(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、建設される家屋は高気密高断熱性を備えたものが増加している。このような家屋は、断熱性を確保するために外気に接する壁、床、屋根等に板状断熱材や発泡樹脂、グラスウール等が取り付けられている。例えば
図10に示す木造軸組工法による家屋10は、布基礎11に土台12が設けられ、土台11の上に図示しない支柱が設けられるとともに、梁13と桁15が1階及び2階部分に各々縦横に架設されている。梁13や桁15及び柱等の軸組材の内側には、室内側の壁下地材である内壁板20が取り付けられ、図示しない壁紙等が貼られて仕上げられる。柱や梁13の室外側には、断熱材14が設けられた構造用合板の外壁下地材16が貼り付けられ、外壁下地材16の外側に胴縁を介して外壁材18が貼り付けられ通気可能に形成されている。
【0003】
さらに、室内の1階部分の床22には、大引き21間に断熱材17が設けられ、床下空間との断熱が図られ、大引き21上には根太23を介して床下地材24が敷設されている。構造用合板の床下地材24上には、畳25やその他の床仕上げ材が設けられている。1階の室内の天井部分には、天井材26が設けられている。
【0004】
2階部分の床22は、1階の梁13と桁15上に配置された根太23に床下地材24が敷設され、その上に床仕上げ材28が設けられている。また、2階の室内の天井部分には、天井材26が設けられ、その外側に断熱材27が一面に設けられ、天井裏との断熱を図っている。2階部分の屋根31には、垂木29が架設され、その上に構造用合板の屋根下地材19が設けられている。
【0005】
このような高気密高断熱性能の家屋は、断熱性を確保するために家屋内外の気密性が高いことから、各部屋及び屋内外の換気が必要であり、特許文献1に開示されているように、家屋の各部屋間を貫通した通気口等の通気手段を設けて、各部屋の換気を行うとともに、屋根や壁面に設けられた換気装置を利用して室内外の換気を行う構造を備えている。
【0006】
その他、家屋の居室間にまたがる通気ダクトを不要にして全館空調を行い、効率的な冷暖房を行う建築物として、特許文献2に開示されているような構造も提案されている。この建築物は、隣接する部屋の冷暖房をその部屋間の仕切り部の熱伝導手段により行うもので、ここでの熱伝導手段としては、特許文献2の実施例に、ファン装置やアルミや銅等の熱伝導性の高い材料が挙げられている。これにより、全館空調用の空気ダクトを設けなくても、隣接する部屋の冷暖房を行うことができるように構成している。
【0007】
また、特許文献3に開示されているように、建物内の複数の部屋や通路の全体を遮熱シートにより囲み、天井裏の断熱材と遮熱シートの間に静止空気層を設け、室内下地材と仕上げ材の間にも遮熱シートを設けて静止空気層を形成した建築物が提案されている。同様に特許文献4には、建築物の外壁の内側に、輻射熱を反射するアルミホイル等と、静止空気層を形成して、建築物内外の遮熱断熱を図った構造が提案されている。
【0008】
特許文献5には、建物の各部屋を防湿・熱反射シートで覆い、その外側に外気に通じる通気路を部屋の周囲に形成して、建物内の部屋の個別的な断熱構造を有した建築物も提案されている。さらに、特許文献6に開示されているように、間仕切り壁や構造用パネル、ドア等に使用する遮熱パネルであって、遮熱材が設けられているとともに通気路や通気口が形成されたものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1や
図10に示すような従来の高気密高断熱住宅は、家屋全体の外側部分の壁内に断熱構造を有して、屋外との断熱を図っているが、屋内の複数の部屋毎は、単に室内壁または扉や襖等で仕切られているだけで、各部屋間の遮熱断熱性能はないものであった。したがって、家屋全体で冷暖房を常時行う必要があり、個別の部屋の冷暖房のみで良い場合も、多くのエネルギーを消費して全館冷暖房を行っていた。また、このような高気密高断熱住宅でエアコン等により各部屋事に個別冷暖房を行う場合でも、隣接する部屋との間で熱の移動が多く、冷暖房効率を低下させるものであった。
