(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946173
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】プラグカバー
(51)【国際特許分類】
H01R 13/622 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
H01R13/622
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-101958(P2012-101958)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-229265(P2013-229265A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(72)【発明者】
【氏名】水除 弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 富雄
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−030492(JP,U)
【文献】
実開昭60−029359(JP,U)
【文献】
特開2003−282176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数の凹凸が形成されたリングを回転させることでコンセントへの着脱を行うプラグを覆うプラグカバーであって、
前記プラグカバーは、
前記プラグの筐体を覆う大きさであり、弾性部材により形成されていて、少なくとも前記プラグの筐体に対して向かい合う二方向に形成されるカバー部と、
前記カバー部内に形成され、前記プラグの筐体を形成する円筒状の部分に形成されていて、その円筒状の部分の直径と略同じ幅の切欠き部分、または、前記プラグの筐体の端部から導出されるコードに形成されていて、そのコードの直径と略同じ幅の切欠き部分により回転可能に装着される装着部と、
前記装着部を前記プラグに装着し、前記カバー部を二方向から押さえた場合に、前記カバー部の内側の少なくとも前記リングに対向する部分が前記リングの外周面の複数の凹凸に密着することで摩擦力を生じる接触部と、
を備えることを特徴とするプラグカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属などの硬質の材料で構成されているプラグを覆うプラグカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
病院や福祉施設などに設置されるナースコールシステムは、ナースステーションに設置されるナースコール親機と、病室の出入口近傍の廊下側に設置され、ナースコール親機に接続される廊下灯と、病室内の壁面に設置され、廊下灯に接続されるウォールユニットと、ウォールユニットに接続され、患者により使用されるナースコール子機とを備えている。
【0003】
ウォールユニットは、その表面にコンセントを備えており、このコンセントにナースコール子機のコードの先端に設けられたプラグを取り付けることで、患者がナースコール子機によってナースコール親機に呼び出しを行うことができる。ここで、ナースコール親機は、ナースコール子機からの呼び出しを受けると報知を行う。また、ナースコール子機のプラグは、ウォールユニットのコンセントに対して着脱自在となっている。
【0004】
このようなナースコール子機としては、握り押しボタンやハンド形子機などがある。ここで、握り押しボタンは、呼出ボタンによって構成される呼出操作部を備えており、単に呼び出し専用であり、通話機能を持たない。また、ハンド形子機は、呼出ボタンによって構成される呼出操作部に加えて、マイクロホンおよびスピーカーを内蔵しており、ハンド形子機自体が通話機能を持っている。
【0005】
ところで、上述したようなナースコールシステムにおいて、ナースコール子機のプラグの外装として、金属製などの硬質の材料が用いられることがある。
図5は、一般的な金属製プラグ10の外観を示す図である。同図によれば、金属製プラグ10は、円筒状の金属製の筐体11、筐体11の先端に設けられ、ウォールユニットに設けたコンセントに挿入される先端部12、筐体11に対して回転自在であり、ウォールユニットに設けたコンセントの外周部分にねじ込むことで、金属製プラグ10をウォールユニットに固定するリング13、筐体11の他端から導出され、金属製プラグ10とナースコール子機などの機器とを接続するためのコード14を備えて構成されている。
【0006】
ここで、
図5(A)に示すように、筐体11を側面方向から見ると、筐体11の先端部分には、筐体11の円筒状部分よりも小径の凹部11aが形成されており、さらに先端の部分には、筐体11の円筒状部分と同等の径を持つ凸部11bが形成されている。また、
図5(B)に示すように、筐体11を正面方向から見た場合に、筐体11の先端部12には、ウォールユニットのコンセントに設けたピンを受け入れる穴12a、12bが形成されている。リング13は、内周にらせん状の溝が形成されており、その内径は凸部11bよりも大きく凹部11aよりも小さく形成されている。
【0007】
これにより、リング13は、凹部11aの範囲において
図5(A)中左右方向に移動可能となる。また、リング13は、凸部11bにより
図5(A)中左方に抜け落ちることがなくなる。また、リング13の外周部分には、リング13を回し易くするための溝が形成されている。この溝により、リング13の外周部分には凹凸が形成され、この凹凸により、リング13の外周部分を回す指が滑り難くなる。
【0008】
このように構成された金属製プラグ10をウォールユニットに取り付けると、金属製プラグ10の筐体11が壁面から突出するので、その近くに居る患者や医療従事者などが筐体11に触れて痛みを感じたり、けがをしてしまったりすることがあった。
