸収された電荷の全量が放出されずに正極板20と負極板21との間で移動する電荷量(充放電に寄与する電荷)が減少しても、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方で負極活物質層21bと非対向状態にある正極活物質層20bから放出される電荷で減少した電荷(充放電に寄与しなくなる電荷)を補うことができる。
【0077】
これにより、本実施形態に係る二次電池1は、充放電を繰り返し行っても電気容量の低下が抑えられ、初期の電気容量と同等の電気容量で充放電することができる。
【0078】
そして、本実施形態に係る二次電池1は、発電要素2の最内周に沿って配置された内側絶縁部材9(芯材23)を備え、該内側絶縁部材9(芯材23)が発電要素2の最内周にある正極板20の正極活物質層20bと対向しているため、充放電に伴う電析の発生を防止することができる。
【0079】
より具体的に説明すると、この種の二次電池1は、充電時に正極板20(正極活物質層20b)から放出された電荷が負極活物質層21b(負極板21)に向けて導電性を有する部分に向けて最短距離で移動することになる。従って、セパレータ22を介して負極板21に重ね合わされた正極板20(正極活物質層20b)から放出された電荷は、セパレータ22を通過して負極活物質層21bに向けて移動し、最内周にある正極板20の正極活物質層20b(対応する負極板21が存在しない正極活物質層20b)から放出された電荷については、移動距離が最短となる位置(直近の位置)にある導電性を有する部分に向けて移動しようとする。
【0080】
そのため、最内周にある正極板20の正極活物質層20b(対応する負極板21が存在しない正極板20)から放出される電荷の移動を規制しなければ、その電荷が近傍にある導電性を有する部分(負極板21のエッジ(負極活物質層21bの境界)や電池ケース3の内面)に短時間で集中して電析が発生する虞がある。
【0081】
しかしながら、本実施形態に係る二次電池1は、発電要素2の最内周にある正極板20の正極活物質層20bに対して内側絶縁部材9が対向配置され、発電要素2の最外周にある正極板20の正極活物質層20bに対して外側絶縁部材10が対向配置されているため、最内周にある正極板20(正極活物質層20b)から放出される電荷の移動が内側絶縁部材9によって規制され、最外周にある正極板20(正極活物質層20b)から放出される電荷の移動が外側絶縁部材10によって規制される。その結果、最内周及び最外周にある正極板20の正極活物質層20bから放出される電荷が導電性を有する位置に到達するまでの時間を長期化させることができる。すなわち、最内周及び最外周にある正極板20の正極活物質層20bから放出された電荷が一カ所に短時間で集中することを防止することができる。これにより、本実施形態に係る二次電池1は、電気容量の減少を抑えつつ電析の発生も抑えることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る二次電池1は、発電要素2の最内周に正極板20が配置され、内側絶縁部材9が重ね合わされた正極板20及び負極板21の巻回中心となる芯材23で構成されるため、正極板20及び負極板21の巻回中心となる芯材23が正極板20(正極活物質層20b)から放出される電荷の移動を規制する内側絶縁部材9に兼用されることになる。従って、新たな構成を追加することなく(構造を複雑化させることなく)電荷の移動を規制することができる。
【0083】
さらに、本実施形態に係る発電要素2は、最外周に正極活物質層20bを外側に向けた正極板20が配置され、外側絶縁部材10は、発電要素2全体を包囲するシート又は袋で構成されているため、発電要素2全体の電気絶縁を図りつつ電荷の移動を規制することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る二次電池1において、前記セパレータ22は、電気絶縁性を有する基層22aと、該基層22a上に積層された無機質層22bとで構成され、前記無機質層22bを正極活物質層20bに対向させて配置されているため、正極活物質層20bから放出される電荷が無機質層22bに沿って移動するようになる。そのため、正極活物質層20bから放出された電荷は、拡散されつつ負極板21に向けて移動することになり、正極活物質層20bからの電荷を負極板21が均一に吸収(保持)することができる。従って、最内周にある正極板20(正極活物質層20b)から放出された電荷の移動時間が長期化して該電荷の負極板21への供給が間に合わないような状況になることがなく、必要な電気容量で維持させることができる。
