特許第5946020号(P5946020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946020
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   E03D9/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-211522(P2012-211522)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-66051(P2014-66051A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】豊田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義之
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3487447(JP,B2)
【文献】 特開2007−332537(JP,A)
【文献】 特開平11−200460(JP,A)
【文献】 特開2010−024648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便器に取り付けられ、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、
人体局部に向けて水を吐出する吐水口を備えた洗浄ノズルと、
給水源から供給された水を前記洗浄ノズルの吐水口まで導く給水路と、
前記給水路に設けられ、前記給水路を通る水に含まれる塩化物イオンの捕集と、その捕集した塩化物イオンの脱離が可能な濃縮部と、
前記濃縮部よりも下流の前記給水路に設けられ、一対の電解用電極を有し、前記一対の電解用電極間に電圧を印加することで前記給水路を流れる水を電気分解する電解部と、
前記給水路における水の流れ方と、濃縮部および電解部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記洗浄ノズルから人体局部に向けて水を吐出させる局部洗浄モードと、 前記電解用電極に電圧を印加して前記濃縮部から供給される塩化物イオンを含む水を電気分解することで生成した次亜塩素酸を供給する殺菌洗浄モードとを実行可能であり、
前記濃縮部は、前記局部洗浄モードの実行中に前記給水路を流れる水に含まれる塩化物イオンを捕集することを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記給水路は、主流路と、分岐部において前記主流路から分岐し下流側に設けられた合流部において前記主流路に合流し、前記濃縮部が設けられるバイパス流路とを有することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記バイパス流路は、前記分岐部より上流の前記給水路に対して傾斜して分岐し、
前記濃縮部は、一対の濃縮用電極を有し、前記一対の濃縮用電極間に電圧を印加することで、濃縮部を流れる水に含まれる塩化物イオンを捕集するものであって、前記バイパス流路において前記合流部よりも前記分岐部に近い位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置に関し、特に、塩化物イオンを含む水を電気分解して陽極に塩素を発生させ、この塩素と水の反応により次亜塩素酸を含む殺菌水を生成する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから吐出される水によって人体局部(おしりなど)を洗浄する衛生洗浄装置が広く用いられている。このノズル自身を洗浄する機能を備えた衛生洗浄装置として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1記載の装置では、人体局部を洗浄した後に、電解槽内で水道水を電気分解し、これにより発生した次亜塩素酸を含む殺菌水によりノズルを洗浄することが開示されている(特に、段落0036−0043参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3487447号明細書
