(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946063
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】緑化資材の製造方法及び製造用金型装置、並びに製造装置
(51)【国際特許分類】
A01G 1/00 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
A01G1/00 303E
A01G1/00 301C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-182697(P2012-182697)
(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公開番号】特開2014-39489(P2014-39489A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2014年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100974
【弁理士】
【氏名又は名称】香本 薫
(72)【発明者】
【氏名】森下 照久
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−185115(JP,A)
【文献】
特開2002−119130(JP,A)
【文献】
特開2005−261314(JP,A)
【文献】
特開平11−113386(JP,A)
【文献】
特開2009−039084(JP,A)
【文献】
特開2008−154491(JP,A)
【文献】
特開2002−078416(JP,A)
【文献】
米国特許第05087400(US,A)
【文献】
特表平02−502879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00−17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形空間の底面に多数の通気穴が形成された下金型を複数個、水平面内の円形の移動経路に沿って等角度間隔で設置し、かつ前記移動経路に沿って前記角度ずつ間欠的に回転移動させ、各停止位置で充填、プレス及び蒸気加熱、取り出しの各工程を順次行うようにしたもので、前記充填工程では育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を下金型の成形空間に充填し、前記プレス及び蒸気加熱工程では、前記材料を押圧面に多数の通気穴が形成された上金型でプレスして圧縮し、その状態で上金型及び下金型の通気穴を通して前記成形空間に水蒸気を流通させ、これによりプレス圧縮した前記材料を蒸気加熱して熱融着性繊維を溶融接着させ、前記取り出し工程では、下金型の成形空間から成形品を取り出すことを特徴とする緑化資材の製造方法。
【請求項2】
成形空間の底面に押出治具が通る押出穴と多数の通気穴が形成された下金型が複数個、水平面内の円形の移動経路に沿って等角度間隔で設置され、かつ前記移動経路に沿って前記角度ずつ間欠的に回転移動し、各下金型の成形空間内に下金型の通気穴と合致する通気穴が形成された押出プレートが昇降自在に配置され、各停止位置で充填、プレス及び蒸気加熱、取り出しの各工程を順次行うようにしたもので、充填工程を行う停止位置に、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を前記成形空間に充填する充填装置が配置され、プレス及び蒸気加熱工程を行う停止位置に、中空で押圧面に多数の通気穴が形成され、前記成形空間に充填された材料をプレスして圧縮する上金型が配置され、前記上金型がその中空内部に加圧水蒸気を供給する水蒸気供給装置に接続されており、上金型でプレスした状態で上金型の通気穴を通して前記成形空間に水蒸気を流入させ、かつ下金型の通気穴を通して流出させ、これによりプレス圧縮した前記材料を蒸気加熱して熱融着性繊維を溶融接着させ、取り出し工程を行う停止位置に、下金型の下方に配置され昇降可能とされた押出治具が配置され、これが上昇して押出プレートを押し上げ、下金型の成形空間から成形品を取り出すことを特徴とする緑化資材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料をプレス圧縮及び蒸気加熱して成形する、緑化資材の製造方法及び製造用金型装置、並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を加熱し、又は加熱式平板プレス機で加圧加熱し、熱融着性繊維を溶融接着させ、固形の緑化資材を製造することが記載されている。原料として、ピートモスを主体とする育苗培土に、熱融着性繊維としてポリエステル繊維を混合した材料が好適に用いられる。
【0003】