【0009】
このような課題を解決するために、シリコンゴムなどの弾性部材から成るプラグカバーを、プラグ端子を孔部に通しつつプラグに装着する技術が知られている(例えば、特許文献1など)。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、弾性部材により形成されるプラグカバーでプラグを覆っているので、プラグに触れることによる痛みやけがを防止することはできるものの、プラグに設けられた二つのプラグ端子がプラグカバーの孔部により固定されてしまうため、特許文献1の技術を上述した金属製プラグ10に適用した場合、プラグカバーをプラグに装着したままリング13を回転させることができなくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−282176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、外周面に複数の凹凸が形成されたリングを回転させることでコンセントへの着脱を行うプラグの筐体によって、人が痛みを感じたりけがをしたりしないようにしつつ、プラグカバーをプラグに装着したままプラグをコンセントへ着脱することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明では、外周面に複数の凹凸が形成されたリングを回転させることでコンセントへの着脱を行うプラグの筐体を覆う大きさであり、弾性部材により形成されていて、少なくとも筐体に対して向かい合う二方向に形成されるカバー部と、カバー部内に形成され、プラグの筐体を形成する円筒状の部分
に形成されていて、その円筒状の部分の直径と略同じ幅の切欠き部分、または
、プラグから導出されるコードに
形成されていて、そのコードの直径と略同じ幅の切欠き部分により、回転可能に装着される装着部と、装着部をプラグに装着し、カバー部を二方向から押さえた場合に、カバー部の内側の少なくともリングに対向する部分がリングの外周面の複数の凹凸に密着することで摩擦力を生じる接触部とを備えるようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、プラグの筐体を覆うカバー部が弾性部材により形成されているので、プラグの筐体が人に痛みを感じさせたりけがをさせたりしないようにすることができる。また、装着部をプラグに装着し、カバー部を二方向から押さえた場合に、接触部とリングの外周面との間に生じる摩擦力によって、カバー部がプラグの筐体の円筒部分またはコードを中心としてリングとともに回転可能となるので、プラグカバーをプラグに装着したままプラグをコンセントへ着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態によるプラグカバーの外観例を示す図である。
【
図2】本実施形態のプラグカバーを金属製プラグに装着した状態を示す断面図である。
【
図3】変形例によるプラグカバーの外観例を示す図である。
【
図4】変形例のプラグカバーを金属製プラグに装着した状態を示す図である。
【
図5】一般的な金属製プラグの外観例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるプラグカバー1の外観例を示す図である。また、
図2は、本実施形態のプラグカバー1を金属製プラグ10に装着した状態を示す図である。ここで、プラグカバー1は、カバー部2、装着部3、接触部4を備えて構成されている。
【0016】
また、プラグカバー1が装着される金属製プラグ10は、円筒状の金属製の筐体11、筐体11の先端に設けられ、ウォールユニットに設けたコンセント(図示せず)に挿入される先端部12、筐体11に対して回転自在であり、ウォールユニットに設けたコンセントの外周部分にねじ込むことで、金属製プラグ10をウォールユニットに固定するリング13、筐体11の終端から導出され、金属製プラグ10とナースコール子機などの機器とを接続するためのコード14を備えて構成されている。
【0017】
ここで、
図2に示すように、筐体11を側面方向から見ると、筐体11の先端部分には、筐体11の円筒状部分の径よりも小径の凹部11aが形成されており、さらに先端の部分には、筐体11の筒状部分の径と同等の径を持つ凸部11bが形成されている。また、リング13は、内周にらせん状の溝が形成されており、その内径は凸部11bの外径よりも大きく、かつ、凹部11aの外径よりも小さく形成されている。
【0018】
これにより、リング13は、凹部11aの範囲において
図1(A)中左右方向に移動可能となる。また、リング13は、凸部11bにより
図1(A)中左方に抜け落ちることがなくなる。また、リング13の外周部分には、リング13を回し易くするための溝が形成されている。この溝により、リング13の外周部分には凹凸が形成され、この凹凸により、リング13の外周部分を回す指が滑り難くなる。
【0019】
次に、上述した金属製プラグ10に装着されるプラグカバー1の各構成要素について説明する。カバー部2は、金属性プラグ10の筐体11を覆う大きさであり、エラストマーやシリコンゴムなどの弾性部材により形成されている。また、
図2に示すように、プラグカバー1を金属製プラグ10に装着した場合に、カバー部2は円筒状の筐体11の略全周を覆う。
【0020】
装着部3は、カバー部2の内側に一体的に形成されており、金属製プラグ10のコード14の付け根部分に回転可能に装着される。
図1(B)に示すように、装着部3は、コード14の付け根部分の直径と略同じ幅で、先端部分の形状が半円である切欠き3aを形成している。なお、
図1(B)は、
図1(A)に示すプラグカバー1を
図1(A)中左方から見た場合の図である。ここで、装着部3はカバー部2と同様に弾性部材により形成されているため、プラグカバー1を金属性プラグ10に装着すると、装着部3の半円部分が金属製プラグ10のコード14の付け根部分に密着する。