【特許文献2】特開2009−274028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の装置は、電解槽内に供給する水として水道水を用いるが、水道水の塩化物イオン濃度は地域によって大きく異なる。このため、水道水の塩化物イオン濃度が低い地域でこの装置が使用される場合などは、電解槽で高濃度の次亜塩素酸を生成することができず、ノズルの洗浄が不十分になるおそれがある。
【0005】
一方、水の塩化物イオン濃度を高めることで高濃度の次亜塩素酸を生成する技術として、上記特許文献2に記載のものが知られている。上記特許文献2に記載の装置は、未処理の海水中の微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理手段を備え、塩素処理手段は、未処理の海水中に含まれる塩化物イオンの濃度を高める濃縮手段と、濃縮手段の下流側に配置され、塩化物イオン濃度を高めた海水を電気分解して次亜塩素酸を発生させるものである。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2記載の装置のように、水の塩化物イオン濃度を高めて高濃度の次亜塩素酸を生成する技術を衛生洗浄装置に適用する場合において、人体局部を洗浄した後に速やかに殺菌動作に移行し、次回の使用に備えるための最適な設計については、これまで十分な検討がなされていなかった。
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、確実に高濃度の次亜塩素酸を生成するとともに、局部洗浄後に速やかに殺菌動作に移行可能な衛生洗浄装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、大便器に取り付けられ、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、人体局部に向けて水を吐出する吐水口を備えた洗浄ノズルと、給水源から供給された水を前記洗浄ノズルの吐水口まで導く給水路と、前記給水路に設けられ、前記給水路を流れる水に含まれる塩化物イオンの捕集と、その捕集した塩化物イオンの脱離が可能な濃縮部と、前記濃縮部よりも下流の前記給水路に設けられ、一対の電解用電極を有し、前記一対の電解用電極間に電圧を印加することで前記給水路を流れる水を電気分解する電解部と、前記給水路における水の流れ方と、濃縮部および電解部を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記洗浄ノズルから人体局部に向けて水を吐出させる局部洗浄モードと、前記電解用電極に電圧を印加して前記濃縮部から供給される塩化物イオンを含む水を電気分解することで生成した次亜塩素酸を供給する殺菌洗浄モードとを実行可能であり、前記濃縮部は、前記局部洗浄モードの実行中に前記給水路を流れる水に含まれる塩化物イオンを捕集する。
【0009】
本発明では、濃縮部による塩化物イオンの捕集を、局部洗浄モードの実行中に行う。人体局部の洗浄のために洗浄ノズルから吐出する水に塩化物イオンが含まれている必要は無いため、洗浄ノズルの吐水口に導かれるこの水から塩化物イオンの捕集を行うことは、衛生洗浄装置の機能上、何ら問題を生じるものではない。また、局部洗浄モードの実行によって人体局部を洗浄した後、塩化物イオン濃度を高められた水を電気分解して高濃度の次亜塩素酸を含む殺菌水を生成する殺菌洗浄モードに速やかに移行することができる。すなわち、本発明によれば、使用者の人体局部を洗浄した後、迅速に殺菌水を生成して供給することが可能となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記給水路は、主流路と、分岐部において前記主流路から分岐し下流側に設けられた合流部において前記主流路に合流し、前記濃縮部が設けられるバイパス流路とを有する。
【0011】
局部洗浄モードにおいて、濃縮部を流れる水の流速が大きいと、その水に含まれる塩化物イオンを捕集することが困難となり、その後に殺菌洗浄モードを実行しても、高濃度の次亜塩素酸を得られなくおそれがある。
この課題を解決するため、洗浄ノズルから吐出する水の流量を小さくすることで濃縮部を流れる水の流速を小さくすると、今度は洗浄性能の低下や、使用者の洗浄感の悪化という課題を招来する。
【0012】
