(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946037
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/10 20060101AFI20160621BHJP
B62D 57/024 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
B61B13/10
B62D57/024 N
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-176821(P2012-176821)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-34299(P2014-34299A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年2月10日、平成23年度千葉工業大学卒業論文発表会において発表
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000142791
【氏名又は名称】株式会社アトックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 完
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕姫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信明
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−305417(JP,A)
【文献】
特開昭63−116974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/10
B62D 57/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する壁面間の一方の壁面上を走行自在に構成される第1走行機構と、
前記第1走行機構に対して対向する位置に配置され、他方の壁面上を走行自在に構成される第2走行機構と、
前記第1走行機構の前方部に一方の端部を回動自在に連結し、前記第2走行機構の後方部に他方の端部を回動自在に連結して、弾力的に伸縮自在な第1直動機構と、
前記第1走行機構の後方部に一方の端部を回動自在に連結し、前記第2走行機構の前方部に他方の端部を回動自在に連結して、弾力的に伸縮自在な第2直動機構と、
を備えることを特徴とする走行装置。
【請求項2】
請求項1記載の走行装置であって、
前記第1直動機構は、球体継手を介して前記第1走行機構又は前記第2走行機構に連結され、
前記第2直動機構は、球体継手を介して前記第1走行機構又は前記第2走行機構に連結されることを特徴とする走行装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の走行装置であって、
前記第1直動機構及び前記第2直動機構は、各々エアシリンダで構成されることを特徴とする走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の点検、清掃などのために対向する壁面の間を走行可能な走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内径の異なる配管でも走行することができるように構成された走行装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のものでは、3つの走行機構を備え、各走行機構を直列に夫々接続する連結機構が設けられ、連結機構が備えるアームの角度を捩りばねとモータを用いて調節することにより、V字形状となる走行装置の高さを可変できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の走行装置は、配管内の堆積物や付着物などによって、内径や幅が比較的大きく狭まる部分が存在するとき、その部分を走行することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、配管内で堆積物や付着物などによって内径や幅が狭くなっている部分が存在しても、配管内等の対向する壁面間を走行可能な走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、対向する壁面間の一方の壁面上を走行自在に構成される第1走行機構と、前記第1走行機構に対して対向する位置に配置され、他方の壁面上を走行自在に構成される第2走行機構と、前記第1走行機構の前方部に一方の端部を回動自在に連結し、前記第2走行機構の後方部に他方の端部を回動自在に連結して、弾力的に伸縮自在な第1直動機構と、前記第1走行機構の後方部に一方の端部を回動自在に連結し、前記第2走行機構の前方部に他方の端部を回動自在に連結して、弾力的に伸縮自在な第2直動機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、走行装置が堆積物や付着物などによって内径や幅が狭くなっている部分が存在しても、第1直動機構及び第2直動機構を押し縮めながら、第1走行機構及び第2走行機構の前方側の間隔を狭めるようにして、第1走行機構及び第2走行機構が堆積物や付着物などを乗り越えるように走行することができる。また、第1走行機構及び第2走行機構が堆積物や付着物などを乗り越えた後は、第1直動機構及び第2直動機構が延びて第1走行機構及び第2走行機構の前方側の間隔を押し広げながら、対向する壁面に沿って走行することができる。
