【文献】
BALINTOVA, J. et al.,Anthraquinone as a Redox Label for DNA: Synthesis, Enzymatic Incorporation, and Electrochemistry of Anthraquinone-Modified Nucleosides, Nucleotides, and DNA,Chemistry - A European Journal,2011年,Vol. 17, No. 50,pp. 14063-14073
【文献】
JAGER, S. et al.,A Versatile Toolbox for Variable DNA Functionalization at High Density,Journal of the American Chemical Society,2005年,Vol. 127, No. 43,pp. 15071-15082
【文献】
SEELA, F. et al.,Pyrrolo[2,3-d]pyrimidine Nucleosides: Synthesis and Antitumor Activity of 7-Substituted 7-Deaza-2'-Deoxyadenosines,Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids,2000年,Vol. 19, No. 1 & 2,pp. 237-251
【文献】
CROW, F. W. et al.,Fast atom bombardment combined with tandem mass spectrometry for the determination of nucleosides,Analytical Biochemistry,1984年,Vol.139, No. 1,pp. 243-262
【文献】
BERGSTROM, D. E. et al.,Pyrrolo[2,3-d]pyrimidine nucleoside antibiotic analogs. Synthesis via organopalladium intermediates derived from 5-mercuritubercidin,Journal of Organic Chemistry,1981年,Vol. 46, No. 7,pp. 1423-1431
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体、デアザプリンヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド誘導体及びプローブ等について詳細に説明する。
【0011】
本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、下記式(I)又は(II)で示される化合物である。
【化6】
[式中、環A
1及び環A
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、C
6〜C
18芳香環であり、
X
1及びX
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、
Y
1及びY
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、C
1〜C
10アシル基、C
1〜C
10アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基(−C(=O)−NR
aR
bで表され、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。)、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアミノ基(−NR
aR
bで表され、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。)、水酸基、チオール基及びC
1〜C
10アルキル基からなる群より選ばれる置換基であり、
m及びnは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、0、1又は2であり、
R
1及びR
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基であり、
但し、環A
1がフェニル基であり、X
1が炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、mが0であり、且つ、R
1が水素原子である場合を除く。]
【0012】
本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、7−デアザプリン骨格のC7位に炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を介して蛍光分子を導入するように設計されている。本発明の好ましいデアザプリンヌクレオシド誘導体は、周辺環境たとえば極性環境の変化に応答して蛍光発光波長が変化するため、周辺環境(極性環境)の変化を色の変化によって識別するプローブ等として利用可能である。
【0013】
本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体において、7−デアザプリン塩基と結合する五炭糖は、2−デオキシリボースでもリボースでもよく、R
1及びR
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基である。本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体をヌクレオチドに導入してDNA型のプローブとして用いるときは、R
1及びR
2は水素原子が好ましく、RNA型のプローブとして用いるときは、R
1及びR
2は水酸基が好ましい。
【0014】
X
1及びX
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)である。X
1及びX
2は、共役構造をより高めるため、炭素−炭素三重結合が好ましい。
【0015】
環A
1及び環A
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、C
6〜C