本発明では、給水路は分岐部で分岐する主流路およびバイパス流路を有しており、濃縮部がバイパス流路に設けられている。これにより、給水源から供給される水を分岐部で主流路とバイパス流路とに分流させ、小さな流速の水をバイパス流路の濃縮部に流すことで塩化物イオンを十分に捕集することができる容易となる。また、主流路とバイパス流路は合流部で合流し、この合流させた水を洗浄ノズルから吐出させるため、洗浄ノズルから人体局部に供給される水の流量が低下することがない。したがって、局部洗浄モードにおいて洗浄性能の低下や使用者の洗浄感の悪化を抑制しながらも、濃縮部において塩化物イオンを確実に捕集し、その後の殺菌洗浄モードにおいて、高濃度の次亜塩素酸を含む殺菌水を生成することが可能となる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記バイパス流路は、前記分岐部より上流の前記給水路に対して傾斜して分岐し、前記濃縮部は、一対の濃縮用電極を有し、前記一対の濃縮用電極間に電圧を印加することで、濃縮部を流れる水に含まれる塩化物イオンを捕集するものであって、前記バイパス流路において前記合流部よりも前記分岐部に近い位置に設けられている。
【0014】
本発明では、バイパス流路が分岐部より上流の給水路に対し傾斜して分岐している。したがって、分岐部からバイパス流路に流れ込んだ水には、上記傾斜した流路を流れることで大きな乱れが生じる。そしてこの水の乱れは、分岐部に近いほど大きなものとなる。
【0015】
ここで、濃縮用電極に電圧を印加して濃縮部を流れる水の塩化物イオンを捕集する際、濃縮部を流れる水の乱れが大きいほど、塩化物イオンが濃縮用電極に接近する機会が多くなり、塩化物イオンの捕集が容易となる。したがって、本発明のように、濃縮部をバイパス流路において合流部よりも分岐部に近い位置に設けることにより、水の乱れを利用して、十分な塩化物イオンを確実に捕集することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の衛生洗浄装置によれば、確実に高濃度の次亜塩素酸を生成するとともに、人体局部を洗浄した後に速やかに殺菌動作に移行可能な衛生洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態である衛生洗浄装置が設置された大便器を示す斜視図である。
図2図1に示す衛生洗浄装置の流路系統図である。
図3図2に示す衛生洗浄装置に用いられる電解槽を説明するための模式図である。
図4】第1電圧を決定する手順を示すフローチャートである。
図5】電気伝導度と第1電圧との関係を示す図である。
図6】局部洗浄モードにおける流路系統図である。
図7】殺菌洗浄モードにおける流路系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である衛生洗浄装置が設置された大便器を示す斜視図である。同図に示すように、衛生洗浄装置100は水洗式の大便器110上に載置して使用される。そして、図示しないリモコンに設けられた「おしり」スイッチ等を使用者が操作することにより、それまでケーシング101内に収納されていた洗浄ノズル14が大便器110のボウル部111内に進出し、洗浄ノズル14の先端に開設された吐水口141から上方に向けて吐出する水によって人体局部(おしりなど)を洗浄することができる。人体局部の洗浄を終えた使用者が、リモコンに設けられた「停止」スイッチ等を操作することで、衛生洗浄装置100は水の吐水を停止し、洗浄ノズル14は後退してケーシング101内に収納され、次回の使用に備える。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態である衛生洗浄装置の流路系統図である。なお、同図には、衛生洗浄や殺菌水の生成に関連しない要素については図示を省略しているが、本実施形態の衛生洗浄装置は、人体局部を洗浄するために必要な周知の構成を備えている。
【0021】
図2に示すように、流路系統10は、水道管といった給水源12から洗浄ノズル14へと水を導く給水路を構成する上流流路16、主流路17、バイパス流路18、及び下流流路19を備えている。上流流路16は、給水源12と主流路17及びバイパス流路18とを連通する流路である。下流流路19は、主流路17及びバイパス流路18と洗浄ノズル14とを連通する流路である。
【0022】
主流路17とバイパス流路18は、分岐部20において分岐し、合流部21において合流するように設けられている。バイパス流路18は、上流流路16に対し約90度傾斜して連通しており、濃縮部である濃縮槽6が設けられている。濃縮槽6は、バイパス流路18において、合流部21よりも分岐部20に近い位置に設けられている。