【0011】
また、特許文献2に開示された家屋の構造の場合、隣接する部屋どうしの熱の移動を容易にして複数の部屋の冷暖房を行うもので、各部屋間の熱伝導が良いために、一部の部屋のみの暖冷房を行いたい場合も熱が隣の部屋に伝わり、冷暖房効率がかえって悪くなるものである。
【0012】
さらに、特許文献3,4に開示されたような遮熱シートを建物の外壁と内壁との間に設けたものも、遮熱シートが面した空間が、建物内の隣接する複数の部屋同士及び上下階で連通しており、静止空気の閉鎖空間を形成しても、連通した大きな空間内での対流と熱の輻射により熱交換が行われ、遮熱断熱性能が低下してしまうものであった。従って、上記の場合と同様に、一部の部屋のみの冷暖房を行いたい場合でも、熱が隣や上層の部屋に伝わり、冷暖房効率が悪くなるものであり、各部屋での個別冷暖房の熱効率については、考慮されていないものである。
【0013】
また、特許文献5に開示された遮熱シートを設けた構造の場合、遮熱シートの外側に通気路が形成され、外気が通過するため、遮熱シートの外側空間及び遮熱シート表面が外気温に近くなり、断熱性能が著しく低下するものである。従って、例えば暖房の場合も、遮熱シートの室外側の温度が外気温近くに低下し、遮熱シートや壁面を熱が伝導して、室内側の壁面温度が低くなり、遮熱シートと室内壁との間の断熱性能は著しく低くなるものであり、壁面温度が低いことにより室温が低下し、壁面から室内側への輻射熱も少ないことから室内での体感温度も低下する。しかも、通気路と室内壁との温度差により、結露の原因にもなる。同様に特許文献6に開示された遮熱パネルも、パネル内に通気路と通気口が設けられ、遮熱断熱性能が著しく損なわれているものであり、上記と同様の欠点がある。
【0014】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、高気密高断熱性能を有した建築物において、個別の部屋の熱の移動を抑え、遮熱断熱性能を向上させて、全体としてより冷暖房効率を高めることができる建築物の局所断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、建築物の内部空間の一部を構成するほぼ六面体の一つの
部屋空間を囲む壁と天井と床の構成材料に、輻射熱の伝搬を遮蔽する遮熱シートを設け、前記遮熱シートは、前記一つの
部屋空間に対面する前記構成材料の室内側に、前記一つの
部屋空間の開口部を除く各側面全面を覆うように設けられ、前記遮熱シートと対面した前記一つの
部屋空間の前記各側面に、前記各側面毎に密閉された閉鎖静止空気層が各々設けられ、前記壁は前記建築物の外側に位置した外壁下地材、及び前記建築物の室内壁であり、前記建築物の外壁と前記外壁下地材との間は胴縁を介して通気可能に形成され、前記外壁下地材
の室内側の面にはほぼ一面に断熱材が設けられ、前記断熱材の室内側に前記遮熱シートが設けられ、この遮熱シートの室内側に室内の内壁板が位置し、前記断熱材の室内側であって、前記遮熱シートの室外側及び室内側の
両方に前記閉鎖静止空気層が設けられ、前記室内壁の
両側の壁面の裏側にも
一対の前記遮熱シートが設けられ、前記室内壁の
各前記遮熱シートの室外側及び室内側の
両方に前記閉鎖静止空気層が設けられ、前記
一対の遮熱シートの間及び両外側の空間が前記閉鎖静止空気層を形成し、前記天井と前記床に設けられた前記遮熱シートにも、前記閉鎖静止空気層が対面して設けられ、前記天井のうち屋根裏に位置した天井に設けられた前記遮熱シートの室外側には断熱材が設けられ室内側には前記閉鎖静止空気層が設けられ、前記床のうち1階の床の前記遮熱シートの室外側には断熱材が設けられ室内側には前記閉鎖静止空気層が設けられ、前記一つの
部屋空間
の全面が、前記遮熱シートと前記閉鎖静止空気層により囲まれている建築物の局所断熱構造である。
【0016】
前記床に設けられた前記遮熱シートは、前記遮熱シートから繋がって又はその端部から別の遮熱シートの端部を重ね合わせて、前記外壁下地材に設けられた前記断熱材の室内側に配置されているもの
である。
【0017】