【0085】
さらに、内側絶縁部材9に正極板20側と反対側とを貫通した多数の微孔が穿設されているため、最内周にある正極板20の正極活物質層20bから放出された電荷を拡散させて電荷の移動速度を適正にすることができる。すなわち、内側絶縁部材9を多孔質に形成すると、正極活物質層20bから放出された電荷が内側絶縁部材9の微孔を通過して直近の導電性を有する部分に向けて移動することになるが、内側絶縁部材9の微孔の孔径を適切に設定することで、内側絶縁部材9に沿って移動する電荷と内側絶縁部材9の微孔を通過して移動する電荷との割合(電荷の拡散)を調整することができ、最内周にある正極板20(正極活物質層20b)から放出された電荷が導電性を有する部分に到達する時間を適正時間に設定することができる。これにより、内部短絡等の原因となる電析の発生を確実に抑えることができる。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0087】
上記実施形態において、正極基板20aの両面に正極活物質層20bが形成された正極板20と負極基板21bの両面に負極活物質層21bが形成された負極板21とで発電要素2を構成したが、これに限定されるものではなく、発電要素2は、例えば、正極基板20aの一方の面に正極活物質層20bを形成した正極板20と負極基板21bの一方の面に負極活物質層21bを形成した負極板21とを互いの活物質層20b,21b同士を対向させた状態でこれらを一括して巻回したものであってもよい。
【0088】
この場合、発電要素2の最内周に正極活物質層20bが内側に向いて対応する負極板21(負極活物質層21b)が存在しない正極板20を配置し、内側絶縁部材9(芯材23)を最内周の正極板20における正極活物質層20bと対向配置したり、発電要素2の最内周に正極活物質層20bが外側に向いて対応する負極板21(負極活物質層21b)が存在しない正極板20を配置し、芯材23と異なる内側絶縁部材(電気絶縁性を有し、且つイオン導電性の低い素材又は電解液の濡れ性が低い素材からなる絶縁部材)9を最内周の正極板20における正極活物質層20bと対向配置したりしてもよい。また、発電要素2の最外周に正極活物質層20bが外側に向いて対応する負極板21(負極活物質層21b)が存在しない正極板20を配置し、外側絶縁部材(絶縁袋)10を最外周の正極板20における正極活物質層20bと対向配置したり、発電要素2の最外周に正極活物質層20bが内側に向いて対応する負極板21(負極活物質層21b)が存在しない正極板20を配置し、絶縁袋と異なる外側絶縁部材(電気絶縁性を有し、且つイオン導電性の低い素材又は電解液の濡れ性が低い素材からなる絶縁部材)10を最外周の正極板20における正極活物質層20bと対向配置したりしてもよい。
【0089】
これらの何れの場合においても、重ね合わされた正極板20(正極活物質層20b)と負極板21(負極活物質層21b)との間で電荷が移動する際に、負極板21に保持された電荷の全量が放出されずに負極板21内に残って正極板20と負極板21との間で移動する電荷量(充放電に寄与する電荷)が減少しても、負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bから放出される電荷で減少した電荷(充放電に寄与しなくなる電荷)を補うことができる。従って、上記何れの場合においても、上記実施形態と同様に、充放電を繰り返し行っても電気容量の低下が抑えられ、初期の電気容量と同等の電気容量で充放電することができる。また、該二次電池1は、負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bに絶縁部材(内側絶縁部材、外側絶縁部材)9,10が対向配置されることで、正極活物質層20bから放出される電荷の移動が絶縁部材9,10によって規制されるため、負極活物質層21bと非対向状態にある正極活物質層20bから放出される電荷が導電性を有する位置に到達するまでの時間を長期化させることができる。これにより、本実施形態に係る二次電池1においても、電気容量の減少を抑えつつ電析の発生も抑えることができる。
【0090】