【0023】
下流流路19には、上流側から順に、電解部である電解槽1と、洗浄バルブ28とが設けられている。下流流路19の電解槽1の下流側であって洗浄バルブ28の上流側には分岐部22が設けられている。分岐部22において下流流路19から分岐し、下方に向かって延びる排水流路23が設けられている。排出流路23には、排出バルブ30が設けられている。
【0024】
下流流路19の洗浄バルブ28の下流側には、洗浄ノズル14が設けられている。洗浄ノズル14には、人体局部に向けて水を吐出する複数の吐水口141が開設されている他、その吐水口141まで水を導く流路が内部に設けられている。洗浄ノズル14は、図示しない減速機等を介してモータ29と接続されている。このモータ29の駆動により、洗浄ノズル14は、大便器110のボウル部111内に進出した位置と、ケーシング101内に収納される位置との間で、矢印Nの方向に進退可能に構成されている。洗浄ノズル14がケーシング101内に収納された位置では、吐水口141の上方にはケーシング101のクリーニングカバー102が配置されており、吐水口141から吐出されクリーニングカバー102で跳ね返る水により、洗浄ノズル14自身の外表面の洗浄を行うことができる。
【0025】
電解槽1、濃縮槽6、洗浄バルブ28、モータ29、及び排出バルブ30は、制御部24と通信可能なように接続されている。洗浄バルブ28は、制御部24の指令に基づいて開閉し、下流流路19の分岐部22よりも下流側への水の流入を制御する。また、制御バルブ28は、流路19の開閉のみならず、開度の調整も可能なように構成されている。洗浄バルブ28の開度が大きいほど、流量及び流速も大きなものとなる。
【0026】
排出バルブ30は、制御部24の指令に基づいて開閉し、排出流路23への水の流入を制御する。これら排出流路23及び排出バルブ30により排出機構32が構成される。なお、本実施形態では、下流流路19を分岐して排出流路23を設けているが、これに限らずに、下流流路19の下面に開口を設けるのみでもよい。また、本実施形態では、排出流路23に排出バルブ30を設けて、これにより排出流路23を流れる水流を制御しているが、これに限らず、ポンプ等を用いて、排出流路23を流れる水流を制御することもできる。排出バルブ30は、電解槽1における水の電気伝導度の測定時に開かれる。排出バルブ30から排出される水は便器120のボウル部に排出される。
【0027】
制御部24は、給水源12に設けられている給水バルブ(図示しない)を制御し、上流流路16に流れる水量を調整することができる。制御部24は、濃縮槽6に配置される一対の濃縮用電極に電圧を印加するタイミングを制御し、その電圧も可変可能なように構成されている。制御部24は同様に、電解槽1に配置される一対の電解用電極に電圧を印加するタイミングを制御し、その電圧も可変に構成されている。
【0028】
制御部24は、塩化物イオンを濃縮用電極の陽極に引き寄せて捕集するために、濃縮槽6の一対の濃縮用電極間に第1電圧を印加するほか、印加していた電圧を解除することで、捕集した塩化物イオンを脱離させることができる。また、制御部24は、電解槽1の一対の電解用電極間に印加される電圧を制御し、後述する測定用電圧や、次亜塩素酸又は次亜塩素酸イオンを生成する電圧が印加されるよう制御する。
【0029】
図3は、電解槽1及び濃縮槽6を説明するための模式図である。同図に示すように、濃縮槽6は、一対の濃縮用電極2a,4aを有し、これら濃縮用電極2a,4aの間に電圧を印加することができるように構成されている。濃縮槽6では、塩化物イオンの捕集のみを行なっている。また、電解槽1は、一対の電解用電極2b,4bを有し、これら電解用電極2b,4bの間に電圧を印加することにより、水を電気分解する。
【0030】
水道水を電気分解すると、式(1)及び式(2)の反応が起き、陽極からは酸素が、陰極からは水素が発生する。
陽極:2HO→4H+O+4e- (1)
陰極:4HO+4e-→2H+4OH- (2)
【0031】
ここで、電極触媒として、白金・イリジウム(Pt・IrO2)を塗布した電極を用いることにより、式(3)に示すように、陽極で塩素が生成する。
陽極:2Cl-→Cl+2e- (3)
【0032】