また、前記室内壁の一部に形成された前記開口部に設けられた建具の内側に、前記遮熱シートと前記閉鎖静止空気層が設けられている。
【0018】
前記遮熱シートは。その両面側に、前記閉鎖静止空気層が設けられていることが好ましい。さらに、前記建築物の屋根の内側に前記遮熱シートが設けられていると良いものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明の建築物の局所断熱構造は、高気密高断熱住宅等において、簡単な構造で、屋外及び個別の部屋間の赤外線や熱伝導による熱の移動を抑えて断熱効果を向上させ、建築物全体としてさらに冷暖房効率を高めることすることができるものである。特に、遮熱シートと閉鎖静止空気層により、室内外の熱の移動及び伝搬を遮蔽し、壁面の温度差を抑えて冷暖房効果を高めるとともに、壁面温度の差に起因した輻射熱による冷暖房効果の低下も抑えることも可能となる。これにより、快適な空調環境を得ることができるとともに、建築物の冷暖房費用を大幅に抑えることができ、エネルギーコストの削減にも貢献し、ひいては化石燃料の消費を抑えて地球環境の悪化を抑えることにも寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の第一実施形態の建築物である木造軸組工法による家屋の局所断熱構造を示す部分縦断面図である。
【
図2】この発明の第一実施形態の遮熱シートの例を示す概略分解斜視図である。
【
図3】この発明の第一実施形態の家屋内の局所断熱構造を示す部分縦断面図である。
【
図4】この発明の第一実施形態の局所断熱構造を設けた家屋内の1階部分の室内の平面図である。
【
図5】この発明の第二実施形態の家屋内の建具の局所断熱構造を示す部分縦断面図である。
【
図6】この発明の第三実施形態の局所断熱構造を設けた屋根を示す部分縦断面図である。
【
図7】この発明の第三実施形態の局所断熱構造を設けた他の構造の屋根を示す部分縦断面図である。
【
図8】この発明の第四実施形態の建築物である枠組壁工法による家屋の局所断熱構造を示す部分縦断面図である。
【
図9】この発明の第四実施形態の家屋内の局所断熱構造を示す部分縦断面図である。
【
図10】従来の断熱構造を備えた木造軸組工法による家屋を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1〜
図4は、この発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の建築物は、木造軸組工法による家屋30であって、布基礎11に土台12が設けられ、土台11の上に図示しない支柱が立設されているとともに、梁13と桁15が1階及び2階部分に各々縦横に架設されている。梁13や桁15及び柱等の軸組材の内側には、室内側の壁下地材である内壁板20が取り付けられ、図示しない壁紙等が貼られて仕上げられる。柱や梁13の室外側には、断熱材14が設けられた構造用合板の外壁下地材16が貼り付けられ、外壁下地材16の外側に胴縁を介して外壁材18が貼り付けられ、外壁材18の裏面で通気可能に形成されている。
【0022】
さらに、室内の1階部分の床22には、大引き21間に断熱材17が設けられ、床下空間との断熱が図られ、大引き21上には根太23を介して床下地材24が敷設されている。構造用合板の床下地材24上には、
図1、
図3に示す畳25や床仕上げ材28が設けられている。1階の室内の天井部分には、天井材26が設けられている。
【0023】
2階部分の床22は、1階の梁13と桁15上に配置された根太23に床下地材24が敷設され、その上に床仕上げ材28が設けられている。2階の室内の天井部分には、天井材26が設けられ、その外側に断熱材27が一面に設けられ、天井裏との断熱を図っている。2階部分の屋根31には、垂木29が架設され、その上に構造用合板の屋根下地材19が設けられている。
【0024】
この実施形態の家屋30は、
図1、
図3に示すように、土台12の室内側の大引き21及び断熱材17の表面には、遮熱シート32が、床下一面に敷設されている。遮熱シート32は、例えば