上記実施形態において、発電要素2の最内周及び最外周の何れにも正極板20が配置されたが、これに限定されるものではなく、例えば、発電要素2の最内周又は最外周の何れか一方に正極板20が配置され、当該正極板20に負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bが形成されたものであってもよい。すなわち、発電要素2の最内周に正極板20が配置されるとともに最外周に負極板21が配置され、最内周にある正極板20に負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bが形成されたものや、発電要素2の最内周に負極板21が配置されるとともに最外周に正極板20が配置され、最外周にある正極板20に負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bが形成されたものであってもよい。発電要素2をこのような態様に形成するには、正極板20と負極板21との積層態様(正極板20を内側又は外側の何れにするか)や、正極板20及び負極板21の巻き取り態様(正極板20を負極板21よりも余分に巻き取るか否かや、正極板20を内側又は外側の何れか一方で余分に巻き取るか否か等)を決定すればよい。
【0091】
より具体的には、正極板20及び負極板21の長手方向の長さが同一又は略同一に設定されることを前提に、正極板20が内側にされて巻回されることで、最内周に正極活物質層20bが負極活物質層21bと非対向状態の正極板20が配置された発電要素2を形成することができ、正極板20が外側にされて巻回されることで、最外周に正極活物質層20bが負極活物質層21bと非対向状態の正極板20が配置された発電要素2を形成することができる。
【0092】
このように正極板20及び負極板21の長手方向の長さを同一又は略同一に設定した場合、正極板20の全長に亘って正極活物質層20bを形成し、負極板21の全長に亘って負極活物質層21bを形成すると、正極活物質層20bの面積と負極活物質層21bの面積とが同一になるため、この場合においては、正極活物質層20bから放出される電荷量が負極活物質層21bで吸収可能な電荷量よりも多くなるように、負極活物質層21bの総面積が正極活物質層20bの総面積よりも小さく設定される。
【0093】
より具体的には、最内周に負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bを形成する場合、最外周となる領域にある負極板21の負極活物質層21b(両面に負極活物質層21bの形成された負極板21が採用される場合には外向きの負極活物質層21b)が予め削り取られて正極活物質層20bの面積が負極活物質層21bよりも広くされ、最外周に負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bを形成する場合、最内周となる領域にある負極板21の負極活物質層21b(両面に負極活物質層21bの形成された負極板21が採用される場合には内向きの負極活物質層21b)が予め削り取られて正極活物質層20bの面積が負極活物質層21bよりも広くされる。
【0094】
かかる発電要素2は、最内周又は最外周の何れか一方にある正極板20の正極活物質層20bが負極活物質層21bと非対向状態になるため、負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bから放出される電荷によって、負極活物質層21から放出されない電荷を補うことができ、電気容量の低下を抑制することができる。また、負極活物質層21bと非対向状態の正極活物質層20bに対して絶縁部材9,10を対向配置することで、正極活物質層20bから放出される電荷の移動を規制でき、電析の発生も抑制することができる。
【0095】
また、発電要素2は、正極板20を最外周に配置すべく正極板20を負極板21に対して外側に積層した状態で巻回されたものや、正極板20を最内周に配置すべく正極板20を負極板21に対して内側に積層した状態で巻回されたものに限定されるものではなく、例えば、正極板20を発電要素2の最内周又は最外周に配置するに当たり、発電要素2における正極板20及び負極板21の積層順序を内周側又は外周側で入れ替えるべく、発電要素2の巻き始め又は巻き終わり部分において、正極板20を負極板21よりも余分に巻回されたものであってもよい。すなわち、負極板21よりも長く設定された正極板20が負極板21よりも余分に巻回されることで正極板20が最内周又は最外周に配置されるようにしてもよい。このようにすれば、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方にある正極板20の正極活物質層20bが負極活物質層21bと非対向状態になるため、上記実施形態と同様に、電池容量の低下を抑制することができる。また、この場合においても、最内周及び最外周の少なくとも何れか一方にある正極板20の正極活物質層20bと対向する絶縁部材9,10を設けることで、最内周又は最外周の何れか一方にある正極板20の正極活物質層20bから放出される電荷の移動を規制することができ、電析の発生を抑制することができる。