18芳香環である。前記芳香環は、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を介してデアザプリン塩基との間に共役構造を形成できるものであれば特に制限されない。このような芳香環としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基及びピレニレン基などが挙げられる。中でも、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基及びフェナントリレン基が好ましく、ナフチレン基が特に好ましい。
【0016】
環A
1及び環A
2は、置換基Y
1又はY
2を一つ又は二つ有していてもよい。
置換基Y
1及びY
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、C
1〜C
10アシル基、C
1〜C
10アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基(−C(=O)−NR
aR
bで表され、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。)、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアミノ基(−NR
aR
bで表され、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。)、水酸基、チオール基及びC
1〜C
10アルキル基からなる群より選ばれる。
中でも、置換基Y
1及びY
2としては、電子吸引性の基であることが好ましい。置換基Y
1及びY
2が電子吸引性の基であると、二重結合又は三重結合を介して、デアザプリン塩基部分と置換基Y
1又はY
2を有する環A
1及び環A
2との間で、共役電子の「push-pull」構造が形成されるため、蛍光発光波長の変化をより大きくすることができ、蛍光発光の色による識別をより容易にすることができる。具体的には、C
1〜C
10アシル基、C
1〜C
10アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基(−C(=O)−NR
aR
bで表され、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。)、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基及びチオール基からなる群より選ばれる置換基が好ましい。特にシアノ基が好ましい。
置換基Y
1及びY
2は、それぞれ、前記芳香環のいずれの位置で結合していてもよい。共役構造がより安定化することから、少なくとも一つは炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合に対してパラ位で結合していることが好ましい。
【0017】
m及びnは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、0、1又は2であり、1が好ましい。
【0018】
なお、本明細書において、「C
1〜C
10アシル基」は、C
1〜C
10アルキルカルボニルが好ましく、C
1〜C
6アルキルカルボニルがより好ましく、C
1〜C
4アルキルカルボニルがさらに好ましい。アシル基の例としては、制限するわけではないが、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ベンゾイル、メチルベンゾイル、ジメチルベンゾイル、メチルエチルベンゾイル、ジエチルベンゾイル、ベンジルカルボニル等が挙げられる。
【0019】
本明細書において、「C
1〜C
10アルコキシカルボニル基」は、C
1〜C
6アルコキシカルボニル基が好ましく、C
1〜C
4アルコキシカルボニル基がより好ましい。アルコキシカルボニル基の例としては、制限するわけではないが、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル等が挙げられる。
【0020】
本明細書において、「カルボン酸アミド基」は、−C(=O)−NR
aR
bで表される基である。式中、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基であり、水素原子又はC
1〜C
6アルキル基が好ましく、水素原子又はC
1〜C
4アルキル基がより好ましい。
【0021】
本明細書において、「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0022】
本明細書において、「C
1〜C
10アルキル基」は、線状でもよいし、枝分かれでもよく、C
1〜C
6アルキル基が好ましく、C
1〜C
4アルキル基がより好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等が挙げられる。
【0023】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」は、−NR
aR
bで表される。式中、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。置換基を有していてもよいアミノ基の例としては、制限するわけではないが、アミノ基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
本発明の好ましいデアザプリンヌクレオシド誘導体としては、下記式I(a)又はII(a)で示される化合物が挙げられる。式中のY
1及びY
2の定義は上記と同じである。
【0026】
上記のとおり、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、デアザプリン骨格のC7位に二重結合又は三重結合を介して蛍光分子を導入し共役構造を形成させることで、蛍光発光波長が変化するように設計されている。蛍光発光波長の変化の程度は、周囲の極性環境によって異なる。本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体を利用することで、周囲の極性環境の違いを蛍光発光の色の変化によって識別することが可能である。例えば、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、DNA又はRNA中の局所的な極性環境の違いにより対面塩基の種類を識別する遺伝子検出用のプローブとして利用することができる。また、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、タンパク質又は細胞内の局所的な極性環境の調査用プローブとして利用することができる。