塩素はpHにより、塩素、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)となる(式4、式5参照)。次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)は、殺菌力を有するものである。
陽極:Cl+HO→HClO+H+Cl- (4)
陽極:HClO→ClO-+H (5)
【0033】
式(3)の反応に至る前に、水道水中の塩化物イオンが陽極に引き寄せられることから、式(3)の反応が起こらないような電圧を印加することで、陽極表面に塩化物イオンを未反応のまま捕集することができる。
【0034】
続いて、図4を参照しながら、制御部24による第1電圧の決定手順を説明する。図4は、第1電圧を決定する手順を示すフローチャートである。図4に示すフローは、装置設置後の初回通電時に行ったり、定期的に行ったりするものである。
【0035】
ステップS11では、排出バルブ30を開いて、上流流路16から主流路17及びバイパス流路17を流れ、下流流路19から電解槽1を流れて排出流路23に至る流れを形成する。ステップS12では、電解槽1に設けられた一対の電解用電極2b,4bを利用して、水の電気伝導率を測定する。
【0036】
ステップS13では、測定された電気伝導率に基づいて、第1電圧を決定する。図5に、電気伝導率と第1電圧との関係の一例を示す。このような対応関係は、予め設定され、制御部24のメモリに格納されている。図5に例示するように、水の電気伝導率が低いほど、給水される水が含有する塩化物イオン濃度は低いものと想定される。
【0037】
ステップS14では、ステップS13にて決定された第1電圧V1をメモリに格納する。ステップS15では、排出バルブ30を閉じる。
【0038】
続いて図6及び図7を参照しながら、衛生洗浄装置100の運転モードについて説明する。図6は、局部洗浄モードにおける流路系統図であり、図7は、殺菌洗浄モードにおける流路系統図である。
【0039】
図6に示す局部洗浄モードは、使用者が排便後に人体局部を洗浄するために実行される運転モードである。排便後、図示しないリモコンに設けられた「おしり」スイッチ等を使用者が操作すると、制御部24は、まずモータ29を駆動させ、それまでケーシング101内に収納されていた洗浄ノズル14を大便器110のボウル部111内に進出させる。
【0040】
次に、制御部24は、洗浄バルブ28を開くことで、給水源12から上流流路16に水を流入させる。上流流路16を流れた水は、分岐部20において分流し、主流路17及びバイパス流路18に流入する。この分流により、バイパス流路18における水の流速は、上流流路16及び主流路17を流れる水の流速よりも小さくなるよう、各流路の径や長さが設定されている。分岐部20からバイパス流路18に流入する水は、バイパス流路18に設けられた濃縮槽6の濃縮用電極2a、4a近傍を流れる。
【0041】
主流路17及びバイパス流路18を流れた水は、その下流に設けられた合流部21で合流した後、下流流路19に流入する。下流流路19に流入した水は、電解槽1、分岐部22及び洗浄バルブ28の順に通過して洗浄ノズル14に到達し、洗浄ノズル14の先端に開設された吐水口141から吐出して人体局部の洗浄に使用される。
【0042】
この局部洗浄モードの実行中、制御部24は、図3に示した電解用電極2b、4bの間には電圧を印加することなく、濃縮用電極2a、4aの間に第1電圧を印加するよう制御する。これにより、バイパス流路18を流れる水に含まれる塩化物イオンが、陽極である濃縮用電極4aの表面に引き寄せられて捕集される。このとき濃縮用電極2a、4aの間に印加される第1電圧は、濃縮用電極4a表面に塩化物イオンを未反応のまま捕集できる程度の大きさに設定されている。
【0043】
上述したように、上流流路16を流れた水が分岐部20において分流することにより、バイパス流路18を流れる水の流速は、上流流路16及び主流路17を流れる水の流速よりも小さくなるよう構成されるため、濃縮用電極4a表面に塩化物イオンを効率よく捕集することができる。
【0044】
また、バイパス流路18は、上流流路16に対し約90度傾斜して連通しているため、上流流路16から分岐部20を通過してバイパス流路18に流入した水には、上記傾斜した流路を流れることで乱れが生じる。これにより、分岐部20に近い位置に設けられた濃縮槽6内の水の流れも乱れたものとなり、濃縮槽6の濃縮用電極4a表面に塩化物イオンが接近する機会が大きくなることから、塩化物イオンをさらに効率よく捕集することができる。