一方、
図6に従来の緑化資材の製造装置を示す。この製造装置は、直列に配置されたプレス装置1と加熱装置2からなる。
プレス装置1は、箱状の成形空間を有する下金型3と、下金型3を載せて搬送するコンベア4と、図示しない駆動源により昇降する上金型5からなる。下金型3の底面3aには通気穴が形成されている。下金型3の成形空間に、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料6を充填し、これをコンベア4上の所定位置に置き、上金型5を下降させて、前記材料6をプレス圧縮する。続いて上金型5を上昇させた後、コンベア4を作動させて下金型3を加熱装置2に送り込む。
【0004】
加熱装置2はトンネル炉式であり、トンネル(図示せず)内に多数の下金型3を連続的に搬送するコンベア7が設置され、コンベア6上の下金型3を上下から挟むように蒸気管8,9が設置されている。蒸気管8,9は共通の加圧蒸気源に連通し、蒸気管8は下方に向く多数の噴射口、蒸気管9は上方に向く多数の噴射口を有する。前記トンネルに沿って搬送される下金型3は、上下の蒸気管8,9から高温の水蒸気を噴射され、これにより下金型3内の材料が加熱され、熱融着性繊維が溶融接着する。下金型3が前記トンネルから出ると、成形空間内の材料6が冷却し、固形の成形品(緑化資材)ができる。下金型3の成形空間から成形品が取り出された後、前記成形空間に再び前記材料が充填され、プレス装置1に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−58339号公報
【特許文献2】特開2002−119130号公報
【特許文献3】特開2004−65150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の緑化資材の製造装置には、次のような問題があった。
(1)加熱装置2では下金型3に上下方向から高温の水蒸気が吹き付けられるが、材料内に高温の水蒸気が十分浸透しないため加熱効率が悪い。そのため、材料の中心部に熱融着性繊維の融点に達しない部分が生じ、その結果、成形品(緑化資材)の固化強度が不十分であるか、必要な固化強度を得るために熱融着性繊維の添加量を増やす必要がある。
(2)加熱装置2はトンネルの両端からの蒸気の漏れ(蒸気ロス)が多い。
(3)加熱効率が悪いことからトンネルが長く、その長さに応じて多数の下金型3を用意する必要がある。
【0007】
本発明は、上記従来装置の問題点に鑑みてなされたもので、加熱効率を高め、材料全体を高温に加熱できるようにすること、トンネル炉式で生じていた蒸気ロスを減少すること、及び従来のように多数の下金型を必要としないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る緑化資材の製造方法は、成形空間の底面に多数の通気穴が形成された下金型の前記成形空間に、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を充填し、前記材料を押圧面に多数の通気穴が形成された上金型でプレス圧縮し、その状態で上金型及び下金型の通気穴を通して前記成形空間に水蒸気を流通させ、これによりプレス圧縮した前記材料を蒸気加熱して熱融着性繊維を溶融接着させた後、下金型の成形空間から成形品(緑化資材)を取り出すことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る緑化資材の製造方法は、成形空間の底面に多数の通気穴が形成された下金型を複数個、水平面内の円形の移動経路に沿って等角度間隔で設置し、かつ前記移動経路に沿って前記角度ずつ間欠的に回転移動させ、各停止位置で充填、プレス及び蒸気加熱、取り出しの各工程を順次行うようにしたもの(ロータリー式)であり、前記充填工程では育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を下金型の成形空間に充填し、前記プレス及び蒸気加熱工程では、前記材料を押圧面に多数の通気穴が形成された上金型でプレス圧縮し、その状態で上金型及び下金型の通気穴を通して前記成形空間に水蒸気を流通させ、これによりプレス圧縮した前記材料を蒸気加熱して熱融着性繊維を溶融接着させ、前記取り出し工程では、下金型の成形空間から成形品を取り出すことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る緑化資材製造用金型装置は、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を充填する成形空間を有し、前記成形空間の底面に多数の通気穴が形成された下金型と、中空で押圧面に多数の通気穴が形成され、前記成形空間に充填された材料をプレス圧縮する上金型と、前記上金型の中空内部に連通し、前記中空内部に加圧水蒸気を供給する水蒸気供給装置を備え、上金型でプレスした状態で上金型の通気穴を通して前記成形空間に水蒸気を流入させ、かつ下金型の通気穴を通して流出させ、これによりプレス圧縮した前記材料を蒸気加熱して熱融着性繊維を溶融接着させることを特徴とする。