図2(a)に示すように、表裏にアルミニウム箔34が設けられ、アルミニウム箔34の内側に一対のポリエチレン(PE)シート35が配置され、ポリエチレンシート35間にポリエチレン繊維による布材33が設けられたシート状の遮熱材である。遮熱シート32は、輻射熱である赤外線を遮蔽するもので、赤外線輻射による熱の移動及び熱交換を抑えるもので、この発明では、輻射熱を遮断する意味で遮熱を用い、遮熱材も広義の断熱材として説明する。この実施形態では、遮熱シート32を複数の層構造とすることにより、輻射熱を遮るとともに熱伝導による熱の移動も抑えることができ、より高い遮熱断熱性能を持たせることができる。その他、遮熱シート32は、微細な透孔を有し透湿性のあるシート材でもよく、透孔のないものでも良い。また、遮熱シート32は、
図2(b)に示す3層構造でも良く、この場合、表裏のアルミニウム箔34とポリエチレンシート35から成る構造である。その他、アルミニウム箔34とポリエチレンシート35及び布材35の3層構造のシート材や、1層又は2層の構造でも良い。
【0025】
この実施形態の家屋30には、
図1、
図3に示すように、床下に敷設された遮熱シート32から繋がって、又は端部から別の遮熱シート32を追加する場合は、端部どうしを重ね合わせて、外壁下地材16の断熱材14の内側であって内壁板20の外側に、遮熱シート32が貼り付けられている。遮熱シート32は、外壁下地材16の内側全面に張り付けられ、家屋30を包むように設けられている。さらに、家屋30の1階及び2階部分の各々の天井材26の裏面全面にも、遮熱シート32が敷設されている。家屋30のほぼ六面体の一つの空間である各部屋36間の室内壁38の壁内側にも、
図3に示すように、各々の部屋36の内壁板20の裏面側に、遮熱シート32が各々貼り付けられている。これにより、家屋30の各部屋36内の六面体状の一空間が、遮熱シート32により六方の各側面が各々側面毎に覆われて囲まれた状態となる。特に、各部屋36間の室内壁38の両側の面の内側に各々遮熱シート32を設けることにより、より高い遮熱効果を得ることができ、各部屋36間の断熱性能を高めることができる。
【0026】
さらに、この実施形態の家屋30は、
図1、
図3に示すように、床下に敷設された遮熱シート32と床下地材24の間の空間は、遮熱シート32と床下地材24とで囲まれた薄い閉鎖空間の閉鎖静止空気層39が形成されている。閉鎖静止空気層39の四方の側縁部は、遮熱シート32を折り曲げて塞がれ、または図示しない軸組材や板材により閉鎖されされている。さらに閉鎖静止空気層39は、根太23により、複数の空間に区切られている。
【0027】
また、内壁板20と遮熱シート32及び、外壁下地材16と遮熱シート32の間の空間が、閉鎖静止空気層39として形成されている。この閉鎖静止空気層39の四方の側縁部は、土台12、梁13、床下地材24、天井材26、その他の軸組材や板材により閉鎖され、さらに胴縁47により、複数の空間に区切られている。従って、この部分の遮熱シート32の両面側に閉鎖静止空気層39が形成されている。また、天井材26と遮熱シート32の間も、同様の閉鎖静止空気層39が形成されている。
【0028】
この実施形態の家屋30によれば、外壁材18の内側に、断熱材14が気密状態を保って貼り付けられた高気密高断熱住宅において、簡単な構造で個別の部屋36の遮熱断熱効果も向上させることができる。特に、部屋36の六面が遮熱シート32と閉鎖静止空気層39により各面単位で個別に覆われて囲まれ、部屋36は、各部屋の一つの空間毎に遮熱断熱状態に形成される。即ち、閉鎖静止空気層39の空気層は外部との交流がなく、対流も制限されるので、熱伝導率の低い空気による断熱層が形成され、遮熱シート32により輻射熱の移動も遮断され、効果的な遮熱断熱状態を形成している。さらに、部屋36の四方の壁面と、1階の天井面及び2階の床面の遮熱シート32の両面に閉鎖静止空気層39が形成され、より高い遮熱断熱性能を発揮している。また、1階の床面と2階の天井面の遮熱シート32は、一方の側が閉鎖静止空気層39であり他方の側は、断熱材17,27が設けられているので、上記と同様に高い遮熱断熱性能を発揮している。これにより、実際に使用している部屋36のみを冷暖房した際に、遮熱シート32と閉鎖静止空気層39により外部との熱伝導、対流、輻射熱による熱交換が遮断され、効率の良い冷暖房が可能となる。