【0045】
さらに、主流路17及びバイパス流路18を流れた水は、その下流に設けられた合流部21で合流することから、給水源12から上流流路16に流入した水を、その流量を低下させることなく洗浄ノズル14の吐水口141から人体局部に向けて吐出させることができる。したがって、本実施形態の局部洗浄モードによれば、洗浄性能や使用者の洗浄感と、濃縮用電極4aにおける塩化物イオンの捕集とを高い次元で両立することが可能となる。
【0046】
図7に示す殺菌洗浄モードは、局部洗浄モードの実行後に実行される運転モードであり、次亜塩素酸を含む殺菌水により洗浄ノズル14の外表面を洗浄するために実行されるものである。局部洗浄モードの実行中に、図示しないリモコンに設けられた「停止」スイッチ等を使用者が操作すると、制御部24は、まず洗浄バルブ28を閉じて洗浄ノズル14の吐水口141からの水の吐出を停止する。次に、制御部24は、モータ29を駆動させ、それまで大便器110のボウル部111内に進出していた洗浄ノズル14を後退させる。
【0047】
後退した洗浄ノズル14がケーシング101内に収納されると、制御部24は、洗浄バルブ28を再び開き、給水源12から上流流路16に水を流入させる。上流流路16を流れた水は、分岐部20において分流し、主流路17及びバイパス流路18に流入する。分岐部20からバイパス流路18に流入する水は、バイパス流路18に設けられた濃縮槽6の濃縮用電極2a、4a近傍を通過する。
【0048】
主流路17及びバイパス流路18を流れた水は、その下流に設けられた合流部21で合流した後、下流流路19に流入する。下流流路19に流入した水は、電解槽1、分岐部22及び洗浄バルブ28の順に流れて洗浄ノズル14に到達し、洗浄ノズル14の先端に開設された吐水口141から吐出する。吐水口141から吐出した水は、上方に配置されたケーシング101のクリーニングカバー102で跳ね返り、その水で洗浄ノズル14自身の外表面の洗浄が行われる。
【0049】
このとき、制御部24は、図3に示した濃縮用電極2a、4aの間には電圧を印加していない。これにより、バイパス流路18を流れて濃縮槽6に流入し、濃縮用電極4a(陽極)近傍を流れる水によって、局部洗浄モードの実行中に濃縮用電極4a(陽極)表面に捕集されていた塩化物イオンが脱離し、下流側へと流される。したがって、バイパス流路18の濃縮槽6の下流側に、塩化物イオンを多量に含んだ水が流れて合流部21に向かうことになる。
【0050】
塩化物イオンを多量に含んだこの水は、合流部21において主流路17を流れてくる水と合流して下流流路19に流入し、さらに、下流流路19に設けられた電解槽1に流入する。
【0051】
このとき、制御部24は、図3に示した電解用電極2b、4bの間に電圧を印加している。したがって、電解用電極4b(陽極)では、上述の塩化物イオンを多量に含んだ水を用いて確実に次亜塩素酸を生成することができ、洗浄ノズル14自身の外表面を殺菌することができる。
【0052】
制御部24は、洗浄ノズル14の外表面を殺菌した後に、洗浄バルブ28を閉めるとともに、電解用電極2b、4b間への電圧印加を停止して殺菌洗浄モードを終了する。殺菌洗浄モードの実行により外表面が殺菌されることで、その後洗浄ノズルは清潔な状態を維持して次回の使用に備えることができる。
【0053】
本実施形態では、電解槽で生成した次亜塩素酸を含む殺菌水を、洗浄ノズルの吐水口から吐出し、洗浄ノズルの外表面の洗浄を行うよう構成されているが、本発明の実施形態はこれに限られるものではない。例えば、衛生洗浄装置のケーシング等に、洗浄ノズルのものとは別個の吐水口を設け、当該吐水口から大便器のボウル部に対し殺菌水を吐出するよう構成し、ボウル部の殺菌を行ってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 電解槽(電解部)
2,4 電極
6 濃縮槽(濃縮部)
10 流路系統
14 洗浄ノズル
17 主流路
18 バイパス流路
20 分岐部
21 合流部
22 排水流路
28 洗浄バルブ
30 排出バルブ
32 排出機構
100 衛生洗浄装置
110 大便器
141 吐水口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7