【0096】
上記実施形態において、正極板20の長手方向の長さを負極板21の長手方向の長さよりも一周分の長さだけ長く設定したが、これに限定されるものではなく、例えば、
図6に示す如く、正極板20の長手方向の長さを負極板21の長手方向の長さよりも巻回状態における一周分以上長く設定してもよい。なお、
図6において、発電要素2の外周側で正極板20が負極板21よりも余分に巻回されているが、正極板20の負極板21よりも長い部分を発電要素2の最内周に配置するか最外周に配置するかによって、正極板20の長手方向の一端側を巻回中心にするか他端側を巻回中心にするかを決定すればよい。この場合においても、最内周及び最外周にある正極活物質20b(負極活物質層21bと非対向状態にある正極活物質層20b)に対して絶縁部材9,10を対向させて配置することは言うまでもない。
【0097】
上記実施形態において、重ね合わされた長尺な正極板20及び負極板21を一括して所定巻き数で巻回した後に、これらを切断することで発電要素2を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、長尺な正極板20及び負極板21のそれぞれを所定長さに切断した後に、これらを重ね合わせて巻回することで発電要素2を形成するようにしてもよい。そして、最内周で正極板20が負極板21よりも余分に巻回された発電要素を形成する場合には、予め所定長さに切断された正極板20及び負極板21の長手方向の一端同士を一致させるように該正極板20と負極板21とを重ね合わせた上で、正極板20及び負極板21の他端側から巻回されればよく、最外周で正極板20が負極板21よりも余分に巻回された発電要素を形成する場合には、予め所定長さに切断された正極板20及び負極板21の長手方向の一端同士を一致させるように該正極板20と負極板21とを重ね合わせた上で、正極板20及び負極板21の一端側から巻回されればよい。また、最内周及び最外周で正極板20が負極板21よりも余分に巻回された発電要素を形成する場合には、負極板21の長手方向の両端から正極板20の両端が突出するように正極板20と負極板21とを重ね合わせた上で、正極板20及び負極板21を何れか一端側から巻回されればよい。
【0098】
そして、上記実施形態において、発電要素2の巻回中心である芯材23を内側絶縁部材9に兼用したが、これに限定されるものではなく、例えば、芯材23に加えて又は芯材23に換えて別の絶縁部材を最内周にある正極板20の正極活物質層20bに対して対向配置してもよい。従って、最内周の正極板20と対向配置される内側絶縁部材9は薄肉の樹脂シートで構成されたものに限定されず、板状又は塊状の樹脂材料で構成してもよい。また、上述の如く、対応する負極板21が存在しない最外周の正極板20と対向配置される絶縁部材についても、絶縁袋としての外側絶縁部材10に加えて又は外側絶縁部材10に換えて別の絶縁部材を最外周にある正極板20の正極活物質層20bと対向配置するようにしてもよい。
【0099】
上記実施形態において、帯状の正極板20と帯状の負極板21とが帯状のセパレータ22を介して重ね合わされた状態で長手方向に巻回されることで、正極板20と負極板21とがセパレータ22を挟んで交互に積層された状態になった巻回型の発電要素2を備えた二次電池1について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、枚葉状のセパレータを挟んで枚葉状の正極板及び負極板を重合配置することで、正極板と負極板とがセパレータを挟んで交互に積層された積層型の発電要素を備えた二次電池であってもよい。
【0100】