【0021】
接触部4は、カバー部2の内側に形成されており、プラグカバー1を金属製プラグ10に装着した場合に、金属製プラグ10のリング13の外周に対向する位置に少なくとも形成されている(
図1(C)参照)。また、接触部4は、リング13の外周に形成された溝に密着することで摩擦力を生じるものであり、例えば、溝などの複数の凹凸であったり、カバー部2を形成する弾性部材の吸着力であったりする。なお、
図1(C)は、
図1(B)のA−A´断面図である。ここで、上述した摩擦力は、少なくともリング13を回転させるための力と同等であることが好ましい。
【0022】
このように構成されたプラグカバー1を金属製プラグ10に装着した状態で、金属製プラグ10をウォールユニットに形成されているコンセントに取り付ける場合、医療従事者は、カバー部2を持った状態で、先端部12をコンセントに挿入する。そして、コンセントの外周部分に設けたらせん状の溝に対して、リング13の内周に設けたらせん状の溝をねじ込む。このとき、医療従事者は、二本の指でリング13の外周部分をカバー部2の上から押さえながら、カバー部2を回転させる。すると、接触部4とリング13の外周面との間に生じる摩擦力によって、リング13が回転する。
【0023】
また、プラグカバー1を金属製プラグ10に装着した状態で、金属製プラグ10をコンセントから取り外す場合、医療従事者は、二本の指でリング13の外周部分をカバー部2の上から押さえながら、カバー部2を上述した場合と逆方向に回転させる。すると、接触部4とリング13の外周面との間に生じる摩擦力によって、リング13が上述した場合と逆方向に回転する。すると、コンセントの外周部分に設けたらせん状の溝からリング13が脱落するので、医療従事者は、カバー部2を持った状態で、先端部12をコンセントから引き抜くことができる。
【0024】
以上詳しく説明したように、本実施形態によるプラグカバー1は、外周面に複数の凹凸が形成されたリング13を回転させることでコンセントへの着脱を行う金属製プラグ10の筐体11を覆う大きさであり、弾性部材により形成されるカバー部2と、カバー部2の内側に形成され、金属製プラグ10の筐体11を形成する円筒状の部分に回転可能に装着される装着部3と、装着部3を金属製プラグ10に装着し、カバー部2を二方向から押さえた場合に、カバー部2の内側のリング13に対向する部分がリング13の外周面の複数の凹凸に密着することで摩擦力を生じる接触部4とを備えるようにしている。
【0025】
これにより、金属製プラグ10の筐体11を覆うカバー部2が弾性部材により形成されているので、金属製プラグ10の筐体11が人に痛みを感じさせたりけがをさせたりしないようにすることができる。また、装着部3を金属製プラグ10に装着し、カバー部2を押さえた場合に、接触部4とリング13の外周面との間に生じる摩擦力によって、カバー部2が金属製プラグ10の筐体11の円筒部分を中心としてリング13とともに回転可能となるので、プラグカバー1を金属製プラグ10に装着したまま金属製プラグ10をコンセントへ着脱可能とすることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、カバー部2が金属製プラグ10の筐体11の外周部分の殆どを覆うようにしているが、これに限定されない。例えば、カバー部が金属製プラグ10の筐体11に対して向かい合う二方向を覆うように、カバー部を形成するようにしても良い。
【0027】
具体的には、上述した変形例によるプラグカバー20は、
図3に示すように、筐体11の向かい合う二方向を覆うカバー部21を備えている。また、
図3(B)および
図4に示すように、このプラグカバー20は、コード14の直径と略同じ幅で、先端部分の形状が半円である切欠き22aを形成する装着部22を備えている。また、カバー部21の内側には、図示しない接触部が形成されている。なお、
図3(B)は、
図3(A)に示すプラグカバー20を
図3(A)中左方から見た場合の図である。ここで、装着部22がカバー部21の端部に形成されているため、カバー部21が金属製プラグ10の筐体11の全体を覆うようにするためには、装着部22はコード14に装着される必要がある。
【0028】
このように構成されたプラグカバー20を金属製プラグ10に装着する場合、切欠き22aをコード14に通し、装着部22とコード14とを密着させる。すると、カバー部21の内側に形成されている接触部は、リング13の外周面に対向する。この状態で(
図4参照)、カバー部21の両方を押さえると、接触部がリング13の外周面に密着する。これにより、コード14を中心として、プラグカバー20およびリング13が回転可能となる。
【0029】
また、前述した実施形態では、装着部3がコード14の付け根部分に対応する位置に形成されているが、これに限定されない。例えば、装着部が筐体11の凹部11aに対応する位置に形成されていても良い。すなわち、装着部を金属製プラグ10に装着した場合に、プラグカバーが回転可能であれば、カバー部のどのような位置に装着部を形成しても良い。
【0030】
また、カバー部の形状も、上述した実施形態や変形例に限定されないことはもちろんである。すなわち、カバー部が金属製プラグ10の筐体11を覆うことができる大きさであり、リング13を回転させる際に、二方向から押さえることができる形状であれば、どのような大きさ、形状であっても良い。
【0031】
また、前述した実施形態では、プラグカバー1が装着されるプラグを金属製プラグ10としているが、これに限定されない。例えば、プラスチックなどの硬質材料にて形成されたプラグであっても良い。
【0032】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
1、20 プラグカバー
2、21 カバー部
3、22 装着部
4 接触部