【0008】
[2]また、本発明においては、第1直動機構を球体継手を介して第1走行機構又は第2走行機構に連結し、第2直動機構を球体継手を介して第1走行機構又は第2走行機構に連結することが好ましい。かかる構成によれば、球体継手は比較的自由度が高いため、直動機構と走行機構との間で多少の捩れが生じたとしても連結部分が破損することを防止し、走行装置が配管内等の対向する壁面間をスムーズに走行することができる。
【0009】
[3]また、本発明の第1直動機構及び第2直動機構としては、ボールねじ機構を用いることが考えられる。ここで、第1直動機構及び第2直動機構としてボールねじ機構を用いた場合、内径や幅が狭くなっている部分を乗り越えるときに走行装置に加わる外力に対して、第1直動機構及び第2直動機構の伸縮応答性が比較的悪いという問題がある。
【0010】
この場合、第1直動機構及び第2直動機構としてエアシリンダを用いれば、気体の圧縮性によって第1直動機構及び第2直動機構を外力に対して応答性よく伸縮させることができ、走行装置をスムーズに走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本実施形態の走行装置を背面側から示す説明図。
【
図3】本実施形態の走行装置を側面側から示す説明図。
【
図4】本実施形態の走行装置の走行状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照して本発明の走行装置の実施形態を説明する。
図1から
図3に示すように、走行装置1は、対向する壁面間としての配管3内(
図4参照)を走行自在に構成される第1走行機構5と、第1走行機構5に対向するように配置された第2走行機構7と、エアシリンダで構成された、弾力的に伸縮自在な一対の第1直動機構9及び一対の第2直動機構11とを備える。ここで、本実施形態においては、配管3内の第1走行機構5が接触する部分が一方の壁面に該当し、配管3内の第2走行機構7が接触する部分が他方の壁面に該当する。
【0013】
第1走行機構5及び第2走行機構7は、夫々左右一対の無限軌道8(クローラ)を備えている。この無限軌道8は、夫々モータ(図示省略)を内蔵しており、図示省略した電源を介してモータ(図示省略)を駆動させることにより、無限軌道8を回動させて、第1走行機構5及び第2走行機構7は、前後方向に移動することができる。また、左右一対の無限軌道8を互いに逆方向となるように回動させることにより、第1走行機構5及び第2走行機構7を旋回させることもできる。
【0014】
無限軌道8は、
図2に示すように、配管3内での接地面積を出来るだけ増やせるように、配管の径方向外方に向かって広がるように傾斜させて設けられている。
【0015】
第1直動機構9及び第2直動機構11は、シリンダチューブ13と、基端にピストン(図示省略)を備えるピストンロッド15とを備える。ピストン(図示省略)は、シリンダチューブ13内に収容されている。シリンダチューブ13には、任意の空気圧を加えることができる図示省略した空気圧供給機構(コンプレッサ)が接続されている。空気圧供給機構から空気圧が加えられると、ピストン(図示省略)が押されて、ピストンロッド15がシリンダチューブ13から突出する。逆に、空気圧供給機構からの空気圧を低下させると、ピストン(図示省略)は、シリンダチューブ13の基端側に移動し、ピストンロッド15は、その基端側が次第にシリンダチューブ13に収容されていく。これにより、第1直動機構9及び第2直動機構11は、伸縮自在とされている。また、第1直動機構9及び第2直動機構11は、空気圧によって設定される所定値を超える力が加わるとシリンダチューブ13内の空気が抜けるように構成されている。これにより、第1直動機構9及び第2直動機構11は、弾力的に伸縮自在となる。
【0016】
一対の第1直動機構9のピストンロッド15の先端部(一方の端部)は、球体継手17を介して第1走行機構5の前方部に回動自在に連結される。球体継手17は比較的自由度が高いため、第1直動機構9と第1走行機構5との間で多少の捩れが生じたとしても連結部分が破損することを防止できる。
【0017】
一対の第1直動機構9のシリンダチューブ13の基端部13a(他方の端部)は、第2走行機構7の後方部に回動自在に連結される。第1直動機構9のシリンダチューブ13の基端部13aは、多少の捩れを許容できるようにある程度のガタを有するように第2走行機構7に連結してもよい。
【0018】
一対の第2直動機構11のシリンダチューブ13の基端部13a(一方の端部)は、第1走行機構5の後方部に回動自在に連結される。第2直動機構11のシリンダチューブ13の基端部13aは、多少の捩れを許容できるようにある程度のガタを有するように第1走行機構5に連結してもよい。
【0019】
第2直動機構11のピストンロッド15の先端部(他方の端部)は、球体継手17を介して第2走行機構7の前方部に回動自在に連結される。球体継手17は比較的自由度が高いため、第2直動機構11と第2走行機構7との間で多少の捩れが生じたとしても連結部分が破損することを防止できる。
【0020】