【0027】
本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、7−デアザアデノシン又は7−デアザグアノシンなどのC7位に蛍光分子を導入することにより簡便に製造することができる。
【0028】
本発明の式(I)で示されるデアザプリンヌクレオシド誘導体は、例えば、下記のスキームAに従って製造することができる。
【化8】
【0029】
<工程(a)>
まず、化合物1を溶媒に溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、ヨウ化銅、トリメチルシリルアセチレン、トリエチルアミンを加えて、40〜60℃の範囲内で1〜4時間撹拌する。その後、反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物2を得る。
トリメチルシリルアセチレンは、化合物1に対して等モルないしやや過剰に用いることが好ましく、その使用量は、化合物1に対して1.2〜1.5(モル倍量)が好ましい。
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)及びヨウ化銅は、触媒量で用いればよく、化合物1に対して0.01〜0.1(モル倍量)が好ましい。
トリエチルアミンは、化合物1に対して5〜10(モル倍量)の範囲で用いることが好ましい。
溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などを用いることができる。
【0030】
<工程(b)>
次に、化合物2を溶媒に溶かし、テトラブチルアンモニウムフルオリドを加えて、室温(20〜25℃)で1〜3時間撹拌する。その後、分液操作を行い、反応物を抽出した有機層を減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物3を得る。
テトラブチルアンモニウムフルオリドの使用量は、化合物1に対して1.1〜1.2(モル倍量)の範囲で用いることが好ましい。
溶媒は、工程(a)で用いたものと同じものを用いることができる。
【0031】
<工程(c)>
次に、化合物3と化合物4とを溶媒に溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、ヨウ化銅、トリエチルアミンを加えて、50〜60℃の範囲内で1〜4時間撹拌する。その後、反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的の化合物(式(I’)で示される化合物)を得る。
化合物3は、化合物4に対して等モルないしやや過剰に用いることが好ましい。なお、化合物4は、公知の化合物であり、Synthesis, June 1996, 726-730(非特許文献2)記載の方法により簡便に製造することができる。また市販品を用いてもよい。例えば、2Daybiochem Co., Ltd.,社製「7-Deaza-7-iodo-2’-deoxyadenosine」などを用いることができる。
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)及びヨウ化銅は、触媒量で用いればよく、化合物4に対して0.01〜0.1(モル倍量)が好ましい。
トリエチルアミンは、化合物4に対して5〜10(単位:モル倍量)の範囲で用いることが好ましい。
溶媒は、工程(a)で用いたものと同じものを用いることができる。
【0032】
上記いずれの反応も窒素又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
【0033】
なお、上記では、式(I)においてX
1が炭素−炭素三重結合である化合物の製造方法を記載したが、式(I)においてX
1が炭素−炭素二重結合である化合物の製造方法は、工程(a)においてトリメチルシリルアセチレンに代えて、テトラビニルすず(IV)を用いることを除いて、スキームAと同様である。
【0034】
本発明の式(II)で示されるデアザプリンヌクレオシド誘導体は、下記のスキームBに従って製造することができる。
【化9】
【0035】
スキームBの工程(a)及び(b)はそれぞれ、スキームAの工程(a)及び(b)と同じである。スキームBの工程(c)は、化合物4に代えて、化合物4’を用いることを除いてスキームAの工程(c)と同様である。なお、化合物4’は、公知の化合物であり、Synthesis, June 1996, 726-730(非特許文献2)記載の方法により簡便に製造することができる。また市販品を用いてもよい。例えば、2Daybiochem Co., Ltd.,社製「7-Deaza-7-iodo-2’-deoxyguanosine」などを用いることができる。
【0036】
本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、上記のように7−デアザヌクレオシドを利用して簡便な方法で製造することができるので、実用性が高い。
【0037】
次に、本発明のヌクレオチド誘導体について述べる。
本発明のヌクレオチド誘導体は、上述した本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体にリン酸がエステル結合したものであり、下記式(III)又は(IV):
【化10】
[式中、環A
1及び環A
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、C
6〜C
18芳香環であり、
X
1及びX
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、
Y
1及びY
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、C
1〜C
10アシル基、C
1〜C
10アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基(−C(=O)−NR
aR
bで表され、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。)、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアミノ基(−NR