【0011】
上記緑化資材製造用金型装置は、必要に応じてさらに、下金型の下方に配置され昇降可能とされた押出治具と、前記成形空間内に配置され昇降自在とされた押出プレートを備える。この場合、下金型の成形空間の底面に押出治具が通過する押出穴が形成され、押出プレートに下金型の通気穴と合致する通気穴が形成される。前記押出治具を上昇させて押出プレートを押し上げ、これにより下金型の成形空間から成形品を取り出すことができる。
【0012】
本発明に係る緑化資材の製造装置は、成形空間の底面に押出治具が通る押出穴と多数の通気穴が形成された下金型が複数個、水平面内の円形の移動経路に沿って等角度間隔で設置され、かつ前記移動経路に沿って前記角度ずつ間欠的に回転移動し、各下金型の成形空間内に下金型の通気穴と合致する通気穴が形成された押出プレートが昇降自在に配置され、各停止位置で充填、プレス及び蒸気加熱、取り出しの各工程を順次行うようにしたもの(ロータリー式)であり、充填工程を行う停止位置に、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を前記成形空間に充填する充填装置が配置され、プレス及び蒸気加熱工程を行う停止位置に、中空で押圧面に多数の通気穴が形成され、前記成形空間に充填された材料をプレス圧縮する上金型が配置され、前記上金型がその中空内部に加圧水蒸気を供給する水蒸気供給装置に接続されており、上金型でプレスした状態で上金型の通気穴を通して前記成形空間に水蒸気を流入させ、かつ下金型の通気穴を通して流出させ、これによりプレス圧縮した前記材料を蒸気加熱して熱融着性繊維を溶融接着させ、取り出し工程を行う停止位置に、下金型の下方に配置され昇降可能とされた押出治具が配置され、これが上昇して押出プレートを押し上げ、下金型の成形空間から成形品を取り出す。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、材料を上下金型でプレス圧縮し、その状態で上金型及び下金型の通気穴を通して成形空間(材料中)に高温の水蒸気を流通させるので、加熱効率が高く、材料全体を蒸気加熱することができる。このため、材料全体が短時間で熱融着性繊維の融点に達し、成形品(緑化資材)の固化強度が上がる。そして、高価な熱融着性繊維の量を従来より減らしても、従来の成形品(緑化資材)と同程度の固化強度を得ることができ、コストダウンを図ることができる。また、従来のトンネル式のような蒸気ロスがなく、加熱効率も高いので、エネルギーコストを大幅に低減することができる。
【0014】
本発明に係る製造方法及び装置をロータリー式で実施する場合でも、下金型は円形の移動経路に沿って配置した数(例えば4個)だけ用意すればよく、従来方法及び装置のように、トンネルの長さに対応して多数の下金型を用意する必要がなく、金型コストの低減が可能である。
本発明に係る金型装置及び製造装置において、押出治具及び押出プレートを設置した場合、金型の成形空間から成形品(緑化資材)を自動的に取り出すことができ、従来(手作業で取り出し)に比べて作業効率が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る緑化資材製造装置(ロータリー式)の斜視図(下金型に関する部分のみ略図で図示)である。
【
図2】同装置の下金型の平面図(a)及び側面図(b)、同押出プレートの平面図(c)及び側面図(d)である。
【
図3】同装置の上金型の側面図(a)、及びそのA−A断面図である。
【
図4】同装置の作動(プレス及び蒸気加熱工程)を時系列的に説明する簡略化した断面図である。
【
図5】同装置の作動(取り出し工程)を時系列的に説明する簡略化した断面図である。
【
図6】従来の緑化資材製造装置の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1〜5を参照して、本発明に係る緑化資材製造方法、同装置、及び同製造用金型装置について、具体的に説明する。
図1に示すように、本発明に係る緑化資材製造装置(ロータリー式)において、計4個の下金型11が十字形フレーム12の各端部に取り付けられ、図示しない駆動源により十字型フレーム10が中心点Oの周囲を一方向に間欠回転するのに伴い、水平面内を円形の移動経路に沿って間欠的に回転移動する。下金型11は前記移動経路に沿って等角度間隔(90°)で設置され、かつ1回の間欠移動の角度が前記角度(90°)と一致する。
図1において、4つの下金型11はそれぞれ停止位置I〜IVに停止している。
【0017】
下金型11は略直方形の箱形形状をなし、