一対の第2直動機構11は、一対の第1直動機構9を横方向で挟むように配置されている。第1直動機構9及び第2直動機構11の合計4つによって、第1走行機構5と第2走行機構7とはバランスよく連結される。なお、本発明の走行装置の第1直動機構及び第2直動機構の本数は夫々2つに限定されず、用途や走行装置の構成等に基いて適宜設定すればよい。
【0021】
また、本実施形態の走行装置1は、無限軌道8のモータ、第1直動機構9、第2直動機構11、空気圧供給機構(図示省略)に指示信号を送信する制御部(図示省略)を備えている。制御部(図示省略)は、CPU、メモリ等により構成された電子ユニットであり、メモリに保持された制御用プログラムをCPUで実行することで、無限軌道8のモータ、第1直動機構9、第2直動機構11、空気圧供給機構(図示省略)を制御するように構成されている。
【0022】
無限軌道8のモータへの電源ケーブル(図示省略)、及び制御信号ケーブル(図示省略)、空気圧供給機構(図示省略)からの圧縮空気を第1直動機構9及び第2直動機構11に供給する圧縮空気供給ケーブル(図示省略)は束ねられている。本実施形態においては、第1直動機構9及び第2直動機構11のシリンダチューブ13が何れも後方側に位置している。このため、圧縮空気供給ケーブル(図示省略)が無限軌道8などと接触し難くすることができ、圧縮空気供給ケーブル(図示省略)の取り回しが容易となる。なお、走行装置1は、無線で遠隔操作するように構成してもよい。この場合、走行装置1は、バッテリを備え、空気圧供給機構も内蔵する必要がある。
【0023】
また、第1走行機構5又は第2走行機構7には、使用目的に応じて計測部、例えば、カメラ(撮像部)、超音波センサ、渦流センサ、距離計、ロボットアーム、洗浄部、研磨部、溶接部、重力センサ、ジャイロセンサなどを設けてもよい。
【0024】
本実施形態の走行装置1によれば、第1直動機構9と第2直動機構11とは、側面視で交差した状態となっており、空気圧供給機構(図示省略)から圧縮空気を供給して第1直動機構9及び第2直動機構11を延ばすことにより、パンタグラフのように、第1走行機構5と第2走行機構7との間の距離を任意に調整することができる。従って、配管3内で突っ張るようにして第1走行機構5及び第2走行機構7が配管3内に押し付けられる。これにより、本実施形態の走行装置1は、垂直方向に延びる配管3であっても上方に向かって移動することができる。
【0025】
また、
図4に示すように、配管3内で堆積物や付着物などによって内径が狭くなっている部分Aが存在しても、第1直動機構9及び第2直動機構11を押し縮めながら、第1走行機構5及び第2走行機構7の前方側の間隔を狭めるようにして、第1走行機構5及び第2走行機構7が堆積物や付着物などによって内径が狭くなっている部分Aを乗り越えるように走行することができる。
【0026】
また、第1走行機構5及び第2走行機構7が堆積物や付着物などによって内径が狭くなっている部分Aを乗り越えた後は、第1直動機構9及び第2直動機構11が延びて第1走行機構5及び第2走行機構7の前方側の間隔を押し広げながら、配管3内の内周壁に沿って走行することができる。
【0027】
また、一対の第1直動機構9のピストンロッド15の先端部(一方の端部)は、球体継手17を介して第1走行機構5の前方部に回動自在に連結され、第2直動機構11のピストンロッド15の先端部(他方の端部)は、球体継手17を介して第2走行機構7の前方部に回動自在に連結されている。これによって、走行装置1は配管3内をスムーズに走行することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、第1走行機構5及び第2走行機構7として、左右一対の無限軌道8を有するものを説明したが、本発明の第1走行機構及び第2走行機構は、これに限らない。例えば、無限軌道8に代えて、第1走行機構及び第2走行機構は、4つの車輪を備えていてもよい。この場合、2つの後輪をモータで駆動し、2つの前輪を舵角操作自在に構成してもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、第1直動機構9及び第2直動機構11をエアシリンダで構成しているが、本発明の第1直動機構及び第2直動機構は、これに限らない。例えば、油圧シリンダなどの他の流体シリンダやボールねじ機構を用いてもよい。但し、エアシリンダを用いれば、気体の圧縮性によって第1直動機構及び第2直動機構を外力に対して応答性よく伸縮させることができ、走行装置をスムーズに走行させることができる。また、油圧シリンダ等の液体圧を用いるシリンダの場合、液体が漏れることによって配管3内や走行装置1が汚れる虞があるが、エアシリンダを用いる場合には、仮に空気が漏れたとしても配管3内や走行装置1が汚れることはない。
【0030】
また、本実施形態においては、配管3内を走行する走行装置1として説明したが、本発明の走行装置の用途はこれに限らず、例えば、隣接する建物の壁と壁の間などの対向する壁面の間を走行させることもできる。
【0031】
また、本実施形態においては、球体継手17をピストンロッド15側にしか設けていないが、シリンダチューブ13側にも設けてもよい。また、球体継手17をシリンダチューブ13側にだけ設けてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…走行装置、3…配管、5…第1走行機構、7…第2走行機構、8…無限軌道、9…第1直動機構、11…第2直動機構、13…シリンダチューブ、13a…基端部、15…ピストンロッド、17…球体継手、A…内径が狭くなっている部分。