aR
bで表され、R
a及びR
bはそれぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又はC
1〜C
10アルキル基である。)、水酸基、チオール基及びC
1〜C
10アルキル基からなる群より選ばれる置換基であり、
m及びnは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、0、1又は2であり、
R
1及びR
2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基であり、
s及びtは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1、2又は3であり、
但し、環A
1がフェニル基であり、X
1が炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、mが0であり、且つ、R
1が水素原子である場合を除く。]
で示される。
【0038】
式(III)又は(IV)におけるA
1、A
2、X
1、X
2、Y
1、Y
2、R
1、R
2、m、nは、式(I)又は(II)におけるA
1、A
2、X
1、X
2、Y
1、Y
2、R
1、R
2、m、nと同義であり、好ましい例も同じである。
s及びtはそれぞれ1、2又は3であるが、1又は3が好ましく、ポリヌクレオチド誘導体に容易に導入できることから3が特に好ましい。
【0039】
本発明のヌクレオチド誘導体(III)又は(IV)の一リン酸体(s,t=1)は、通常、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体(I)又は(II)をトリメチルホスファイトなどの溶媒に溶解し、0℃でオキシ塩化リンを加えて反応させた後に水を加えることで簡単に合成することができる。また、三リン酸体(s,t=3)は、水を加える前にトリブチルアンモニウムピロリン酸(二リン酸)を加えるステップを加えることを除いて一リン酸体と同様にして合成することができる。
【0040】
また、本発明のヌクレオチド誘導体(III)又は(IV)の三リン酸体は、PCR法を用いてDNAに容易に導入することができ、ポリヌクレオチドにおいて少なくとも1つのヌクレオチドが本発明のヌクレオチド誘導体で置換された本発明のポリヌクレオチド誘導体を得ることができる。あるいは、実施例2に示したように、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体にN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを反応させ、その後、触媒量の4,4’−ジメトキシトリチルクロリドを加えて反応させて得られる化合物を、トリエチルアミンの存在下、更に2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロアミジトと反応させて、得られたアミジト体を直接DNA自動合成機にかけることで、本発明のポリヌクレオチド誘導体を得ることができる。
【0041】
本発明において、ポリヌクレオチド誘導体はオリゴヌクレオチド誘導体であってもよい。本発明のオリゴヌクレオチド誘導体の塩基数は特に制限されなく、例えば2から1000が好ましく、2から200がより好ましく、2から100が特に好ましい。
【0042】
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、DNA中の局所的な極性環境の違いを利用して対面塩基の種類を識別する塩基識別型蛍光核酸塩基(遺伝子検出用プローブ)として、あるいは、タンパク質又は細胞内の局所的な極性環境の調査用のプローブとして用いることができる。
【0043】
本発明のプローブを標的DNAとハイブリダイズさせフルマッチしたときの極性環境の変化による前記プローブの蛍光発光の色の違いで標的DNAの対面塩基を識別することができる。
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0045】
下記スキーム1に従って本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体を合成した。
【化11】
【0046】
化合物(2a)の製造
化合物(1a)(500mg, 2.41mmol)を無水DMF(5ml) に溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(27.9mg, 0.024mmol)、ヨウ化銅(4.6mg, 0.024mmol)、トリメチルシリルアセチレン(409μl, 2.89mmol)、トリエチルアミン(0.5ml) を加えて、60℃で1時間撹拌した。その後、反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ)で精製して化合物(2a)(0.4207g, 77.67%)を得た。
【0047】
化合物(2b)の製造
化合物(1b)(500mg, 2.15mmol)を無水DMF(5ml)に溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(24.9mg, 0.021mmol)、ヨウ化銅(4.1mg, 0.021mmol)、トリメチルシリルアセチレン(365μl, 2.58mmol) 、トリエチルアミン(0.5ml)を加えて、60℃で1時間撹拌した。その後、反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して化合物(2b)(0.5068g, 94.35%)を得た。
【0048】
化合物(2c)の製造
化合物(1c)(100mg, 0.34mmol) を無水DMF(5ml) に溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(38.7mg, 0.034mmol )、ヨウ化銅(6.4mg, 0.034mmol)、トリメチルシリルアセチレン(71.1μl, 0.50mmol ) 、トリエチルアミン(0.5ml) を加えて、60℃で1時間撹拌した。その後、反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して化合物(2c)(0.100g, quantitative)を得た。