【0029】
例えば
図4に示すように、リビングダイニングキッチンである部屋36aと隣の和室36bとの間において、互いに隣接する各部屋36a,36bに面した室内壁38の裏側には、各部屋36a,36bの各々に面するように遮熱シート32を設け、その間の空間には閉鎖静止空気層39を形成し、さらに外壁18の内側にも断熱材14、遮熱シート32、閉鎖静止空気層39を形成することにより、部屋36の一つの空間単位で極めて高い遮熱断熱性能を得ることが可能となる。これにより、例えば
図4の各部屋36a,36bで、個別に異なる時間帯で冷暖房を行っても、隣の部屋や隣接する廊下等への熱の移動を最小限に抑えることができる。そして、家屋全体としての冷暖房効率も大幅に高めることができ、省エネルギーで快適な空調環境を得ることができる。
【0030】
次に、この発明の建築物の局所断熱構造の第二実施形態について、
図5を基にして説明する。この実施形態は、家屋30内に設けられる建具40内に遮熱シート32を貼り付けたものである。具体的には、
図5(a)に示すように、室内の扉42の両面の化粧板43の各裏面側に、遮熱シート32を貼り付ける。また、
図5(b)に示すように、和室に設けられる襖44の襖紙45の各裏面側に、遮熱シート32を貼り付ける。そして、遮熱シート32間の空間が、閉鎖静止空気層39となるように、四方の周囲を閉鎖する。これにより、家屋30内に設けられた開口部の建具40も、遮熱断熱性能を有した構造にすることができる。
【0031】
この構造により、家屋30の各部屋36の出入り部となる開口部の扉42や襖44の遮熱断熱性能を大幅に向上させることができ、個別の部屋36の冷暖房効果をさらに向上させることができる。
【0032】
次に、この発明の建築物の局所断熱構造の第三実施形態について、
図6、
図7を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態は、家屋30の屋根31の内側に、遮熱シート32を設けたもので、例えば、
図6に示す屋根構造の場合、屋根31の垂木29の上に構造用合板の屋根下地材19が貼り付けられ、屋根下地材19の表面にアスファルトルーフィング46が貼り付けられて防水性を持たせている。さらにその上に、遮熱シート32を一面に貼り付けて、遮熱構造とし、遮熱シート32の表面に瓦48が並べられている。また、屋根31は、軒先31aの裏面側の通気口41から垂木29間に通気路が形成され、屋根裏空間の換気及び放熱が図られている。
【0033】
また
図7に示す屋根構造の場合、屋根31の垂木29の上に構造用合板の屋根下地材19が貼り付けられ、屋根下地材19の表面にアスファルトルーフィング46が貼り付けられて防水性を持たせ、その上に瓦48が並べられている。垂木29の室内側には、遮熱シート32が一面に貼り付けられ、遮熱構造とし、遮熱シート32の表面に、発泡ウレタン等の断熱材37が一面に設けられ、断熱構造としている。この構造の屋根31も、軒先31aの裏面側の通気口41から垂木29間で通気路が形成され、屋根裏空間の放熱が図られている。
【0034】
この実施形態の構造の屋根31は、垂木29間に通気性があり、換気及び放熱効果を得ているとともに、遮熱シート32により、瓦48からの太陽光による輻射熱を遮断することができる。そして、家屋30内の室内36の冷暖房効果をより高めることができる。
【0035】
次に、この発明の建築物の局所断熱構造の第四実施形態について、
図8、
図9を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態は、木造の枠組壁工法による家屋50の側壁部を形成する壁パネル52の室外側に遮熱シート32を貼り付け、壁パネル52内を閉鎖静止空気層39としたものである。遮熱シート32の外側には、胴縁を介して外壁材18が貼り付けられる。壁パネル52には、断熱材37が内側に設けられ、室内側の面が壁下地材の内壁板20となり壁紙等の仕上げ材が貼り付けられる。