この場合、何れかの正極板(好ましくは、最外層の正極板)の正極活物質層に負極板の負極活物質層と非対向状態の領域を形成し、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層に対して絶縁部材を対向配置すれば、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0101】
すなわち、発電要素は巻回型であっても積層型であってもよく、該発電要素を構成する少なくとも一部の正極板に負極板の負極活物質層と非対向状態の正極活物質層を形成し、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層に絶縁部材を対向させて配置すればよい。このようにすることで、上記実施形態と同様、正極板と負極板との間で移動する電荷量(充放電に寄与する電荷)が減少しても、負極活物質層と非対向状態にある正極活物質層から放出される電荷で減少した電荷を補うことができ、初期の電気容量と同等の電気容量で充放電することができる。また、負極活物質層と非対向状態の正極活物質層から放出される電荷の移動が絶縁部材によって規制されるため、当該正極活物質層から放出される電荷が負極活物質層に到達するまでの時間を長期化させることができ、内部短絡等の原因となる電析の発生を抑えることもできる。
【0102】
上記実施形態において、内側絶縁部材9に多数の微孔を穿設したものを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、内側絶縁部材9は微孔が形成されていないものであってもよい。但し、電荷の拡散や電荷の移動速度を制御するには、内側絶縁部材9を多孔質に形成することが好ましい。また、上述の如く、最外周の正極板20と対向配置される絶縁部材(外側絶縁部材10)も同様である。
【0103】
上記実施形態において、電荷の拡散や電荷の移動速度を制御するために、内側絶縁部材9に多数の微孔を穿設したものを採用したが、電荷の拡散や電荷の移動速度を制御する場合、例えば、内側絶縁部材9の正極板20と対向する面を凹凸面にしてもよい。また、最外周の正極板20と対向配置される絶縁部材(外側絶縁部材10)も同様である。この場合、発電要素2の幅方向に延びる複数の凹条及び凸条を交互に形成して正極板20(正極活物質層20bと対向する面を凹凸面に形成し、各凹条を幅方向の少なくとも一方の端縁で開放させることが好ましい。
【0104】
このようにすれば、正極活物質層20bから放出される電荷が絶縁部材9,10の凹凸面(凹条)に沿って移動するようになる。そのため、正極活物質層20bから放出された電荷は、拡散されつつ導電性を有する部分(電荷が移動できる経路での最短距離の位置にある導電性を有する部分)に向けて移動することになる。従って、最内周及び最外周の何れか一方にある正極板20(正極活物質層20b)から放出された電荷の全量が導電性を有する部分に到達する時間を適正時間に設定することができる。
【0105】
また、正極板20と対向する面を複数の凹条及び凸条を形成して凹凸面にする場合、凹条及び凸条のそれぞれの幅(発電要素2の幅方向と直交する方向の広さ)を1μm〜1mmに設定することが好ましい。また、該凹条を発電要素2の幅方向の少なくとも何れか一端側から中央部に向けて徐々に幅広になるように形成すれば、電荷の移動速度(供給速度)を均一化させることができる。
【0106】
上記実施形態において、電気絶縁性を有する基層22aと、該基層22a上に積層された無機質層22bとを備えたセパレータ22を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、多孔質樹脂シートでセパレータ22を構成してもよい。但し、電荷の拡散を向上させるには、上記実施形態と同様にすることが好ましいことは言うまでもない。
【0107】
上記実施形態において、外側絶縁部材10を内側絶縁部材9と同様の樹脂シートで構成したが、上記実施形態のように、発電要素2の最外周において、正極板20及び負極板21が互いの活物質層20b,21b同士を対向させている場合には、外側絶縁部材10は、内側絶縁部材9と同様の素材にする必要はなく、単に電気絶縁性を有する素材で構成してもよい。
【0108】
上記実施形態において、リチウムイオン二次電池を一例に説明したが、例えば、ナトリウムイオン二次電池や、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池等のロッキングチェア型の二次電池、すなわち、正極板20と負極板21との間で電荷(金属系イオン)が移動することで充放電できる非水電解質二次電池であればよい。