【0049】
化合物(3a)の製造
化合物(2a)(400mg, 1.78mmol)をTHF(10ml)で溶かし、テトラブチルアンモニウムフルオリド( 557μl, 1.96ml)を加えて、室温で3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料の消失を確認した後、分液操作を行い(酢酸エチル/10% HCl水)の条件で反応物を抽出した有機層を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ)で精製して化合物(3a)(0.2699g, 94.58%) を得た。
【0050】
化合物(3b)の製造
化合物(2b)(453mg, 1.81mmol)をTHF(17ml)で溶かし、テトラブチルアンモニウムフルオリド(620μl, 2.18ml) を加えて、室温で2時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料の消失を確認した後、分液操作を行い(酢酸エチル/10% HCl水)の条件で反応物を抽出した有機層を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1) で精製して化合物(3b)(0.3211g, 99.18%) を得た。
【0051】
化合物(3c)の製造
化合物(2c)(100mg, 0.374mmol) をTHF(8ml)で溶かし、テトラブチルアンモニウムフルオリド( 161μl, 1.12ml) を加えて、室温で3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料の消失を確認した後、分液操作を行い(酢酸エチル/10% HCl水)の条件で反応物を抽出した有機層を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1) で精製して化合物(3c)(0.0928g, quantitative) を得た。
【0052】
化合物(5a)の製造
化合物(4)(100mg, 0.36mmol)と化合物(3a)(42.1mg, 0.43mmol)をDMF(5ml)で溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(42.1mg, 0.036mmol) 、ヨウ化銅(2.1mg, 0.010mmol)、トリエチルアミン(5ml) を加えて、60℃で1時間撹拌した。反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=1:10) で精製して化合物(5a)(0.1343g, 91.99%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 2.24 (ddd, J = 2.6, 5.8, 13.1 Hz, 1H), 2.54 (m, 1H, overlapped with DMSO), 3.52-3.64 (complex, 2H), 3.86 (m, 1H), 4.38 (m, 1H), 5.09 (m, 1H), 5.31 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 6.54 (m, 1H), 6.87 (br, 2H), 7.57-7.60 (complex, 2H), 7.66-7.69 (complex, 2H), 7.94-7.97 (complex, 4H), 8.23 (s, 1H)
【0053】
化合物(5b)の製造
化合物(4)(150mg, 0.39mmol)と化合物(3b)(84.8mg, 0.478mmol) をDMF(5ml)で溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(46.0mg, 0.04mmol)、ヨウ化銅 (7.6mg, 0.04mmol)、トリエチルアミン(0.5ml)を加えて、60℃で1時間撹拌した。反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (メタノール:クロロホルム=1:30) で精製して化合物(5b)(0.1400g, 84.00%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 2.24 (ddd, J = 2.8, 6.0, 13.2 Hz, 1H), 2.54 (m, 1H, overlapped with DMSO), 3.55-3.63 (complex, 2H), 3.86 (m, 1H), 4.38 (m, 1H), 5.12 (m, 1H), 5.32 (d, J = 4.1 Hz, 1H), 6.54 (dd, J = 6.0, 7.8 Hz, 1H), 6.88 (br, 2H), 7.82-7.86 (complex, 2H), 7.98 (s, 1H), 8.09-8.14 (complex, 2H) 8.18 (s, 1H), 8.34 (m, 1H), 8.61 (m, 1H)
【0054】
化合物(5c)の製造
化合物(4)(50mg, 0.13mmol)と化合物(3c)(28.5mg, 0.15mmol)をDMF(5ml)で溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(76.8mg, 0.07mmol) 、ヨウ化銅(12.6mg, 0.07mmol)、トリエチルアミン(0.3ml)を加えて、55℃で1時間撹拌した。反応溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=1:10) で精製して化合物(5c)(0.0490g, 84.98%)を得た。
1H-NMR (CD
3OD, 400 MHz) δ 2.35 (ddd, J = 2.7, 6.0, 13.4 Hz, 1H), 2.66 (ddd, J = 5.9, 8.0, 13.4 Hz, 1H), 3.05 (s, 6H), 3.73 (dd, J = 3.6, 12.1 Hz, 1H), 3.81 (dd, J = 3.3, 12.1 Hz, 1H), 4.02 (m, 1H), 4.53 (m, 1H), 6.51 (dd, J = 6.0, 8.0 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.22 (dd, J = 2.6, 9.1 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 1.6, 8.6 Hz, 1H), 7.61 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.66-7.68 (complex, 2H), 7.85 (m, 1H), 8.11 (s, 1H)