【0036】
この家屋50の1階の床22の部分は、土台12及び大引き21の上面側に床パネル54が貼り付けられ、床パネル54の表面に、床仕上げ材28が貼り付けられている。床パネル54の裏面側には断熱材17が設けられ、土台12及び大引き21と床パネル54の間に遮熱シート32が一面に貼り付けられている。床パネル54内は、閉鎖静止空気層39として形成されている。2階部分の床22も、床パネル56が設けられて、一階の壁パネル52とともに矩形の構造体により部屋36の室内空間を形成している。床パネル56内は、閉鎖静止空気層39として形成されている。床パネル56の表面側には、壁パネル52がさらに立設され、2階部分の構造体を構成し、2階部分の部屋36を形成している。2階の壁パネル52の上方には天井パネル58が設けられ、家屋50の2階部分の部屋37の室内空間を形成している。天井パネル58には、上下面の内側である裏面に各々遮熱シート32が貼り付けられ、室内側の輻射熱を遮断するとともに屋根31からの輻射熱も遮断している。天井パネル58内は、閉鎖静止空気層39として形成されている。
【0037】
同様に、
図9に示すように、パネル材の室内壁60には、各室内36に面した一対の内壁板20の内側である裏面に遮熱シート32が設けられている。室内壁60内は、閉鎖静止空気層39として形成されている。
【0038】
この実施形態の構造の家屋50は、枠組壁工法による家屋50においても、各下地材16,19,24や、内壁板20の裏面側に、遮熱シート32と閉鎖静止空気層39を設けることにより、部屋36の一つの空間単位で極めて高い遮熱断熱性能を得ることが可能となり、家屋50内の局所的な部屋36毎に、適宜の冷暖房を行うことができ、室内36の冷暖房効果をより高めることができる。
【0039】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、外壁下地材の室外側に遮熱シートが設けられていてもよく、遮熱シートにより、建築物内の各部屋やその他の空間を囲む局所的な断熱構造を形成するものであれば、その構造や用途は問わないものである。
【実施例】
【0040】
次に、この発明の建築物の局所断熱構造の一実施例について、以下に説明する。標準的な家屋で高気密高断熱住宅の場合、冷暖房に必要な平均消費エネルギーは、200kW/3.3m
2といわれている。従って、例えば40×3.3m
2の家屋の場合、8000kWのエネルギーが消費される。これに対して、本願発明の遮熱シートを設けた家屋の場合、消費エネルギーは、実験的に350kW/3.3m
2である。従って例えば、3室(3×4×3.3m
2)のみを冷暖房したとすると、4200kWの消費エネルギーでよく、効率的な冷暖房が可能と言える。
【0041】
次に、
図4に示す家屋30のリビングダイニングキッチンである部屋36aについて、遮熱シート32の有無での熱貫流率(W/m
2・K)の違いを計算した。部屋36aは、26.5m
2の広さで、
図1、
図3に示す構造で遮熱シート32及び閉鎖静止空気層39を備えた場合と、備えない場合とで計算を行った。外壁材18と内壁板20との間の熱貫流率は、遮熱シート32がない場合0.57W/m
2・Kであるのに対して、設けた場合は0.43W/m
2・Kであった。室内壁38については、
図3に示す構造で、遮熱シート32がない場合2.38W/m
2・Kであるのに対して、設けた場合は0.52W/m
2・Kであった。天昇部分についても、遮熱シート32がない場合0.19W/m
2・Kであるのに対して、設けた場合は0.16W/m
2・Kであった。床22については、遮熱シート32がない場合2.44W/m
2・Kであるのに対して、設けた場合は0.83W/m
2・Kであった。この結果、冬季の1ヶ月あたりの灯油代は、遮熱シート32がない場合19975円であったのに対して、設けた場合は12345円に下げることができた。
【0042】
以上より、遮熱シート32とそれによる閉鎖静止空気層39を設けることにより、家屋の部屋ごとの冷暖房を行う場合の熱効率を高めることができ、冷暖房費を抑えることができる。