図2(a),(b)に示すように、4つの側面12〜15と底面16からなり、その内部が成形空間となっている。底面16に後述する押出治具が通る押出穴17、多数の小さい通気穴18、及び切頭正四角錐形の複数個の突起19が形成されている(
図1においていずれも図示省略)。通気穴18は、緑化資材の材料の通過がほぼ防止される程度の大きさである。突起19は、緑化資材に種子やポット苗の植え付けのための凹みを形成するためのものである。
【0018】
各下金型11の成形空間内に、
図2(c),(d)に示す略長方形の押出プレート21が昇降自在に配置される(
図1において図示省略)。押出プレート21には、多数の小さい通気穴22と、下金型11の底面16に形成された突起19が嵌る嵌入穴23が形成されている。通気穴22は下金型11の底面16に形成された通気穴18と合致する(押出プレート21が下金型11の底面16上に位置するとき、通気穴22と通気穴18が上下に連続する)。
【0019】
図1の各停止位置I〜IVにおいて、充填工程(停止位置I)、プレス及び蒸気加熱工程(停止位置II)、及び取り出し工程(停止位置III)が順次行われ、停止位置IVはアイドル位置である。
停止位置Iには、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料を下金型11の成形空間に充填する図示しない充填装置が配置されている。
【0020】
停止位置IIには、
図3に示す上金型24が設置され、図示しない駆動機構により昇降可能とされている。上金型24は中空で略直方体の閉じた箱形形状をなし、4つの側面25〜28と上面29、及び底面(押圧面)30からなり、その平面視の輪郭は下金型11の成形空間の輪郭よりやや小さい。押圧面30に多数の通気穴31が形成され、側面25に蒸気供給管32が接続している。蒸気供給管32は、上金型24の中空内部に加圧された高温の水蒸気を供給する図示しない水蒸気供給装置に接続されている。なお、前記水蒸気供給装置は停止位置IIに配置する必要はない。
停止位置IIIには、下金型11の下方に配置され、図示しない昇降機構により昇降可能とされた押出治具34(
図5参照)が配置されている。押出治具34は下金型11に形成された押出穴17を通って昇降する。
【0021】
続いて、
図4,5を参照して、上記緑化資材製造装置の作動の一例を工程順に説明する。
(1)充填工程
(a)前記充填装置により、停止位置Iに停止した下金型11の成形空間に、育苗培土に熱融着性繊維を混合した材料33が充填される(
図4(a)参照)。なお、押上プレート21は、自重により下降して、下金型11の底面16に面接触している。従って、材料33は押上プレート21の上に充填される。
(b)所定のタイミングで下金型11が間欠移動を開始する。
【0022】
(2)プレス及び蒸気加熱工程
(a)次に下金型11が停止位置IIに停止すると上金型24が下降し、下金型11の成形空間に入って材料33をプレスし圧縮する(
図4(a)→(b))。
(b)プレス圧縮した状態のまま、前記水蒸気供給装置から高温の加圧水蒸気が、蒸気供給管32を通って上金型24の中空内部に供給され、次いで加圧水蒸気が押圧面30の通気穴31を通って下金型11の成形空間内に流入し、材料33の間を通って下方に流動し、押出プレート21の通気穴22及び下金型11の底面16の通気穴18を通って流出する(
図4(b))。下金型11の成形空間内に流入し、同成形空間内(材料33内)を流通する高温の水蒸気は、プレス圧縮された材料33を効率的に蒸気加熱し、熱融着性繊維を溶融接着させる。なお、
図4(b)において、水蒸気の流動路(一部のみ)を矢印で示している。
(c)所定時間経過後、上金型24が上昇し、前記水蒸気供給装置からの加圧水蒸気の供給が止まる(
図4(c))。
(d)所定のタイミングで下金型11が間欠移動を開始する。
【0023】
(3)取り出し工程
(a)次に下金型11が停止位置IIIに停止すると、押出治具34が上昇し、下金型11の底面16の押出穴17を通して押出プレート21の下面に当接し、押出プレート21及び成形品35を押し上げ、成形品35が下金型11の成形空間から出たところで停止する(
図5(a)→(b))。
(b)停止位置IIIに配置された突き出し部材36が前進して、成形品35を搬出台36上に突き出す(
図5(c))。なお、成形品35の下面には、下金型11の底面に形成された突起19に対応して、図示しない凹みが形成されている。
(c)続いて、突き出し部材36が後退し、同時に押出治具34及び押出プレート21が下降し、さらに押出治具34は下金型11の底面16の押出穴17から下方に抜け出し、押出プレート21は下金型11の底面16上に置き残される。
(d)所定のタイミングで下金型11が間欠移動を開始する。
【符号の説明】
【0024】
11 下金型
16 下金型の底面
17 押出穴
18,22,31 通気穴
21 押出プレート
24 上金型
30 上金型の底面(押圧面)
32 蒸気供給管
33 材料
34 押出治具
35 成形品(緑化資材)