【実施例2】
【0055】
下記スキーム2に従って本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体をDNA鎖に導入した。
【化12】
【0056】
化合物(6a)の製造
化合物(5a)(180mg, 0.449mmol)をDMF(5ml)で溶かし、DMFジエチルアセタール(95μl, 0.585mmol)を加えて、60℃で2時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、反応溶媒を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=1:30 )で精製して化合物(6a)(0.2033g, 99.40%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 2.28 (m, 1H), 2.98 (ddd, J = 5.1, 9.2, 13.1 Hz, 1H), 3.07 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 3.76 (m, 1H), 3.96 (dd, J = 1.6, 12.4 Hz, 1H), 4.18 (m, 1H), 4.71 (m, 1H), 6.27 (dd, J = 5.6, 9.2 Hz, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.42-7.48 (complex, 2H),7.54 (dd, J = 1.5, 8.5 Hz, 1H), 7.71-7.79 (complex, 3H), 8.00 (m, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.68 (s, 1H)
【0057】
化合物(6b)の製造
化合物(5b)(120mg, 0.282mmol)をDMF(5ml)で溶かし、DMFジエチルアセタール(55μl, 0.338mmol)を加えて、60℃で2時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、反応溶媒を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=1:30 )で精製して化合物(6b)(0.1248g, 95.00%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 2.29 (m, 1H), 3.04 (ddd, J = 5.1, 9.4, 13.4 Hz, 1H), 3.14 (s, 3H), 3.22 (s, 3H), 3.78 (m, 1H), 3.98 (dd, J = 1.7, 12.6 Hz, 1H), 4.19 (m, 1H), 4.74 (m, 1H), 6.26 (dd, J = 5.6, 9.4 Hz, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.58 (dd, J = 1.4, 8.4 Hz, 1H), 7.65 (dd, J = 1.5, 8.3 Hz, 1H), 7.81 (complex, 2H), 8.01 (m, 1H), 8.17 (m, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.76 (s, 1H)
【0058】
化合物 (6c) の製造
化合物(5c)(60mg, 0.135mmol) をDMF(3ml)で溶かし、DMFジエチルアセタール(26μl, 0.162mmol)を加えて、60℃で2時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、反応溶媒を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=1:10 )で精製して化合物(6c)(0.0640g, 95.08%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 2.27 (m, 1H), 3.07-3.15 (complex, 10H), 3.22 (s, 3H), 3.80 (m, 1H), 4.01 (dd, J = 1.7, 12.6 Hz, 1H), 4.21 (m, 1H), 4.79 (m, 1H), 6.24 (dd, J = 5.6, 9.5 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.16 (dd, J = 2.6, 9.1 Hz, 1H), 7.35 (s, 1H), 7.46 (dd, J = 1.6, 8.6 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.88 (m, 1H), 8.43 (s, 1H), 8.74 (s, 1H)
【0059】
化合物(7a)の製造
化合物(6a)(200mg, 0.439mmol)を無水ピリジン(8ml)に溶解し、4,4'-ジメトキシトリチルクロリド(193mg, 0.571mmol)を加えて、室温で6時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、減圧留去して分液操作を行い(酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液)、有機層を回収して繰り返し減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム/トリエチルアミン=30:1/10ml)で精製し、化合物(7a)(0.3101g, 93.17%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 2.50 (ddd, J = 4.4, 6.4, 13.6 Hz, 1H), 2.59 (m, 1H), 3.12 (s, 3H), 3.24 (s, 3H), 3.36 (dd, J = 4.8, 10.2 Hz, 1H), 3.44 (dd, J = 4.4, 10.2 Hz, 1H), 3.72 (s, 6H), 4.11 (m, 1H), 4.61 (m, 1H), 6.76 (m, 1H), 6.82 (m, 2H), 6.85 (m, 2H), 7.19 (m, 1H), 7.30 (m, 2H), 7.34 (m, 2H), 7.36 (m, 2H), 7.44-7.52 (complex, 4H), 7.54 (dd, J = 1.6, 8.5 Hz, 1H), 7.57 (s, 1H), 7.76-7.83 (complex, 3H), 7.99 (m, 1H), 8.48 (s, 1H), 8.75 (s, 1H)
【0060】
化合物(7b)の製造
化合物(6b)(100mg, 0.208mmol)を無水ピリジン(10ml)に溶解し、4,4'-ジメトキシトリチルクロリド(91.6mg, 0.270mmol)を加えて、室温で6時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、減圧留去して分液操作を行い(酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液)、有機層を回収して繰り返し減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム/トリエチルアミン=30:1/10ml)で精製し、化合物(7b)(0.1800g, quantitative)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 2.52 (ddd, J = 4.4, 6.3, 13.5 Hz, 1H), 2.60 (m, 1H), 3.16 (s, 3H), 3.25 (s, 3H), 3.37-3.45 (complex, 2H), 3.72 (s, 6H), 4.12 (m, 1H), 4.64 (m, 1H), 6.75 (m, 1H), 6.82 (m, 2H), 6.85 (m, 2H), 7.19 (m, 1H), 7.30 (m, 2H), 7.35 (m, 2H), 7.37 (m, 2H), 7.45-7.47 (complex, 2H), 7.60-7.65 (complex, 3H), 7.82-7.84 (complex, 2H), 7.98 (m, 1H), 8.20 (m, 1H), 8.48 (s, 1H), 8.79 (s, 1H)
【0061】
化合物(7c)の製造
化合物(6c)(80mg, 0.160mmol)を無水ピリジン(6ml)に溶解し、4,4'-ジメトキシトリチルクロリド(70mg, 0.209mmol)を加えて、室温で6時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、減圧留去して分液操作を行い(酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液)、有機層を回収して繰り返し減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (メタノール:クロロホルム/トリエチルアミ=25:1/10ml)で精製し、化合物(7c)(0.1032g, 80.53%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 2.48 (ddd, J = 4.6, 6.4, 13.6 Hz, 1H), 2.58 (m, 1H), 3.07 (s, 6H), 3.10 (s, 3H), 3.22 (s, 3H), 3.35 (dd, J = 5.0, 10.1 Hz, 1H), 3.43 (dd, J = 4.6, 10.1 Hz, 1H), 3.72 (s, 6H), 4.10 (m, 1H), 4.59 (m, 1H), 6.74 (m, 1H), 6.82 (m, 2H), 6.85 (m, 2H), 6.88 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.16 (m, 1H), 7.20 (m, 1H), 7.30 (m, 2H), 7.34 (m, 2H), 7.36 (m, 2H), 7.42-7.46 (complex, 3H), 7.51 (s, 1H), 7.57 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.84 (m, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.71 (s, 1H)
【0062】
化合物(8a)の製造
化合物(7a)(70mg, 0.0923mmol)を無水アセトニトリル(1.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(1ml) 、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト(150μl)を加えて、室温で1時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、分液操作を行い(酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液)、有機層を回収して繰り返し減圧留去した。残渣を無水アセトニトリル600μlで溶解し、コスモナイスフィルターSでろ過した。ろ液を減圧留去し、目的の化合物(8a)を粗生成物として得た。DNA合成には化合物(8a)の粗生成物をそのまま用いた。
【0063】
化合物(8b)の製造
化合物(7b)(100mg, 0.1277mmol)を無水アセトニトリル(2.0ml)に溶解し、トリエチルアミン(1ml) 、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト(150μl) を加えて、室温で1時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、分液操作を行い(酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液)、有機層を回収して繰り返し減圧留去した。残渣を無水アセトニトリル600μlで溶解し、コスモナイスフィルターSでろ過した。ろ液を減圧留去し、目的の化合物(8b)を粗生成物として得た。DNA合成には化合物(8b)の粗生成物をそのまま用いた。
【0064】
化合物(8c)の製造
化合物(7c)(60mg, 0.0749mmol)を無水アセトニトリル(2.0ml)に溶解し、トリエチルアミン(1ml) 、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト(150μl)を加えて、室温で1時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、分液操作を行い(酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液)、有機層を回収して繰り返し減圧留去した。残渣を無水アセトニトリル600μlで溶解し、コスモナイスフィルターSでろ過した。ろ液を減圧留去し、目的の化合物(8c)を粗生成物として得た。DNA合成には化合物 (8c) の粗生成物をそのまま用いた。
【0065】
DNA合成
得られた化合物(8a)、(8b)及び(8c)をそれぞれ、アセトニトリル600μlに溶解し、DNA自動合成機(製造元:アプライドバイオシステムズ社、型番:3400 DNAシンセサイザー)を用いてDNA鎖へ導入した。
【実施例3】
【0066】
[1]蛍光スペクトルの測定
実施例2で得られた化合物 (5b)及び(5c)について、それぞれ、各種溶媒(メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、2−プロパノール(2-prOH)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(AcOEt)、クロロホルム(CHCl
3)、水(water))に溶解したときの蛍光スペクトル(λmax)及びその変化量(Δλem max)を次の手順に従って測定した。
化合物(5b)及び(5c)を各溶媒に溶解させ、濃度10μM(全量1ml)に調製した。600μlを石英セルに移し、分光蛍光光度計(製造元:島津製作所、型番:RF-5300PC)を用いて蛍光スペクトル(λmax)を測定した。また、溶媒ごとのλmaxから変化量(Δλem max)を算出した。
測定結果を
図1及び2のグラフ及び表(表1A及び2A)にそれぞれ示す。参考として、C8位置換塩基誘導体及びTetrahedron Letters 52 (2011) 4726-4729(非特許文献3)記載の化合物についても同様の方法で各種溶媒に溶解したときの蛍光スペクトルの変化を観察した。測定結果を
図3〜6のグラフ及び表(表3A〜6A)にそれぞれ示す。
【0067】
図1及び2のグラフ及び表に示されるとおり、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体(5b)及び(5c)をそれぞれ各種溶媒に溶解すると、溶媒の種類(極性環境)に応じて蛍光発光波長が変化した。特に化合物(5b)では、蛍光発光波長の変化をより大きくすることができた。これは、化合物(5b)が置換基Y
1に電子吸引性のシアノ基を有しており、三重結合を介して、デアザプリン塩基とシアノ基を有するビフェニル環との間で、共役電子の「push-pull」構造が形成されるため、極性環境の変化に応答して蛍光発光波長の変化をより効果的にすることができるためであると考えられる。
C8位置換塩基誘導体である化合物(C1)、(C2)及び(C3)、さらにはTetrahedron Letters 52 (2011) 4726-4729(非特許文献3)記載の化合物(C4)を用いた場合にも、極性環境の変化に応答して蛍光発光波長が変化した。
【0068】
[2]DNA高次構造の熱安定性の評価
Tm値(融解温度:melting temperature)は、特定の条件下における固有のDNA高次構造の熱安定性の指標である。実施例2で得られた本発明の化合物(8b)及び(8c)をそれぞれDNA鎖に導入してなるオリゴヌクレオチドDNA(ODN1(X)、X = 5b, 5c)に各種相補鎖(N = A,G,C,T)を加えたときのTm値及びその変化量ΔTmを次の手順に従って測定し、DNA二重らせん構造の熱安定性を評価した。
濃度2.5μMに調製したDNA溶液を8連マイクロセルに移し、紫外可視分光光度計(製造元:島津製作所、型番:UV-2550)を用いて4〜90℃の範囲で測定を行い、中線法を用いてTm値を算出した。また、天然オリゴヌクレオチドDNAのTm値をもとに、変化量ΔTmを算出した。
測定結果を
図1及び2の表1B及び表2Bにそれぞれ示す。参考として、C8位置換塩基誘導体及びTetrahedron Letters 52 (2011) 4726-4729(非特許文献3)記載の化合物についても同様の方法でTm値及びその変化量ΔTmを測定した。測定結果を
図3〜6の表3B〜表6Bにそれぞれ示す。
【0069】
なお、本測定に用いたオリゴヌクレオチドDNAの塩基配列は下表に示したとおりである。
【表1】
【0070】
表1B及び2Bに示されるとおり、本発明の化合物(5b)及び(5c)をそれぞれDNA鎖に導入したときは、Tm値の変化量が小さく、天然の核酸塩基と同程度のDNA二重鎖安定性を示した。特に、本発明の化合物(5b)をDNA鎖に導入した場合、相補鎖の対面塩基とマッチしたとき(すなわちODN1(5b)/ODN2(T)のとき)のTm値の変化量は0であり、天然の核酸塩基と同じDNA二重鎖安定性を示した。一方、表3B〜6Bに示されるとおり、比較例化合物(C1)〜(C4)を用いた場合はTm値の変化量が大きく、DNAの二重らせん構造を不安定化した。
【0071】
以上の結果に示されるとおり、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体は、周囲の極性環境の違いに応答して蛍光発光波長を変化させることができ、しかもDNAの二重らせん構造を不安定化することもないため、本発明のデアザプリンヌクレオシド誘導体をDNA中の識別したい塩基の対面に導入したプローブを作製し、対面塩基とのマッチ−ミスマッチの違いによる周辺極性環境の変化を利用することで、目的とする塩基の種類を蛍光発光の色の違いで識別することができる。本発明のプローブは、発光強度ではなく、蛍光発光の色の違いで識別することができるので、検査用キットとして一般の人にも利用しやすい。また、周囲の極性の程度を色で示すことができるので、タンパク質や細胞内の局所的な極性環境の調査を目的とするプローブとしても利用することができる。